説明

ディーゼルエンジンの制御装置

【課題】 オイル内の燃料の固化によるエンジンの焼きつきを防止する。
【解決手段】 低温状態では固化する特性の燃料を使用し、潤滑用オイルの動粘度に基づいて運転状態を制御するディーゼルエンジンの制御装置において、燃料の混入によって希釈されたオイルの希釈度合を推定する希釈度合推定手段と、オイルの温度に関連するパラメータ値を検出するパラメータ値検出手段と、希釈度合推定手段が推定した希釈度合とパラメータ値検出手段が検出したパラメータ値とに基づいて、オイルの動粘度を算出する動粘度算出手段と、動粘度算出手段が算出した動粘度が所定値より大きいときにオイルを異常と判定するオイル異常判定手段と、オイル異常判定手段が異常と判定したときにエンジン回転速度の高速回転化を抑制する回転制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの制御装置、特にオイルの異常の有無を検出して運転状態を制御する装置に関し、ディーゼルエンジンの運転制御技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン内のピストンとシリンダとの摺動部などの潤滑部を潤滑するオイルは、そのオイル自体に起因する潤滑部の焼きつきなどを確実に防止するために、例えば特許文献1に記載されたエンジンオイル検査装置のように、その温度や動粘度などが監視されている。そして、その監視結果に基づいてオイルの異常が検出されると、その旨がワーニングランプなどの報知手段によって乗員に報知される。
【0003】
このオイルの異常には、オイル自身の劣化による異常以外に、燃料によるオイルの希釈を原因とする異常があって、これは、燃焼室に噴射された燃料がピストンとシリンダとの摺動部を潤滑するオイルに混入することにより起こる。
【0004】
特に、排気通路に排気中の微粒子を除去するためのパティキュレートフィルタが設置されたディーゼルエンジンにおいては、膨張行程中(厳密には、主噴射の燃料が燃焼した後)に燃料を燃焼室内に後噴射し、その後の排気行程で燃焼室から排出された未燃のままの該燃料を触媒によって燃焼して高温の排気ガスを発生させ、この排気ガスによって触媒下流側のパティキュレートフィルタに捕獲されている排気微粒子を燃焼する、いわゆるフィルタの再生が行われるが、その場合、燃焼室内で燃焼しない燃料がシリンダ壁面に付着し、ピストンとシリンダとの摺動部を潤滑するオイルに混入することが多くなる。そして、この燃料の混入によってオイルが希釈されると、その動粘度が下がり、潤滑性が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−317524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料を含むオイルは、常温または高温では上述したように燃料の量に応じてその動粘度は下がるが、低温では逆に動粘度が上がる。これは、ディーゼルエンジンの燃料が低温になればなるほど固化(ワックス化)するという特性による。そのため、オイル内燃料の量が増えてその温度が低くなると、オイルの動粘度が適正値を超えて高くなることがある。その結果、オイルが潤滑部に十分に流れず、焼きつきが発生する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、低温になるとオイル内燃料がワックス化してオイルの動粘度が適正値を超える可能性を考慮して該オイルの異常の有無を検出し、燃料のワックス化を原因とするディーゼルエンジンの焼きつきを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、低温状態では固化する特性の燃料を使用し、潤滑用オイルの動粘度に基づいて運転状態を制御するディーゼルエンジンの制御装置において、
燃料の混入によって希釈されたオイルの希釈度合を推定する希釈度合推定手段と、
オイルの温度に関連するパラメータ値を検出するパラメータ値検出手段と、
前記希釈度合推定手段が推定した希釈度合と前記パラメータ値検出手段が検出したパラメータ値とに基づいて、オイルの動粘度を算出する動粘度算出手段と、
前記動粘度算出手段が算出した動粘度が所定値より大きいときにオイルを異常と判定するオイル異常判定手段と、
前記オイル異常判定手段が異常と判定したときにエンジン回転速度の高速回転化を抑制する回転制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のディーゼルエンジンの制御装置において、
前記オイル異常判定手段がオイル異常と判定したときに、乗員にオイルの異常を報知するオイル異常報知手段を有することを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの制御装置において、
前記動粘度算出手段が算出する動粘度が、前記所定値より大きい第2の所定値より大きくなった場合、エンジンの次回の始動を制限する始動制限手段を有することを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求3のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの制御装置において、
前記希釈度合推定手段は、排気通路に設置されたパティキュレートフィルタ再生のために噴射された燃料の噴射量に基づいてオイルの希釈度合を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、オイルの温度、すなわちオイル内燃料の温度と、燃料によるオイルの希釈度合、すなわちオイル内燃料の量とによってオイルの動粘度が算出され、その動粘度が燃料のワックス化によって所定値より大きくなると、オイルが異常と判定され、ディーゼルエンジンの回転速度の高速回転化が抑制される。これにより、エンジンの高速回転時に起こりうる、オイル内燃料のワックス化を原因とするエンジンの焼きつきが防止される。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、オイルの異常と判定すると、その異常がオイル異常報知手段を介して乗員に報知される。これにより、オイルの異常を乗員に認知させることができる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、オイルの動粘度が前記所定値に比べて大きい第2の所定値より大きい場合、ディーゼルエンジンの次回の始動が制限される。これにより、エンジン始動後すぐのエンジンの焼きつきが防止される。
【0015】
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、燃料によるオイルの希釈度合は、排気通路に設置されたパティキュレートフィルタ再生のために噴射された燃料の噴射量に基づいて推定される。これにより、パティキュレートフィルタを備えた車両において、ディーゼルエンジンのオイルに混入する燃料の量、すなわち希釈度合を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジンおよびその排気系の概略的な構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジンの制御装置を含む制御系の概略図である。
【図3】オイル温度と、オイルの希釈度合と、オイルの動粘度との関係を示す図である。
【図4】ディーゼルエンジンのオイルの異常を判定するためのフローを示す図である。
【図5】エンジン始動に関する制御のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る、ディーゼルエンジンおよびその排気系の構成を簡略的に示している。また、図2は、ディーゼルエンジンの制御系を示している。
【0019】
図1に示すディーゼルエンジン10は、その排気通路12に、触媒14と、その下流側に、排気微粒子の外部への排出を抑制するために該微粒子を捕獲するパティキュレートフィルタ16とを有する。
【0020】
また、パテキュレートフィルタ16の上流側の圧力を検出するフィルタ上流側圧センサ18と、該フィルタ16の下流側の圧力を検出するフィルタ下流側圧センサ20と、ディーゼルエンジン10のピストン10aとシリンダ10bとの摺動部などの潤滑部を潤滑するオイルの温度を検出するオイル温度センサ22とを有する。
【0021】
さらに、図1には図示されていないが、ディーゼルエンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサ24を有する。
【0022】
制御装置50は、フィルタ上流側圧センサ18、フィルタ下流側センサ20、オイル温度センサ22、エンジン回転数センサ24からの信号に基づいて種々の制御を実行するように構成されている。
【0023】
まず、制御装置50は、フィルタ上流側圧センサ18とフィルタ下流側圧センサ20とからの信号に基づいて、パティキュレートフィルタ16の上流側圧と下流側圧との圧力差を算出し、算出した圧力差から該フィルタ16が捕獲している排気微粒子量を算出するように構成されている。具体的には、実験的に圧力差と排気微粒子の捕獲量との関係が求められており、その関係と算出した圧力差からパティキュレートフィルタ16が捕獲している排気微粒子量を算出する。上流側と下流側との圧力差が大きくなるほど、パティキュレートフィルタ16は多くの排気微粒子を捕獲しており、圧力差が略ゼロの場合は、捕獲量は略ゼロである。
【0024】
このパティキュレータフィルタ16が捕獲している排気微粒子量が所定量になると、制御装置50は、パティキュレートフィルタ16を再生する制御を実行する。
【0025】
具体的に説明すると、膨張行程中の主噴射された燃料が燃焼した後に噴射ノズル10cを制御して燃焼室10d内に所定量の燃料を後噴射し、その後の排気行程で燃焼室10dから排気通路12内に排出された未燃のままの該燃料を触媒14によって燃焼して高温の排気ガスを発生させ、この排気ガスによって触媒14下流側のパティキュレートフィルタ16に捕獲されている排気微粒子を燃焼することにより、フィルタ16の再生を実行する。この後噴射は、パティキュレートフィルタ16が捕獲する排気微粒子量が略ゼロになるまで(上流側と下流側との圧力差が略ゼロになるまで)、繰り返し実行される。
【0026】
また、制御装置50は、ディーゼルエンジン10のオイルの希釈度合を監視している。
【0027】
オイルの希釈は、燃料の混入によって起こり、主にパティキュレートフィルタ16の再生のために実行した後噴射により起こる。
【0028】
説明すると、燃焼室10d内に後噴射された燃料は、ほとんどがその後の排気行程により排気通路12内に排出されるが、一部がシリンダ10bの壁面に付着して燃焼室10d内に残る。付着した燃料は、ピストン10aの摺動によって、該ピストン10aとシリンダ10bとの摺動部を潤滑するオイルに混入する。これにより、オイルが希釈される。
【0029】
なお、主噴射された燃料の一部もシリンダ10bの壁面に付着する。しかしながらシリンダ10bの壁面に付着した燃料は、燃焼室10d内に漂う燃料とともに燃焼されるので、本実施形態の場合、主噴射によるオイルに混入する量は、後噴射に比べて極めて少なく、そのためオイルの希釈に大きく関与しないものとして考慮していない。
【0030】
当然ながら、オイルが燃料の混入によって希釈されると、潤滑性が低下してディーゼルエンジン10に焼きつきが発生する可能があるので、制御装置50は、オイルの希釈度合を推定し、そのオイルの希釈度合が、焼きつきが発生する所定の希釈度合より小さいことを確認している。推定した希釈度合が、所定の希釈度合より大きい場合は、オイルに異常があるとして、ワーニングランプ26を介して乗員に報知する。
【0031】
このオイルの希釈度合を、制御装置50は、燃料の後噴射量とオイル温度センサ22が検出するオイル温度とに基づいて推定している。
【0032】
具体的に説明すると、1回の所定量の後噴射によってオイルに混入する燃料の量(一後噴射あたりの混入量)は、該所定量に対して概ね一定割合の量であって、それは実験的に求められている。
【0033】
また、オイル内の燃料は、そのままオイル内に留まることはなく、オイルの温度に対応して徐々に蒸発する。その温度と蒸発量(単位時間当たりの蒸発量)との関係は実験的に求められている。
【0034】
したがって、ある時点でのオイル内の燃料の量は、ある時点までの後噴射の回数と所定量(一後噴射あたりの噴射量)をかけて算出した量(総後噴射量)に対して一定割合の量(総混入量)から、ある時点までのオイル温度の変化に対応する蒸発量を引いた量となる。これにより、精度よくオイルの希釈度合が推定される。これを可能とするために、制御装置50は、後噴射の実行回数をカウントし、オイルの温度変化を記憶している。
【0035】
さらに、制御装置50は、上述のオイルの希釈度合とオイル温度センサ22が検出するオイルの温度とに基づいて、オイルの動粘度を監視している。
【0036】
オイルの動粘度は、図3に示すように、所定温度Tc以下の低温領域では、温度が低くなればなるほど、オイル内燃料が固化(ワックス化)し、その値が大きくなる。この所定温度Tcは、燃料が固化し始める温度である。
【0037】
また、オイルの動粘度は、図3に示すように、オイルの希釈度合が大きいほど、すなわちオイル内燃料量が多いほど、温度が低くなれば、その値が大きくなる。
【0038】
制御装置50は、車両の走行中、推定したオイルの希釈度合と、オイル温度センサ22が検出するオイルの温度と、図3に示すオイル温度とオイルの希釈度合とオイルの動粘度との関係を示すマップに基づいて、オイルの動粘度を算出する。
【0039】
算出したオイルの動粘度が所定値ν1(請求の範囲に記載の「所定値」に対応。)より大きい場合、オイルに異常があるとして、制御装置50は、ディーゼルエンジン10の回転速度の高速化を制限する。具体的には、エンジン回転数センサ24が検出する回転数に基づいてデーゼルエンジン10の回転速度が所定速度以下になるように、噴射ノズル10dが噴射する燃料の量を制御する。これにより、低速回転時に比べて高速回転時に起こりやすい、オイル内燃料のワックス化、すなわちオイルの流動性低下を原因とするエンジンの焼きつきを防止している。
【0040】
また、算出したオイルの動粘度が所定値ν2(ν1より大きい値であって、請求の範囲に記載の「第2の所定値」に対応。)より大きい場合、オイルに異常があるとして、制御装置50は、ディーゼルエンジン10の次回の始動を禁止する。これは、再始動時は最もディーゼルエンジン10が冷えており、すなわちオイル内燃料が大きくワックス化しており、そのため、エンジン10を始動してもオイルが十分に潤滑部に流れず、再始動後すぐにエンジン10が焼きつく可能性があるからである。
【0041】
ここからは、これまで説明した制御装置50が実行するディーゼルエンジン10のオイルの異常判定に関する制御の流れを図4に示すフローを参照しながら説明する。
【0042】
まず、ステップS100において、制御装置50は、オイル温度センサ22が検出するオイル温度Tと総後噴射量Qとに基づいて、オイル内燃料の量を算出し、その算出した量からオイルの希釈度合Rdを推定する。
【0043】
次に、ステップS110において、制御装置50は、ステップS100で推定したオイルの希釈度合Rdが所定の希釈度合Rcより小さいか否かを判定する。小さい場合は、ステップS120に進む。そうでない場合は、ステップS210に進む。
【0044】
ステップS120において、制御装置50は、オイル温度検出センサ22が検出するオイル温度Tが所定温度Tcより小さいか否か、すなわち燃料がワックス化する温度領域であるか否かを判定する。小さい場合はステップS130に進む。そうでない場合は、S230に進む。
【0045】
ステップS130において、制御装置50は、オイル温度検出センサ22が検出するオイル温度Tと、ステップS100で推定したオイルの希釈度合Rdと、図3に示すマップに基づいて、オイルの動粘度νを算出する。
【0046】
ステップS140において、制御装置50は、ステップS130で算出した動粘度νが所定値ν2より大きいか否かを判定する。大きい場合はステップS150に進む。そうでない場合はステップS170に進む。
【0047】
ステップS150において、制御装置50は、オイルの動粘度νが所定値ν2を超えていることから、オイルに異常があると判定する。そして、ステップS160において、ディーゼルエンジン10の次回の始動を禁止する(始動禁止フラグをオンにする。)。
【0048】
一方、ステップS140でオイルの動粘度νがν2より大きくないと判定すると、制御装置50は、ステップS170において、該動粘度νが所定値ν1より大きいか否かを判定する。大きい場合はステップS180に進む。そうでない場合はステップS230に進む。
【0049】
ステップS180において、制御装置50は、オイルの動粘度νが所定値ν1を超えていることから、オイルに異常があると判定する。
【0050】
ステップS190において、制御装置50は、オイルに異常があるとして、ワーニングランプ26を点灯する。その後、ステップS200において、制御装置50は、ディーゼルエンジン10の回転速度の高速化を制限する。そして、リターンに進み、スタートに戻る。
【0051】
一方、ステップS110でオイルの希釈度合Rdが所定の希釈度合Rcより小さくないと判定すると、すなわち大きいと判定すると、制御装置50は、ステップS210において、オイルに異常があると判定する。その後、ステップS220において、ワーニングランプ26を点灯する。そして、リターンに進み、スタートに戻る。
【0052】
一方、ステップS120でオイル温度Tが所定温度Tcより小さくない、すなわち燃料がワックス化する温度領域でないと判定すると、制御装置50は、ステップS230において、オイルに異常がないと判定する。そして、リターンに進み、スタートに戻る。
【0053】
次に、ステップS160において、登場したディーゼルエンジン10の始動禁止フラグに関する制御、すなわちディーゼルエンジン10の始動に関する制御の流れについて、図5に示すフローを参照しながら説明する。
【0054】
まず、ステップS300において、制御装置50は、イグニッションスイッチがオンされているか否かを確認する。イグニッションスイッチのオンを確認して次のステップに進む。
【0055】
次のステップS310において、制御装置50は、ディーゼルエンジン10の始動禁止フラグがオンであるか否かを判定する。オンの場合はステップS320に進む。そうでなくオフの場合はステップS330に進む。
【0056】
ステップS320において、制御装置50は、ワーニングランプ26を点灯する。
【0057】
ステップS330において、制御装置50は、ディーゼルエンジン10を始動する。
【0058】
本実施形態によれば、オイルの温度T、すなわちオイル内燃料の温度と、燃料によるオイルの希釈度合Rd、すなわちオイル内燃料の量とによってオイルの動粘度νが算出され、その動粘度νが燃料のワックス化によって所定値ν1より大きくなると、オイルが異常と判定され、ディーゼルエンジン10の回転速度の高速回転化が抑制される。これにより、エンジン10の高速回転時に起こりうる、オイル内燃料のワックス化を原因とするエンジン10の焼きつきが防止される。
【0059】
また、オイルの動粘度νが所定値ν1に比べて大きい所定値ν2より大きい場合、ディーゼルエンジン10の次回の始動が制限される。これにより、始動後すぐのエンジン10の焼きつきが防止される。
【0060】
さらに、オイルの異常がある場合は、その異常がワーニングランプ26を介して乗員に報知される。これにより、オイルの異常を乗員に認知させることができる。
【0061】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0062】
例えば、上述の実施形態の場合、オイルの希釈は、主にパティキュレートフィルタ16の再生のための後噴射によって起こるものとして、その希釈度合を後噴射量に基づいて推定しているがこれに限らない。後噴射前の主噴射(燃焼室に噴射された燃料が燃焼される噴射)によるオイルの希釈を考慮してもよい。例えば、主噴射によるオイルの希釈度合、すなわちピストンとシリンダとの摺動部を潤滑するオイルに混入する燃料の量は、エンジンの回転速度と負荷に基づいて決定される噴射量から推定することができる。これにより、パティキュレートフィルタを備えず、後噴射を実行しないエンジンを搭載した車両においても、オイル内燃料のワックス化を原因とするエンジンの焼きつきを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明は、低温状態ではワックス化する特性の燃料を使用し、潤滑用オイルの動粘度に基づいて運転状態を制御するディーゼルエンジンを搭載した車両において、低温になるとオイル内燃料がワックス化してオイルの動粘度が適正値を超える可能性を考慮して該オイルの異常の有無を検出し、燃料のワックス化を原因とするディーゼルエンジンの焼きつきを防止することができる。したがって、ディーゼルエンジンを搭載した車両の分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0064】
10 ディーゼルエンジン
22 パラメータ値検出手段(オイル温度センサ)
50 希釈度合推定手段、動粘度算出手段、オイル異常判定手段、回転制御手段(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温状態では固化する特性の燃料を使用し、潤滑用オイルの動粘度に基づいて運転状態を制御するディーゼルエンジンの制御装置において、
燃料の混入によって希釈されたオイルの希釈度合を推定する希釈度合推定手段と、
オイルの温度に関連するパラメータ値を検出するパラメータ値検出手段と、
前記希釈度合推定手段が推定した希釈度合と前記パラメータ値検出手段が検出したパラメータ値とに基づいて、オイルの動粘度を算出する動粘度算出手段と、
前記動粘度算出手段が算出した動粘度が所定値より大きいときにオイルを異常と判定するオイル異常判定手段と、
前記オイル異常判定手段が異常と判定したときにエンジン回転速度の高速回転化を抑制する回転制御手段とを有することを特徴とするディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディーゼルエンジンの制御装置において、
前記オイル異常判定手段がオイル異常と判定したときに、乗員にオイルの異常を報知するオイル異常報知手段を有することを特徴とするディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの制御装置において、
前記動粘度算出手段が算出する動粘度が、前記所定値より大きい第2の所定値より大きくなった場合、エンジンの次回の始動を制限する始動制限手段を有することを特徴とするディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求3のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの制御装置において、
前記希釈度合推定手段は、排気通路に設置されたパティキュレートフィルタ再生のために噴射された燃料の噴射量に基づいてオイルの希釈度合を推定することを特徴とするディーゼルエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−185282(P2010−185282A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27997(P2009−27997)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】