説明

セラミック配線板の製造方法

【課題】 基板にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線を形成し、この配線の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、配線原料中の金属粉のサイズを大きくすることなく、配線上のCuメッキのアンカー効果を大きくする。
【解決手段】 基板10にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線15、16を形成し、この配線15、16の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、配線15、16の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉Wと無機材料粉Mとが混合された混合材料を用意し、この混合材料を基板10に配設した後、混合材料のうち無機材料粉Mをエッチングにより除去することにより、残った金属粉Wにより配線15、16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線を形成し、この配線の表面にCuメッキを施してなるセラミック配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線を形成し、この配線の表面にCuメッキを施してなるセラミック配線板においては、タングステンもしくはモリブデンを主成分とするペーストを印刷により基板に塗布し、これを焼成して配線とした後、その上にCuメッキを施す。
【0003】
ここで、タングステンもしくはモリブデンとCuメッキとは拡散接合しないため、機械的な強度すなわちアンカー効果を向上させる必要がある。そのためには、配線の表面を粗くする必要がある。
【0004】
配線表面を粗くしておかないと、Cuメッキが膨れ、そこにボンディングが行われた場合、Cuメッキがはがれたりする。また、Cuメッキ上に、はんだ付けを行った場合、はんだ付け後は部品の応力でCuメッキがはがれたりする。
【0005】
このようなことから、従来では、配線材料に粒径の大きなタングステン粉(たとえば粒径φ4μm程度)をベース材としたものを用い、それによって配線表面を粗くするようにしたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−66537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように配線材料の金属粉のサイズを大きくした場合、配線材料は、粗いメッシュを用いたエマルジョンマスクを用いて印刷を行うことになるため、印刷の解像度が低下し、微細配線の形成が困難である。
【0007】
また、配線材料の金属粉(メタライズ)のサイズを大きくした場合には、溶剤を乾燥させたドライ状態における緻密性が悪くなるため、焼成前や焼成中における膜強度が弱くなり、ハンドリング(取り扱い)時や焼成収縮中に、配線の欠け(メタライズ欠け)が発生する。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、基板にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線を形成し、この配線の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、配線原料中の金属粉のサイズを大きくすることなく、配線上のCuメッキのアンカー効果を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基板(10)にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線(15、16)を形成し、この配線(15、16)の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、配線(15、16)の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と無機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を基板(10)に配設した後、混合材料のうち無機材料粉をエッチングにより除去することにより、残った金属粉により配線(15、16)を形成するようにしたことを特徴としている。
【0010】
それによれば、無機材料粉のエッチングによって無機材料粉の存在していた部位は凹部(M1)となり、残った金属粉から構成される配線(15、16)の表面は凹凸形状となる。そして、その配線(15、16)の上にCuメッキ(150)が施されるため、このCuメッキ(150)のアンカー効果が大きくなり、密着性が向上する。
【0011】
よって、本発明によれば、基板(10)にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線(15、16)を形成し、この配線(15、16)の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、配線原料中の金属粉のサイズを大きくすることなく、配線(15、16)上のCuメッキ(150)のアンカー効果を大きくすることができる。
【0012】
ここで、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載のセラミック配線板の製造方法においては、混合材料は印刷法により基板(10)に配設されるようにできる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1または請求項2に記載のセラミック配線板の製造方法においては、金属粉および無機材料粉の平均粒径は3μm以下であることが好ましい。これは、混合材料の印刷性などを考慮したものである。
【0014】
また、請求項4、請求項5に記載の発明のように、請求項1に記載の発明の効果を適切に実現するためには、金属粉と無機材料粉との総容量を100vol%としたとき、無機材料粉の割合は、10vol%以上60vol%以下であることが好ましく、より好ましくは、無機材料粉の割合は、30vol%以上60vol%以下である。
【0015】
請求項6に記載の発明では、基板(10)にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線(15、16)を形成し、この配線(15、16)の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、配線(15、16)の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と有機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を基板(10)に配設した後、混合材料のうち有機材料粉を加熱して除去することにより、残った金属粉により配線(15、16)を形成するようにしたことを特徴としている。
【0016】
それによれば、有機材料粉の加熱除去によって有機材料粉の存在していた部位は凹部(M1)となり、残った金属粉から構成される配線(15、16)の表面は凹凸形状となる。そして、その配線(15、16)の上にCuメッキ(150)が施されるため、このCuメッキ(150)のアンカー効果が大きく密着性が向上する。
【0017】
よって、本発明によれば、基板(10)にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線(15、16)を形成し、この配線(15、16)の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、配線原料中の金属粉のサイズを大きくすることなく、配線(15、16)上のCuメッキ(150)のアンカー効果を大きくすることができる。
【0018】
ここで、請求項7に記載の発明のように、請求項6に記載のセラミック配線板の製造方法においては、混合材料は印刷法により基板(10)に配設されるようにできる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明のように、請求項6または請求項7に記載のセラミック配線板の製造方法においては、金属粉および有機材料粉の平均粒径は3μm以下であることが好ましい。これは、混合材料の印刷性などを考慮したものである。
【0020】
また、請求項9、請求項10に記載の発明のように、請求項6に記載の発明の効果を適切に実現するためには、金属粉と有機材料粉との総容量を100vol%としたとき、有機材料粉の割合は、10vol%以上60vol%以下であることが好ましく、より好ましくは、有機材料粉の割合は、30vol%以上60vol%以下である。
【0021】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るセラミック配線板100の単体状態すなわち実装工程に施される前の状態の概略断面構成を示す図であり、図2は、この配線板100にボンディングワイヤ30、31を接続し、各種部品20、21、22、23を実装した状態を示す概略断面図である。
【0024】
また、図3は、図1に示される配線板100におけるタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線としての各表層ランド15、16の拡大断面図である。
【0025】
[基板の構成等]
配線板100は、基板10を有するが、本例では基板10は積層基板10であり、この積層基板10は、個々についてその表面および内部に配線層が形成された複数のセラミック層11、12、13、14、を積層して形成されたものである。
【0026】
これらセラミック層11〜14の積層体である積層基板10の表面(図1中の上面)、裏面(図1中の下面)には、それぞれ、表面ランド15、裏面ランド16が形成されており、これら表面および裏面ランド15、16は表層ランド15、16として構成されている。
【0027】
積層基板10の内部には、各セラミック層に形成されたビアホール17や各セラミック層の間に形成された内部導体層18により、内層配線17、18が形成されている。そして、上記表面ランド15と裏面ランド16とは、内層配線17、18を介して電気的に接続されている。
【0028】
また、図2に示されるように、積層基板10の表面、裏面には、各表層ランド15、16に対して各種の部品20、21、22、23やボンディングワイヤ30、31が接続されている。
【0029】
図2に示される例では、積層基板10の表面側において、表面ランド15には、はんだ40を介してフリップチップ20およびコンデンサ21が接続され、また、導電性接着剤41を介してICチップ22が接続されている。なお、フリップチップ20と基板100との間にはアンダーフィル材42が充填されている。
【0030】
さらに、表面ランド15には、ICチップ22から延びる金からなる金ボンディングワイヤ30が接続されるとともに、外部との接続を行うためのアルミニウムからなるAlボンディングワイヤ31が接続されている。
【0031】
ここで、表面ランド15のうち、金ボンディングワイヤ30が接続されるものを金ワイヤ接続ランド15a、Alボンディングワイヤ31が接続されるものをAlワイヤ接続ランド15b、はんだ40を介した接続が行われるものをはんだランド15c、導電性接着剤41を介した接続が行われるものを導電性接着剤ランド15dとする。
【0032】
また、図2に示される例では、積層基板10の裏面側において、裏面ランド16には、LaB6、SnO2、CuNiなどからなる厚膜抵抗体23が接続されている。そして、この厚膜抵抗体23は、保護ガラス43にて被覆され、さらにその上をエポキシ樹脂などからなる保護樹脂44にて被覆されている。
【0033】
ここにおいて、本実施形態では、セラミック配線板100における金ワイヤ接続ランド15a、Alワイヤ接続ランド15b、はんだランド15c、導電性接着剤ランド15dおよび裏面ランド16は、タングステン(W)もしくはモリブデン(Mo)からなる層である。
【0034】
本例では、これら各表層ランド15(15a〜15d)、16は、タングステン(W)層からなる。そして、各表層ランド15、16の上には、銅メッキ層150が施され、さらに表面ランド15においてはその上に金メッキ層151が施されている。
【0035】
なお、本例では、裏面ランド16における銅メッキ層150の上には金メッキ層は無いものであり、図3とは異なるが、裏面ランド16には銅メッキ層150が積層されているだけである。
【0036】
ここで、金メッキ層151は、酸化防止ができる程度に薄く、たとえば0.05μm形成する。なお、金メッキ層151は、図1、図2では省略してある。
【0037】
詳細は後述するが、配線板100におけるこれら配線としての各表層ランド15、16は、配線15、16の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と無機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を基板10に配設した後、混合材料のうち無機材料粉をエッチングにより除去することにより、残った金属粉により形成されたものである。
【0038】
[基板の製造方法等]
次に、限定するものではないが、上記図1に示されるセラミック配線板100の製造方法および上記図2に示される実装構造の組み付け方法の一具体例について図4〜図9を参照して説明する。
【0039】
図4は、本実施形態の配線板100の製造方法および実装構造の組み付け方法の工程フローを示す図であり、図5は、図4に続く工程フローを示す図である。
【0040】
また、図6は、本製造方法における配線板100の表層ランド15、16の製造工程を模式的に示す断面図、図7、図8、および図9は、上記各工程における途中状態のワークを示す概略断面図である。
【0041】
まず、セラミック層11〜14となるアルミナなどからなる各グリーンシートを用意し、このグリーンシートの所望の位置にパンチングすることにより、最終的に上記ビアホール17となる孔をあける。
【0042】
次に、この孔に対して、主にモリブデンからなる導体ペーストを印刷にて充填し乾燥させる。この導体ペーストは、最終的に上記ビアホール17における内層配線となるものである。
【0043】
次に、各グリーンシートの表面に、主にタングステンからなる導体ペーストをパターン印刷し、乾燥させる。この導体ペーストは、上記孔に充填された導体ペーストと導通するように印刷され、最終的に、上記内部導体層18や、表面ランド15および裏面ランド16を構成するタングステン層となるものである。
【0044】
ここにおいて、本実施形態では、表層ランド15、16すなわち表面ランド15および裏面ランド16は、配線15、16の原料として、タングステンからなる金属粉すなわちタングステン粉と無機材料粉とが混合された混合材料をアクリル系樹脂などのバインダに混合してなる導体ペーストを用いる。
【0045】
そして、この混合材料を基板10に配設した後、具体的には、この混合材料を含む導体ペーストを基板10の表層を形成するグリーンシートに印刷して形成し後述するように、各グリーンシートを積層して焼成した後、混合材料のうち無機材料粉をエッチングにより除去することにより、残ったタングステン粉により、表層ランド15、16を形成するようにしている。
【0046】
ここで、無機材料粉としては、タングステンとは固溶体を作りにくいものであり、且つ、1600℃程度の焼成において、蒸発しないものを採用することができる。
【0047】
好ましくは、固体状態を維持するものであり、少なくとも半溶融状態となっても、一部がタングステンの隙間や基板側へ移動したとしても、その体積の多くがその場に維持しているものを採用することができる。
【0048】
具体的に、無機材料粉としては、珪酸塩を主とするガラス材料(ホウ珪酸、ZnO、V25、ZrO2)や珪素(シリコン)などを採用することができる。また、上記エッチング材料としては、酸性フッ化アンモニウムやフッ化水素などをエッチング液として採用することができる。
【0049】
また、タングステン粉および無機材料粉の平均粒径は3μm以下であることが好ましい。これは、上述したように、印刷の解像度の低下を防止するという面から規定されるものである。なお、あまり小さいと取り扱い性に劣るため、当該平均粒径は0.5μm以上であることが好ましい。
【0050】
また、タングステン粉と無機材料粉との総容量を100vol%としたとき、無機材料粉の割合は、10vol%以上60vol%以下であることが好ましい。
【0051】
ただし、無機材料粉が少ないと、無機材料粉が除去されて形成される凹部が小さすぎてアンカー効果がさほど大きくならないため、より好ましくは、無機材料粉の割合は、30vol%以上60vol%以下であることが望ましい。
【0052】
また、無機材料粉の割合が60vol%以上になると、タングステン同士の焼結が減るため、できあがった配線15、16自体の強度低下につながるので、無機材料粉の割合は60vol%以下であることが望ましい。
【0053】
なお、本例では、表面ランド15および裏面ランド16は、配線15、16の原料として、タングステンからなる金属粉すなわちタングステン粉と無機材料粉とが混合された混合材料を用いるとしたが、タングステンをモリブデンに置き換えても同様の混合材料とすることができる。
【0054】
次に、このようにして孔開け加工され且つ各導体ペーストが形成された各グリーンシートを積層し、焼成する。
【0055】
具体的には、各グリーンシートを重ね合わせ、熱圧着を行い積層する。次に、この積層体を約1600℃、還元雰囲気にて焼成する。このとき、基板は約20%収縮する。また、各ペーストは各表層ランド15、16のタングステン層および内層配線17、18となる。こうして、図7(a)に示されるような積層基板10ができあがる。
【0056】
次に、図7(b)に示されるように、上記表面ランド15(15a、15b、15c、15d)および裏面ランド16となるタングステン層の表面に、無電解メッキまたは電気メッキなどにより、銅メッキ層150を形成する。
【0057】
ここにおいて、この銅メッキ工程においては、焼成された表面ランド15および裏面ランド16となるタングステン層に対して、当該タングステン層中に含まれる無機材料粉をエッチングにより除去する。それにより、残ったタングステン粉により表面ランド15および裏面ランド16が形成される。
【0058】
ここで、図6を参照して、表面ランド15および裏面ランド16の一連の形成方法および銅メッキ層150の形成方法の詳細について述べる。
【0059】
上述したように、表層ランド15、16すなわち表面ランド15および裏面ランド16は、配線15、16の原料として、タングステンからなる金属粉すなわちタングステン粉と無機材料粉とが混合された混合材料をアクリル系樹脂などのバインダに混合してなる導体ペーストを用いる。
【0060】
そして、上記グリーンシートのパターン印刷・乾燥工程において、この導体ペーストを、上記グリーンシートにおける表層ランド15、16の形成部位に印刷する。この状態が図6(a)に示される。図6(a)では、グリーンシートGの上に、バインダK1を介して、タングステン粉Wおよび無機材料粉Mの混合物が印刷されている。
【0061】
そして、上述したように、各グリーンシートの積層、焼成を行うことにより、図6(b)に示されるように、タングステン粉Wおよび無機材料粉Mの混合物において、バインダK1が乾燥し、当該混合物が焼成される。なお、グリーンシートGは焼成されて、表層ランド15、16の形成基板である各セラミック層11、14となる。
【0062】
次に、銅メッキ工程においては、基板10を脱脂洗浄した後、無機材料粉Mを上記エッチング材料を用いたウェットエッチングなどにより除去する。
【0063】
それによれば、図6(c)に示されるように、無機材料粉Mが除去されて凹部M1が形成され、タングステン粉Wは残る。そのため、残ったタングステン粉Wから構成される表層ランド15、16の表面は凹凸形状となる。
【0064】
そして、このように表面が凹凸形状となっている表層ランド15、16を形成し、さらに、タングステン表面の酸化物などを除去するためのタングステンエッチングや、銅メッキの前処理としてのPd活性化処理を行った後、図6(d)に示されるように、無電解銅メッキを行い、上記銅メッキ層150を形成する。その後、基板洗浄を行う。
【0065】
このようにして、表面ランド15および裏面ランド16が形成され、これら表層ランド15、16の表面に銅メッキ層150が形成される。
【0066】
次に、積層基板10の裏面に、厚膜抵抗体23を構成するペーストを印刷し、乾燥・焼成することにより、厚膜抵抗体23を形成する。そして、その上に保護ガラス43を形成し、その上に保護樹脂44を形成する。また、必要に応じて保護ガラス43を形成した後、抵抗値の調整のため、レーザトリミングを行ったりする。
【0067】
続いて、銅メッキ層150の表面に、無電解メッキまたは電気メッキなどにより、金メッキ層151(上記図3参照)を形成する。こうして、図7(c)に示されるような配線板100、すなわち上記図1に示される配線板100が形成される。
【0068】
このようにして製造されたセラミック配線板100を受け入れて、部品やボンディングワイヤの実装工程が行われる。
【0069】
図8(a)に示されるように、はんだランド15c上に、はんだペースト40aを印刷して塗布する。
【0070】
次に、図8(b)に示されるように、部品マウントを行う。ここでは、はんだ付けされる部品であるフリップチップ20およびコンデンサ21をセラミック配線板100の表面に搭載する。
【0071】
続いて、はんだリフローを行い、フリップチップ20およびコンデンサ21をはんだ40を介してセラミック配線板100に接続する。その後、基板洗浄を行い、フラックスを洗浄し、除去する。
【0072】
次に、図8(c)に示されるように、導電性接着剤ランド15d上に、導電性接着剤41を塗布する。
【0073】
続いて、図9(a)に示されるように、ICマウント工程では、導電性接着剤ランド15d上に、導電性接着剤41を介してICチップ22を搭載する。そして、導電性接着剤41を硬化することにより、ICチップ22を導電性接着剤41を介してセラミック配線板100に接続する。
【0074】
続いて、図9(b)に示されるように、金ボンディング工程を行い、金ボンディングワイヤ30によって、ICチップ22と金ワイヤ接続ランド15aとを結線し、電気的に接続する。
【0075】
その後、図9(c)に示されるように、フリップチップ20とセラミック配線板100との間にアンダーフィル材42を注入して硬化する。これにより、アンダーフィル材42の充填がなされる。なお、このアンダーフィル材42の充填は必要に応じて行えばよく、行わなくてもよい。
【0076】
続いて、Alボンディング工程を行い、Alボンディングワイヤ31によって、コネクタ部材などの外部とAlワイヤ接続ランド15bとを結線する。これにより、セラミック配線板100と外部とがAlボンディングワイヤ31を介して電気的に接続され、上記図2に示される実装構造ができあがる。
【0077】
ところで、本実施形態によれば、基板10にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線15、16を形成し、この配線15、16の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板100の製造方法において、配線15、16の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と無機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を基板10に配設した後、混合材料のうち無機材料粉をエッチングにより除去することにより、残った金属粉により配線15、16を形成するようにしたことを特徴とする製造方法が提供される。
【0078】
それによれば、上記図6に示されるように、無機材料粉Mのエッチングによって無機材料粉Mの存在していた部位は凹部M1となり、残った金属粉Wから構成される配線15、16の表面は凹凸形状となる。そして、その配線15、16の上にCuメッキ150が施されるため、このCuメッキ150のアンカー効果が大きくなり、密着性を向上させることができる。
【0079】
このように、本実施形態によれば、基板10にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線15、16を形成し、この配線15、16の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板100の製造方法において、配線原料中の金属粉のサイズを大きくすることなく、配線15、16上のCuメッキ150のアンカー効果を大きくすることができる。
【0080】
ここで、本実施形態のセラミック配線板100の製造方法においては、混合材料は印刷法により基板10に配設されるようにしている。そして、本製造方法においては、金属粉および無機材料粉の平均粒径が3μm以下であることが好ましいとしている。これは、上述したように、混合材料の印刷性などを考慮したものである。
【0081】
また、上述したが、本製造方法においては、金属粉と無機材料粉との総容量を100vol%としたとき、無機材料粉の割合は、10vol%以上60vol%以下であることが好ましく、より好ましくは、無機材料粉の割合は、30vol%以上60vol%以下であるとしている。
【0082】
これは、上述したように、無機材料粉が少ないと、無機材料粉が除去されて形成される凹部が小さすぎてアンカー効果がさほど大きくならないことや、無機材料粉が多すぎると金属粉同士の焼結が減るため、できあがった配線15、16自体の強度低下につながることを考慮して規定された適切な範囲である。
【0083】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係るセラミック配線板100の製造方法の要部を示す図であり、本製造方法における配線板100の表層ランド15、16の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0084】
本実施形態では、上記第1実施形態に示されるセラミック配線板100の製造方法および実装構造の組み付け方法と、大半のところは同様であるが、表面ランド15および裏面ランド16の一連の形成方法が相違するものである。以下、この相違点を中心に述べることにする。
【0085】
本実施形態においては、配線板100における配線としての各表層ランド15、16は、配線15、16の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と有機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を基板10に配設した後、混合材料のうち有機材料粉を加熱して除去することにより、残った金属粉により形成されたものである。
【0086】
つまり、本実施形態では、表層ランド15、16すなわち表面ランド15および裏面ランド16は、配線15、16の原料として、タングステンまたはモリブデンからなる金属粉Wと有機材料粉Yとが混合された混合材料をアクリル系樹脂などのバインダK1に混合してなる導体ペーストを用いる。
【0087】
そして、上記グリーンシートのパターン印刷・乾燥工程において、この導体ペーストを、上記グリーンシートにおける表層ランド15、16の形成部位に印刷する。この状態が図10(a)に示される。図10(a)では、グリーンシートGの上に、バインダK1を介して、金属粉Wおよび有機材料粉Yの混合物が印刷されている。
【0088】
そして、各グリーンシートの積層、焼成を行うことにより、図10(b)に示されるように、金属粉Wおよび有機材料粉Yの混合物において、バインダK1が乾燥し、当該混合物が焼成される。
【0089】
また、この焼成により、有機材料粉Yは、蒸発あるいは燃焼して消滅するため、有機材料粉Yが除去されて凹部M1(図10(c)参照)が形成され、金属粉Wは残る。そのため、焼成後においては、図10(c)に示されるように、残った金属粉Wから構成される表層ランド15、16の表面は凹凸形状となる。
【0090】
つまり、本実施形態の焼成では、バインダK1が乾燥して除去され、一時的に図10(b)に示されるような状態となり、有機材料粉Yの消滅により、図10(c)に示されるような状態となる。本実施形態では、このようにグリーンシートの焼成工程において、表層ランド15、16ができあがる。
【0091】
その後、銅メッキ工程では、基板10を脱脂洗浄した後、金属表面の酸化物などを除去するためのエッチングや、銅メッキの前処理としてのPd活性化処理を行った後、図10(d)に示されるように、無電解銅メッキを行い、上記銅メッキ層150を形成する。その後、基板洗浄を行う。
【0092】
このようにして、本実施形態では、表面ランド15および裏面ランド16が形成され、これら表層ランド15、16の表面に銅メッキ層150が形成される。
【0093】
その後は、上記第1実施形態と同様に、厚膜抵抗形成以降の工程を行うことにより、本実施形態によっても、上記図1に示されるセラミック配線板100の形成および上記図2に示される実装構造の形成を行うことができる。
【0094】
ここで、有機材料粉としては、導体ペーストを形成するためのアルコール類などの有機溶剤に溶けにくいものを採用することができる。たとえば、アクリル系樹脂からなるビーズなどを採用できる。
【0095】
このように、本実施形態によれば、基板10にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線15、16を形成し、この配線15、16の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板100の製造方法において、配線15、16の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と有機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を基板10に配設した後、混合材料のうち有機材料粉を加熱して除去することにより、残った金属粉により配線15、16を形成するようにしたことを特徴とする製造方法が提供される。
【0096】
それによれば、図10に示されるように、有機材料粉Yの加熱除去によって有機材料粉Yの存在していた部位は凹部M1となり、残った金属粉Wから構成される配線15、16の表面は凹凸形状となる。そして、その配線15、16の上にCuメッキ150が施されるため、このCuメッキ150のアンカー効果が大きく密着性が向上する。
【0097】
よって、本実施形態によれば、基板10にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線15、16を形成し、この配線15、16の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板100の製造方法において、配線原料中の金属粉のサイズを大きくすることなく、配線15、16上のCuメッキ150のアンカー効果を大きくすることができる。
【0098】
ここで、本実施形態のセラミック配線板100の製造方法においても、混合材料は印刷法により基板10に配設することができる。そして、上記実施形態と同様に、金属粉および有機材料粉の平均粒径は3μm以下であることが好ましく、また、当該平均粒径の下限としては0.5μm以上であることが好ましい。
【0099】
このような平均粒径の範囲を採用する理由は、上記第1実施形態と同様、印刷の解像度の確保や取り扱いの容易化などを考慮したことによるものである。
【0100】
また、これも、上記実施形態と同様に、金属粉と有機材料粉との総容量を100vol%としたとき、有機材料粉の割合は、10vol%以上60vol%以下であることが好ましく、より好ましくは、有機材料粉の割合は、30vol%以上60vol%以下であることが望ましい。
【0101】
これも、上記実施形態と同様の理由、すなわち、有機材料粉が少ないと、有機材料粉が除去されて形成される凹部が小さすぎてアンカー効果がさほど大きくならないことや、有機材料粉が多すぎると金属粉同士の焼結が減るため、できあがった配線15、16自体の強度低下につながることを考慮して規定された適切な範囲である。
【0102】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、表層ランド15、16すなわち表面ランド15および裏面ランド16の配線原料である上記混合材料は、基板10となるグリーンシートに印刷塗布された後、当該グリーンシートの積層後の焼成に伴って、焼成されていた。
【0103】
しかしながら、上記混合材料を焼成済みの基板、たとえば基板10としてセラミック単層基板などを用い、このような焼成済みの基板に印刷塗布した場合には、この混合材料を焼成するための加熱工程を別途設けて行うことになることは明らかである。
【0104】
また、上記図3に示される例では、セラミック配線板100における表面ランド15の上の銅メッキ層150の上には金メッキ層151が形成されているが、この金メッキ層151は、場合によっては無いものであってもよい。
【0105】
また、上記セラミック配線板100において、基板10の下面の厚膜抵抗体23は無いものであってもよい。
【0106】
以上のように、上記実施形態によれば、セラミック配線板を構成する基板にタングステンもしくはモリブデンを主とする配線を形成するにあたって、配線材料(メタライズ材料)を微細粉で構成し緻密化することと、それとは矛盾する配線表面を粗くしてCuめっき強度を得ることを両立することができる。
【0107】
つまり、セラミック配線板の表層配線(表層ランド)として、W粉またはMo粉と無機材料粉または有機材料粉とを混入したメタライズを原料に用い、無機材料粉または有機材料粉を除去することでアンカー部を形成し、Cuめっきの密着性を向上するようにしている。また、溶剤を乾燥させたドライ状態では、粉体は、緻密にできるので、焼成前、焼成中の膜強度が強くなり、メタライズ欠けは減少する。
【0108】
なお、タングステンもしくはモリブデンを主とする配線とは、タングステンとモリブデンとの混合物であってもよい。その場合には、上記混合材料における金属粉は、、タングステンとモリブデンとの混合物を採用することになる。また、粒径や無機材料粉、有機材料粉との混合割合も上記と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセラミック配線板の単体状態の概略断面構成を示す図である。
【図2】図1に示されるセラミック配線板に対して各種部品を実装した状態を示す概略断面図である。
【図3】図1に示されるセラミック配線板におけるタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線の拡大断面図である。
【図4】上記第1実施形態に係るセラミック配線板の製造方法および実装構造の組み付け方法の工程フローを示す図である。
【図5】図4に続く工程フローを示す図である。
【図6】上記第1実施形態に係る製造方法におけるセラミック配線板の表層ランドの製造工程を模式的に示す断面図である。
【図7】上記第1実施形態に係るセラミック配線板の製造方法および実装構造の組み付け方法の各工程における途中状態のワークを示す概略断面図である。
【図8】図7に続く各工程における途中状態のワークを示す概略断面図である。
【図9】図8に続く各工程における途中状態のワークを示す概略断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る製造方法におけるセラミック配線板の表層ランドの製造工程を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0110】
10…基板としての積層基板、15…表面ランド、16…裏面ランド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線(15、16)を形成し、この配線(15、16)の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、
前記配線(15、16)の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と無機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を前記基板(10)に配設した後、
前記混合材料のうち前記無機材料粉をエッチングにより除去することにより、残った前記金属粉により前記配線(15、16)を形成するようにしたことを特徴とするセラミック配線板の製造方法。
【請求項2】
前記混合材料は印刷法により前記基板(10)に配設されることを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線板の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉および前記無機材料粉の平均粒径は3μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック配線板の製造方法。
【請求項4】
前記金属粉と前記無機材料粉との総容量を100vol%としたとき、前記無機材料粉の割合は、10vol%以上60vol%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のセラミック配線板の製造方法。
【請求項5】
前記金属粉と前記無機材料粉との総容量を100vol%としたとき、前記無機材料粉の割合は、30vol%以上60vol%以下であることを特徴とする請求項4に記載のセラミック配線板の製造方法。
【請求項6】
基板(10)にタングステンもしくはモリブデンを主成分とする配線(15、16)を形成し、この配線(15、16)の表面にCuメッキを施すようにしたセラミック配線板の製造方法において、
前記配線(15、16)の原料として、タングステンもしくはモリブデンからなる金属粉と有機材料粉とが混合された混合材料を用意し、この混合材料を前記基板(10)に配設した後、
前記混合材料のうち前記有機材料粉を加熱して除去することにより、残った前記金属粉により前記配線(15、16)を形成するようにしたことを特徴とするセラミック配線板の製造方法。
【請求項7】
前記混合材料は印刷法により前記基板(10)に配設されることを特徴とする請求項6に記載のセラミック配線板の製造方法。
【請求項8】
前記金属粉および前記有機材料粉の平均粒径は3μm以下であることを特徴とする請求項6または7に記載のセラミック配線板の製造方法。
【請求項9】
前記金属粉と前記有機材料粉との総容量を100vol%としたとき、前記有機材料粉の割合は、10vol%以上60vol%以下であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載のセラミック配線板の製造方法。
【請求項10】
前記金属粉と前記有機材料粉との総容量を100vol%としたとき、前記有機材料粉の割合は、30vol%以上60vol%以下であることを特徴とする請求項9に記載のセラミック配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−41225(P2006−41225A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219694(P2004−219694)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】