説明

ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置

【課題】ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置の搭載汎用性を向上する。
【解決手段】酸化触媒4、又は/及び、ディーゼルパティキュレートフィルタ5と、酸化触媒4、又は/及び、ディーゼルパティキュレートフィルタ5を収納するハウジング10・20と、を有するディーゼルエンジン用黒煙浄化装置1において、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ5を再生するために排気ガス温度を上昇させる排気ガス絞り機構としての開閉弁24を備え、前記開閉弁24は前記ハウジング10・20内に配置されるディーゼルエンジン用黒煙浄化装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置、詳しくはディーゼルエンジン用黒煙浄化装置におけるディーゼルパティキュレートフィルタ筐体の構造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置は公知である。ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置は、ディーゼルエンジンの有毒な排出ガスのうち粒子状物質(PM)を取り除く装置である。ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置には、パティキュレートフィルタが備えられている。パティキュレートフィルタは、排気ガス中のPMを細かい網目で捕まえるフィルタである。ここで、パティキュレートフィルタは、フィルタ機能のみしか有さないため、長く使用すると詰まりが生じて排気負荷が大きくなり効率が悪化する。そこで、パティキュレートフィルタを温めてPMを燃やす(フィルタを再生する)必要がある。フィルタ再生装置として、酸化触媒方式又は高圧再生方式等がある。
【0003】
酸化触媒方式とは、酸化触媒によって燃料の酸化反応を促進して、パティキュレートフィルタを温める方式をいう。酸化触媒は、パティキュレートフィルタの上流側に別体で配置されるか一体型としてパティキュレートフィルタの表面に塗られ、又は担持されている。酸化触媒方式は、酸化触媒に未燃物(燃料)やCOを接触させて、未燃物(燃料)やCOが燃えることで(酸化反応)酸化触媒の温度を上げて、その熱でパティキュレートフィルタを温める。このようにして、パティキュレートフィルタをPMが燃える約600度まで上昇させる。
【0004】
高圧再生方式とは、パティキュレートフィルタの下流側の排気通路に排気絞り機構を設ける方式をいう。ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置は、排気通路を絞ることによりパティキュレートフィルタ内の圧力を高めて排気ガスを昇温することで、パティキュレートフィルタを温める。例えば、特許文献1は、排気絞り弁を備える内燃機関の排気浄化システムを開示している。
【特許文献1】特開2006−322364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業用機械は、エンジンを作るメーカーと作業機を作るメーカーとが異なる場合がある。つまり、同じ作業機のエンジンであっても、作業機を作るメーカーによって搭載位置又は搭載空間が異なる場合がある。特に、エンジンの吸排気系は、各メーカーが独自のレイアウトにするため、各メーカーによって異なる場合が多い。
【0006】
近年、ディーゼルエンジンにおける排ガスの排出規制に伴い、既存の作業機にディーゼルパティキュレートフィルタを搭載する場合がある。ディーゼルパティキュレートフィルタは、従来のマフラーの代わりに搭載されるため、形態もマフラーと互換性が求められる。ところが、ディーゼルパティキュレートフィルタの後流に排気絞り機構を付加しようとすると、新たにスペースを検討する必要が生じるため、作業機側のレイアウトの大幅変更を求められる場合がある。
【0007】
そこで、解決しようとする課題は、ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置の搭載汎用性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
すなわち、請求項1においては、酸化触媒、又は/及び、ディーゼルパティキュレートフィルタと、該酸化触媒、又は/及び、ディーゼルパティキュレートフィルタを収納する筐体と、を有するディーゼルエンジン用黒煙浄化装置において、前記ディーゼルパティキュレートフィルタを再生するために排気ガス温度を上昇させる排気ガス絞り機構を備え、前記絞り機構は前記筐体内に配置されるものである。
【0010】
請求項2においては、請求項1記載のディーゼルエンジン用黒煙浄化装置において、前記絞り機構は前記ディーゼルパティキュレートフィルタの後流に配置され、前記絞り機構の後流であって前記筐体内に消音部が配置されるものである。
【0011】
請求項3においては、請求項1又は2記載のディーゼルエンジン用黒煙浄化装置において、前記絞り機構を開度調整するアクチュエータを備え、前記アクチュエータは前記消音部に設けられるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、排気絞り機構をディーゼルパティキュレートフィルタ筐体内に配置することで、別途排気絞り機構を設ける必要がないため、ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置の搭載汎用性を向上できる。
【0014】
請求項2においては、請求項1記載の効果に加え、消音部をディーゼルパティキュレートフィルタ後流に配置する場合であっても、消音部をディーゼルパティキュレートフィルタ筐体内に配置することで、別途消音部を設ける必要がないため、ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置の搭載汎用性を向上できる。
【0015】
請求項3においては、請求項1又は2記載の効果に加え、排気絞り機構のアクチュエータを通過する排気ガスの影響を直接受けない消音部に設けるため、アクチュエータへの熱影響を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係るディーゼルエンジン用黒煙浄化装置の全体的な構成を示す構成図、図2は同じく排気ガスの流れを示す構成図である。
【0017】
まず、図1を用いて、ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置1(以下、黒煙浄化装置と称する)の全体構成について、簡単に説明する。
図1に示すように、黒煙浄化装置1は、大きくは、入口部2、酸化触媒4、パティキュレートフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ)5、及び出口部3から構成されている。また、入口部2及び酸化触媒4は、筐体としてのハウジング10の中に形成されている。一方、出口部3は、筐体としてのハウジング20の中に形成されている。さらに、ハウジング10・20の間には、パティキュレートフィルタ5が配置されている。そして、パティキュレートフィルタ5とハウジング10・20の両者は、ガスケット15で気密を保ち、かつ、V字バンド14で一体に固着されている。また、前記パティキュレートフィルタ5は、ハウジング10・20に対し着脱可能となっている。
なお、本実施例では、酸化触媒4及びパティキュレートフィルタ5を黒煙浄化装置1の内部に配置する構成としているが、酸化触媒4又はパティキュレートフィルタ5のみを黒煙浄化装置1内に配置する構成であっても良い。
【0018】
入口部2は、断熱吸音材8が配置されている。断熱吸音材8は、断熱吸音材押え板13及び16で入口部2の内壁に押し付けられている。また、入口部2には、エンジン(図示略)から排気ガスHを導く入口管6が配置されている。入口管6は、入口部2を略鉛直方向に挿通している。さらに、入口管6は、一端には排気管(図示略)を介してエンジンと接続するための開口部を設けており、他端は封止している。そして、入口管6は、円筒側壁において、多数の小孔6aが設けられている。排気ガスHは、この小孔6aを介して入口管6から入口部2内へ入るようになっている。
【0019】
酸化触媒4は、略円筒形であり、排気ガスHの流れる方向に格子状(ハニカム状)の通路が形成されるモノリス担体(図示略)を有している。モノリス担体上には、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属が担持されている。このような触媒金属の担持により、酸化触媒4にCOや炭化水素(HCなど)の酸化力が付与される。なお、モノリス担体の材質は、本実施例ではコージェライトとしているが、特に限定するものではなく、炭化ケイ素又はステンレス等を用いることもできる。
【0020】
パティキュレートフィルタ5は、略円筒形のハニカムフィルタであって、コージェライトのようなセラミックスからなる多孔質の隔壁で仕切られた多角形断面を有するものである。また、パティキュレートフィルタ5は、これらの隔壁により多数の互いに平行に形成された貫通孔の相隣接する入口部と出口部を交互に実質的に封止することにより構成される。隔壁には、Pt等の触媒金属がコーティングされ、触媒機能が担持される。
このような構成とすることで、パティキュレートフィルタ5では、パティキュレートフィルタ5の入口側から導入されたエンジンの排気ガスHが多孔質の隔壁を通過する際に、排気ガスHに含まれる微粒子からなるPMがろ過されて、PMが除去された排気ガスHが出口管22から排出されるように構成されている。
なお、触媒金属としては、本実施例ではPt等を用いているが、特に限定するものではなくPd、Rh、Ir等を用いることもできる。
【0021】
以上までの黒煙浄化装置1の構成は従来技術と略同様である。
ここで、図1を用いて、本発明の特徴である出口部3について、詳細に説明する。
図1に示すように、出口部3は、出口管22、共鳴管23、排気絞りとしての開閉弁24、及び開閉弁24を駆動制御するアクチュエータ25から構成されている。消音部としての共鳴管23及び後述する共鳴室28は、排気ガスHを消音すなわち騒音を低減する機能を有する。開閉弁24は、出口管22を絞ることでパティキュレートフィルタ6内の排気ガスHを昇温する機能を有する。
本実施例では、出口管22、共鳴管23及び開閉弁24は、筐体としてのハウジング20内に収納されている。一方、アクチュエータ25は、ハウジング20の一側面20cの外部に設けられている。
【0022】
出口管22は、出口部3を略水平方向に挿通している。また、出口管22は、円筒形状で形成され、一端22eはパティキュレートフィルタ5を通過した排気ガスHを導入するため開口されており、他端22fは排気ガスHを排出するための開口されている。さらに、出口管22において、端22eから端22f(排気ガスHの進行方向)に向かう途中には、開閉弁24及び共鳴管23が設けられている。
【0023】
共鳴管23は、出口管22の軸心方向中央より略他端22f側において、出口管22の半径方向すなわち出口部3を鉛直方向に挿通している。また、共鳴管23は、円筒形状で形成され、両端は開放されている。
共鳴室28は、ハウジング20内において、ハウジング20と出口管支持材27とで形成される空間である。出口管支持材27は、出口管22の一端22eを支持する部材である。共鳴管23の径及び長さと共鳴室28の容積は、排気音又は後述する気流音の周波数により最も騒音が低下するように定められている。
【0024】
開閉弁24は、出口管22の内径と略同一の外形である円板状にて形成されている。また、開閉弁24は、開閉弁24の略中央(直径部分)において、出口部3を鉛直方向に挿通し、かつハウジング20の一側面20cを貫通する軸24aに固設されている。
【0025】
アクチュエータ25は、筐体となるハウジング20の外側の支持台26上に設けられている。また、アクチュエータ25の出力軸は、前記軸24aと連結されている。さらに、アクチュエータ25は、制御手段となるECU(Engine Control Unit)30と接続されている。
【0026】
支持台26は、ハウジング20の一側面20cに設けられている。また、支持台26は、Ω型形状で構成されているため、アクチュエータ25とハウジング20との間に隙間Sが形成されている。
【0027】
このような構成とすることで、ECU30は、アクチュエータ25により開閉弁24の回動角度を制御する。つまり、出口管22を通過する排気ガスHは、開閉弁24の回動動作により通過量が制御(絞り制御)され、或いは遮断される。
このようにして、エンジン回転数が低い場合或いはエンジン始動時等において、エンジン回転に応じて開閉弁24を閉回動して排気ガスの通過量を絞ることで排気ガス温度を上昇させて、酸化触媒4においてPMの燃焼を促進し詰まりを防止する。また、パティキュレートフィルタ6に詰まりが生じて再生処理を行う場合は、開閉弁24の閉制御によってパティキュレートフィルタ6の温度を上昇させて、PMを燃焼させる。
なお、アクチュエータ25としては、本実施例ではステッピングモータを用いているが、特に限定するものではない。また、本実施例では排気絞りとなる開閉弁24をバタフライ弁としているが、出口管22の通路面積を変更できる構成であれば限定するものではない。
【0028】
次に、図2を用いて、排気ガスHの流路について、詳細に説明する。
図2に示すように、排気ガスHは、黒塗り矢印で表されている。排気ガスHは、入口管6の小孔6aを介して入口部2へと導入され、続いてパティキュレートフィルタ6を通過してから出口部3から機外へ排出される。なお、酸化触媒4及びパティキュレートフィルタ6内における排気ガスHの挙動は説明を省略する。
パティキュレートフィルタ6内の排気ガスHは、開閉弁24の開閉動作により通路を絞られることで圧力が高められる。そのため、パティキュレートフィルタ6内の排気ガスHは、昇温され、酸化触媒4及びパティキュレートフィルタ5を温めることができる。
さらに、出口管22を通過する排気ガスHは、開閉弁24が絞られることにより気流音を発生する。この気流音は、共鳴管21から共鳴室28に導かれることによって低減される。つまり、出口管22の直径及び長さ、並びに共鳴室28の容積は、ヘルムホルツ共鳴器の原理により、気流音の周波数に対して消音効果が得られるように定められている。
ここで、図2において、共鳴管23を経由して共鳴室28に導かれた排気ガスH´を破線矢印で表している。特記すべき事項として、排気ガスH´は、共鳴室28において滞留するのみであって、一定の流路を形成するものではない。
【0029】
このような構成とすることで、以下の効果が得られる。
すなわち、排気絞り機構としての開閉弁24をハウジング20内に設けることで、別途本実施例の黒煙浄化装置1の外部に排気絞り機構を設ける必要がない。そのため、黒煙浄化装置1はコンパクトに構成されて搭載汎用性を向上できる。
また、消音部としての共鳴管23及び共鳴室28は、パティキュレートフィルタ5の後流に配置する必要がある。排気ガスHの消音効果を高めるためである。本実施例では、共鳴管23及び共鳴室28をハウジング20内に収納することで、別途黒煙浄化装置1の外部に別途消音部を設ける必要がない。そのため、黒煙浄化装置1の搭載汎用性を向上できる。
【0030】
また、アクチュエータ25は、熱から保護する必要がある。本実施例のアクチュエータ25は、熱影響を受けるのは共鳴室28を滞留する排気ガスH´のみの影響を受け、通過する排気ガスHの影響を直接受けない共鳴室28外側に設けられている。そのため、アクチュエータ25への排気ガスHの熱影響を緩和することができる。
さらに、支持台26は、アクチュエータ25とハウジング20との間に隙間Sを形成しているため、アクチュエータ25を直接ハウジング側面20cに設ける場合よりも、さらに排気ガスHの熱の影響を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例に係るディーゼルエンジン用黒煙浄化装置の全体的な構成を示す構成図。
【図2】同じく排気ガスの流れを示す構成図。
【符号の説明】
【0032】
1 ディーゼルエンジン用黒煙浄化装置
2 入口部
3 出口部
4 酸化触媒
6 入口管
5 パティキュレートフィルタ
10 ハウジング
20 ハウジング
20c ハウジング側面
22 出口管
23 共鳴管
24 開閉弁
25 アクチュエータ
26 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化触媒、又は/及び、ディーゼルパティキュレートフィルタと、
該酸化触媒、又は/及び、ディーゼルパティキュレートフィルタを収納する筐体と、
を有するディーゼルエンジン用黒煙浄化装置において、
前記ディーゼルパティキュレートフィルタを再生するために排気ガス温度を上昇させる排気ガス絞り機構を備え、
前記絞り機構は前記筐体内に配置される
ことを特徴とするディーゼルエンジン用黒煙浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載のディーゼルエンジン用黒煙浄化装置において、
前記絞り機構は前記ディーゼルパティキュレートフィルタの後流に配置され、
前記絞り機構の後流であって前記筐体内に消音部が配置される
ことを特徴とするディーゼルエンジン用黒煙浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のディーゼルエンジン用黒煙浄化装置において、
前記絞り機構を開度調整するアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは前記消音部に設けられる
ことを特徴とするディーゼルエンジン用黒煙浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−68419(P2009−68419A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238008(P2007−238008)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】