説明

ダイシング・ダイボンドフィルム

【課題】粘着剤層を有するダイシングフィルムと、ダイボンドフィルムを有するダイシング・ダイボンドフィルムで(1)半導体ウェハや半導体チップの大きさや厚みに関わらず、ダイシングの際の半導体ウェハの良好な保持力と、該ダイボンドフィルムと一体に基材からの半導体チップの良好な剥離性、(2)環境や人体に与える影響が小さく(3)取扱いが容易なダイシング・ダイボンドフィルムを提供する。
【解決手段】基材1上に粘着剤層2を有するダイシングフィルムと該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルム3’とを有し、該粘着剤層は紫外線硬化型のポリマー(P)を含み、主モノマーとしてのアクリル酸エステルとカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー成分から構成されるポリマー(A)とオキサゾリン基とラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するオキサゾリン基含有化合物(B)とを反応させて得られ、該ダイボンドフィルムはエポキシ樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシング・ダイボンドフィルムに関する。具体的には、ワーク(半導体ウェハ等)のダイシングに供するフィルムであって、チップ状ワーク(半導体チップ等)と電極部材とを固着するための接着剤をダイシング前において既にワーク(半導体ウェハ等)に付設された状態とすることができる、ダイシング・ダイボンドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンを形成した半導体ウェハ(ワーク)は、必要に応じて裏面研磨により厚さを調整した後、半導体チップ(チップ状ワーク)にダイシングされる(ダイシング工程)。ダイシング工程においては、一般的に、切断層の除去のため半導体ウェハを適度な液圧(通常、2kg/cm程度)で洗浄する。次に、上記ダイシングされた半導体チップは、接着剤にてリードフレームなどの被着体に固着される(マウント工程)。続いて、上記被着体に固着された半導体チップに対して、ボンディングが施される(ボンディング工程)。
【0003】
上記マウント工程においては、上記接着剤は、リードフレームや半導体チップの表面に塗布される。しかし、接着剤の塗布に際しては、特殊な装置が必要であるという問題や、作業に長時間を要するという問題がある。また、塗布という作業の性格上、接着剤層の均一化が困難であるという問題がある。
【0004】
上記のような問題を解決するため、ダイシング工程においては半導体ウェハを接着保持できるとともに、マウント工程における被着体固着用の接着剤層を付与できる、ダイシング・ダイボンドフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のダイシング・ダイボンドフィルムは、支持基材上に接着剤層を剥離可能に設けてなる。すなわち、接着剤層による保持下に半導体ウェハをダイシングした後、支持基材を延伸し、半導体チップを接着剤層とともに剥離し、これを個々に回収し、回収した接着剤層付半導体チップの接着剤層を介してリードフレームなどの被着体に固着させる。
【0006】
上記のようなダイシング・ダイボンドフィルムの接着剤層には、ダイシング不能や寸法ミスなどが生じないように、半導体ウェハに対する良好な保持力と、ダイシング後の半導体チップを接着剤層と一体に支持基材から剥離しうる良好な剥離性とが望まれる。
【0007】
しかし、上記の両特性、すなわち、良好な保持力と良好な剥離性とをバランス良く発現させることは困難であるという問題がある。特に、半導体ウェハを回転丸刃などでダイシングする方式などのように、接着剤層に大きな保持力が要求される場合には、上記の両特性をバランス良く発現できるダイシング・ダイボンドフィルムを得ることは困難である。
【0008】
上記のような問題を解決するため、ダイシング・ダイボンドフィルムに関して、種々の改良法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2に記載のダイシング・ダイボンドフィルムにおいては、支持基材と接着剤層との間に紫外線硬化が可能な粘着剤層が介在している。この粘着剤層をダイシング後に紫外線硬化させることにより、粘着剤層と接着剤層との間の接着力を低下させる。この接着力の低下により、粘着剤層と接着剤層とが剥離し易くなり、半導体チップのピックアップが容易になる。
【0010】
しかしながら、上記の改良法によっても、ダイシング時の良好な保持力とその後の良好な剥離性とをバランス良く発現できるダイシング・ダイボンドフィルムとすることは困難である。例えば、10mm×10mm以上の大型の半導体チップを得る場合には、その面積が大きいため、一般のダイボンダーを用いて半導体チップをピックアップすることが容易でない。
【0011】
上記のような問題を解決するため、ダイシング・ダイボンドフィルムに関して、さらに種々の改良法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
特許文献3に記載のダイシング・ダイボンドフィルムにおいては、ポリマー中の水酸基と、水酸基と反応するイソシアネート基およびラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有する化合物を反応させた粘着剤が使用されている。このような粘着剤を用いることにより、容易に半導体チップをピックアップさせている。
【0013】
しかしながら、イソシアネート基含有化合物と水酸基含有ポリマーとの反応を促進させるためには、錫系触媒を添加する場合があり、環境に与える影響が大きいという問題がある。また、イソシアネート基およびラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、水と反応して失活するという問題がある。さらに、イソシアネート基およびラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、揮発性であるために環境や人体に与える影響が大きいという問題があり、取り扱いには十分な注意が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭60−57642号公報
【特許文献2】特開平2−248064号公報
【特許文献3】特開2009−170786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、(1)半導体ウェハや半導体チップの大きさや厚みに関わらず、ダイシングの際の半導体ウェハに対する良好な保持力と、ダイシング後の半導体チップを該ダイボンドフィルムと一体に基材から剥離しうる良好な剥離性とが、バランス良く発現でき、(2)環境や人体に与える影響が小さく、(3)取扱いが容易な、ダイシング・ダイボンドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、
基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、
該粘着剤層は、紫外線硬化型のポリマー(P)を含み、
該ポリマー(P)は、主モノマーとしてのアクリル酸エステルとカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー成分から構成されるポリマー(A)と、オキサゾリン基とラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するオキサゾリン基含有化合物(B)とを反応させて得られ、
該ダイボンドフィルムは、エポキシ樹脂を含む。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記カルボキシル基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸およびカルボキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記オキサゾリン基含有化合物(B)が、2−ビニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、および2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンから選ばれる少なくとも1種である。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記アクリル酸エステルは、CH=CHCOOR(式中、Rは炭素数が6〜10のアルキル基)で表されるアクリル酸エステルである。
【0020】
好ましい実施形態においては、上記ポリマー(P)のガラス転移温度が、−70℃〜−10℃である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、(1)半導体ウェハや半導体チップの大きさや厚みに関わらず、ダイシングの際の半導体ウェハに対する良好な保持力と、ダイシング後の半導体チップを該ダイボンドフィルムと一体に基材から剥離しうる良好な剥離性とが、バランス良く発現でき、(2)環境や人体に与える影響が小さく、(3)取扱いが容易な、ダイシング・ダイボンドフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるダイシング・ダイボンドフィルムの概略断面図である。
【図2】本発明の別の好ましい実施形態によるダイシング・ダイボンドフィルムの概略断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態によるダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明について図を用いて説明する場合、該図中、説明に不要な部分は記載を省略している場合がある。また、本発明について図を用いて説明する場合、説明を容易にするため、該図の一部または全部を拡大または縮小している場合がある。
≪A.ダイシング・ダイボンドフィルム≫
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムである。
【0024】
図1は、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムの好ましい実施形態の一例の概略断面図である。図1において、ダイシング・ダイボンドフィルム10は、基材1上に粘着剤層2を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層2上に設けられたダイボンドフィルム3とを有する。粘着剤層2は、紫外線硬化型のポリマー(P)を全体的に含んでいる。
【0025】
図2は、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムの別の好ましい実施形態の一例の概略断面図である。図2において、ダイシング・ダイボンドフィルム11は、基材1上に粘着剤層2を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層2上に設けられたダイボンドフィルム3´とを有する。図2におけるダイボンドフィルム3´は、粘着剤層2上において、半導体ウェハ4の貼り付け部分にのみ形成されている。
【0026】
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムには、帯電防止能を持たせることができる。ダイシング・ダイボンドフィルムに帯電防止能を持たせることにより、その接着時および剥離時等における静電気の発生やそれによるワーク(半導体ウェハ等)の帯電で回路が破壊されること等を防止することができる。
【0027】
ダイシング・ダイボンドフィルムに帯電防止能を付与する方法としては、基材、粘着剤層、あるいはダイボンドフィルムへ帯電防止剤や導電性物質を添加する方法、電荷移動錯体や金属膜等からなる導電層を基材上に付設する方法などが挙げられる。これらの方式としては、半導体ウェハを変質させるおそれのある不純物イオンが発生しにくい方式が好ましい。
【0028】
導電性の付与、熱伝導性の向上等を目的として配合される導電性物質(導電フィラー)としては、銀、アルミニウム、金、銅、ニッケル、導電性合金等の球状、針状、フレーク状の金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0029】
ダイボンドフィルムは、非導電性であることが、電気的にリークしないようにできる点から好ましい。
【0030】
ダイボンドフィルムは、セパレータにより保護されていることが好ましい。セパレータは、実用に供するまでダイボンドフィルムを保護する保護材としての機能を有する。また、セパレータは、さらに、粘着剤層にダイボンドフィルムを転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイシング・ダイボンドフィルムのダイボンドフィルム上にワークを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルム、紙などが挙げられる。
【0031】
≪A−1.基材≫
基材は、ダイシング・ダイボンドフィルムの強度母体となる。
【0032】
基材は、紫外線透過性を有することが好ましい。例えば、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムを用いて半導体装置を製造する際、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムが有する粘着剤層に含まれるポリマー(P)は、半導体チップをピックアップする前に紫外線照射により硬化されていることが好ましいからである。なお、この場合の紫外線照射は、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムに半導体ウェハ(ワーク)を固定した後から半導体チップをピックアップする前の間の任意の適切なタイミングで行えば良い。
【0033】
基材の厚みは、任意の適切な厚みを採用し得る。好ましくは、5μm〜200μmである。
【0034】
基材の材料としては、本発明の効果を発現できる範囲内において、任意の適切な材料を採用し得る。基材の材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、MS樹脂、SMA樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;ポリウレタン等のウレタン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルスルフィド等のエンジリアリングプラスチック;ガラス;ガラスクロス;フッ素樹脂;セルロース系樹脂;シリコーン樹脂;金属(箔);紙;などが挙げられる。基材の材料としては、また、上記樹脂等の架橋体も挙げられる。
【0035】
基材は、1種の材料のみから形成されていても良いし、2種以上の材料から形成されていても良い。また、基材は単層でも良いし、2種以上の複層でも良い。
【0036】
基材は、無延伸の基材を用いても良いし、一軸延伸や二軸延伸などの延伸処理を施した基材を用いても良い。
【0037】
延伸処理を施した基材を用いると、ダイシング後に該基材を熱収縮させることにより、粘着剤層とダイボンドフィルムとの接着面積を低下させることができ、半導体チップの回収を容易に行うことができる。
【0038】
基材の表面は、隣接する層との密着性や保持性などを高めるために、任意の適切な表面処理が施されても良い。このような表面処理としては、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的または物理的処理;下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理;などが挙げられる。
【0039】
基材には、帯電防止能を付与するため、該基材上に、金属、合金、これらの酸化物等からなる導電性物質の蒸着層を設けることができる。このような蒸着層の厚みは、好ましくは30Å〜500Åである。
【0040】
≪A−2.粘着剤層≫
粘着剤層は、紫外線硬化型のポリマー(P)を含む。
【0041】
ポリマー(P)は紫外線照射により硬化し得る。紫外線照射によりポリマー(P)を硬化させることにより、架橋度を増大させてポリマー(P)の粘着力を低下させることができる。
【0042】
紫外線照射は、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムに半導体ウェハ(ワーク)を固定した後から半導体チップをピックアップする前の間の任意の適切なタイミングで行えば良い。
【0043】
上記のように、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、粘着剤層を適切に設計することにより、ダイボンドフィルムを、接着性・剥離性の両面でバランスよく支持することができる。
【0044】
図2に示す粘着剤層2は、ダイシングリングを固定することができる。ダイシングリングは、例えば、ステンレス製などの金属からなるものや樹脂製のものを使用できる。
【0045】
ポリマー(P)は、主モノマーとしてのアクリル酸エステルとカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー成分から構成されるポリマー(A)と、オキサゾリン基とラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するオキサゾリン基含有化合物(B)とを反応させて得られる。
【0046】
ポリマー(P)のガラス転移温度は、下限値として、好ましくは−70℃以上であり、より好ましくは−65℃以上であり、さらに好ましくは−60℃以上であり、特に好ましくは−55℃以上であり、上限値として、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−20℃以下であり、さらに好ましくは−30℃以下であり、特に好ましくは−40℃以下である。
【0047】
ポリマー(P)のガラス転移温度が−10℃を超える場合、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の接着性が低下し、ダイシングの際にいわゆる「チップ飛び」が発生するおそれがある。
【0048】
ポリマー(P)は、清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいことが好ましい。このため、ポリマー(P)の重量平均分子量は、下限値として、好ましくは35万以上であり、より好ましくは45万以上であり、上限値として、好ましくは100万以下であり、より好ましくは80万以下である。
【0049】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸sec−ブチルエステル、アクリル酸t−ブチルエステル、アクリル酸ペンチルエステル、アクリル酸イソペンチルエステル、アクリル酸ヘキシルエステル、アクリル酸ヘプチルエステル、アクリル酸オクチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸イソオクチルエステル、アクリル酸ノニルエステル、アクリル酸デシルエステル、アクリル酸イソデシルエステル、アクリル酸ウンデシルエステル、アクリル酸ドデシルエステル、アクリル酸トリデシルエステル、アクリル酸テトラデシルエステル、アクリル酸ヘキサデシルエステル、アクリル酸オクタデシルエステル、アクリル酸エイコシルエステル等の、アルキル基の炭素数が、好ましくは1〜30、より好ましくは4〜18の、直鎖状または分岐鎖状のアクリル酸アルキルアルキルエステル)、アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、アクリル酸シクロペンチルエステル、アクリル酸シクロヘキシルエステル等)などが挙げられる。
【0050】
アクリル酸エステルは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0051】
アクリル酸エステルとしては、好ましくは、CH=CHCOOR(Rはアルキル基またはシクロアルキル基である。Rの炭素数は、下限値として、好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、上限値として、好ましくは10以下であり、より好ましくは9以下である。Rの炭素数は、例えば、好ましくは6〜10である。)で表されるアクリル酸エステルが挙げられる。
【0052】
Rの炭素数が6未満の場合、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の剥離力が大きくなりすぎて、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0053】
Rの炭素数が10を超える場合、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の接着性が低下し、ダイシングの際にいわゆる「チップ飛び」が発生するおそれがある。
【0054】
本発明において特に好ましいアクリル酸エステルとしては、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸イソオクチルエステルが挙げられる。
【0055】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のアクリル酸エステルの含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な含有割合を採用し得る。ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のアクリル酸エステルの含有割合は、下限値として、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上であり、特に好ましくは65重量%以上であり、上限値として、好ましくは97重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下であり、さらに好ましくは93重量%以下であり、特に好ましくは91重量%以下である。
【0056】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のアクリル酸エステルの含有割合が40重量%未満の場合、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の剥離力が大きくなりすぎて、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0057】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のアクリル酸エステルの含有割合が97重量%を超える場合、紫外線照射によるポリマー(P)の硬化性が低くなり、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0058】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、特に好ましくは、(メタ)アクリル酸およびカルボキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
【0059】
カルボキシル基含有モノマーは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0060】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な含有割合を採用し得る。ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合は、下限値として、好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、さらに好ましくは7重量%以上であり、特に好ましくは9重量%以上であり、上限値として、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは18重量%以下であり、さらに好ましくは16重量%以下であり、特に好ましくは15重量%以下である。
【0061】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合が3重量%未満の場合、紫外線照射によるポリマー(P)の硬化性が低くなり、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0062】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーの含有割合が20重量%を超える場合、粘着剤層中の残存カルボキシル基の量が多くなり、ダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることによって剥離性が低下してしまい、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0063】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中には、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、上記アクリル酸エステルと共重合可能な、他のモノマーを含んでいても良い。
【0064】
他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド;アクリロニトリル;などが挙げられる。
【0065】
他のモノマーは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0066】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中の他のモノマーの含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な含有割合を採用し得る。ポリマー(A)を構成するモノマー成分中の他のモノマーの含有割合は、下限値として、好ましくは0重量%以上であり、上限値として、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは35重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0067】
ポリマー(A)を構成するモノマー成分中の他のモノマーの含有割合が40重量%を超える場合、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の剥離力が大きくなりすぎて、ピックアップ性が低下するおそれや、紫外線照射によるポリマー(P)の硬化性が低くなり、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0068】
ポリマー(A)は、好ましくは、主モノマーとしてのアクリル酸エステルとカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー成分を重合して得られる。
【0069】
重合の方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。重合の方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などが挙げられる。
【0070】
オキサゾリン基とラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するオキサゾリン基含有化合物(B)としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0071】
オキサゾリン基含有化合物(B)は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0072】
オキサゾリン基含有化合物(B)の使用量は、ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーに対して、下限値として、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは85モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上であり、上限値として、好ましくは150モル%以下であり、より好ましくは100モル%以下であり、さらに好ましくは98モル%以下である。
【0073】
オキサゾリン基含有化合物(B)の使用量が、ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーに対して、80モル%未満の場合、粘着剤層中の残存カルボキシル基の量が多くなり、ダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることによって剥離性が低下してしまい、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0074】
オキサゾリン基含有化合物(B)の使用量が、ポリマー(A)を構成するモノマー成分中のカルボキシル基含有モノマーに対して、150モル%を超える場合、粘着剤層中の残存オキサゾリン基含有化合物(B)の量およびそれ由来の低分子量物質の量が増加してしまい、粘着剤層とダイボンドフィルムとの間の剥離力が大きくなりすぎて、ピックアップ性が低下するおそれや、残存オキサゾリン基含有化合物(B)の揮発により環境や人体に与える影響が大きくなってしまうおそれがある。
【0075】
ポリマー(A)とオキサゾリン基含有化合物(B)とを反応させてポリマー(P)を得る方法としては、任意の適切な反応方法を採用し得る。例えば、ポリマー(A)にオキサゾリン基含有化合物(B)を加えて、任意の適切な反応条件(例えば、空気中、20〜70℃の範囲内の反応温度、10〜100時間の反応時間)にて付加反応を行う方法が挙げられる。
【0076】
ポリマー(P)は、紫外線照射によって架橋反応させることで、硬化物とすることができる。
【0077】
紫外線照射によってポリマー(P)を架橋反応させるために、好ましくは、ポリマー(P)に対して、任意の適切な架橋剤および任意の適切な光重合開始剤を用いる。
【0078】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等が挙げられる。架橋剤を用いることにより、紫外線照射前の粘着剤層の接着力や紫外線照射後の粘着剤層の接着力の調整を行うことができる。
【0079】
架橋剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0080】
架橋剤の使用量は、ポリマー(P)の種類等によって、任意の適切な量を採用し得る。架橋剤の使用量は、例えば、ポリマー(P)に対して、下限値として、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、上限値として、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0081】
光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート;などが挙げられる。
【0082】
光重合開始剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0083】
光重合開始剤の使用量は、ポリマー(P)の種類等によって、任意の適切な量を採用し得る。光重合開始剤の使用量は、例えば、ポリマー(P)に対して、下限値として、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.05重量%以上であり、上限値として、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0084】
粘着剤層中には、ポリマー(P)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいても良い。
【0085】
他の成分としては、例えば、カルボキシル基と反応する化合物;紫外線硬化性モノマー;紫外線硬化性オリゴマー;粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤;などが挙げられる。
【0086】
カルボキシル基と反応する化合物は、例えば、粘着剤層中に存在する残存カルボキシル基の量を調整するために用い得る。カルボキシル基と反応する化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な量を用い得る。
【0087】
カルボキシル基と反応する化合物としては、例えば、アミノ基含有化合物、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物などが挙げられる。
【0088】
カルボキシル基と反応する化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0089】
紫外線硬化性モノマーや紫外線硬化性オリゴマーは、例えば、紫外線照射前の粘着力や紫外線照射後の粘着力を調整するために用い得る。
【0090】
紫外線硬化性モノマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
紫外線硬化性モノマーは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0092】
紫外線硬化性オリゴマーとしては、例えば、ウレタン系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、ポリカーボネート系オリゴマー、ポリブタジエン系オリゴマー等が挙げられる。
【0093】
紫外線硬化性オリゴマーは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0094】
紫外線硬化性オリゴマーの分子量は、好ましくは100〜30000である。
【0095】
紫外線硬化性モノマーや紫外線硬化性オリゴマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な量を用い得る。紫外線硬化性モノマーや紫外線硬化性オリゴマーの使用量は、それらの合計が、例えば、ポリマー(P)に対して、下限値として、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上であり、上限値として、好ましくは500重量%以下であり、より好ましくは150重量%以下である。
【0096】
粘着剤層の酸価は、好ましくは、10以下である。粘着剤層の酸価が10を超えると、粘着剤層中の残存カルボキシル基の量が多くなり、ダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることによって剥離性が低下してしまい、ピックアップ性が低下するおそれがある。
【0097】
粘着剤層の酸価は、粘着剤層の形成で用い得るオキサゾリン基含有化合物(B)などの各種化合物の使用量の調整などによって調節できる。
【0098】
酸価は、JIS K 0070−1992(電位差滴定法)に準じて評価を行うことができる。
【0099】
粘着剤層を形成する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。粘着剤層を形成する方法としては、例えば、基材上に直接に粘着剤層を形成する方法や、セパレータ上に設けた粘着剤層を基材上に転写する方法が挙げられる。
【0100】
粘着剤層の厚みは、任意の適切な厚みを採用し得る。粘着剤層の厚みは、例えば、下限値として、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上であり、上限値として、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。粘着剤層の厚みが上記範囲内にあることにより、チップ切断面の欠けが防止できるとともに、ダイボンドフィルムを、接着性・剥離性の両面でバランスよく支持することができる。
【0101】
≪A−3.ダイボンドフィルム≫
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有する。
【0102】
ダイボンドフィルムは、例えば、接着剤層の単層のみからなる構成としても良いし、ガラス転移温度の異なる熱可塑性樹脂や熱硬化温度の異なる熱硬化性樹脂などを適宜に組み合わせて、2層以上の多層構造としても良い。
【0103】
半導体ウェハのダイシング工程では切削水を使用するため、ダイボンドフィルムが吸湿して、常態以上の含水率になる場合がある。このような高含水率を有するダイボンドフィルムを基板等に接着させると、アフターキュアの段階で接着界面に水蒸気が溜まり、浮きが発生する場合がある。従って、ダイ接着用接着剤としては、透湿性の高いコア材料をダイ接着剤で挟んだ構成とすることにより、アフターキュアの段階で水蒸気がフィルムを通じて拡散するため、上記の浮きが発生する問題を回避することができる。
【0104】
上記の観点から、ダイボンドフィルムは、コア材料の片面または両面に接着剤層を形成した多層構造としても良い。
【0105】
上記コア材料としては、例えば、フィルム(例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0106】
ダイボンドフィルムは、接着剤層中にエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂は、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないという利点を有する。
【0107】
ダイボンドフィルムの接着剤層中のエポキシ樹脂の含有割合は、下限値で、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、上限値は、100重量%以下である。
【0108】
エポキシ樹脂としては、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば、任意の適切なエポキシ樹脂を採用し得る。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;等が挙げられる。
【0109】
エポキシ樹脂は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0110】
エポキシ樹脂としては、特に好ましくは、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れる。
【0111】
ダイボンドフィルムの接着剤層中には、適宜必要に応じて、その他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が含まれていても良い。これらの樹脂は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0112】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0113】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。
【0114】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得るものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;等が挙げられる。
【0115】
フェノール樹脂としては、特に好ましくは、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が挙げられる。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0116】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりのフェノール樹脂中の水酸基が、下限値として、好ましくは0.5当量以上であり、より好ましくは0.8当量以上であり、上限値として、好ましくは2.0当量以下であり、より好ましくは1.2当量以下である。エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合が上記範囲から外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるおそれがある。
【0117】
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―アクリル酸共重合体、エチレン―アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0118】
熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できる点で、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0119】
アクリル樹脂としては、任意の適切なアクリル樹脂を採用し得る。アクリル樹脂としては、例えば、炭素数が、下限値で、好ましくは4以上であり、上限値で、好ましくは30以下であり、より好ましくは18以下である、直鎖または分岐のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの1種または2種以上を含むモノマー成分を重合して得られる重合体が挙げられる。
【0120】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0121】
アクリル樹脂を形成する上記モノマー成分中には、任意の適切な他のモノマーを含んでいても良い。
【0122】
他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマー;などが挙げられる。
【0123】
ダイボンドフィルムの接着剤層には、予めある程度架橋をさせておくため、作製に際し、接着剤層中に含まれる重合体の分子鎖末端の官能基等と反応し得る多官能性化合物を架橋剤として添加させておいても良い。このような多官能性化合物を添加することにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。多官能性化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0124】
ダイボンドフィルムの接着剤層には、必要に応じて、任意の適切な他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0125】
他の添加剤としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
【0126】
難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0127】
シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0128】
イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。
【0129】
ダイボンドフィルムの厚みとしては、任意の適切な厚みを採用し得る。ダイボンドフィルムの厚みとしては、下限値として、好ましくは5μm以上であり、上限値として、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。
【0130】
≪B.ダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法≫
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムの製造方法について、ダイシング・ダイボンドフィルム10(図1)を例にして説明する。
【0131】
基材1は、任意の適切な製膜方法により製膜することができる。このような製膜方法としては、例えば、カレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が挙げられる。
【0132】
次に、基材1上に粘着剤を含む組成物を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層を形成する。粘着剤を含む組成物を塗布する方式としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。塗布は、直接に基材1上に行っても良いし、表面に剥離処理を行った剥離紙等に塗布した後に基材1に転写しても良い。
【0133】
次に、ダイボンドフィルム3を形成するための形成材料を剥離紙上に所定厚みとなるように塗布し、さらに所定条件下で乾燥して、塗布層を形成する。この塗布層をカットし、粘着剤層2上に転写することにより、ダイボンドフィルム3を形成する。
【0134】
または、ダイボンドフィルム3を形成するための形成材料を粘着剤層2上に直接塗布した後、所定条件下で乾燥することによっても、ダイボンドフィルム3を形成することができる。
【0135】
以上により、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルム10を得ることができる。
【0136】
≪C.半導体装置の製造方法≫
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、ダイボンドフィルム上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離して、次のように使用され得る。以下では、図3を参照しながら、ダイシング・ダイボンドフィルム11を用いた場合を例にして、半導体装置の製造方法について説明する。
【0137】
まず、図3(a)に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム11におけるダイボンドフィルム3´上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(マウント工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。
【0138】
次に、図3(b)に示すように、半導体ウェハ4のダイシングを行う(ダイシング工程)。ダイシングにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば、半導体ウェハ4の回路面側から常法に従って行われる。本工程では、例えば、ダイシング・ダイボンドフィルム11まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては、任意の適切な装置を用いることができる。半導体ウェハは、ダイシング・ダイボンドフィルム11により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。
【0139】
次に、図3(c)に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム11に接着固定された半導体チップを剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う(ピックアップ工程)。ピックアップの方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。ピックアップの方法としては、例えば、個々の半導体チップ5をダイシング・ダイボンドフィルム11側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0140】
ここで、ピックアップは、マウント工程の後の任意の適切なタイミングで粘着剤層に紫外線照射を行った後に行う。
【0141】
粘着剤層において、紫外線照射によるポリマー(P)の硬化は、ポリマー(P)の全部を紫外線照射によって硬化しても良いし、ポリマー(P)の一部のみ(例えば、半導体ウェハ4が固定されている部分のみ)を紫外線照射によって硬化しても良い。
【0142】
紫外線照射によるポリマー(P)の硬化を部分的に行う方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。紫外線照射によるポリマー(P)の硬化を部分的に行う方法としては、例えば、部分的に紫外線を照射する方法や、基材の少なくとも片面に紫外線を遮光する材料を印刷や蒸着等で設ける方法が挙げられる。
【0143】
ポリマー(P)を硬化させるための紫外線の照射積算光量は、好ましくは50〜500mJ/cmである。ポリマー(P)を硬化させるための紫外線の照射積算光量を上記範囲内とすることにより、例えば、ダイシングの際のいわゆる「チップ飛び」が発生することを抑制できるだけの接着性を保持することが可能となったり、ピックアップの際に良好なピックアップ性を発現できたり、架橋の進行し過ぎを抑制できて良好な剥離性を発現できる。
【0144】
次に、図3(d)に示すように、ピックアップした半導体チップ5を、ダイボンドフィルム3aを介して被着体6に接着固定する(ダイボンド工程)。被着体6はヒートブロック9上に載置されている。被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板、別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であっても良いし、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であっても良い。上記基板としては、任意の適切な基板を採用し得る。上記リードフレームとしては、Cuリードフレームや42Alloyリードフレーム等の金属リードフレーム、ガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板などが挙げられる。被着体6は、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板であっても良い。ダイボンドフィルム3aが熱硬化型の場合には、加熱硬化により、半導体チップ5を被着体6に接着固定し、耐熱強度を向上させる。なお、半導体ウェハ貼り付け部分3aを介して半導体チップ5が基板等に接着固定されたものは、リフロー工程に供することができる。
【0145】
続いて、図3(e)に示すように、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディングを行う(ボンディング工程)。その後、半導体チップを封止樹脂8で封止し、該封止樹脂8をアフターキュアする。
【0146】
以上により、半導体装置が製造される。
【実施例】
【0147】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、部は重量部を意味する。
【0148】
<ガラス転移温度の測定>
レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「ARES」を用いて、サンプル厚さ約1.5mmで、φ7.9mmパラレルプレ−トの治具を用い、周波数1Hz、昇温速度5℃/分にて測定し、得られた損失弾性率のピーク点の温度をガラス転移温度とした。
【0149】
<ピックアップ性の評価>
各実施例および比較例におけるダイシング・ダイボンドフィルムを用いて、以下の要領で、半導体ウェハのダイシングを行った後にピックアップを行い、各ダイシング・ダイボンドフィルムのピックアップ性を評価した。
半導体ウェハ(直径8インチ、厚さ0.6mm)を裏面研磨処理(研削装置:ディスコ社製「DFG−8560」)し、厚さ0.075mmのミラーウェハをワークとして用いた。
ダイシング・ダイボンドフィルムからセパレータを剥離した後、そのダイボンドフィルム上に上記ミラーウェハを40℃でロール圧着して貼り合わせ(貼り付け装置:日東精機製「MA−3000II」、貼り付け速度:10mm/min、貼り付け圧力:0.15MPa、貼り付け時のステージ温度:40℃)、さらにダイシングを行った。ダイシングは10mm角のチップサイズとなる様にフルカットした。
ダイシング条件は、下記の通りであった。
ダイシング装置:ディスコ社製「DFD−6361」
ダイシングリング:2−8−1(ディスコ社製)
ダイシング速度:80mm/sec
ダイシングブレード(Z1):ディスコ社製「2050HEDD」
ダイシングブレード(Z2):ディスコ社製「2050HEBB」
ダイシングブレード回転数(Z1):40000rpm
ダイシングブレード回転数(Z2):40000rpm
ブレード高さ(Z1):0.170mm(半導体ウェハの厚みによる(ウェハ厚みが75μmの場合、0.170mm))
ブレード高さ(Z2):0.085mm
カット方式:Aモード/ステップカット
ウェハチップサイズ:10.0mm角
次に、各ダイシング・ダイボンドフィルムに紫外線を照射した。紫外線照射(紫外線(UV)照射装置:日東精機製「UM−810」、紫外線照射積算光量:300mJ/cm)はポリオレフィンフィルム側から行った。
次に、各ダイシング・ダイボンドフィルムを引き伸ばして、各チップ間を所定の間隔とするエキスパンド工程を行った。
さらに、各ダイシング・ダイボンドフィルムの基材側からニードルによる突き上げ方式で半導体チップをピックアップし、ピックアップ性の評価を行った。
具体的には、400個の半導体チップを連続してピックアップし、表1に示す条件Aおよび条件Bで行ったときの成功率が共に100%の場合を◎とし、条件Aで行ったときの成功率が100%であり、かつ、条件Bで行ったときの成功率が100%でなかった場合を○とし、条件Aおよび条件B共に成功率が100%でなかった場合を×とした。
【0150】
【表1】

【0151】
<酸価の測定>
酸価は、JIS K 0070−1992(電位差滴定法)に準じて評価を行った。
具体的には、乾燥させた粘着剤層中の粘着剤約3gにアセトン100mlを加え、撹拌して溶解させた。これに水25mlを加え撹拌した。この溶液を0.05mol/lの水酸化ナトリウム溶液で滴定を行った。試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を酸価とした。
【0152】
〔実施例1〕
<ダイシングフィルムの作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)90部、アクリル酸(以下、「AA」という。)10部、過酸化ベンゾイル0.2部、および酢酸エチル150部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理し、アクリル系ポリマーAを得た。
このアクリル系ポリマーAに2−ビニル−2−オキサゾリン(以下、「VO」という。)12.8部(AAに対し95mol%)を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA´を得た。アクリル系ポリマーA´のガラス転位温度は−49℃であった。
次に、アクリル系ポリマーA´100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)4部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
上記粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
次いで、粘着剤層の表面に、厚さ100μmのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。
50℃にて24時間保存をして、ダイシングフィルムとした。
<ダイボンドフィルムの作製>
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製「パラクロンW−197CM」)100部に対して、エポキシ樹脂1(JER(株)製「エピコート1004」)59部、エポキシ樹脂2(JER(株)製「エピコート827」)53部、フェノール樹脂(三井化学(株)製「ミレックスXLC−4L」)121部、球状シリカ(アドマテックス(株)製「SO−25R」)222部を加え、メチルエチルケトンに溶解して、濃度23.6重量%の接着剤組成物溶液を得た。
得られた接着剤組成物溶液を、剥離ライナー(セパレータ)として、シリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ25μmのダイボンドフィルムを作製した。
<ダイシング・ダイボンドフィルムの作製>
ダイボンドフィルムをダイシングフィルムにおける粘着剤層側に転写して、ダイシング・ダイボンドフィルム(1)を作製した。
得られたダイシング・ダイボンドフィルム(1)について、各種評価を行った。結果を表2に示した。
なお、表2中に記載する略称の意味は次の通りである。
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
i−OA:アクリル酸イソオクチル
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
VO:2−ビニル−2−オキサゾリン
【0153】
〔実施例2〜5〕
表2に示す組成および含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ダイシング・ダイボンドフィルム(2)〜(5)を作製した。
得られたダイシング・ダイボンドフィルム(2)〜(5)について、各種評価を行った。結果を表2に示した。
【0154】
〔比較例1〜2〕
表2に示す組成および含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ダイシング・ダイボンドフィルム(C1)〜(C2)を作製した。
得られたダイシング・ダイボンドフィルム(C1)〜(C2)について、各種評価を行った。結果を表2に示した。
【0155】
【表2】

【0156】
表2に示すように、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、ピックアップ性が良好であることが判る。すなわち、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、ダイシングの際の半導体ウェハに対する良好な保持力と、ダイシング後の半導体チップを該ダイボンドフィルムと一体に基材から剥離しうる良好な剥離性とが、バランス良く発現できていることが判る。また、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、従来の粘着剤で用いられている錫系触媒を用いないので、環境に悪影響を与えないことが判る。さらに、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムにおいては、粘着剤層中における揮発性物質の残存が抑制できるので、環境や人体に悪影響を与えないことや、取扱いが容易であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、例えば、半導体装置製造の際のワーク(半導体ウェハ等)のダイシングに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0158】
1 基材
2 粘着剤層
3 ダイボンドフィルム
3´ ダイボンドフィルム
3a ダイボンドフィルム
4 半導体ウェハ
5 半導体チップ5
6 被着体
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
9 ヒートブロック
10 ダイシング・ダイボンドフィルム
11 ダイシング・ダイボンドフィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、
該粘着剤層は、紫外線硬化型のポリマー(P)を含み、
該ポリマー(P)は、主モノマーとしてのアクリル酸エステルとカルボキシル基含有モノマーを含むモノマー成分から構成されるポリマー(A)と、オキサゾリン基とラジカル反応性炭素−炭素二重結合を有するオキサゾリン基含有化合物(B)とを反応させて得られ、
該ダイボンドフィルムは、エポキシ樹脂を含む、
ダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸およびカルボキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記オキサゾリン基含有化合物(B)が、2−ビニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、および2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記アクリル酸エステルは、CH=CHCOOR(式中、Rは炭素数が6〜10のアルキル基)で表されるアクリル酸エステルである、請求項1から3までのいずれかに記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項5】
前記ポリマー(P)のガラス転移温度が、−70℃〜−10℃である、請求項1から4までのいずれかに記載のダイシング・ダイボンドフィルム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−15432(P2012−15432A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152700(P2010−152700)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】