説明

ナビゲーション装置

【課題】ユーザーの意に反した誘導経路が設定された場合、またユーザーが必要に応じて過去の誘導経路を利用し、また確認したいと思ったときに、容易に過去の誘導経路を提示し、また過去の誘導経路を利用した経路を提示可能にした「ナビゲーション装置」とする。
【解決手段】現在作動中の誘導経路を記憶するほか、現在作動中の誘導経路が迂回路の提示、或いは自動的にまたは意図的に他の経路の選択がなされたとき、現在まで作動していた誘導経路を変更した日時、或いは経路作成した日時、或いは目的地到着等の日時と共に過去経路として記憶する。意に反して経路が変更されたとき、或いは過去の経路を検討したいと思ったときにはそのデータを読出して表示し、必要に応じて過去経路に到達し、または過去経路の所定の地点に到達する経路を演算して提示できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両等を目的地に案内するナビゲーション装置に関し、特に過去に設定したことのある誘導経路を呼び出して使用するナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載する一般のナビゲーション装置においては、地図を描画するための地図データ及び施設等を検索するための施設情報データを記録したCD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体と、この地図・情報データ記憶媒体のデータを取り込むデータ取込装置と、地図等を表示するモニタと、GPS受信機及び走行距離センサやジャイロ等を用いた自立航法装置を用い、車両の現在位置及び進行方向の方位を検出する車両位置検出装置を有し、車両の現在位置を含む地図データを地図・情報データ記憶媒体から取り込み、この地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像をモニタの画面に描画すると共に、車両位置マークをモニタ画面に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロール表示し、或いは地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させ、車両が現在どこを走行しているのかを一目で分かるようにしている。
【0003】
CD−ROMやDVD−ROM、或いはハードディスク等の地図・情報データ記憶媒体に記憶されている地図データは、各種の縮尺レベルに応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られており、道路等は経度及び緯度で表現されたノードの座標集合として記憶されている。道路は2以上のノードの連結からなり、地図データは、道路リスト、ノードテーブル及び交差点構成ノードリスト等からなる道路レイヤ、及び地図画面上に道路、建築物、施設、公園及び河川等を表示するための背景レイヤ等の地図データと、市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名及び施設の名前等の、文字や地図記号等を表示するための情報データなどから構成される。
【0004】
また、このナビゲーション装置においては、利用者が所望の目的地或いは経由地(以下「目的地」と称する)に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるようにするための経路誘導機能を備えている。この経路誘導機能によれば、種々の手段により目的地を設定し、出発地から目的地まで、これらの地点を結ぶ経路のうち各種の条件を加味して複数の誘導経路を演算して提示するようになっている。また、利用者が選択した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上に誘導経路を他の経路とは色を変えて太く描画して画面表示したり、車両が誘導経路上の進路を変更すべき交差点に一定距離以内に近づいたときに、交差点を拡大表示し、進路を変更すべき方向を示す矢印等を描画して画面表示したり、音声で右左折の誘導を行うことで、利用者を目的地まで案内することができるようにしている。
【0005】
上記のようなナビゲーション装置においては、所定の誘導経路を走行中に運転者がその誘導経路を外れて他の道路を走行したときには、ナビゲーション装置では直ちに現在走行している道路を経由して先に設定した目的地に到達できる新しい誘導経路を提示し、その経路に沿って案内を行うことができるようになっている。
【0006】
また、VICS受信器を搭載し、渋滞情報や交通規制等種々の交通情報を取り込んで自動的に表示することができるようになっており、特に誘導経路走行中に渋滞に巻き込まれたとき、更には誘導経路上の走行方向前方に渋滞が発生したことを検出し、このまま走行するとその渋滞に巻き込まれることは明かであるたときには、利用者に対してその渋滞を迂回するルートを提示して、利用者がこれを選択したとき、或いは所定時間以上指示を行わなかったときにはこれを承諾したものとみなして、その誘導経路を表示し、その誘導経路に沿って案内することも行われている。
【0007】
そのようなナビゲーション装置において、前回探索された次候補経路を外れたこと、またはインターチェンジに接近したことを各検出部にて検出し、再探索が行い、再探索の結果を次候補経路として次候補経路記憶部に記憶し、次候補経路を搭乗者の要求により、または探索終了と同時に報知し、搭乗者の入力部からの選択指示があった時点で次候補経路を誘導経路として、以後の経路誘導を行うようにした技術は特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平7−129888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来のナビゲーション機能を備え、この車両が誘導経路に沿って走行しているときにおいて、渋滞に巻き込まれたとき、或いはVICS情報により走行方向前方に渋滞が発生したことを検出したとき、ナビゲーション装置が迂回路の演算を行い渋滞を迂回する誘導経路を表示し、「新しいルートを発見しました。選択してください。」とユーザーの選択、確認を促す音声を出力することとなる。それに対してユーザーは複数の迂回路が提示されているときにはそのいずれかを選択し、1つのみ提示されているときはその迂回路でよいか否かを選択し、何れの場合でも提示された迂回路を利用せずに現在の誘導経路に沿って走行するときはその旨の入力を行うこととなる。
【0009】
このように迂回路が提示されたとき、通常はユーザーが何らかの指示入力を行うものであるが、ユーザーが例えば複数の迂回路が提示され、且つ推奨迂回路が表示されているときには、特にユーザーからの指示がないときにはその推奨迂回路を選択するものとしてこれを確定し、また1つのみ提示されている迂回路については、特にユーザーから指示がないときにはその迂回路を選択するものとして、自動的にその迂回路を新たな誘導経路として確定するように設定し、ユーザーの便宜を図るようにしていることが多い。
【0010】
このナビゲーション装置を利用しているユーザーが、実際に渋滞に巻き込まれたとき、或いは経路上前方に渋滞が発生しこれを迂回した方がよいときに、前記のようなナビゲーション装置による迂回路の案内表示及び音声出力がなされた際には、ユーザーが提示された迂回路を見て、前記推奨迂回路を選択したくないとき、或いは提示された迂回路を利用せず現在の経路を走行したいと思ったときにおいて、自車両の直前に急な割り込みが入る等により運転に集中しなければならず、推奨された迂回路、或いは提示された全ての迂回路を利用したくないにも関わらず、その旨の選択入力を行うことができないことにより所定の時間が経過し、自動的に推奨経路或いは提示した1つの迂回路が確定してしまうことがある。
【0011】
その結果、先の誘導経路は画面から消えてしまい、新しい迂回路としての誘導経路が表示され、その誘導経路にしたがった案内が開始されてしまう。このような状態でユーザーは先の誘導経路に切り換えようとしても、従来走行したことのある経路等は別途のメモリに記録されていても、先の誘導経路において走行していない部分の経路は記録していない。特に、先の誘導経路走行中に迂回路を選択したときには、先の誘導経路について迂回路に分岐した地点から目的地迄の経路は削除されてしまうこととなり、実質的に先に用いた誘導経路データは削除されている。
【0012】
したがって、上記のように利用者の意に反した迂回路が選択されてその経路に沿った案内が開始されたときには、ユーザーは意に反した経路を走行するか、その迂回路を走行せずとりあえず道なりに走行し、迂回路を走行しないことにより新たな迂回路案内の提示を待つこととなる。しかしながら、ユーザーが最初に走行していた誘導経路に沿って走行したいと思っても、このときの状態では表示することができなくなっており、先の誘導経路を提示する何らかの対策が望まれる。
【0013】
一方、例えば図8(a)に示すように、道路L1上を太線で示される誘導経路U1に沿って走行している車両が、同図(b)に拡大図で示すように、A1の位置からA2の位置で交差点C1を通り過ぎ、この交差点C1の前方左側にあるコンビニの駐車場Pで左折して入りA3の位置で駐車したとき、ナビゲーション装置は車両が誘導経路U1から外れて交差点C1を左折して、交差点C1から左方向に延びる道路L2を走行したものと誤った判断をすることがある。その際にはこのナビゲーション装置は、例えば図8(c)のように、車両が道路L2を走行しても先の目的地に到達できる誘導経路U2を作成して提示する。
【0014】
このとき、ユーザーが別の作業等で誘導経路変更の案内を見ず、また聞き逃してしまったときには、ナビゲーション装置は所定の時間後に複数の誘導経路の内の推奨経路を選択し、或いは単一の誘導経路を指示した時にはその経路を了承したものとしてこれを確定してしまうことがある。その後ユーザーがこの車に乗って、何も知らずに車両の案内に沿ってしばらく走行してしまったときに先の誘導経路とは異なることに気がつき、もとの経路に戻りたい、と思っても、どこから前の経路から分岐して現在地に走行してきたのかわからなくなる。特に見知らぬ土地の夜間の場合はこのようなことが起こりやすい。
【0015】
上記のような状態はユーザーが意識的に他の誘導経路に変更した後、もとの誘導経路が良かった、と思ったときも同様のことが生じる。また、ユーザーが現在の誘導経路と過去の誘導経路を比較したいと思ったときにも、過去の誘導経路の表示が望まれることもある。そのためこのようなときも、過去の誘導経路を提示する何らかの対策が望まれるとともに、過去の誘導経路に到達する経路が提示されることが望まれる。
【0016】
したがって本発明は、ユーザーの意に反した誘導経路が設定されてしまった場合において、またユーザーが必要に応じて過去の誘導経路を確認し、或いはこれを利用したいと思ったときに、容易に過去の誘導経路を提示し、また過去の誘導経路を利用した経路を提示可能にしたナビゲーション装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るナビゲーション装置は、前記課題を解決するため、目的地への誘導経路を作成する誘導経路作成部と、現在作動中の誘導経路を記憶する現在作動誘導経路記憶部と、現在作動誘導経路が変更したとき、及び目的地に到着したときに、現在まで用いていた誘導経路を記憶する過去走行誘導経路記憶部と、前記過去走行誘導経路を読み出して表示する誘導経路情報出力部とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る他のナビゲーション装置は、前記ナビゲーション装置において、前記過去走行誘導経路記憶部には、誘導経路を作成した日時、または変更した日時、或いは目的地に到着した日時と共に誘導経路を記憶することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他のナビゲーション装置は、前記ナビゲーション装置において、前記誘導経路作成部では、現在地から過去に走行した誘導経路上の地点に到達する誘導経路を作成することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る他のナビゲーション装置は、前記ナビゲーション装置において、前記誘導経路作成部では、現在地から過去に走行した誘導経路上の指定された地点に到達し、該地点から過去誘導経路を利用した最終目的地への誘導経路を作成することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る他のナビゲーション装置は、前記ナビゲーション装置において、前記誘導経路情報出力部では、現在の日時に近い順に複数の過去に走行した誘導経路のリストを表示出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記のように構成したので、誘導経路に沿って走行しているときにおいて、渋滞の迂回路が提示され、そのままでは意に反した迂回路が設定されてしまうときに、ユーザーが運転操作等のためそれを解除できずに、または誤操作により確定してしまったような場合、或いはナビゲーション装置の特性により単なる駐車にも関わらずユーザーが気がつかないうちに、ナビゲーション装置が別の道路を走行したものと誤った判断を行いその方向に基づく新たな誘導経路を作成して提示し確定してしまっている場合、或いは過去に通った誘導経路と比較し、また過去の誘導経路を走行したいと思った場合、或いはユーザーの意志により経路を変更した後、もとの誘導経路を走行したいと思った場合等の種々の場合において、過去の経路を容易に提示することができ、その経路の利用の検討、その経路へ到達する誘導経路の提示等を容易に行うことができるようになる。更に、経路探索において、いつどこで、どのような状態で経路変更がなされたかを容易に知ることができるようになるため、利用しているナビゲーション装置が誘導経路の変更作動を行う傾向や特徴等を容易に把握することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、過去の誘導経路を容易に提示して利用することができるようにするという課題を、目的地への誘導経路を作成する誘導経路作成部と、現在作動中の誘導経路を記憶する現在作動誘導経路記憶部と、現在作動誘導経路が変更したとき、及び目的地に到着したときに、現在まで用いていた誘導経路を記憶する過去走行誘導経路記憶部と、前記過去走行誘導経路を読み出して表示する誘導経路情報出力部とを備えることによって実現した。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明の実施例を適用したナビゲーション装置において、主として誘導経路を作成し、それに基づいて案内を行う誘導経路作成・案内処理部30を主として示した機能ブロック図である。図1に示すナビゲーション装置においては、従来のものと同様に、システム制御部10に各種の所定の機能を総合的に行うためのソフトウェアを記録したROM、そのソフトウェアを処理するためのCPU及びRAM等を備え、これと接続した各機能部の制御を行っている。図示のナビゲーション装置においては、このシステム制御部10に車両位置検出部13が接続し、GPS受信器11の位置データを入力し、更に必要に応じて車速センサや角度センサによる走行距離・方位検出部12からの車両の移動データを入力することによって、車両の現在位置を正確に検出している。
【0025】
また、VICS受信器を備えたVICS情報入力部14を備え、ビーコン、FM放送等からVICS情報を取り込んでいる。ナビゲーション装置においては特にこのVICS情報を取り込むことにより、自車の誘導経路上の走行方向前方に存在する渋滞を検出できるようにし、後述するようにこのナビゲーション装置では渋滞の検出時には直ちに迂回路の提示を行うことができるようにしている。
【0026】
指示信号入力部17においては、このナビゲーション装置での利用者によるリモコン等の指示信号を入力している。更に必要に応じて利用者の音声を認識する処理によって利用者の指示信号を入力する音声認識部16の信号も、この指示信号入力部17に入力している。
【0027】
またデータ取込部19においては、CD−ROM、DVD−ROM、或いはハードディスク等の地図・情報データ記録媒体18から必要な地図データ、施設情報等を取り込み、更にそのデータ記録媒体がハードディスクのように容易にデータの書き込みができるような場合には、外部から取り込んだデータや、他の機能部で処理したデータを後に読み取って利用することができるようにデータ入力も可能としている。特にこの地図・情報データ記録媒体18が大容量で書込みが可能のときには、後述するような過去に提示した誘導経路や走行した経路を多数記録しておき、これを利用することもできるようになる。
【0028】
ナビゲーション装置にはスピーカー22及びモニタ24を備え、音声出力部23からの音声、及び画像出力部25からの画像を表示している。したがってモニタ24には地図画面に誘導経路及び現在位置マーク等を重ねて表示し、本発明による過去に走行した経路の情報表示等を行うことができる。また、スピーカー22からは誘導経路に沿った案内のほか、迂回路を提示する案内等を出力することができる。
【0029】
誘導経路作成・案内処理部30には、主として誘導経路作成部40と誘導経路記憶部45、及び特に誘導経路作成部40に対して信号を入出力する各種機能部を備えている。誘導経路作成部40は、車両位置検出部13から取り込んだ現在位置31、及び各種入力手法によって入力した目的地32、更には必要に応じて経由地のデータを入力し、誘導経路を演算して作成する。
【0030】
作成した誘導経路はモニタ24に表示し、ユーザーによる選択・確定を待って最終的な誘導経路が決定する。その誘導経路は誘導経路記憶部45における現在作動誘導経路記憶部46に記憶され、誘導経路案内処理部49では車両がこの誘導経路に沿って安全に走行できるように案内を行う処理をし、誘導経路情報出力部37からこれをモニタ24及びスピーカー22に対して出力する。なお、この誘導経路の走行が終了したときには、この誘導経路を過去走行誘導経路記憶部47に記録する。そのデータには作成及び変更がなされた日時データ48も記憶しておく。なお、ここに記憶する日時データは必要に応じて年月も含めて記憶する。
【0031】
特に本発明においては、現在作動誘導経路記憶部46のデータが変更されるとき、それを過去走行誘導経路記憶部47に作成・変更日時データ48と共に記憶する。この過去走行誘導経路記憶部47のデータは、過去走行経路表示指示入力部35からの利用者等の指示により、過去走行誘導経路出力部50から、例えば最近の5つの誘導経路、或いは現在走行している地域における最近の3つの誘導経路等、適宜の範囲のデータを出力し、そのデータの作成日時と共にモニタ24に表示可能とする。その際には必要に応じて地図上における誘導経路を変更した地点にこれを表示しても良い。
【0032】
また、過去走行誘導経路記憶部47のデータは、その後過去走行経路使用指示入力部36からの利用者の指示等により、車両の現在位置から指示された過去の経路への誘導経路を作成するためにも使用する。その際にはナビゲーション装置が適切と思われる過去の経路への誘導経路を複数提示するほか、ユーザーが過去の経路を見て、適切と思われる地点を選択指示して目的地や経由地に設定する際には、過去走行経路上地点選択部38から利用者の選択指示を入力する。
【0033】
誘導経路作成部40にはVICS情報入力部14からのVICSデータ33も入力し、誘導経路上に渋滞が発生したことを検出したときに自動的に、或いは迂回路作成指示入力部34からユーザーが迂回路の提示指示を入力したとき等において、迂回路作成部41が迂回路を必要に応じて複数演算し作成する。また、迂回路作成指示入力部34では、複数の経路の中から適切と思われるものの選択、或いは迂回路を利用しない旨の入力もなされる。
【0034】
上記のような機能ブロックから構成される本発明において、誘導経路作成案内処理は例えば図2の作動フローにしたがって作動させることができる。図2に示す誘導経路作成案内処理においては最初目的地を入力し(ステップS1)、ナビゲーション装置の現在位置検出器データを用いて現在地から目的地への誘導経路を作成する(ステップS2)。その際複数の誘導経路が作成され指示されたときには、ユーザーがその内の一つを選択して確認し、1つの経路だけのときにはその確認を行う(ステップS3)。次いで上記のようにして確認した誘導経路を確定し、そのデータを記憶する(ステップS4)。このときは図1における誘導経路記憶部45における現在作動誘導経路記憶部46に記憶しておく。
【0035】
その後車両の走行と共に経路の案内処理を行い(ステップS5)、次いで経路変更がなされるか否かを判別する(ステップS6)。即ち、ここでは車両の走行に伴って、VICSデータ等により車両走行方向前方の誘導経路上に渋滞が発生したことを検出したとき、或いは実際に渋滞に巻き込まれたとき、更にはユーザーの指示によって現在の誘導経路とは異なる経路によって渋滞を迂回し、或いは他の経路を走行することを希望する等により、新たな誘導経路の作成によって経路変更がされる状態になったときはステップS7に進み、現在の誘導経路を過去走行誘導経路記憶部に記憶する。その際には図1の誘導経路記憶部45において、現在作動誘導経路記憶部46に記憶されていたデータを、その誘導経路の作成或いは変更した日時とともに過去走行誘導経路記憶部47に記憶することにより行われる。このとき、実際に走行した部分とその後の変更により走行しなくなった部分とを識別可能に表示できるように記憶しておくことが好ましい。
【0036】
その後誘導経路を変更し、新たな経路に沿った案内処理を行う(ステップS8)。次いで、前記ステップS6において経路変更がされないと判別したときと共にステップS9に進み、自車位置近辺の過去走行した経路の表示指示があるか否かの判別を行う。ここでユーザーが先の経路変更は意図するものでなかった等の理由により、自車位置近辺の過去に走行した経路の表示指示を行ったときには、メモリから自車位置近辺の過去の経路データを読み出して表示する(ステップS10)。
【0037】
このときには例えば図4のような作動がなされる。即ち、図4には前記図8(b)に示すように交差点に隣接するコンビニの駐車場に入った結果、ナビゲーション装置の誤判断により図8(c)のような誘導経路が確定してしまい、それを知らずにその誘導経路にしたがって進んでしまったときの状態を図4(a)に示している。なお、同図において、車両の進行方向をモニタの上側に向ける表示を行った例を示している。
【0038】
図4(a)の状態から、ユーザーが先の経路とは異なることを気づいて路傍に停車し、過去の経路の表示指示を行うと、図2のステップS9において自車位置近辺の過去走行した経路の表示指示があるか否かの判別において指示があったと判別することとなる。その結果、図4に示す例では過去の経路が図中破線のように示される。
【0039】
また図4の例では新しい経路が分岐した交差点C1の地点近傍に変更した日時を表示した例を示している。その表示に際しては、例えば後述する図5(c)に示すように、該当する複数の過去の経路を地図上に色を異ならせて表示し、各色の経路についての説明をリスト表示してこれをリモコン等で選択できるようにしても良い。この作動が図2の前記ステップS10における、メモリから自車位置近辺の過去の経路データを読み出して表示する作動となる。
【0040】
図2のステップS11でユーザーが特定の過去の経路の地図表示を指示したか否かを判別するに際して、ユーザーが図4(b)、図5(c)のような過去経路の表示を見て、過去の経路を利用したいと思ったときにはその旨の選択指示を行う。その時には図2のステップS12に進んで、図3に示すような過去の経路を利用した経路案内処理を行う。また、ステップS11において特定の過去の経路の地図表示を指示しないと判別したときには、ユーザーは過去の経路データを利用せず、変更された誘導経路を利用すると判断し、前記ステップS9において自車位置近辺の過去走行した経路の表示指示がなかったときと共に前記ステップS6に戻って、経路変更がされるか否かの判別を行い、前記作動を繰り返す。
【0041】
図2のステップS12における過去の経路を利用した経路案内処理に際しては、図4(b)に示すように選択した過去の経路のみを、変更された現在の経路に重ねて表示する(ステップS21)。次いで図3に示す例においては、選択した以前の経路上の地点を目的地に指定したか否かを判別している(ステップS22)。即ち、表示された過去の経路を利用するに際して、後述する図6、7に示す例のように、ユーザーが過去の経路上の特定の地点を指定したときにはステップS24に進み、現在地から指定した地点への誘導経路を作成する。なお、ここでの誘導経路の作成に際しては、指定した地点に到達した後には過去の誘導経路を利用して最終目的地に走行する経路を作成することもできる。
【0042】
それに対してステップS22において、選択した以前の経路上の特定の地点を経由地或いは目的地に設定することなく過去の誘導経路を利用する指示がなされたときには、現在地から過去の経路上のいずれかの地点に至る走行コストの小さな、適切な誘導経路を作成する。その作成に際しては、過去の経路における多数の地点について、適切と思われる複数の経路を演算し、これを提示することにより行うことができる。その後前記ステップS24で現在地から指定した地点への誘導経路が作成されたときと共にステップS25に進んで経路の確認を行い、作成した誘導経路に沿った経路案内処理を行う(ステップS26)。
【0043】
このときには例えば図4(b)に示すような過去経路U1とその分岐点の交差点C1、及び経路変更時刻等を見て、これが先の誘導経路であることを確認し、この過去経路を利用する入力を行うことにより、同図(c)のような過去経路に至る誘導経路U3が作成されて表示され、その確定によって経路が案内され、前記分岐交差点C1を経て、先の経路U1の目的地に向けた経路に沿って案内されることとなる。
【0044】
前記のような本発明は、更に図5に示す様な作動を行うことができる。即ち図5に示す例においては、前記図8(a)と同様の道路を走行していた状態を示し、そのとき図5(b)に示すように前方に渋滞Zが発生したことをナビゲーション装置が検出し、それに対応するためナビゲーション装置が迂回路U2を提示し、この迂回路を利用することを推奨する旨の表示を行うことがある。このとき、運転者がこれを望まないにも関わらず緊急の運転のために対応することができず、所定の時間が経過してこの迂回路が確定してしまったとき、ユーザーがその後運転が安定し、過去の経路の表示指示を行うと、同図(c)のように、この近辺における最近の経路である先の誘導経路を先頭に、複数の経路を地図上に色を異ならせる等により分かり易く表示すると共に、各色で示された過去の経路について、その経路がいつ作成されたか、或いはいつ変更されたかをリスト表示する。
【0045】
このような表示により、現在の日時と比較して図中2分前の経路も表示され、ユーザーはこれが迂回路が確定する前の経路であることがわかる。このとき、当初の誘導経路では渋滞Zに一時的に巻き込まれるものの、途中で立ち寄りたい郵便局を通る道を選択したいと思っているときには、この程度の渋滞なら先の誘導経路の方がよい、として過去の誘導経路を選択して確定することとなる。このときは同図(d)のように、先に利用していた誘導経路が確定する。このように、本発明においては。ユーザーの意図に反して経路が変更され、先の経路がわからないときでもそのデータが記録されているので、容易にこれを呼び出して利用することができるようになる。
【0046】
更に本発明は図6〜図7のような作動も行うことができる。即ち図6(a)において、出発地点Sから目的地Gの東京に誘導経路U4に沿って走行し、地点Pに至ったとき突然成田空港に送迎のため向かうように指示があったとき、以前に出発地から成田空港に立ち寄って東京に向かったことがあることに気がつき、ナビゲーション装置の前記機能によって過去の経路呼び出しを行い、現在地近傍の過去経路を呼び出すことにより、以前走行した成田空港Nに立ち寄った経路を前記のようにして検索し、その経路を同図(b)の過去経路U5のように表示することができる。
【0047】
この状態でユーザーは成田空港Nの位置を容易に知ることができ、この地点を目的地に変更することができ、或いはこの地点を経由地に設定し、以前走行した経路において成田空港Nから最終目的地Gの東京への一連の走行経路を得ることができる。その際には、例えば図7(a)に示すように現在地Pから成田空港Nへの誘導経路の演算を行って経路U5をが得られ、図7(b)のようなU4、U6、U5の経路に沿って順に走行して最終目的地Gに容易に到達することができる。
【0048】
前記のように、過去に走行した経路上の地点を選択し、これを利用する際には、図1における過去走行経路使用指示入力部36からのユーザーの指示入力により過去走行経路を表示させ、過去走行経路上地点選択部38で選択を行った地点を用いて、誘導経路作成部40における過去走行誘導経路上選択地点到達用誘導経路作成部43が誘導経路を作成することにより行うことができる。
【0049】
上記のように本発明は、現在走行している誘導経路が変更されたとき、先の誘導経路と変更した地点及びその日時を記憶しておくことにより、意に反した迂回路等の経路変更が行われたとき、先の経路を呼び出して確認を行い、その経路に戻る操作を容易に行うことができ、また、誘導経路を走行中に過去の経路を用いた経由地や目的地の設定、或いはその過去の経路への誘導経路を容易に得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の機能を実施する機能部を中心に示したナビゲーション装置の機能ブロック図である。
【図2】同実施例において誘導経路の作成案内処理を行う作動フロー図である。
【図3】同誘導経路の作成案内処理において、過去の経路を利用した経路案内処理を行う作動フローである。
【図4】本発明の実施例において、意に反して誘導経路が変更された時の本発明の作動態様を示す図である。
【図5】本発明の実施例において、意に反した迂回路が設定された時の本発明の作動態様を示す図である。
【図6】本発明の実施例において、過去に走行して経路を呼び出して利用する作動態様を示す図である。
【図7】同作動態様の続きを示す説明図である。
【図8】従来のユーザーの意に反した誘導経路の設定の問題点を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
30 誘導経路作成・案内処理部
31 現在位置
32 目的地
33 VICSデータ
34 迂回路作成指示入力部
35 過去走行経路表示指示入力部
36 過去走行経路使用指示入力部
37 誘導経路情報出力部
38 過去走行経路上地点選択部
40 誘導経路作成部
41 迂回路作成部
42 過去走行経路使用誘導経路作成部
43 過去走行誘導経路上選択地点到達用誘導経路作成部
45 誘導経路記憶部
46 現在作動誘導経路記憶部
47 過去走行誘導経路記憶部
48 作成・変更日時記憶部
49 誘導経路案内処理部
50 過去走行誘導経路表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地への誘導経路を作成する誘導経路作成部と、
現在作動中の誘導経路を記憶する現在作動誘導経路記憶部と、
現在作動誘導経路が変更したとき、及び目的地に到着したときに、現在まで作動していた誘導経路を記憶する過去走行誘導経路記憶部と、
前記過去走行誘導経路を読み出して表示する誘導経路情報出力部とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記過去走行誘導経路記憶部には、誘導経路を作成した日時、または変更した日時、或いは目的地に到着した日時と共に誘導経路を記憶することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記誘導経路作成部では、現在地から過去に走行した誘導経路上の地点に到達する誘導経路を作成することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記誘導経路作成部では、現在地から過去に走行した誘導経路上の指定された地点に到達し、該地点から過去誘導経路を利用した最終目的地への誘導経路を作成することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記誘導経路情報出力部では、現在の日時に近い順に複数の過去に走行した誘導経路のリストを表示出力することを特徴とする請求項2記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−145103(P2008−145103A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328871(P2006−328871)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】