説明

スリップ・コート組成物および重合性積層体

【課題】
【解決手段】(A)基板、および(B)該基板の少なくとも一部分を被覆する滑り層(slip layer)を含む重合性積層体であって、前記滑り層が(i)ポリエチレン・ブレンド、(ii)前記ポリエチレン・ブレンド100重量部当たり、プロピレン・モノマーから誘導されるプロピレン単位を有する約2.5〜約15重量のプロピレン・ポリマーまたはプロピレン・モノマー、および(iii)前記ポリエチレン・ブレンド100重量部当たり、約4.5〜約20重量の動的加硫化ゴムを含む重合性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリップ・コート組成物、重合性積層体、およびこの組成物を含む天候シール(weather seal)に関する。
【背景技術】
【0002】
窓溝(window channel)は窓枠にガラスを嵌め込むために普通用いられる。この窓溝は典型的には、構造に安定性を与え、しばしば環境的または音響的な密閉を利点として与える、柔軟で弾力的な材料である。結局、多くの窓溝は天候シールと称される。
【0003】
自動車におけるような特定の用途において天候シールは、引き込み窓がスライドし、密閉することができる表面にも提供される。適切な密閉を提供する他にも、この天候シールは磨耗抵抗性であり、低い摩擦係数を示すことが好ましい。
【0004】
1つの例において、窓溝は、基板層(典型的にはゴム物質である)を蔽って用いられる重合性フィルムまたは層を含むことができるスリップ・コートを用いて強化される。例えば、米国特許第5,447,671号は、基板に適用される接触層を有する天候シールについて述べている。この基板は弾力的で取扱容易な合成樹脂または合成ゴムを含み、この接触層は高分子量ポリエチレン(300,000g/モル)および超高分子量ポリエチレン(1,300,000g/モル)のブレンドを含む。この特許は、異なるポリエチレン樹脂により見かけ上は摩擦を低減すると考えられている粗製の接触層が得られることを示唆している。
【0005】
例えば、超高分子量ポリエチレンのような超高分子量樹脂の使用に関連し得る不利な点を解決するために、米国特許第6,146,739号は、基板層および滑り樹脂層(slide-resin layer)を含む接触部を含むガラス用溝(glass-run channel)について述べている。この基板層は熱可塑性エラストマー(例えば、ゴムおよび熱可塑性樹脂のブレンド)を含み、この滑り樹脂層は135℃のデカリン溶媒中で測定される7〜40dl/gの実質粘度(約400,000g/モルを超える重量平均分子量を有するポリマーを含むと推定され、ここで相関係数は経験的なポリマー範囲評価に基づく)を有する超高分子量ポリオレフィン、135℃のデカリン溶媒中で測定される0.1〜5dl/gの実質粘度を有するポリオレフィン、およびゴムと熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性エラストマー含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該技術分野においてこれまでなされてきた進歩にもかかわらず、天候シール、特に天候シールのスリップ・コートの改善という課題が依然残されている。特に、これらのコートの外観のような表面特性ばかりでなく、摩擦係数における改善という課題も依然残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めたところ、本発明のポリマー性積層体が、これらの課題を解決することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0008】
発明の概要
概略的に述べると、本発明は、(A)基板、および(B)該基板の少なくとも一部分を被覆する滑り層(slip layer)を含む重合性積層体であって、前記滑り層が実質的に(i)ポリエチレン・ブレンド、(ii)前記ポリエチレン・ブレンド100重量部当たり、プロピレン・モノマーから誘導されるプロピレン単位を有する約2.5〜約15重量のプロピレンのポリマーまたはコポリマー、および(iii)前記ポリエチレン・ブレンド100重量部当たり、約4.5〜約20重量の動的加硫化ゴムからなる重合性積層体であり、ここで前記ブレンドが、(a)前記ブレンドの総重量に基づいて、110,000〜約140,000の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性(polydispersity)を有する第1ポリエチレン樹脂の約3〜約97重量%、(b)前記ブレンドの総重量に基づいて、50,000〜109,999までの重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第2ポリエチレン樹脂の約3〜約97重量%、および(c)前記ブレンドの総重量に基づいて、20,000〜49,999までの重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第3ポリエチレン樹脂の約0〜約40重量%を含み、ただし、前記ブレンドが前記ブレンドの総重量に基づいて、前記第1ポリエチレンおよび第2ポリエチレンの混成物の60%以上を含む、ことを特徴とする重合性積層体を提供する。
【0009】
また本発明は、(I)基板を形成用の熱加工可能な組成物を提供する工程、(II)スリップ・コート用の熱加工可能な組成物を調製する工程、および(III)前記基板用の組成物および前記スリップ・コート用の組成物を共押出して、基板および該基板の少なくとも一部分を蔽うスリップ・コートを含む積層体を形成する工程を含む積層体の製造方法であって、前記スリップ・コートが、(a)熱可塑性加硫化物を形成するためにゴムおよびプロピレンのポリマーまたはコポリマーを含むブレンド内のゴムの動的加硫化工程、および(b)前記ゴムの動的加硫化工程後に、前記熱可塑性加硫化物にポリエチレン樹脂のブレンドを添加する工程により調製され、ここで、前記ブレンドが、(i)前記ブレンドの総重量に基づいて、110,000〜約140,000の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性(polydispersity)を有する第1ポリエチレン樹脂の約3〜約97重量%、(ii)前記ブレンドの総重量に基づいて、50,000〜109,999までの重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第2ポリエチレン樹脂の約3〜約97重量%、および(iii)前記ブレンドの総重量に基づいて、20,000〜49,999までの重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第3ポリエチレン樹脂の約0〜約40重量%を含み、ただし、前記ブレンドが前記ブレンドの総重量に基づいて、前記第1ポリエチレンおよび第2ポリエチレンの混成物の60%以上を含む、ことを特徴とする製造方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、実質的に、(i)ポリエチレン・ブレンド、(ii)プロピレンのポリマーまたはコポリマー、および(iii)動的加硫化ゴムからなるスリップ・コート組成物であり、ここで前記ポリエチレン・ブレンドは、(a)前記ブレンドの総重量に基づいて、110,000〜約140,000の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性(polydispersity)を有する第1ポリエチレン樹脂を約3〜約97重量%、(b)前記ブレンドの総重量に基づいて、50,000〜109,999までの重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第2ポリエチレン樹脂を約3〜約97重量%、および(c)前記ブレンドの総重量に基づいて、20,000〜49,999までの重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第3ポリエチレン樹脂を約0〜約40重量%含み、かつ、前記ブレンドが前記第1ポリエチレンおよび第2ポリエチレンを前記ブレンドの総重量に基づいて合計60%以上を含むことを特徴とするスリップ・コート組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
具体的な態様の詳細な説明
本発明の積層体は、第1ポリマー層および第2ポリマー層を含む。この第1ポリマー層は比較的低い摩擦係数を有する。1つの態様において前記積層体は、スリップ・コート(slip coat)を形成する第1層およびスリップが搭載された基板を形成する第2層を含む天候シールの少なくとも一部分を形成する。
【0012】
スリップ・コートまたは滑り層(slide layer)とも言うことができる第1層には、(a)第1ポリエチレン樹脂、(b)第2ポリエチレン樹脂、および(c)第3ポリエチレン樹脂を含む(i)ポリエチレン樹脂ブレンド、(ii)プロピレンのポリマーまたはコポリマー、および(iii)動的加硫化されたゴムが含まれる。その他の従来からの添加剤を含むこともできるが、前記スリップ・コートは、好ましくは6、より好ましくは7を超える実質粘度、または500,000、より好ましくは600,000を超える数平均分子量を有するポリエチレン樹脂を含む超高分子量ポリオレフィン類を含まない。
【0013】
好ましい態様において、前記スリップ・コートまたは滑り層は、実質的に、(a)第1ポリエチレン樹脂、(b)第2ポリエチレン樹脂、および(c)第3ポリエチレン樹脂を含む(i)ポリエチレン樹脂ブレンド、(ii)プロピレンのポリマーまたはコポリマー、および(iii)動的加硫化されたゴムからなる。前記スリップ・コートに存在し得るその他の構成成分には、任意の充填剤、滑り助剤(slip aids)、油類、加工添加剤、色素、低密度ポリエチレン、および安定性増強剤が含まれる。「から実質的になる」という語句は、前記スリップ・コート組成物に含まれる構成成分を、特定の、この組成物の基本的で新規な特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。この表現によって特に除外されるものは、超高分子量ポリオレフィン類、特にポリエチレンである。これらの樹脂は負荷による白化または皺(creasing)を生ずる傾向を開始または作り出すことがわかっている。
【0014】
動的加硫化されたゴムを形成するのに用いられるゴムは、ある1つの特定のゴムに限定されない。ゴムは、ゴム状ポリマー、または動的加硫化が可能な約0℃未満、好ましくは約−20℃未満、さらに好ましくは約−65℃未満のガラス転位温度を示すポリマーのことをいう。
【0015】
有用なゴム状ポリマーは、好ましくはある程度の不飽和度を有する。ゴム状ポリマーの具体例には、オレフィン性エラストマー性コポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン・コポリマーゴム、ブタジエンゴム、アセトニトリルゴム、臭素化および塩素化イソブチレン−イソプレン・コポリマーゴムなどのハロゲン化ゴム、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジンゴム、ウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、エピクロルヒドリン・ターポリマーゴム、およびポリクロロプレンが含まれる。
【0016】
オレフィン性エラストマー性コポリマーという用語は、エチレン、1種以上のα−オレフィン・モノマー、および任意の1種以上のジエン・モノマーを重合したゴム状コポリマーのことをいう。このα−オレフィンには、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、またはこれらの組合せを含めることができるが、これらに限定されない。好ましいα−オレフィンはプロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、またはこれらの組合せである。前記ジエン・モノマーには、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、またはこれらの組合せを含めることができるが、これらに限定されない。前記コポリマーがエチレン、α−オレフィン、およびジエン・モノマーから調製される場合、コポリマーはターポリマーということができる。さらに多種のα−オレフィンまたはジエンが用いられるとテトラポリマー等と称される。
【0017】
好ましいオレフィン性エラストマー性コポリマーには、約45〜約85重量%、より好ましくは約55〜約75重量%、さらにより好ましくは約60〜約70重量%、なおさらに好ましくは約61〜66重量%のエチレン・モノマーから誘導されるエチレン単位、および約0〜約15重量%、より好ましくは約0.5〜約12重量%、さらにより好ましくは約1〜約10重量%、なおさらに好ましくは約2〜約8重量%のジエン・モノマーから誘導されるジエン単位が含まれ、その残部にはα−オレフィン・モノマーから誘導されるα−オレフィン単位(好ましくはプロピレン)が含まれる。モル%で表すと、好ましいターポリマーは、0.1〜約5モル%、好ましくは約0.5〜4モル%、より好ましくは約1〜2.5モル%のジエン・モノマーから誘導されるジエン単位である。
【0018】
前記好ましいオレフィン性エラストマー性コポリマーは、好ましくは50,000より大きい、より好ましくは100,000より大きい、さらにより好ましくは200,000より大きい、なおさらに好ましくは300,000より大きい重量平均分子量(Mw)を有する。この好ましいオレフィン性エラストマー性コポリマーの重量平均分子量は、好ましくは1,200,000未満であり、より好ましくは1,000,000未満であり、さらにより好ましくは900,000未満であり、なおより好ましくは800,000未満である。前記好ましいオレフィン性エラストマー性コポリマーは、好ましくは20,000より大きい、より好ましくは60,000より大きい、さらにより好ましくは100,000より大きい、なおより好ましくは150,000より大きい数平均分子量(Mn)を有する。この好ましいオレフィン性エラストマー性コポリマーの数平均分子量は、好ましくは500,000未満であり、より好ましくは400,000未満であり、さらにより好ましくは300,000未満であり、なおより好ましくは250,000未満である。
【0019】
また、前記好ましいオレフィン性エラストマー性コポリマーは、ASTM D1646に従って、約50〜約500、好ましくは約75〜約450の予備加硫化ムーニー粘度(125℃におけるML(1+4))を有することによっても特徴づけることができる。高分子量オレフィン性エラストマー性コポリマーが本発明の熱可塑性加硫化物の中で用いられる場合、この高分子量ポリマーは油延伸された(oil-extended)形態で得ることができる。この油延伸コポリマーは典型的には、100重量部のゴムあたり約15〜約100重量部のパラフィン油を含む。この油延伸コポリマーのムーニー粘度は約45〜約80、好ましくは約50〜約70である。
【0020】
有用なオレフィン性エラストマー性コポリマーは様々な技術を用いて製造することができる。例えば、これらのポリマーは、チーグラー・ナッタ系、単一部位触媒、およびブルックハート(Brookhart)触媒を含む多くの触媒系を用いる溶液、スラリー、または気相重合技術によって合成することができる。
【0021】
オレフィン性エラストマー性コポリマーは、商品名ヴィスタロンTM(エクソンモービル・ケミカル社製、テキサス州ヒューストン)、ケルタンTM(DSMコポリマーズ社、ルイジアナ州バトンルージュ)、ノルデルTMIP(デュポン・ダウ・エラストマーズ社、デラウェア州)、ノルデルMGTM(デュポン・ダウ・エラストマーズ社)、およびブナTM(バイエル社、ドイツ)として市販で入手できる。
【0022】
前記ゴムは動的加硫化技術を用いて硬化する。動的加硫化とは、前記ゴムおよび少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むブレンドに含まれるゴムについて加硫または硬化する工程のことをいう。前記ゴムは、熱可塑性樹脂の融点以上の温度において剪断および延伸条件下で加硫化される。前記ゴムは、好ましくは熱可塑性樹脂マトリクス内で同時に(好ましくは微細な粒子として)架橋および分散される。もっとも、共連続性形態のようなその他の形態は硬化度、ゴム/可塑性粘度比、混合強度、滞留時間、および温度に依存して存在し得る。
【0023】
動的加硫化後、好ましくはポリエチレン・ブレンドの添加後に前記ゴムは、共連続性形態も存在し得るものの、前記ゴムは連続性熱可塑性相およびマトリクス内において加硫化または硬化したゴムの細かく分割し、よく分散した粒子の形態で存在する。硬化ゴムが熱可塑性媒体内で細かく分割し、よく分散した形態で存在するそのような態様において、ゴム粒子は典型的には、50μm未満、好ましくは30μm未満、より好ましくは10μm未満、さらにより好ましくは5μm未満、なおより好ましくは1μm未満の平均直径を有する。好ましい態様において、50%以上、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは75%以上の粒子が、5μm未満、より好ましくは2μm未満、さらにより好ましくは1μm未満の平均直径を有する。
【0024】
前記スリップ層内のゴムは少なくとも部分的に硬化される。1つの態様において、前記ゴムは完全に又は十分に硬化するという利点を有する。硬化度は、抽出剤としてシクロヘキサンまたは沸騰キシレンを用いて熱可塑性加硫化物から抽出可能なゴムの量を調べることにより測定することができる。好ましくは、前記ゴムは15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらにより好ましくは3重量%以下が米国特許第4,311,628号、5,100,947号、および5,157,081号において記述されるように23℃のヘキサンにより抽出できる硬化度を有する。これらの文献は参照により本発明に取り込まれる。選択的に、前記ゴムは、架橋密度が1ミリリットルのゴムあたり好ましくは4×10-5モル以上、より好ましくは7×10-5モル以上、さらにより好ましくは10×10-5モル以上となるような硬化度を有する。エラル(Ellul)他著「動的加硫化TPEにおける架橋密度および相形態」(ゴム化学および技術、第68巻、573〜584頁、1995年)を参照されたい。
【0025】
前記ゴムを硬化または架橋することができる任意の硬化剤を動的加硫化に用いることができる。例えば、米国特許第5,936,028号(この文献は参照により本発明に取り込まれる。)で開示されているように、ケイ素含有硬化剤を用いることができる。また、米国特許第2,972,600号、3,287,440号、5,952,452号および6,437,030号(これらの文献は参照により本発明に取り込まれる。)で開示されているように、フェノール性樹脂も用いることができる。米国特許第5,656,693号(この文献は参照により本発明に取り込まれる。)で開示されているように、ペルオキシド硬化剤も用いることができる。前記ゴムがブチルゴムの場合、有用な硬化系は米国特許第5,013,793号、5,100,947号、5,021,500号、5,100,947号、4,978,714号、および4,810,752号(これらの文献は参照により本発明に取り込まれる。)に開示されている。
【0026】
好ましい態様において、前記ゴムはケイ素含有硬化剤を用いて硬化される。特定のこれらの態様において、前記ゴムはジエン成分として5−ビニル−2−ノルボルネンを含むエラストマー性コポリマーである。有用なケイ素含有硬化剤は一般的に2個以上のSiH基をもつケイ素ヒドリド化合物を含む。これらの化合物はヒドロシレーション(hydrosilation)触媒の存在下で不飽和ポリマーの炭素−炭素二重結合と反応する。本発明を実施するために有用なケイ素ヒドリド化合物には、メチル水素ポリシロキサン、メチル水素ジメチルシロキサン・コポリマー、アルキルメチルポリシロキサン、ビス(ジメチルシリル)アルカン、ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0027】
好ましいケイ素ヒドリド化合物は下記式で定義することができる。
【0028】
【化1】

【0029】
上記式中、各Rは独立して、1〜20の炭素原子を含むアルキル、4〜12の炭素原子を含むシクロアルキル、およびアリールから選択され、mは1〜約50の範囲の値をもつ整数であり、nは1〜約50の範囲の値をもつ整数であり、pは0〜約6の範囲の値をもつ整数である。
【0030】
上述のように、エラストマー性ポリマーのハイドロシリレーション硬化は、好ましくは触媒の存在下で行われる。この触媒には、ペルオキシド触媒および第8族(米国式元素周期律表による)遷移金属を含む触媒が含まれるが、これらに限定されない。これらの金属には、これらの金属の錯体ばかでなく、パラジウム、ロジウム、および白金が含まれるが、これらに限定されない。この中でも、パラジウム触媒が好ましい。
【0031】
前記プロピレンのポリマーおよびコポリマーには、プロピレンを1種以上のエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、およびこれらの混合物と重合することにより形成されるポリプロピレンのホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。具体的には、プロピレンと、上記のエチレンまたは高級α−オレフィン、または炭素原子10〜20のジオレフィンとの反応、インパクト、およびランダム・コポリマーが含まれる。これらのプロピレン・コポリマー用のコモノマー含量は、典型的にはポリマー重量をもとに1〜約30%となる。本発明において記述されるような2種以上のポリオレフィン熱可塑物のブレンドまたは混合物、またはこれらと他のポリマー性修飾剤とのブレンドまたは混合物も、本発明において好適である。これらのホモポリマーおよびコポリマーは、フィリップス触媒反応、従来からのチーグラー・ナッタ型重合、およびメタロセン触媒に限られない触媒を含む単一部位有機金属触媒(これらに限定されない)を用いる触媒のような当該技術分野で既知の任意の技術を用いて合成することができる。
【0032】
好ましいプロピレン・ポリマーおよびコポリマーは、約135〜110℃、好ましくは約−100〜約50℃、より好ましくは約−20〜約20℃のガラス転位温度(Tg)を有する。それらは、また、約50〜約180℃、好ましくは約80〜約180℃、より好ましくは約120〜180℃の融点により特徴付けることもできる。これらの樹脂は、また、約0.005〜750dg(デシグラム)/分、好ましくは約0.10〜約100dg/分、より好ましくは約0.10〜約18dg/分の溶融流速(melt flow rate)を有することにより特徴づけることもできる。ここで、溶融流速は、230℃および2.16kg荷重でASTM D−1238に従っての標準圧力においてポリマーが如何に容易に流れるかを表す測定値である。
【0033】
有用なプロピレンのポリマーおよびコポリマーは、半結晶、結晶、または結晶性樹脂のように特徴づけることもできる。1つの態様において、それらは、約10〜約80%、好ましくは約20〜約70%、より好ましくは約30〜約65%の位相差比色法(differential scanning calorimetry)による結晶化度を有する。
【0034】
1つの態様において、前記プロピレンのポリマーおよびコポリマーは、好ましくは約200,000〜約700,000の重量平均分子量(Mw)および約80,000〜約200,000の数平均分子量(Mn)を有する。より好ましくは、これらの樹脂は約300,000〜約600,000のMwおよび約90,000〜約150,000のMnを有する。
【0035】
特に好ましいポリエチレンのポリマーおよびコポリマーには、高結晶性のアイソタクティックまたはシンジオタクティック・ポリプロピレンが含まれる。好ましいポリプロピレン・ホモポリマーは、約0.90〜約0.91g/ccの密度を有する多くのアイソタクティック・プロピレンを含み、約0.85〜約0.91g/ccの密度を有する。また、分画溶融流速(fractional melt flow rate)を有する高分子量ポリプロピレンが好ましい。これらのポリプロピレン樹脂は、ASTM D−1238に従って10dg/分以下、より好ましくは1.0dg/分以下の溶融流速を有することを特徴とする。
【0036】
前記第1ポリエチレン樹脂には、エチレンから誘導される実質的に全てのポリマー性単位を有するポリマーが含まれる。好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上のポリマー性単位がエチレンから誘導される。1つの態様において、前記第1ポリエチレン樹脂はポリエチレン・ホモポリマーである。
【0037】
前記第1ポリエチレン樹脂は、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される110,000〜140,000の重量平均分子量、任意に115,000〜135,000、および任意に120,000〜130,000の重量平均分子量を有することにより特徴づけることができる。また、この第1ポリエチレン樹脂は、好ましくは12未満、任意に11未満、任意に10未満、および任意に9未満のポリ分散性を有することにより特徴づけることができる。
【0038】
特定の態様において、前記第1ポリエチレン樹脂は、190℃および2.16kg荷重におけるASTM D−1238に従って1.0〜12dg/分、任意に2.0〜10dg/分、および任意に3.0〜8.0dg/分の溶融指標(melt index)を有することによっても特徴づけられる。
【0039】
特定の態様において、前記第1ポリエチレン樹脂は、2.00〜5.00dl/g、任意に2.20〜4.50dl/g、および任意に2.50〜4.00dl/gのASTM D1601およびD4020に従って決定される実質粘度を有することによっても特徴づけられる。
【0040】
前記第1ポリエチレン樹脂は、0.93g/ccよりも大きい、より好ましくは0.94g/ccよりも大きい、さらに好ましくは0.95g/ccよりも大きいASTM D4883に従って測定される密度を有することによっても特徴づけられる。
【0041】
前記第1ポリエチレン樹脂として有用なポリマーは商品名HD7745(エクソンモービル社)として市販される。
【0042】
前記第2ポリエチレン樹脂には、エチレンから誘導される実質的に全てのポリマー性単位を有するポリマーが含まれる。好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上のポリマー性単位がエチレンから誘導される。1つの態様において、前記第2ポリエチレン樹脂はポリエチレン・ホモポリマーである。
【0043】
前記第2ポリエチレン樹脂は、50,000〜109,999の重量平均分子量、任意に54,000〜90,000、および任意に58,000〜70,000の重量平均分子量を有することにより特徴づけることができる。また、この第2ポリエチレン樹脂は、好ましくは12未満、任意に11未満、任意に10未満、および任意に9未満のポリ分散性を有することにより特徴づけることができる。
【0044】
特定の態様において、前記第2ポリエチレン樹脂は、ASTM D−1238に従って190℃および2.16kg荷重において1.1〜14dg/分、任意に1.5〜13dg/分、および任意に2.0〜12dg/分の溶融指標を有することによっても特徴づけられる。
【0045】
特定の態様において、前記第2ポリエチレン樹脂は、ASTM D1601およびD4020に従って1.00〜1.99dl/g、任意に1.20〜1.90dl/g、および任意に1.30〜1.80dl/gの決定される実質粘度を有することによっても特徴づけられる。
【0046】
前記第2ポリエチレン樹脂は、ASTM D4883に従って測定される0.93g/ccよりも大きい、より好ましくは0.94g/ccよりも大きい、さらに好ましくは0.95g/ccよりも大きい密度を有することによっても特徴づけられる。
【0047】
前記第2ポリエチレン樹脂として有用なポリマーは商品名HD6706(エクソンモービル社)として市販される。
【0048】
スリップ・コート層に用いられる前記第3ポリエチレン樹脂には、エチレンから誘導される実質的に全てのポリマー性単位を有するポリマーが含まれる。好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上のポリマー性単位がエチレンから誘導される。1つの態様において、前記第3ポリエチレン樹脂はポリエチレン・ホモポリマーである。
【0049】
前記第3ポリエチレン樹脂は、20,000〜49,999の重量平均分子量、任意に22,000〜47,000、および任意に26,000〜45,000の重量平均分子量を有することにより特徴づけることができる。また、この第3ポリエチレン樹脂は、好ましくは12未満、任意に11未満、任意に10未満、および任意に9未満のポリ分散性を有することにより特徴づけることができる。
【0050】
特定の態様において、前記第3ポリエチレン樹脂は、ASTM D−1238に従って190℃および2.16kg荷重において15〜50dg/分、任意に18〜45dg/分、および任意に20〜40dg/分の溶融指標を有することによっても特徴づけられる。
【0051】
特定の態様において、前記第3ポリエチレン樹脂は、ASTM D1601およびD4020に従って0.10〜0.99dl/g、任意に0.40〜0.95dl/g、および任意に0.60〜0.90dl/gの決定される実質粘度を有することによっても特徴づけられる。
【0052】
前記第3ポリエチレン樹脂は、ASTM D4883に従って測定される0.93g/ccよりも大きい、より好ましくは0.94g/ccよりも大きい、さらに好ましくは0.95g/ccよりも大きい密度を有することによっても特徴づけられる。
【0053】
前記第3ポリエチレン樹脂として有用なポリマーは商品名HD6733(エクソンモービル社)として市販される。
【0054】
任意に含むことができる充填剤には、ポリマー性物質の混合に従来から用いられるそれらの強化用または非強化用充填剤または伸展剤が含まれる。有用な充填剤にはカーボン・ブラック、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、および二酸化チタンが含まれる。
【0055】
可塑剤、伸展油、合成加工油、またはそれらの混合物も前記ブレンドに任意に添加することができる。この伸展油には、芳香族、ナフタリン性、およびパラフィン性伸展油が含まれ得るが、これらに限定されない。代表的な合成加工油には、直鎖状ポリα−オレフィン、分枝状ポリα−オレフィン、および水素化ポリα−オレフィンがある。本発明の組成物には、有機エステル、アルキルエーテル、またはこれらの組合せが含まれ得る。この点から、米国特許5,290,886号および5,397,832号は本発明に取り込まれる。特定の低分子量から中分子量の有機エステルおよびアルキルエーテルエステルが本発明の組成物に添加されると、ポリオレフィンおよびゴム成分の、および全組成物のTgが低下し、低温度特性、特に曲げ性(flexibility)および強度が改善する。これらの有機エステルおよびアルキルエーテルエステルは一般的に、通常約10,000未満の分子量を有する。この改善効果は、前記組成物のポリオレフィンおよびゴム成分の両方にエステルを分割することにより生じると考えられている。特に好適なエステルには、約2,000未満、好ましくは約600未満の平均分子量を有するモノマー性およびオリゴマー性物質が含まれる。前記エステルは、前記組成物のポリオレフィンおよびゴム成分の両方と双溶性または混合性を有し、すなわち他の成分と混合して単一相を形成しなければならない。最も好適なエステルは、脂肪族性のモノエステル又はジエステル、または選択的にオリゴマー性脂肪族エステル又はアルキルエーテルエステルであった。ポリマー性の脂肪族エステルおよび芳香族エステルは有意に有効性が低く、リン酸エステルはほとんどが無効であった。合成ポリα−オレフィンもTgを低下させるのに有用である。
【0056】
オリゴマー性伸展油も任意に用いることができる。好ましいオリゴマー性伸展油には、イソブブチレンおよびブテンのコポリマー、または相補的なコモノマーと共に用いるブタジエンのコポリマーが含まれる。これらのオリゴマー性進展剤は、典型的に1,000未満の数平均分子量を有する。有用なオリゴマー性進展剤は市販で入手できる。例えば、イソブチレンおよびブテンのオリゴマー性コポリマーは、商品名ポリブテンTM(ソルテックス社、ヒューストン、テキサス州)、インドポールTM(BP社、英国)、およびパラポールTM(エクソンモービル社)として入手できる。ブタジエンを含むオリゴマー性コポリマーは商標ライコン(Ricon)レジンTM(ライコンレジン社、グランドジャンクション、コロラド州)として市販で入手できる。
【0057】
ポリマー性加工添加剤も任意に添加することができる。これらの加工添加剤は非常に高い溶融流速指標を有するポリマー性樹脂を含むことができる。これらのポリマー性樹脂は、約500dg/分より大きい、より好ましくは約750dg/分より大きい、さらに好ましくは約1,000dg/分より大きい、なお好ましくは約1,200dg/分より大きい、なおさらに好ましくは約1,500dg/分より大きい溶融流速を有する直鎖状および分枝状の分子をともに含む。直鎖状および分枝状の加工添加剤の両方の混合物と同様に、様々な直鎖状および様々な分枝状の加工添加剤の両方の混合物も用いることができる。好ましい直鎖状ポリマー性加工添加剤はポリプロピレン・ホモポリマーである。好ましい分枝状ポリマー性加工添加剤にはジエン修飾ポリプロピレン・ポリマーが含まれる。類似の加工添加剤を含む熱可塑性加硫化剤は米国特許6,451,915号に開示され、本文献は参照により本発明に取り込まれる。
【0058】
滑り助剤(Slip aids)を任意にスリップ・コート層に含むことができる。滑り助剤はスリップ・コート層の摩擦係数を増強または低減させ、好ましくは組成物への悪い効果をもたない任意の物質を含むことができる。滑り助剤の種類には、シロキサン・ポリマー類、脂肪酸類、脂肪酸トリグリセリド類、脂肪酸アミド類、エステル類、フルオロポリマー類、グラファイト、モリブデン、シリカ、窒化ホウ素(boron nitride)、炭化ケイ素、およびこれらの混合物が含まれる。
【0059】
有用なシロキサン・ポリマーには、ジアルキルポリシロキサンおよびシリコーン油が含まれる。有用なジアルキルポリシロキサンには、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、フッ素化ポリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、およびそれらの水酸基置換ポリシロキサンが含まれる。好ましいシロキサン・ポリマーには、約200〜約500,000g/モル、好ましくは約10,000〜約400,000g/モル、より好ましくは約100,000〜約380,000g/モルの重量平均分子量を有するものが含まれる。
【0060】
有用な脂肪酸には、動物および植物の両方から得られるものが含まれ、飽和および不飽和酸のいずれもが含まれる。具体的な飽和脂肪酸には、酪酸(butyric acid)、ラウリン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸が含まれる。具体的な不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびパルミトール酸が含まれる。これらの酸のトリグリセリドも用いることができる。
【0061】
具体的な脂肪酸アミドには、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、およびベヘナミド(behenamide);エルカミド(erucamide)、オレアミド(oleamide)のような不飽和脂肪酸アミド、ブラシダミド(brassidamide)およびエライダミド(elaidamide);およびメチレンビスステアラミド(methylenebisstearamide)、メチレンビスオレアミド(methylenebisoleamide)、エチレンビスステアラミド(ethylenebisstearamide)およびエチレンビスオレアミド(ethylenebisoleamide)のようなビス脂肪酸アミドが含まれる。
【0062】
有用なエステルには、セチルアルコールおよび酢酸のエステル、セチルアルコールおよびプロピオン酸のエステル、チセルアルコールおよび酪酸のエステル、牛タロー(tallow)アルコールおよび酢酸のエステル、牛タローアルコールおよびプロピオン酸のエステル、牛タローアルコールおよび酪酸のエステル、ステアリルアルコールおよび酢酸のエステル、ステアリルアルコールおよびプロピオン酸のエステル、ステアリルアルコールおよび酪酸のエステル、ジステアリルアルコールおよびフタル酸のエステル、モノオレイン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、12−水酸化ステアリン酸エステル類、トリステアリン酸グリセロール、トリステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラステアリン酸ペンタエリトリトール、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸エステル類、オレイン酸エステル類、ベヘニン酸(behenic)エステル類、エステル含有カルシウム石鹸、ステアリン酸イソトリデシル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、モンタン酸(montanate)エチレングリコール、モンタン酸グリセロール、モンタン酸ペンタエリトリトールおよびモンタン酸エステル含有カルシウムが含まれる。これらの中でも、ジステアリルアルコールおよびフタル酸のエステル、モノオレイン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸エステル類、およびモンタン酸グリセロールが好ましい。特に好ましいものは、ジステアリルアルコールおよびフタル酸のエステル、モノステアリン酸グリセロール、およびモンタン酸グリセロールである。
【0063】
有用なフルオロポリマーには、ポリテトラフルオロエチレンおよびフッ素化ビニリデン・コポリマーが含まれる。1つの態様において、前記フルオロポリマーはフルオロポリマー粉体から誘導される微細に分散した粒子の形態でスリップ・コート内に存在する。これらの粒子または粉体の大きさは、約0.1μm〜約15μm、好ましくは約0.2μm〜約5.0μmである。
【0064】
前記第1層には安定性増強剤を任意に含むことができる。これらの増強剤には抗酸化剤、UV安定化剤、抗オゾン剤、およびバイオスタット(biostats)などのような当該技術分野で普通に用いられるものが含まれる。
【0065】
前記低密度ポリエチレンには、ASTM D4883に従って測定される0.92g/cc以下、より好ましくは0.91g/cc未満、さらに好ましくは0.90g/cc未満の密度を有することによって通常特徴づけられるポリエチレン樹脂が含まれ得る。
【0066】
1つまたは複数の態様において、前記好ましい低密度ポリエチレン樹脂は、20,000〜49,999の重量平均分子量、任意に22,000〜47,000、および任意に26,000〜45,000の重量平均分子量を有することにより特徴づけることができる。1つまたは複数の態様において、前記低密度ポリエチレン樹脂は、12未満、任意に11未満、任意に10未満、および任意に9未満のポリ分散性を有することにより特徴づけることができる。
【0067】
1つまたは複数の態様において、前記低密度ポリエチレン樹脂は、ASTM D−1238に従って190℃および2.16kg荷重において0.01〜50dg/分、任意に1〜45dg/分、および任意に20〜40dg/分の溶融指標を有することにより特徴づけられる。
【0068】
1つまたは複数の態様において、前記低密度ポリエチレン樹脂は、ASTM D1601およびD4020に従って0.10〜0.99dl/g、任意に0.40〜0.95dl/g、および任意に0.60〜0.90dl/gの実質粘度を有することにより特徴づけられる。
【0069】
前記第1層には、好ましくは層の総重量に基づいて、約45〜約75重量%、好ましくは約50〜約70重量%、より好ましくは約55〜約65重量%のポリエチレン・ブレンドが含まれる。
【0070】
前記ポリエチレン・ブレンドには、好ましくはポリエチレン・ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%、好ましくは約10〜約60重量%、より好ましくは約15〜約50重量%の第1ポリエチレン樹脂が含まれる。
【0071】
前記ポリエチレン・ブレンドには、好ましくはポリエチレン・ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%、好ましくは約10〜約80重量%、より好ましくは約15〜約70重量%の第2ポリエチレン樹脂が含まれる。
【0072】
前記ポリエチレン・ブレンドには、好ましくはポリエチレン・ブレンドの総重量に基づいて約0〜約40重量%、好ましくは約3〜約30重量%、より好ましくは約5〜約25重量%の第3ポリエチレン樹脂が含まれる。
【0073】
好ましい態様において、ポリエチレン・ブレンドには前記ブレンドの総重量に基づいて、60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上の混合された第1および第2ポリエチレン樹脂か含まれる。
【0074】
前記第1層には、ポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、好ましくは約2.5〜約15重量部、より好ましくは約4〜約12重量部、さらに好ましくは約6〜約10重量部のプロピレンのポリマーまたはコポリマーが含まれる。
【0075】
前記第1層には、好ましくはポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、約4.5〜約20重量部、より好ましくは約6〜約18重量部、さらに好ましくは約8〜約16重量部の動的加硫化ゴムが含まれる。
【0076】
前記第1層には、好ましくはポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、約0〜約30重量部、より好ましくは約1〜約20重量部、さらに好ましくは約2〜約15重量部の充填剤が含まれる。
【0077】
前記第1層には、好ましくはポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、約0〜約20重量部、より好ましくは約2〜約18重量部、さらに好ましくは約3〜約15重量部の伸展油が含まれる。
【0078】
前記第1層には、好ましくはポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、約0〜約20重量部、より好ましくは約1〜約15重量部、さらに好ましくは約2〜約12重量部の滑り助剤が含まれる。
【0079】
前記第1層には、好ましくはポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、約0〜約10重量部、より好ましくは約0.5〜約7重量部、さらに好ましくは約1〜約6重量部のポリマー性加工添加剤が含まれる。
【0080】
前記第1層には、好ましくはポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、約0〜約5重量部、より好ましくは約0.1〜約3重量部、さらに好ましくは約0.5〜約2重量部の安定性増強剤が含まれる。
【0081】
前記第1層には、好ましくはポリエチレン・ブレンド100重量部あたり、約0〜約10重量部、より好ましくは約0.1〜約7重量部、さらに好ましくは約1.0〜約5重量部の低密度ポリエチレンが含まれる。
【0082】
1つの態様において、前記スリップ・コート層形成用の組成物は、少なくとも部分的に硬化したゴム、および前記プロピレンのポリマーまたはコポリマー樹脂を含む熱可塑性加硫化物原料ストックを初めに形成することにより調製される。引き続き、前記第1、第2、および第3ポリエチレン樹脂が前記スリップ・コート組成物を形成するために前記熱可塑性加硫化物に添加される。1つの態様において、前記スリップ・コート層は、前記スリップ・コート組成物を、好ましくは共押出し技術を用いて前記基板層と連結して押出すことにより調製することができる。
【0083】
前記ポリエチレン樹脂は好ましくは、前記ゴムが相転換を行うために十分に硬化した後に、前記熱可塑性加硫化物原料ストックに添加される。当業者が考えるように、動的加硫化は熱可塑性樹脂よりも大量の分画のゴムを含むことにより開始することができる。それだけで熱可塑性樹脂は非連続相として存在する。動的加硫化が進行すると、ゴム粘度が上昇し、相転換が起こる。言い換えれば、熱可塑性樹脂層は不連続相になる。もう1つの態様において、共連続形態または偽共連続形態は、ゴムおよび熱可塑性樹脂の両方が連続相の場合に形成できる。1つの態様において、前記ポリエチレン樹脂は、約50%、好ましくは75%、より好ましくは約90%の硬化剤が消費された後に添加される。好ましい態様において、前記ポリエチレン樹脂は、硬化剤が完全に消費されるか、完全硬化ができた後に添加される。
【0084】
1つの態様において、前記ポリエチレン樹脂は、前記熱可塑性加硫化物がその溶融状態にある間に、すなわち、熱可塑性加硫化物が熱可塑性樹脂層の流動を起こすために十分な温度にある間に添加される。好ましくは、前記熱可塑性加硫化物は動的加硫化の時間からポリエチレン樹脂が添加されるまで、溶融状態に保たれる。
【0085】
ポリエチレン樹脂の添加は様々な技術を用いて起こされる。1つの態様において、各ポリエチレン樹脂は熱可塑性加硫化物に連続的に添加される。言い換えれば、前記第1ポリエチレンを添加し、次に前記第2ポリエチレン樹脂、最後に前記第3ポリエチレン樹脂を添加することができる。添加の順序は変えることができる。
【0086】
選択的に、前記ポリエチレン樹脂は熱可塑性樹脂と混合する前に予めブレンドすることができる。1つの態様において、前記第1、第2、および第3ポリエチレン樹脂は溶融混合し、引き続き熱可塑性加硫化物に添加することができる。溶融混合の後のこの引き続く添加は、液体(溶融)または個体状態で行い得る。選択的に、前記第1、第2、および第3ポリエチレン樹脂の固体形態(例えば、ペレット)を予めブレンドまたは混合することができる。これらの予備混合ペレットまたは粉体の引き続く添加は、固体または溶融状態で行うことができる。
【0087】
ポリエチレン樹脂のブレンドが液体または固体状態において熱可塑性加硫化物に添加される場合、前記樹脂が添加される温度は、150℃より高く、好ましくは約160℃〜200℃、より好ましくは約170℃〜約190℃である。前記ポリエチレン樹脂の液体または溶融添加は様々な技術を用いて行うことができる。例えば、溶融状態においては単一または2スクリュー押出機をポリエチレン樹脂(個々の樹脂、またはそのブレンド)の添加のために用いることができる。1つの態様において、前記熱可塑性加硫化物が連続押出工程で調製される場合、加硫化ゾーンの下流にある側方押出機を溶融ポリエチレン樹脂の添加のために用いることができる。
【0088】
前記ポリエチレン樹脂ブレンド(個々の樹脂、またはそのブレンド)が固体状態で添加される場合のこれらの態様において、様々な技術を固体ポリエチレン樹脂を前記熱可塑性加硫化物に添加するために用いることができる。例えば、詰込みフィーダー(crammer feeder)またはペレット・フィーダーを用いることができる。
【0089】
もう1つの態様において、前記ポリエチレン樹脂ブレンド(個々の樹脂、またはそのブレンド)を、ゴムの動的加硫化の前に前記熱可塑性加硫化物を調製するために用いられる成分に添加し、またはこの成分と混合することができる。言い換えれば、動的加硫化はプロピレンのポリマーまたはコポリマーばかりでなく、前記ポリエチレン樹脂ブレンドでも起こる。前記ポリエチレン樹脂ブレンドが動的加硫化の間に存在する場合のこれらの態様において、前記ゴムは好ましくはエチレン−プロピレン−5−ビニル−2−ノルボルネンを含み、前記硬化剤は好ましくはケイ素含有硬化剤である。
【0090】
1つ又は複数の態様において、前記スリップ・コート層は、比較的低い摩擦係数、改善した表面外観、改善した擦り切れ耐性、改善したUV安定性、および圧力白化(stress whitening)に対する低反応性を含む多くの有利な特性を有することに特徴を有する。
【0091】
特定の態様において、前記スリップ・コート層は、ASTM D1894−99に従って、室温のガラスに対し0.20未満、より有利には0.19未満、さらに有利には0.18未満の動的摩擦係数を示すという有利な特徴を有する。
【0092】
同様に特定の態様において、前記スリップ・コート層は、ASTM D1894−99に従って、室温のガラスに対し0.20未満、より有利には0.19未満、さらに有利には0.18未満の静的摩擦係数を示すという有利な特徴を有する。
【0093】
なおさらに、特定の態様において、前記スリップ・コート層は、約30〜約60、より有利には約35〜約50、さらに有利には約42〜約47のショアD硬度を示すという有利な特徴を有する。
【0094】
また、特定の態様において、前記スリップ・コート層は、比較的低い押出表面率(ESR)で表される改善した表面外観を示すという有利な特徴を有する。ESRは、エラル(Ellul)他著、「天然ゴムおよびEPDM熱可塑性エラストマーの化学表面処理:摩擦および接着への影響」(ラバー・ケミストリー・アンド・テクノロジー、第67巻、第4号、582頁、1994年)に記述されるように分析することができる。好ましくは、本発明における特定の態様のスリップ・コートは、120未満、より有利には80未満、さらに有利には50未満のESR値(Ra)を有することに特徴づけられる。
【0095】
基板または基層とも呼ぶことができる前記第2層は、環境温度よりも低い、好ましくは0℃未満、より好ましくは−20℃未満、およびさらに好ましくは−65℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することに特徴づけられる1以上のポリマーを含む組成物から好ましくは調製される。好ましい態様において、これらの組成物は1または複数のゴム状ポリマーを含むことができる。他の態様において、これらの組成物は柔らかな又はゴム状の部分(すなわち、約0℃未満のガラス転移温度を有する部分)を含む1または複数のブロック・コポリマーを含むことができる。他の態様において、これらの組成物は熱可塑性ポリマーとゴム状ポリマーのブレンドを含むことができる。
【0096】
有用なゴム状ポリマーには天然または合成のゴム状ポリマーが含まれる。合成ゴム状ポリマーには、1または複数の共役ジエンのホモポリマー、および共役ジエンおよびスチレンのようなビニル芳香族のコポリマーが含まれる。他の有用なゴム状コポリマーには、エチレン、プロピレン、およびジエン・モノマーのコポリマーが含まれる。このコポリマーには、ブロック・コポリマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック・コポリマー(S−B−S)およびその水素化誘導体)ばかりでなく、ランダム・コポリマー(例えば、スチレン−ブタジエン・ゴム)も含まれる。有用なポリマー性ブレンドには、硬化(完全または部分的)ゴムおよび熱可塑性樹脂のブレンドである熱可塑性加硫化物が含まれる。1つの態様において、この熱可塑性加硫化物には硬化したエチレン・コポリマー、および連続ポリα−オレフィン(例えば、ポリプロピレン)相内に分散したジエン・モノマーが含まれる。他の態様において、前記ブレンドはポリα−オレフィン(例えば、ポリプロピレン)およびブロック・コポリマー(例えば、S−B−SまたはS−E/B−S)を含む。これらは、架橋可能な/架橋したスチレン性ブロック・コポリマーを含むポリオレフィンのブレンドを含むことができる。
【0097】
本発明の積層体は様々な技術を用いて調製することができる。1つの態様において、前記スリップ・コートおよび前記基板が完全な積層体を形成するために共押出される。他の態様において、前記基板層が成型または押出しを含む様々な技術を用いて初めに調製され、次に前記スリップ・コートがその基板上に引き続いて押出される。
【0098】
本発明は第1層および第2層が特定の厚さのものに特に限定されないが、好ましい態様における前記スリップ・コート層の厚さは、約50μm〜約150μm、より好ましくは約75μm〜約125μm、さらに好ましくは約85μm〜約115μmである。前記基板層の厚さは積層体の構成またはガラスの通過する溝に大きく依存して変えることができる。
【0099】
図1は天候シールの構成の1つの態様を示している。天候シール10は自動車ドア(図示せず)の上部12のU形状溝14内に配置されている。天候シール10は、本体11およびスリップ・コート(slip-coating)21を含む。本体11の両側15および16は、上部13から下向きに伸びている。この上部13は、ガラス20がその上昇した位置にある時にバンパー部13となるため、バンパー部と呼ぶこともできる。両側部15および16の下端部17および18は、好ましくは、その外部面(中心垂直軸に対して)が溝部14の内部面に対してきちんと合うような形状になっている。各側部15および16それぞれの下端部17および18の内側部は、ガラス20に接触し、その間にこれをしっかり留めることができる垂直突出部19、19’を形成している。好ましい態様において、スリップ・コート21および21Nは、各側部15および16の下端部17および18を蔽っている。また、スリップ・コート22は、バンパー部13の部分、好ましくはガラス20がバンパー部13に当接する部分を蔽っている。
【0100】
図2は、天候シールの構成の他の態様を示している。窓ガラス20は天候シール31および32の間に保持されている。これらの天候シールは、自動車のドアパネル(図示せず)の部分40の水平な下壁41および42内部に配置されている。そのドアパネルに挿入された各天候シールは、他方の天候シールのF字形状の鏡像となっており、上方ガラス当接突出部35、36を端部とする垂直部33、34をそれぞれ有する。また、各天候シールは、突出部35、36の下方に位置する下方ガラス当接突出部37、38をそれぞれ有する。上方突出部35、36の下面はそれぞれスリップ・コート45および46を備え、下方突出部37および38の下面はそれぞれスリップ・コート47および48を備えている。前記ドアパネル40は、好ましくは、外部ドアパネルの壁42および43それぞれの周りにぴたりはまった補助天候シール50にしっかり保持されている。また、上方ガラス突出部36の低部36’は補助天候シール50の上にぴったり載っており、天候シール32を支持している。この天候シール32を支持するために、上方ガラス当接部35の低部35’はドアパネル40の内壁44の上にぴったり載っている。
【0101】
上部天候シールのもう1つの態様は図3に示されている。この天候シール60は同様に、基板61、および基板61の下部62を覆うスリップ・コート65を含む。基板61は、自動車ドア(図示せず)の部分81に取り付けられたU字溝体82内部にぴったり保持されるように設けられる。基板61は、さらに貫通路63および64を含む。これらの通路により、基板61はガラス窓70の上端によって圧迫できる。この天候シール60は溝を通らないガラス窓70の縁をシールするのに役に立つ。その代わり、ガラス窓70は、単にそれがその上昇位置にある時に天候シール60の上部62と合わさるだけである。
【0102】
本発明の実施を説明するために、以下の実施例が準備され、試験された。しかしながら、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。以下の特許請求の範囲は本発明を定義するのに役立つ。
【実施例】
【0103】
<試料1〜5>
ポリマー性積層体用のスリップ・コートとして先行技術で用いられてきた比較ポリマー性ブレンドを試料1〜3のように調製した。特に試料1は、約22重量%の高分子量ポリエチレン樹脂、約56重量%の中分子量ポリエチレン樹脂、および約22重量%の低分子量ポリエチレン樹脂をブレンドすることにより調製した。このブレンドは、また約7重量%のカーボンブラック/ポリエチレン濃縮物も含む。この比較例は米国特許第5,110,685号で開示されたものに類似している。
【0104】
前記高分子量ポリエチレン樹脂は、商品名HDTM7745(エクソンモービル社)のものを入手した。これは、約2.81dl/gの実質粘度、約125,000の重量平均分子量、および約0.045dg/分の溶融指標を有することで特徴づけられた。前記中分子量ポリエチレン樹脂は、商品名HDTM6706(エクソンモービル社)のものを入手した。これは、約1.20dl/gの実質粘度、約60,000の重量平均分子量、および約6.7dg/分の溶融指標を有することで特徴づけられた。前記低分子量ポリエチレン樹脂は、商品名HDTM6733(エクソンモービル社)のものを入手した。これは、約0.78dl/gの実質粘度、約40,000の重量平均分子量、および約33dg/分の溶融指標を有することで特徴づけられた。この実験部分を通して記述される同様の性質のように、これらの性質は以下のように決定された。実質粘度はASTM D1601およびD4020にしたがって決定され、これに用いられた試料は150℃のデカヒドロナフタレンに溶解し、ウッベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて135℃において各3試料により還流時間が測定された。重量平均分子量は、自動、加熱、完全独立式ウォーターズ社150C GPC装置を用いて、ポリスチレン標準でGPC分析により決定した。溶融指標は、190℃、2.1kg荷重におけるASTM D1238にしたがって決定した。前記カーボンブラック/ポリエチレン濃縮物は、約40重量%のカーボンブラック、および40,000g/モルの数平均分子量および約0.92g/cc未満の密度を特徴とする約60重量%のポリエチレンを含んでいた。このカーボンブラック/ポリエチレン濃縮物は、商品名AMPACETTM19470(アンパセット社)のものを入手した。
【0105】
試料2は、エチレン−プロピレン・ゴムを添加したことを除いて試料1と同様であった。具体的には、この試料は約30重量%のエチレン−プロピレン・ゴム、約7重量%のカーボンブラック/ポリエチレン濃縮物、および約63重量%のポリエチレン・ブレンドを含んだ。このポリエチレン・ブレンドは、ポリエチレン・ブレンドの総量に基づいて約32重量%の高分子量ポリエチレン、約52重量%の中分子量ポリエチレン、および約16重量%の低分子量ポリエチレンを含んだ。これらの高、中、および低分子量ポリエチレン樹脂は試料1で用いられたものと同一であった。試料2のポリマー性ブレンドは米国特許第5,110,685号で開示されたものと同様であった。
【0106】
試料3は、米国特許第6,146,739号に開示されたものと同様のポリマー性ブレンドを含んだ。具体的には、このブレンドは約61重量%のポリエチレン・ブレンド、約2重量%アミド滑り助剤、約2重量%のシリコーン滑り助剤、約7重量%のカーボンブラック/ポリエチレン濃縮物、および約28重量%の熱可塑性加硫化物を含んだ。
【0107】
このポリエチレン・ブレンドは、ポリエチレン・ブレンドの総量に基づいて約31重量%の高分子量ポリエチレン樹脂、約47重量%の中分子量ポリエチレン樹脂、約12重量%の低分子量ポリエチレン樹脂、および約10重量%の超高分子量ポリエチレン樹脂を含んだ。これらの高、中、および低分子量ポリエチレン樹脂は試料1および2で用いられたものと同一であった。前記超高分子量ポリエチレン樹脂は、約12.36dl/gの実質粘度および約1,600,000g/モルの重量平均分子量を有することにより特徴づけられた。
【0108】
前記アミド滑り助剤は、約98重量%のエルカミド(z−13−ドコセナミド)を含む商品名KEMAMIDETMEのものを入手して用いた。前記シリコーン滑り助剤は、約30〜約60重量%のオクテン/エチレン・ポリマー内に分散したシリコーンを含む商品名MBTM50−313ものを入手した。
【0109】
前記熱可塑性加硫化剤は、熱可塑性樹脂を含むブレンド内のゴムを動的加硫化により調製した。この動的加硫化操作は米国特許第4,594,390号に記述されたものと同様であった。この処方には、190重量部の油伸展オレフィン性エラストマー性コポリマー(この量には100重量部のゴムおよび90重量部の油が含まれる)、64重量部の熱可塑性ポリプロピレン・ホモポリマー、174全重量部のパラフィン油(ゴムを含む90重量部を含む135重量部)、12重量部の粘土、5.3重量部のフェノール性樹脂、2重量部の酸化亜鉛、22.6重量部のカーボンブラック/ポリプロピレン濃縮物(40重量%のカーボンブラックおよび60重量%のポリプロピレン)、1.26重量部の塩化第一スズを含んだ。前記エラストマー性コポリマーは、商品名VISTALONTM4779(エクソンモービル社)のポリ(エチレン−co−ポリプレン−co−5−エチリデン−2−ノルボルネン)であった。前記熱可塑性ポリプロピレン・ホモポリマーは、商品名ADSYL5C30F(バーゼル社)、前記フェノール性樹脂は、商品名SP−1045、前記カーボンブラック/ポリプロピレン・ブレンドは商品名Ampacet49974TM(アンパセット社)のものであった。
【0110】
これらの比較例は、その組成物の押出物について行われた試験から観察された物理特性および性能特性とともに表1に示される。
【0111】
試料4および5は本発明の開示にしたがって調製された。具体的には、これらのポリマー性ブレンドは、高分子量ポリエチレン樹脂、中分子量ポリエチレン樹脂、および低分子量ポリエチレン樹脂とともに、約30重量%の熱可塑性加硫化物を含んだ。試料4および5で用いられた高、中、および低分子量ポリエチレン樹脂は、試料1〜3で用いられたものと同一であった。前記各ポリマー性ブレンドは、また約7重量%の試料1〜3で用いられたカーボンブラック/ポリエチレン濃縮物を含んだ。試料4は、試料1〜3で用いられた、約2重量%のアミド滑り助剤および約2重量%のシリコーン滑り助剤を含んだ。したがって、試料4は約59重量%のポリエチレン・ブレンドを含み、試料5は約63重量%のポリエチレン・ブレンドを含んだ。
【0112】
試料4および5で用いられた熱可塑性加硫化剤は、試料3で用いられた熱可塑性加硫化剤と同一であった。この特定の熱可塑性加硫化剤は、この実験部分のTPVIとして示されている。
【0113】
【表1】

【0114】
ショア硬度(Shore hardness)は、ASTM D−2240と同様なISO868にしたがって決定した。最大引張強度(ultimate tensile strength)、最大伸張(ultimate elongation)、および100%係数は、ASTM D−412と同様なISO527に従ってインストロン社の試験装置を用い23ECで決定した。前記押出表面粗さ(ESR)は、エラル(Ellul)他著、「天然ゴムおよびEPDM熱可塑性エラストマーの化学表面処理:摩擦および接着への影響」(ラバー・ケミストリー・アンド・テクノロジー、第67巻、第4号、582頁、1994年)に記述されるように決定した。LCR粘度は、204℃における1,200s-1の30:1長さ/直径でDyniscoTMキャピラリー粘度計を用いて測定する。静的COFおよび動的COFは、ASTM D1894−99に実質的に従ってトウィング−アルバート(Thwing-Albert)社の摩擦/ピールテスター225.1型を用いて決定した。
【0115】
表Iのデータは、3つの異なるポリエチレンのポリマー性ブレンドに熱可塑性加硫化物を添加するとブレンドが柔軟化することを示しており、これは天候シールとしての使用に利点がある。この柔軟化は摩擦係数への悪い影響なしに起こる。注意すべきことに、試料2におけるエチレン−プロピレン・ゴムの添加によりポリエチレン・ブレンドが柔軟化したが(実施例1と比較して)、試料4と比較して摩擦係数が有害に上昇した。また、表Iのデータは、超高分子量ポリエチレン樹脂が含まれないと表面外観が良好になることを示している。すなわち、試料3および5を比較すると、両試料の摩擦係数は同等なものの、試料3の押出表面率が試料5よりも顕著に高くなっている。
【0116】
<試料6〜12>
さらに7つのポリマー性ブレンドを調製し、これらのブレンドの押出プロフィールを様々な物理および性能特性について試験した。表IIに示すように、様々なポリエチレン成分(例えば、高、中、および低分子量ポリエチレン樹脂)の比率を変化させた。ブレンドにおける他の全ての構成は一定にした。各ポリエチレン樹脂について表IIで与えられた値は、組成物のポリエチレン・ブレンド成分の重量%に基づいている。全ポリマー性ブレンドには、約62重量%のポリエチレン・ブレンド、7重量%のカーボンブラック/ポリエチレン濃縮物、および27重量%の熱可塑性加硫化物が含まれた。前記カーボンブラック/ポリエチレン濃縮物は、試料1〜5で用いたものと同一であった。TPVIIと命名される熱可塑性加硫化物は、ケイ素−ヒドリド硬化系を用いて硬化された。具体的には、この処方は、200重量%の油伸展オレフィン性エラストマー性コポリマー(この量には100重量部のゴムおよび100重量部の油が含まれる)、50重量部の熱可塑性ポリプロピレン・ホモポリマー、168全重量部のパラフィン油(ゴムを含む100重量部を含む160重量部)、42重量部の粘土、2重量部の水素化ケイ素、0.004017重量部の白金触媒、1重量部のステアリン酸カルシウム、および0.5重量部の抗酸化剤を含んだ。前記エラストマー性コポリマーは、商品名VISTALONTM1696(エクソンモービル社)のポリ(エチレン−co−ポリプレン−co−5−ビニル−2−ノルボルネン)であった。前記熱可塑性ポリプロピレン・ホモポリマーは、約0.6〜1.0の溶融指標を特徴とする、商品名EQUISTARTM51S07A、前記水素化ケイ素は、商品名2−5084(ダウ社)、前記白金触媒は商品名UCT300触媒(ユナイティド・ケミカル・テクノロジーズ社)、前記抗酸化剤は商品名IRGANOXTM1010のものであった。
【0117】
【表2】

【0118】
表IIにおけるデータは、前記高、中、および低分子量樹脂が本発明の開示に沿った量で用いられると、有利な機械的特性とともに有利な摩擦係数を有する技術的に有用なスリップ・コートを得ることができることを示している。
【0119】
本発明の範囲および思想を逸脱しない様々な修飾および変更が当業者には明らかとなる。本発明は、本発明において示される具体的な態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】自動車ドアの窓上部に用いられ、窓ガラスの上部がその内部に密閉して保持されているような共押出し天候シールを示す垂直方向の断面図を示す図である。
【図2】自動車ドアの窓下部に用いられ、窓ガラスが上昇または下降するときに窓ガラスの下部がその内部に密閉して保持されような共押出し天候シールを示す垂直方向の断面図を示す図である。
【図3】自動車ドアの窓両側に用いられ、窓ガラスの両側が密閉して保持され、往復するように設けたもう1つの共押出し天候シールを示す垂直方向の断面図を示す図である。
【符号の説明】
【0121】
10 天候シール
11 本体
12、13 自動車ドアの上部
14 U字型溝部
15、16 本体11の両側部
17、18 両側部(15および16)の下端部
20 窓ガラス
21、22 スリップ・コート(slip-coating)
31、32 天候シール
33、34 垂直部
35、36 上方突出部
35’ 突出端(35)の低部
36’ 突出部(36)の低部
37、38 下方ガラス当接突出部
40 自動車のドアパネルの部分
41、42 自動車のドアパネルの部分(40)の水平な下壁
42、43 外部ドアパネルの壁
44 ドアパネル(40)の内壁
45、46 スリップ・コート
47、48 スリップ・コート
50 補助天候シール
60 天候シール
61 基板
62 基板(61)の下部
63、64 貫通路
70 ガラス窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基板、および
(B)該基板の少なくとも一部分を覆う滑り層であって、実質的に
(i)ポリエチレン・ブレンドであって、
(a)前記ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%の、110,000〜約140,000の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第1ポリエチレン樹脂、
(b)前記ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%の、50,000〜約109,999の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第2ポリエチレン樹脂、および
(c)前記ブレンドの総重量に基づいて約0〜約40重量%の、20,000〜49,999の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第3ポリエチレン樹脂、
を含み、但し、前記ブレンドの総重量に基づいて60重量%以上の混合された前記第1ポリエチレン樹脂および前記第2ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン・ブレンド、
(ii)前記ポリエチレン・ブレンドの100重量部あたり、約2.5〜約15重量部のプロピレン・モノマーから誘導されるプロピレン単位を有するプロピレンのポリマーまたはコポリマー、および
(iii)前記ポリエチレン・ブレンドの100重量部あたり、約4.5〜約20重量部の動的加硫化ゴム、
からなる滑り層、
を含むポリマー性積層体。
【請求項2】
前記ポリエチレン・ブレンドが、
(a)約10〜約60重量%の前記第1ポリエチレン樹脂、
(b)約10〜約80重量%の前記第2ポリエチレン樹脂、および
(c)約3〜約30重量%の前記第3ポリエチレン樹脂、
を含み、ここで重量%が前記ポリエチレン・ブレンドの総重量に基づくことを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項3】
前記ポリエチレン・ブレンドが、
(a)約15〜約50重量%の前記第1ポリエチレン樹脂、
(b)約15〜約70重量%の前記第2ポリエチレン樹脂、および
(c)約5〜約25重量%の前記第3ポリエチレン樹脂、
を含み、ここで重量%が前記ポリエチレン・ブレンドの総重量に基づくことを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項4】
前記滑り層が実質的に、ポリエチレン・ブレンド100重量部に基づいて、
(i)前記ポリエチレン・ブレンド、
(ii)約4〜約12重量部の前記プロピレンのポリマーまたはコポリマー、
(iii)約6〜約18重量部の前記動的加硫化ゴム、
(iv)0〜約30重量部の重点剤、
(v)0〜約20重量部の滑り助剤、
(vi)0〜約20重量部の油、
(vii)0〜約10重量部の重合性加工添加剤、
(viii)0〜約10重量部の安定性増強剤、および
(ix)0〜10重量部の低密度ポリエチレン、
からなることを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項5】
前記滑り層が実質的に、ポリエチレン・ブレンド100重量部に基づいて、
(i)前記ポリエチレン・ブレンド、
(ii)約6〜約10重量部の前記プロピレンのポリマーまたはコポリマー、
(iii)約8〜約16重量部の前記動的加硫化ゴム、
(iv)約1〜約20重量部の重点剤、
(v)約1〜約15重量部の滑り助剤、
(vi)約2〜約18重量部の油、
(vii)約0.5〜約7重量部の重合性加工添加剤、
(viii)約0.1〜約5重量部の安定性増強剤、および
(ix)0.1〜7重量部の低密度ポリエチレン、
からなることを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項6】
前記第1ポリエチレン樹脂が2.00〜5.00dl/gの実質粘度を有し、前記第2ポリエチレン樹脂が1.00〜1,99dl/gの実質粘度を有し、前記第3ポリエチレン樹脂が約0.10〜0.99dl/gの実質粘度を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項7】
前記第1ポリエチレン樹脂が2.20〜4.50dl/gの実質粘度を有し、前記第2ポリエチレン樹脂が1.20〜1,90dl/gの実質粘度を有し、前記第3ポリエチレン樹脂が約0.40〜0.95dl/gの実質粘度を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項8】
前記第1ポリエチレン樹脂がASTM D−1238に従って2.16kg荷重で1.0〜約12dg/分の溶融指標を有し、前記第2ポリエチレン樹脂がASTM D−1238に従って2.16kg荷重で1.1〜14dg/分の溶融指標を有し、前記第3ポリエチレン樹脂がASTM D−1238に従って2.16kg荷重で約15〜50dg/分の溶融指標を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項9】
前記第1ポリエチレン樹脂が約0.93g/ccより大きな密度を有し、前記第2ポリエチレン樹脂が約0.93g/ccより大きな密度を有し、前記第3ポリエチレン樹脂が約0.93g/ccより大きな密度を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項10】
前記可塑性樹脂が結晶または結晶性のポリプロピレンであり、前記動的加硫化ゴムがエチレン、プロピレン、および1種以上のジエンを含むことを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項11】
前記熱滑り助剤が、シロキサン・ポリマー類、脂肪酸類、脂肪酸トリグリセリド類、脂肪酸アミド類、エステル類、フルオロポリマー類、グラファイト、モリブデン、シリカ、ボロンニトリド、炭化ケイ素、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項12】
前記動的加硫化ゴムが粒子の形態であり、この粒子の50%以上が約5ミクロン未満の平均直径を有し、このゴムがその15重量%以下が抽出可能な硬化度を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー性積層体。
【請求項13】
前記ジエンが5−エチリデン−2−ノルボルネンを含むことを特徴とする請求項10に記載のポリマー性積層体。
【請求項14】
前記ジエンが5−ビニル−2−ノルボルネンを含むことを特徴とする請求項10に記載のポリマー性積層体。
【請求項15】
前記ゴムがケイ素含有硬化剤により動的加硫化されることを特徴とする請求項14に記載のポリマー性積層体。
【請求項16】
請求項1のポリマー性積層体を含む天候シール。
【請求項17】
積層体を製造するプロセスであって、
(I)基板を形成する熱加工可能な組成物を提供する工程、
(II)スリップ・コートを形成するための熱加工可能な組成物を調製する工程であって、
(a)熱可塑性加硫化物を形成するために、ゴムおよびプロピレンのポリマーまたはコポリマーを含むブレンド内の該ゴムを動的加硫化する工程、および
(b)前記ゴムを動的加硫化する工程後、前記熱可塑性加硫化物にポリエチレン・ブレンドを添加する工程であって、該ポリエチレン・ブレンドが、実質的に
(i)前記ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%の、110,000〜約140,000の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第1ポリエチレン樹脂、
(ii)前記ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%の、50,000〜約109,999の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第2ポリエチレン樹脂、および
(iii)前記ブレンドの総重量に基づいて約0〜約40重量%の、20,000〜49,999の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第3ポリエチレン樹脂、
からなり、前記ポリエチレン・ブレンドが、前記ブレンドの総重量に基づいて60重量%以上の混合された前記第1ポリエチレン樹脂および前記第2ポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする工程、および
(III)前記基板を形成用の組成物および前記スリップ・コート形成用の組成物を共押出して、基板および該基板の少なくとも一部分を覆うスリップ・コートを含む積層体を形成する工程、
を含む積層体を製造するプロセス。
【請求項18】
実質的に
(i)ポリエチレン・ブレンドであって、
(a)前記ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%の、110,000〜約140,000の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第1ポリエチレン樹脂、
(b)前記ブレンドの総重量に基づいて約3〜約97重量%の、50,000〜約109,999の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第2ポリエチレン樹脂、および
(c)前記ブレンドの総重量に基づいて約0〜約40重量%の、20,000〜49,999の重量平均分子量および約12未満のポリ分散性を有する第3ポリエチレン樹脂、
を含み、かつ、前記第1ポリエチレン樹脂および前記第2ポリエチレン樹脂を、その合計量において、前記ブレンドの総重量に基づいて60重量%以上含むことを特徴とする前記ブレンド、および
(ii)プロピレンのポリマーまたはコポリマー、および
(iii)動的加硫化ゴム、
からなるスリップ・コート用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−513251(P2008−513251A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532365(P2007−532365)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/031606
【国際公開番号】WO2006/033819
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(591162239)アドバンスド エラストマー システムズ,エル.ピー. (14)
【住所又は居所原語表記】388 South Main Street,Akron,Ohio 44311−1059,United Stetes of America
【Fターム(参考)】