説明

ダブテールの縁部破断部輪郭を検査するための方法及び装置

【課題】 本発明は、タービンブレード(220)を固定状態に受入れる、ディスク(200)内に形成されたカットアウトの縁部の輪郭を検査するための方法を提供する。
【解決手段】 第1の装置(12)は、カットアウトを含むディスク(200)を受ける。第2の装置(14)は、機器の移動に関連したセンサを有し、第1の装置(12)は、ディスク(200)をセンサに対する所定の配向に固定する。
ディスク(200)は第1の装置(12)に固定され、機器は、輪郭の面とほぼ平行な経路を定めるカットアウトに沿って導かれ、機器は、輪郭の面と物理的に接触した状態を保つ。センサは、移動に関連する信号をアルゴリズムに送信して、その信号を面輪郭に沿う正接(切点軸線)経路に沿った2次元位置に変換する。カットアウトの縁部輪郭の許容可能性は、2次元位置を所定の範囲の値と比較することによって判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはタービンエンジンを検査するための方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、タービンブレードを固定状態に受入れるようにディスク内に形成されたカットアウトの縁部の面輪郭を検査するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ガスタービン(ジェット)エンジンでは、空気は、エンジンの前部に吸い込まれ、シャフト支持の圧縮機によって加圧され、燃料と混合される。混合気は燃焼されて、高温排気ガスは、同一シャフト上に取付けられたタービンを通って流れる。燃焼ガスの流れは、タービンブレード及びベーンの翼形部セクションに対して衝突することによってタービンを回転させ、該タービンは、シャフトを回転させて圧縮機及びファンに動力を供給する。ガスタービンエンジンのさらに複雑な型においては、圧縮機及び高圧タービンは1つのシャフト上に取付けられ、ファン及び低圧タービンは別個のシャフト上に取付けられる。高温排気ガスは、エンジンの後部から流出してエンジン及び航空機を前方に推進する。
【0003】
タービンは、ダブテールと呼ばれるタービンブレードの一部分を受入れるためにディスクの周辺部に沿って機械加工された複数の複雑かつ厳密な公差のスロットを有するディスクからなる。スロットの輪郭は、一般的にブローチ加工によって形成される。ブローチ加工は、通常ブローチと呼ばれるカッタを使用して、円形、方形又は不規則な断面のカットアウト又は開口を仕上げる製造法である。ブローチ加工では、ブローチ自体の動作が締付け手段として働き、加工作業を最小の時間で完了することができるようになる。切削工具又はブローチは、一般的に寸法が漸増した多くの歯を備え、前もって形成したガイド開口を通して各工具を導く時に、各歯が小さな切りくずを取り去るようになる。
【0004】
タービンブレードのダブテールを固定するためのディスクの場合では、ブローチ加工は、ブローチを最初に導いたディスクの面に対向する面にわたって又はディスクの出口側に延びる大量のディスク材料破断部を形成する。この破断部は、一般的にブローチ加工したカットアウト又は開口のほぼ全周辺部に沿って形成されたギザギザの不連続部又はバリの形態になっている。ブローチ加工した区域に沿った材料は、低下した強度特性を含む。このブローチ加工した領域は加工作業中に高い応力を受けるので、これらの不連続部を除去して、部品寿命を著しく低下させるおそれがある応力誘起割れの可能性を回避するように、配慮しなければならない。この破断不連続部を除去するプロセスは、縁部の破断加工或いは縁部破断部又は破断縁部の形成加工と呼ばれる。一般的に、機械加工法などによってスロット周辺部から材料を除去して、ディスクの出口側に沿って小さな丸み付き縁部を形成していた。残念なことには、かなりの数のスロット周辺部の丸み付き縁部は、ブローチ加工によって形成された不連続領域を除去するには不十分な大きさであったことと、また部品寿命を維持するためには、後工程の材料除去の機械加工又はその他の方法により丸み付き縁部の半径を拡大するか又は面取りを形成することが今や必要であることとが、最近発見された。従って、多数の運転中のタービンエンジンのディスクは、この改造作業が必要な状態にあると思われる。ディスクが改造機械加工を必要とするか否かを決定するために、検査が実施される。これらのディスクの再検査は、進行中の新規製作タービンディスクを検査する必要性にも当然付加される。
【0005】
問題をさらに複雑にしているのは、縁部破断部を検査するために通常使用する方法は、時間がかかりかつ誤差が発生しやすいことである。例えば、ワックス−トレース法は、加熱したワックスをディスクの面に人手で配置する段階と、ワックスが冷却するのを待つ段階と、ワックスを適当にすなわちワックスの痕跡を変形又は歪ませないで取外す段階と、次に機械的トレースに対して痕跡を視覚的に整列させて該痕跡の方向が輪郭の中心線に対して垂直であることを保証する段階とを含む。この方法は、各周辺部スロットに対し最大10分を費やすだけでなく、測定値の再現性と再現精度が50%近くであった。換言すれば、ワックス−トレース法に関連する痕跡は、たとえ正確に実施したとしても、スロットの縁部輪郭の寸法変動の全許容範囲の約1/2に対処できるに過ぎない。ワックス−トレース法の時間がかかる性質のため、縁部破断部の検査は、さらに制限され、従って欠陥を見逃す確率を増大させる可能性がある。
【特許文献1】特開2003−100828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要なものは、より迅速に実施することができかつ測定値再現性と再現精度とを改善することができる、タービンディスクを検査するのための方法及び装置である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その各々がタービンブレードを固定状態に受入れるようになった、ディスク内に形成された複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトの縁部の輪郭を検査する方法に関する。本方法は、ディスクを受けるための第1の装置を準備する段階と、センサと該センサに関連する機器とを有し、第1の装置によってディスクを該センサに対する所定の配向に固定するようになった第2の装置を準備する段階と、ディスクを第1の装置に固定する段階と、ディスク内に形成された複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトに近接させて機器を位置決めする段階と、複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトの縁部に沿った切点の上方に前記機器の先端を導き、切点における切点軸線と輪郭の縁部に対してほぼ垂直な線とによって定まる平面にほぼ一致する輪郭の面に沿った経路に先端を追従させ、輪郭の面に機器を物理的に接触させるようにする段階と、機器の移動に基づいたセンサからの信号をアルゴリズムに送信する段階と、アルゴリズムが受信した信号を経路に沿った複数の位置に変換する段階と、複数の位置を複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトの縁部の輪郭の許容可能性を判定するために所定の範囲の値と比較する段階とを含む。
【0008】
本発明の1つの利点は、本発明がタービンブレードを受入れるためのディスクスロット端部輪郭を検査するのに極めて少ない時間しか必要としないことである。
【0009】
本発明の他の利点は、本発明が測定値再現性と再現精度を高めることである。
【0010】
本発明の更なる利点は、本発明が容易に実施することができることである。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、実例によって本発明の原理を示した添付の図面と共になされた、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
可能な限り、図面全体を通して同一又は類似の部分を説明するのに同一の参照符号を用いる。
【0013】
図3は、タービンディスク200内に形成されたダブテール縁部破断部輪郭を検査するための検査装置10の1つの実施形態を示す。図1及び図2Aを参照すると、タービンディスク200は、スリーブ部分208まで延びるディスク部分206を含む。ボア204は、タービンディスク200を回転させるためにジェットエンジンのシャフトに係合するように、ディスク部分206及びスリーブ部分208の両方を貫通して形成される。ディスク部分206の周辺部は通常、根元形状202と呼ばれる。根元形状202は、複数のほぼ均等に間隔を置いた半径方向外向きに延びるポスト210を含む。各ポスト210は、該ポスト210の全長に沿って対向する側面上に形成された複数のダブテール突出部212及びダブテール陥入部214を含む。カットアウト又はスロット222は、基部216によって結合された隣接するポスト210の対向面によって形成される。カットアウト又はスロット222は、タービンブレード220のダブテール部分218を受入れる。
【0014】
カットアウト又はスロット222は、対称軸線224を含むのが好ましい。基部216と対称軸線224との両方の一致点が、切点(point of tangency)226である。基部216は、例えば軸線228に沿って、ダブテール突出部及び陥入部212、214を有するスロット222の対向する側面との間の対称な切点230、232をもたらす湾曲した輪郭を含むのが好ましい。下記にさらに説明するように、検査装置10は、例えば切点226、230及び232などにおいてスロット222を検査するプロセスを含むが、この検査装置10は、スロット222に沿った任意の数の所望の接点を検査するのに使用できることを理解されたい。
【0015】
元に戻って図3に参照すると、検査装置10は、第1の装置12と第2の装置14とを含み、これら装置12及び14は、所定の水準と比較するために、相互に作用して正確に、便利にかつ迅速に実施可能な縁部破断部寸法を取得する手段を可能にする。第1の装置12は、ほぼ平坦な表面20を有するプレート18を支持したテーブル16を含むことができる。プレート18の平坦な表面20は、ベース部分23を有する加工物キャリッジ22を支持し、ベース部分23はネック部分29まで延びる。ベース部分23に結合されたネック部分29の端部の反対側に、ボールロックピンのような位置決めピン26を受けるための開口27を有する端部が位置する。ネック部分29の両端部間に配置されているのはピボット24であり、ピボット24は、ネック部分29及びプレート18の両方を貫通するように配向したファスナを含みかつ回転軸線25を有する。換言すれば、加工物キャリッジ22は、回転軸線25を有するピボット24の周りでプレート18の表面20に沿って滑動可能に回転する。ペグ30は、ピボット24の周りでの加工物キャリッジ22の回転角度範囲を制限して、加工物キャリッジ22がプレート18の設置面積の範囲内に完全に留まるのを保証し、これによって、好ましい実施形態では加工物キャリッジが約180度回転するのを可能にする。加工物キャリッジ22を所望の位置に固定するために、ネック部分29の開口27をプレート18内に形成された複数のテーブル開口28の1つと整列させて、開口27とテーブル開口28との両方を貫通させて位置決めピン26を配向する。複数のテーブル開口28は、加工物キャリッジ22の異なる位置決め位置を定める。プレート18内には任意の数のテーブル開口28を形成することができ、また隣接するテーブル開口28間での任意の数の角度間隔又は配置を所望に応じて選択することができることを理解されたい。例えば、好ましい実施形態は、第1の位置又はホーム位置と、ピボット24の周りで加工物キャリッジ22を第1の位置から反時計方向に約90度回転させることによって得られる第2の位置と、ピボット24の周りで加工物キャリッジ22を第2の位置から反時計方向にさらに約90度回転させることによって得られる第3の位置とにテーブル開口28を含むことができる。従って、第3の位置は、第1の位置から約180度の位置にある。
【0016】
図で用いる基準点は、第2の装置14のテーブル44と対向するテーブル16の1側に近接した位置84である。基準点84から見ると、ベース部分23は、第1の位置においてピボット24の右側まで延びて、3時の時計位置を定める。同様に、本明細書での目的のために、第2の位置は12時の時計位置を定め、また同様に第3の位置は9時の時計位置を定める。
【0017】
加工物キャリッジ22がタービンディスク200を固定するのを可能にするために、加工物キャリッジ22は、横送りテーブル42上に取付けられたほぼ垂直に延びるスピンドル36を含み、横送りテーブル42は、回転軸線25から独立した回転軸線38の周りで回転可能である。スピンドル36は、表面20と反対側の該スピンドル36の端部の直径が、該スピンドル36のベース部の直径よりも小さくなるのに十分な円錐要素を備えたほぼ円筒形の外形を形成しており、タービンディスク200をスピンドル36上に降ろした時に、タービンディスク200のボア204が、実質的にほぼ垂直方向の配向に自動調心されるようになるのが好ましい。スピンドル36は、プレート18の表面20に隣接するスリーブ32の周辺部を囲んでベース部34まで延びるスリーブ32によって覆われるのが好ましい。スリーブ32及びベース部34は、タービンディスク200と比較して相対的に軟らかい材料、例えば硬質被削性プラスチック、非金属材料又は他の傷つけない材料のいずれかなどの層からなり、タービンディスク200をスピンドル36上に取付けた時に、タービンディスク200のボア204を損傷しないようにするのが好ましい。しかしながら、スリーブ32及びベース部34はまた、タービンディスク200と加工物キャリッジ22との間で圧縮された時に過度に弾性変形しないほど十分な剛性がある材料からなり、従って取付けた時に、再現可能なかつ一貫したタービンディスク200の配向をもたらす。
【0018】
タービンディスク200をスピンドル36上に取付けるために、タービンディスク200を加工物キャリッジ22の上方に位置決めして、ボア204の中心を回転軸線38と整列させる。スピンドル36とタービンディスク200との間の整列が得られた後に、タービンディスク200のボア204は、スリーブ32及びベース部34と接触した状態に導かれる。
【0019】
軸線38の周りでの回転運動を可能にすることに加えて、横送りテーブル42により、プレート18の表面20に沿った2つの互いに直交する、例えばX及びY軸のような軸線方向のいずれか一方又は両方の方向への微調整を行うことができる能力が付加的に組入れられる。タービンディスク200の大きな重量のため、加工物キャリッジ22の下方に空気ベアリング40を組込むのが好ましい。空気ベアリング40は、空圧源(図示せず)とのインタフェースを含み、インタフェースは、空気ベアリング40の下方の表面とプレート18の表面20との間に捕捉された圧縮空気の層を形成して、加工物キャリッジ22とプレート18の表面20との間に実質的に摩擦のない相互接触をもたらす。
【0020】
第2の装置は、ベース部48を支持したテーブル44を含み、ベース部48は、該ベース部48から延びるほぼ垂直な支柱50を有するのが好ましい。支柱50は、該支柱の軸線52の周りで符号68又は74の方向に回転可能である。アーム54は、支柱50に沿って垂直方向72及び水平方向76に滑動可能に移動可能であり、アーム54は、支柱50に対して垂直方向72に移動させる間はほぼ水平位置に保持されるのが好ましい。アーム54の一端部には、トレーサユニット46が固定され、トレーサユニット46は、細棒(wand)58を有するトレーサヘッド56を含む。タービンディスク200のスロット面222のようなほぼ垂直な面から測定値を読みとるために使用する場合に、ボア204をスピンドル36の軸線38とほぼ一致した状態に位置決めする(図7)時には、細棒58はほぼ垂直方向になった角度78に配向するのが好ましく、一方また、細棒をその軸線66に沿って作動させる時には、細棒58は水平方向成分を備えるようにするのが好ましい。細棒58は、トレーサヘッド56から触針60まで延び、触針60は、細棒58に対してほぼ垂直に延びかつ先端62で終わるのが好ましい。先端62を検査すべき対象物の面に接触した状態に置いて、細棒58をその軸線66に沿って、好ましくはトレーサヘッド56に向かって移動するように導く時に、好ましくはトレーサヘッド56内部に収納した一対のセンサ(図示せず)が、コンピュータプログラム(図示せず)のようなアルゴリズムに信号を提供する。センサの1方は、細棒58のその軸線66に沿った移動に関連し、一方、他方のセンサは、先端62とスロット面222との間の接触に応答した細棒58の軸線80の周りでの角回転82に関連する。アルゴリズムは、センサからの信号を、X及びY軸座標のようなデータポイントに変換する。次に、データポイントは、許容範囲にあると考えられる所定の範囲の値と比較することができる。任意選択的に、データポイントは、ディスプレイに転送し(図示せず)、印書し、又は将来の参考又は機械加工のために記憶装置に保管することができる。
【0021】
制御装置又は制御パネルのマイクロプロセッサ(図示せず)によって実行される制御プログラム又はアルゴリズムを使用して、トレーサヘッド56の動作を制御することができるのが好ましい。この運動には、その軸線66に沿ったトレーサヘッド56の細棒58の移動、アーム54の軸線76に沿ったトレーサヘッド56の水平移動、支柱50の軸線52に沿ったトレーサヘッド56とアーム54との組合せの垂直移動、軸線80の周りでの細棒58と先端62との組合せの角回転移動82、及び支柱50の軸線52の周りでのトレーサヘッド56とアーム54との組合せの回転移動の任意の個々又は組合せが含まれる。これに代えて、これらの運動の全ての移動又は任意の組合せは、必要に応じてオペレータによって人手で実施することができる。
【0022】
図4は、タービンディスク200内に形成されたダブテールの縁部破断部輪郭を検査するための本発明による検査装置10を使用する検査プロセスを詳細に示すフローチャートである。図4の制御プロセスは、制御装置又は制御パネルのマイクロプロセッサによって実行される個別のプログラムとして実施することができ、或いは制御プロセスは、検査装置10のための制御プログラム内にサブプログラムとして実装することができる。
【0023】
図5〜図15は、本発明の検査装置10を使用してタービンディスク200の検査を実施するプロセスのシーケンスステップを示す。プロセスは、図4に示すようにステップ100におけるプロセス開始後、ステップ105における検査装置10の初期化で始まり、この初期化は、トレーサヘッド56及び加工物キャリッジ22が未だそれらのホーム位置にない場合には、トレーサヘッド56をホーム位置に移動させる段階と、加工物キャリッジ22を3時の時計位置のようなホーム位置に移動させる段階とを含む。加工物キャリッジ22を移動させるプロセスはオペレータによって制御することができるが、全プロセス、すなわち加工物キャリッジ22及びトレーサヘッド56を移動させる段階と共にタービンディスク200を装填する/取外す段階は、完全に自動化することができることを理解されたい。検査装置10の初期化が完了すると、ステップ110において、タービンディスク200が、装填される、すなわち前に説明しかつ図5〜図7に示すように、加工物キャリッジ22から延びるスピンドル36上に取付けられる。
【0024】
ステップ110においてタービンディスク200を装填した後に、ステップ115において、図8に示すように、軸線52の周りでのトレーサヘッド56の回転74、軸線76に沿ったアーム54の移動、軸線80の周りでの細棒58の回転、及び垂直軸線52に沿った垂直移動72の適切な組合せによって、トレーサヘッド56が位置決めされる。先端62が検査すべきスロット222の面に接触するようにトレーサヘッド56の位置決めが完了すると、ステップ120において、先端62は軸線66に沿ってトレーサヘッド56に向かって導かれながら、先端62はスロット222の輪郭をトレースする段階を開始する。例えば、タービンディスク200が3時の時計位置に位置決めされている場合には、先端62は、切点230(図2A)に沿ってスロット222の輪郭をトレースする。先端62は、スロット222の切点230に対してほぼ垂直であるほぼ直線経路に沿って、該経路を定める軸線とスロット222の面を定める軸線との間での約+/−3度の許容変動範囲の状態で導かれることが極めて重要である。
【0025】
例えば、図2A〜図2Bを参照すると、3時の時計位置では、細棒58及び先端62は、接触点238においてスロット222と接触し、軸線66に沿っておりかつ法線236に対して垂直な軸線228と同一平面にある移動方向86に導かれるのが好ましく、この法線236は、上面250に対してほぼ垂直でありかつ切点230と一致する。切点230は、スロット222の基部216の端縁に沿って位置する。先端62が方向86に沿って導かれる時に、先端62は、接触点238から切点230までの経路をトレースし、すなわち線236と一致する法線セグメント240をトレースし、次いでポスト210の上面250に沿って位置する終点246に至る。しかしながら、細棒58及び先端62が、移動方向86からの偏差角90を有する別の移動軸線88に沿って導かれる場合には、先端62の移動経路は異なる。接触点238は、両方の場合において同一であるが、細棒58及び先端62を方向88に沿って導くことによって、先端62は接触点238からタービンディスク200の縁部破断部に沿った接触点242まで延びる経路244をトレースし、次いでポスト210の上面250に沿って位置する終点246に至るようになる。法線セグメント240は、切点230に対して垂直な線、すなわち法線236と一致し、タービンディスク200の縁部破断部に沿った最短距離を定めることは明らかである。偏差セグメント244のような、切点240に対して垂直な線からのあらゆる偏差は、先端62によって見たとき及びその移動に関連するセンサによって検知したとき、この線の長さを増大させて、縁部破断部が前述の許容公差の範囲内にあるか否かに関して、誤った情報をオペレータに与えるおそれがある。
【0026】
上面250と一致する切点230の代わりに、切点230は、代わりに上面250と対向しておりかつ上面250とほぼ平行な下面252と一致させることができることを理解されたい。従って、直前の節での説明は、逆になる。軸線228、切点230及び終点246、248は、下面252と一致する。すなわち、先端62が、接触点238から切点230に導かれ、次に上面250に沿って終点246に至る代わりに、先端62は、接触点238から切点230に導かれ、次に下面252に沿って終点246に至る。従って、上面250と下面252との間の選択の違い以外は、動作の概念は、その他において同一である。
【0027】
軸線66に沿って細棒58を導きながらスロット222の面輪郭をトレースするトレーサヘッド56の場合、軸線66に沿った細棒58及び先端62の移動並びに軸線80の周りでの細棒58及び先端62の回転に関連するセンサはそれぞれ、ステップ125において、制御パネルに信号を送信し、制御パネルは次に、ステップ130において、前に説明したように信号をX、Y座標のようなデータポイントに変換する。信号をデータポイントに変換した後、ステップ135において、このデータポイントを所定の値の範囲と比較して、許容輪郭、すなわち例えば面取り、半径又は他の円滑な面移行などがスロット222の縁部破断部に沿って形成されているか否かを判定する。ステップ135は、データポイント及び縁部破断部の許容可能性のような他の情報を記憶装置に保管する段階を含む。
【0028】
ステップ135においてデータポイントの比較が完了したとき、異なる又は追加のスロット222の同一部分を検査するのが望ましい場合がある。ステップ140において、制御パネル(又はオペレータ)が追加のスロット222について同様なトレースを実施するように判定した場合には、タービンディスク200を軸線38の周りで回転させて、次の所望のスロット222を検査するために位置決めする。タービンディスク200を検査のために次のスロット222まで回転させた後、ステップ115からステップ135までを、前に説明したのと同じ方法で実施する。
【0029】
ステップ135を実施した後に、ステップ140において、制御パネル(又はオペレータ)は、追加のスロット222について同一のトレースを実施するか否かを判定する。ステップ140において追加のトレースを実施しないことにした場合には、プロセスの制御はステップ150に移り、そこで、制御パネル(又はオペレータ)は、ステップ150においてタービンディスク200上の同一又は他のスロット222について追加のトレースを実施するか否かを判定する。追加のトレースを実施することにした場合には、ステップ155において、タービンディスク200は、プレート18の表面20に沿って12時の時計位置のような新しい位置に移動される。タービンディスク200を移動させる段階は、テーブル開口28から位置決めピン26を取外すことによって、ピボット24と一致する軸線25の周りでタービンディスク200を回転させる段階と、前に説明しかつ図9及び図10に示すように、空気ベアリング40を起動させる段階とを含む。
【0030】
タービンディスク200を軸線25の周りで回転させる段階の前に又は同時に、先端62とタービンディスク200との間に十分な間隔が生じるまで軸線66に沿って先端62を後退させるか又は軸線80の周りで回転させて、先端62又は細棒58に対する損傷を回避する。タービンディスク200を軸線25の周りで十分に回転させ、ネック部分29の開口27が対応するテーブル開口28と整列したとき、開口27及びテーブル開口28を貫通させて位置決めピン26を配向して、加工物キャリッジ22及びタービンディスク200の両方の位置を固定する。タービンディスク200の位置を固定する段階の後に、次に、必要に応じて、タービンディスク200を軸線38の周りで符号70の方向(図10)に回転させて、先端62が前に検査したスロット222の異なる部分又は異なるスロット222とさえ係合するのに都合の良い配向にする。加えて、スロット222の異なる領域への接近を可能にするために、横送りテーブル42によって得られるX、Y軸調整のような微調整を行うことが必要となる場合がある。しかしながら、テーブル16及び44が適当に間隔を置いて配置されている場合には、アーム54の有効長が調整され、また加工物キャリッジ22のネック部分29が付加的な開口を含んでおり、ピボット24の周りで加工物キャリッジ22を回転させることによって定まる有効回転半径もまたテーブル開口28に対する変更を必要とせずに修正することができるような場合には、検査装置10は、タービンディスクの全ての構成とまではいかないがその多くに適応することができると思われる。
【0031】
ステップ155において、図10に示すように、プレート18の表面20に沿ってタービンディスク200を12時の時計位置まで移動させたとき、トレーサヘッド56をステップ115における位置に移動させて、先端62がスロット222に接触するようにする。しかしながら、トレーサヘッド56は、前のステップ145の間に移動されているので、トレーサヘッド56は既に実質的に所望の位置にある。従って、先端62をタービンディスク200のスロット222の異なる領域と接触した状態に位置決めするためには、必要とされるべき全ては、軸線66に沿って細棒58を動作させるか又は軸線80の周りで細棒58を回転させることであるが、とはいえ、軸線72に沿ってトレーサヘッド56を移動させる微調整及び/又は横送りテーブル42に対する微調整によってタービンディスク200を加工物キャリッジ22に対して移動させることが必要となる場合がある。トレーサヘッド56を位置決めした後に、前に説明した方法と実質的に同一の方法でステップ120からステップ135までが行われる。ステップ135が完了すると、ステップ140において、制御パネル(又はオペレータ)は、異なるスロット222について同一のトレースを実施するか否かを判定する。異なるスロット222について同一のトレースを実施することになった場合には、ステップ145において、前に説明した方法で軸線38の周りでタービンディスク200を回転させる。次に、制御は、前に説明したようなステップ115〜ステップ135に戻る。
【0032】
ステップ115〜ステップ135を実施した後に、ステップ140において、制御パネル(又はオペレータ)は、追加のスロット222を検査するか否かを判定する。ステップ140において追加のスロットの検査を実施しないことにした場合には、プロセスの制御はステップ150に移り、そこで、制御パネル(又はオペレータ)は、ステップ150において、タービンディスク200上の同一又は他のスロット222について追加のトレースを実施するかを判定する。制御パネルが、同一のスロット222について追加のトレースを検査することにすると判定した場合には、ステップ155において、加工物キャリッジ22は、前に説明しかつ図7に示すように、プレート18の表面20に沿ってピボット24の周りで9時の時計位置に移動される。タービンディスク200の移動が完了したとき、前に説明したのと実質的に同じ方法でステップ115からステップ135までを実施する。ステップ135を実施した後に、制御パネル(又はオペレータ)は、ステップ140において、追加のスロット222について同一のトレースを実施するか否かを判定する。ステップ140において追加のスロット222について同一のトレースを実施することになった場合には、プロセスの制御はステップ145に移り、次に、前に説明したようなステップ115からステップ135までに移る。ステップ135を実施した後に、制御パネル(又はオペレータ)は、ステップ140において、追加のスロット222について同一のトレースを実施するか否かを判定する。ステップ140において追加のスロット222についての同一のトレースを実施しないことになった場合には、プロセスの制御はステップ150に移り、そこで、制御パネル(又はオペレータ)は、ステップ150においてタービンディスク200上の同一又は他のスロット222について追加のトレースを実施するか否かを判定する。制御パネルが、同一のスロット222についての追加のトレースを検査しないことにすると判定した場合には、ステップ160において装置設定は初期化され、このステップ160で、前に説明したようにトレーサヘッド56及び加工物キャリッジ22をそれらのそれぞれのホーム位置に移動させのが好ましい。装置設定が初期化された後に、タービンディスク200は、ステップ170においてプロセスが終了する前にステップ165において検査装置10から取外される。
【0033】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、本発明の要素に対して種々の変更を加えることができまた本発明の要素を均等物で置き換えることができることは、当業者には明らかであろう。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】タービンディスクの斜視図。
【図2】Aは、タービンディスクの部分拡大平面図、Bは Aの切面1−1に沿って取った側面図。
【図3】本発明の検査装置の斜視図。
【図4】本発明の検査方法を詳細に示すフローチャート。
【図5】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図6】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図7】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図8】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図9】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図10】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図11】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図12】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図13】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図14】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【図15】本発明の検査装置を使用してタービンディスクの検査を実施するシーケンスステップを示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
10 検査装置
12 第1の装置
14 第2の装置
16 第1の装置のテーブル
18 プレート
20 表面
22 キャリッジ
32 スリーブ
34 ベース
36 スピンドル
44 第2の装置のテーブル
46 トレーサユニット
48 ベース部
50 支柱
54 アーム
56 トレーサヘッド
58 細棒
60 触針
62 先端
200 ディスク
204 ボア
206 ディスク部分
208 スリーブ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンブレード(220)を固定状態に受入れるようになった、ディスク(200)内に形成された複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトの縁部の輪郭を検査する方法であって、
前記ディスク(200)を受けるための第1の装置(12)を準備する段階と、
少なくとも2つのセンサと該少なくとも2つのセンサに関連する機器とを有し、前記第1の装置(12)によって前記ディスク(200)を該センサに対する所定の配向に固定するようになった第2の装置(14)を準備する段階と、
前記ディスク(200)を前記第1の装置(12)に固定する段階と、
前記ディスク(200)内に形成された複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトに近接させて前記機器を位置決めする段階と、
前記複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトの縁部に沿った切点(226、230、232)の上方に前記機器の先端(62)を導き、前記切点(226、230、232)における切点軸線と前記輪郭の縁部に対してほぼ垂直な線とによって定まる平面にほぼ一致する前記輪郭の面に沿った経路に前記先端を追従させ、前記輪郭の面に前記機器を物理的に接触させるようにする段階と、
前記機器の移動に基づいた前記少なくとも2つのセンサからの信号をアルゴリズムに送信する段階と、
前記アルゴリズムが受信した信号を前記経路に沿った複数の位置に変換する段階と、
前記複数の位置を前記複数のカットアウトのうちの1つのカットアウトの縁部の輪郭の許容可能性を判定するために所定の範囲の値と比較する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の装置(12)を準備する段階が、
表面(20)を有するプレート(18)と、
前記表面(20)に沿って滑動可能に移動可能なキャリッジ(22)と、
前記ディスク(200)のボア(204)を受けるように前記キャリッジ(22)から延びるスピンドル(36)と、
を含む第1の装置(12)を準備する段階を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の装置(12)が、前記プレート(18)の表面(20)内に形成されたピボットの周りで該表面(20)に沿って選択的に前記キャリッジ(22)を滑動可能に回転させるための手段をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記キャリッジ(22)が、2つの互いに直交する軸線に沿った調整を行うように構成された調整手段をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記キャリッジ(22)が、前記スピンドル(36)によって定まる軸線の周りで前記ディスク(200)を回転させるための回転手段をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記スピンドル(36)を覆って取付けられたスリーブ(32)をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記スリーブ(32)がベース部(34)まで延びている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スリーブ(32)及びベース部(34)が、前記ディスクのボアを傷つけないほど十分に柔らかい材料からなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1の装置が、前記表面(20)とキャリッジ(22)との間に実質的に摩擦のない接触面を形成する手段をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第2の装置(14)を準備する段階が、
テーブル(44)によって移動可能に支持されたトレーサヘッド(56)を含み、
前記トレーサヘッド(56)が前記機器を滑動可能に導きかつ回転可能に支持し、
前記少なくとも2つのセンサのうちの一方のセンサが、前記機器のほぼ軸線に沿って該機器を滑動可能に導くことに関連し、
前記少なくとも2つのセンサのうちの他方のセンサが、前記機器の回転に関連する、
第2の機器(14)を準備する段階を含む、
請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−2772(P2006−2772A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174446(P2005−174446)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】