説明

ドライバ・コンパレータ回路およびそれを用いた試験装置

【課題】双方向伝送において送信信号をキャンセルする。
【解決手段】第1抵抗R1は、その第1端子に第1電圧VH’が印加され、その第2端子が入出力端子P1と接続される。第2抵抗R2は、その第1端子に第1電圧VH’が印加される。テイル電流源12は、所定のテイル電流Ia’を生成する。電流スイッチ10は、第2デバイス102に送信すべきデータPATを受け、その値に応じて第1抵抗R1の第2端子と第2抵抗R2の第2端子の一方を選択し、テイル電流源12と結合する。分圧回路DIV1は、第1抵抗R1の第2端子と第2抵抗R2の第2端子の間に順に直列に設けられた第3抵抗R3および第4抵抗R4を含む。負荷バランサLB1は、その第1端子に第2電圧VLBが印加され、その第2端子が第2抵抗R2の第2端子と接続された第5抵抗R5を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の伝送線路を介して信号を出力するドライバ機能と、入力された信号のレベルを判定するコンパレータ機能を備えるドライバ・コンパレータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの半導体デバイス間でデータを送受信する場合、単一の伝送線路を介して双方向伝送を行う場合がある。こうした双方向インタフェースを備えるデバイスを試験する場合、被試験デバイス(DUT)から出力される信号の振幅がしきい値電圧と比較され、その良否が判定される。
【0003】
双方向インタフェースを有するDUTを検査する試験装置について検討する。試験装置には、共通の伝送線路に接続されたトランスミッタ(ドライバ)とレシーバ(コンパレータ)が設けられる。ドライバは、DUTにテストパターンを送信し、コンパレータは、DUTから出力された信号の論理値を判定し、あるいは信号の振幅を検査する。
【0004】
試験装置のコンパレータは、伝送線路を介してDUTと接続されるとともに、試験装置側のドライバとも接続されている。したがって双方向インタフェースを備えるDUTの試験装置は、そのコンパレータが隣接するドライバの出力信号の影響を受けないように配慮して設計する必要がある。
【0005】
最も原始的には、DUTが出力した信号が伝送線路を伝搬する期間は、ドライバの出力を所定の終端電圧に固定することにより双方向伝送が実現できる。ただしこの方式では、信号の伝送方向が切り替わる際には、伝送線路の時間長だけオーバーヘッド(ラウンドトリップディレイと称される)が発生することになる。非常に長いテストパターンをDUTに供給し、DUTからの信号を判定する試験装置において、ラウンドトリップディレイは、試験時間の増大という問題をもたらし、生産性を低下させる一因となりうる。
【0006】
かかる問題は、試験装置に限らず、半導体デバイス間の双方向伝送においても同様に発生し、ラウンドトリップディレイは、伝送レートの低下の要因となる。
【0007】
ラウンドトリップディレイの問題を解消するさまざまな手法が提案されている。たとえば特許文献1、2には、双方向通信において、自らの送信信号をキャンセルして相手側からの信号のみを受信する回路(ハイブリッド回路)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭47−11702号公報
【特許文献2】米国特許第3,725,582号明細書
【特許文献3】特開平8−23354号公報
【特許文献4】特開2006−23233号公報
【特許文献5】米国特許第6,573,764B1号明細書
【特許文献6】米国特許第7,190,194B2号明細書
【特許文献7】米国特許第6,133,725号明細書
【特許文献8】米国特許第6,703,825号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、双方向インタフェースを有するドライバ・コンパレータ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、通信相手のデバイスとの間で伝送線路を介して信号を双方向伝送するドライバ・コンパレータ回路に関する。このドライバ・コンパレータ回路は、伝送線路に接続される入出力端子、ドライバアンプ、コンパレータに加えて、分圧回路および負荷バランサを備える。
ドライバアンプは、その第1端子に第1電圧が印加され、その第2端子が入出力端子と接続された第1抵抗と、その第1端子に第1電圧が印加された第2抵抗と、所定のテイル電流を生成するテイル電流源と、通信相手のデバイスに送信すべきデータを受け、その値に応じて第1抵抗の第2端子と第2抵抗の第2端子の一方を選択し、テイル電流源と結合する電流スイッチと、を含む。分圧回路は、第1抵抗の第2端子と第2抵抗の第2端子の間に順に直列に設けられた第3抵抗および第4抵抗を含む。負荷バランサは、その第1端子に第2電圧が印加され、その第2端子が第2抵抗の第2端子と接続された第5抵抗を含む。コンパレータは、第3、第4抵抗の接続点の電位を、所定の第1しきい値電圧と比較する。
【0011】
この態様によれば、第1抵抗の第2端子の電圧と第2抵抗の第2端子の電圧は、逆相で遷移する。したがって、2つの電圧を第3、第4抵抗により分圧すると、ドライバアンプが通信相手のデバイスに送り出す信号成分をキャンセルすることができ、コンパレータは、通信相手のデバイスが送信した信号成分をしきい値電圧と比較できる。また、第5抵抗を設けることにより、第1抵抗の第2端子の電圧振幅と、第2抵抗の第2端子の電圧振幅をバランスさせることができる。
【0012】
本発明の別の態様は、被試験デバイス(DUT)との間で伝送線路を介して信号を双方向伝送し、被試験デバイスを検査する試験装置に関する。この試験装置は、被試験デバイスを通信相手とする上述のドライバ・コンパレータ回路を備える。
この態様によれば、DUTからの信号成分のみをしきい値電圧と比較することができ、ラウンドトリップディレイの影響を低減できるため、試験時間を短縮化することができる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様のドライバ・コンパレータ回路によれば、自らが送信した信号をキャンセルし、通信相手のデバイスからの信号成分のみを抽出して評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係るドライバ・コンパレータ回路の構成を示す回路図である。
【図2】図2(a)、(b)は、図1の電流スイッチの構成例を示す回路図である。
【図3】基本となるドライバ・コンパレータ回路の構成を示す回路図である。
【図4】図4(a)、(b)はそれぞれ、図3、図1のドライバ・コンパレータ回路のインピーダンスに関係する回路素子のみを抜き出した回路図である。
【図5】図5(a)、(b)はそれぞれ、図3、図1のドライバ・コンパレータ回路の電圧に関係する回路素子のみを抜き出した回路図である。
【図6】図6(a)、(b)はそれぞれ、図3、図1のドライバ・コンパレータ回路の電圧に関係する回路素子のみを抜き出した回路図である。
【図7】図7(a)、(b)は、第2デバイスが接続されたドライバ・コンパレータ回路の一部を示す回路図である。
【図8】第1の変形例に係るドライバ・コンパレータ回路の構成を示す回路図である。
【図9】第2の変形例に係るドライバ・コンパレータ回路の構成を示す回路図である。
【図10】図10(a)、(b)は、第3の変形例に係るドライバ・コンパレータ回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0018】
以下で説明する実施の形態は、双方向インタフェースを有するドライバ・コンパレータ回路に関する。図1は、実施の形態に係るドライバ・コンパレータ回路100の構成を示す回路図である。
【0019】
ドライバ・コンパレータ回路100は第1のデバイスのインタフェース回路であり、通信相手のデバイス(以下、第2デバイスと称する)102と伝送線路104を介して接続され、第2デバイス102に対して信号Vdpを出力し、あるいは第2デバイス102から出力される信号Vuを受信する。
【0020】
もしくは、ドライバ・コンパレータ回路100は、自動試験装置ATE(Automatic Test Equipment)のインタフェース回路(ピンエレクトロニクスとも称される)としての利用にも好適である。すなわち、ドライバ・コンパレータ回路100は、第2デバイス(DUT)に対してパターンデータを出力するとともに、DUTからの信号を受け、その振幅(レベル)を判定する。
【0021】
第2デバイス102は、ドライバアンプDRV2、出力抵抗Ruを備える。ドライバアンプDRV2から出力される信号Vuは、伝送線路104を介してドライバ・コンパレータ回路100の入出力端子P1に入力される。ドライバアンプDRV2には出力抵抗Ruが設けられる。伝送線路104の特性インピーダンスZoは、第2デバイス102の出力抵抗Ruとマッチングがとれているとの前提のもと、以下の説明を進める。
【0022】
ドライバ・コンパレータ回路100は、伝送線路104が接続される入出力端子P1を備える。さらにドライバ・コンパレータ回路100は、ドライバアンプDRV1、負荷バランサLB1、分圧回路DIV1、コンパレータCMP1を備える。
【0023】
ドライバアンプDRV1は、高速伝送に適したCML(Current Mode Logic)形式のドライバであり、第1電圧源VS1、第1抵抗R1、第2抵抗R2、電流スイッチ10、テイル電流源12を備える。
【0024】
第1電圧源VS1は、第1電圧VH’を生成する。第1電圧VH’は電源電圧であってもよいし、その他の任意の電圧であってもよい。
【0025】
第1抵抗R1は、その高電位側の一端(第1端子)に第1電圧VH’が印加され、その低電位側の他端(第2端子)が入出力端子P1と接続される。第2抵抗R2は、その高電位側の一端(第1端子)に第1電圧VH’が印加される。第1抵抗R1および第2抵抗R2の抵抗値は等しく、以下ではRa’と記す。テイル電流源12は、所定のテイル電流Ia’を生成する。電流スイッチ10は、第2デバイス102に送信すべきパターンデータPATを受け、その値に応じて第1抵抗R1の第2端子と第2抵抗R2の第2端子の一方を選択し、テイル電流源12と結合する。
【0026】
ドライバアンプDRV1おいて、PAT=1のとき、第2抵抗R2側にテイル電流Ia’が流れるため、第1抵抗R1の第2端子の電圧Vdpはハイレベルに対応する電圧となり、PAT=0のとき、第1抵抗R1側にテイル電流Ia’が流れるため、電圧Vdpはローレベルに対応する電圧となる。
【0027】
図2(a)、(b)は、図1の電流スイッチ10の構成例を示す回路図である。図2(a)、(b)の電流スイッチ10a、10bはそれぞれ、第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2を含む。図2(a)のトランジスタTr1、Tr2はNPN型バイポーラトランジスタである。第1トランジスタTr1の第1端子(コレクタ)は、第1抵抗R1を介して第1電圧VH’にプルアップされる。第2トランジスタTr2の第1端子(コレクタ)は、第2抵抗R2を介して第1電圧VH’にプルアップされる。第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2の第2端子(エミッタ)は、共通に接続され、テイル電流Ia’を供給するテイル電流源12と接続される。第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2の制御端子(ベース)には、パターンデータPATが入力される。
【0028】
図2(b)の電流スイッチ10bは、トランジスタTr1、Tr2をNチャンネルMOSFETに置換した構成であり、第1端子をドレイン、第2端子をソース、制御端子をゲートと読み替えればよい。
【0029】
ただし電流スイッチ10の構成は図2(a)、(b)に示す差動トランジスタ対に限定されず、トランジスタ以外のスイッチング素子を利用してもよい。
【0030】
図1に戻る。分圧回路DIV1は、第1抵抗R1の第2端子と、第2抵抗R2の第2端子の間に順に直列に設けられた第3抵抗R3および第4抵抗R4を含む。分圧回路DIV1は、第1抵抗R1の第2端子の電圧Vdpと第2抵抗R2の第2端子Vdnを分圧する。第3抵抗R3、第4抵抗R4の抵抗値は等しくてもよい。以下、2つの抵抗値を、Rbと記す。
【0031】
第3抵抗R3、第4抵抗R4の抵抗値Rbは任意で構わないが、第5抵抗R5の抵抗値Raに比べて十分に大きく、たとえば数十倍(10倍から100倍)程度の大きな値とすることが好ましい。この場合、分圧回路DIV1が、ドライバアンプDRV1の出力信号Vdpに与える影響を抑制できる。
一方、第3抵抗R3、第4抵抗R4は、コンパレータCMP1の入力容量とともにローパスフィルタを構成するため、抵抗値Rbが大きすぎると、コンパレータCMP1の応答性を悪化させる。
現実的な値を例示すれば、Ra=50Ω、Rb=1kΩであってもよい。
【0032】
負荷バランサLB1は、第1抵抗R1の第2端子に接続されるインピーダンス成分を、第2抵抗R2の第2端子に接続されるインピーダンス成分とバランスさせるために設けられている。具体的には、負荷バランサLB1は、第2電圧源VS2、第5抵抗R5を含む。第2電圧源VS2は、所定の第2電圧VLBを生成する。第5抵抗R5の高電位側の一端(第1端子)には、第2電圧VLBが印加され、その低電位側の他端(第2端子)は、第2抵抗R2の第2端子と接続される。
【0033】
たとえば、第2電圧VLBは任意の固定電圧で構わないが、第2デバイス102が出力する電圧の平均値付近とすることが望ましい。この場合、ドライバアンプDRV1の差動電圧成分Vdp、Vdnを良好にバランスさせることができる。
【0034】
コンパレータCMP1は、分圧回路DIV1の出力電圧、つまり第3抵抗R3、第4抵抗R4の接続点の電圧Vcを、所定の第1しきい値電圧VOH’と比較する。
【0035】
以上がドライバ・コンパレータ回路100の基本的な構成である。次に、ドライバ・コンパレータ回路100の動作を説明する。
【0036】
第1抵抗R1の第2端子の電圧Vdpと第2抵抗R2の第2端子の電圧Vdnは、パターンデータPATに応じて逆相で遷移する。分圧回路DIV1の出力電圧Vcに着目すると、2つの電圧VdpとVdnを分圧した電圧であるから、パターンデータPATに応じて変動する成分は部分的に、あるいは完全にキャンセルされる。コンパレータCMP1は、ドライバアンプDRV1が第2デバイス102に対して送信した信号成分の影響から部分的にあるいは完全にフリーな状態で、第2デバイス102が送信した信号成分を、しきい値電圧VOH’と比較することができる。
【0037】
もし負荷バランサLB1が無ければ、電圧Vdnの振幅が電圧Vdpの振幅の2倍程度となるため、分圧回路DIV1で分圧したとしても、ドライバアンプDRV1が送り出す信号成分をキャンセルできなくなる。負荷バランサLB1を設けることにより、差動電圧VdpとVdnの振幅を揃えることが可能となる。
【0038】
図1のドライバ・コンパレータ回路100の利点は、図3のドライバ・コンパレータ回路300との対比によって明確となる。図3は、基本となるドライバ・コンパレータ回路300の構成を示す回路図である。図3のドライバ・コンパレータ回路300は、図1のドライバ・コンパレータ回路100から分圧回路DIV1および負荷バランサLB1を省略した構成となっている。
【0039】
図3のドライバ・コンパレータ回路300の振る舞いについて説明する。ここではドライバ・コンパレータ回路300、第2デバイス102、伝送線路104は、インピーダンス整合がとれているものとする。つまり、
Ra=Zo=Ru …(A)
が成り立っている。
【0040】
図3のドライバ・コンパレータ回路300において、コンパレータCMP1の入力電圧Vdは、伝送線路104による遅延時間を無視すれば、式(1a)で与えられる。式(1a)に、式(A)を適用すると、式(1b)を得る。
【数1】

【0041】
コンパレータCMP1は、電圧Vdをしきい値電圧VOHと比較し、
Vd>VOHのとき、SH=ローレベル
Vd<VOHのとき、SH=ハイレベル
となる判定信号SHを生成する。式(1b)から明らかなように、コンパレータCMP1に入力される電圧Vdは、ドライバが出力するパターンデータPATと、第2デバイス102の出力電圧Vuの合成となる。
【0042】
このことは、第2デバイス102の信号の出力中において、ドライバアンプDRV1から信号を出力すると、コンパレータCMP1におけるハイレベルとローレベルの判定結果に影響を及ぼすことを意味する。
これに対して、図1のドライバ・コンパレータ回路100によれば、詳しくは後述するようにコンパレータCMP1に入力される電圧Vcに与えるパターンデータPATの影響を低減し、あるいは無くすことができる。
【0043】
以下、ドライバ・コンパレータ回路100の各電圧や抵抗値の設計手法について説明する。設計の指針は、図1のドライバ・コンパレータ回路100の特性を、図3のドライバ・コンパレータ回路300の特性と一致させることである。
【0044】
(第1条件)
第1条件は、図1のドライバ・コンパレータ回路100の入出力端子P1から、その内部を望んだインピーダンスZ1が、図3のドライバ・コンパレータ回路300の入出力端子P1からその内部を望んだインピーダンスZ2と等しいことである。
【0045】
図4(a)、(b)はそれぞれ、図3のドライバ・コンパレータ回路300および図1のドライバ・コンパレータ回路100のインピーダンスに関係する回路素子のみを抜き出した回路図である。
【0046】
2つのインピーダンスZ1とZ2が等しくなるためには、
Ra=Ra’//(2×Rb+Ra//Ra’) …(2)
が成り立たなければならない。ここで「//」は、並列抵抗の合成抵抗値を意味する。つまり、「//」は、
A//B=A×B/(A+B)
なる演算子と捉えることができる。また、この演算子には、結合則
A//(B//C)=(A//B)//C
が成り立つ。
【0047】
式(2)を、Ra’について解くと、式(3)を得る。
【数2】

【0048】
ドライバ・コンパレータ回路300の第1抵抗R1の抵抗値Raおよびドライバ・コンパレータ回路100の第5抵抗R5の抵抗値Raは、いずれも伝送線路104の特性インピーダンスと等しくなければならない。したがって、分圧回路DIV1の抵抗値Rbが決まれば、第1抵抗R1および第2抵抗R2の抵抗値Ra’を決定することができる。あるいは、Ra’を先に決めて、式(3)を満たすようにRbを決めてもよい。
【0049】
式(3)を満たすとき、ドライバ・コンパレータ回路100、第2デバイス102、伝送線路104のインピーダンス整合をとることができ、信号の反射を抑えることができる。
【0050】
(第2条件)
第2条件は、図3のドライバ・コンパレータ回路300の入出力端子P1から出力される信号Vdの電圧レベルが、図1のドライバ・コンパレータ回路100の入出力端子P1から出力される信号Vdpの電圧レベルと等しいことである。
【0051】
図5(a)、(b)はそれぞれ、図3のドライバ・コンパレータ回路300の電圧Vdおよび図1のドライバ・コンパレータ回路100の電圧Vdpに関係する回路素子のみを抜き出した回路図である。図5(a)、(b)はPAT=0の状態を示す。
【0052】
図5(a)から、式(4)を得る。また図5(b)から、式(5)を得る。
【数3】

【0053】
図5(a)と図5(b)が等価であるためには、Vd=Vdpが成り立てばよい。式(5)を利用して方程式を立てると、式(6)を得る。
【数4】

【0054】
続いて、PAT=1の場合を考える。図6(a)、(b)はそれぞれ、図3のドライバ・コンパレータ回路300の電圧Vdおよび図1のドライバ・コンパレータ回路100の電圧Vdpに関係する回路素子のみを抜き出した回路図である。
【0055】
図6(a)から、式(7)を、図6(b)から、式(8a)、(8b)を得る。
【数5】

【0056】
図6(a)と図6(b)が等価であるためには、Vd=Vdpが成り立てばよく、式(7)と式(8)を利用して方程式を立てると、式(9)を得る。
【数6】

【0057】
式(6)および式(9)を連立させて解くと、式(10)、(11)を得る。
【数7】

【0058】
図1のドライバ・コンパレータ回路100において、第1電圧VH’およびテイル電流Ia’が、式(10)、(11)を満たすとき、図1のドライバ・コンパレータ回路100、図3のドライバ・コンパレータ回路300と同じ振幅の信号Vdpを発生することができる。言い換えれば、第2デバイス102から見た場合に、ドライバ・コンパレータ回路100とドライバ・コンパレータ回路300は見分けが付かなくなる。
【0059】
続いて、コンパレータCMP1の入力電圧Vcについて検討する。図7(a)は、第2デバイス102が接続されたドライバ・コンパレータ回路100の一部を示す回路図である。図7(b)は、図7(a)のドライバ・コンパレータ回路100’の変形である。図7(b)において、
Ra=Ru
とおいて回路網を解くと、コンパレータCMP1の入力電圧Vcは、式(12)のように求まる。
【数8】

【0060】
式(12)で表される電圧Vcには、PATの項が含まれていない。つまり、ドライバアンプDRV1の出力信号が、コンパレータCMP1におけるレベル判定に影響を及ぼさないことが裏付けられている。
【0061】
式(12)中の、Vuを、VOHに置き換えれば、図1におけるしきい値電圧VOH’を、式(13)のように決定することができる。
【数9】

【0062】
本実施の形態に係るドライバ・コンパレータ回路100の構成および動作を説明した。上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0063】
(第1の変形例)
図8は、第1の変形例に係るドライバ・コンパレータ回路100aの構成を示す回路図である。この変形例において、第2電圧VLBは、第1電圧VH’と等しく、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3それぞれの第1端子は、共通の電圧源VS1から電圧VH’を受ける。この変形例によれば、第2電圧源VS2を省略できる。
また、この変形例において、各パラメータが満たすべき関係式は、上述した図1のドライバ・コンパレータ回路100で得られた関係式に、束縛条件VLB=VH’を加えたものとなる。
【0064】
(第2の変形例)
図9は、第2の変形例に係るドライバ・コンパレータ回路100bの構成を示す回路図である。この変形例では、図1のドライバ・コンパレータ回路100に加えて、コンパレータCMP1の入力電圧Vcをレベルシフトするレベルシフト回路LS1が設けられている。
【0065】
レベルシフト回路LS1は、第6抵抗R6および第3電圧源VS3を備える。第3電圧源VS3は、所定の第3電圧Vcsを生成する。第6抵抗R6の一端(第1端子)は、第3抵抗R3および第4抵抗R4の接続点(すなわち、コンパレータCMP1の入力端子)と接続され、その他端(第2端子)に、第3電圧Vcsが印加される。第6抵抗R6の抵抗値をRcと記す。
【0066】
レベルシフト回路LS1によって、コンパレータCMP1の入力電圧Vcはレベルシフトされる。許容入力電圧範囲が狭いコンパレータCMP1を用いる場合、レベルシフト回路LS1を設けることにより、コンパレータCMP1の入力電圧Vcを適切な値にすることができる。
【0067】
図9の変形例に第1条件を適用すると、式(14)を得る。
Ra’//{(Ra’//Ra+Rb)//Rc+Rb)}=Ra …(14)
式(14)をRa’について解くと、式(15)を得る。式(15)が、図9のドライバ・コンパレータ回路100bにおいて、各抵抗の抵抗値が満たすべき関係式である。
【数10】

【0068】
図9の変形例に第2条件を適用すると式(16)、(17)を得る。
【数11】

【数12】

【数13】

【0069】
以上の式と、式(10)、式(11)を用いれば、VH’およびIa’を求めることができる。また式(12)を利用すれば、式(18)を得る。
【数14】

【0070】
式(18)において、VuをVOHに置き換えれば、しきい値電圧VOH’を得る。
【0071】
(第3の変形例)
図10(a)、(b)は、第3の変形例に係るドライバ・コンパレータ回路100cの構成を示す回路図である。図10(a)において、第1電圧源VS1と第1抵抗R1を含む終端回路20a、第1電圧源VS1と第2抵抗R2を含む終端回路20bおよび負荷バランサLB1の終端回路20cの少なくともひとつは、図10(b)で示す終端回路20の構成を有している。
【0072】
図10(b)に示すように終端回路20は、それぞれの出力端子が共通に接続されているテブナン終端回路22と、R−2R終端回路24を含む。
【0073】
終端回路20は、(K+L)ビット(K、Lは自然数)のデジタルの制御データBに応じて制御される。制御データBの上位Kビットは、テブナン終端回路22に割り当てられ、下位LビットはR−2R終端回路24に割り当てられる。図10では、K=4、L=3の場合が示されている。
【0074】
テブナン終端回路22は、Σi=1:Ki−1=2−1個の並列接続された、バッファBUFおよび抵抗Rのペアを含む。Σi=1:Kは、変数iを1からKまでインクリメントしながら加算することを示す。バッファと抵抗のペアは、K個にグループ化されており、同じグループに属するペアは、入力端子と出力端子が共通に接続されている。また、i番目(1≦i≦K)のグループは、2i−1個のペアを含み、i番目のグループには、制御データの下位第(i+L)ビット目のB[i+L]が入力される。すべてのペアの出力端子は共通に接続される。
【0075】
R−2R終端回路24は、(L+1)段のR−2R型ネットワークおよび、各段の抵抗Rの一端に電圧を与える(L+1)個のバッファと、を含む。各バッファには、出力端子に近いものから順に、制御データBの下位Lビットが割り当てられており、出力端子から最も遠いバッファには、固定電位(たとえば接地電位)が入力されている。
【0076】
図10の変形例によれば、制御データの各ビットB[6:0]の値に応じて、図1等における第1電圧VH’、第2電圧LB、図9における第3電圧Vcsを好適に制御することができる。
【0077】
また、図10の変形例において、テブナン終端回路22の出力端子からその内部を見たインピーダンスは、R/(2−1)である。またR−2R終端回路24の出力端子からその内部を見たインピーダンスは、Rである。
終端回路20の出力端子からその内部を見たインピーダンスは、テブナン終端回路22とR−2R終端回路24の合成で与えられ、R/2となる。したがって、この合成インピーダンスが、抵抗値Ra’、RaあるいはRcと等しくなるように、抵抗R、R/2の値を決定すればよい。
【0078】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
100,300…ドライバ・コンパレータ回路、102…第2デバイス、104…伝送線路、P1…入出力端子、DRV1…ドライバアンプ、CMP1…コンパレータ、DIV1…分圧回路、LB1…負荷バランサ、10…電流スイッチ、12…テイル電流源、VS1…第1電圧源、VS2…第2電圧源、VS3…第3電圧源、LS1…レベルシフト回路、20…終端回路、22…テブナン終端回路、24…R−2R終端回路、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、R3…第3抵抗、R4…第4抵抗、R5…第5抵抗、R6…第6抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手のデバイスとの間で伝送線路を介して信号を双方向伝送するドライバ・コンパレータ回路であって、
前記伝送線路に接続される入出力端子と、
その第1端子に第1電圧が印加され、その第2端子が前記入出力端子と接続された第1抵抗と、
その第1端子に前記第1電圧が印加された第2抵抗と、
所定のテイル電流を生成するテイル電流源と、
前記通信相手のデバイスに送信すべきデータを受け、その値に応じて前記第1抵抗の第2端子と前記第2抵抗の第2端子の一方を選択し、前記テイル電流源と結合する電流スイッチと、
前記第1抵抗の前記第2端子と前記第2抵抗の前記第2端子の間に順に直列に設けられた第3抵抗および第4抵抗を含む分圧回路と、
その第1端子に第2電圧が印加され、その第2端子が前記第2抵抗の前記第2端子と接続された第5抵抗を含む負荷バランサと、
前記第3、第4抵抗の接続点の電位を、所定の第1しきい値電圧と比較するコンパレータと、
を備えることを特徴とするドライバ・コンパレータ回路。
【請求項2】
前記第1、第2抵抗の抵抗値Ra’、第3、第4抵抗の抵抗値Rb、第5抵抗の抵抗値Raは、下記数式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のドライバ・コンパレータ回路。
【数1】

【請求項3】
前記第1電圧、第2電圧は等しく、前記第1、第2、第3抵抗それぞれの第1端子は、共通の電圧源から電圧を受けることを特徴とする請求項1または2に記載のドライバ・コンパレータ回路。
【請求項4】
前記第2電圧は、前記通信相手のデバイスが出力する電圧の略平均値であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドライバ・コンパレータ回路。
【請求項5】
その第1端子が、前記第3、第4抵抗の接続点と接続され、その第2端子に、所定の第3電圧が印加された第6抵抗をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のドライバ・コンパレータ回路。
【請求項6】
前記第1、第2抵抗の抵抗値Ra’、第3、第4抵抗の抵抗値Rb、第5抵抗の抵抗値Ra、前記第6抵抗の抵抗値Rcは、下記数式(2)を満たすことを特徴とする請求項5に記載のドライバ・コンパレータ回路。
【数2】

【請求項7】
前記第1、第2、第3抵抗の少なくともひとつは、
それぞれの出力端子が共通に接続されたテブナン終端回路とR−2R型の抵抗ネットワークを含むR−2R終端回路で置換されていることを特徴とする請求項1に記載のドライバ・コンパレータ回路。
【請求項8】
被試験デバイスとの間で伝送線路を介して信号を双方向伝送し、前記被試験デバイスを検査する試験装置であって、
前記被試験デバイスを通信相手とする請求項1から7のいずれかに記載のドライバ・コンパレータ回路を備えることを特徴とする試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−259060(P2010−259060A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65432(P2010−65432)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】