説明

トンネル接合素子のエッチング加工方法および装置

【課題】 トンネルバリア層のショートを防止することが可能な、トンネル接合素子のエッチング加工方法を提供する。
【解決手段】 (c)トンネル接合膜10aのトンネルバリア層15を貫通して、所定パターンの凹部20を形成する異方性ドライエッチング工程と、(d)凹部20の側壁付着物(22)を除去する等方性ドライエッチング工程とを有する。その等方性ドライエッチング工程は、100Pa以上1000Pa以下の反応ガスを導入し、その反応ガスにプラズマを点火しつつバイアス電力を印加しないで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRAM(Magnetic Random Access Memory)半導体デバイスや磁気記録ヘッドなどに用いられる、TMR(Tunneling Magnetro-Resistive;トンネル磁気抵抗)やMTJ(Metal Tunneling junction)等の、トンネルバリア層を有するトンネル接合素子のエッチング加工方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MRAM半導体デバイスや磁気記録ヘッドなどには、TMRやMTJなどと呼ばれるトンネルバリア層を有するトンネル接合素子が用いられている。
図6は、トンネル接合素子の側面断面図である。トンネル接合素子10は、磁性層(固定層)14、トンネルバリア層15、磁性層(フリー層)16等を順次積層したトンネル接合膜10aから形成される。このトンネルバリア層15は、アルミナ等の電気絶縁性材料で構成されている。また、固定層14の面内における磁化方向は一定に保持され、フリー層16の面内における磁化方向は外部磁場の向きによって反転しうるようになっている。これら固定層14およびフリー層16の磁化方向が平行か反平行かによって、トンネル接合素子10の抵抗値が異なるので、トンネル接合素子10の厚さ方向に電圧を印加した場合に、トンネルバリア層15を流れる電流の大きさが異なることになる(TMR効果)。そこで、この電流値を検出することにより、「1」または「0」を読み出すことができるようになっている。また、フリー層16と固定層14との積層順序を逆にしている素子構造も多い。
【0003】
このようなトンネル接合素子10の形成は、トンネル接合膜10aをエッチングして、トンネルバリア層15を貫通する所定パターンの凹部20を形成することによって行う。そのエッチングには、Ar等のイオンミリングや、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)等が採用されている。そのRIEの反応ガスには、塩素ガス(Cl)、臭素ガス(Br)、ヨウ素ガス(I)、フッ素ガス(F)や、それらの化合物ガスなど、ハロゲン系のガスが利用されている。
【特許文献1】国際公開第WO01/084570号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トンネル接合膜10aをエッチングして凹部20を形成すると、エッチングにより除去された磁性元素のハロゲン化合物を主体とする物質が、凹部20の側壁に付着することになる。この付着物22は導電性を有するので、電気絶縁性材料からなるトンネルバリア層15のショートが発生するという問題がある。なお、上述したトンネルバリア層15を流れる電流は微量であり、TMR効果を利用するには、固定層14とフリー層16との間に大きな短絡電流が流れないことが前提となる。そのため、導電性付着物22が存在するとトンネル接合素子10として機能しなくなり、トンネル接合素子10のエッチング加工において大きな課題となっている。
【0005】
この付着物22を取り除くため、特許文献1に示すように、酸素ガスによるアッシングや純水洗浄など、いろいろなエッチング後処理が試みられてきた。しかしながら、この付着物22は、蒸気圧が低く水に難溶性な磁性元素のハロゲン化合物を主体としているため、上述した方法では必ずしも上手く除去できなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、トンネルバリア層のショートを防止することが可能な、トンネル接合素子のエッチング加工方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のトンネル接合素子のエッチング加工方法は、トンネル接合膜のトンネルバリア層を貫通して、所定パターンの凹部を形成する異方性ドライエッチング工程と、前記凹部の側壁への付着物を除去する等方性ドライエッチング工程と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、異方性ドライエッチング工程において凹部の側壁に導電性物質が付着しても、等方性ドライエッチング工程においてその付着物を除去することが可能になる。これにより、トンネルバリア層のショートを防止することができる。
【0008】
また、前記等方性ドライエッチング工程は、圧力が100Pa以上1000Pa以下の反応ガスを導入し、プラズマを発生させて行うことが望ましい。
この構成によれば、反応ガスの圧力に比例してラジカルの密度が高くなり、化学エッチングが支配的となって、等方性ドライエッチングを効率的に行うことができる。
【0009】
また、前記等方性ドライエッチング工程は、塩素ガスを導入し、その塩素ガスに高圧水銀ランプから光を照射して行うことが望ましい。
この構成によれば、高圧水銀ランプは塩素ガスの吸収波長である波長330nm近傍の光を照射するので、塩素ガスを励起してラジカルを発生させることができる。これにより、等方性ドライエッチングを簡単に行うことができる。
【0010】
一方、本発明のトンネル接合素子のエッチング加工装置は、トンネル接合膜のトンネルバリア層を貫通して形成された所定パターンの凹部につき、前記凹部の側壁への付着物を等方性ドライエッチングにより除去する装置であって、前記トンネル接合膜が形成された基板を配置するチャンバと、前記チャンバに塩素ガスを導入する塩素ガス供給手段と、導入された前記塩素ガスに光を照射して前記塩素ガスを励起する高圧水銀ランプと、を有することを特徴とする。
この構成によれば、トンネル接合膜の凹部における側壁付着物を除去することが可能な等方性ドライエッチング装置を、低コストで構成することができる。
【0011】
また、前記トンネル接合膜に対して前記凹部を形成する異方性ドライエッチング装置と、上述した等方性ドライエッチング装置とが、前記基板の真空搬送手段を介して接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、基板を大気に晒すことなく異方性ドライエッチング工程から等方性ドライエッチング工程へと搬送することが可能になり、大気からの水分の吸着による基板の腐食等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態について説明する。
図2は、トンネル接合素子のエッチング加工方法の工程図である。第1実施形態に係るトンネル接合素子10のエッチング加工方法は、(c)トンネル接合膜10aのトンネルバリア層15を貫通して所定パターンの凹部20を形成する異方性ドライエッチング工程と、(d)凹部20の側壁への付着物(22)を除去する等方性ドライエッチング工程とを有するものである。
【0014】
(トンネル接合素子、MRAM)
図1(a)は、トンネル接合素子の側面断面図である。トンネル接合素子10は、PtMnやIrMn等からなる反強磁性層(不図示)、NiFeやCoFe等からなる磁性層(固定層)14、AlO(アルミナ)等からなるトンネルバリア層15、およびNiFeやCoFe等からなる磁性層(フリー層)16を主として構成されている。実際には、上記以外の機能層も積層されて、15層程度の多層構造になっている。なお、トンネル接合素子10の断面は、図1(a)に示すような長方形状に限られず、台形状であってもよい。また、フリー層の厚さを固定層の厚さより薄く形成すれば、膜厚差を利用した保磁力差型のトンネル接合素子を形成することができる。
【0015】
図1(b)は、トンネル接合素子を用いたMRAMの概略構成図である。MRAM100は、MOSFET110およびトンネル接合素子10を、基板5上にマトリクス状に整列配置して構成されている。上述したトンネル接合素子10の上端部はビット線102に接続され、その下端部はMOSFET110のソース電極またはドレイン電極に接続されている。また、MOSFET110のゲート電極は、読み出し用ワード線104に接続されている。一方、トンネル接合素子10の下方には、書き換え用ワード線106が配置されている。
【0016】
図1に示すトンネル接合素子10では、固定層14の磁化方向は一定に保持され、フリー層16の磁化方向は反転しうるようになっている。これら固定層14およびフリー層16の磁化方向が平行か反平行かによって、トンネル接合素子10の抵抗値が異なるので、トンネル接合素子10の厚さ方向に電圧を印加した場合に、トンネルバリア層15を流れる電流の大きさが異なることになる(TMR効果)。そこで、読み出し用ワード線104によりMOSFET110をONにして、その電流値を測定することにより、「1」または「0」を読み出すことができるようになっている。
また、書き換え用ワード線104に電流を供給して、その周囲に磁場を発生させれば、フリー層16の磁化方向を反転させることができる。これにより、「1」または「0」を書き換えることができるようになっている。
【0017】
なお、固定層14およびフリー層16の磁化方向の組み合わせによるトンネル接合素子10の抵抗値の差は、一般的に非常に小さくなる。この抵抗値の微差を検出するには、アルミナ等の電気絶縁性材料からなるトンネルバリア層15の抵抗値を極力小さくする必要がある。そのため、トンネルバリア層15の厚さは、酸化前の金属アルミニウムの厚さで8〜12オングストロームと非常に薄く形成されている。
【0018】
(トンネル接合素子のエッチング加工方法)
次に、トンネル接合膜をエッチングしてトンネル接合素子を形成する方法につき、図2を用いて説明する。
【0019】
まず、図2(a)に示すように、トンネル接合膜10aを形成する。このトンネル接合膜10aの形成は、スパッタ法等によって行うことが可能である。
次に、図2(b)に示すように、トンネル接合膜10aの表面に、SiO等からなるマスク90を形成する。なおマスク90の形成方法は省略する。
【0020】
(異方性エッチング工程)
次に、図2(c)に示すように、マスク90を介してトンネル接合膜10aを異方性ドライエッチングし、トンネルバリア層15を貫通する所定パターンの凹部20を形成する。このエッチングは、以下に説明する第1エッチング装置において行う。
【0021】
図3は、第1エッチング装置の概略構成図である。以下には、誘導結合方式(Inductive Coupling Plasma;ICP)の反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)装置を例にして説明する。この第1エッチング装置60は、チャンバ61への反応ガスの供給手段と、チャンバ61の内部ガスの排気手段とを備えている。また、チャンバ61の外部上方にRFアンテナ68が設けられ、そのRFアンテナ68にプラズマ発生用RF電源69が接続されている。さらに、チャンバ61の内部下方に基板5を載置する電極62が設けられ、その電極62にバイアス印加用RF電源63が接続されている。
【0022】
そして、上記のようにトンネル接合膜およびマスクを形成した基板5を、第1エッチング装置60におけるチャンバ61内の電極62上に載置する。次に、チャンバ61内に反応ガスとしてClおよびArの混合ガスを導入する。そして、RFアンテナ68によりチャンバ61内にプラズマを発生させ、トンネル接合膜のエッチングを開始する。そのエッチングプロセスの代表的な条件は、反応ガスの圧力が0.1〜10Pa、プラズマを発生させるためのRFアンテナ68への投入電力が500〜700W、基板5に高周波バイアスを印加するための電極62への投入電力が50〜100Wである。
【0023】
チャンバ内に発生したプラズマにより、反応ガスのラジカルやイオン等が生成される。そして、電極62により基板5に高周波バイアスを印加すれば、図2(c)に示すように、生成されたイオンを加速してトンネル接合膜10aに衝突させることが可能になり、化学・物理エッチングが行われる。上述したエッチング条件では、この化学・物理エッチングが支配的となる。すなわち、主に基板の垂直方向にエッチングが行われ、横方向にはほとんど削れない、いわゆる異方性エッチングとなる。本実施形態では、この異方性エッチングによる加工を主プロセスと呼ぶ。
この主プロセスにより、図2(c)に示すように、マスク90の開口部の下方に所定パターンの凹部20が形成される。その後、マスク90を除去する。
【0024】
(等方性エッチング工程)
ここで、形成された凹部20の側壁には、付着物22が存在している。この付着物22は、主プロセスによる副生成物であって、蒸気圧が低い磁性元素のハロゲン化合物等で構成されている。この化合物は導電性を有することから、電気絶縁性材料からなるトンネルバリア層のショートが発生し、トンネル接合素子が機能しなくなるおそれがある。
【0025】
そこで、主プロセスに引き続き、この付着物を除去するための後処理プロセスを行う。この後処理プロセスでは、図3に示す第1エッチング装置60を用いて、等方性ドライエッチングを行う。具体的には、チャンバ61に導入するClおよびArの混合ガスの流量を増加させ、また排気手段におけるコンダクタンスバルブの開度を絞ることにより、チャンバ61内の反応ガスの圧力を100〜1000Paに高める。この状態でプラズマを発生させて、付着物のエッチングを行う。なお、プラズマを発生させるためのRFアンテナ68への投入電力は500〜700Wでよいが、基板5には0〜30Wの弱い高周波バイアスを印加する。
【0026】
このエッチング条件では、反応ガスの圧力に比例してラジカルの密度が高くなり、化学エッチングが支配的となる。すなわち、垂直方向、横方向ともほぼ同じエッチング速度で削れる、いわゆる等方性エッチング加工となる。これにより、凹部側壁への付着物を除去することができる。なお、付着物の厚さは数nmと極めて薄いため、エッチングによる再付着はほとんどなく、短時聞で除去することが可能である。したがって、図2(d)に示す凹部20の加工寸法への影響はほとんどない。
【0027】
(純水リンス工程)
上述した後処理プロセスの後、トンネル接合膜10aの表面に吸着している残留塩素を除去するための純水リンスなど、通常のエッチング後処理を行う。以上により、トンネル接合素子10が形成される。
なお、上述した主プロセスおよび後処理プロセスでは、反応ガスとしてClを用いたが、BClやSiCl、BI、BBr、HBr、SiFなどのハロゲン系ガス若しくはこれらの混合ガス、またはこれらにOを加えた混合ガスなどを用いてもよい。このようなハロゲン系ガスを採用すれば、主プロセスによる副生成物の蒸気圧が比較的高くなり、凹部側壁への付着量を低減することができる。
【0028】
以上に詳述したように、本実施形態のトンネル接合素子のエッチング加工方法では、トンネル接合膜のトンネルバリア層を貫通して所定パターンの凹部を形成する異方性ドライエッチング工程と、前記凹部の側壁への付着物を除去する等方性ドライエッチング工程とを有し、その等方性ドライエッチング工程は、比較的高圧の反応ガスを導入し、プラズマを発生させつつ高周波バイアスをごく弱く印加する構成とした。
この構成によれば、異方性ドライエッチング工程において凹部の側壁に導電性物質が付着しても、等方性ドライエッチング工程においてその付着物を除去することが可能になる。これにより、トンネルバリア層のショートを防止することができる。また、反応ガスの圧力に比例してラジカルの密度が高くなり、化学エッチングが支配的となって、等方性ドライエッチングを効率的に行うことができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係るトンネル接合素子のエッチング加工方法は、導入された塩素ガスに高圧水銀ランプから光を照射して等方性ドライエッチングを行う点で、プラズマを発生させて等方性ドライエッチングを行う第1実施形態と相違している。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
【0030】
図4は、第2実施形態で使用するトンネル接合素子の製造装置である。この製造装置50には、基板搬入室52からロードロック室54を介して、真空保持された基板搬送室56が設けられている。その搬送室56の内部には、基板搬送手段(ロボット)57が設けられている。そして、その搬送室56の周囲には、上述した第1エッチング装置60と、第2エッチング装置70と、純水リンサー80とが接続されている。これにより、基板を大気に晒すことなく工程間の搬送を行うことが可能になり、大気から水分を吸着することによる基板の腐食を防止することができるようになっている。なお、第2エッチング装置70はロードロック室を介して搬送室56に接続されていてもよい。また、ウエットプロセスとなる純水リンサー80は、ロードロック室58を介して搬送室56に接続されている。
【0031】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、まず第1エッチング装置60において異方性ドライエッチングを行う。すなわち、第1エッチング装置60により、トンネル接合膜のトンネルバリア層を貫通して所定パターンの凹部を形成する。次に、その基板を基板搬送手段57により第1エッチング装置60から取出し、搬送室56を経て第2エッチング装置70へと搬送する。
【0032】
図5は、第2エッチング装置の概略構成図である。この第2エッチング装置70では、チャンバ71の外部上方に高圧水銀ランプ78が設けられている。なお、チャンバ71の天井面は、その高圧水銀ランプ78からの光を透過しうるように構成されている。また、チャンバ71の内部下方には、基板5を載置するテーブル72が設けられている。なお、このテーブル72にはバイアス印加用RF電源が接続されていない。さらに、チャンバ71への反応ガスの供給手段と、チャンバ71の内部ガスの排気手段とが設けられている。なお、チャンバ71は内容量が極力小さくなるように扁平状に形成されている。これにより、真空ポンプの消費電力や反応ガスの消費量などを低減することができるようになっている。
【0033】
第2実施形態では、この第2エッチング装置を用いて、凹部の側壁への付着物を等方性ドライエッチングにより除去する。まず、チャンバ71内に反応ガスとしてClおよびArの混合ガスを導入し、その圧力を100〜10000Pa程度に設定する。次に、その反応ガスに対して、高圧水銀ランプ78の光を照射する。高圧水銀ランプ78はClガスの吸収波長である波長330nm近傍の光を照射するので、Clガスが励起されて塩素ラジカルが発生する。そして、その塩素ラジカルが側壁付着物に作用し、揮発性の塩化物が形成されてチャンバ71から排出される。なお、塩素ラジカルの密度は反応ガスの密度に比例するため、反応ガスの圧力が高いほど効率的なエッチングを行うことができる。そして、このように高い反応ガス圧力の下では、等方性ドライエッチングが行われるので、凹部側壁への付着物を除去することができる。
【0034】
その後、図4に示す基板搬送手段57により基板を第1エッチング装置60から取出し、搬送室56からロードロック室58を経て純水リンサー80へと搬送する。この純水リンサー80において、トンネル接合膜の表面に吸着している残留塩素などを除去する。以上により、トンネル接合素子が形成される。
【0035】
以上に詳述したように、本実施形態のトンネル接合素子のエッチング加工方法では、塩素ガスを導入し、その塩素ガスに高圧水銀ランプから光を照射して、等方性ドライエッチングを行う構成とした。この構成によれば、高圧水銀ランプは塩素ガスの吸収波長である波長330nm近傍の光を照射するので、塩素ガスを励起してラジカルを発生させることができる。これにより、等方性ドライエッチングを簡単に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態のトンネル接合素子のエッチング加工装置では、異方性ドライエッチング装置と等方性ドライエッチング装置とをそれぞれ別個に設ける構成とした。この場合、一つの装置で一つのプロセスを実施すれば足りるので、プロセスの切り替えにともなって反応ガスの昇圧および減圧を繰り返す必要がなくなり、トンネル接合素子を効率的に加工することができる。
また、異方性ドライエッチング装置と等方性ドライエッチング装置とが、基板の真空搬送手段を介して接続されている構成とした。この構成によれば、基板を大気に晒すことなく、異方性ドライエッチング工程から等方性ドライエッチング工程へと基板を搬送することが可能になり、大気からの水分の吸着による基板の腐食等を防止することができる。
【0037】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】トンネル接合素子およびMRAMの概略構成図である。
【図2】トンネル接合素子のエッチング加工方法の説明図である。
【図3】第1エッチング装置の概略構成図である。
【図4】第2実施形態で使用するトンネル接合素子の製造装置である。
【図5】第2エッチング装置の概略構成図である。
【図6】導電性物質が付着したトンネル接合素子の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10a‥トンネル接合膜 15‥トンネルバリア層 20‥凹部 22‥側壁付着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル接合膜のトンネルバリア層を貫通して、所定パターンの凹部を形成する異方性ドライエッチング工程と、
前記凹部の側壁への付着物を除去する等方性ドライエッチング工程と、
を有することを特徴とするトンネル接合素子のエッチング加工方法。
【請求項2】
前記等方性ドライエッチング工程は、圧力が100Pa以上1000Pa以下の反応ガスを導入し、プラズマを発生させて行うことを特徴とする請求項1に記載のトンネル接合素子のエッチング加工方法。
【請求項3】
前記等方性ドライエッチング工程は、塩素ガスを導入し、その塩素ガスに高圧水銀ランプから光を照射して行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトンネル接合素子のエッチング加工方法。
【請求項4】
トンネル接合膜のトンネルバリア層を貫通して形成された所定パターンの凹部につき、前記凹部の側壁への付着物を等方性ドライエッチングにより除去する装置であって、
前記トンネル接合膜が形成された基板を配置するチャンバと、前記チャンバに塩素ガスを導入する塩素ガス供給手段と、導入された前記塩素ガスに光を照射して前記塩素ガスを励起する高圧水銀ランプと、を有することを特徴とするトンネル接合素子のエッチング加工装置。
【請求項5】
前記トンネル接合膜に対して前記凹部を形成する異方性ドライエッチング装置と、
請求項4に記載の等方性ドライエッチング装置とが、
前記基板の真空搬送手段を介して接続されていることを特徴とするトンネル接合素子のエッチング加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−165030(P2006−165030A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349733(P2004−349733)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】