説明

トリミングパターンおよびその溶断方法

【課題】トリミングパターンのヒューズ部の溶断に大電流を用いた場合においても、ヒューズ部の溶断後の切断幅を安定させて切断不良を低減すると共に半導体装置の主回路への熱影響を防止する手段を提供する。
【解決手段】第1の端子と、第2の端子と、第1および第2の端子の間に配置されたヒューズ部とを有するトリミングパターンにおいて、第1の端子とヒューズ部との間にエミッタ電極とベース電極とコレクタ電極とを有するバイポーラトランジスタを設け、第1の端子をエミッタ電極に接続すると共に、ヒューズ部の一端をコレクタ電極に接続し、他端を第2の端子に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路等の半導体装置の特性を調整するために用いられるトリミングパターンおよびその溶断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトリミングパターンは、第1の端子および第2の端子の間にヒューズ部を配置し、このヒューズ部の下層にヒューズ部に直交するバッファ層を設けてヒューズ部に段部を形成すると共に、ヒューズ部の両側にダミーパターンを設けてヒューズ部の幅を狭く形成し、第1の端子と第2の端子との間に流した電流によるヒューズ部の溶断を容易にしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、ヒューズ部の一端を入力端子に、他端をnMOSトランジスタに接続し、入力端子に印加した電圧でnMOSトランジスタをブレークダウンさせ、このブレークダウン時に流れる大電流でヒューズ部を溶断しているものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−230325号公報(主に第3頁段落0013−段落0016、第1図)
【特許文献2】特開平7−86517号公報(第2頁段落0007−段落0008、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、トリミングは、半導体集積回路等の半導体装置の本来の性能とは別に、特にアナログ回路において製造工程のバラツキ等による電気的な特性の変動を調整する場合に用いられ、半導体装置の製造工程における配線の形成工程において、他の回路配線の形成と同時に同じ材料で2つの端子間に形成されたヒューズ部に電流を流しヒューズ部を意図的に溶断して被切断回路への配線を切断する方法等が用いられている。
【0005】
一方、近年においては半導体装置の微細化が促進され、アルミニウム(Al)やアルミニウム・シリコン・銅合金(Al−Si−Cu)等のアルミ導電材からなるアルミニウム配線を用いる場合に、シリコン(Si)基板等の半導体基板へのアルミニウムイオンの拡散を防止するために、アルミニウム配線の下層にタングステン(W)やチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)等からなるバリアメタル層を形成するようになってきている。
【0006】
また、半導体ウェハ表面の平坦化処理が進展し、多層配線工程における層間絶縁膜の上面の平坦化が進み、配線の厚さも均一なものになってきている。
しかしながら、上述した特許文献1の技術においては、2つの端子間に形成したヒューズ部にバッファ層による段部を形成すると共に、ヒューズ部の両側にダミーパターンを設けてヒューズ部の幅を狭く形成し、2つの端子間に電流を流してヒューズ部を溶断しているため、層間絶縁膜の上面等の平坦化に伴ってヒューズ部のバッファ層による段部の形成が困難になると共に、トリミングパターンのヒューズ部の厚さも均一なものになり、段部により形成されるヒューズ部の曲折による抵抗の増加を図ることができず、ヒューズ部の溶断が困難になるという問題がある。
【0007】
また、アルミニウム配線の下層にバリアメタル層を形成した場合には、バリアメタル層の抵抗がアルミニウム配線に比較して大きいために、端子間に流した電流が主にアルミニウム配線を通じて流れてしまい、ヒューズ部の溶断工程において切れ残りが生ずるという問題がある。
これらのことは、端子間に大電流を流すようにすれば解決するが、電流を供給するための接触針と端子との接触抵抗の影響が大きくなり、ヒューズ部の溶断後の切断幅にバラツキが生じ、切断不良が増加するという問題がある。
【0008】
特許文献2の技術においては、ヒューズ部に接続したnMOSトランジスタをブレークダウンさせ、このブレークダウン時に流れる大電流でヒューズ部を溶断しているため、ブレークダウン時にnMOSトランジスタが発熱し、この内部発熱による熱影響により半導体装置の主回路の特性を変化させてしまう虞があるという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、ヒューズ部の溶断に大電流を用いた場合においても、ヒューズ部の溶断後の切断幅を安定させて切断不良を低減すると共に半導体装置の主回路への熱影響を防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、第1の端子と、第2の端子と、該第1および第2の端子の間に配置されたヒューズ部とを有するトリミングパターンにおいて、前記第1の端子とヒューズ部との間に、エミッタ電極とベース電極とコレクタ電極とを有するバイポーラトランジスタを設け、前記第1の端子を前記エミッタ電極に接続すると共に、前記ヒューズ部の一端を前記コレクタ電極に接続し、他端を前記第2の端子に接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
これにより、本発明は、バイポーラトランジスタのエミッタ電極とベース電極との間に低い電圧を印加するだけで、接触針と端子との間の接触抵抗のバラツキによる影響を抑制しながらバイポーラトランジスタの電流増幅作用を利用した大電流によりヒューズ部を容易に溶断することができ、ヒューズ部の溶断後の切断幅を安定させて切断不良を低減することができると共に、不要な内部発熱が生ずることを防止して半導体装置の主回路への熱影響を防止することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明によるトリミングパターンの実施例について説明する。
【実施例】
【0012】
図1は実施例のトリミングパターンを示す説明図、図2は実施例のトリミングパターンの回路例を示す説明図、図3は実施例のトリミングパターンの断面を示す説明図、図4は実施例のバイポーラトランジスタの上面を示す説明図である。
図1、図2において、1はトリミングパターンであり、半導体装置の上面側に複数形成される。
【0013】
2はバイポーラトランジスタであり、エミッタ電極3、ベース電極4およびコレクタ電極5が形成されている。本実施例のバイポーラトランジスタ2は、PNP縦型バイポーラトランジスタである。
6は第1の端子であり、他の回路配線と同時に同じ材料で形成されたトリミング用の端子であって、図示しない半導体装置の主回路7の特性を調整するための被切断回路8に接続すると共に、バイポーラトランジスタ2のエミッタ電極3に接続している。
【0014】
9は第2の端子であり、第1の端子6と同様に形成されたトリミング用の端子であって、図示しない半導体装置の主回路7接続すると共に、ヒューズ部10の端部に接続している。
ヒューズ部10は、第1の端子6と同様に形成され、トリミング時に意図的に溶断して主回路7と被切断回路8との接続を切断するための細線状の配線であって、第2の端子9と反対側の端部がバイポーラトランジスタ2のコレクタ電極5に接続している。

11は第3の端子であり、第1の端子6と同様に形成されたトリミング用の端子であって、バイポーラトランジスタ2のベース電極4に接続している。

12は調整用回路であり、抵抗やコンデンサ等を単独で、または複数組合せて形成され、バイポーラトランジスタ2のエミッタ電極3とベース電極4とで形成される電気回路と並列に配置されてエミッタ電極3とベース電極4との間を流れる電流を調節する機能を有しており、第1および第2の端子6、9の間に配置されたヒューズ部10に流れる電流を調整するために用いられる。
【0015】
本実施例のトリミングパターン1は、以下のように形成される。
すなわち、図3、図4に示すようにP型不純物を一様に拡散して形成された半導体基板としてのシリコン基板13に、N型不純物を矩形の領域に拡散してNウェル層14を、その中央部の表層にP型不純物を拡散してエミッタ層15を、エミッタ層15の周縁を所定の間隔を介して囲うようにNウェル層14の表層にNウェル層14より濃度を高めたN型不純物を拡散して枠状のベース層16を、Nウェル層14の周縁を所定の間隔を介して囲うようにシリコン基板13より濃度を高めたP型不純物を拡散して枠状のコレクタ層17を形成してバイポーラトランジスタ2を形成する。
【0016】
バイポーラトランジスタ2が形成されたシリコン基板13上に、CVD法等により窒化珪素(Si)等の絶縁材料でパッシベーション膜18を形成し、平坦化処理を行った後にフォトリソグラフィによりパッシベーション膜18上にレジストマスクを形成し、これをマスクとして異方性エッチングによりパッシベーション膜18をエッチングしてエミッタ層15、ベース層16、コレクタ層17の所定の部位に達するスルーホール19を形成し、レジストマスクの除去後に各スルーホール19の内面およびパッシベーション膜18上にスパッタ法によりバリアメタル層20を形成し、スパッタ法によりバリアメタル層20で被覆されたスルーホール19内にアルミ導電材を埋め込んでエミッタ電極3、ベース電極4およびコレクタ電極5を形成すると共に、パッシベーション膜18上に同じアルミ導電材でトリミングパターン1等を形成するための配線層を形成する。
【0017】
そして、フォトリソグラフィにより配線層上に、主回路7、被切断回路8、調整用回路12の回路配線およびトリミングパターン1の第1と第2と第3の端子6、9、11、ヒューズ部10、エミッタ電極3、ベース電極4、コレクタ電極5等の形成領域を覆うレジストマスクを形成し、これをマスクとして配線層およびバリアメタル層20をエッチングして主回路7等の回路配線や第1と第2と第3の端子6、9、11、ヒューズ部10等のトリミングパターン1を形成する。
【0018】
このようにして形成されたトリミングパターン1により半導体装置のトリミングを行う場合は、半導体装置の主回路7の電気的な特性を検査し、調整を要する特性が存在する場合に、その特性を調整する被切断回路8を選定し、選定された被切断回路8に接続する第1の端子と、これにバイポーラトランジスタ2およびヒューズ10を介して接続する第2の端子9とを特定する。
【0019】
そして、第2の端子9に接触針を接触させて接地し、バイポーラトランジスタ2のエミッタ電極3に接続する第1の端子6とベース電極4に接続する第3の端子11との間に接触針を接触させてエミッタ層15とベース層16のpn接合の順方向に低い電圧(例えば、0.1〜0.5V程度)を印加する。
このとき、第1の端子6に接続するエミッタ電極3と第3の端子11に接続するベース電極4との間には、これらに並列に配置されている調整用回路12により調整された電流が流れ、ベース層16を流れる電流によりエミッタ層15とコレクタ層17との間に流れる電流がバイポーラトランジスタ2の電流増幅率に従って増幅され、エミッタ層15にエミッタ電極3を介して接続する第1の端子6と、コレクタ層17にコレクタ電極5およびヒューズ部10を介して接続する第2の端子9との間に大電流が流れ、ヒューズ部10がそのバリアメタル層20と共に溶断される。
【0020】
このようにして、本実施例の半導体装置のトリミングが行われる。
上記のように、本実施例ではトリミングパターン1にバイポーラトランジスタ2を設け、その電流増幅作用を利用して第1および第2の端子6、9間に配置されたヒューズ部10を溶断するので、不要な内部発熱が生ずることなく、ヒューズ部10を容易に溶断することができる。
【0021】
また、バイポーラトランジスタ2のベース電極4とエミッタ電極5との間に低電圧を印加するので、接触針と端子との間の接触抵抗のバラツキによる影響を無視できる程度に抑制することが可能になり、ヒューズ部10の溶断後の切断幅を安定させることができる。
更に、第1の端子6に接続するエミッタ電極3と第3の端子11に接続するベース電極4とで形成される電気回路と並列に調整用回路12を設けてあるので、エミッタ電極3とベース電極4との間を流れる電流を調節して、第1と第2の端子6、9間に流れる大電流を容易に調整することができ、ヒューズ部10の形成状態に応じた適正な大電流をヒューズ部10へ流すことが可能になり、トリミング作業における第1の端子6と第3の端子11との間に印加する電圧をトリミングの対象となるトリミングパターン1毎に設定し直すことを不要にしてトリミング作業の効率化を図ることができる。
【0022】
更に、トリミングパターン1のヒューズ部10を溶断するときに、第2の端子9に接地した接触針を接触させるので、トリミング時の半導体装置の内部発熱を最小限に抑制することができる。
以上説明したように、本実施例では、トリミングパターンの第1および第2の端子の間にバイポーラトランジスタを配置し、そのエミッタ電極を第1の端子に接続し、そのコレクタ電極と第2の端子との間にヒューズ部を配置したことによって、バイポーラトランジスタのエミッタ電極とベース電極との間に低い電圧を印加するだけで、接触針と端子との間の接触抵抗のバラツキによる影響を抑制しながらバイポーラトランジスタの電流増幅作用を利用した大電流によりヒューズ部を容易に溶断することができ、ヒューズ部の溶断後の切断幅を安定させて切断不良を低減することができると共に、不要な内部発熱が生ずることを防止して半導体装置の主回路への熱影響を防止することができる。
【0023】
また、第1の端子と第3の端子とを調整用回路を介して接続したことによって、第1および第2の端子間を流れる大電流を容易に調節することができ、ヒューズ部の形成状態に応じた適正な大電流をヒューズ部へ流すことが可能になり、トリミング作業におけるトリミングパターン毎の電圧の設定作業を不要にしてトリミング作業の効率化を図ることができる。
【0024】
なお、本実施例においては、バイポーラトランジスタはPNP縦型バイポーラトランジスタであるとして説明したが、PNP横型バイポーラトランジスタやNPN縦型バイポーラトランジスタ、NPN横型バイポーラトランジスタであっても上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例のトリミングパターンを示す説明図
【図2】実施例のトリミングパターンの回路例を示す説明図
【図3】実施例のトリミングパターンの断面を示す説明図
【図4】実施例のバイポーラトランジスタの上面を示す説明図
【符号の説明】
【0026】
1 トリミングパターン
2 バイポーラトランジスタ
3 エミッタ電極
4 ベース電極
5 コレクタ電極
6 第1の端子
7 主回路
8 被切断回路
9 第2の端子
10 ヒューズ部
11 第3の端子
12 調整用回路
13 シリコン基板
14 Nウェル層
15 エミッタ層
16 ベース層
17 コレクタ層
18 パッシベーション膜
19 スルーホール
20 バリアメタル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、第2の端子と、該第1および第2の端子の間に配置されたヒューズ部とを有するトリミングパターンにおいて、
前記第1の端子とヒューズ部との間に、エミッタ電極とベース電極とコレクタ電極とを有するバイポーラトランジスタを設け、
前記第1の端子を前記エミッタ電極に接続すると共に、前記ヒューズ部の一端を前記コレクタ電極に接続し、他端を前記第2の端子に接続したことを特徴とするトリミングパターン。
【請求項2】
請求項1において、
前記ベース電極に接続する第3の端子と、前記エミッタ電極とベース電極との間を流れる電流を調節する調整用回路とを設け、
前記第1の端子と前記第3の端子との間を、前記調整用回路を介して接続したことを特徴とするトリミングパターン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトリミングパターンのヒューズ部を、前記エミッタ電極とベース電極との間に電圧を印加して溶断することを特徴とするトリミングパターンの溶断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−149980(P2007−149980A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342509(P2005−342509)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(390008855)宮崎沖電気株式会社 (151)
【Fターム(参考)】