説明

トラクタの原動部構造

【課題】マフラーからの熱がエアクリーナ側に伝達され難く、エアクリーナ等の破損やエンジン出力の低下を防止できるトラクタの原動部構造を実現する。
【解決手段】トラクタの原動部構造において、エンジンルームRに設けたエンジン4の前方に、ラジエータ20と、後方に冷却風を供給する冷却ファン24とを備え、ラジエータ20及び冷却ファン24の後方でエンジンルームRの上部に、エアクリーナ36とマフラー42とを左右に並べて配設し、エアクリーナ36とマフラー42との間に、前後向きの断熱部材60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体の前部にエンジンルームを備えるとともに、エンジンルームに設けたエンジンの前方に、ラジエータと、後方に冷却風を供給する冷却ファンとを備えてあるトラクタの原動部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、エンジンルームに設けたエンジンの前方に、ラジエータ(特許文献1の図2の20)と、後方に冷却風を供給する冷却ファン(特許文献1の図2の24)とを備え、ラジエータ及び冷却ファンの後方でエンジンルームの上部に、エアクリーナ(特許文献1の図3の36)とマフラー(特許文献1の図3の42)とを左右に並べて配設してあるトラクタの原動部構造が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−27519号公報(図2及び図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトラクタの原動部構造のように、エンジンルームの上部に、エアクリーナとマフラーとを左右に並べて配設すると、エアクリーナ、外気吸入管(特許文献1の図3の37)、及び浄気吸入管(特許文献1の図3の39)がマフラーに近い位置に位置することになり、エンジンからの排気によりマフラーが温められると、マフラーからの熱がエアクリーナ、外気吸入管、及び浄気吸入管に伝達され易く、エアクリーナ、外気吸入管、及び浄気吸入管が加熱され易かった。また、特許文献1のトラクタの原動部構造のように、エンジンの前方に冷却ファンを配設すると、エンジンからの排気により温められたマフラーからの熱が、冷却ファンからの風によって後方に供給され、マフラーの側方及び後方に位置するエアクリーナ、外気吸入管、及び浄気吸入管が加熱され易かった。
【0005】
その結果、マフラーからの熱によりエアクリーナ、外気吸入管、及び浄気吸入管が変形等して破損するおそれがあるといった問題や、外気吸入管、エアクリーナ、及び浄気吸入管を通ってエンジンに供給される空気が加熱されてエンジン出力が低下する一因になるといった問題があった。
本発明は、マフラーからの熱がエアクリーナ側に伝達され難く、エアクリーナ等の破損やエンジン出力の低下を防止できるトラクタの原動部構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、トラクタの原動部構造を次のように構成することにある。
走行車体の前部にエンジンルームを備えるとともに、前記エンジンルームに設けたエンジンの前方に、ラジエータと、後方に冷却風を供給する冷却ファンとを備え、
前記ラジエータ及び冷却ファンの後方で前記エンジンルームの上部に、エアクリーナとマフラーとを左右に並べて配設し、
前記エアクリーナと前記マフラーとの間に、前後向きの断熱部材を備える。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、エンジンからの排気によりマフラーが温められると、エアクリーナとマフラーとの間に備えられた断熱部材により、マフラーからの熱のエアクリーナ側への伝達が抑制されて、マフラーからの熱がエアクリーナ側に伝達され難くなる。また、冷却ファンによりマフラーからの熱により温められた熱風が後方に供給されると、エアクリーナとマフラーとの間に備えられた断熱部材により、マフラーからの熱風のエアクリーナ側への流入が抑制されて、マフラーからの熱風がエアクリーナ側に供給され難くなる。その結果、マフラーからの熱によりエアクリーナ等(例えばエアクリーナ、エアクリーナに接続される外気吸入管や浄気吸入管等)が変形等し難くなると共に、エアクリーナ等を通ってエンジンに供給される空気が加熱され難くなる。
【0008】
本発明の第1特徴によると、エアクリーナとマフラーとの間に断熱部材を備えることで、例えばマフラーやエアクリーナに直接断熱材を取り付ける場合に比べ、簡素な形状で比較的小さな面積の断熱部材によりマフラーからの熱のエアクリーナ側への伝達を抑制することができる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、マフラーからの熱によるエアクリーナ等の破損を防止することができるとともに、エンジン出力の低下を防止できる。
【0010】
本発明の第1特徴によると、マフラーからの熱のエアクリーナ側への伝達を効率よく抑制することができ、エアクリーナ等の破損及びエンジン出力の低下を低コストで防止できる。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のトラクタの原動部構造において、次のように構成することにある。
前記エンジンの後方に配設された燃料タンクと、前記エンジンと前記燃料タンクとの間を仕切る仕切部材とを備え、
前記断熱部材の後部を前記仕切部材に連結する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、断熱部材の後部は仕切部材に連結されているため、断熱部材の横側を通って後方へ供給されたマフラーからの熱風は、仕切部材にぶつかってエンジンルームの横外側へ導かれる。その結果、マフラーからの熱風が断熱部材の後部を迂回してエアクリーナ側へ流入することを抑制することができ、マフラーからの熱がエアクリーナ側に更に供給され難くなる。
断熱部材の後部が仕切部材に連結されて支持されることになるので、仕切部材が断熱部材の支持部材に兼用されて、仕切部材の支持部材を少なくすることができる(不要にすることができる)。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、マフラーからの熱によるエアクリーナ等の破損を更に防止することができるとともに、エンジン出力の低下を更に防止できる。仕切部材の支持部材を少なくすることができるので(不要にすることができるので)、構造の簡素化の面で有利なものとなる。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴のトラクタの原動部構造において、次のように構成することにある。
前記仕切部材に断熱材を備える。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、冷却ファンによりマフラーからの熱風が後方に供給されて仕切部材に供給されると、仕切部材に備えた断熱材によりマフラーからの熱の燃料タンク側への伝達が抑制されて、マフラーからの熱が燃料タンク側に伝達され難くなる。その結果、仕切部材の後方に配設された燃料タンクの加熱を防止できる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、エアクリーナ等の加熱を防止するために後方に供給されたマフラーからの熱風により燃料タンクが加熱されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔トラクタの全体構成〕
図1〜図3に基づいて、トラクタの全体構成について説明する。図1〜図3に示すように、このトラクタは、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪1と、左右一対の駆動自在な後輪2とを走行車体3に備えた四輪駆動仕様に構成されている。走行車体3の前部に、エンジン4等が内装されたボンネット部5を備え、走行車体3の後部に、ステアリングハンドル6、運転座席7等が内装されたキャビン8を備える。
【0018】
エンジン4の後部には、クラッチハウジング9と、板金構造のハウジングフレーム10と、静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置11と、ミッションケース12と、デフケース13とが縦列状に順次連結された構造になっており、デフケース13に左右の後輪2が軸支されている。エンジン4の下部から前方に前部フレーム14が延出されており、この前部フレーム14に前輪1を装着する車軸ケース(図示せず)が支持されている。
【0019】
ボンネット15は、左右のサイドカバー15aと、通気可能なフロントカバー15bと、ヘッドライトを備えた上部カバー15cとを備えて構成されており、サイドカバー15a及びフロントカバー15bが前部フレーム14及びセンターフレーム16に固定支持され、上部カバー15cがセンターフレーム16の上部に備えられた支点p周りに上方に揺動開放可能に支持されている。
【0020】
〔エンジンルーム内の詳細構造〕
図2及び図3に基づいて、エンジンルームR内の詳細構造について説明する。図2及び図3に示すように、エンジン4は、水冷式の縦型ディーゼルエンジンに構成されており、その前方にラジエータ20が立設配備されて、エンジン4の冷却水がエンジン4内の冷却水ジャケット(図示せず)とラジエータ20との間で循環流動されるようになっている。エンジン4の前面下部に出力軸21が延出されており、この出力軸21に大径プーリ22と小径プーリ23とが連動連結され、エンジン4の前面上部に軸支配備された冷却ファン24の入力プーリ25及び発電機26の入力プーリ26aと、大径プーリ22とに亘って伝動ベルト27が巻回張設されている。フロントカバー15bを通してエンジンルームR内に導入した外気を冷却ファン24によってラジエータ20に供給するよう構成されている。
【0021】
エンジン4の右寄り上部には、キャビン8内の空調を行う空調装置のコンプレッサ30が前後向きに配備されており、このコンプレッサ30の入力プーリ31と小径プーリ23とに亘って伝動ベルト32が巻回張設されている。ラジエータ20前方の冷却風流路に、空調装置(図示せず)のコンデンサ33と各種油圧装置(図示せず)の作動油を冷却するオイルクーラ34とが前後に並んで立設配備されて、ラジエータ20の前方空間にはバッテリ(図示せず)が搭載配備されている。
【0022】
ラジエータ20より後方のエンジンルームR内の上部右寄り箇所には、樹脂製で円筒状のエアクリーナ36が配備されており、このエアクリーナ36の外周面から前方に導出された樹脂製の外気吸入管37が、ラジエータ20の前後を隔絶する仕切り板38を通して前方に延出され、その吸気口37aがラジエータ20の前方において下向きに開口されている。また、エアクリーナ36の底端部(左端部)から導出された硬質ゴム製の浄気吸入管39がエンジン4の右側面に設けられた吸気マニホールド40に連通接続されている。
【0023】
エアクリーナ36は、その中心線cが平面視で車体左右方向に対して少し傾斜するよう配備されており、外気吸入管37のエアクリーナ36への接続角度を前後向きに近い角度に設定することで、外気吸入管37の形状を前後に滑らかに屈曲した形状に構成することができると共に、外気吸入管37の左端部とマフラー42との間の隙間を広く確保できる。
【0024】
浄気吸入管39は、エアクリーナ36の車体内方側に位置する底端部から導出されるとともに、エアクリーナ36の車体外方側の端部にエレメント出し入れ用のキャップ36aが脱着自在に装着され、このキャップ36aの装着されたエアクリーナ36の右端部が斜め外方に向かうように、エアクリーナ36が配設されている。
【0025】
ラジエータ20より後方のエンジンルームR内の上部左側には、エンジン4の左側面の排気マニホールド41に接続されたマフラー42が前後に長く配備され、このマフラー42の前端部はラジエータ20の下を潜って車体前端部に延出され、エンジン4の排気が前部フレーム14の左外側において前方下向きに排出されるようになっている。
【0026】
マフラー42は、排気マニホールド41から上方に延出された上流側排気管42aと、この上流側排気管42aの上部に接続されたマフラー本体42bと、マフラー本体42bの後部から後方に延出された下流側排気管42cとを備えて構成されており、マフラー本体42bがエンジンルームR内の後方に位置するようにマフラー本体42bの前部下部に、上流側排気管42aが接続されている。
【0027】
〔燃料タンクの取付構造〕
図2〜図5に基づいて、燃料タンク50の取付構造について説明する。図2〜図5に示すように、キャビン8を構成するキャビンフレーム43は、右及び左の前縦フレーム44を備えて構成されており、この右の前縦フレーム44と左の前縦フレーム44とに亘って横長の上側横フレーム45が固着され、右及び左の前縦フレーム44の下部に内方側へ延出された右及び左の下側横フレーム46が固着されている。上側横フレーム45と右及び左の下側横フレーム46の内方側端部とに亘って、右及び左の縦フレーム47が固着されており、この右及び左の縦フレーム47と上側横フレーム45とによって燃料タンク50を配置する空間が形成されている。
【0028】
上側横フレーム45の後面側の左右中央部には、下方側へ延出されたブラケット取付部45aが一体成形されており、このブラケット取付部45aに、左右の取付穴が形成され、この左右の取付穴の前面側に、ナットが固着されている。ブラケット51は、側面視での縦断面形状が上向きに開口したコ字状に形成されており、このブラケット51の後部が上側横フレーム45のブラケット取付部45aに後方から締め付け固定できるように構成されている。
【0029】
キャビン8のフロアパネル48の前部における左右中央部には、下部フレーム49が固着されており、この下部フレーム49の中央部の左右2箇所に、それぞれ上下向きの左右のブラケット取付穴が形成され、このブラケット取付穴の下面側にナットが固着されている。右及び左のブラケット52は、側面視での形状がL字状に形成されており、このブラケット52の垂直部分が燃料タンク50に締め付け固定され、ブラケット52の水平部分が下部フレーム49の上面側に締め付け固定されている。
【0030】
クラッチハウジング9の上部にアーチ形のセンターフレーム16が固定されており(図示せず)、このセンターフレーム16の前面側における上部、上下中央部及び下部には、上部ブラケット54と、右及び左の中央ブラケット55と、右及び左の下部ブラケット56とが固着されており、上部ブラケット54、中央ブラケット55及び下部ブラケット56に仕切部材57が前方から締め付け固定されている。
【0031】
仕切部材57には、側面視で上下中央部から斜め前方上方へ延出した傾斜部57aと、この傾斜部57aから上方に延出された垂直部57bとが形成されており、この垂直部57bの左右中央部に前方へ膨出した膨出部57cが形成されて、仕切部材57の後面側と仕切部材57の後側に収容する燃料タンク50との間に所定の隙間が形成されている。
【0032】
仕切部材57の前面側には、略全域に亘って断熱材58が貼付されており、エンジン4、マフラー42等からの熱が前方から冷却ファン24によって仕切部材57に供給されても、断熱材58により仕切部材57の後側への熱の伝達を抑えることができ、例えば仕切部材57の後方に配設された燃料タンク50等の加熱を防止できる。
【0033】
燃料タンク50は、樹脂製の燃料タンク本体50aと、この燃料タンク本体50aの前部の右寄りに配設され上方に開放された給油口50bと、この給油口50bに取り付けられたねじ込み式のキャップ50cとを備えて構成されている。開閉式の上部カバー15cの後部に円形の開口部15Aが形成されており、この開口部15Aから燃料タンク50のキャップ50cが上部カバー15cの上面側に少し突出するように配設されている。給油口50bには、溝状の燃料受け部50dが一体成形されており、給油口50bに給油する際等に、給油口50bの口から漏れた燃料をこの燃料受け部50dにより受け止めて、下方への燃料の漏れを防止できる。
【0034】
燃料タンク50の上部には、右及び左の上部フランジ部50Aが一体成形されており、燃料タンク50の下部には、下部フランジ部50Bが一体成形されている。右及び左の上部フランジ部50Aは、縦平板状に成形されており、燃料タンク50の左右両側部から上方に突出するように延出されている。下部フランジ部50Bは、縦平板状に成形されており、燃料タンク50の下部の左右の全幅に亘って下方に突出するように延出されている。
【0035】
右及び左の上部フランジ部50Aは、ブラケット51の前面側に締め付け固定されており、この燃料タンク50に固定したブラケット51を上側横フレーム45のブラケット取付部45aに締め付け固定することで、燃料タンク50の上部をキャビンフレーム43に固定できる。下部フランジ部50Bには、ブラケット52が後方から締め付け固定されており、この燃料タンク50に固定したブラケット52を下部フレーム49の上面側に締め付け固定することで、燃料タンク50の下部をキャビンフレーム43に固定できる。
【0036】
燃料タンク50の前後中央部における上面側とブラケット51の下面側との間の全幅に亘ってゴム弾性体であるシール部材53を挟んだ状態で、ブラケット51が燃料タンク50の右及び左の上部フランジ部50Aに締め付け固定されており、シール部材53の上面側がブラケット51の下面側に接当し、シール部材53の下面側が燃料タンク50の上面側に接当することで、シール部材53を取り付けた部分におけるシール性を確保でき、センターフレーム16上部と上側横フレーム45との間等からブラケット51と燃料タンク50の間の隙間に入り込んだ雨水等がキャビン8内に入り込むことを防止できる。なお、シール部材53の材質は、ゴムに限らず、例えばスポンジ等の吸水材又は防水材を採用してもよく、燃料タンク50の側部をシールするように構成してもよい。
【0037】
燃料タンク50は、右及び左の上部フランジ部50Aにブラケット51を締め付け固定し、下部フランジ部50Bにブラケット52を締め付け固定した状態で、キャビンフレーム43の上側横フレーム45及び下部フレーム49に締め付け固定するように構成されており、給油口50bを下方側から斜め前方上方に潜らせるように燃料タンク50を後方から挿入し、ブラケット51,52の位置を位置決めして、ブラケット51,52を上側横フレーム45及び下部フレーム49に締め付け固定することで、簡易迅速に燃料タンク50をキャビンフレーム43に装着できる。
【0038】
〔断熱部材の詳細構造〕
図2,図3,図4,図6に基づいて、断熱部材60の詳細構造について説明する。図2,図3,図4,図6に示すように、断熱部材60は、エンジンルームR内に左右に並べて配設されたマフラー42とエアクリーナ36との間に前後向きに配設されており、ブラケット63及び仕切部材57に前端部及び後端部がそれぞれ締め付け固定された取付部材61と、この取付部材61の左側面側に貼付された断熱材62とを備えて構成されている。
【0039】
エンジン4から上方に延出されたコンプレッサ30を固定するブラケット63がエンジン4の上部に固定されており、このブラケット63から後方に縦平板状のステー64が延出されている。仕切部材57の垂直部57bにおける前面側に、取付部材61が締め付け固定されており、この取付部材61の前部から右側方に帯板状のステー63aが延出され、このステー63aがブラケット63から延出されたステー64に締め付け固定されている。
【0040】
取付部材61は、後述する断熱材62を貼付する面が略垂直になるように縦平板状に形成されており、平面視で、マフラー42と浄気吸入管39との間に位置するように配設され、取付部材61とマフラー42との間、及び取付部材61と浄気吸入管39との間に所定の隙間が形成されるように配設されている。取付部材61は、側面視で、取付部材61に隣接する浄気吸入管39及びマフラー42と重なる位置に配設されており、取付部材61の側面視での形状は、浄気吸入管39とマフラー42が最も接近する位置を中心として前後及び上下に延出された形状に設定されており、取付部材61の前部下部に斜めに面取りされたテーパ部が形成されている。
【0041】
取付部材61の左側(マフラー42側)の面には、取付部材61を略全域に亘って覆うことができる断熱材62が貼付されており、この断熱材62によりマフラー42からの熱の右側(浄気吸入管39側)への伝達を遮ることができるように構成されている。
【0042】
図3に示すように、トラクタの走行や冷却ファン24の回転によって前方から風が供給されると、前方からの風が取付部材61及び断熱材62により左右に振り分けられて、マフラー42により暖められた前方からの風が浄気吸入管39側へ供給され難くなる。その結果、取付部材61の断熱材取付部61bの右側に位置する浄気吸入管39等が加熱され難くなって、浄気吸入管39等の加熱による破損等を防止できる。
【0043】
取付部材61の後部は、仕切部材57に固定されているため、取付部材61の左側を通過して後方へ供給された風が、浄気吸入管39側へ迂回し難くなって、取付部材61及び断熱材62により左側に振り分けられたマフラー42により暖められた風を車体左側後方に効率よく導くことができる。
【0044】
仕切部材57は、中空状に形成されており、仕切部材57の後方に配設した燃料タンク50との間に所定の隙間が形成されているため、マフラー42により温められた風が仕切部材57に供給されても、燃料タンク50側に熱が伝達され難くなって、燃料タンク50側の加熱を防止できる。
【0045】
以上のように、断熱部材60を構成することで、取付部材61に貼付する断熱材62の面積を小さく設定しながら、マフラー42からの熱のエアクリーナ36側への伝達を効率よく抑制でき、製造コストを削減できる。
【0046】
〔ブレーキ作動機構の詳細構造〕
図7,図8,図9に基づいて、ブレーキ作動機構の詳細構造について説明する。なお、図7,図8,図9においては、運転座席7に着座した運転者の右足側のブレーキペダル73を例にとって説明する。図7に示すように、ハウジングフレーム10から支軸71が側方に延出されており、この支軸71の左右方向の軸心周りに筒状の連係部材72が外嵌されている。連係部材72には、ブレーキペダル73のロッド73aの一端が連結されており、ブレーキペダル73の踏み部73bを踏み込み操作すると、ブレーキペダル73が支軸71の左右方向の軸心周りで揺動操作されるように構成されている。
【0047】
連係部材72には、縦平板状のアーム部材74が固着されており、ブレーキペダル73を踏み込み操作すると、ブレーキペダル73の踏み込み操作に連動してアーム部材74が支軸71の左右方向の軸心周りで揺動するように構成されている。アーム部材74の上下中央部には、左右向きの連係穴が加工されており、この連係穴に第1連係ロッド75の先端部が連係されている。アーム部材74の上部には、左右向きのバネ連係穴が加工されており、このバネ連係穴に後述する弾性バネ78の一端が連係されている。
【0048】
第1連係ロッド75の後端部は、ナット部材76を介して第2連係ロッド77の先端部と連係されており、この第2連係ロッド77の後部がデフケース13の左右両側部に備えられた左右の後輪ブレーキ19の操作アーム19aに連係されて、ブレーキペダル73を踏み込み操作すると、アーム部材74、第1連係ロッド75、ナット部材76及び第2連係ロッド77を介して後輪ブレーキ19の操作アーム19aが揺動操作されて、後輪ブレーキ19が作動し後輪2に制動力が付与されるように構成されている。
【0049】
第1連係ロッド75の上部には、バネ連係部材75Aが固着されており、このバネ連係部材75Aの後端部と、アーム部材74のバネ連係穴とに亘って弾性バネ78が取り付けられており、解除状態からブレーキペダル73の踏み込み操作すると、後輪ブレーキ19が作動すると共に、弾性バネ78の付勢力が作用する。ブレーキペダル73の踏み込み操作を解除すると、作用した弾性バネ78の付勢力によりブレーキペダル73が後方へ揺動操作され、後輪ブレーキ19が解除状態に操作される。このように、バネ連係部材75Aとアーム部材74に設けたバネ連係穴とに亘って弾性バネ78を取り付けることで、ブレーキ作動機構が構成されている。
【0050】
これにより、例えば組立時や後輪ブレーキ19の効き具合を調節するメンテナンス時等に、下方又は側方からスパナ等によりナット部材76を調節することができる。この場合、アーム部材74の連係穴と後輪ブレーキ19の操作アーム19aとの間の距離を長く又は短く調節しても、アーム部材74の連係穴及びバネ連係部材75Aの位置関係が略変化せず弾性バネ78の長さが略一定の状態で変化しない。その結果、組立作業やメンテナンス作業を簡易迅速に行なうことができ、組立作業やメンテナンス作業の作業性を向上できる。
【0051】
なお、図8に示すように、第2連係ロッド77側にバネ連係部材77Aを固着し、このバネ連係部材75Aとアーム部材74に設けたバネ連係穴とに亘って弾性バネ78を取り付ける構成を採用してもよい。また、図示しないが、弾性バネ78に代えて、他の弾性部材(例えば空気式又は油圧式のダンパー等(図示せず))を採用してもよい。
【0052】
図9に示すように、例えば従来の構造では、ハウジングフレーム10等からバネ連係部材80を延出し、このバネ連係部材80とアーム部材74とに亘って弾性バネ78を装着する構成が採用されており、設計上の制約や組立調節作業における制約が多かった。しかし、図7に示すようなブレーキ作動機構を構成することにより、バネ連係部材75Aを第1連係ロッド75と一体化することができ、車体側とは独立したブレーキ作動機構を構成することができる。その結果、ハウジングフレーム10等の車体側の機器に制約されずに、ブレーキ作動機構を構成することができ、設計上の制約や組立調節作業における制約を少なくすることができる。
【0053】
なお、この実施形態では、後輪ブレーキ19とブレーキペダル73の連係経路における第1連係ロッド75にバネ連係部材75Aを設ける機構を採用した例を示したが、同様の機構を異なるペダルやレバー等の操作具の連係経路に採用してもよい。
【0054】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、取付部材61に断熱材62を貼付した断熱部材60を採用した例を示したが、取付部材61と断熱材62とを一体形成した断熱部材60を採用してもよい。
【0055】
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、断熱材62を貼付した面が略垂直になるように断熱部材60を配設した例を示したが、例えばマフラー42とエアクリーナ36の上下方向の位置関係等によって、断熱材62を貼付した面が正面視で右又は左に斜めに傾斜するように断熱部材60を配設してもよい。
【0056】
前述の[発明を実施するための最良の形態]における断熱部材60の前後方向の長さ、断熱部材60の上下方向の高さ、断熱部材60の形状として異なるものを採用してもよく、例えば断熱部材60を前方に長く延出し、又は断熱部材60の高さを高く設定することで、マフラー42からの熱がエアクリーナ36側に更に伝達され難くなる。
【0057】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、マフラー42のマフラー本体42bの右横側にエアクリーナ36及び浄気吸入管39が位置するように配置し、マフラー42のマフラー本体42bと、エアクリーナ36及び浄気吸入管39との間に断熱部材60を設けた例を示したが、マフラー42に対してエアクリーナ36、外気吸入管37及び浄気吸入管39を異なる位置及び方向で配置してもよく、逆に、エアクリーナ36、外気吸入管37及び浄気吸入管39に対してマフラー42を異なる位置及び方向で配置してよい。この場合、左右に並べて配置したマフラー42と、エアクリーナ36、外気吸入管37又は浄気吸入管39との間に断熱部材60を配設する。
【0058】
具体的には、例えばマフラー42のマフラー本体42bの右横側に外気吸入管37が位置するようにエアクリーナ36を配置した場合には、マフラー本体42bと外気吸入管37との間に断熱部材60を配設し、例えばマフラー42の下流側排気管42cの右横側にエアクリーナ36及び浄気吸入管39が位置するようにエアクリーナ36を配置した場合には、マフラー42の下流側排気管42cと、エアクリーナ36及び浄気吸入管39との間に断熱部材60を配設する。
【0059】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、エンジンルームRの上部の右側にエアクリーナ36を配設し左側にマフラー42を配設して、エアクリーナ36とマフラー42との間に断熱部材60を備えた例を示したが、エンジンルームRの上部の左側にエアクリーナ36を配設し右側にマフラー42を配設した場合においても同様に適用できる。
【0060】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、エンジン4にディーゼルエンジンを採用した例を示したが、ガソリンエンジンの場合においても同様に適用できる。また、キャビン8を備えたトラクタに限らず、キャビン8を備えていないトラクタにおいても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】トラクタの全体左側面図
【図2】エンジンルーム付近の縦断左側面図
【図3】エンジンルーム付近の横断平面図
【図4】エンジンルームの縦断正面図
【図5】燃料タンク取付部の背面図
【図6】断熱部材付近の斜視図
【図7】ブレーキペダルの連係構造を示す側面図
【図8】ブレーキペダルの連係構造を示す側面図
【図9】従来のブレーキペダルの連係構造を示す側面図
【符号の説明】
【0062】
1 走行車体
4 エンジン
20 ラジエータ
24 冷却ファン
36 エアクリーナ
42 マフラー
50 燃料タンク
57 仕切部材
58 断熱材
60 断熱部材
R エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体の前部にエンジンルームを備えるとともに、前記エンジンルームに設けたエンジンの前方に、ラジエータと、後方に冷却風を供給する冷却ファンとを備え、
前記ラジエータ及び冷却ファンの後方で前記エンジンルームの上部に、エアクリーナとマフラーとを左右に並べて配設し、
前記エアクリーナと前記マフラーとの間に、前後向きの断熱部材を備えてあるトラクタの原動部構造。
【請求項2】
前記エンジンの後方に配設された燃料タンクと、前記エンジンと前記燃料タンクとの間を仕切る仕切部材とを備え、
前記断熱部材の後部を前記仕切部材に連結してある請求項1記載のトラクタの原動部構造。
【請求項3】
前記仕切部材に断熱材を備えてある請求項2記載のトラクタの原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−12609(P2009−12609A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176523(P2007−176523)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】