説明

ナビゲーション装置

【課題】ナビゲーション装置において、進行方向と地磁気センサの向きとのズレを補正して精度良く位置を求める。
【解決手段】GPS部11および磁気センサ12による計測結果に基づいて進行方向φと磁気センサ12が向いている方位θとの差分を求め、該求めた差分によって磁気センサ12により求めた方位θの補正を行う方位補正部101と、補正後の方位θ’とGPS部11による過去の計測結果である位置PGPSおよび速度Vとに基づいて現在の位置PMAGを算出する位置算出部102と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置の案内を行うナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の位置を計測し走行案内を行うナビゲーション装置には、車内に配線等を行って設置する据え置き型のものと、PND(Personal Navigation Device)と呼ばれる持ち運び自在の携帯型のものとがある。近年、据え置き型のナビゲーション装置(例えば、特許文献1参照)では、GPS信号に基づき取得される位置情報の他、内蔵するジャイロセンサまたは地磁気センサより得られる方位や車両が備える車速計より得られる車速の情報も併用することによって、車両の現在位置を高精度に求める機能を搭載したものが実用化されている。このような機能は、特に、GPS信号が取得できないか、又はGPS信号の精度が良くない場合に有用となる。
【0003】
一方、携帯型のナビゲーション装置では、車速の情報を車両の計器盤等の内部に設置された車速計から得ることが簡単でないため、GPS信号が取得できない等の場合のための補助的手段として、従来、内蔵する加速度センサを用いて計測した加速度を積分することにより位置を求めるという方法が採用されている。しかし、加速度センサは車両に加えられた加速度と車両の傾きとを区別できないことから、この方法には計測される車速や位置の精度が劣るという欠点がある。
【特許文献1】特開平9−42979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、携帯型のナビゲーション装置においても、据え置き型と同様に地磁気センサによって方位の情報を取得することが考えられる。しかしながら、携帯型のナビゲーション装置は、持ち運びが可能であるが故、ナビゲーション装置を車内に持ち込んで設置した際の地磁気センサの向き(地磁気センサが示す方位)と車両の進行方向(車両の正面方向)とがどれくらいの角度差を有しているかが不定であり、そのため、地磁気センサの出力からは進行方向がどちらの方位を向いているかを正しく知ることができず、GPS信号が取得できない等の場合に位置の計測に誤差が生じてしまうことが問題となる。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、進行方向と地磁気センサの向きとのズレを補正して精度良く位置を求めることが可能なナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、現在位置を求め位置案内を行うナビゲーション装置において、GPSにより位置を求めるとともに該求めた複数の位置から進行方向および移動速度を求める第1の計測手段と、磁気センサを用いて地磁気を測定し、該磁気センサが向いている方位を求める第2の計測手段と、前記第1および第2の計測手段による計測結果に基づいて前記進行方向と前記磁気センサが向いている方位との差分を求め、該求めた差分によって前記第2の計測手段により求めた方位の補正を行う方位補正手段と、前記補正後の方位と前記第1の計測手段による過去の計測結果である位置および移動速度とに基づいて現在の位置を算出する位置算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、磁気センサの示す方位とGPSから求まる進行方向との差分を計算し、その差分に基づいて磁気センサの示す方位を補正するようにしたので、磁気センサを用いて進行方向がどちらの方位であるかを正確に求めることができる。これにより、GPS信号が取得できない等の場合であっても、GPSで取得済みの位置および移動速度の情報と磁気センサで取得する補正後の方位の情報とを利用して、現在位置を精度良く求めることが可能となる。なお、ここでの現在位置の算出においては、移動速度は一定であることを前提としているものとする。
【0008】
また、本発明は、上記のナビゲーション装置において、前記第1の計測手段により求めた位置および移動速度を記憶する記憶手段を備え、前記位置算出手段は、前記第1の計測手段により現在の位置を求めることができない場合に、前記方位補正手段によって補正された方位と前記記憶手段に記憶されている位置および移動速度とに基づいて現在の位置を算出することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、GPS信号が取得できない等の場合に、現在位置を精度良く求めることが可能である。
【0010】
また、本発明は、上記のナビゲーション装置において、前記第1の計測手段による計測結果の精度を判定する精度判定手段を備え、前記方位補正手段は、前記精度判定手段により精度が所定の良好な範囲内であると判定された場合の計測結果のみを用いて前記差分を求めることを特徴とする。
【0011】
この発明において、GPSによる計測結果の精度が良好であればその計測結果(進行方向)を前記差分の計算に算入し、精度が良好でない場合の計測結果は差分の計算に算入しないようにした。通常、GPSによる計測結果は、その計測状況、例えば移動速度や受信しているGPS信号の数などによって精度に差が出る。したがって、精度が良好な場合にのみ計測結果を差分の計算に算入するようにすることで、磁気センサの示す方位の補正を信頼性あるものにすることができる。
【0012】
また、本発明は、上記のナビゲーション装置において、前記精度判定手段は、前記第1の計測手段により求めた移動速度が所定値以上である場合に精度が良好であると判定することを特徴とする。
【0013】
この発明において、移動速度が遅い場合(極端な場合として、止まっている場合)はGPSによる位置の計測誤差にともなって進行方向の計測結果が大きくばらつくのに対し、移動速度が速い場合はGPSによる位置の計測誤差の影響が相対的に薄まり、進行方向の計測結果の精度が良くなることを考慮し、移動速度が速い場合に精度が良好であると判定して、計測結果を差分の計算に算入するようにした。したがって、磁気センサの示す方位の補正を信頼性あるものにすることができる。
【0014】
また、本発明は、上記のナビゲーション装置において、前記方位補正手段は、前記第1および第2の計測手段による計測結果を時間的に平均して前記差分を求めることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、差分を計算する際に時間平均を行うようにしたので、例えばナビゲーション装置が経時的に動いてしまったり磁気センサの出力が外乱(建造物等が発する地磁気以外の磁気)の影響で揺らいでしまったりする場合にも、磁気センサの示す方位の補正を信頼性あるものにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁気センサを用いて進行方向がどちらの方位であるかを正しく求めることができるので、GPS信号が取得できない等の場合であっても、現在位置を精度良く求めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるナビゲーション装置1の構成図である。ナビゲーション装置1は、CPU10と、GPS部11と、磁気センサ12と、メモリ13と、外部記憶装置14と、通信部15と、表示装置16と、音声出力装置17と、を含んで構成される。ナビゲーション装置1のこれら各部は一つの筐体内に収容されており、ナビゲーション装置1が携帯可能になっている。本実施形態では、ナビゲーション装置1が車両内に持ち込まれて使用され、車両の位置案内を行う状況を想定するものとする。この状況において、ナビゲーション装置1が設置される向きは、内蔵する磁気センサ12の出力が示す方位と車両の正面方向(車両の進行方向)とが一般には一致するようにはなっておらず、ユーザによる設置の仕方によって、磁気センサ12から得られる方位が進行方向に対して任意の角度分だけズレを有するようになっている。
【0018】
CPU(中央処理装置)10は、メモリ13に格納されたプログラムを読み込み、該読み込んだプログラムに従って、ナビゲーション装置1の各部を統括し制御するとともに、磁気センサ12から取得された方位を補正して進行方向を求め現在位置を算出する後述(図2,図3)の演算処理や、ユーザに現在位置を案内するナビゲーション機能を実現する情報処理を実行する。
【0019】
GPS部11は、GPS(全地球測位システム)方式によって車両の位置(緯度経度)を測位するとともに、測位された最新の位置とその直前の位置とに基づいて車両の速度および進行方向を算出し、得られた位置、速度、進行方向を表す各情報をCPU10へ出力する。GPS方式では、GPS衛星からのGPS信号を受信し、該GPS信号を受信した受信時刻のデータを用いた演算処理によって、位置を測位する。測位を行う際に用いるGPS信号の数は、車両の位置から全天を臨んだ範囲内にいくつのGPS衛星が存在しているかに依存する。例えば、周囲に高い障害物がないような場所では複数のGPS信号を捉えることができるが、都市部などビルが多い場所では1つのGPS信号しか捉えられない場合もある。測位する位置の精度は、受信できたGPS信号の数によって決まり、GPS部11はDOP(Dilution of Precision;精度劣化係数)と呼ばれるGPS信号の数に基づく精度情報を生成し、上記位置等の情報と併せてこの精度情報もCPU10へ出力する。
【0020】
磁気センサ12は、地磁気を測定し、磁気センサ12に定められた所定の基準軸が向けられている方位を算出してその方位を表す方位情報をCPU10へ出力する。磁気センサ12としては、異なる二方向(通常は互いに直角な二方向)の磁気成分を検出する2軸磁気センサ、または異なる三方向(通常は互いに直角な三方向)の磁気成分を検出する3軸磁気センサ、のいずれかを用いるものとする。例えば2軸磁気センサの場合には、磁気の大きさを検出する2つの素子(磁気抵抗素子)が異なる二方向を向いて配置されており、それぞれの素子が検出する地磁気の大きさに基づいて方位を算出する。ここで、上記所定の基準軸は一般に車両の正面方向を向いていない(ユーザによるナビゲーション装置1の置き方は任意である)ため、上述したように磁気センサ12からCPU10へ出力される方位は車両の進行方向とは異なっている。
【0021】
メモリ13は、ROM(読出し専用メモリ)とRAM(随時書込み読出しメモリ)からなる。ROMには、CPU10で実行されるプログラムが記憶されている。RAMは、プログラム実行時に一時データを記憶する記憶領域として使用される。
外部記憶装置14は、例えばハードディスクドライブなどの大容量記憶装置であり、ナビゲーションに必要な地図情報等を記憶している。
通信部15は、例えば無線通信等によってインターネットと接続し、最新の地図情報等をインターネットを介して取得する。
【0022】
表示装置16は、ナビゲーション機能による走行案内を、例えば地図上に車両の現在位置と方位が分かるような形でグラフィカルに表示する。
音声出力装置17は、必要なタイミングで例えば交差点を曲がる等の音声案内用の音声を発生してスピーカから音声案内を行う。
【0023】
次に、ナビゲーション装置1が磁気センサ12からの方位を補正して進行方向を求め現在位置を算出する処理について説明する。図2は、ナビゲーション装置1の当該処理にかかる機能ブロックを示す図であり、当該処理は、方位補正部101と、位置算出部102と、精度判定部103とによって実現される。なお、これら各部の機能は、前述したように、メモリ13に格納されたプログラムをCPU10が読み出して実行することにより実現される。
【0024】
方位補正部101へは、GPS部11からある時刻Tにおける車両の進行方向φ(T)が入力されるとともに、磁気センサ12から同じある時刻Tにおける基準軸の示す方位θ(T)が入力される。進行方向φと方位θの入力は、所定の時間間隔ΔT(例えばΔT=1秒)で逐次行われる。また、精度判定部103へは、時刻TでGPS部11によって測位された位置の精度を示す精度情報がGPS部11から入力される。
【0025】
方位補正部101は、上記の入力されたデータのうち、精度判定部103によりGPS部11の計測精度が十分に良好であると判定されたデータを順次保持していき、保持する進行方向φと方位θの差分δ(T)=θ(T)−φ(T)を計算する。差分δ(T)は、時刻Tにおいて磁気センサ12から得られる方位θが車両の進行方向φからどれだけずれているかを表している。方位補正部101は、この差分δ(T)を用いて、現在(時刻t)の磁気センサ12からの方位θ(t)を次式
θ’(t)=θ(t)−δ(T)
に従って補正し、補正後の方位θ’(t)を位置算出部102へ出力する。
【0026】
ここで、方位補正部101は、複数の時刻T,T+ΔT,T+2ΔT,…における各差分δ(T),δ(T+ΔT),δ(T+2ΔT),…の平均値δaveを用いて、方位θを次式
θ’(t)=θ(t)−δave ……(*)
のように補正してもよい。こうすると、例えばナビゲーション装置1が経時的に車内で動いてしまったり、磁気センサの出力が外乱の影響で揺らいでしまったりする場合に、正しく方位θを補正することができる。
【0027】
このようにして、方位補正部101は、現在の磁気センサ12の出力である方位θ(t)を既に計算済みの差分δ(T)またはδaveで補正する。この補正により得られた方位θ’(t)は、車両の進行方向を表している。したがって、方位補正部101は現在の磁気センサ12の出力θ(t)から現在の車両の進行方向を求めていることになる。これにより、GPS部11においてGPS信号が取得できない場合や、GPS信号の精度が良くない場合にも、磁気センサ12の出力を用いて車両の正しい現在の進行方向を知ることができる。
【0028】
位置算出部102へは、方位補正部101から上記補正後の方位θ’(t)が入力されるとともに、GPS部11から車両の位置PGPSと速度Vとが逐次入力される。位置算出部102は、入力された位置PGPSおよび速度Vの最新の値を保持するとともに、GPS信号が取得できている間は保持する位置PGPSをナビゲーションソフト(CPU10)への出力とし、GPS信号が取得できなくなった場合(例えば車両がトンネルに入った場合など)は、保持する最新の位置PGPSおよび速度Vと方位補正部101から入力される現在の進行方向(補正後の方位)θ’(t)とに基づいて車両の現在の位置PMAGを算出(算出式は後述する)し、これをナビゲーションソフト(CPU10)への出力とする。
【0029】
位置PMAGは、GPS信号が取得できない間、現在のθ’(t)の値を用いて逐次更新されていく(位置PMAGの算出において、位置PGPSおよび速度Vは直前の保持された値が固定的に用いられる)。このようにして、GPS信号が取得できない間であっても、磁気センサ12の出力から導出される方位θ’(t)を用いて車両の現在位置を求めることができる。
【0030】
精度判定部103は、GPS部11による計測の精度が十分に良好であるか否かを判定し、その結果を方位補正部101へ通知する。上述したように、精度が十分に良好であると判定された場合にのみ、GPS部11で測定された進行方向φと磁気センサ12で測定された方位θとが方位補正部101により保持されるが、この保持される進行方向φは精度が十分に良好なもののみであることとなる。これにより、方位補正部101が差分δを良好な精度で計算することができるようになる。したがって、精度判定部103によりGPS部11の計測精度を判定することで、方位θの補正および最終的には位置PMAGの算出を精度良く行なうことが可能となる。
【0031】
精度判定部103が精度の判定に用いる精度情報として、例えば、GPS部11から得られる速度Vや上述したDOPが利用可能である。GPSによる位置の計測には一般に所定の大きさの誤差をともなうが、進行方向φは誤差を含んで測位された2地点の位置の差として算出されるので、速度が遅い場合は進行方向φの算出結果に位置の計測誤差の影響が大きく出るのに対し、速度が速い場合はその影響が相対的に薄まって進行方向φの精度が良くなる。そこで、精度判定部103は、速度Vが所定値以上である場合に、GPS部11による計測の精度が十分に良好であると判定するものとする。また、精度情報にDOPを利用するときは、受信しているGPS信号の数が所定値以上であればGPS部11による計測の精度が十分に良好であると判定するものとする。
【0032】
次に、ナビゲーション装置1の動作の具体例を説明する。図3は、ナビゲーション装置1の動作例を示すフローチャートである。以下の説明において、配列Aは進行方向φと方位θの差分δを所定数(即ち所定時間分)格納するためのメモリ13に記憶される配列であり、所定数は例えば10個とする。
【0033】
まず、処理の準備としてCPU10は配列Aをクリアする(ステップS1)。CPU10は、GPS部11から車両の位置PGPSと速度Vと進行方向φとを取得し、磁気センサ12から方位θを取得する(ステップS2)。ここで、GPS部11からは、GPS信号を受信できている時は緯度と経度を示すデータが位置PGPSとして出力され、GPS信号を受信できない時は位置が不定であることを示すデータが位置PGPSとして出力されるものとする。CPU10は、上記取得した位置PGPSが位置不定であることを示すデータであるか否かを判断し(ステップS3)、位置PGPSが緯度と経度を示すデータである場合はステップS4へ、位置不定であることを示すデータである場合はステップS8へ、それぞれ処理を進める。
【0034】
さて、位置PGPSが緯度と経度を示すデータである場合、即ち、GPS信号が受信できている時の処理は次のとおりである。精度判定部103(CPU10)は、ステップS2で取得された速度Vに基づいて、GPS部11から取得したデータの精度が十分に良好であるか否かを判定する(ステップS4)。精度が十分に良好であると判定された場合、その旨が精度判定部103から方位補正部101へ通知され、方位補正部101(CPU10)は、ステップS2で取得された進行方向φと方位θの差分δ=θ−φを計算し、得られた差分δの値を配列Aに追加する(ステップS5)。これにより、GPS信号が受信できている間に、磁気センサ12の示す方位θと車両の進行方向φとのズレを表す差分δの値が配列Aに順次格納されていく。
【0035】
次いで、位置算出部102(CPU10)は、ステップS2で取得された位置PGPSの緯度成分をPN、経度成分をPEとして保持し、また、同じくステップS2で取得された速度Vを保持する(ステップS6)。ステップS4でGPS部11からのデータの精度が十分に良好でないと判定された場合も、このステップS6が実行され位置算出部102は同様にデータを保持する。これにより、GPS信号が受信できている時の最新の車両の位置PGPS(PN,PE)と速度Vとが保持されることになる。なお、これらのデータと配列Aは、GPS信号が受信できない時の車両の位置PMAGの算出(次に説明する)のために使用される(ステップS4〜ステップS6はそのための処理である)。
【0036】
そして最後に、位置算出部102は、GPS信号が受信できている時の車両の現在位置として、ステップS2で取得された位置PGPSをナビゲーションソフトへ出力する(ステップS7)。その後所定時間(例えば1秒)待機してから、再びステップS2からの処理が繰り返される。
【0037】
一方、位置PGPSが位置不定であることを示すデータである場合、即ち、GPS信号が受信できない時の処理は次のとおりである。車両がトンネルに入った場合などは、こちらの処理が実行されることになる。ステップS2〜ステップS3が実行された後、方位補正部101は、ステップS5で差分δの値が格納された配列A内の各差分δ(異なる時刻に対応する複数の差分δ)の平均δaveを計算し(ステップS8)、この平均値δaveを用いて、ステップS2で取得された磁気センサ12からの方位θを上述の式(*)に従って補正する(ステップS9)。補正後の方位θ’は位置算出部102へ出力され、位置算出部102は、次のステップS10〜ステップS11により車両の現在の位置を算出する。
【0038】
即ち、位置算出部102は、GPS信号が受信できている間に実行したステップS6で保持された速度Vと、上記ステップS9で補正された方位θ’(車両の進行方向を表す)とから、次式に従って車両の現在の速度の緯度方向成分VNおよび経度方向成分VEを計算する(ステップS10)。ここで、車両の速度Vの大きさは一定であることを仮定している。
VN=V×cosθ’
VE=V×sinθ’
【0039】
更に、位置算出部102は、GPS信号が受信できている間に実行したステップS6で保持された車両の位置PN,PEと上記求めた車両の速度VN,VEとから、次式に従って車両の現在の位置の緯度成分PNおよび経度成分PEを計算する(ステップS11)。
PN=PN+sin−1[(VN×Δt)/R]
PE=PE+sin−1[(VE×Δt)/{R×cos(PN)}]
但し、ここでΔtは前回ステップS11を実行してから(初回の場合はステップS7を実行してから)現在までの経過時間であり、Rは地球の半径である。また、2回目以降にステップS11を実行する際は、上記車両の位置PN,PEとして次のステップS12で保持された値を用いるものとする。
【0040】
次いで、位置算出部102は、上記算出した緯度成分PNと経度成分PEをそれぞれPN,PEとして保持する(ステップS12)。
そして最後に、位置算出部102は、GPS信号が受信できない時の車両の現在位置として、位置PMAG=(PN,PE)をナビゲーションソフトへ出力する(ステップS13)。その後所定時間(例えば1秒)待機してから、再びステップS2からの処理が繰り返される。
【0041】
このようにして、GPS信号が受信できている時は、GPS部11から取得された位置PGPSが(そのまま)ナビゲーションソフトへ出力され、GPS信号が受信できない時には、磁気センサ12から取得される方位θを車両の進行方向との差分δで補正することにより求めた方位θ’に基づいて、車両の位置PMAGが算出され、この位置PMAGがナビゲーションソフトへ出力される。したがって、トンネル内などGPS信号が受信できない状況下においても、現在位置を精度良く求めることが可能となる。
【0042】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本発明は携帯型のナビゲーション装置に用いて好適であるが、据え置き型のナビゲーション装置にも同様に適用可能である。また、上記実施形態において、車両とは自動車、自動二輪車、自転車等を含むものであるとする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成図である。
【図2】ナビゲーション装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】ナビゲーション装置の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10…CPU 11…GPS部 12…磁気センサ 13…メモリ 14…外部記憶装置 15…通信部 16…表示装置 17…音声出力装置 101…方位補正部 102…位置算出部 103…精度判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を求め位置案内を行うナビゲーション装置において、
GPSにより位置を求めるとともに該求めた異なる時刻における複数の位置から進行方向および移動速度を求める第1の計測手段と、
磁気センサを用いて地磁気を測定し、該磁気センサが向いている方位を求める第2の計測手段と、
前記第1および第2の計測手段による計測結果に基づいて前記進行方向と前記磁気センサが向いている方位との差分を求め、該求めた差分によって前記第2の計測手段により求めた方位の補正を行う方位補正手段と、
前記方位補正手段によって補正された方位と前記第1の計測手段による過去の計測結果である位置および移動速度とに基づいて現在の位置を算出する位置算出手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記第1の計測手段により求めた位置および移動速度を記憶する記憶手段を備え、
前記位置算出手段は、前記第1の計測手段により現在の位置を求めることができない場合に、前記方位補正手段によって補正された方位と前記記憶手段に記憶されている位置および移動速度とに基づいて現在の位置を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記第1の計測手段による計測結果の精度を判定する精度判定手段を備え、
前記方位補正手段は、前記精度判定手段により精度が所定の良好な範囲内であると判定された場合の計測結果のみを用いて前記差分を求める
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記精度判定手段は、前記第1の計測手段により求めた移動速度が所定値以上である場合に精度が良好であると判定することを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記方位補正手段は、前記第1および第2の計測手段による計測結果を時間的に平均して前記差分を求めることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1の項に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−75005(P2009−75005A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245793(P2007−245793)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】