説明

タービン部品の減衰構造

【課題】タービン部品を減衰するための構造を提供する。
【解決手段】 本願では、ガスタービン部品用の皮膜であって、振動減衰特性を有する1種以上の材料を含む皮膜について開示する。さらに、翼形基板と該翼形基板に設けられた皮膜とを含む振動減衰特性を有するガスタービン翼形部であって、上記皮膜が振動減衰特性を有する1種以上の材料を含む翼形部についても開示する。ガスタービン部品の振動減衰方法は、減衰特性を有する1種以上の材料を含む皮膜をガスタービン部品に施工することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はタービンに関する。具体的には、本願発明はタービン部品の減衰に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの作動によって、タービン部品の多くが振動応力に付される。かかる部品としては、ガスタービンの圧縮機、高温ガス通路(HGP)及び燃焼器セクションの部品が挙げられる。振動応力は、そうした応力に付される部品の疲労寿命を縮め、特にかかる部品が同時にガスタービンの過酷な環境にも暴露される場合には、破壊を招く可能性もある。
【0003】
振動応力を低減して部品の寿命を延ばす方法の一つは、部品の振動を減衰する手段を設けて、部品の構造的健全性が向上して耐用寿命が延びるように振動特性を変更することである。従前、タービン部品の振動の減衰には機械的手段が用いられてきた。機械的手段の具体例としては、翼形部プラットフォーム下方のロータ構造内に挿入されるスプリング様ダンパ、或いは翼形先端シュラウドに設けられたダンパが挙げられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、温度、応力、騒音及び振動のような過酷な環境に暴露される部品の表面を、部品の減衰特性を有する1種以上の表面材料の追加によって改質することによって、上述の問題を解決する。さらに、翼形基板と該翼形基板に設けられた表面構造とを含んでなる減衰特性を有するガスタービン翼形部であって、上記表面構造が減衰特性を有する1種以上の材料を含む、翼形部についても開示する。
【0005】
ガスタービン部品の減衰方法は、ガスタービンに対する減衰特性を有する1以上の層を含む表面構造を設計し施工する段階を含む。
【0006】
上記その他の利点及び特徴は、図面と併せて以下の説明を参照することによって一段と明らかになろう。
【0007】
本発明は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の上記その他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照すれば明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、図面を参照して、本発明の実施形態をその利点及び特徴と共に説明する。
【0009】
部品の振動の吸収及び/又は部品の共鳴振動数の変更によって室温以上の温度で振動減衰をもたらす、タービン部品(例えばガスタービン部品)用の表面構造について開示する。振動減衰によって、部品(例えば翼形部)の疲労寿命が非減衰部品に比べて増大する。かかる表面構造は、例えば音響減衰のような他の形態の減衰を行うのにも同様に利用できる。
【0010】
図1を参照すると、振動減衰性の向上したガスタービン部品、例えば翼形部10を示す。翼形部10は、翼形基板12と該翼形基板12上に設けられた表面構造14とを含む。表面構造14は、特性の異なる1以上の表面層を含んでいてもよい。表面構造14を翼形基板12に設けると、減衰特性を与える。振動減衰表面構造14の実施形態では、室温以上の温度で減衰特性を与えるため、表面構造14の1以上の成分の化学的、組織的及び/又は機械的特性の変化を利用してもよい。かかる特性の具体例には、双晶境界(材料内で複数の結晶が交互成長(intergrow)する領域)の移動及びシフトがある。翼形部10その他の部品が振動に付されると、双晶境界の移動及びシフトによって翼形部10の振動が減衰される。かかる双晶境界の存在する表面構造14の具体例としては、Cu−Mn合金及びNi−Ti合金が挙げられる。
【0011】
振動減衰に有用な別の特性は、溶質金属の優先方位軸結合対(preferential orientation of axis joining pairs)によって表面構造14のいずれかの成分内で誘起される応力であり、その具体例はα黄銅皮膜材料(亜鉛含有量が35%未満の黄銅)である。表面構造14内での内部摩擦に起因する粒間熱流を有する表面構造14の部分も振動の減衰に有用である。粒間熱流は、周期的応力下にあってエネルギーを最大限に消散する多結晶質材料でみられる。
【0012】
表面構造14で減衰作用を生じさせるさらに別の方法は、材料における既知の欠陥を利用すること、或いはある種の欠陥を有する傾向にある材料を利用することである。欠陥としては、不純物、結晶粒界、点欠陥及び/又はかかる欠陥が幾つか隣接したクラスターが挙げられる。欠陥は周期的振動応力下でヒステリシスループ又は減衰作用を生じる。例えば、材料を振動応力又は歪みに付したとき、結晶粒界で消散される単位エネルギーは結晶粒内部で消散される単位エネルギーよりも大きい。こうしたエネルギー消散の不均衡によって減衰作用が生じる。
【0013】
上記の特性を有する材料で、振動減衰皮膜14に利用できる材料の具体例としては、銅合金が挙げられ、その具体例としては、Cu−Zn系黄銅、Cu−Fe−Sn青銅−Mn−Ni合金及びそれらの組合せがある。その他の考えられる材料としては、Co、Ni、Fe、Ti及びMoの1種以上の組合せを含むコバルト合金、Fe、Mn、Si、Cr、Ni、W、Mo、Co及びCの1種以上の組合せを含む鉄合金、Mg、Zn、Zr、Mn及びThの1種以上の組合せを含むマグネシウム合金、Mn、Cu及び/又はNiの組合せを含むマンガン合金、並びに55%Niと45%Tiを有するNi−TiニチノールとCr、Fe及びTiの1種以上の組合せを含むNi合金が挙げられる。振動減衰皮膜材料としては、1500℃で1時間及び1800℃で1時間アニールした1600℃で高い損失係数を有するレニウム、Ag−Cd、Ag−Sn及びAg−Inを始めとする銀合金、1850℃でアニールした1500℃で高い損失係数を有するタンタル、700℃で高い損失係数を有するストロンチウム、Ti−4Al−2Sn及びTi−6−4を始めとするチタン合金(ただし、Ti−4Al−2Snが好ましい)、並びに1580℃〜2000℃でアニールしたタングステンを挙げることもできる。耐熱材料も利用することができ、その具体例は、MgO、SiO2、Si34及びZrO2である。
【0014】
ミクロ組織特性又は材料特性を利用して減衰特性を得ることに加えて、構造の振動減衰特性をさらに向上させるための他の特徴を皮膜14に追加してもよい。表面構造14の圧縮性及び高温粘弾性を高めて表面構造14の減衰性能を向上させるため、図2に示すような細孔16、図3に示すような気泡18又は図4に示すようなマイクロバルーン20を表面構造14に導入してもよい。細孔16としては、直径0.5〜100μmのミクロ孔、直径15〜500nmのナノ孔及び/又は直径100μm超のマクロ孔が挙げられる。気泡18としては、金属/セラミック連続気泡フォーム、中空球気泡及び/又は金属溶浸セラミック気泡が挙げられる。マイクロバルーン20は、一群のガラス球を含む粉体である。さらに、図5に示すように、表面構造14を、積層体と同様に多層22の形態で翼形基板12に施工してもよく、層22間の相対的運動に起因する摩擦によって減衰作用が生じる。このような内部摩擦を生じさせるため、多層22の交互層が異なる弾性率を有していてもよい。
【0015】
上述の減衰表面構造14は、基板材料及び皮膜材料に応じて、カソードアーク法、パルス電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)法、スラリー堆積法、電解析出法、ゾル−ゲル析出法、スピンコーティング法、並びに高速フレーム溶射(HVOF)法、真空プラズマ溶射(VPS)法及び大気プラズマ溶射(APS)法のような溶射法を始めとする数多くの適当な方法によって所望のガスタービン部品に施工すればよい。ただし、本発明の技術的範囲内でその他のコーティング施工法も利用できる。表面構造は、所望の部品の表面全体に施工してもよいし、部品の減衰を要する領域だけに施工してもよい。
【0016】
限られた数の実施形態に関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明が開示した実施形態に限定されないことは明らかであろう。本発明は、記載していない幾つもの変形、変更、置換又は均等な構成を加えて修正できるが、それらも本発明の技術的思想及び技術的範囲に属する。さらに、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、本発明の態様は記載した実施形態の一部しか含まないこともある。従って、本発明は、本明細書の記載によって限定されるものではなく、もっぱら特許請求の範囲によって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】振動減衰特性を有する翼形部の実施例を示す図。
【図2】図1の翼形部の皮膜の実施例を示す図。
【図3】図1の翼形部の皮膜の別の実施例を示す図。
【図4】図1の翼形部の皮膜の第3の実施例を示す図。
【図5】図1の翼形部の皮膜の第4の実施例を示す図。
【符号の説明】
【0018】
10 翼形部
12 翼形基板
14 表面構造
16 細孔
18 気泡
20 マイクロバルーン
22 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン部品用の表面構造であって、減衰特性を有する1種以上の材料を含む表面構造。
【請求項2】
前記1種以上の材料が1以上の減衰ミクロ組織特性を備える、請求項1記載の表面構造。
【請求項3】
前記ミクロ組織特性が、前記1種以上の材料の溶質原子の優先方位軸結合対である、請求項1記載の表面構造。
【請求項4】
前記ミクロ組織特性が、前記1種以上の材料の粒間熱流である、請求項1記載の表面構造。
【請求項5】
前記減衰特性が前記1種以上の材料の欠陥によって得られる、請求項1記載の表面構造。
【請求項6】
複数の細孔をさらに含む、請求項1記載の表面構造。
【請求項7】
前記複数の細孔の少なくとも1つの細孔が15nm〜3mmの直径を有する、請求項6記載の表面構造。
【請求項8】
1種以上の発泡剤、金属又はセラミックマトリクス中の複数のガラス球、機械的及び化学的特性の異なる複数の層並びにこれらの1以上を含む組合せの少なくともいずれかをさらに含む、請求項1記載の表面構造。
【請求項9】
減衰特性を有するガスタービン翼形部であって、
翼形基板と
翼形基板に設けられた表面構造と
を含んでおり、上記表面構造が減衰特性を有する1種以上の材料を含む、翼形部。
【請求項10】
前記減衰特性が、振動減衰特性、音響減衰特性及びこれらの組合せの少なくともいずれかである、請求項9記載の翼形部。
【請求項11】
前記減衰特性が、前記1種以上の材料の1以上のミクロ組織特性によって得られる、請求項9記載の翼形部。
【請求項12】
前記減衰特性が、前記1種以上の材料の欠陥によって得られる、請求項9記載の翼形部。
【請求項13】
前記表面構造が、複数の細孔、1種以上の発泡剤、複数のガラス球及びこれらの1以上を含む組合せの少なくともいずれかをさらに含む、請求項9記載の翼形部。
【請求項14】
前記表面構造がガスタービン部品に多層で設けられる、請求項9記載の翼形部。
【請求項15】
前記表面構造が、翼形部の1箇所以上の要減衰部分に設けられる、請求項9記載の翼形部。
【請求項16】
ガスタービン部品の減衰方法であって、減衰特性を有する1種以上の材料を含む表面構造をガスタービン部品に設けることを含んでなる方法。
【請求項17】
前記表面構造が振動減衰特性を備える、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記表面構造が音響減衰特性を備える、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記表面構造の少なくとも一部がカソードアーク法で施工される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記表面構造の少なくとも一部が電子ビーム物理蒸着法で施工される、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記表面構造の少なくとも一部が溶射法で施工される、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記表面構造の少なくとも一部がスラリー堆積法で施工される、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記表面構造の少なくとも一部が電解析出法で施工される、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記表面構造が前記部品の1箇所以上の要減衰部分に施工される、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−52554(P2009−52554A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212402(P2008−212402)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】