説明

ナビゲーション装置

【課題】、交差点でない分岐における進行方向の選定を支援する「ナビゲーション装置」を提供する。
【解決手段】カメラ7の撮影画像やレーザ装置の計測結果に基づいて、自車300前方の現在走行している道路の現在走行している方向の車線間に、橋脚301や区画線が自車から見て末広がりに拡大している箇所302が存在することが推定されたならば(a、b)、これら301、302を車線分岐物として識別する。そして、車線分岐物の位置を特定し、表示装置3に表示している案内画像320上に異形分岐案内ウインドウ310を設定し、特定した車線分岐物位置周辺の道路の形状や配置を詳細に表した拡大地図を地図データに基づいて生成し、異形分岐案内ウインドウ310に表示する(c)。拡大地図310には、車線分岐物位置で分岐する現在走行している方向の各車線の進行方向を示す矢印311も表示するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されるナビゲーション装置において分岐を案内する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるナビゲーション装置において分岐を案内する技術としては、目的地までの間に設定した誘導経路に従って、右左折等により進行方向を変更すべき交差点に自動車が接近したときに、当該交差点の誘導経路に沿った通過方向を、ユーザに対して、当該通過方向を表した交差点の拡大地図を表示装置に表示することにより案内したり、当該通過方向を伝える音声メッセージをスピーカから出力することにより案内する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005-147697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、現実の道路においては、交差点以外にも、ユーザが進行方向の選定を迷い易い道路の分岐が存在する。たとえば、上り二車線よりなる道路において上りの車線間に橋脚が存在する場合や、上り複数車線よりなる道路において、一部の上り車線がアンダーパスとして形成されている場合などである。
【0004】
そして、前記従来の技術によれば、右左折等により進行方向を変更すべき交差点では、当該交差点をどのように通過すれば良いかをユーザに対して案内することができるが、このような交差点ではない分岐については、その通過方向をユーザに対して案内することができない。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザの、交差点でない分岐における進行方向の選定を支援することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載されるナビゲーション装置に、前記自動車前方の、当該自動車が現在走行している道路の、当該自動車が現在走行している方向の各車線を対象車線として、二つの対象車線間に存在する当該二つの対象車線を分岐させる物体を、分岐物として検出する分岐物検出手段と、前記分岐物検出手段が検出した分岐物の位置を分岐位置として、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内する分岐案内手段とを設けたものである。
【0007】
また、前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載されるナビゲーション装置に、前記自動車前方の、当該自動車が現在走行している道路の、当該自動車が現在走行している方向の各車線を対象車線として、二つの対象車線間に存在する当該二つの対象車線を分岐させる形状を有する道路標示を、分岐物として検出する分岐物検出手段と、前記分岐物検出手段が検出した分岐物の位置を分岐位置として、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内する分岐案内手段とを備えたものである。
【0008】
これらのようなナビゲーション装置によれば、自動車が現在走行している方向の複数の車線が、車線間に存在する橋脚等によって分岐している箇所に自動車が接近したときに、これを車線間の物体や道路標識より検出して、当該分岐をユーザに対して案内することができる。したがって、本発明によれば、このような、交差点ではないユーザが進行方向の選定を迷い易い道路の分岐について、ユーザに対する案内を行うことができるようになる。
【0009】
ここで、以上のナビゲーション装置は、前記分岐案内手段において、前記分岐位置周辺の道路地図を表示することにより、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内するように構成してもよいし、前記分岐案内手段において、前記分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内する音声を出力するように構成してもよい。また、以上のナビゲーション装置は、前記自動車前方を走査するレーダ装置もしくは前記自動車前方を撮影するカメラを前方センサとして備え、前記分岐物検出手段において、前記前方センサを用いて前記分岐物を検出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ユーザの、交差点でない分岐における進行方向の選定を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示す。
図示するように、ナビゲーションシステムは、ナビゲーション装置1と、操作部2と、表示装置3と、車両状態センサ4と、GPS受信機5と、スピーカ6と、カメラ7と、レーダ装置8とを備えている。ここで、車両状態センサ4は、角加速度センサや地磁気センサなどである方位センサや、車速パルスセンサなどである車速センサなどの車両状態を検出する各種センサ群である。また、レーダ装置8とカメラ7は、図1bに示すように車両前部に設置され、カメラ7は車両前方を撮影し、レーダ装置8は車両前方に存在する物体を検出する。
【0012】
次に、図1aに示すように、ナビゲーション装置1は、地図データ記憶部11、現在状態算出部12、ルート探索部13、操作部2や表示装置3を用いたGUIをユーザに提供するGUI制御部14、制御部15、案内画像生成部16、周辺監視部17、音声出力部18とを有している。
【0013】
ここで、地図データ記憶部11には、地図を表す地図データが記憶されている。また、周辺監視部17は、カメラ7が撮影した車両前方の画像やレーダ装置8が検出した車両前方の物体に基づいて、車両前方の状況を監視する。
そして、ナビゲーション装置1の現在状態算出部12は、車両状態センサ4やGPS受信機5の出力から推定される現在位置に対して、地図データ記憶部11から読み出した地図データが示す、前回決定した現在位置の周辺の地図とのマップマッチング処理などを施して、現在位置を算定する処理を繰り返し行う。
【0014】
また、制御部15は、ユーザの目的地設定要求に応じて、ユーザから操作部2、GUI制御部14を介して目的地の設定を受け付け、目的地までの推奨ルートをルート探索部13に探索させる。ルート探索部13は、必要地理的範囲の地図データを地図データ記憶部11から読み出し、現在状態算出部12が算出している現在位置から目的地までの最小コストの経路を、距離最小などの所定のコストモデルに基づいて推奨ルートとして算出する。
【0015】
また、制御部15は、現在位置や予め設定された地図表示縮尺に応じて、地図表示範囲を算定し、案内画像生成部16に、算定した地図表示範囲内の地図を含む案内画像の描画を指示する。案内画像生成部16は、案内画像の描画の指示を受けると、地図データ記憶部11に格納されている地図データより、地図表示範囲内の地図を表す地図画像を生成する。そして、生成した地図画像上に、現在位置を表す現在位置アイコンや、推奨ルートを表す推奨ルート図形や、目的地を表す目的地アイコンを描画して案内画像を完成させ、GUI制御部14を介して表示装置3に表示する。
【0016】
また、制御部15は、推奨ルートに従って走行する場合に右左折等により進行方向を変更すべき交差点に現在位置が接近したときに、案内画像生成部16に、当該交差点の誘導経路に沿った通過方向を表した交差点の拡大地図の生成及びGUI制御部14を介した表示装置3への表示を行わせたり、音声出力部18に、当該交差点の通過方向を案内する音声メッセージをスピーカ6から出力させる処理なども行う。
【0017】
以下、このようなナビゲーションシステムにおいて、制御部15が行う異形分岐案内処理について説明する。
図2に、この異形分岐案内処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、まず、自車前方に存在する、現在走行している道路の現在走行している方向(上り方向/下り方向)の車線数を識別する(ステップ202)。ここで、地図データ記憶部11に記憶されている地図データは、各道路区間の上り/下り方向の車線数の情報を含んでおり、ステップ202では、現在状態算出部12が算出した現在位置が位置する道路区間の、現在位置の履歴もしくは車両状態センサ4の出力より求まる現在の車両の進行方向となっている方向の車線数を、地図データに基づいて識別する。
【0018】
そして、次に、周辺監視部17において、カメラ7で撮影した車両前方の画像に対する道路上の区画線(黄線や白線などの中央線や車線境界線)認識処理を施して自車前方に存在する各車線を識別し、識別した車線の内の、左側から選定した、ステップ202で算出した車線数分の車線を、自車前方の現在走行している道路の現在走行している方向の車線として識別する(ステップ204)。
【0019】
なお、以上のステップ202と204は、地図データが上述のような車線数の情報を含むものでない場合には、周辺監視部17において、カメラ7で撮影した車両前方の画像に対する区画線認識処理を施して自車前方に存在する各車線を認識すると共に、車両前方に存在する各車線の内の、当該車線上に自車と同方向に走行している車両が存在する車線を、自車前方の現在走行している道路の現在走行している方向の車線として識別する処理に置き換えるようにしてもよい。なお、この場合において、自車前方の各車線上の自車と同方向に走行している車両の存在の有無は、レーダ装置8による自車前方の自車と同方向に移動している物体の検出の有無や、カメラ7が撮影した画像に対する画像認識処理によって識別した、自車前方の自車と同方向を向いている他車の存在の有無に応じて判定することができる。ただし、カメラ7で撮影した車両前方の画像に対する区画線認識処理によって、中央線を識別できた場合には、中央線よりも自車側の車線数を、自車前方の現在走行している道路の現在走行している方向の車線数として識別するようにすることもできる。
【0020】
さて、以上のようにして、自車前方の現在走行している道路の現在走行している方向の車線を識別したならば、自車前方の識別した車線間に車線分岐物が存在するかどうかを調べる(ステップ206)。ここで、このステップ206では、周辺監視部17において、カメラ7が撮影した画像に対する所定の画像認識処理やレーダ装置8が検出した物体に対する解析処理を行うと共に、これらの画像認識処理や解析処理の結果より、図3aや図3bに示すように、自車300前方の現在走行している道路の現在走行している方向の車線間に、橋脚301などの路上設置物が存在することが推定される場合に、当該路上設置物301を車線分岐物として、自車前方の識別した車線間に車線分岐物が存在すると判定する。また、このステップ206では、周辺監視部17においてカメラ7が撮影した画像に対する区画線認識処理を行うと共に、この区画線認識処理の結果より、図3aに示すように、自車300前方の現在走行している道路の現在走行している方向の車線間の境界を示す道路上の区画線が自車から見て末広がりに拡大している箇所302、すなわち、車線の間の距離が離れていく箇所が存在することが推定された場合に、当該区画線が自車から見て末広がりに拡大している箇所302を車線分岐物として自車前方の識別した車線間に車線分岐物が存在すると判定する。
【0021】
そして、ステップ206において、自車前方の識別した車線間に車線分岐物が存在しないと判定された場合には、ステップ202からの処理に戻る。
一方、ステップ206において、自車前方の識別した車線間に車線分岐物が存在すると判定された場合には、当該車線分岐物の位置を特定し、特定した車線分岐物の位置周辺の地図データを地図データ記憶部11より取得し、取得した地図データに基づいて、特定した車線分岐物の位置における車線の分岐の案内を行う(ステップ208)。この案内は、表示装置3の案内画像の表示上に異形分岐案内ウインドウを設定すると共に、案内画像生成部16に、特定した車線分岐物位置周辺の道路の形状や配置を詳細に表した拡大地図の生成と、生成した車線分岐物周辺の拡大地図のGUI制御部14を介した異形分岐案内ウインドウへの表示を行わせることにより実行する。
【0022】
そして、現在状態算出部12が算出する現在位置が、先に特定した車線分岐物の位置を通過するのを待って(ステップ210)、ステップ202からの処理に戻る。なお、このようにステップ202に戻る際に、表示装置3の案内画像の表示上に設定した異形分岐案内ウインドウは閉じるようにする。
【0023】
図3cは、このようにしてステップ208で表示される異形分岐案内ウインドウ310を表したものであり、図示するように、異形分岐案内ウインドウ310内には、図3aの車線分岐物301/302周辺の地図が拡大された拡大地図が表示されている。また、この例では、拡大地図上において、車線分岐物位置で分岐する現在走行している方向の各車線の進行方向を、車線毎に車線に沿って示す矢印311も表示するようにしている。
【0024】
ここで、このような拡大地図によれば、この拡大地図によって表される車線分岐物周辺の道路の形状や配置より、車線分岐物位置における分岐がどのように車線を分岐するものであるのかを、ユーザは直ちに把握することができる。したがって、ユーザは、このような車線分岐物位置における分岐において、進行方向の選定を迷わずに行うことができるようになる。
【0025】
なお、図3cにおいて、異形分岐案内ウインドウ310の下に表示されているのは、前述した案内画像320であり、この案内画像320は、地図を表す地図画像321上に、現在位置アイコン322や推奨ルート図形323が表されたものとなっている。
以上、異形分岐案内処理について説明した。
ところで、以上の異形分岐案内処理では、ステップ208において車線分岐物周辺の拡大地図を表示することにより、上述した車線分岐物位置における車線の分岐の案内を行うようにしたが、このステップ208では、このような表示に代えて、または、このような表示と併せて、音声による車線分岐物位置における車線の分岐の案内を行うようにしてもよい。すなわち、この場合には、ステップ208において音声出力部18に、たとえば、「前方の分岐を、このまま直進です」、「前方の分岐のどちらを通ってもかまいません」、「道路に、再合流する分岐があります」といったような音声メッセージをスピーカ6に出力させるようにする。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る異形分岐案内処理を示すフローチャートである
【図3】本発明の実施形態に係る異形分岐案内処理の処理例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…ナビゲーション装置、2…操作部、3…表示装置、4…車両状態センサ、5…GPS受信機、6…スピーカ、7…カメラ、8…レーダ装置、11…地図データ記憶部、12…現在状態算出部、13…ルート探索部、14…GUI制御部、15…制御部、16…案内画像生成部、17…周辺監視部、18…音声出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載されるナビゲーション装置であって、
前記自動車前方の、当該自動車が現在走行している道路の、当該自動車が現在走行している方向の各車線を対象車線として、二つの対象車線間に存在する当該二つの対象車線を分岐させる物体を、分岐物として検出する分岐物検出手段と、
前記分岐物検出手段が検出した分岐物の位置を分岐位置として、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内する分岐案内手段とを有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
自動車に搭載されるナビゲーション装置であって、
前記自動車前方の、当該自動車が現在走行している道路の、当該自動車が現在走行している方向の各車線を対象車線として、二つの対象車線間に存在する当該二つの対象車線を分岐させる形状を有する道路標示を、分岐物として検出する分岐物検出手段と、
前記分岐物検出手段が検出した分岐物の位置を分岐位置として、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内する分岐案内手段とを有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のナビゲーション装置であって、
前記分岐案内手段は、前記分岐位置周辺の道路地図を表示することにより、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のナビゲーション装置であって、
前記分岐案内手段は、前記分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内する音声を出力することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
前記自動車前方を走査するレーダ装置もしくは前記自動車前方を撮影するカメラを前方センサとして備え、
前記分岐物検出手段は、前記前方センサを用いて前記分岐物を検出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
自動車に搭載されるナビゲーション装置において車線の分岐を案内する案内方法であって、
前記自動車前方の、当該自動車が現在走行している道路の、当該自動車が現在走行している方向の各車線を対象車線として、二つの対象車線間に存在する当該二つの対象車線を分岐させる物体を検出するステップと、
検出した分岐物の位置を分岐位置として、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内するステップとを有することを特徴とするナビゲーション装置における案内方法。
【請求項7】
自動車に搭載されるナビゲーション装置において車線の分岐を案内する案内方法であって、
前記自動車前方の、当該自動車が現在走行している道路の、当該自動車が現在走行している方向の各車線を対象車線として、二つの対象車線間に存在する当該二つの対象車線を分岐させる形状を有する道路標示を、分岐物として検出するステップと、
検出した分岐物の位置を分岐位置として、当該分岐位置における、前記各対象車線の分岐を案内するステップとを有することを特徴とするナビゲーション装置における案内方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−128932(P2008−128932A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316631(P2006−316631)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】