説明

ナノワイヤセンサ、ナノワイヤセンサアレイ、及び当該センサ及びセンサアレイを形成する方法

支持基板の上にナノワイヤを含むセンサであって、第1半導体層が該支持基板上に配置されたセンサ、を形成する方法が開示されている。該方法は、第1半導体層からなり、かつ少なくとも2つの支持部と、該支持部の間に配置されるフィン部と、を含むフィン構造を形成する工程と;フィン構造の少なくともフィン部を酸化することにより第1酸化膜層によって取り囲まれるナノワイヤを形成する工程と;絶縁層を該支持部の上に形成する工程と、を含み、支持部及び第1絶縁層はマイクロ流体チャネルを構成する。ナノワイヤセンサも開示されている。ナノワイヤセンサは、支持基板と;支持基板の上に配置され、かつ少なくとも2つの半導体支持部と、該支持部の間に配置されるフィン部と、を含む半導体フィン構造と;支持部のコンタクト表面の上の第1絶縁層と、を備え、支持部及び第1絶縁層はマイクロ流体チャネルを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサの分野に関し、特にナノワイヤを支持基板上に、かつ当該支持基板の上に半導体層が配置される状態で備えるセンサを形成する方法に関する。本発明は更に、ナノワイヤセンサ及びナノワイヤセンサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤ及びカーボンナノチューブのような一次元ナノ構造は、非常に感度の高い超小型化された分子センサの有望な候補であると認識されている。詳細には、カーボンナノチューブ、シリコン(Si)ナノワイヤ、酸化錫(SnO)ナノワイヤ、及び酸化インジウム(In)ナノワイヤのような半導体ナノ構造を利用するセンサは、センサによる検出において、分子種が存在する状態の、または分子種が存在しない状態のナノ構造の表面電荷の変化の原理を利用するので特に有望である。
【0003】
ナノワイヤの表面対容積比が大きいことによって、該ナノワイヤの導電性が表面付着種によって大きく変化するので、単一分子の検出が可能になる。しかしながら、「ボトムアップ」ナノ構造を利用する既存の研究のほとんどは、オーミックコンタクトの信頼性を高め、かつドーピング濃度の制御の信頼性を高める個々のナノ構造の移動及び位置決めを必要とする複雑な集積化によって制約を受けている。更に、検体の検出に使用することができる酵素、抗体、タンパク質、または生体高分子のような生物学的受容体の送達は、ナノ構造センサデバイスにおける困難な解決課題として残っている。同じ課題が、検出されるべく検体の送達に当てはまる。現在、送達は通常、シリンジポンプ、マイクロピペット、または原子間力顕微鏡(atomic force microscopy:AFM)チップ先端(ディップペン)を使用することにより行なわれ、この操作は、ナノワイヤの位置を高精度で正確に特定する必要があるので、精度の悪い長時間を要する試行錯誤の作業になる。従って、このような送達方法は、研究所における実験にしか用いることができず、製品実現の観点からは有用ではない。
【0004】
これらの問題を解決しようとする幾つかの試みが為されており、ナノワイヤを利用することによって流動環境における検出を可能にしようとしている。これらの試みの中でもとりわけ、種々の流体を供給して表面改質、固定化、検出、及び検査を行なう機能を搭載したバイオセンサがある。一つのアプローチが、特許文献1に記載されている。この出願には、サンプル露出領域と、そしてナノワイヤまたは官能化されたナノワイヤと、を有することにより、サンプルに含まれると疑われる検体の有無を検出するナノスケールデバイス、及び当該デバイスを使用する方法が開示されている。特許文献1では、ナノワイヤはセンサとして機能し、そしてナノワイヤが検体を含むと疑われるサンプルに接触すると特性変化を起こすことができる。この特許出願によれば、ナノワイヤは、金属被覆を触媒とする化学的気相成長(CVD)及びレーザ蒸着による触媒薄膜成長により形成される。
【0005】
特許文献1では、サンプル露出領域は、ナノワイヤに非常に近接するいずれの領域とすることもでき、この場合、サンプル露出領域のサンプルはナノワイヤの少なくとも一部に作用する。サンプル露出領域の一例が流体流動チャネルであり、そしてこの流体流動チャネルはポリジメチルシロキサン(PDMS)溶液を鋳型に塗布することにより形成することができる。チャネルを作製し、そして表面に取り付けることができ、そして鋳型を取り外すことができる。別の構成として、チャネルは、マスターモデルをフォトリソグラフィを使用して製作し、そしてPDMSをマスターモデルに流し込むことにより形成することができる。ナノワイヤ及び流体チャネルは、上述の方法によって、同じデバイスに一緒に組み込まれる前に個別に形成される。
【0006】
別のアプローチが、特許文献2に記載されている。この出願には、分子及び細胞を含む標的生体物質の検出に使用されるマイクロスケールのバイオセンサが開示されている。バイオセンサは、集積電子機能、流入−流出ポート、及び界面構造、病原体特異性の高感度検出機能を有するマイクロ流体システムであり、そして半導体界面での生体材料の処理を可能にする。詳細には、バイオセンサは検出チャンバを有し、検出チャンバは微小ウェルまたは微小キャビティであり、微小ウェルまたは微小キャビティは、マイクロ加工技術によってウェハ内に形成され、かつ微小ウェルまたは微小キャビティには標的微生物種の存在に起因するチャンバにおける電気特性または電気パラメータ(抵抗または位相のような)の変化を検出する電極のような検出素子が配設される。検出を行なうために、特許文献2では、集積化金属電極を利用し、これらの金属電極はインピーダンス測定の原理に基づいて動作する。センサを作製するために、特許文献2では、上面−側面処理を利用して、集積化金属電極を形成する。流体チャネルは、Si内に、水酸化カリウム(KOH)溶液を用いた異方性エッチングを使用して形成される。センサは、約2マイクロメートルの寸法の病原性バクテリアの形態の微生物材料を検出するために効果的であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0117659号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0053535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に説明した先行技術によるデバイスの作製は、非常に面倒であり、かつ高コストである。従って、本発明の目的は、先行技術によるデバイスにおける上記した不具合の幾つかを有利に回避する、または軽減する、従来のセンサに取って代わるセンサを容易かつ低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ナノワイヤを支持基板の上に備えるセンサであって、第一の半導体層が支持基板上に配置されたセンサ、を形成する方法を提供する。本発明の方法は、第1半導体層からなり、かつ少なくとも2つの支持部と、そしてこれらの支持部の間に配置されるフィン部と、を含むフィン構造を形成する工程と;フィン構造の少なくともフィン部を酸化することにより、第1酸化膜層によって取り囲まれるナノワイヤを形成する工程と;そして第1絶縁層を支持部の上に形成する工程と、を含み;支持部及び第1絶縁層はマイクロ流体チャネルを構成する。本発明の方法は、センサを形成する簡単であり、かつコスト効率の高い方法となり得るが、これは、本発明の方法が従来のSi(CMOS)技術に完全に対応することができ、かつ標準のSi関連製造設備において実行することができるからである。これは、他のCMOS回路を一緒に形成することにより信号処理を行なうことができるので、規模の縮小が可能になり、かつ生産コストの低減が可能であることを意味する。
【0010】
CMOSとの相性が良いこのタイプのナノワイヤは、IEEE Conference on Emerging Technologies−Nanoelectronicsに掲載されたAjay Agarwalらによる「バルクシリコン及びSOIウェハにおけるSiナノワイヤの輸送特性」と題する刊行物、及びIEEE Conference on Emerging Technologies−Nanoelectronicsに掲載されたN. Singhらによる「ゲートで完全に囲まれたシリコンナノワイヤn−MOSFETsにおける室温クーロンブロッケード発振」と題する刊行物に開示されている。「バルクシリコン及びSOIウェハにおけるSiナノワイヤの輸送特性」と題する刊行物には、n型シリコンナノワイヤをバルク及びSOIウェハ上に、標準のCMOS対応技術を使用して形成する方法が開示され、そして当該刊行物は、ナノワイヤをマイクロ流体チャネルと一緒に集積化して、生体分子検出に適用することができることを示唆している。
【0011】
CMOSとの相性が良い別のタイプのナノワイヤが、「ゲートで完全に囲まれたシリコンナノワイヤn−MOSFETsにおける室温クーロンブロッケード発振」と題する刊行物に開示されている。この刊行物には、ゲートで完全に囲まれたシリコンナノワイヤNMOSを半導体オンインシュレータ(SOI)ウェハの上に形成するフルCMOS対応製造方法が記載されている。
【0012】
本発明の一の実施形態では、本発明の方法は更に、第1絶縁層を形成する前に、第2酸化膜層を支持部のコンタクト表面の上に形成する工程を含む。第2酸化膜層は通常、酸化シリコンであるが、酸化シリコンに制限されない。第2酸化膜層は約0.2ミクロン〜約1ミクロンの膜厚とすることができ、そしてナノワイヤを取り囲む第1酸化膜層よりも厚い。第2酸化膜層は、支持部を、後続の堆積工程を行なうために保護するように作用する。
【0013】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、流体チャネルを含む第1絶縁層を形成する前に、第1導電層を第2酸化膜層のコンタクト表面の上に形成する工程を含む。
本発明の更に別の実施形態では、本発明の方法は更に、第1絶縁層を平坦化する工程と、そして第1絶縁層の一部を除去して、マイクロ流体チャネルの一部を形成することにより、ナノワイヤを取り囲む第1酸化膜層のコンタクト表面に対する処理を可能にする工程と、を含む。第1絶縁層の例として、これらには制限されないが、酸化シリコン、他のいずれかの誘電体材料、または例えばSU8、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、アセテート、Riston(リストン),Kapton(カプトン)、ポリイミド、及びポリエステルのようなポリマーを挙げることができる。第1絶縁層の一部を除去する工程では、例えば、これらには制限されないが、選択的にエッチングするか、または例えば現像液のような化学薬品の中で溶解させる。本発明の方法は更に、ナノワイヤを取り囲む第1酸化膜層を除去してナノワイヤを露出させる工程と、そしてマイクロ流体チャネルをキャップ層で閉じる工程と、を含む。
【0014】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、フィン部に少なくとも一つのドーパントをドーピングする工程を含む。少なくとも一つのドーパントはp型またはn型のいずれかとすることができる。p型ドーパントの例として、これらには制限されないが、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムを挙げることができ、そしてn型ドーパントの例として、これらには制限されないが、リン及び砒素を挙げることができる。フィン部にn型ドーパントをドーピングすることにより、n型ナノワイヤが得られ、そしてフィン部にp型ドーパントをドーピングすることにより、p型ナノワイヤを形成することができる。p型ドーパント及びn型ドーパントからなる複合ドーパントをフィン部の個別部分にドーピングすることにより、P/Nダイオード接合を有するナノワイヤが得られる。ナノワイヤに異なるドーパントをドーピングした結果として得られる異なるナノワイヤセンサは異なる用途に使用することができる。P型ナノワイヤセンサ及びN型ナノワイヤセンサは互いに相補的である。特定の生物種がナノワイヤと接触してP型ナノワイヤの導電率を高めるように作用する場合、当該生物種はN型ナノワイヤの導電率を低くするように作用する。これは、信号が真正であり、ノイズではないことを示唆することになる。また、信号処理を容易にするためには、導電率の増加または減少が必要であり、この増減は、2つの導電型のナノワイヤセンサの内の一方の導電型のナノワイヤセンサを生物種または生物試料の特定の電荷に用いることにより実現する。更に、P/Nダイオード接合ナノワイヤセンサを使用して、温度変化を、生物活動または生物反応の位置で局部的に測定することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、フィン部の一部を除去することによりギャップをフィン部に形成する工程を含む。本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、フィン部の一部を誘電体材料で被覆する工程と、そしてシリサイド化プロセスをフィン部に対して行なう工程と、を含む。これらの工程を行なうことにより、本発明の方法によって、異なる導電型のナノワイヤをセンサに設けることができる。センサにおけるこれらナノワイヤの例として、ギャップを有するシリコンナノワイヤ及びギャップを有するシリサイド化ナノワイヤを挙げることができる。これらは、ナノギャップ型センサ(nano−gap types of sensor)とも呼ばれる。ナノワイヤセンサがギャップを有するシリコンナノワイヤを含む場合、これは、2つのシリコン電極の間にナノギャップを設けることができることを意味する。ナノワイヤセンサがギャップを有するシリサイド化ナノワイヤを含む場合、ギャップとして機能する半導体部分を2つの金属電極の間に設けることができる。ギャップよりも高い導電率を有する分子であればどのような分子でもこの場合、2つの電極を短絡させることにより検出することができる。この検出動作はオフモードまたはオンモードとして表現することができる。シリサイド化ナノギャップセンサは、センサが逆並列接続ダイオード構成になっているので、局部温度を記録または検出するために生物学的分析において使用することもできる。
【0016】
本発明の別の実施形態では、第2絶縁層は、支持基板と第1半導体層との間に配置される。これによって、SOI構造が得られるが、これは、SOI構造を、絶縁層が支持基板と第1半導体層との間に配置される構造により構成することができるからである。支持基板は、これらには制限されないが、シリコン、サファイア、ポリシリコン、酸化シリコン、及び窒化シリコンを含むことができる。第1半導体層は、これらには制限されないが、シリコン、砒化ガリウム及びシリコン−ゲルマニウムからなる群から選択される材料を含むことができる。第2絶縁層は、これらには制限されないが、酸化シリコン、ポリマー、及び誘電体材料を含むことができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、少なくとも2つの開口部をキャップ層に形成する工程を含み、キャップ層の各開口部は、各支持部から離れた或る距離に位置する。本発明の方法は更に、各開口部を第1導電層で充填することにより、各開口部から支持部のコンタクト表面に達する電気接続を形成する工程を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、フィン構造全体を酸化する工程を含む。これにより、第1酸化膜層が支持部の周りに形成される。
本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、第1半導体層を堆積させる前に第2半導体層を支持基板の上に堆積させる工程を含む。次に、第2半導体層からなる電極を形成し、そして電極はナノワイヤの下に位置する。本発明の方法は更に、フィン構造を形成する前に第3絶縁層を電極の上に堆積させる工程を含む。第2半導体層は、これらには制限されないが、シリコン、砒化ガリウム及びシリコン−ゲルマニウムを含むことができる。第3絶縁層は、これらには制限されないが、酸化シリコンまたは誘電体材料を含むことができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法は更に、第1絶縁層を形成する前にパッシベーション層を第1導電層の上に形成する工程を含む。パッシベーション層は、これらには制限されないが、窒化シリコン、酸化シリコン、または酸化アルミニウムを含むことができる。
【0020】
本発明は更に、ナノワイヤセンサを提供し、ナノワイヤセンサは、支持基板と、支持基板の上に配置される半導体フィン構造と、を備える。フィン構造は、少なくとも2つの半導体支持部と、そしてこれらの支持部の間に配置されるナノワイヤと;更に支持部のコンタクト表面の上の第1絶縁層と、を含む。支持部及び第1絶縁層はマイクロ流体チャネルを構成する。
【0021】
ナノワイヤセンサの一実施形態では、ナノワイヤセンサは更に、第1酸化膜層を支持部のコンタクト表面の上であって該支持部のコンタクト表面と絶縁層との間に備える。
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤセンサは更に、第1導電層を第1酸化膜層のコンタクト表面の上であって該第1酸化膜層のコンタクト表面と絶縁層との間に備える。
【0022】
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤは支持基板の上に位置し、これは、フィン部と支持基板との間に空間が存在するので、検体をナノワイヤ全体と全表面上で接触させることが可能であることを意味する。代替的に、ナノワイヤは支持基板の上に直接配置することができる。
【0023】
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤはn型ドーパントまたはp型ドーパントにより構成される。ナノワイヤは、P/Nダイオード接合として形成することもできる。上述のように、ナノワイヤにn型ドーパントをドーピングすることによりn型ナノワイヤが得られ、そしてナノワイヤにp型ドーパントをドーピングすることによりp型ナノワイヤを形成することができる。p型ドーパント及びn型ドーパントからなる複合ドーパントをナノワイヤの個別部分にドーピングすることにより、P/Nダイオード接合を有するナノワイヤが得られる。
【0024】
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤはギャップを含む。
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤはシリサイド化される。
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤの少なくとも表面を、当該表面に捕捉分子を結合させるように適合させ、捕捉分子は、注目検体と結合可能となり、該注目検体とともに複合体を形成することができる。注目検体は、結合パートナー(binding partner)を含む、または生成することができるいずれかの化学化合物または生物化合物であり得る。ナノワイヤセンサを使用して(捕捉分子を使用して、または使用せずに)検出することができる生体高分子の例として、これらには制限されないが、デオキシリボ核酸(DNA)分子、リボ核酸(RNA)分子、ペプチド核酸(PNA)、cDNA分子、または例えば10〜50個の塩基対(bp)を含む非常に短いオリゴヌクレオチドを挙げることができる。検出対象の核酸は2本鎖とすることができるが、1本鎖領域を少なくとも有することもできる、または、核酸が検出されるために、1本鎖として、例えば前の熱変性(鎖分離)の結果として存在する。この点に関して、検出対象の核酸の配列は、少なくとも部分的に、または全てを予め求めることができる、すなわち公知である。本発明のセンサを使用して検出することができる他の生体高分子は、タンパク質、ペプチド、または炭水化物分子である。タンパク質は、タンパク質中で通常の方法で観察される20個のアミノ酸により構成することができるが、タンパク質は、非天然由来のアミノ酸を含むこともできるか、例えば糖残基(オリゴ糖)で修飾され得るものか、或いは翻訳後修飾体を含むことができる。更に、幾つかの異なる生体高分子ポリマーにより構成される複合体、例えば核酸及びタンパク質により構成される複合体を検出することもできる。タンパク質またはペプチドの例示的な例(本発明は勿論、この時点ではこれらの例に制限される)として、心筋梗塞の特定マーカである心筋トロポニンIまたはTのような生理学的状態を示唆するマーカータンパク質、または脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)のようなナトリウム利尿ペプチドを挙げることができ、ナトリウム利尿ペプチドは、急性冠不全症候群または急性脳卒中を診断するためのマーカとして使用することができる。検体の他の例として、ヒト免疫不全ウィルス、肝炎ウィルス(例えば、A型肝炎ウィルス,B型肝炎ウィルス,またはC型肝炎ウィルス)、デング熱ウィルスのようなウィルス類、または任意の生命系の細胞(例えば、哺乳類細胞、バクテリア細胞)といった生命体、または薬剤候補のような小型有機分子、或いはダイオキシンまたはDDTのような環境毒素を、多数の注目検体の内のほんの幾つかの例として挙げることができる。適切な捕捉分子は、検体に応じて選択され、検体の有無、または状態が検査されることになる。例えば、検体が核酸である場合、捕捉分子は核酸分子とすることができ、核酸分子として、例えばこれらには制限されないが、約10〜50個の塩基対(bp)を含む短いオリゴヌクレオチドを挙げることができ、このオリゴヌクレオチドは、検出されるべき核酸の大部分相補的な、または該核酸と完全に相補的な配列部分を含む。検体がタンパク質、生命体、または小型有機分子である場合、捕捉分子は、(モノクロナールまたはポリクロナール)抗体のような免疫グロブリン、または所定の検体自体との特異的な結合親和性を有するそのフラグメントであり得る。代替的に、捕捉分子は、検体に付着されている標識物質と特異的結合親和性を有し得る。例えば、タンパク質のような検体を、通常に使用される、ジゴキシゲニンまたはビオチンのような標識基で標識することができ、そして捕捉分子は、ジゴキシゲニンと特異的な結合をする抗体、またはストレプトアビジン、或いはビオチンと特異的な結合をするアビジン、のようなタンパク質とすることができる。対応する捕捉分子の選択は、この技術分野において通常の技量を備える当業者の知識の範囲内で行なわれる。
【0025】
ナノワイヤの表面は、例えば国際特許出願第WO2005/066343号に記載されているプラズマエッチングによって修飾して、当該表面を結合に適する表面とすることができる。核酸分子の場合、検出されるべき核酸分子または捕捉分子のいずれかを、プラズマエッチングの後に固定することができる(国際特許出願第WO2005/066343号を参照)。第1の事例では、捕捉分子は全く必要ではない。ナノワイヤの表面を修飾する他のアプローチでは、このような修飾が捕捉分子の固定に必要である場合には、当該表面を、エポキシ基またはアミン基のような反応基を有するシラン化合物によりシラン化し、この反応基を介して、対応する基(例えば、活性化カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはチオール基)との共有結合が誘起され得る。適切なシラン分子は、一般化学式X−(CH−SiR(I)で表わされるアルキルシリル化合物であることが好ましく、化学式(I)では、pは1〜20の整数を表わし、そして1〜10であることが好ましく、XはNHまたはエポキシドのような反応性結合基であり、そしてシラン分子はナノワイヤの表面に、残基R,R,及びRの内の少なくとも一つの残基によって固定され、これらの残基は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、OR’,NHR’,NR’R”とすることができ、R’及びR”はアルキルである(通常、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどであり、n=0〜5であることが好ましく、n=0〜2であることが特に好ましい)。これらのような化合物は、例えばABCR/Gelestから市販されている(もっと簡単な化合物もFlukaまたはAldrichから市販されている)。これらの化合物は、シリコンに基づくナノワイヤを使用する場合に特に有利である。この場合、共有結合がシラン分子群の間にナノワイヤの表面のフリーのヒドロキシ基を介して形成される。適切なシラン化合物の他の例示的な例として、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン−テトラメトキシシラン(APTMS)または(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン−テトラメトキシシランをほんのわずかな例として挙げることができる。APTMSシラン化を使用する対応するアプローチは、Pharmaceutical Discovery,Oct 1,2005に掲載されたDi Pietroらによる「シリコン表面へのオリゴヌクレオチドの固定」と題する論文に記載されている。ナノワイヤ表面をこのようなシラン化合物によって修飾する手法は、抗体のような捕捉分子を抗体上のビオチンのような小さいリガンドに固定する方法にも適している。例えば、エポキシド基を有するシラン化合物が最初にN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)活性化二官能性エステルと反応し、次にこのエステルが、従来の結合を介して(例えば、カーボジイミドを用いて)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カーボジイミド(EDC)により、所望の検体の捕捉分子として機能する抗体と反応し得る。これらの結合方法は当該技術分野では公知であり、かつ当該技術分野において通常の技量を備える当業者の能力の範囲に含まれる。ナノワイヤの表面はまた生体親和性を有する結合層によって被覆することができ、生体親和性を有する結合層は、捕捉分子をナノワイヤの表面に結合させることが可能である。使用することができ、かつ生体親和性を有する層の例として、コラーゲン(タイプI、IIIまたはV)、キトサン、ヘパリンだけでなく、フィブロネクチン、デコリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、及び成長因子(TGFβ,bFGF)のような更に別の成分を挙げることができる。生体親和性を有する結合層の別の例としてアミノシラン膜を挙げることができ、アミノシラン膜には、捕捉分子として機能するチオール修飾されたデオキシリボ核酸(DNA)オリゴマーを、例えばチオール反応性成分及びアミノ反応性成分の両方を含むヘテロ二官能性架橋分子を介して固定することができる。
【0026】
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤセンサは更に、マイクロ流体チャネルを閉じるキャップ層を絶縁層の上に備える。
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、キャップ層は少なくとも2つの開口部を含み、各開口部は各支持部から離れた或る距離に位置する。
【0027】
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤセンサは更に、支持基板と半導体フィン構造との間に配置される第2絶縁層を備える。
ナノワイヤセンサの更に別の実施形態では、ナノワイヤセンサは、第1導電層の上であって該第1導電層と第1絶縁層との間にパッシベーション層を備える。
【0028】
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤセンサは更に電極を備える。当該電極は、ナノワイヤの下であって支持基板と該ナノワイヤとの間に位置する。
ナノワイヤセンサの別の実施形態では、ナノワイヤセンサは更に、電極とナノワイヤとの間に配置される第3絶縁層を備える。
【0029】
本発明は更に、ナノワイヤセンサを複数備えるナノワイヤセンサアレイを提供し、各ナノワイヤセンサは支持部を介して個々に指定することができる。
ナノワイヤセンサアレイの一実施形態では、アレイは複数のマイクロ流体チャネルを備える。
【0030】
ナノワイヤセンサアレイの別の実施形態では、アレイは、各ナノワイヤセンサを個々に指定する制御ユニットを備える。
ナノワイヤセンサアレイの更に別の実施形態においては、アレイでは、一つのナノワイヤセンサが基準として使用され、そして別のナノワイヤセンサが測定のために使用される。
【0031】
本発明は更に、ナノワイヤセンサアレイを使用する検出方法を提供する。当該方法では、一つのナノワイヤセンサを基準として使用し、そして別のナノワイヤセンサを測定のために使用する。
【0032】
本発明は更に、検体を検出する方法を提供する。当該方法は、ナノワイヤセンサの第1電気信号を測定する工程と、ナノワイヤセンサを、注目検体を含むと疑われるサンプルに接触させて検体をナノワイヤに固定する工程と、ナノワイヤの第2電気信号を測定し、そして測定した第1電気信号を第2電気信号と比較することにより、検体の有無を検出する工程と、を含む。
【0033】
検体を検出する方法の別の実施形態では、当該方法は更に、ナノワイヤの表面に、検体を結合する捕捉分子を設ける工程と;そして次に、注目検体を含むと疑われるサンプルを捕捉分子に接触させて、検体と捕捉分子との間での複合体形成を可能にする工程と、を含む。
【0034】
検体を検出する方法の別の実施形態では、第1電気信号と第2電気信号との差が閾値を超える場合、検体の存在が検出される。
検体を検出する方法の別の実施形態では、検体は生体高分子、生命体、または小型有機分子である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態によるナノワイヤセンサの上面図を示す。
【図2A】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2B】2B−1及び2B−2は、本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2C】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2D】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2E】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2F】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2G】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2H】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図2I】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態による、支持基板上に配置される第1半導体層を有する支持基板の上にナノワイヤを備えるセンサを形成する方法のフローチャートを示す。
【図4A】本発明の第2の実施形態による貫通ビアをキャップ層の上に有するナノワイヤセンサの上面図を示す。
【図4B】本発明の第2の実施形態によるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図5A】本発明の第3の実施形態によるボンディングパッド開口部をキャップ層の上に有するナノワイヤセンサの上面図を示す。
【図5B】本発明の第3の実施形態によるナノワイヤセンサの断面図を示す。
【図6A】配置が構造的に異なるナノワイヤを示す。
【図6B】配置が構造的に異なるナノワイヤを示す。
【図6C】配置が構造的に異なるナノワイヤを示す。
【図6D】配置が構造的に異なるナノワイヤを示す。
【図6E】配置が構造的に異なるナノワイヤを示す。
【図6F】配置が構造的に異なるナノワイヤを示す。
【図7A】異なる機能タイプのナノワイヤを示す。
【図7B】異なる機能タイプのナノワイヤを示す。
【図7C】異なる機能タイプのナノワイヤを示す。
【図7D】異なる機能タイプのナノワイヤを示す。
【図8】ナノワイヤセンサアレイを模式的に示す。
【図9A】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9B】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9C】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9D】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9E】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9F】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9G】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9H】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9I】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9J】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9K】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9L】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9M】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図9N】本発明の第1の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイのそれぞれの上面図及び断面図を示す。
【図10】流体チャネル形成の異なるプロトタイプを示す。
【図11】キャップ層で覆われる流体チャネルの上面図を示す。
【図12A】基準ナノワイヤアレイ及び流体チャネルを有する異なる多重化ナノワイヤセンサアレイ方式を示す。
【図12B】基準ナノワイヤアレイ及び流体チャネルを有する異なる多重化ナノワイヤセンサアレイ方式を示す。
【図13A】4つの異なる表面修飾法を異なる流体チャネルに適用する多重化ナノワイヤアレイ、及び単一の基準ナノワイヤアレイを示す。
【図13B】4つの異なる表面修飾法を単一の流体チャネルに適用する多重化ナノワイヤアレイ、及び多重化基準ナノワイヤアレイを示す。
【図14A】ナノワイヤセンサアレイ方式の他の実施形態を示す。
【図14B】ナノワイヤセンサアレイ方式の他の実施形態を示す。
【図15】本発明の第1の実施形態に従って形成される解放された単一のナノワイヤセンサを示す。
【図16A】三角形断面を示すSiナノワイヤの高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像を示す。
【図16B】円形断面を示すSiナノワイヤのHRTEM像を示す。
【図17】100本のナノワイヤを有するシリコンナノワイヤアレイの全体図を示す。
【図18】流体チャネルを形成する前のシリコンナノワイヤアレイの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図19A】垂直方向及び水平方向に配置されるSiナノワイヤのアレイの異なる図を示す。
【図19B】垂直方向及び水平方向に配置されるSiナノワイヤのアレイの異なる図を示す。
【図20】ナノワイヤセンサアレイのナノワイヤの電気特性を示す。
【図21A】異なる寸法を有し、かつ流体チャネルに一体化される形成済みのシリコンナノワイヤアレイを示す。
【図21B】異なる寸法を有し、かつ流体チャネルに一体化される形成済みのシリコンナノワイヤアレイを示す。
【図21C】異なる寸法を有し、かつ流体チャネルに一体化される形成済みのシリコンナノワイヤアレイを示す。
【図21D】異なる寸法を有し、かつ流体チャネルに一体化される形成済みのシリコンナノワイヤアレイを示す。
【図22A】SiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤを示す。
【図22B】SiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤに関して測定される導電率変化対pHのグラフを示す。
【図23】導電率変化対シリコンナノワイヤ幅のグラフを示す。
【図24A】別のSiO層によって被覆されるSiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤを示す。
【図24B】別のSiO層によって被覆されるSiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤに関して測定される、異なるpHの緩衝溶液の有無の状態でのナノワイヤの導電率対ゲート電圧(Vg)の変化のグラフを示す。
【図25】DNA付着前後のナノワイヤセンサに関して測定される電流(A)−電圧(V)のグラフを示す。
【図26A】プローブDNAの官能化及びDNAハイブリダイゼーションを図式的に示す。
【図26B】ssDNAとハイブリダイズするDNAプローブがp型及びn型シリコンナノワイヤアレイに固定されるときの導電率変化のボックスプロットを示す。
【図27】n型シリコンナノワイヤアレイに付着するプローブDNAの異なる濃度に対応する導電率変化のボックスプロットを示し;差し込み図は、1pMの濃度を有する相補的なDNAがハイブリダイズするときの導電率変化のボックスプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の図は、本発明の種々の例示的な実施形態を示している。しかしながら、本発明は、次の図に示される例示的な実施形態に制限されず、そして以下の記述において更に説明されることに留意されたい。
【0037】
ナノワイヤを支持基板の上に備えるセンサであって半導体層が該支持基板上に配置されたセンサの例示的な実施形態について、添付の図を参照しながら以下に詳細に記載する。更に、以下に記載される例示的な実施形態は種々の態様において、本発明の趣旨を変えない限り変更することができる。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施形態にしたがって、半導体材料から作製され、かつ流体チャネル106に一体化される単一のナノワイヤ104を備えるナノワイヤセンサ102の上面図を示す。ナノワイヤセンサ102は、スタンドアローン型デバイス用の、または他のラブオンチップ(lab−on−a−chip:LOC)アプリケーション用のブロックソリューション(block solution)として機能することができる。図1によれば、ナノワイヤ104は流体チャネル106を跨いで配置され、かつ2つの対応する端部を有する。ナノワイヤ104の各端部は、半導体材料により作製される対応する支持部(図示せず)に接続され、かつ支持部によって支持される。ナノワイヤ104の各端部は更に、対応する電気コンタクトパッド110に支持部を介して接続される。流体チャネル106は流入ポート112及び流出ポート114を有し、これらのポートのいずれか、または両方は、LOCの他のブロックとの接続を行ない、そして他のブロックからの接続を行なうことができる。
【0039】
次に、種々の形成工程におけるセンサ102の図1に示すラインX−Xに沿った断面を図2A〜2Iに示す。図1に関して既に説明した特徴をここで再度説明することはしない。再度説明はしないが、同じ参照記号は同じ構成要素を指す。
【0040】
図2Aは、開始構造であるSOI構造116を示している。SOI構造116は、支持基板122から垂直方向に絶縁層または埋め込み酸化膜(buried oxide:BOX)層120によって離間される半導体素子層118を含む。BOX層120は素子層118を支持基板122から電気的に絶縁する。SOI構造116は、ウェハ接合法、または酸素イオン注入分離(separation by implantation of oxygen:SIMOX)法のようないずれかの標準的な方法により形成することができる。
【0041】
図2Aの本発明の例示的な実施形態では、素子層118は通常Si(シリコン)であるが、いずれかの適切な半導体材料により形成することができ、適切な半導体材料として、これらには制限されないが、ポリシリコン、砒化ガリウム(GaAs)、ゲルマニウムまたはシリコンゲルマニウム(SiGe)を挙げることができる。素子層118に最初にn型ドーパントをドーピングして、当該素子層をn型層にする、またはp型ドーパントをドーピングして、当該素子層をp型層にすることができる。素子層118の膜厚は通常、約2ナノメートル〜約1マイクロメートルの範囲である。支持基板122はいずれかの適切な半導体材料により形成することができ、適切な半導体材料として、これらには制限されないが、Si、サファイア、多結晶シリコン(ポリシリコン)、酸化シリコン(SiO)または窒化シリコン(Si)を挙げることができる。BOX層120は通常、絶縁層である。BOX層120として通常、約2ナノメートル〜約数マイクロメートルの範囲の膜厚を有するSiO系のテトラエチルオルソシリケート(TEOS)、シラン(SiH)、またはSi熱酸化物、ガラス、窒化シリコン(Si)、或いはシリコンカーバイドを挙げることができるが、これらの材料に制限されない。
【0042】
Si素子層118を含むSOIウェハ116を開始材料として提供した後の中間工程では、フォトレジスト層(図示せず)をSi素子層118の上面に塗布する、またはコーティングする。次に、フォトレジスト層をパターニングして、2つの支持部の間に配置されるFIN部を標準のフォトリソグラフィ法により形成する。次に、パターニング済みのフォトレジスト層をマスクとして使用して、Si素子層118の内、マスクによって被覆されない部分を、反応性イオンエッチング(RIE)のような異方性エッチングプロセスによりエッチング除去する。
【0043】
図2B−1では、対応するSi支持部108の間に配置され、かつ対応するSi支持部108に各端部で接続されるシリコン(Si)FIN部126により構成されるシリコンFIN構造128がBOX層120の上に形成されている。シリコンFIN部126は、対応するSi支持部108を連結するブリッジとして機能する。図2B−2は、FIN構造の上面図を示している。Si支持部108は通常、シリコンFIN部126と比較すると、相対的に広い幅寸法のブロックである。図2B−2は、シリコンFIN部126が2つのSi支持部108の間の中央に配置される様子を示している。別の構成として、シリコンFIN部126は、2つのSi支持部108のいずれかの側に偏って配置することもできる。結果として得られるFIN構造128は、FINFET構造におけるソース領域とドレイン領域とを接続するFIN部に類似する。この種類のFINFET構造は、例えば米国特許第6,764,884号明細書及び米国特許第6,885,055号明細書に記載されている。FINFET構造128を形成した後、フォトレジスト層をフォトレジスト剥離装置(PRS)によって除去するか、または剥離する。フォトレジスト剥離または単に「レジスト剥離」とは、ウェハからの不要なフォトレジスト層の除去である。フォトレジスト剥離の目的は、使用する化学物質によりフォトレジスト下の表面材料が攻撃を受けないように、当該フォトレジスト材料をウェハから出来る限り迅速に除去することにある。この点に関して、他のいずれかの適切な技術またはプロセスを使用することにより、BOX層120上の2つのSi支持部108の間に配置されるシリコンFIN部126を含むFIN構造128の形成に関する柔軟性を高めることもできる。
【0044】
次に、2つのSi支持部108の間に配置されるシリコンFIN部126を含む構造128に、自己制限酸化処理(self−limiting oxidation process)を施す。J.Vac.Sci.Technol.B 15(6),Nov/Dec 1997に掲載されたJakub Kedzierski及びJeffery Bokorによって説明されているように、自己制限酸化は、これらに制限されないが、Si、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、多結晶シリコン、及び多結晶ゲルマニウムのような半導体材料を乾燥酸素(O)雰囲気中で約800℃〜約1200℃の概略温度範囲で、かつ約2時間〜約10時間の処理時間に亘って酸化して、SiO部またはSiO膜によって取り囲まれるSiコアを形成する処理である。自己制限酸化処理の間、Siが酸化されてSiOとなる。SiOはSiよりも大きい容積を占有するので、酸化が進行するにつれて、新たに形成される内側酸化膜層が、既に形成されている酸化膜層を外側に押し出すようになる。SiOの粘性が高いことによって、外側酸化膜層の半径方向の塑性変形が起こり難くなり、その結果、大きな法線応力がSi−SiO界面に戻る方向に発生する。Si界面での法線応力は、SiからSiOへの遷移がエネルギー的に有利ではなくなることにより酸化速度を遅くするように作用する。最終的に、所定の半径では、酸化が非常に遅い速度で行なわれるようになって、SiO膜またはSiO部によって取り囲まれる一つ以上の薄いSiコアにより構成される酸化を受けた構造が得られる。Siコアの数及び寸法は、酸化の温度及び時間によって変わり、そして対応する実験条件及び初期構造のアスペクト比を設定することにより制御することができる。
【0045】
図2Cでは、別のSiO部またはSiO膜138によって取り囲まれる2つの厚いSiコア134の間に配置されるSiO部またはSiO膜136によって取り囲まれる薄いSiコア132により構成される酸化済み構造130が、自己制限酸化処理が構造128全体に施された後に形成される。この処理によって、2つのSi支持部108の間に配置されるシリコンFIN部126を含む構造128を、別のSiO部またはSiO膜138によって取り囲まれる2つの厚いSiコア134の間に配置されるSiO部またはSiO膜136によって取り囲まれる薄いSiコア132により構成される酸化済み構造130に変化させる。SiO部またはSiO膜136によって取り囲まれるSiコア132は、シリコンFIN部126を酸化した結果として形成される。SiO部またはSiO膜138によって取り囲まれる2つの厚いSiコア134は、2つのSi支持部108を酸化した結果として形成される。
【0046】
しかしながら、酸化はシリコンFIN部126のみに限定することもできる(図2Cには示されない)。シリコンFIN部126のみに酸化を施すことにより、SiO部またはSiO膜136によって取り囲まれる薄いSiコア132の寸法が小さくなる。薄いSiコア132は対応する端部で、酸化されない2つのSi支持部108によって支持される。これらの実施形態のいずれも、要求条件に依存して実現され得る。
【0047】
自己制限酸化処理が行なわれる上述の両実施形態では、薄いSiコア132は、box層120の上に、または上方に、かつ未酸化Si支持部108の間の、またはSi支持部108の結果として得られるSiコア134の間のいずれかの高さに位置させることができる。薄いSiコア132は最終的に、本発明におけるナノワイヤ104を構成する。
【0048】
自己制限酸化処理の後、SiO層124が、図2Dに示されるように、酸化済み構造130の上に堆積している。このSiO層124は、薄いSiコア132を取り囲むSiO部またはSiO膜136、及び厚いSiコア134を取り囲むSiO部またはSiO膜138と同じとすることができる。しかしながら、SiO層124は、対応するSiO部またはSiO膜136,138と比較して相対的に厚く、かつ2つの厚いSiコア134を、後続の金属堆積またはエッチングプロセスの影響を受けないように保護するべく機能する。SiO層124及びそれぞれのSiO部またはSiO膜136,138は、これらのSiOが同じ材料により構成される場合には融合させることができる。
【0049】
中間工程では、SiO層124を堆積させた後、フォトレジスト層(図示せず)をSiO層124上に堆積させる。標準のフォトリソグラフィ法により、コンタクト開口部またはコンタクト凹部をフォトレジスト層に形成して、Si支持部108の対応する上面を覆うSiO層124に対する処理、または2つの厚いSiコア134を取り囲むSiO138を覆うSiO層124に対する処理を可能にする。SiO層124の一部、及び2つの厚いSiコア134を取り囲むSiO部またはSiO膜138を更にエッチングして、2つの厚いSiコア134の一部を露出させる。
【0050】
次に、図2Eでは、約1000〜15000オングストロームの導電層140をコンタクト開口部に入り込むように堆積させ、導電層140の一部を2つの厚いSiコア134と接触させる。例示的な実施形態では、導電層140の内、厚いSiコア134と接触する部分の各々は、0.18μm(ミクロン)のビアまたはホールとすることができる。導電層140は通常、金属または金属合金である。金属としては、これらには制限されないが、例えばアルミニウム、種々の比率のSi、銅(Cu)で合金化されたアルミニウム、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、またはこれらの金属の組み合わせを挙げることができる。導電層140を堆積させた後、コンタクトライン(図2Eには示さず)が更に、コンタクト開口部から電気コンタクトパッド110(図1に示す)に達するように、標準のフォトリソグラフィ法及び金属エッチング法を使用して画定される。次に、フォトレジスト層をフォトレジスト剥離装置によって除去するか、または剥離する。
【0051】
導電層140をコンタクト開口部の中に入り込むように堆積させた後、パッシベーション層141を導電層140の上に図2Eに示すように堆積させる。パッシベーション層141は、いずれかの適切な半導体材料により形成することができ、適切な半導体材料として、Si、サファイア、多結晶シリコン(ポリシリコン)、酸化シリコン(SiO)または窒化シリコン(Si)を挙げることができる。パッシベーション層は、金属ラインとテスト溶液とが、いかなる反応をも起こらないように保護し、更に薄いSiコアまたはナノワイヤ以外の領域における検体または分子の非特異的な結合の低減を助ける。
【0052】
次に、図2Fでは、約1マイクロメートル〜約数百マイクロメートルの範囲の膜厚の絶縁層142をパッシベーション層141の上であって、かつ薄いSiOコア132を取り囲むSiO部136の上面を覆うSiO層124の上に堆積させる。絶縁層142は、例えば酸化膜層(SiOのような)、SU8、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、アセテート、Riston(リストン),Kapton(カプトン)、ポリイミド、及びポリエステルのようなポリマー、または他の誘電体材料とすることができる。絶縁層142の膜厚は、この工程の後にチャネルを形成するためのいくらかの深さを提供する。堆積後、絶縁層142は、研磨プロセスを使用して更に平坦化することができ、研磨プロセスとしては、化学的機械研磨(CMP)、化学的研磨、機械的研磨、またはイオンミリングを挙げることができる。研磨プロセスによって平坦な表面が得られるのでキャップ層を更に堆積させることができる。しかしながら、SU8のようなポリマーの場合、平坦化は必要ではない。
【0053】
別の中間工程では、更なるフォトレジスト層(図示せず)を絶縁層142の上に堆積させる。フォトレジスト層を標準のフォトリソグラフィ法によりパターニングさせ、チャネル106が絶縁層142内に形成される予定の領域の上に開口部を形成する。図2Gでは、フォトレジスト層をマスクとして使用して、絶縁層142の一部を、ドライエッチングのようなエッチングプロセスによってエッチング除去してチャネル106を形成することにより、薄いSiコア132を取り囲むSiO部136の上面に対する処理が可能になるが、SiO部136は薄いSiコア132の位置に残る。ドライエッチングは、いずれの液体化学物質またはエッチャントも利用することなく材料をウェハから除去して、揮発性の副生成物のみが処理において生成されるようなエッチングプロセスである。ドライエッチングは、次の処理のいずれの処理によっても行なうことができる:1)材料を化学反応ガスまたはプラズマを用いて除去する化学反応を利用する処理;2)材料を通常、運動量伝達によって物理的に除去する処理;または3)物理的除去及び化学反応の両方を組み合わせた処理。例示的な実施形態では、絶縁層142が、例えばSU8のようなポリマーの場合、別のフォトレジスト層を堆積させることにより、またはコーティングすることにより、開口部を形成した後の工程でチャネル106を形成するという必要はなくなるが、これは、SU8がある種のフォトレジストであるという理由による。紫外(UV)光または電子ビームを、マスクを介して照射することができ、そして現像及び焼き締め後、チャネル106を絶縁層142内に形成することができる。
【0054】
ドライエッチング工程の後、フォトレジスト層(フォトレジスト層が前の時点で堆積している場合)を次に、フォトレジスト剥離装置によって全て除去する、または剥離する。薄いSiコア132を周囲のSiO部136から解放するために、ウェットエッチングのようなエッチングプロセスを使用する。ドライエッチングとは異なり、ウェットエッチングは、化学エッチャントを入れた液槽にウェハを浸すことによる材料の除去である。化学エッチャントは、例えば希フッ酸、緩衝酸化物エッチャント(Buffered Oxide Etch:BOE)のような緩衝フッ酸、(HF)、及びフッ酸蒸気を含むフッ化水素酸(HF)とすることができるが、SiOを除去する他のいずれかの適切なエッチャントを使用することができる。しかしながら、薄いSiコア132の周りのSiO部136はエッチングプロセスによって完全に除去しなくてもよいことに注目されたい。SiO部136は、薄いSiコア132の上で数ナノメートルに薄くすることができる、または薄いSiコア132の表面から、例えば上面から、薄いSiコア132の底面がSiO部136と接触したままの状態で部分的に除去することができる。この構造は、物理的強度を薄いSiコア132に付与するように作用することができる。エッチング工程の後、図2Hから、結果として得られる構造が薄いSiコア132(このコアがナノワイヤ104を構成する)を含み、薄いSiコア132はチャネル106に収容されるSiO部136によって被覆することができる、または被覆しなくてもよいことが分かる。
【0055】
図2Iでは、薄いSiコア132またはナノワイヤ104を解放した後に更に、キャップ層144を絶縁層142の上面に堆積させる。キャップ層144はいずれかの適切な材料により形成することができ、適切な材料としては、これらには制限されないが、シリコン、ガラス、シリカ、有機ポリマー、またはPDMSを挙げることができる。キャップ層144は、流体入力ポート及び出力ポートを含むことができ、かつ薄いSiコア132またはナノワイヤ104を収容するチャネル106を閉じ込めるように機能することができる。別の実施形態では、キャップ層144は、絶縁層142内の流体チャネル106を補完する開口部またはチャネルを有することにより、相対的に大きなチャネルを実現して、相対的に多くの量の流体がチャネルを流れることができるようにすることもできる。この工程によって、薄いSiコア132またはナノワイヤ104、及び流体チャネル106を含む集積センサデバイスが完成する。
【0056】
支持基板上にナノワイヤを含むセンサであって、半導体層が図2A〜2Iに示す支持基板の上に配置された状態で備えるセンサを形成する方法300のフローチャートを図3に示す。方法300は、SOI構造116を開始材料として提供する工程302から始まり、SOI構造116はSi素子層118を含み、Si素子層118は、支持基板122から埋め込み酸化膜(BOX)層120によって垂直方向に分離される。次に、工程304では、フォトレジスト層を素子層118の上面にコーティングする。次に、フォトレジスト層をパターニングして、2つの支持部の間に配置されるFIN部を標準のフォトリソグラフィ法により形成する。FINパターンフォトレジスト層をマスクとして使用して、Si素子層118の内、マスクによって被覆されない部分をエッチング除去することにより、BOX層120上の2つのSi支持部108の間に配置されるシリコンFIN126により構成される構造128が実現する。工程306では、シリコンFIN126を2つのSi支持部220の間に含む構造128に更なる自己制限酸化処理を施すことにより、2つの厚いSiコア134を、これらのコアの間に薄いSiコア132が配置された状態で含む酸化済み構造130が得られ、この場合、全てのコアがSiO部136,138によって取り囲まれる。次に、工程308では、酸化膜層124を酸化済み構造130の上に堆積させる。次に、工程310では、コンタクト開口部を形成して、金属層140を、2つの厚いSiコア134を取り囲むSiO部138の対応する上面を覆うSiO層124の上に更に堆積させ、この場合、金属層140の一部が2つの厚いSiコア134と接触する。更に別のパッシベーション層141を金属層140の上に堆積させる。次に、工程312では、絶縁層142をパッシベーション層141の上に、かつ薄いSiコア132を取り囲むSiO部136の上面を覆うSiO層124の上に堆積させる。絶縁層142を更に平坦化させる。しかしながら、絶縁層142がSU8のようなポリマーを含む場合、平坦化は必要ではない。工程314では、絶縁層142の一部を、ドライエッチングによりエッチングしてチャネル106を形成することにより、薄いSiコア132を取り囲むSiO部136の上面に対する処理が可能になるが、SiO部136は薄いSiコア132の位置に残る。次に、工程316では、薄いSiコア132を取り囲むSiO部136をウェットエッチングによりエッチングして、ナノワイヤ104またはセンサ素子を解放する。最後に、工程318では、チャネル106に、例えばガラスまたはPDMSのような適切なキャップ基板を使用して蓋をする。
【0057】
種々のキャップ構造がチャネルを閉じるために提案されている。図4Aは、本発明の第2の実施形態によるキャップ構造を用いるセンサ102の上面図を示し、そして図4Bは、図4Aのセンサ102をラインX−Xで切断したときの断面を示している。本発明の第2の実施形態による図4A及び図4Bに示すキャップ構造は、本発明の第1の実施形態による図1に示すキャップ構造とは異なる。図4Aに示すセンサ102では、ナノワイヤ104が流体チャネル106を跨いで配置され、そして2つの端部を有する。ナノワイヤ104の各端部は導電層140を介して貫通ウェハビア146に接続される。流体チャネル106は流入ポート112及び流出ポート114を有し、これらのポートのいずれかのポート、または両方のポートはLOCの他のブロックとの接続を行ない、そして他のブロックからの接続を行なうことができる。図4Bでは、キャップ層144は大きいサイズの貫通ウェハビア146を有する薄型ウェハとすることができる。貫通ウェハビア146は、標準のフォトリソグラフィ法及びエッチング法により形成することができる。その後、貫通ウェハビア146に導電層140を充填することにより、各ビア146から対応する厚い各Siコア134への電気接続を形成する。ナノワイヤ104の各端部は対応する厚いSiコア134によって支持される。図4A及び図4Bでは、キャップ層144の各貫通ウェハビア146は対応する厚い各Siコア134から、従ってナノワイヤ104から所定の距離だけ離間して位置する。この配置の一つの利点は、導電層140を堆積させる前に貫通ウェハビア146を形成している間に生じ得る位置合わせのずれを排除することができる点にある。これらのビア146がナノワイヤ104に極めて近く位置する場合、位置合わせのわずかなずれが生じただけでも、導電層140がナノワイヤ104の上に堆積してしまう。
【0058】
図5Aは、本発明の第3の実施形態による別のキャップ構造を用いるセンサ102の上面図を示し、そして図5Bは、図5Aのナノワイヤセンサ102をラインX−Xで切断したときの断面を示している。本発明の第3の実施形態による図5A及び図5Bに示すキャップ構造は、本発明の第1の実施形態による図1に示すキャップ構造、及び本発明の第2の実施形態による図4A及び図4Bに示すキャップ構造とは異なる。図5Aに示すセンサ102では、ナノワイヤ104が流体チャネル106を跨いで配置され、そして2つの対応する端部を有する。ナノワイヤ104の各端部は導電層140を介してボンディングパッド開口部148に接続される。流体チャネル106は流入ポート112及び流出ポート114を有し、これらのポートのいずれかのポート、または両方のポートはLOCの他のブロックとの接続を行ない、そして他のブロックからの接続を行なうことができる。図5Bでは、キャップ層144は、対応する厚いSiコア134を接続する導電層140との接続を行なうための対応するボンディングパッド開口部148により構成される。ナノワイヤ104の各端部は対応する厚いSiコア134によって支持される。図5A及び図5Bの第3の実施形態は、図4A及び図4Bの第2の実施形態とは、キャップ層144の一部がエッチング除去されてボンディングパッド開口部148を形成した後にボンディングパッド開口部に導電層140が充填されない点で異なっている。しかしながら、図4A及び図4Bと同様に、これらのボンディングパッド開口部148の各ボンディングパッド開口部は、対応する厚い各Siコア134から、従ってナノワイヤ104から所定の距離だけ離間して位置する。この配置によって、ボンディングパッド開口部148を形成している間に位置合わせのずれが生じる問題を防止する。図4A及び図4Bの実施形態、及び図5A及び図5Bの実施形態のいずれにおいても、信号は、図4Bの貫通ウェハビア146のそれぞれの導電層140に電位を印加する、または図5Bのそれぞれのボンディングパッド開口部148に電位を印加し、そしてこれらの導電層または開口部の間を流れる電流を測定することにより測定することができる。
【0059】
本発明によるナノワイヤセンサは、異なる構造的配置のナノワイヤを備えることができる。これらの配置の内の幾つかの配置を図6A〜図6Fに示す。図6Aは、2つの支持部108の間に配置される単一のナノワイヤ104により構成されるナノワイヤセンサ102を示し、そして図6Bは、2つの支持部108の間に単一のナノワイヤ104を2本配置することにより構成されるナノワイヤセンサ150を示している。必要に応じて、2つの支持部108の間に配置される単一のナノワイヤ104を複数本(少なくとも3本のナノワイヤ)配置することにより構成されるナノワイヤセンサ152を、図6Cに示すように実現することもできる。図6Dは、単一のナノワイヤセンサ102を2つ平行に配置することにより構成されるナノワイヤアレイ154を示している。単一の各ナノワイヤセンサ102は図6Aに示すナノワイヤセンサと同様に、2つの支持部108の間に配置される単一のナノワイヤ104を備える。単一のナノワイヤセンサ102を2つよりも多くの個数だけ平行に配置する、または要求条件に応じて流体流の方向に沿って配置することができる。更に、図6Bに示す「ダブル(ナノワイヤを2本有する)」ナノワイヤセンサ150、図6Cに示す「マルチ(ナノワイヤを複数本有する)」ナノワイヤセンサ152、またはこれらのナノワイヤセンサの両方の組み合わせは平行に配置することもできる。図6Eは、2つの支持部108の間に配置される幾つかのSiブロックまたはSiOブロック158を通り抜ける長い単一のナノワイヤ104により構成されるナノワイヤセンサ156を示している。しかしながら、いずれかの適切な本数のナノワイヤを、要求条件に応じて利用することもできる。更に、ナノワイヤはいずれかの適切な配置で、またはいずれかの所望パターンに配置することもできる。図6Fは、2つの支持部108の間に配置される幾つかのSiブロックまたはSiOブロック158を通り抜ける単一のナノワイヤ104を複数本備えるナノワイヤセンサアレイ160を示している。必要に応じて、例えばサイズを小さく抑える必要があり、かつ標的分子の濃度が低いということを考慮して、ジグザグ配置または他のいずれかの配置を用いることにより、そのような配置によってサンプルと接触する表面積を大きくすることができるので、ナノワイヤセンサによる検出機能を高めることができる。基本的に、異なる要求条件を満たすために、非常に多くのナノワイヤ構造配置が存在する。
【0060】
本発明によるナノワイヤセンサは、機能の異なるナノワイヤを備えることもでき、これら異なる機能のもののうちの幾つかを図7A〜図7Dに示す。図7Aに示す実施形態では、高精度のドーピングをナノワイヤに対して行なって、n型またはp型ナノワイヤ162を備えるセンサを形成することができる。n型またはp型ナノワイヤ162は、2つの支持部108の間に配置することができる。これらには制限されないが、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムを含むp型ドーパントを使用してp型ナノワイヤを形成することができ、そしてこれらには制限されないが、リン、砒素、アンチモンを含むn型ドーパントは、n型ナノワイヤを形成するためのドーパントとして使用することができる。ナノワイヤに対するドーピングは、図2Cの自己制限酸化工程の後に行なうことができる、または当該ドーピングは、ナノワイヤセンサの形成前のいずれの工程においても行なうことができる。好ましいイオン注入工程は自己制限酸化工程の前に行なわれる。
【0061】
図7Bに示す別の実施形態では、P/Nダイオード接合164を有するナノワイヤを備えるセンサを実現することができる。P/Nダイオード接合164を有するナノワイヤは、2つの支持部108の間に配置することができる。P/Nダイオード接合164を有するナノワイヤは、ナノワイヤの一方の部分にn型ドーパントを部分的にドーピングし、そしてナノワイヤの他方の部分にp型ドーパントを部分的にドーピングすることにより実現する。複数のP/Nダイオード接合を、同じナノワイヤの上に実現することもできる。p型ドーパント及びn型ドーパントからなる複合ドーパントをナノワイヤにドーピングしてP/Nダイオード接合164を有するナノワイヤを形成する工程は、図2Cの自己制限酸化工程の後に行なうこともできる、またはナノワイヤセンサを形成する前のいずれの工程でも行なうこともできる。
【0062】
図7Cに示す更に別の実施形態では、一つ以上のナノギャップ168を有するシリサイド化ナノワイヤ166を備えるセンサを実現することができる。シリサイド化ナノワイヤ166は2つの支持部108の間に配置することができる。この実施形態では、Siナノワイヤの内、ナノギャップ168を画定する部分または複数の部分は、誘電体層、通常はSiO層、または他のいずれかの適切な誘電体材料層によって被覆される。Siナノワイヤの内の残りの部分は導電層によって被覆され、当該導電層として、これらには制限されないが、タングステン及びニッケルのような金属、及び金属合金を挙げることができる。次に、Siナノワイヤを熱処理してSiのうちの金属層に接触する部分を金属シリサイドに変化させる。次に、未反応金属を硫酸のような酸性溶液中で除去する。誘電体材料層も除去される。
【0063】
図7Dに示す更に別の実施形態では、一つ以上のナノギャップ168を有するSiナノワイヤ170を実現することができる。Siナノワイヤ170は、2つの支持部108の間に配置することができる。Siナノワイヤ170の一部または複数の部分は、選択マスクを使用して選択的にエッチングすることにより、ナノギャップまたはナノギャップ群168を形成することができる。エッチングは適切なプロセス工程の内のいずれかの一つの工程において、例えば図2B−1のフィン部126が形成される時点の後に、図2Cの自己制限酸化工程の後に、または図2Iのナノワイヤが解放された後に行なうことができる。ドライエッチングまたはウェットエッチングのような他のエッチング方法、リソグラフィまたは集光イオンビームエッチングを使用することもできる。
【0064】
複数のナノワイヤをアレイ状に形成して標的生体分子または分子種の付着(attachment)確率を高めることもできる。この構成は、低濃度での検出にも非常に有用である。第2に、アレイの各ナノワイヤを、当該ワイヤの導電性について個々に測定することができる。これにより本質的に、ナノワイヤアレイの感度を高めることができるが、これは、一つのナノワイヤに電流の大部分が流れて別のナノワイヤにほとんど流れなくなり、これによって導電率の変化が小さくなってしまう、ということがないからである。第3に、各ナノワイヤをマイクロ流体チャネルと一体化して、標的生体分子を検出用ナノワイヤに送達することができる。第4に、アレイ内のナノワイヤ群を官能基化して、特異的な結合または原因を誘引することにより多重分析を行なうことができる。第5に、適切な流体設計を利用して、異なる一連のナノワイヤアレイを生体分子の種々の分析に並列に使用することができる。最後に、更に別のバックゲート電極をアレイ毎に対応して、または個々のナノワイヤにも対応して、或いはナノワイヤ群に対応して組み込んで、表面結合特性を選択的に修飾することができる。この構成は魅力的な手段となり得るものであり、この手段によって、分子を選択的に結合させることができるので、この手段は特異的な分子を同定する方法となり得る。従って、ナノワイヤセンサアレイは、或る範囲の新しい現象を分析するための有用な手段となり得る。
【0065】
図8は、多重ナノワイヤセンサアレイ192を模式的に示しており、複数のナノワイヤセンサアレイ182が、共通の検体入力194及び出力196を有する並列流体チャネル190に接続される。拡大図では、各ナノワイヤセンサアレイ182は2つのナノワイヤアレイを有することができ、一方のナノワイヤアレイが検体または生体分子を分析するためのナノワイヤアレイであり、「センサアレイ」184と呼ばれ、そして他方のナノワイヤアレイが基準緩衝溶液用のナノワイヤアレイであり、「基準アレイ」186と呼ばれる。各ナノワイヤセンサアレイ182を個別に流体チャネル190、入力ポート194、及び出力ポート196と一体化することにより、流体を流すことができる。アレイの各ナノワイヤセンサは、当該センサの導電率変化について個々に測定することができ、そしてナノワイヤ群の全てを回路と、オンチップまたはオフチップで電気的にインターフェース接続することができる。この導電率変化は、図8に示す制御電子回路ブロック188によって測定することができる。一旦、各アレイ182のセンサ群を適切な化学試薬で識別可能に修飾すると、これらのセンサは種々の生体分子群またはマーカ群を同時に検出することができる。各ナノワイヤセンサアレイ182は導電率変化に基づいて動作することができ、導電率変化は、生体分子がナノワイヤセンサ素子上に適切な表面修飾によって固定されるときの電荷または質量に起因する応力によって起こり得る。更に、2つのナノワイヤアレイを全ての適用モードに対応して設ける必要はない。適用形態によって変わるが、一つの、または2つよりも多くのナノワイヤアレイが適切である。また、個別の「基準アレイ」を設ける必要はない。アレイ自体が測定前の基準として機能することができる。この場合、両方のアレイが個別アレイとして動作することができる。
【0066】
図9A〜図9Nは、本発明の一の実施形態による種々の形成工程におけるナノワイヤセンサアレイの上面図及び断面図をそれぞれ示している。これらの形成工程は、図2A〜図2Iに示す形成工程と同様であるが、図9C,図9D,及び図9Eに示す3つの工程が追加されている点が異なっており、これらの工程では、ナノワイヤを形成する前にバックゲート電極を形成する。
【0067】
図9Aは、開始材料である支持基板122を示している。図9Bは、絶縁層または埋め込み酸化膜(BOX)層120が支持基板122上に堆積する様子を示している。バックゲート電極を形成するために、第2半導体素子層119を絶縁層またはBOX層120の上に図9Cに示すように堆積させる。第2半導体素子層119は第1半導体素子層118(図2Aに既に示している)と同じ材料により形成することができ、そして通常Siであるが、いずれかの適切な半導体材料により形成することができ、適切な半導体材料として、これらには制限されないが、ポリシリコン、砒化ガリウム(GaAs)、ゲルマニウムまたはシリコンゲルマニウム(SiGe)を挙げることができる。
【0068】
第2半導体素子層119を堆積させた後、フォトレジスト層(図示せず)をSi素子層119の上面に塗布する、またはコーティングする。次に、フォトレジスト層をパターニングして、少なくとも2つの電極を標準のフォトリソグラフィ法により形成する。次に、パターニング済みのフォトレジスト層をマスクとして使用して、第2半導体素子層119の内、マスクによって被覆されない部分を、反応性イオンエッチング(RIE)のような異方性エッチングプロセスによりエッチング除去する。結果として得られる少なくとも2つの電極121がBOX層120の上に、図9Dに示すように形成される。
【0069】
次に、第2絶縁層123をそれぞれの電極121の上に、かつBOX層120の上に図9Eに示すように堆積させる。次に、別の半導体層または第1半導体素子層118(図2Aに表示されているような)を第2絶縁層123の上に図9Fに示すように堆積させる。フォトレジスト層(図示せず)を第1半導体素子層118の上面に塗布する、またはコーティングする。次に、フォトレジスト層をパターニングして、2つの支持部の間に配置されるFIN部を標準のフォトリソグラフィ法により形成する。
【0070】
次に、パターニング済みのフォトレジスト層をマスクとして使用して、第1半導体素子層118の内、マスクによって被覆されない部分を、反応性イオンエッチング(RIE)のような異方性エッチングプロセスによりエッチング除去する。対応するSi支持部108の間に配置され、かつ対応するSi支持部108に各端部で接続されるシリコンFIN部126を備え、かつ結果として得られるシリコンFIN構造128が第2絶縁層123の上に図9Gに示すように形成される。
【0071】
次に、2つのSi支持部108の間に配置されるシリコンFIN部126を備える構造128に自己制限酸化処理を施す。この処理によって、2つのSi支持部108の間に配置されるシリコンFIN部126を備える構造128を、図9Hに示す第2絶縁層123の上の別のSiO部またはSiO膜(寸法上の理由によりこの図9Hには示されず)によって取り囲まれる2つの厚いSiコア134の間に配置されるSiO部またはSiO膜(寸法上の理由によりこの図9Hには示されず)によって取り囲まれる薄いSiコア132により構成される酸化済み構造130に変化させる。SiO部またはSiO膜によって取り囲まれるSiコア132は、シリコンFIN部126を酸化した結果として形成される。SiO部またはSiO膜によって取り囲まれる2つの厚いSiコア134は、2つのSi支持部108を酸化した結果として形成される。薄いSiコア132が最終的に本発明におけるナノワイヤを構成する。
【0072】
自己制限酸化処理の後、SiO層124が酸化済み構造130の上に図9Iに示すように堆積している。このSiO層124は、薄いSiコア132を取り囲むSiO部またはSiO膜、及び2つの厚いSiコア134を取り囲むSiO部またはSiO膜と同じとすることができる。しかしながら、SiO層124は、それぞれのSiO部またはSiO膜と比較して相対的に厚く、そして2つの厚いSiコア134を引き続く堆積の影響を受けないように保護するべく機能する。SiO層124及びそれぞれのSiO部またはSiO膜は、これらのSiOが同じ材料により構成される場合には融合させることができる。
【0073】
中間工程では、SiO層124を堆積させた後、フォトレジスト層(図示せず)をSiO層124上に堆積させる。コンタクト開口部またはコンタクト凹部を標準のフォトリソグラフィ法によりフォトレジスト層に形成し、2つの厚いSiコア134を取り囲むSiO部の上のSiO層124に対する処理を可能にする。SiO層124の一部、及び2つの厚いSiコア134を取り囲むSiO部またはSiO膜を更にエッチングして、2つの厚いSiコア134の一部を露出させる。次に、導電層140をコンタクト開口部の中に入り込むように堆積させ、導電層140の一部は図9Jに示すように、2つの厚いSiコア134と接触する。次に、フォトレジスト層をフォトレジスト剥離装置によって除去するか、または剥離する。
【0074】
導電層140をコンタクト開口部の中に入り込むように堆積させた後、パッシベーション層141を図9Kに示すように、導電層140の上に堆積させる。
次に、絶縁層142を図9Lに示すように、パッシベーション層141の上に、そして薄いSiコア132を取り囲むSiO部の上面を覆うSiO層124の上に堆積させる。堆積させた後、絶縁層142は更に、既に述べた複数の研磨プロセスの内の一つの研磨プロセスを使用して平坦化することができる。研磨プロセスによって、キャップ層を更に堆積させるための平滑な表面を提供する。しかしながら、絶縁層がSU8のようなポリマーの場合、平坦化は必要ではない。
【0075】
別の中間工程では、更に別のフォトレジスト層(図示せず)を絶縁層142の上に堆積させる。フォトレジスト層を標準のフォトリソグラフィ法によりパターニングすることによって、図9Mに示すように、チャネル106が絶縁層142内に形成される予定の領域の上に開口部を形成する。フォトレジスト層をマスクとして使用して、絶縁層142の一部を、ドライエッチングのようなエッチングプロセスによってエッチング除去してチャネル106を形成し、薄いSiコア132を取り囲むSiO部の上面に対する処理を可能にするが、SiO部は薄いSiコア132の位置に残る。
【0076】
ドライエッチング工程の後、フォトレジスト層を次に、剥離装置によって除去するか、または剥離する。薄いSiコア132を周りのSiO部から解放するために、エッチングプロセスを使用する。例示的な実施形態では、絶縁層142が、例えばSU8のようなポリマーの場合、SU8がある種のフォトレジストでもあるので、別のフォトレジスト層を堆積させて、またはコーティングして、チャネル106を後の時点で形成するための開口部を形成するという必要はない。
【0077】
薄いSiコア132またはナノワイヤを解放した後に更に、キャップ層144を図9Nに示すように、絶縁層142の上面に堆積させる。キャップ層144は流体入力ポート及び流体出力ポートを含むことができ、そして薄いSiコア132またはナノワイヤを収容するチャネル106を封じ込めるように機能することができる。
【0078】
要約すると、これらの形成工程は、図2A〜図2Iに示す形成工程と同様であるが、図9C,図9D,及び図9Eに示す3つの工程が追加されている点が異なっており、これらの工程では、ナノワイヤを形成する前にバックゲート電極を形成する。バックゲート構造を有するセンサアレイを形成する目的は、バックゲート電圧を使用して各ナノワイヤアレイの導電率を個々に変化させることができる点にある。この構造は、ナノワイヤの表面結合特性または触媒特性を外部電界によって修飾することができる魅力的な選択肢となり得る。
【0079】
図10は、流体チャネル形成の異なるプロトタイプを示している。プロトタイプ1の図(a)は、2つのチャネルに分割される入力流体チャネルを示している。これらの2つのチャネルの各チャネルは更に、更に別の2つのチャネルに細分割される。これらのチャネルの全てを続いて融合させる。プロトタイプ1の図(b)及び図(c)は、プロトタイプ1の図(a)の流体チャネルの一部を徐々に拡大した図を示している。プロトタイプ1の図(c)では、シリコンナノワイヤがチャネル内に収容される。しかしながら、複数のナノワイヤを、これらの検出用チャネルの各チャネルの異なる部分に、要求条件に応じて配置することもできる。プロトタイプ2の図(a)は、4つの個別の流体チャネルを示し、これらの流体チャネルは一つの共通の流体チャネルに融合する。プロトタイプ2の図(b)は、複数のナノワイヤを各流体チャネル内に配置することができる様子を示しているが、この構成に制限されることはない。
【0080】
図11は、キャップ層144で覆われる流体チャネル190の上面図を示している。キャップ層144はガラス層とすることができ、そして流体チャネル190はキャップ層144で、例えば約50℃の低温接合プロセスを使用して覆うことができる。図11から、漏れが発生することがなく、かつキャップ技術を用いることができ、そしてナノワイヤアレイに適用することができることが分かる。
【0081】
図12A及び図12Bは、ナノワイヤアレイ構造における異なる多重流体チャネル構成を示している。図12Aは2つの異なる流体チャネル構成を示し、一方の流体チャネル構成はセンサアレイ184に関連し、そして他方の流体チャネル構成は基準アレイ186に関連する。センサアレイ184に関連する構成の場合、単一の流体が流体流入口194を通って単一の流体チャネル190に流入し、そして4つの個別の流体チャネル190を有する流体流出口196を通って流出する。単一の流体チャネル190は2つの流体チャネル190に分割され、そしてこれらの2つの流体チャネル190の各流体チャネルは更に、2つの更に別の流体チャネル190に細分割されて、4つの個別の流体チャネル190が形成されるが、この構成に制限されることはない。同じ流体がこれらの流体チャネル190の全てを通過して流れ、そしてナノワイヤ104が4つの流体チャネル190の各流体チャネル内にそれぞれ収容されて、異なる分析目的または検出目的に利用される。それぞれの流体チャネル190内のナノワイヤ104がセンサアレイ184を構成する。基準アレイ186に関連する構成の場合、流体が流体流入口194を通って単一の流体チャネル190に流入し、そして更に別の流体チャネル190に分割されることがない。ナノワイヤ104がこの場合もこの単一の流体チャネル190に収容され、そして単一の流体チャネル190内のナノワイヤ104が基準アレイ186を構成する。結果はセンサアレイ184及び基準アレイ186によってそれぞれ検出することができ、そして対応する信号を制御電子回路ブロック188によって読み取ることができる。
【0082】
図12Bも、2つの異なる流体チャネル構成を示している。これらの構成の両方では、単一の流体が流体流入口194を通って単一の流体チャネル190に流入し、そして4つの個別の流体チャネル190を有する流体流出口196を通って流出する。単一の流体チャネル190は2つの流体チャネル190に分割され、そしてこれらの2つの流体チャネル190の各流体チャネルは更に、2つの別の更の流体チャネル190に細分割されて、4つの個別の流体チャネル190が形成されるが、この構成に制限されることはない。同じ流体がこれらの流体チャネル190の全てを通過して流れる。ナノワイヤ104は、異なる分析または検出を行なうために4つのチャネル190の各チャネル内にそれぞれ収容されて、センサアレイ184及び基準アレイ186をそれぞれ構成する。ナノワイヤアレイ構造における異なる多重流体チャネル構成を使用して、要求条件に応じて異なる分析を行なうことができる。
【0083】
本発明のナノワイヤセンサアレイは、センサ用途のような非常に多くの用途に、または薬物発見の用途に利用することができる。センサ用途の場合、ナノワイヤセンサアレイは、図13A及び13Bに示すように、センサアレイ184及び基準アレイ186の複合アレイを含むことができる。図13Aでは、一連のナノワイヤ104には複数の異なる表面修飾法(surface modification schemes)を適用することができ、かつこれらのナノワイヤ104は、センサアレイ184を構成する複数の流体チャネル190にそれぞれ収容することができる。別の一連のナノワイヤ104は基準アレイ186を構成する単一の流体チャネル190に収容することができ、かつ対照として機能することができる。センサアレイ184及び基準アレイ186は共に、対応する流入口194及び流出口196を有することにより流体を流すことができる。流入口194及び流出口196は、センサアレイ184及び基準アレイ186の両方に共通するように、または個別に設けることができる。結果はセンサアレイ184及び基準アレイ186によってそれぞれ検出することができ、そして対応する信号は制御電子回路ブロック188によって読み取ることができる。表面修飾は用途特定型の修飾とすることができ、かつユーザによって定義することができる。例えば、第1アレイを修飾して抗ウサギIgG抗体を、当該アレイで検出し/当該アレイに結合させ、そして第2アレイを修飾して抗ネズミIgG抗体を、当該アレイで検出し/当該アレイに結合させる場合、それぞれのアレイは、対応する抗ウサギIgG抗体及び抗ネズミIgG抗体のみを捕捉することになる。
【0084】
図13Bでは、一連のナノワイヤには複数の異なる表面修飾法を適用することができ、かつセンサアレイ184を構成する単一の流体チャネル190に収容することができる。別の一連のナノワイヤ104は基準アレイ186を構成する別の単一の流体チャネル190に収容することができ、かつ対照として機能することができる。一つの基準アレイを、異なる修飾法を用いる各センサアレイに対応するように設けることができる。図13A及び図13Bの両方では、それぞれのナノワイヤを複数のチャネルに収容することもでき、基準アレイ186内の各チャネルはセンサアレイ184内の各チャネルに対応する。
【0085】
薬物発見の用途では、図14A及び図14Bに示す2つの実施形態のいずれをも利用することができる。図14Aでは、ナノワイヤセンサアレイは、センサアレイ184及び基準アレイ186の複合アレイを含むことができる。センサアレイ184は、対応する流入口194及び流出口196を有する複数の流体チャネル190に設けることができ、そして基準アレイ186は、対応する流入口194及び流出口196を有する単一の流体チャネル190に設けることができる。異なる化合物198、または同じ化合物を異なる用量または濃度で、センサアレイ184の異なるそれぞれの流体チャネル190に注入することができる。注入される化合物198は標的の病変と反応することになる。結果はそれぞれ、下流側のセンサアレイ184及び基準アレイ186によって検出することができ、そして対応する信号は制御電子回路ブロック188によって読み取ることができる。流入口194及び流出口196は図14B示すように、センサアレイ184及び基準アレイ186の両方に個別に設けることができるが、流入口194及び流出口196は、要求条件に基づいて、センサアレイ184及び基準アレイ186の両方に共通して設けることもできる。
【0086】
図14Bでは、ナノワイヤセンサアレイは、センサアレイ184及び基準アレイ186の複合アレイを含むことができる。センサアレイ184は、対応する流入口194及び流出口196を有する複数の流体チャネル190に設けることができ、そして基準アレイ186は、対応する流入口194及び流出口196を有する単一の流体チャネル190に設けることができる。異なる化合物198は、センサアレイ184の上流側に位置する異なるチャネル190の表面に固定される。標的病変は、流体が流れると、これらの固定された化合物198と反応することになる。結果は、下流側のセンサアレイ184及び基準アレイ186によってそれぞれ検出されることになり、そして対応する信号は制御電子回路ブロック188によって読み取ることができる。流入口194及び流出口196は図14Bに示されるように、センサアレイ184及び基準アレイ186の両方に個別に設けることができるが、流入口194及び流出口196は、必要条件に基づいて、センサアレイ184及び基準アレイ186の両方に共通して設けることもできる。
【0087】
実験例
本発明の一実施形態による、支持基板の上にナノワイヤを含むセンサであって、半導体層が支持基板の上に配置された状態で備えるセンサ、を形成する方法を以下に次の実験例に基づいて示す。しかしながら、これらの実験例は本発明の範囲を制限するものとして捉えられるべきではない。
【0088】
実験例1:Siナノワイヤを形成する場合、200nm厚さのSi素子層、及び支持基板上の150nm厚さのBOXからなる直径が200mmのSOIウェハを利用した。トレンチをSi素子層中に、BOXに達するまでリソグラフィ及びエッチングにより形成して、幅が80nmのシリコンFINを得た。次に、ウェハを900℃の乾燥酸素雰囲気中で6時間に亘って酸化して図15に示すナノワイヤ104を形成した。単一のナノワイヤは、図6Aにおいて述べたナノワイヤ構造配置群の内の一つのナノワイヤ構造配置である。n型ドーパント、p型ドーパント、またはn型ドーパント及びp型ドーパントの複合ドーパントをドーピングすることにより、異なる官能基タイプのナノワイヤを図7A及び7Bにおいて述べたように実現することができる。
【0089】
実験例2:Siナノワイヤの高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像を図16A及び図16Bに示す。図16Aは、底辺200が約10ナノメートル、及び高さ202が約12.3ナノメートルの三角形断面を有するナノワイヤ172を示している。三角形になるのは、異なる酸化フロントが種々の結晶方位に沿って進行するからである。SiOの粘弾性特性、及びSi−SiO界面でのSi原子移動を使用することにより、円形変形を、ウェハに約1200℃で1時間に亘って窒素(N)アニールを施すことによって生じさせることもできる。直径が約7.7ナノメートルの円形断面を有するナノワイヤ174を図16Bに示す。従って、ナノワイヤの断面は三角形または円形とすることができ、いずれの形状になるかはプロセス条件によって変わる。
【0090】
各ナノワイヤセンサを個々に本発明の一の実施形態による支持部を介して指定することができる構成の複数のナノワイヤセンサを備えるナノワイヤセンサアレイも以下に、次の実験例に基づいて示す。しかしながら、これらの実験例も本発明の範囲を制限するものとして捉えられるべきではない。
【0091】
図17は、各ナノワイヤの長さが約200マイクロメートルである100本のナノワイヤを有するシリコンナノワイヤアレイの全体図を示している。
図18は、流体チャネルを形成する前のシリコンナノワイヤアレイの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示している。差し込み図はナノワイヤアレイの拡大部分を示している。
【0092】
Siナノワイヤ176のアレイは、図19A及び19Bに示すように、垂直に、または水平に(互いに対して平行かつ垂直に)配置する、或いは垂直及び水平を組み合わせて配置することができる。図19A及び図19Bは、Siナノワイヤ176のアレイを異なる視点から眺めた図を示している。
【0093】
図20は、ナノワイヤセンサアレイのナノワイヤの電気特性を示している。シリコンナノワイヤの電流(I)をアンペア(A)で測定し、電圧(V)をボルト(V)で測定し、そして導電率を測定してナノジーメンス(nanosiemens:nS)で表示する。導電率対電圧のプロットを符号212で示し、そして電流対電圧のプロットを符号214で示す。ナノワイヤの電流−電圧特性を測定するために、可変電位(−0.5V〜+0.5V)をナノワイヤの両端に印加し、そして対応する電流を測定する。この電流対電圧プロットをI−V曲線214と称する。導電率は、電圧に対する電流の比として計算される。電流を測定する場合、いずれかの標準型電流計を、電圧を電圧発生器によって印加しながら使用することができる。導電率対電圧プロット212は、センサの導電率が約100nSで非常に安定していることを示している。電流対電圧プロット214は、電流が電位とともに直線的に変化することを示している。
【0094】
図21A〜21Dは、形成済みの異なる寸法のシリコンナノワイヤアレイが流体チャネルに一体化される様子を示している。2つの流体チャネルは互いに平行であり、シリコンナノワイヤアレイは各流体チャネル内にそれぞれ収容される。シリコンナノワイヤアレイは約100μm〜約1000μmの範囲の寸法を有する。図21Aは、約100μmの寸法を有するシリコンナノワイヤアレイが流体チャネルに収容される様子を示している。図21Bは、約200μmの寸法を有するシリコンナノワイヤアレイが流体チャネルに収容される様子を示している。図21Cは、約500μmの寸法を有するシリコンナノワイヤアレイが流体チャネルに収容される様子を示している。図21Dは、約1000μmの寸法を有するシリコンナノワイヤアレイが流体チャネルに収容される様子を示している。ナノワイヤアレイは他のいずれかの適切な寸法とすることもできる。
【0095】
pH、すなわち水素イオン指数(potential hydrogen)は溶液中の水素イオン(H)の活動度の指標であるので、当該イオンの酸性度である。水性系では、水素イオンの活動度は、水の解離定数(25℃では、K=1.011x10−14)、及び溶液中の他のイオンとの相互作用によって決定される。この解離定数に起因して、中性溶液(水素イオンの活動度が水酸化物イオンの活動度に等しい)は約7のpHを有する。7未満のpH値を有する水溶液は酸性であると考えられ、7超のpH値を有する水溶液は塩基性であると考えられる。pH検出はシリコンナノワイヤを用いて行なうことができる。図22Aは、SiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤを示している。図22Aでは、n型シリコンナノワイヤは、n型ドーパントがドープされているナノワイヤである。図22Bは、SiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤを使用して測定される導電率変化対pHのグラフを示している。導電率変化はパーセント(%)で測定される。シラン化(silanation)プロセスによって、n型シリコンナノワイヤへの溶液中のHの付着性が増加する。これによって正のゲート電圧が大きくなって、n型シリコンナノワイヤへのHの堆積が起こるので、導電率が高くなる。シランによる表面修飾が行なわれた後のプロットを符号202で示し、そしてシランによる表面修飾が行なわれる前のプロットを符号204で示す。従って、これらの実験は、ナノワイヤセンサを、例えば捕捉分子をナノワイヤに固定することなく流体の分析に使用することができることを示している。
【0096】
図23は、ナノワイヤ長を100μmに固定し、かつpHを約1.95とした場合のシリコンナノワイヤの導電率変化対幅のグラフを示している。シリコンナノワイヤの幅はナノメートル(nm)で測定され、そして導電率変化はパーセント(%)で測定される。図23は、ナノワイヤの幅が狭くなると導電率変化が大きくなるので、感度が高くなることを示している。これは、ゲートに対する静電的制御性が高まることに起因する。従って、ナノワイヤ幅を狭くし、かつゲート酸化膜厚を薄くすることにより、感度を更に高めることができる。
【0097】
ナノワイヤ応答に対するバックゲート効果の分析も行なわれる。図24Aは、別のSiO層によって被覆されるSiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤを示し、そして図24Bは、別のSiO層によって被覆されるSiOに埋め込まれたn型シリコンナノワイヤを測定したときのn型シリコンナノワイヤの導電率対ゲート電圧(Vg)のグラフを示している。ゲート電圧をボルトで測定し、そして導電率を測定してナノジーメンス(nS)で表示する。図24Bでは、n型シリコンナノワイヤを約pH4の、または約pH10の溶液に浸すことができる、または溶液には全く浸さない。n型シリコンナノワイヤをいずれの溶液にも浸すことがない場合のプロットを符号206で示し、n型シリコンナノワイヤを約pH4の溶液に浸す場合のプロットを符号208で示し、そしてn型シリコンナノワイヤを約pH10の溶液に浸す場合のプロットを符号210で示す。溶液のpHが高くなると所定電圧での導電率が低くなる。この現象は、バイアスを印加することによるイオン溶液への影響によって現われるので、感度を高めるために利用することができる。
【0098】
本発明のナノワイヤセンサは生物学的用途にも適するが、これは、生体高分子がフィン部に固定されるときの電荷または質量に起因する応力によって生じる導電率変化に基づいてセンサが動作するからである。生体高分子はFIN部に直接、または捕捉分子を介して結合させることができる。FIN部への生体高分子の結合を容易にするために、少なくともFIN部の表面を前に述べたように適合させて、DNAのような生体高分子の結合が更に容易になるようにすることができる。DNA付着前後の例示的なナノワイヤセンサのそれぞれの電流−電圧(I−V)電気特性を図25に示す。DNA付着後のプロットを符号178で示し、そしてDNA付着前のプロットを符号180で示す。DNA付着後、同じ所定電圧での電流はDNA付着前よりも大きくなる。
【0099】
DNAプローブは図26Aに示すように固定される。固定される過程では、SiOがシリコンナノワイヤ上に形成され、続いてシラン化が行なわれ、そして捕捉分子が以下に詳細に説明されるように、NHS−ビオチン及びストレプトアビジンを使用する結合を介して固定される。捕捉分子は、TTA ACT TTA CTC CCT TCC(配列番号:1)という配列を有し、かつE.coli K12から入手可能なEc18cと表記される1本鎖の18bpオリゴヌクレオチドであった。ヌクレオチド配列GGA AGG GAG TAA AGT TAA TAC CTT TGC TCA TTG ACG (配列番号:2)を有し、かつEc36Tと表記されるE.coli K12由来のオリゴヌクレオチドが例示的な標的ssDNA配列として使用された。
【0100】
図26Aは、本発明のセンサを用いて行なった例示的な結合実験の設定を示している。まず、ナノワイヤの表面に形成される二酸化シリコンの反応性水酸基を適切なアミノシランと反応させて、フリーのアミノ末端基を有するシラン層を形成し、続いて所望の捕捉分子を固定した。次に、ビオチン−N−スクシニミジルエステルを、シラン層との従来のNHSの結合を介して反応させた。ビオチンとのストレプトアビジン(または、アビディン)の特異的な結合を利用して、ストレプトアビジンを添加することにより固定化剤を供給して、それぞれの捕捉分子を特異的に固定し、これによってバックグランドが小さくなり、かつセンサの感度が更に高くなった。ストレプトアビジンはこの目的に極めて適する(しかしながら、本発明は決して、このような固定化剤の使用に制限されない)が、これは、ストレプトアビジンが、ビオチン結合サイトがストレプトアビジン分子の反対側表面に配置された状態のホモ四量体であるからである(ストレプトアビジンが4個の同じサブユニットを有し、これらのサブユニットの各々が一つのビオチン結合サイトを有することを意味する)。従って、シラン層に一つの、または2つのビオチン結合サイトを介して非共有結合しながら、他の2つのビオチン結合サイトを、ビオチニル化された捕捉分子を結合させるために利用することができる。
【0101】
ここに記載される実験例では、配列番号1の配列を有するオリゴヌクレオチドが捕捉分子として使用された。しかしながら、その存在が研究対象となる所望のリガンドに対する親和性を有する他のいずれかの捕捉分子を本発明のセンサと組み合わせて使用することができることは明らかである。例えば、このような捕捉分子は、ビオチニル化され、かつDDTのような環境毒素等の小型有機分子と結合する抗体、またはヒト免疫不全(HIV)ウィルス若しくはC型肝炎ウィルスのようなウィルスに結合する抗体(または、更に正確には、ウィルスの表面構造に結合する抗体)とすることができる。従って、このような捕捉分子を使用して、本発明のセンサを環境目的または診断目的に使用することができる。
【0102】
更に、本発明のセンサは薬剤スクリーニングに使用することもできる。このような実施形態では、捕捉分子は、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)のような薬剤標的であるタンパク質とすることができる。この薬剤標的はビオチニル化することができるので、ナノワイヤ表面に固定することができる。次に、ナノワイヤ表面を、ファージミド(phagemids)を含む溶液に接触させ、ファージミドによって、ファージミド表面にVEGFとの結合親和性があると疑われる抗体フラグメントが沈着する。これらのファージミドは、例えば従来のいずれかの「ファージディスプレイ」法に従って調製することができ、「ファージディスプレイ」法については、Curr.Opin.Struct.Biol.3(1993),572−579に掲載されたHoessによる論文;Curr.Opin.Struct.Biol.2(1992),597−604に掲載されたWells及びLowmanによる論文;または「コロニースクリーニング」法(Anal.Biochem.196(1991),151−155に掲載されたSkerraらによる論文);または「リボソームディスプレイ」(例えば、Curr.Opin.Chem.Biol.3(1999),268−273に掲載されたRobertsによる論文)に記載されている。次に、VEGFに実際に結合するこれらのVEGF抗体の間の複合体形成は、ナノワイヤセンサの導電率の変化によって検出することができる。
【0103】
複合体形成(または、検出対象の捕捉分子及びリガンドの両方が核酸である場合のハイブリダイゼーション)がナノワイヤの電気特性の変化によって検出される様子が図26Bに示される。図26Bは、配列番号1の核酸分子を付着させたセンサを、配列番号2のDNA分子を含む溶液に接触させた場合のp型及びn型シリコンナノワイヤアレイのそれぞれに対応する導電率変化のボックスプロットを示している。導電率変化はパーセント(%)で測定される。図26Bのボックスプロットは、p型及びn型シリコンナノワイヤアレイのそれぞれに対応する1μM(マイクロモル)の1本鎖DNA(ssDNA)の緩衝溶液に関する導電率変化を示している。ビオチニル化されず、かつ負に帯電した捕捉DNAプローブは、緩衝溶液で測定される導電率に関して、p型シリコンナノワイヤの導電率を高くし、そしてn型シリコンナノワイヤの導電率を低くするように作用する。
【0104】
図27は、n型シリコンナノワイヤアレイに付着する配列番号1のプローブDNAの異なる濃度に対応する導電率変化のボックスプロットを示している。プローブDNAの濃度はナノモル(nano−Molar:nM)単位で測定され、そして導電率変化はパーセント(%)で測定される。ボックスプロットから、n型シリコンナノワイヤアレイの導電率は、プローブDNAの濃度が高くなるとともに小さくなることが分かる。
【0105】
種々の実施形態についてのこれまでの記述は例示及び説明のために行なわれた。本発明について網羅的に説明するのではなく、または本発明を、開示される正確な形態に限定するものではなく、そして明らかに多くの変形及び変更を開示される示唆に基づいて加え得る。本発明の範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板の上にナノワイヤを含むセンサであって、第1半導体層が前記支持基板上に配置されたセンサ、を形成する方法であって:
前記第1半導体層からなるフィン構造であって、少なくとも2つの支持部と前記支持部の間に配置されるフィン部とを含むフィン構造、を形成する工程と;
前記フィン構造の少なくともフィン部を酸化することにより、第1酸化膜層によって取り囲まれるナノワイヤを形成する工程と;
第1絶縁層を前記支持部の上に形成する工程と、を含み、
前記支持部及び前記第1絶縁層はマイクロ流体チャネルを構成する、
方法。
【請求項2】
前記第1絶縁層を形成する前に、第2酸化膜層を前記支持部のコンタクト表面の上に形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1絶縁層を形成する前に、第1導電層を前記第2酸化膜層のコンタクト表面の上に形成する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1絶縁層を平坦化する工程を更に含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1絶縁層を平坦化する工程は、化学的機械平坦化、化学的研磨、機械的研磨、及びイオンミリングのうちの一つを含むプロセスによって行なわれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1絶縁層の一部を除去して、マイクロ流体チャネルの一部を形成することにより、前記ナノワイヤを取り囲む前記第1酸化膜層のコンタクト表面に対する処理を可能にする工程を更に含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1絶縁層の一部の除去はドライエッチングにより行なわれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノワイヤを取り囲む前記第1酸化膜層を除去してナノワイヤを露出させる工程を更に含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノワイヤを取り囲む前記第1酸化膜層の除去はウェットエッチングにより行なわれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロ流体チャネルをキャップ層で閉じる工程を更に含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィン部を少なくとも一つのドーパントでドーピングする工程を更に含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つのドーパントはp型またはn型のいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記p型ドーパントは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムからなる群から選択される一つ以上の元素である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記n型ドーパントは、リン及び砒素からなる群から選択される一つ以上の元素である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノワイヤの一部を除去することにより該ナノワイヤにギャップを形成する工程を更に含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノワイヤの一部の除去は選択エッチングにより行なわれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノワイヤの一部を誘電体材料で被覆する工程を更に含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
シリサイド化プロセスを前記ナノワイヤに対して行なう工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シリサイド化プロセスを行なう工程は:
第2導電層を前記ナノワイヤの上に形成する工程と;
第1熱処理を行なうことにより前記ナノワイヤと前記第2導電層との間で化学反応を起こして該ナノワイヤをシリサイド化する工程と;
残留する第2導電層を除去する工程と、
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2導電層は金属または金属合金を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記支持基板と前記第1半導体層との間に第2絶縁層が配置される、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2絶縁層は、酸化シリコン、ポリマー及び誘電体材料からなる群から選択される材料を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記支持基板は、シリコン、サファイア、ポリシリコン、酸化シリコン及び窒化シリコンからなる群から選択される材料を含む、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1半導体層は、シリコン、砒化ガリウム及びシリコン−ゲルマニウムからなる群から選択される材料を含む、請求項1乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノワイヤはシリコンを含むか、または該シリコンから作製される、請求項1乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記フィン構造の少なくともフィン部を酸化する工程は、自己制限酸化プロセスにより行なわれる、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1酸化膜層は前記第2酸化膜層と同じである、請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1酸化膜層は酸化シリコンである、請求項1乃至27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第2酸化膜層は酸化シリコンである、請求項1乃至28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1導電層は金属または金属合金を含む、請求項1乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1絶縁層は、酸化シリコン、ポリマー及び誘電体材料からなる群から選択される材料を含む、請求項1乃至30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記キャップ層は、シリコン、ガラス、シリカ、有機ポリマー及びポリジメチルシロキサンからなる群から選択される材料により形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項33】
前記キャップ層に少なくとも2つの開口部を形成する工程を更に含む、請求項10又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記キャップ層の各開口部は、各支持部から離間した所定の距離に位置する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
各開口部を前記第1導電層で充填することにより、各開口部から前記支持部のコンタクト表面に達する電気接続を形成する工程を更に含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
フィン構造を酸化することにより、第1酸化膜層を前記支持部の周りに形成する工程を更に含む、請求項1乃至35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1半導体層を堆積させる前に前記支持基板の上に第2半導体層を堆積させる更に工程を含む、請求項1乃至36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2半導体層からなる電極を形成する工程を更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
フィン構造を形成する前に第3絶縁層を前記電極の上に堆積させる工程を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記電極はナノワイヤの下に位置する、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記第1絶縁層を形成する前にパッシベーション層を前記第1導電層の上に形成する工程を更に含む、請求項3乃至40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記パッシベーション層は、窒化シリコン、酸化シリコンまたは酸化アルミニウムからなる群から選択される材料を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2半導体層は、シリコン、砒化ガリウム及びシリコン−ゲルマニウムからなる群から選択される材料を含む、請求項37乃至42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第3絶縁層は、酸化シリコン及び誘電体材料からなる群から選択される材料を含む、請求項39乃至43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
支持基板と;
前記支持基板の上に配置される半導体フィン構造であって、少なくとも2つの半導体支持部と該支持部の間に配置されるナノワイヤとを含む、半導体フィン構造と;
前記支持部のコンタクト表面の上の第1絶縁層と、を備え、
前記支持部及び前記第1絶縁層はマイクロ流体チャネルを構成する、
ナノワイヤセンサ。
【請求項46】
第1酸化膜層を、前記支持部のコンタクト表面の上であって該支持部のコンタクト表面と前記絶縁層との間に更に備える、請求項45に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項47】
第1導電層を、前記第1酸化膜層のコンタクト表面の上であって該第1酸化膜層のコンタクト表面と前記絶縁層との間に更に備える、請求項46に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項48】
前記ナノワイヤは前記支持基板の上に位置する、請求項45乃至47のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項49】
前記ナノワイヤはn型ドーパントまたはp型ドーパントにより構成される、請求項45乃至48のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項50】
前記ナノワイヤはP/Nダイオード接合として形成される、請求項45乃至48のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項51】
前記ナノワイヤはギャップを含む、請求項45乃至50のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項52】
前記ナノワイヤはシリサイド化される、請求項45乃至51のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項53】
前記ナノワイヤの少なくとも表面を生体高分子を拘束するように適合させる、請求項45乃至52のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項54】
前記マイクロ流体チャネルを閉じるキャップ層を前記絶縁層の上に更に備える、請求項45乃至53のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項55】
前記キャップ層は少なくとも2つの開口部を含み、各開口部は各支持部から離間した所定の距離に位置する、請求項54に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項56】
前記支持基板と前記半導体フィン構造との間に配置される第2絶縁層を更に備える、請求項45乃至55のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項57】
パッシベーション層を、前記第1導電層の上であって、該第1導電層と前記第1絶縁層との間に更に備える、請求項47乃至56のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項58】
ナノワイヤの下であって、前記支持基板と該ナノワイヤとの間に位置する電極を更に備える、請求項45乃至57のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項59】
前記電極と前記ナノワイヤとの間に配置される第3絶縁層を更に備える、請求項58に記載のナノワイヤセンサ。
【請求項60】
請求項45乃至59のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサを複数備え、
各ナノワイヤセンサは支持部を介して個々に指定することができる、
ナノワイヤセンサアレイ。
【請求項61】
複数のマイクロ流体チャネルを更に備える、請求項60に記載のナノワイヤセンサアレイ。
【請求項62】
各ナノワイヤセンサを個々に指定する制御ユニットを更に備える、請求項60又は61に記載のナノワイヤセンサアレイ。
【請求項63】
一つのナノワイヤセンサが基準として使用され、そして別のナノワイヤセンサが測定のために使用される、請求項60乃至62のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサアレイ。
【請求項64】
請求項60乃至63のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサアレイを使用する検出方法であって、前記方法では、一つのナノワイヤセンサを基準として使用し、そして別のナノワイヤセンサを測定のために使用する、方法。
【請求項65】
検体を検出する方法であって、前記方法は:
請求項45乃至63のいずれか一項に記載のナノワイヤセンサの第1電気信号を測定する工程と;
前記ナノワイヤセンサを注目検体を含むと疑われるサンプルに接触させて前記検体を前記ナノワイヤに固定する工程と;
前記ナノワイヤの第2電気信号を測定し、測定した第1電気信号を第2電気信号と比較することにより、検体の有無を検出する工程と、
を含む、方法。
【請求項66】
前記ナノワイヤの表面に、前記検体に結合する捕捉分子を設ける工程と;
次いで注目検体を含むと疑われるサンプルを前記捕捉分子に接触させて、前記検体と前記捕捉分子との間での複合体形成を可能にする工程と、を更に含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記第1電気信号と前記第2電気信号との差が閾値を超える場合、検体の存在が検出される、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
前記検体は生体高分子、生命体、または小型有機分子である、請求項65乃至67のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B−1】
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【図2B−2】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図9J】
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【図9K】
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【図9L】
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【図9M】
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【図9N】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21D】
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【図22A】
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【図22B】
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【図24B】
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【図26B】
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【図27】
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【図3】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図23】
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【図24A】
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【図25】
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【図26A】
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【公表番号】特表2010−500559(P2010−500559A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523747(P2009−523747)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/SG2006/000227
【国際公開番号】WO2008/018834
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】