説明

ナノ結晶性シリコン含有絶縁膜を有する発光素子、当該発光素子の製造方法および発光方法

【課題】低いターン‐オン電圧にて動作可能な発光素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光素子100の製造方法では、ドープされた半導体または金属の底部電極102を供給し、高密度プラズマ化学気相成長法を用いて、シリコン絶縁膜が30nm以上、200nm以下の厚さにて、上記半導体または金属の底部電極102上に堆積される。また、上記シリコン絶縁膜はアニール処理され、その結果、シリコンナノ結晶が上記シリコン絶縁膜内に形成され、ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104が形成される。その後、透明な金属電極108がナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104上に形成される。上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有する膜に対して、0.03W/mを超える表面放射出力に関して規定された20ボルト未満のターン‐オン電圧を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して集積回路(IC)の製造に関するものであり、特に、微晶質性シリコン(Si)含有酸化シリコン膜を用いて得られる発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ結晶性のシリコンは、特有の構造的、電気的および光学特性を有しており、その利用が光電子工学および集積メモリ装置の分野において注目されている。シリコンはその処理技術が発達しているため、光電子装置の製造において材料として選択される。しかしながら、発光素子に関しては間接バンドギャップに起因して十分な材料とはいえない。長年に亘って、シリコンを基礎とした発光光電子工学を実現するため、シリコンの光学機能を調整する点に焦点を絞って研究開発がなされてきた。結晶性のシリコンについて室温での光放射効果を達成することは、シリコンを基礎とした光電子工学の大きな発展に貢献する重要な一歩といえる。
【0003】
光電子装置の安定で信頼性のある製造には、光ルミネセンス(PL)および電子ルミネセンス(EL)の高い量子効率が必要となる。集積光光電子装置向上させる手法として、シリコンを含有したナノ結晶を有するSiO(X≦2)薄膜を製造することが挙げられる。シリコンナノ結晶において電子‐空孔対の再結合が確認されるため、上記両ルミネセンスは、ナノ結晶のサイズに強く依存する。また、シリコンを含有するナノ結晶を有するSiO薄膜の電気的および光学的特性は、シリコンナノ結晶の粒子サイズ、濃度および粒度分布に依存する。容量結合プラズマ源を用いたスパッタリングおよびプラズマ化学気相成長法(PECVD)などの様々な薄膜堆積技術は、安定で信頼性のあるナノ結晶性のシリコン薄膜を製造するにあたり研究されている。
【0004】
しかしながら、従来のPECVDおよびスパッタリング技術には、高いイオン衝撃エネルギーに起因して、プラズマの密度が低く、プラズマに伝達する出力が不十分であり、イオン/中性比率が低く、容量を制御し難く、界面への損傷を及ぼすという制限がある。そこで、イオン種に衝突する高衝撃エネルギーに対する酸化膜によって信頼性の高い結果を生じさせることができる。上記酸化膜は、プラズマにより発生した従来の容量結合プラズマ(CCP)から形成されたものである。プラズマが誘導された容量または界面の損傷はどのような程度のものであっても、これらを制御または最小化することは重要である。
【0005】
しかしながら、プラズマを発生するCCPの高周波数(RF)を用いたイオンエネルギーを制御することはできない。このため、適応電力を増加させることによって、反応速度を増大させる試みは、いずれも堆積膜の衝撃を増加させる結果となる。これにより、高い欠陥濃度の低品質の膜が生成されることとなる。さらに、これらの種類の供給源(1×10〜10cm−3程度)に関するプラズマ密度が低いことは、プラズマ中および膜表面上において、反応の発生を制限すること、加工速度の増大に関して活性ラジカルを十分に生成しないこと、非効率な酸化、および、低熱量にて不純物が減少する事態を招く。このような事態は、低温にて電子デバイスを製造するにあたり、実用性を低下させることとなる。
【0006】
スパッタリング、PECVDなどの従来のプラズマに基づく技術よりもより処理範囲を広くし、プラズマ特性を向上させる堆積処理では、装置の発達に基づくPL/ELに関して、粒径を制御して粒子を発生させることが必要である。このような制御によれば、プラズマ密度を向上させ、プラズマの衝撃を最小化させ得る処理によって、プラズマ誘導による微細構造の損傷を生じさせることなく、高品質な膜を確実に成長させることができる。上記処理は、膜の界面および容量に係る各品質を制御し得るものであり、高品質および高信頼性を有する電子デバイスを製造することが可能となる。また、効率的に活性プラズマ種、ラジカルおよびイオンを発生させることのできるプラズマ処理によって、処理および品質管理が制御され、優れた薄膜の開発が可能となる。
【0007】
一方、高品質のSiO薄膜の製造に関して、結晶性のシリコン粒子が分散した高品質の絶縁膜を得るためには成長膜の酸化も非常に重要である。高濃度の活性酸素ラジカルを発生させる処理によって、酸素マトリックス中でシリコンナノ結晶を囲む効率的な不動態化を確実に行うことができる。さらに、プラズマが誘導されることに起因する損傷を最小限に止めるプラズマ処理によって、高品質な装置を製造するために重要で高品質な表面を形成することができる。
【0008】
また、低熱量にて効率的に酸化および水素化処理を行うことは、高品質な光電子装置の処理に関して重要であり、意義がある。高温の熱処理は他のデバイス層に干渉し得る。さらに、熱活性種の低い反応性のため、効率および熱収支に関しても好ましくない。さらに、プラズマ処理は、新規な膜構造、酸化、水素化、粒子の生成、粒径の制御、並びに、プラズマ密度およびイオンエネルギーの独立した制御の成長/堆積に関するより完全な解決手法および可能性を提供するものであり、このようなプラズマ処理および広範囲における処理が、高品質な光電気装置の発達にとって切望されている。
【0009】
また、薄膜の物性および目的とする用途により決定される所望の膜特性に影響する様々なプラズマのパラメータとして、薄膜の特性とプラズマ処理を関連付けることは重要である。目的とする用途により決定される重要なプラズマおよび薄膜の特性は、堆積率、温度、熱収支、密度、微細構造、界面の品質、不純物、プラズマ誘導による損傷、活性種(ラジカル/イオン)を発生したプラズマの状態、プラズマ電位、処理およびシステムのサイズ、並びに、電気的な品質および信頼性である。これらのパラメータを相関付けることは、目的とする用途にとって膜特性に影響を及ぼす処理関数としての膜特性を評価するために重要である。
【0010】
プラズマエネルギー、組成(イオンに対するラジカル量)、プラズマ電位、電子温度および温度条件が、上記処理関数によって依存して個々に相互関連する際、低密度プラズマまたは他の高品質プラズマシステムを発達させる処理を単に拡大適用するだけでは、薄膜に関する知見を得、または、発達させることはできないと考えられる。
【0011】
透明なガラス、石英またはプラスチック基板上に比較的大きなスケールのデバイスが形成される液晶ディスプレイ(LCD)の製造は低温でなされることが通常好ましい。これらの透明基板は、650℃を超える温度に晒されると損傷を受け得る。この温度問題に対応するため、低温のシリコン酸化処理が発展しつつある。上記処理では、誘導結合プラズマ(ICP)のような高密度のプラズマ源が用いられ、1200℃の熱酸化法での品質と同程度の高い品質を有するシリコン酸化物を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7141936号明細書(2006年11月28日公開)
【特許文献2】米国特許第5216303号明細書(1993年6月1日公開)
【特許文献3】米国特許出願公報第2006/0097654号明細書(2006年5月11日公開)
【特許文献4】米国特許出願公報第2002/0043943号明細書(2002年4月18日公開)
【特許文献5】米国特許出願公報第2006/0211267号明細書(2006年9月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これまで活性層として、ナノ結晶性シリコン(nc)含有シリコン酸化物(SiO)膜が用いられ、電気的に往復運動する発光素子は比較的大きなターン‐オン電圧を必要とするものであった。上記ターン‐オン電圧は通常80Vを超え、発光素子の実用的な適用が妨げられている。シリコンナノ結晶含有SiO膜に伴う高いバンドギャップを通じて電流注入が可能な方法によって発光素子が製造可能であれば、発光素子は低いターン‐オン電圧にて動作可能となるため有益である。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低いターン‐オン電圧にて動作可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発光素子の製造方法は、上記課題を解決するために、ナノ結晶性シリコンを含有する絶縁膜が用いられた発光素子の製造方法において、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極を供給する工程と、高密度プラズマ化学気相成長法を用いて、上記底部電極上に、30nm以上、200nm以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むシリコン絶縁膜を堆積する工程と、シリコン絶縁膜をアニール処理する工程と、アニール処理に応じて、シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶を形成する工程と、シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶が形成されたナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜上に透明な金属電極または半導体電極を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0016】
上記の発光素子の製造方法は、シリコン絶縁膜の厚さおよびシリコン濃度を最適化することによって実施され、高密度プラズマ化学気相成長法を用いて堆積がなされる際、表面効果および電荷捕獲効果が最小化されるため、ターン‐オン電圧を大きく減少した発光素子を製造することができる。
【0017】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程は、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCからなる群から選ばれた膜を堆積する工程を含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の発光素子の製造方法では、シリコン絶縁膜を堆積する工程は、シランを20SCCM以上、30SCCM以下の範囲内にて導入する工程と、NOを25SCCM以上、35SCCM以下の範囲内にて導入する工程と、13.56MHz以上、300MHz以下の範囲内の波長、および、1W/cm以上、20W/cm以下の電力密度の範囲内にて、上部電極に電力を供給する工程と、50キロヘルツ以上、13.56MHz以下の範囲内の波長、および、1W/cm以上、5W/cm以下の電力密度の範囲内にて、下部電極に電力を供給する工程とを含むことが好ましい。
【0019】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記シリコン絶縁膜をアニール処理する工程では、10分以上、120分以下の範囲内の継続時間、および、上記底部電極が半導体の場合、550℃以上、600℃以下の範囲内の温度にて、または、上記底部電極が金属の場合、200℃以上、350℃以下の範囲内の温度にて、ナノ結晶性シリコン含有SiO膜をアニール処理することが好ましい。
【0020】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、少なくとも1Mv/cmの電界に関して、1×10Ω/cm未満の導電率を有することが好ましい。
【0021】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、2.5%以上、20%以下の範囲内のシリコン体積充填率を有することが好ましい。
【0022】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有しており、0.03W/mを超える表面放射出力にて規定された20ボルト未満のターン‐オン電圧を有することが好ましい。
【0023】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、半値全幅が150nmのスペクトル幅であり、800nm付近を中心とした放射波長を有することが好ましい。
【0024】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、200nmの厚さであり、0.6Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有することが好ましい。
【0025】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、50nmの厚さであり、18%のシリコン体積充填率の場合、0.7Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有し、または、10%以下のシリコン体積充填率の場合、1.2Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有することが好ましい。
【0026】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、シリコン体積充填率が18%であり、1.93の光学指数(光学定数n(屈折率))を有することが好ましい。
【0027】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、上記SiO膜内のシリコンナノ結晶は、4nmの直径、1.0×1017/cm以上、5.4×1018/cm以下の密度、および、5.7nm以上、10nm以下の範囲内におけるシリコンナノ結晶間の距離を有することが好ましい。
【0028】
また、本発明の発光素子の製造方法では、上記シリコンナノ結晶は、シリコン体積充填率に依存する密度およびナノ結晶間の距離を有することが好ましい。
【0029】
本発明の発光素子は、上記課題を解決するために、ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜が用いられた発光素子において、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、上記底部電極上に形成された、30nm以上、200nm以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜と、上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜上に形成された透明な金属電極または半導体電極とを備えることを特徴としている。
【0030】
上記の発明によれば、シリコン絶縁膜の厚さおよびシリコン濃度を最適化されており、ターン‐オン電圧を大きく減少した発光素子を提供することができる。
【0031】
また、本発明の発光素子では、上記シリコン絶縁膜は、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCからなる群から選ばれた材料から構成されていることが好ましい。
【0032】
また、本発明の発光素子では、上記シリコン絶縁膜は、Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、2.5%以上、20%以下の範囲内のシリコン体積充填率を有することが好ましい。
【0033】
また、本発明の発光素子では、上記シリコン絶縁膜は、上記Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、少なくとも1Mv/cmの電界に関して、1×10Ω/cm未満の導電率を有することが好ましい。
【0034】
また、本発明の発光素子では、上記シリコン絶縁膜は、上記Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有する膜に関して、0.03W/mを超える表面放射出力に対して20ボルト未満のターン‐オン電圧を有することが好ましい。
【0035】
また、本発明の発光素子では、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、半値全幅が150nmのスペクトル幅であり、800nm付近を中心とした放射波長を有することが好ましい。
【0036】
また、本発明の発光素子では、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、50nmの厚さであり、18%のシリコン体積充填率の場合、0.7メガボルト毎センチメートルの空間電界および電荷捕獲電界を有し、10%以下のシリコン体積充填率の場合、1.2メガボルト毎センチメートルの空間電界および電荷捕獲電界を有することが好ましい。
【0037】
また、本発明の発光素子では、上記シリコン絶縁膜は、上記Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、シリコン体積充填率が18%であり、1.93の光学指数(光学定数n(屈折率))を有することが好ましい。
【0038】
また、本発明の発光素子では、上記SiO膜内のシリコンナノ結晶は、4nmの直径、1.0×1017/cm以上、5.4×1018/cm以下の密度、および、5.7nm以上、10nm以下の範囲内におけるシリコンナノ結晶間の距離を有することが好ましい。
【0039】
本発明の発光方法は、発光素子を用いた発光方法において、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、上記底部電極上に形成された、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有しており、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCからなる群から選ばれたナノ結晶性シリコン含有シリコン膜と、上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン膜上に形成された透明な金属電極または半導体電極とを含む発光素子を供給し、上記底部電極、並びに、金属電極または半導体電極に対して20ボルト未満の電位を供給し、0.03W/mを超える表面放射出力を発生させることを特徴としている。
【0040】
上記発明によれば、シリコン絶縁膜の厚さおよびシリコン濃度が最適化された発光素子を用いるため、低いターン‐オン電圧での発光が可能である。
【発明の効果】
【0041】
本発明の発光素子の製造方法は、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極を供給する工程と、高密度プラズマ化学気相成長法を用いて、上記底部電極上に、30nm以上、200nm以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むシリコン絶縁膜を堆積する工程と、シリコン絶縁膜をアニール処理する工程と、アニール処理に応じて、シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶を形成する工程と、シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶が形成されたナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜上に透明な金属電極または半導体電極を形成する工程とを含む方法である。
【0042】
本発明によれば、0.03ワット毎平方メートル(W/m)の表面放射出力に関して規定された20V未満のターン‐オン電圧を有する発光素子を提供することができるという効果を奏する。
【0043】
また、本発明の発光素子は、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、上記底部電極上に形成された、30nm以上、200nm以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜と、上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜上に形成された透明な金属電極または半導体電極とを備えるものである。
【0044】
上記の発明によれば、シリコン絶縁膜の厚さおよびシリコン濃度を最適化されており、ターン‐オン電圧を大きく減少した発光素子を提供することができるという効果を奏する。
【0045】
本発明の発光方法は、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、上記底部電極上に形成された、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有しており、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCからなる群から選ばれたナノ結晶性シリコン含有シリコン膜と、上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン膜上に形成された透明な金属電極または半導体電極とを含む発光素子を供給し、上記底部電極、並びに、金属電極または半導体電極に対して20ボルト未満の電位を供給し、0.03W/mを超える表面放射出力を発生させることを特徴としている。
【0046】
上記発明によれば、シリコン絶縁膜の厚さおよびシリコン濃度が最適化された発光素子を用いるため、低いターン‐オン電圧での発光ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】シリコン(Si)ナノ結晶シリコン絶縁膜を有する発光素子を示す部分断面図である。
【図2A】活性層としてナノ結晶性シリコン含有SiOを用いた発光素子を示す部分断面図である。
【図2B】SIM発光素子を用いた発光方法を示すフローチャートである。
【図3】図2Aの発光素子の光放射スペクトルを測定するために用いられるプローブとして使用されるマルチモードファイバ(a multiple-mode fiber)を備えるモノクロメーターの描写結果を示すグラフである。
【図4】電子ルミネセンス光の捕集装置を示す図である。
【図5】基板ウェハの種類およびアニール処理の後処理に関する光放射特性の依存性を示すグラフである。
【図6】Fowler-Nordheimモデルを用いた算出データとの比較データを示すグラフである。
【図7】表1に記載されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜サンプルのターン‐オン電圧を示すグラフである。
【図8】ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜を用いた発光素子の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】誘導結合プラズマ源を有する高密度プラズマ(HDP)システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明はSiO活性層の厚さおよびシリコン濃度を最適化することによって実施され、HDPECVD法(高密度プラズマ化学気相成長法)を用いて堆積がなされる際、表面効果および電荷捕獲効果が最小化されるため、発光素子のターン‐オン電圧を大きく減少させることができる。このような発光素子(light emitting devise:LED)では、20V以下のターン‐オン電圧が測定される。この種のLEDの電界ルミネセンス(EL)出力は、電流注入の度合いに強く関連する。従来、高い電流注入は、シリコン活性層の厚さの減少によって生じると考えられていた。その結果、高い電界が生成されていた。しかしながら、SiO活性層の厚さが減少することによって、単純に表面および電荷捕獲効果に固有の逆反応が生じることが実験的に示されている。これら逆反応の場は、LEDに適用される‘真の’(true)場を減少させる。このように、電流注入の有効限界が妨げられる。
【0049】
結果として、作製された従来のSiO発光素子は、200nmを超える厚さを有している。本発明は、薄膜のSiO活性層を有するLEDに関して効率的な電流注入を達成するHDPECVDおよび堆積処理後の処理方法を最適化するためのものである。HDPECVDおよび堆積後のアニール処理を最適化することによって、200nm以下の厚さおよび80V程度から、20V以下に減少されたターン‐オン電圧を有するナノ結晶性シリコン含有SiO膜を製造することが可能である。
【0050】
これに応じて、本発明は、ナノ結晶性シリコン含有SiO膜が用いられた発光素子の製造方法についても関する。当該製造方法は、ドープされた半導体または金属の底部電極を供給し(準備し)、高密度プラズマ化学気相成長法(HDPECVD)を用いて、シリコン絶縁膜を、30ナノメートル(nm)以上、300nm以下の範囲の厚さにて半導体電極上に(覆うように)堆積する。上記シリコン絶縁膜は、さらにO、NまたはC元素を含んでいてもよい。例えば、シリコン絶縁膜は、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCであってもよい。なお、以下、Xが0を超えて2未満のSiOから構成されたシリコン絶縁膜をナノ結晶性シリコン含有SiO膜と称する。シリコン絶縁膜を堆積した後、シリコン膜をアニール処理する。その結果、シリコンナノ結晶が形成される。さらに、透明な金属電極をナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜上に形成する。なお、上記透明な金属電極に代えて、半導体電極を形成してもよい。
【0051】
アニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、1メガボルト毎センチメートル(Mv/cm)以下の電界に相当する1×10Ω/cmの導電率を有し、シリコンの充填率が2.5%以上、20%以下である。さらに、60nm未満のアニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜を有するLEDは、0.03ワット毎平方メートル(W/m)の表面放射出力に関して規定された20V未満のターン‐オン電圧を有している。上記アニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、約150nm(半値全幅)のスペクトル幅を有し、中心が800nm付近の放射波長を有する。また、上記アニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、約200nmの膜厚に関して、約0.6メガボルト毎センチメートル(Mv/cm)の空間電界および電荷捕獲電界を有している。
【0052】
本発明に係る製造方法、ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜を用いた発光素子、および、発光素子を用いた発光方法については、以下に詳述する。
【0053】
図1は、シリコン(Si)ナノ結晶シリコン絶縁膜を有する発光素子を示す部分断面図である。発光素子100は、nまたはp型ドーパントがドープされた底部電極102を備えている。また、底部電極102は、半導体または金属にて構成されていてもよい。ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、底部電極102上に配置されている。ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104の厚さは、20ナノメートル(nm)以上、300nm以下である。
【0054】
ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCであってもよい。ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104の最適な範囲の厚さは予想外な値である。すなわち、従来、特に高い光学放射出力は、少なくとも200nmの膜厚に起因すると考えられていた。予想外な膜厚範囲は、ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104のシリコンが高濃度であることに依存するものである。
【0055】
上部電極である透明な金属電極108は、ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104上に配置されている。透明な金属電極108は、例えば、伝導性金属である金または白金などにて構成可能である。また、金属電極108に代えて、インジウムスズ酸化物(ITO)などの半導体電極が配置されていてもよい。ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104では、例えば、シリコンの体積充填率を、2.5%以上、20%以下の範囲内とすることができ、1メガボルト毎センチメートル(Mv/cm)未満の電界に対して、導電率を1×10Ω/cmとすることができる。
【0056】
発光素子100に動力源が供給された際(図2を参照)、60nm未満であり、Xが0を超えて2未満のSiOから構成されたナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、0.03ワット毎平方メートル(W/m)を超える表面放射出力に対して20ボルト未満のターン‐オン電圧を有する。また、上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、約150nmのスペクトル幅(半値全幅)を有し、中心が約800nmである放射波長を有する。以下に示すように、約50nmの厚さ、および、約18%のシリコン体積充填率を有する上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、約0.7Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有し、シリコンの体積充填率が10%以下の場合、約0.6メガボルト毎センチメートル(Mv/cm)の空間電界および電荷捕獲電界を有している。
【0057】
Xが0を超えて2未満のSiOから構成されたナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、約18%のシリコン体積充填率の場合、光学指数が約1.93である。SiO膜中のナノ結晶性のシリコンは、概して約4nm直径、約1.0×1017/cmから5.4×1018/cmの密度および約5.7nm以上、10nm以下の範囲内であるシリコンナノ結晶間の距離を有している。
【0058】
〔機能的説明〕
高密度プラズマ化学堆積法(HDPCVD)は、高密度なシリコンナノ結晶を有するシリコン絶縁膜を生成させるために、従来のCVD法またはプラズマ化学気相成長法(PECVD)よりも発展してきた。生成されたシリコン絶縁膜を有する発光素子(LED)は、低いターン‐オン電圧にて作動させることが可能である。上記シリコン絶縁膜は電極キャリア注入層間に挟まれている。上記高密度のシリコンナノ結晶によれば、所定のガス配合(gas combination)、ガス比率、RF出力および処理温度を変更することが可能となる。高いシリコン含有率(充填率が2%以上、20%以下)は、光学指数として使用され、測定されるものである。
【0059】
シリコンナノ粒子の濃度を増加させると、シリコンナノ結晶間の距離を減少させることによってFowler-Nordheim トンネル現象(以下、適宜「FNトンネル現象」と略す)を通じてキャリア注入を効率的に行うことができ、最終的には低いターン‐オン電圧がもたらされる。さらにシリコンナノ結晶の濃度が高まると(充填率が20%を超えると)、SiO発光素子はより高い伝導率を示す。しかし、発光量が低下する。上記SiO処理および方法論は、SiNおよびSiC膜にも適用することができる。
【0060】
比較的高い濃度(18%の体積充填率)のSiO発光素子に関して、平均4.0nmの直径を有するシリコンナノ粒子の全ての球面を考慮して、シリコンナノ粒子の平均数は5.4×1018/cmである。5.7nmであるシリコンナノ結晶の球面間の距離を考慮して、特にサイズ変化を考慮すると、シリコンナノ粒子の球面間に充填されているシリコンナノ粒子は非常に密接であることが観測される。シリコン濃度がより高くなると、発光に関して、励起子(結合)の形成を妨げる上記粒子が特に電気的に短絡し易くなるため、この高い密度によりシリコン濃度がより高い含有率になり、冷却効果がもたらされることが示唆される。
【0061】
従来のPECVD処理は、上記濃度のシリコンナノ粒子を形成させるに十分なイオンプラズマを発生させることができない。従来のイオン注入によれば、高濃度のシリコンを発生させることができる。しかし、イオン注入処理では、良質な(大きな粒径の)シリコンのナノ結晶性構造を形成させることができない。これは、高エネルギーのシリコンイオンは、シリコン絶縁膜に損傷を及ぼすからである。なお、シリコン濃度(体積充填率)の増加はこの限りではなく、シリコンナノ粒子の密度についても同様である。
【0062】
図1に示す発光素子100の電気ルミネセンス(EL)出力は、電流注入の度合いに強く関連する。同様の度合いの電流注入に関して、ほとんどの堆積処理条件下の発光素子間でのEL強度はわずかな差異を示すのみである。従来のナノ結晶性シリコン含有SiO膜の厚さを単純に減少させることによって、光放射出力を増加させることはできない。つまり、従来のSiO活性層の厚さを単純に減少させることによって、固有の逆反応の場を生じさせる強い表面効果および電荷捕獲効果が結果として生じることが実験データによって示されている。これらの逆反応の場は、発光素子に適用される実際の場を減少させる。このようにして、効率の良い電流注入が妨げられる。さらに、単純にSiOが減少すると、シリコンナノ結晶の放射への関与が減少され、高い放射出力が妨げられる。SiO膜を単純に減少させることによって、これら全ての要素は、従来の発光素子におけるターン‐オン電圧の減少を妨げることとなる。当該問題を解決するため、本発明のHDPCVDおよび堆積処理の後処理に係る処理手法は、薄層のSiO活性層を有する発光素子に係る効率的な電流注入を実現するために最適化されている。最適化されたHDPCVDおよび堆積後のアニール処理によって、ターン‐オン電圧を80V付近から20V以下に減少せることができる。
【0063】
図2Aは、活性層としてナノ結晶性シリコン含有SiOを用いた発光素子を示す部分断面図である。また、図2bは、SIM発光素子(高効率集光素子)を用いた発光方法を示すフローチャートである。電気的に往復運動する発光素子100は、ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104が使用されて供給される。ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、ドープされたシリコンウェハおよび透明金属の間に挟まれている。上記透明な金属電極108の材料としては、例えば、伝導性金属である金または白金などが挙げられる。
【0064】
工程202において、HDPECVD処理を用いて、上記活性層を、30nm以上、200nm以下の範囲内の厚さ106にて堆積する。また、透明な金属電極を、SiO膜上に形成する。20ボルト未満の電位が発光素子100に適用された際(工程204)、60nm未満の膜厚および約18%のSi体積充填率と仮定すると、0.03ワット毎平方メートル(W/cm)を超える表面放射出力が発生する(工程206)。基板(底部電極)が、n型ドープされている場合、上記基板は、アース、および、負の電圧源に接続された透明な金属電極108に接続されていてもよい。なお、金属電極108に代えて半導体電極をSiO膜上に形成してもよい。
【0065】
図3に示すように、表面放射波長は、約150nm(半値全幅)のスペクトル幅を有し、中心が800nm付近の放射波長を有する。約200nmの膜厚106を有する、SiOから構成されるナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、約0.6メガボルト毎センチメートル(Mv/cm)の空間電界および電荷捕獲電界を生じさせる。また、約50nmの膜厚106および約18%のシリコン体積充填率を有する上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜104は、約0.7Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を生じさせる。これは、SiO膜が適用されていない従来の発光素子の約半分の値である。
【0066】
図3は、図2Aの発光素子の光放射スペクトルを測定するために用いられるプローブとして使用されるマルチモードファイバ(a multiple-mode fiber)を備えるモノクロメーターの描写結果を示すグラフである。同図は、光ルミネセンス(PL)波長の非常に近接して、800nm付近に放射ピークが生じていることを示している。
【0067】
図4は、電子ルミネセンス光の捕集装置を示す図である。発光素子(図中のLED)は、距離Rに対する断面積比率が小さいため、点光源であるとみなすことができる。
【0068】
図5は、基板ウェハの種類およびアニール処理の後処理に関する光放射特性の依存性を示すグラフである。光出力は図4に示す捕集装置を用いて捕集される。図1および図2Aに示すように、発光素子は3層構造である。発光素子100の発光出力は、3層間の界面によって大きく影響される。また、底部のシリコンウェハにおけるドーパントの種類によって顕著な影響が示される。n型の基板ウェハ上に作製された発光素子は、P型の基板ウェハに比較して、バイアスされた際により発光する。さらに、堆積後のアニール処理の条件(特に温度)は、発光特性に重要な影響を及ぼす。
【0069】
図5に要約された結果によれば、他の処理条件および発光素子の構成が同様であれば、n型の基板ウェハ上にて作製された発光素子(LED)は、p型の基板ウェハ上にて作製された発光素子よりもより効率的な光出力を示すことが明確に示されていることがわかる。また、800℃および15分間の条件にてアニール処理された発光素子と比較して、アニール処理後に600℃および15分間処理された発光素子の方がより発光する性能が高い。
【0070】
従来、電気装置の活性層に係るターン‐オン電圧は、活性層の厚さが減少することによって減少することが知られている(定電流の状態を維持している間)。しかしながら、このように、SiO発光素子の電圧、活性層の厚さ、および、放射出力の間に関連があることは知られていない。薄膜を備える発光素子は通常、発光が弱い(発光に関与する物質が少ない)。このように、素子の活性層からより多く発光させるためには、電圧を増加させる必要がある。つまり、単純にSiO膜の厚さが減少することによって低下した電圧を補う必要がある。
【0071】
ナノ結晶性シリコン含有SiO活性層に関して、実用的な最小厚さは200nmである。実験的な研究によって、従来のSiO層が、外部場に対する強い固有の逆反応場を形成することが確認されている。なお、200nmよりも薄層であると、効率的な電流注入が妨げられる。ナノ結晶性シリコン含有SiO発光素子に関して電流注入を予測する修正された Fowler Nordheim 理論モデルは、以下のように表され得る。
【0072】
【数1】

【0073】
上記式において、Eeff=Eext−Ebuiであり、Eeffは有効磁界、Eextは外部場、Ebuiは固有の逆反応場である。上記逆反応場は、発光素子に適用される‘真の’場を減少させることによって外部場を弱める。Eextは概して複雑な関数である。さらに:
【0074】
【数2】

【0075】
上記式において、mはキャリアの有効質量であり、qは各キャリアの電荷であり、φは障壁高さであり、hはプランク定数である。EBarrierは、キャリアがFNトンネル現象にて越える必要がある障壁電位高さに相当する。
【0076】
図6は、修正された Fowler-Nordheimモデルを用いた算出データとの比較データを示すグラフである。上記データにおいて良好な一致が達成されている。従来の50nmのSiO活性層を有する発光素子に関して、Ebuiを200nmの発光素子のものに対して2倍の値とすることができ、効率的な電流注入を妨げ、低いターン‐オン電圧を達成することができる。これらは同じ処理、および、厚さを除いて同じ配置の発光素子にて作製されるものの、EBarrierはこれら2つの種類の発光素子に関して同じではない。この結果は、この結果は、異なる有効磁界Eeffにおいて異なる障壁電位の傾きによって説明される。
【0077】
要約すると、低いターン‐オン電圧を有するナノ結晶性シリコン含有SiO発光素子は、電流注入が改善された薄膜の活性層を用いることのない、従来の手法では作製することができない。しかしながら、薄膜(すなわち、200nmまたはそれより薄い)の場合、逆反応場Ebuiは同様に電流注入を妨げる。本発明によれば、薄膜のナノ結晶性シリコン含有SiO発光素子に関する逆反応場を最小限に抑える方法を提供することができ、低いターン‐オン電圧の発光装置を製造できる。さらに、導入された堆積後の処理を最適化することができる。最適化されたHDPECVD処理は、以下の工程を有している。(1)全ての処理パラメータを固定して、NOの流速を段階的に減少させる。本工程では、最適条件において、200nmの厚さを有する発光素子に関して40V未満の範囲にてターン‐オン電圧を有する発光装置を製造する。(2)SiO活性層の厚さを減少させ、一方、固定されたNO/SiHの流速に関する他のHDPECVDのパラメータを最適化し、比較的高いシリコン濃度にてSiO膜を製造する。本工程では、急激に薄膜による電荷注入の効率を低下させる空間電荷効果を最小化させる。最適条件を用いて、空間および電荷捕獲効果(space and charge trap effect)を減少させることができるので、高いターン‐オン電圧を低下させることができる。
【0078】
HDPECVD製造方法にて用いられるパラメータは、SiO層が約50nmおよび200nmの2つのグループの発光素子に関する表1にまとめられている。ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、シリコンが高濃度な酸化シリコン(SRSO)膜である。図7に示されていように、17.5Vが測定されており、20V以下の低いターン‐オン電圧(約0.05W/mに相当し、図4に示す測定システムにて0.1nWにて規定される)が実証されている。
【0079】
【表1】

【0080】
図7は、表1に記載されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜サンプルのターン‐オン電圧を示すグラフである。表2は、HDPECVD製造方法において用いられたパラメータが記載されている。上記パラメータは、シリコン濃度および種々のフィルム厚さの度合いを対比するものである。
【0081】
【表2】

【0082】
表3は、光学指数(n)(光学定数n(屈折率))に対して、HDPECVD作製条件を相互参照するものである。
【0083】
【表3】

【0084】
SiO膜内のシリコン濃度は、SiO膜の光学指数を用いて測定可能である。シリコンは、酸化シリコン(誘電率εOXを有する)内において同じ誘電率εSiを維持するとの前提に基づき、実効誘電率εeffは、以下のように算出され得る。
【0085】
【数3】

【0086】
上記式において、fは、酸化シリコン膜内におけるシリコンの充填率であり、実効誘電率εeffは実質、想定量よりも遥かに大きいため(損失のため)、測定されたSiO膜の光学指数であるneffは、以下のように表され得る。
【0087】
【数4】

【0088】
誘電率εOXを2.37、誘電率εSiを11.68とすると、シリコン濃度を制御することによって、実効光学指数は、1.54(f=0)以上、3.44(f=100%)以下の範囲内にて変化する。表3に要約されたサンプルは、2.8%以上、17.2%以下の範囲内でのシリコンの充填率に相当する、1.64以上、2.02以下にて変化する光学指数を有する。
【0089】
表3から、シリコンの充填率が18%(例えば、サンプル0725-34AB)に近付くにつれて、電流注入が非常に効率的になるにも関わらず、強い発光が観測されなくなる。シリコン充填率が2.8%程度に低い(例えば、0725-33AB)場合、強い発光が観測される。しかしながら、高いターン‐オン電圧が必要となる。これらの結果に基づいて、シリコン充填率手法に係る最適条件は、約2.8%および約18%の間とすべきである。しかし、この範囲よりもわずかに広い範囲で実効性があると考えられる。
【0090】
上述のように、作動電圧を減少させる試みにおいて、電子装置におけるSiO活性層の厚さを減少させる概念は新しいものではない。200nmおよび50nmの厚さを有する発光素子を比較すると、理想的には、50nmの発光素子の方が、200nmの発光素子の1/4の作動電圧を有することとなる。すなわち、V200nm/200nm=V50nm/50nmとなる。このように、理想的な作動電圧は、200nmの発光素子では40Vであり、50nmの発光素子では10nmになると考えられる。
【0091】
しかしながら、従来の膜を用いてこれらの結果を達成することはできない。空間および電荷捕獲効果は、膜厚が200nmから50nmに減少すると、理想的な場の発生を妨げる。従来の発光素子に関して、空間電荷からの固有の逆反応場は、1.5mv/cmから3.0mv/cmへ増加する。空間電荷に起因して、従来の200nmの発光素子は、実効作動電圧が、測定結果および上述したように、40V以上、70V以下となる(200nmの発光素子に関して1mv/cm以上、20v以下)。厚さが200nmから50nmに減少すると、空間電荷間の離間距離は減少する。そして、空間電荷の効果は更に高まる。このように、従来の50nmのSiOに関する作動電圧は理論的な10Vではなく、40Vである。
【0092】
しかし、本発明に係る処理によれば、50nmの厚さのSiO膜であっても低い作動電圧を有する発光素子を提供することができる。上述したように、上記作動電圧は20V未満であり、従来の50nmの発光素子に関して必要な40Vのターン‐オン電圧の半分である。本発明に係る処理は、厚さに伴い電圧のさらなる拡大縮小を許容する空間および電荷捕獲効果を最小限に抑制することができる。
【0093】
図8は、ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜を用いた発光素子の製造方法を示すフローチャートである。明確にするため、連続して番号工程が番号付けされているが、当該製造方法において、番号は工程の順番を必ずしも決定付けるものではない。並行して、または、順番を厳格に守る必要が無くなされる処理の中には省略され得るものもある。上記製造方法は、工程800から開始する。
【0094】
工程802では、底部電極を供給する。具体的には、n型ドープされたもしくはp型ドープされた半導体、または、金属底部電極を供給する。工程804では、HDPECVD処理を用いて、30nm以上、200nm以下の範囲内の厚さを有する上記底部電極上にシリコン絶縁膜を堆積する。上記シリコン絶縁膜は、O、N、またはCなどを含んでいてもよい。例えば、シリコン絶縁膜はXが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCであってもよい。工程806では、上記シリコン絶縁膜をアニール処理する。一形態において、アニール処理の継続時間は、約10分以上、120分未満である。底部電極が半導体である場合、アニール処理温度は、約550℃以上、600℃以下の範囲内である。一方、底部電極が金属である場合、アニール処理温度は、200℃以上、350℃以下の範囲内である。工程808では、アニール処理に応じて、シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶が形成される。次に工程810では、上記シリコン絶縁膜上に透明な金属電極を形成する。具体的には、シリコン絶縁膜が、Xが0を超えて2未満のSiOの場合、SiO膜上に透明な金属電極を形成する。
【0095】
工程804におけるシリコン絶縁膜の堆積処理は、サブ工程を含んでいてもよい。工程804aでは、約20立方センチメートル毎分(以下、適宜「SCCM」と略す)以上、30SCCM以下の範囲内でシラン(SiH)を導入する。さらに、工程804bでは、約25以上、35SCCM以下の範囲内にてNOを導入する。なお、当該製造方法をチャンバ内で行っている場合には、上記シランおよびNOをチャンバ内に導入する。
【0096】
工程804cでは、13.56メガヘルツ(MHz)以上、300MHz以下の範囲内の波長、および、約1ワット毎平方センチメートル(W/cm)以上、20W/cm以下の電力密度の範囲内にて、上部電極に電力を供給する。工程804dでは、50キロヘルツ以上、13.56MHz以下の範囲内の波長、および、約1ワット毎平方センチメートル(W/cm)以上、5W/cm以下の電力密度の範囲内にて、下部電極に電力を供給する。
【0097】
アニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、1Mv/cmの電界に関して、1×10Ω/cmの導電率を有している。他の形態において、アニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、2.5%以上、20%以下の範囲内のシリコン充填率を有している。
【0098】
さらに他の形態において、約18%のシリコン充填率であり、60nm未満のアニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、20V未満のターン‐オン電圧を有する。上記ターン‐オン電圧は、0.03ワット毎平方メートル(W/cm)を超える表面放射出力、および、約150nm(半値全幅)のスペクトル幅であり、中心が800nm付近の放射波長に対して規定される。また、他の形態として、アニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、200nmの膜厚に関して、約0.6Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有している。約50nmの膜厚に関して、約18%のシリコン体積充填率を有するアニール処理されたナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、約0.7Mv/cmの空間電荷電界を有している。さらに、10%以下のシリコン体積充填率を有する50nmの膜厚のSiO膜は、約1.2Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有している。
【0099】
また、一形態において、ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、約18%のシリコン体積充填率の場合、約1.93の光学指数を有している。SiO膜中のシリコンナノ結晶は、約4nmの直径、約1.0×1017/cm以上、5.4×1018/cm以下の範囲内の密度、および、約5.7nm以上、10nm以下の範囲内のシリコンナノ結晶間距離を有する。上記シリコンナノ結晶は、シリコンの体積充填率に依存した密度およびナノ結晶間の距離を有している。
【0100】
図9は、誘導結合プラズマ源を有する高密度プラズマ(HDP)システムを概略的に示す図である。同図に示された上記システムは、シリコン結晶性SiO膜を堆積する上記HDPECVD処理を可能とするシステムの一例である。上部電極1は、高周波出力(RF)源2によって駆動される。一方、下部電極3は低周波出力源4によって駆動される。高密度の誘導結合プラズマ(ICP)源である高周波出力源2からのRF電力は、マッチング回路5およびハイパスフィルター7を通じて上部電極1に伝えられる。さらに、ローパスフィルター9および整合変成器11を通じて、下部電極3への電力は上部電極1の電力とは独立して変更することができる。
【0101】
上部電極の電力周波数は、ICP(inductively coupled plasma)の設定に依存し、約13.56〜約300メガヘルツ(MHz)の範囲内とすることができる。下部電極の電力周波数は、イオンエネルギーを制御するため、約50キロヘルツ(KHz)から約13.56MHzまでの範囲内にて変更することができる。また、圧力の上限は、500mTorr(66.65Pa)である。上部電極の電力は、約10ワット毎平方センチメートル(W/cm)の大きさにすることができる。一方、下部電極の電力は、3ワット毎平方センチメートル(W/cm)の大きさとすることができる。
【0102】
高密度プラズマ(HDP)システムの重要な特徴は、プラズマに晒される誘導コイルが用いられないという点である。上記誘導コイルは、不純物の発生源を排除するものである。上記上部電極および下部電極の電力は、独立して制御することができる。また、上記電極がプラズマに晒されないように、種々のコンデンサを用いたシステム筐体を適用させる必要はない。すなわち、上部電極および下部電極の間でクロストークは生じず、上記プラズマ電位は低く、通常20V未満である。システム筐体の電位は、フローティングタイプの電位であり、上記システム設計および電力結合の性質に依存する。
【0103】
HDP処理(HDP tool)は、実際には、1×1011cm−3以上の電子濃度および10eV以下の電子温度での高密度プラズマ処理である。容量結合プラズマツールなどの多くの高密度プラズマシステムおよび従来の設計におけるように、上部電極およびシステム筐体に連結されたコンデンサ間において、異なるバイアスを維持する必要はない。他の形態では、上部電極および下部電極は、RFおよび低周波数(LF)の電力を受けてもよい。
【0104】
ナノ結晶性シリコン含有絶縁膜活性層から作製される発光素子は、関連する製造処理と共に示されている。また、本発明に係る具体的な構成および処理は図面に示されているが、本発明は図示された具体例に限定されるものではない。本発明に係る他の変形例および具体例については、当業者によって適宜変更することができる。すなわち、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において、所定の数値に「約」が付されている表記は、上記所定の数値自体の値をも含んでいるものとする。
【0105】
また、本発明には、以下の発光素子の製造方法、発光素子、および、発光方法が含まれる。
【0106】
(1)シリコン(Si)ナノ結晶性シリコン絶縁膜が用いられた発光素子の製造方法において、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極を供給する工程と、高密度プラズマ化学気相成長法(HDPECVD)を用いて、上記底部電極上に、30ナノメートル(nm)以上、200ナノメートル(nm)以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むシリコン絶縁膜を堆積する工程と、シリコン絶縁膜をアニール処理する工程と、上記アニール処理に応じて、シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶を形成する工程と、シリコンナノ結晶シリコン絶縁膜上に透明な金属電極を形成する工程とを含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【0107】
(2)上記シリコン絶縁膜を堆積する工程は、Xが2未満のSiO、Xが4未満のSiまたはXが1未満のSiCからなる群から選ばれた膜を堆積する工程を含むことを特徴とする(1)に記載の発光素子の製造方法。
【0108】
(3)上記SiO膜を堆積する工程は、シラン(SiH)を約20立方センチメートル毎分(SCCM)以上、30立方センチメートル毎分以下(SCCM)の範囲内にて導入する工程と、NOを約25SCCM以上、35SCCM以下の範囲内にて導入する工程と、13.56メガヘルツ(MHz)以上、300メガヘルツ(MHz)以下の範囲内の波長、および、約1ワット毎平方センチメートル(W/cm)以上、20ワット毎平方センチメートル(W/cm)以下の電力密度の範囲内にて、上部電極に電力を供給する工程と、50キロヘルツ以上、13.56MHz以下の範囲内の波長、および、約1W/cm以上、5W/cm以下の電力密度の範囲内にて、下部電極に電力を供給する工程とを含むことを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0109】
(4)シリコン絶縁膜をアニール処理する工程では、約10分以上、120分以下の範囲内の継続時間、および、上記底部電極が半導体の場合、約550℃以上、600℃以下の範囲内の温度にて、上記底部電極が金属の場合、約200℃以上、350℃以下の範囲内の温度にて、SiO膜をアニール処理することを特徴とする(3)に記載の発光素子の製造方法。
【0110】
(5)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、少なくとも1メガボルト毎センチメートル(Mv/cm)の電界に関して、少なくとも1×10Ω/cm未満の導電率を有することを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0111】
(6)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、2.5%以上、20%以下の範囲内のシリコン体積充填率を有することを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0112】
(7)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、60nm未満の厚さおよび約18%のシリコン体積充填率を有する膜に対して、0.03ワット毎平方メートル(W/m)を超える表面放射出力に関して規定された20ボルト未満のターン‐オン電圧を有することを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0113】
(8)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、半値全幅(Full Width at Half Maximum)が約150nmのスペクトル幅であり、800nm付近を中心とした放射波長を有することを特徴とする(7)に記載の発光素子の製造方法。
【0114】
(9)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、約200nmの厚さであり、約0.6Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有することを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0115】
(10)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、約50nmの厚さであり、約18%のシリコン体積充填率の場合、約0.7メガボルト毎センチメートルの空間電界および電荷捕獲電界を有し、約10%以下のシリコン体積充填率の場合、約1.2メガボルト毎センチメートルの空間電界および電荷捕獲電界を有することを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0116】
(11)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、シリコン体積充填率が約18%であり、約1.93の光学指数を有することを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0117】
(12)上記SiO膜内のシリコンナノ結晶は、約4nmの直径、約1.0×1017/cm以上、5.4×1018/cm以下の密度、および、約5.7nm以上、10nm以下の範囲内におけるシリコンナノ結晶間の距離を有することを特徴とする(2)に記載の発光素子の製造方法。
【0118】
(13)上記シリコンナノ結晶は、シリコン体積充填率に依存する密度およびナノ結晶間の距離を有することを特徴とする(12)に記載の発光素子の製造方法。
【0119】
(14)シリコン(Si)ナノ結晶性シリコン絶縁膜が用いられた発光素子において、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、上記底部電極上に形成された、30ナノメートル(nm)以上、200ナノメートル(nm)以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜と、SiO膜上に形成された透明な金属電極とを備えることを特徴とする発光素子。
【0120】
(15)上記シリコン絶縁膜は、Xが2未満のSiO、Xが4未満のSiおよびXが1未満のSiCからなる群から選ばれたことを特徴とする(14)に記載の発光素子。
【0121】
(16)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、2.5%以上、20%以下の範囲内のシリコン体積充填率を有することを特徴とする(14)に記載の発光素子。
【0122】
(17)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、少なくとも1メガボルト毎センチメートル(Mv/cm)の電界に関して、1×10Ω/cm未満の導電率を有することを特徴とする(15)に記載の発光素子。
【0123】
(18)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、60nm未満の厚さおよび約18%のシリコン体積充填率を有する膜に関して、0.03ワット毎平方メートル(W/m)を超える表面放射出力に対して20ボルト未満のターン‐オン電圧を有することを特徴とする(15)に記載の発光素子。
【0124】
(19)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、半値全幅(Full Width at Half Maximum)が約150nmのスペクトル幅であり、800nm付近を中心とした放射波長を有することを特徴とする(18)に記載の発光素子。
【0125】
(20)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、約50nmの厚さであり、
約18%のシリコン体積充填率の場合、約0.7メガボルト毎センチメートルの、空間電界および電荷捕獲電界を有し、約10%以下のシリコン体積充填率の場合、約1.2メガボルト毎センチメートルの空間電界および電荷捕獲電界を有することを特徴とする(18)に記載の発光素子。
【0126】
(21)上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、シリコン体積充填率が約18%であり、約1.93の光学指数を有することを特徴とする(15)に記載の発光素子。
【0127】
(22)上記SiO膜内のシリコンナノ結晶は、約4nmの直径、約1.0×1017/cm以上、5.4×1018/cm以下の密度、および、約5.7nm以上、10nm以下の範囲内におけるシリコンナノ結晶間の距離を有することを特徴とする(15)に記載の発光素子。
【0128】
(23)発光素子を用いた発光方法において、ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、上記底部電極上に形成された、60ナノメートル(nm)以下の厚さおよび約18%のシリコン体積充填率を有しており、Xが2未満のSiO、Xが4未満のSiまたはXが1未満のSiCからなる群から選ばれたナノ結晶性シリコン含有シリコン膜と、上記SiO膜上に形成された透明な金属電極とを含む素子を供給し、上記半導体電極に対して20ボルト未満の電位を供給し、0.03ワット毎平方メートル(W/m)を超える表面放射出力を発生させることを特徴とする発光方法。
【0129】
〔関連出願〕
本願は、Pooran Joshi等により発明された、ナノ結晶性シリコン含有酸化シリコン薄膜に係る米国特許出願第11/418,273(代理人 Docket,No.SLA0963, 2006年5月4日出願)の一部継続出願である。米国特許出願第11/418,273は以下の出願の一部継続出願である。
・Pooran Joshi等により発明された薄膜酸化プロセスの促進に係る米国特許出願第11/327,612(代理人 Docket,シリアルNo.SLA8012,2006年1月6日出願)。
・Pooran Joshi等により発明された高密度プラズマ水素化に係る米国特許出願第11/013,605(2004年12月15日出願,)。
・Pooran Joshi等により発明された酸素結合を改善した酸化物の堆積に係る米国特許出願第10/801,377(2004年3月15日出願)。
・Pooran Joshi等により発明されたゲート酸化物の高濃度プラズマ酸化の促進に係る米国特許出願第11/139,726(2005年5月26日出願)。
・Pooran Joshi等により発明されたシリコン薄膜のための高濃度プラズマプロセスに係る米国特許出願第10/871,939(2004年6月17日出願)。
・Pooran Joshi等により発明された酸化物薄膜の製造方法に係る米国特許出願第10/801,374(2004年3月15日出願)。
上述の全ての出願が、本願の参考文献として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、発光素子およびこれを用いる光電子工学分野および集積メモリ装置の分野にて利用することが可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 上部電極
3 下部電極
100 発光素子
102 底部電極
104 ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜
108 金属電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶性シリコンを含有する絶縁膜が用いられた発光素子の製造方法において、
ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極を供給する工程と、
高密度プラズマ化学気相成長法を用いて、上記底部電極上に、30nm以上、200nm以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むシリコン絶縁膜を堆積する工程と、
シリコン絶縁膜をアニール処理する工程と、
アニール処理に応じて、シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶を形成する工程と、
シリコン絶縁膜内にシリコンナノ結晶が形成されたナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜上に透明な金属電極または半導体電極を形成する工程とを含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程は、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCからなる群から選ばれた膜を堆積する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
シリコン絶縁膜を堆積する工程は、
シランを20SCCM以上、30SCCM以下の範囲内にて導入する工程と、
Oを25SCCM以上、35SCCM以下の範囲内にて導入する工程と、
13.56MHz以上、300MHz以下の範囲内の波長、および、1W/cm以上、20W/cm以下の電力密度の範囲内にて、上部電極に電力を供給する工程と、
50キロヘルツ以上、13.56MHz以下の範囲内の波長、および、1W/cm以上、5W/cm以下の電力密度の範囲内にて、下部電極に電力を供給する工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記シリコン絶縁膜をアニール処理する工程では、
10分以上、120分以下の範囲内の継続時間、および、
上記底部電極が半導体の場合、550℃以上、600℃以下の範囲内の温度にて、
または、上記底部電極が金属の場合、200℃以上、350℃以下の範囲内の温度にて、ナノ結晶性シリコン含有SiO膜をアニール処理することを特徴とする請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、少なくとも1Mv/cmの電界に関して、1×10Ω/cm未満の導電率を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、2.5%以上、20%以下の範囲内のシリコン体積充填率を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有しており、
0.03W/mを超える表面放射出力にて規定された20ボルト未満のターン‐オン電圧を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、半値全幅が150nmのスペクトル幅であり、800nm付近を中心とした放射波長を有することを特徴とする請求項7に記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、200nmの厚さであり、0.6Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、50nmの厚さであり、
18%のシリコン体積充填率の場合、0.7Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有し、または、10%以下のシリコン体積充填率の場合、1.2Mv/cmの空間電界および電荷捕獲電界を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、シリコン体積充填率が18%であり、1.93の光学指数を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
上記シリコン絶縁膜を堆積する工程では、上記Xが0を超えて2未満のSiOを堆積してナノ結晶性シリコン含有SiO膜を堆積し、
上記SiO膜内のシリコンナノ結晶は、4nmの直径、1.0×1017/cm以上、5.4×1018/cm以下の密度、および、5.7nm以上、10nm以下の範囲内におけるシリコンナノ結晶間の距離を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項13】
上記シリコンナノ結晶は、シリコン体積充填率に依存する密度およびナノ結晶間の距離を有することを特徴とする請求項12に記載の発光素子の製造方法。
【請求項14】
ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜が用いられた発光素子において、
ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、
上記底部電極上に形成された、30nm以上、200nm以下の範囲の厚さ、および、O、NおよびCからなる群から選ばれた材料を含むナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜と、
上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン絶縁膜上に形成された透明な金属電極または半導体電極とを備えることを特徴とする発光素子。
【請求項15】
上記シリコン絶縁膜は、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCからなる群から選ばれた材料から構成されていることを特徴とする請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
上記シリコン絶縁膜は、Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、2.5%以上、20%以下の範囲内のシリコン体積充填率を有することを特徴とする請求項14に記載の発光素子。
【請求項17】
上記シリコン絶縁膜は、上記Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、少なくとも1Mv/cmの電界に関して、1×10Ω/cm未満の導電率を有することを特徴とする請求項15に記載の発光素子。
【請求項18】
上記シリコン絶縁膜は、上記Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有する膜に関して、0.03W/mを超える表面放射出力に対して20ボルト未満のターン‐オン電圧を有することを特徴とする請求項15に記載の発光素子。
【請求項19】
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、半値全幅が150nmのスペクトル幅であり、800nm付近を中心とした放射波長を有することを特徴とする請求項18に記載の発光素子。
【請求項20】
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、50nmの厚さであり、
18%のシリコン体積充填率の場合、0.7メガボルト毎センチメートルの空間電界および電荷捕獲電界を有し、
10%以下のシリコン体積充填率の場合、1.2メガボルト毎センチメートルの空間電界および電荷捕獲電界を有することを特徴とする請求項18に記載の発光素子。
【請求項21】
上記シリコン絶縁膜は、上記Xが0を超えて2未満のSiOであるナノ結晶性シリコン含有SiO膜であり、
上記ナノ結晶性シリコン含有SiO膜は、シリコン体積充填率が18%であり、1.93の光学指数を有することを特徴とする請求項15に記載の発光素子。
【請求項22】
上記SiO膜内のシリコンナノ結晶は、4nmの直径、1.0×1017/cm以上、5.4×1018/cm以下の密度、および、5.7nm以上、10nm以下の範囲内におけるシリコンナノ結晶間の距離を有することを特徴とする請求項15に記載の発光素子。
【請求項23】
発光素子を用いた発光方法において、
ドープされた半導体および金属からなる群から選ばれた底部電極と、
上記底部電極上に形成された、60nm未満の厚さおよび18%のシリコン体積充填率を有しており、Xが0を超えて2未満のSiO、Xが0を超えて4未満のSiまたはXが0を超えて1未満のSiCからなる群から選ばれたナノ結晶性シリコン含有シリコン膜と、
上記ナノ結晶性シリコン含有シリコン膜上に形成された透明な金属電極または半導体電極とを含む発光素子を供給し、
上記底部電極、並びに、金属電極または半導体電極に対して20ボルト未満の電位を供給し、
0.03W/mを超える表面放射出力を発生させることを特徴とする発光方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−283450(P2009−283450A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83450(P2009−83450)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】