説明

ニップ形成部材、並びに、該ニップ形成部材を備えた現像装置、転写装置、帯電装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジ。

【課題】 耐磨耗性と柔軟性に優れたニップ形成部材、並びに、該ニップ形成部材を備えた現像装置、転写装置、帯電装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供すること。
【解決手段】 トナー像を担持する像担持体を押し圧して像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材の表層をヤング率が70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上のチタン合金で構成する。これにより、ニップ形成部材を耐磨耗性と柔軟性に優れたニップ形成部材とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像を担持する像担持体を押し圧して像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材に関するものである。具体的には、現像ローラ、転写ローラ、帯電ローラ等の像担持体としての感光体とニップを形成するニップ形成部材、並びに、該ニップ形成部材を備えた現像装置、転写装置、帯電装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から像担持体としての感光体と当接するニップ形成部材でニップを形成して、このニップで帯電を行ったり、転写を行ったり、現像を行ったりすることが知られている。このようなニップ形成部材は、感光体と良好なニップを形成するため、表層をゴム材料で形成し、表層を柔軟で弾性変形可能としている。例えば、感光体と当接させてニップを形成するニップ形成部材としての現像ローラの表層をゴム材料で形成するものがある(特許文献1)。このように、現像ローラの表層を柔軟で弾性変形可能なゴムで形成することで、軸方向で均一な接触圧で感光体と接触させることができ、軸方向で均一な現像を行うことができる。その結果、濃度ムラなどの画像の劣化を抑制することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−47473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゴム材料は摩耗し易く、現像ローラの寿命が短い。そのため、頻繁に装置の交換などを行う必要があった。また、ゴム材料が摩耗していく結果、所望の弾力性や柔軟性が確保できなくなり、表層が感光体とほとんどたわまずに(非弾性的)に当接する。その結果、感光体や現像ローラに軸方向の製造誤差や組付け誤差があった場合、感光体との当接圧を軸方向均一に保つことができず、現像能力が軸方向で一定とならず、濃度ムラなどの画像の劣化を引き起こしてしまう。
【0005】
また、転写ローラの場合は、表層をゴム材料で形成し高い当接圧で感光体に接触させることで、表層をたわませて転写ニップを形成している。そして、ゴム材料の弾性反発力により感光体と転写ローラとの密着性を高めて、転写ニップ部でトナーの凝集力を高めている。これにより、転写ニップ出口での転写チリの発生を抑えることができ、画像の劣化を抑制している。
しかし、ゴム材料が摩耗する結果、所望の弾性反発力が確保できなくなり、トナー凝集力が低下し、径時で転写チリの発生が増し、良好な画像を維持することができないという問題があった。
【0006】
また、帯電ローラの場合は、表層をゴム材料で形成し表層をたわませて、感光体周方向に帯電ニップを形成し、帯電ニップの前後で帯電ローラ表面と感光体表面との間にギャップを形成する。帯電ニップを形成して感光体と帯電ローラとの間にギャップを形成することで、コロトロン帯電器やスコロトロン帯電器のようにワイヤーを所定の間隙で感光体に対向配設するものに比べて、微小なギャップとすることができる。これにより、コロトロン帯電器やスコロトロン帯電器に比べて帯電バイアスを小さくすることができる。
しかし、ゴム材料が摩耗する結果、所望の柔軟性が確保できなくなると、表層が感光体とほとんどたわまずに(非弾性的)に当接する。その結果、感光体や帯電ローラに軸方向の製造誤差や組付け誤差があった場合、感光体と帯電ローラとの微小ギャップを軸方向一定に保つことができず、帯電不良等を生じて、画像の劣化を引き起こしてしまう。
【0007】
このように、感光体を押し圧して感光体との間にニップを形成するニップ形成部材の表層が摩耗する結果、表層の柔軟性や弾力性が確保できなくなり種々の問題から画像の劣化を引き起こしてしまうことがわかる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、耐磨耗性と柔軟性に優れたニップ形成部材、並びに、該ニップ形成部材を備えた現像装置、転写装置、帯電装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、トナー像を担持する像担持体に圧接して像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材において、表層をヤング率70[GPa]以下の金属材料としたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1または2のニップ形成部材において、上記金属材料の0.2%耐力を700[MPa]以上としたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1、2または3のニップ形成部材において、上記金属材料をVa族(バナジウム族)元素とチタンとを焼結させた焼結チタン合金であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項4のニップ形成部材において、上記焼結チタン合金には、冷間加工が施されていることを特徴するニップ形成部材。
また、請求項5の発明は、請求項4または5のニップ形成部材において、上記焼結チタン合金には、錫が2〜8質量%含有されていることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5のニップ形成部材において、該ニップ形成部材は、弾性層を有することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6のニップ形成部材において、該ニップ形成部材が現像剤担持体であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7のニップ形成部材において、上記表層の表面を樹脂でコートすることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8のニップ形成部材において、上記樹脂が導電性樹脂であることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1、2、3、4、5または6のニップ形成部材において、該ニップ形成部材が帯電部材であることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1、2、3、4、5または6のニップ形成部材において、該ニップ形成部材が転写部材であることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、像担持体に対向して回動可能に配置され、該像担持体にトナーを供給する現像剤担持体を備えた現像装置において、該現像剤担持体は、該像担持体を押し圧して該像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材であり、該現像剤担持体として、請求項7、8または9のニップ形成部材を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項12の現像装置において、上記像担持体上にトナー像を形成するためのトナーとして、粒子の平均円形度が1.00〜0.96であるものを用いることを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項12または13の現像装置において、上記トナーとして、体積平均粒径が4[μm]以上10[μm]以下で、該トナーに添加する添加剤の粒子径を50[nm]以上150[nm]以下のものを用いることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、像担持体に対向配置される帯電部材を具備し、該帯電部材に電圧を印加して像担持体を帯電する帯電装置において、該帯電部材は、該像担持体を押し圧して該像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材であり、該帯電部材として、請求項10のニップ形成部材を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写部材を有する転写装置において、該転写部材は、該像担持体を押し圧して該像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材であり、該転写部材として、請求項11のニップ形成部材を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、像担持体と、帯電部材を備え該帯電部材に電圧を印加して該像担持体を帯電する帯電装置と、該像担持体に現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置と、該像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写部材を有する転写装置とを有する画像形成装置において、該帯電装置として請求項15の帯電装置、該現像装置として請求項12、13、14の現像装置、または該転写装置として請求項16の転写装置のうちすくなくともいずれかひとつを用いていることを特徴とするものである。
また、請求項18の発明は、像担持体と、帯電部材を備え該帯電部材に電圧を印加して像担持体を帯電する帯電装置、該像担持体に現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置のうち少なくともひとつとを備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に一体構造物として構成されたプロセスカートリッジにおいて、該帯電装置が請求項15の帯電装置、または該現像装置が請求項12、13、14の現像装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至18の発明によれば、表層をヤング率70[GPa]以下の金属材料で形成することで、柔軟で弾性的にたわむことのできるニップ形成部材とすることができる。このため、所定の当接圧によりニップ形成部材が弾性的にたわんで感光体と当接することができ、所望のニップ幅、軸方向均一な接触圧をもって像担持体と接触することができる。また、従来のように、ゴム材料に比べて、摩耗しにくい金属材料で形成するので、従来に比べてニップ形成部材の摩耗を抑制することができる。その結果、ニップ形成部材の柔軟性や弾力性が径時で変化することがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタの全体の概略構成図である。このプリンタは、像担持体としての感光体ドラム1の周辺に、感光体ドラム1の表面を一様帯電する帯電ローラ2、画像情報に基づいて変調されたレーザー光線等を感光体ドラム1に照射する露光装置3、感光体ドラム1に形成された静電潜像に対し現像ローラ41上の帯電トナーを付着させることでトナー像を形成する現像装置4、感光体ドラム1上に形成されたトナー像を転写材としての転写紙20に転写する転写ローラ5、転写後に感光体ドラム1上に残ったトナーを除去するクリーニング装置6等が順に配設されている。また、感光体ドラム1上に静電潜像を形成する潜像形成手段は、上記帯電ローラ2及び露光装置3により構成されている。
また、図示しない給紙トレイ等から転写紙を給紙・搬送する図示しない給紙搬送装置と、転写ローラ5で転写されたトナー像を転写紙Pに定着する図示しない定着装置とが備えられている。
なお、上記プリンタを構成する複数の装置の一部は、図中点線で示すようにプリンタ本体に対して着脱可能に一体構造物(ユニット)として構成してもよい。例えば、感光体ドラム1と帯電装置2と現像装置4とクリーニング装置6とを、プリンタ本体に対して着脱可能に、一体構造物である画像形成用プロセスカートリッジ9として構成してもよい。
【0012】
上記構成のプリンタにおいて、矢印a方向に回転する感光体ドラム1の表面は、帯電ローラ2で一様帯電された後、画像情報に基づいて変調されたレーザー光線が感光体軸方向にスキャンされて照射される。これにより、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。感光体ドラム1上に形成された静電潜像は、現像領域において、現像装置4により帯電したトナーを付着させることで現像され、トナー像となる。一方、転写紙Pは図示しない給紙搬送装置で給紙・搬送され、レジストローラ7により所定のタイミングで感光体ドラム1と転写ローラ5とが対向する転写部に送出・搬送される。そして、転写ローラ5により、転写紙20に感光体ドラム1上のトナー像とは逆極性の電荷を付与することで、感光体ドラム1上に形成されたトナー像が転写紙Pに転写される。次いで、転写紙Pは、感光体ドラム1から分離され、図示しない定着装置に送られ、定着装置でトナー像が定着された転写紙Pが出力される。転写ローラ5でトナー像が転写された後の感光体ドラム1の表面は、クリーニング装置6でクリーニングされ、感光体ドラム1上に残ったトナーが除去される。
【0013】
図2は、本実施形態の現像装置4である。この現像装置4は、現像ローラ41と、現像ローラ41にトナーを供給するため、現像ローラ41に摺接するトナー供給ローラ42とを有している。また、現像ローラ41上のトナーを薄層化するために現像ローラ41に当接する薄層規制部材43と、トナーを保持するトナー保持部44と、トナー保持部44内のトナーを撹拌しながらトナー供給ローラ42に表面に供給する撹拌部材としてのアジテータ46なども有している。供給ロ−ラ42は発泡ポリウレタン等で形成されていて、可撓性を有し、50〜500μmの径のセルでトナ−を保持し易い構造となっている。また、硬度は10〜30゜(JIS−A)と比較的低く、現像ローラ41とも均一に当接させることができる。
【0014】
この現像装置4において、トナー保持部44内に保持されているトナーは、上記アジテータ46により撹拌されながら、トナー供給ローラ42の表面に機械的に供給され担持される。トナー供給ローラ42は、トナーを担持しながら現像ローラ41との対向部まで搬送し、現像ローラ41に摺察しながらトナーを供給する。現像ローラ41に供給されたトナーは、現像ローラ41にトナーを介して当接している薄層規制部材43により適当な層厚に薄層化されるとともに所望の極性に摩擦帯電される。そして、現像ローラ41の矢印方向の回転により、感光体1との対向部である現像領域に搬送される。
【0015】
薄層規制部材43は、図示しないホルダに取り付けられており、ホルダからの自由端長を10〜15[mm]としている。15[mm]以上に設定すると、現像装置4が大型化してしまう。また、10[mm]以下に設定すると、現像ローラ41表面と接触するときに、振動が生じやすくなり、画像上に段々ムラなどの異常画像が発生する。薄層規制部材43の当接圧は、0.049〜2.45[N・cm]の範囲が好ましい。当接圧が上限を越えると薄層規制部材43通過後の現像ローラ41上のトナー付着量が低下し、且つ、トナ−帯電量が増加し過ぎてしまう結果、現像に付与する現像剤量が減少して画像濃度が低くなる。また、下限を下回ると薄層が均一に形成されずにトナ−の固まりが薄層規制部材43を通過する事もあり、画像品質が著しく低下する。薄層規制部材43の当接角度は先端が現像ローラ41の下流側を向く方向で現像ローラ41の接線に対して10〜45゜が良好である。なお、本実施形態の現像装置4においては、薄層規制部材43を厚み0.1[mm]のSUS板とし、当接圧は60[gf/cm]に設定することで、薄層規制部材43通過後のトナーを単位面積当たり0.4〜0.8[mg/cm2]の均一な厚みを持った薄層とすることができた。また、この時のトナ−帯電は−10〜−30[μC/g]の範囲であった。
【0016】
図3は、本実施形態の現像ローラ41の断面図である。図3に示す現像ローラ41は、径が11[mm]の芯金41aに厚み2.4[mm]のゴムからなる弾性層41bを有し、さらにこの弾性層上に厚さ0.1[mm]のチタン合金からなる表層41cを有している。このチタン合金としては、ヤング率が70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上のものを用いている。具体的には、豊田中央研究所社製のゴムメタルが挙げられる。このゴムメタルは、30〜60重量%のVa族(バナジウム族)元素と、残部が実質的にチタンからなるものであり、上記Va族(バナジウム族)元素とチタンとを焼結させた焼結チタン合金である。また、現像ローラ41の表層に使用される焼結チタン合金は、冷間加工を施されたものであることが好ましい。焼結チタン合金に冷間加工を施すことでヤング率の低下と0.2%耐力を向上させることができ、より弾性的な性質をもつ金属とすることができる。具体的には、冷間加工により焼結チタン合金が10%以上圧縮されたものが好ましく、圧縮率が高ければ高いほどヤング率が低下し0.2%耐力を向上させることができる。さらに、表層に使用される焼結チタン合金は、錫が含有されたものであると好ましい。錫を2〜8質量%配合すると、焼結チタン合金のヤング率を低下させるとともに、強度を向上させることができる。
なお、現像ローラ41を芯金41aと弾性層41bと表層41cとで構成しているが、これに限定されず、芯金41aと表層41cのみで構成してもよく、また、弾性層41bを2層としてもよい。
【0017】
上記現像ローラ41の作成は、例えば、上記ゴムメタルを筒状に形成し、この筒状に形成したゴムメタルの中心に芯金を挿入する。そして、芯金とゴムメタルとの間にゴムを充填して加硫させることで作成することができる。
また、上記現像ローラ41の表層面を樹脂でコートしても良い。コートする樹脂は、トナーとの離型性の優れた材料であることが好ましい。従来の摩耗し易いゴム材料の場合は、摩耗とともに付着したトナーも削られて、トナーのフィルミングはあまり問題にはならない。しかし、本実施形態の現像ローラ41は、表層41cを金属材料で構成しているため、摩耗しにくいため、現像ローラ表面に付着したトナーが径時にわたって除去されない。よって、上記のように離型性に優れた樹脂をコートすることでトナー付着によるフィルミングの発生を抑制することで、径時にわたって良好な表層面を維持することができる。また、上記表面層をコートする樹脂材が導電性を有する材料であると、さらに好ましい。表面層をコートする樹脂材を導電性樹脂とすることで、現像ローラと感光体との間に形成される現像電界を低下させることがない。
【0018】
図4は、一般的な合金の応力−歪み線図の一例としてチタン合金の応力−歪み線図を示した図である。一般的な合金などの金属は、応力がσA以下のときは、図3に示すように伸び(歪み)と応力が比例関係にあり、応力に比例して伸びが直線的に増加する。そして、応力に対して直線的に伸びが増加する領域では、金属が弾性変形し、応力を除去すれば金属の伸びが0となる。一般的に、この伸びに対して応力が比例的に変化する領域の傾きをヤング率としている。そして、応力がσA以上となると、伸びが応力に対して比例的に増加しなくなり、金属が塑性変形を始める。そして、応力が耐力のσPとなると、除荷したときに0.2%の永久伸びを生じる。一般的にこの除荷したときの永久伸びが0.2%以下となるまでの領域を金属が弾性的に振る舞う領域と規定している。
【0019】
図4に示すように、0.2%耐力とは金属が塑性変形して0.2%永久伸びを生じる応力のことであり、これ以上金属に応力をかけると、金属が塑性変形を始め、応力を除荷しても伸びが0に戻らず永久伸びを生じてしまう。言い換えれば、0.2%耐力以下であれば、金属が弾性的に変形し、応力を除荷すれば金属伸びが0に戻ることができる。また、ヤング率が小さい方が応力に対する伸びが大きくなり、より弾性的な性質をもつ金属であると言える。しかし、金属が弾性的に振る舞う限界値としての0.2%耐力が低いと、低い応力で直ぐに材料が塑性変形を開始してしまい、使用に耐えうる十分な弾性変形性能を有することができない。
【0020】
本実施形態の現像ローラ41の表層41cに使用される金属材料は、ヤング率が70[GPa]以下であり、弾性的な性質の強い金属材料を用いている。このため、表層41cが感光体1と弾性的に柔軟に変形接触することができる。また、0.2%耐力が700[MPa]以上の金属材料を用いるので、感光体との当接圧が大きくても塑性変形しないような金属層とすることができる。
【0021】
また、近年、図5に示すように伸びが応力に対して比例的に増加しなくとも、応力を除去すると伸びが0となり、弾性的に変形する金属材料がある。このような金属の場合においては、上記図4に示した一般的な金属材料と異なる方法でヤング率を求める必要がある。そこで、このような性質をもつ金属に対しては、0.2%耐力σeの(1/2)σeにおける傾きをヤング率として規定する。このような性質をもつ現像ローラ41の表層41cに使用する場合でも、耐力σeの(1/2)σeにおけるヤング率が70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上の金属材料であれば、表層41cを感光体との当接圧で塑性変形せず、良好な弾性変形性能を有する金属層とすることができる。なお、上述したゴムメタルは、図5の応力−歪み線図を有している。
【0022】
図6は、感光体1と、これに向けて十分な圧力で押圧される現像ローラ41とによって形成される現像ニップを示す拡大模式図である。図6に示すように感光体1と現像ローラ41とは、トナーを介して当接圧のかかった状態で接触している。感光体1は、アルミの素管に感光性材料を含む樹脂をコートしているため、非弾性的でありたわみにくい。一方、現像ローラ41は、比較的柔軟な、弾性層41bと、弾性的な性質を持つ金属からなる表層41cからなっている。このため、現像ローラ41を当接圧によって柔軟に変形せしめて、周方向に現像ニップが形成される。表層41cは、弾性的な性質を持つ金属部材で構成されているため、たわんだ形状を弾性的に戻そうとする力が働き(反発力)、表層41cが感光体1を弾性的に押し圧する。この表面層41cの押し圧力によって、感光体と現像ローラとの接触圧を軸方向均一に保つことができる。その結果、画像の濃度ムラなどを防止することができる。
[検証試験1]
【0023】
現像ローラ41の検証を行うため、表1に示すように、表層のヤング率の異なる4つの現像ローラA、B、C、Dを用意し、初期画像の品質について検証試験1を行った。現像ローラAは、径が16[mm]で芯金にゴムからなる弾性層を有し、さらにこの弾性層上に厚さ0.1[mm]、ヤング率3.63[MPa]、硬度60°(JIS−A)からなるゴムの表層を有している。現像ローラBは、現像ローラA同様の芯金と弾性層を有し、厚さ0.1[mm]でヤング率70[GPa]のチタン合金の表層を有している。現像ローラCは、現像ローラAと同様の芯金と弾性層を有し、厚さ0.1[mm]でヤング率100[GPa]のチタン合金の表層を有している。現像ローラDは、現像ローラAと同様の芯金と弾性層を有し、厚さ0.1[mm]でヤング率100[GPa]のチタン合金の表層を有している。
感光体の径は、30[mm]とし、現像ローラ、感光体の幅をそれぞれ300[mm]とした。また、現像ローラを3〜20[gf/mm]の線圧で感光体に当接させて、初期時の画像品質を調べた。その結果を図7に示す。
【表1】

図7に示すように、表層材料のヤング率が70[GPa]以上の現像ローラC、Dにおいては、画像ランクが3.5以下となり、初期時において、良好な画像を得ることができなかった。一方、表層材料のヤング率が70[GPa]以下の現像ローラA、Bにおいては、画像ランクが3.5以上となり、初期時において良好な画像が得られた。ヤング率が70[GPa]以上の表層からなる現像ローラC、Dは、弾性変形に乏しいため、感光体とほとんどたわまずに(非弾性的)に当接する。このため、感光体や現像ローラに軸方向の製造誤差や組付け誤差があった場合、感光体との当接圧を軸方向均一に保つことが難しい。その結果、表層材料のヤング率が70[GPa]以上の現像ローラC、Dにおいては、軸方向均一な当接圧を得ることができず、濃度ムラなどが発生し、画像ランクの低い画像となったと考えられる。一方、表層材料のヤング率が70[GPa]以下の現像ローラA、Bは、表層の弾性変形性が十分であり、表層が感光体とたわんで、弾性的に当接することができる。このため、表層が感光体とある程度の反発力をもって当接することができるので、製造誤差や組付け誤差が多少あったとしても、感光体との当接圧を軸方向均一に保つことができる。このため、表層材料のヤング率が70[GPa]以下の現像ローラA、Bについては、画像ランクの高い良好な画像を得ることができたと考ええられる。
[検証試験2]
【0024】
上記検証試験1において初期画像が良好な表層がヤング率70[GPa]のチタン合金からなる現像ローラBと、表層がヤング率3.63[MPa]のゴムからなる現像ローラAについて、径時にわたる画像変化について検証試験2を行った。検証試験2においても、感光体と現像ローラ径および幅、現像ローラと感光体との間の線圧は、検証1と同じにしている。その結果を図8に示す。また、チタン合金からなる現像ローラBと、ゴムからなる現像ローラAにおける表層厚さの時間変化も調べた。その結果を図9に示す。
【0025】
図8からわかるように、表層がチタン合金の現像ローラBは、径時にわたって画像のランクに変化がない。しかし、表層がゴムの現像ローラAにおいては、径時の使用により画像ランクが低下している。また、図9に示すように、表層がチタン合金からなる現像ローラBにおいては表層厚さがほとんど変化してないが、表層がゴムの現像ローラAについては、表層厚さが使用により低下しているのがわかる。つまり、図9から、表層がチタン合金からなる現像ローラBは、ほとんど摩耗しておらず、初期時の状態を維持しているが、表層がゴムからなる現像ローラAは径時で摩耗していることがわかる。摩耗により表層厚さが変化すると、表層の体積抵抗が変化して所望の現像バイアスを得ることができなくなる。その結果、表層がゴムの現像ローラAは、図8に示すように径時で画像が悪化したと考えられる。一方、表層がチタン合金の現像ローラBは、金属材料で形成されているので、ゴムに比べて耐磨耗性が優れている。よって、図8に示すように、径時にわたり表層の摩耗が抑制され、表層の厚みに変化が生じていない。その結果、表層がチタン合金からなる現像ローラBの体積抵抗が変化することがない。したがって、表層がチタン合金からなる現像ローラBは、図9に示すように、画像ランクの低下を抑制することができたと考えられる。
【0026】
上記、検証1および検証2からわかるように、現像ローラの表層をヤング率70[GPa]以下のチタン合金とすることで、径時にわたり良好な画像を維持することができる現像ローラが得られることがわかる。
【0027】
上述までは、現像ローラ41について説明したが、感光体1などのトナー像を担持する像担持体とニップを形成するニップ形成部材としての転写ローラ5や帯電ローラ2等の表層をヤング率が70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上の金属材料で形成すれば、耐磨耗性、柔軟性に優れた転写ローラ5や帯電ローラ2とすることができる。
【0028】
まず、転写ローラ5の表層をヤング率70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上の金属材料とした例について図10に基づき説明する。
【0029】
図10は、転写ローラ5とその周囲とを示す側面図である。感光体1に向けて押圧される転写ローラ5は、ステンレス、鉄等の剛性部材からなる芯金ローラと、これに被覆されたEPDM、シリコン、NBR、ウレタン等からなる弾性層5aとを有している。また、この弾性層4aの上には、例えば、ゴムメタルなどのヤング率70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上の金属部材からなる表層5bを有している。また、上記芯金ローラの両端面に突設せしめられた軸4cを有している。両端の軸4cは、それぞれ軸受18によって回動可能に支持されており、これら軸受18はバネ19によって感光体1に向けて付勢されている。この付勢により、転写ローラ5が感光体1に向けて高圧力で押圧される。
【0030】
図11は、感光体1と、これに向けて十分な圧力で押圧される転写ローラ5とによって形成される転写ニップを示す拡大模式図である。同図に示すように、転写ローラ5が感光体1に向けて十分な圧力で押圧される。転写ニップでは、転写ローラ5の弾性層5aや表層5bが柔軟に弾性変形する。この表層5bと弾性層5aの弾性変形により転写紙Pが、感光体1表面に担持されているトナー像Iの表層5bに接触するだけでなく、互いに隣り合っているトナー像Iの間の凹部に食い込むように押圧されて、感光体1表面やトナー像Iとの密着性が高められる。なお、転写ニップで転写紙Pと感光体との十分な密着性を得るためには、少なくとも表層5bを、上述の条件、ヤング率70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上に設定する必要がある。このことにより、感光体1と転写紙Pとの間に形成されるエアーギャップが低減されて、転写ニップ内やニップ前後における転写チリが抑えられる。また、転写ローラ5の表面層5bを金属で形成しているので、耐磨耗性に優れた転写ローラ5とすることができる。このように、表層が摩耗しにくいため、径時の使用により、表層や弾性層が削れ、転写ローラの柔軟性や弾力性が低下させることがない。このため、径時にわたり、エアギャップや弾性力が維持され、転写チリを抑制することができる。また、摩耗により表層の厚みが変化することがないので、表層の体積抵抗が変化することがない。このため、感光体と転写ローラとの間の転写電界が径時にわたり変化することがないので、転写不良等の画像の劣化が起こることがない。
なお、転写ローラ5を芯金と弾性層と表層とで構成しているが、これに限定されず、ヤング率70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上の表層のみで構成してもよく、また、弾性層を2層としてもよい。
【0031】
次に、帯電ローラ2が感光体と接触してニップを形成する接触帯電方式の帯電ローラ2の表層2bをヤング率70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上の金属材料とした例について図12に基づき説明する。
【0032】
図12は、帯電ローラ2とその周囲とを示す断面図である。帯電ローラ2は、金属製の軸芯2aと、これに被覆された弾性層2bと、更にこれに被覆された表層2cとを有している。金属製の軸芯2aには、図示しない電源によってマイナス極性の帯電バイアスが印加される。弾性層2bは、カーボンブラック等の導電性材料が分散せしめられたエピクロムヒドリンゴム、ニトリルゴム、クロロブレンゴム、アクリルゴム、熱可塑性エストラマー等の弾性材料から構成されている。導電性材料が分散せしめられることで弾性層2b全体が導電性を発揮して、軸芯2aと表層2cとを導通させる。表層2cは、ヤング率70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上のゴムメタルが用いられている。
【0033】
本実施形態の画像形成装置には、帯電ローラ2や、これを回動自在に支持する図示しない軸受け、帯電ローラ2を感光体1に向けて付勢するバネなどにより、帯電装置が構成されている。帯電ローラ2は、このバネによって感光体1に対して所定の圧力で当接せしめられることで、帯電ニップを形成している。帯電ローラ2に上記条件の表層2cを設けることにより、それを当接圧によって柔軟に変形せしめて、周方向に長い帯電ニップを形成することができる。また、表層2cを金属材料で形成するため、耐磨耗性に優れた帯電ローラ2とすることができる。
【0034】
このように、当接圧によって表層2cを柔軟にたわませて感光体に当接させることで、帯電ニップ近傍のギャップGmを微小にすることが可能となる。微小ギャップGmを形成すると、そこで帯電ローラ2表面から感光体1表面への放電を容易に生じせしめることが可能になる。このことにより、コロトロン帯電器やスコロトロン帯電器のようにワイヤーを所定の間隙で感光体に対向配設するものに比べ、帯電バイアスを小さくすることができる。更に、帯電ローラ2の劣化、感光体1の劣化、画像劣化、及びオゾンによる環境汚染を抑えることもできる。これは、次に説明する理由による。即ち、放電が生ずると帯電ローラ2や感光体1には不純物が付着する。付着量は帯電バイアスやギャップが大きくなるほど多くなる。付着した不純物は電離して活性酸素(酸素ラジカル、酸素イオン)やオゾンを発生させる。活性酸素が帯電ローラ2や感光体1に衝突すると、これらをスパッタリングしたり、酸化させたりして劣化させてしまう。また、オゾンや活性酸素と、窒素酸化物とが感光体1に吸着すると、吸着部の電気特性に異常をきたして画像ボケなどといった画像劣化を引き起こしてしまう。更に、発生したオゾンが大気中に放出されることで環境を汚染してしまう。帯電ローラ2を感光体1に当接させる方式では、上述のようにして微小ギャップを形成し、且つ帯電バイアスを小さくすることで、オゾンや活性酸素の発生量を大幅に低減する。このことにより、各種劣化やオゾンによる環境汚染を抑えることができる。
【0035】
また、表層が摩耗しにくいため、径時の使用により、表層や弾性層が削れ、帯電ローラの柔軟性や弾力性が低下することがない。このため、径時にわたり、微小ギャップGmが維持される。また、摩耗により表層の厚みが変化することがないので、表層の体積抵抗が変化することがない。このため、感光体へ印加する帯電バイアスが径時にわたり変化することがないので、径時にわたり帯電不良等が起こることがない。
【0036】
次に、本実施形態に好適に使用されるトナーについて説明する。本実施形態のトナーは、ポリエステル、ポリオ−ル、スチレンアクリル等の樹脂に帯電制御剤(CCM)及び色剤を混合したものであり、その周りにシリカ、酸化チタン等の外添剤を添加することで流動性を高めている。色剤としてはカーボンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドン、カーミン等を挙げることができる。トナー10は更に場合によってはワックス等を分散混合させた母体トナーに上記種類の添加剤を外添しているものも使用することができる。
トナーの体積平均粒径は3〜12μmの範囲が好適である。本実施形態で用いたトナーの体積平均粒径は7μmであり、1200dpi以上の高解像度の画像にも十分対応することが可能である。
また、本実施形態では、帯電極性が負極性のトナーを使用しているが、感光体1の帯電極性などに応じて帯電極性が正極性のトナーを使用してもよい。
【0037】
トナーは特定の形状と形状の分布を有すことが重要である。トナーの形状は円形度で規定することができる。具体的には、トナーの平均円形度は、0.96以上、1.00以下が望ましい。実験によれば平均円形度が0.96未満、特に0.93より小さいと、球形から離れた不定形のトナーとなり、満足した転写性やチリのない高画質画像が得られなくなってしまう。また、円形度が高く回転しやすいので、トナーが現像ローラに付着しにくく、フィルミングなどの発生も抑制することができる。とくに、本実施形態の現像ローラのように、表層面を金属として摩耗しにくい材質である場合、径時で付着したトナー(フィルミング)が堆積して良好な画像が維持できなくなる場合がある。しかし、上述のように円形度の高いトナーを使用することで、現像ローラ表面へのトナー付着(フィルミング)を抑制することができるので、径時にわたり良好な画像を維持することができる。さらに、円形度が高く回転しやすいので、攪拌によるトナー劣化を抑制することができる。よって、径時にわたりトナーが凝集することがなく、この凝集したトナーによる現像ローラのフィルミングも抑制することができる。
【0038】
なお形状の計測方法としては粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法が適当である。この手法で得られる投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値が平均円形度である。この値はフロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製)により平均円形度として計測できる。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜1万個/μlとして前記装置によりトナーの形状及び分布を測定することによって得られる。
【0039】
本実施形態において好適に用いられ円型度0.96〜1.00のトナーを製造する方法について説明する。比較をわかりやすくするため、一般的な従来のトナーと比較して説明する。
【0040】
従来トナーの調製:
下記原材料をヘンシェルミキサーで充分混合した後、小型二本ロールミルで、150℃、
2時間混練した。
結着樹脂(スチレン−アクリル酸メチル共重合体) 100.0重量部
着色剤(カーボンブラック#44、三菱カーボン社製) 10.0重量部
荷電制御剤(ジターシャリーブチルサリチル酸亜鉛塩)
(オリエント化学製ボントロンE−84) 2.0重量部
カルナバワックス 5.0重量部
得られた混練物を2mmのスクリーンを装着したパルベライザーで粗粉砕した後、ラボジ
ェットで粉砕し、100MZRで分級して4〜10μm径の着色粒子を得た。得られた着
色粒子95重量部に対して、トナーの流動性や現像性、転写性、クリーニング性、帯電性
を補助するための添加剤として3重量部のシリカ、2重量部の酸化チタン粒子(両添加剤
の平均粒径20nm)をヘンシェルミキサーで2分間混合し、篩にかけてトナーを得た。
これが従来トナーである。ここで、従来トナーの円形度をフロー式粒子像分析装置FPI
A−2000(東亜医用電子株式会社製)により計測したところ、0.93であった。ま
た、その重量平均粒径は5.73μmであった。
【0041】
本実施形態のトナーの調製:
従来トナーの製造過程で得られた着色粒子を、日本ニューマチック製サーフュージョンシ
ステムを用いて、熱処理温度250℃、熱風風量1000リットル/分、供給風量100
リットル/分で2回処理し、4〜10μm径の新たな着色粒子を得た。得られた着色粒子
95重量部に対して、トナーの流動性や現像性、転写性、クリーニング性、帯電性を補助
するための添加剤として3重量部のシリカ、2重量部の酸化チタン粒子(両添加剤の平均
粒径60nm)をヘンシェルミキサーで2分間混合し、篩にかけてトナーを得た。これが
新トナーである。新トナーの円形度は0.96、その重量平均粒径は5.56μmであっ
た。
【0042】
上記したように、粉砕トナーに熱処理を行うことにより、円形度0.96以上のトナーを得ることができる。また、熱処理に代えて、例えば特開平9−85741号公報に記載されたターボミル(ターボ工業製)を用いた方法やクリプトロン(川崎工業製)、Q型ミキサー(三井鉱山製)を用いた方法等、機械的な処理を行うことでトナー円形度を0.96以上にすることも可能である。その他には、懸濁重合法、分散重合法、溶解懸濁法等の湿式造粒による製法によって、円形度0.96以上のトナーを作製することもできる。これら製法の場合はエネルギー効率の点で優れるといったメリットがある。
【0043】
また、本実施形態のトナーは、母体樹脂を4〜10μm、トナー母体に外添する添加剤の一次粒子の平均粒径として50〜150nmとしている。添加剤の一次粒子の平均粒径が50nmより小さいと、母体樹脂への添加剤の埋没が早まり、劣化しやすくなる。また、150nmを越えると現像ローラと規制部材の間にトナーが挟まりやすく、薄層が均一にできなくなり、画像では白スジになり易くなるためである。
図13は、添加剤の平均粒径が20nmの従来のトナーと、添加剤の平均粒径が60nmの本実施形態のトナーとの、径時における現像ローラ上トナー付着量を調べた結果である。図13に示すように球形トナーに大粒径添加剤を添加する事で従来のトナーと比較して径時にわたり現像ローラ上トナー付着量の増加を抑える事ができ、画像品質が維持できている。
【0044】
なお、上記実施形態では、感光体1上に形成したトナー像を転写紙に直接転写する場合について説明したが、本発明は、図14や、図15に示す感光体上のトナー像を一旦中間転写体に転写し、その後、該中間転写体上のトナー像を転写紙に転写する画像形成装置にも適用できるものである。図14の画像形成装置は、一つの感光体21上に各色ごとのトナー像を順次形成し、該感光体21上の各色トナー像を中間転写体としての中間転写ベルト28に転写し、該中間転写ベルト28上の重ねトナー像を転写ローラ25で転写紙に一括転写するカラー画像形成装置である。上記カラー画像形成装置において、像担持体である感光体21とニップを形成する部材である現像ローラ241、帯電ローラ22にも適用することができる。また、中間転写ベルト28をヤング率が70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上の金属材料で形成してもよい。また、トナー像を担持する中間転写ベルト28とニップを形成する転写ローラ25にも適用してもよい。
また図15の画像形成装置は、中間転写体としての中間転写ベルト10の直線状の移動経路部分に沿って感光体40を含む画像形成ユニット18を複数組並べて配置し、各画像形成ユニット18の感光体40上に互いに異なる色のトナー像を形成し、各感光体40上のトナー像を一次転写装置62で該中間転写ベルト10上に重ね合わせて転写し、該中間転写ベルト10上の重ねトナー像を図示しない2次転写装置で転写紙に一括転写するタンデム型のカラー画像形成装置に用いる現像ローラ、転写ローラ、帯電ローラにも適用することができる。また、上述同様、中間転写ベルト10にも適用することができる。
【0045】
(1)
以上、本実施形態のニップ形成部材によれば、表層をヤング率70[GPa]以下の金属材料としている。表層が金属部材であるので、表層が摩耗することが抑制される。その結果、ニップ形成部材の耐久性を向上させることができる。また、ヤング率が70[GPa]以下としているため、柔軟に弾性変形する表層とすることができる。このため、所定の当接圧により表層が柔軟に弾性変形して感光体と当接することができ、所望のニップ幅を形成することができる。
(2)
また、表層の金属材料の0.2%耐力を700[MPa]以上としている。金属のヤング率が低くて弾性的な性質を有していても、金属が弾性的ふるまう限界値である0.2%耐力が低いと、所定の当接圧で像担持体と当接して変形したときに塑性変形を起こしてしまい、ニップ形成部材が所定形状を維持できなくなってしまう。その結果、感光体との所望の接触圧やニップ幅を確保することができなくなる。例えば、このニップ形成部材が現像ローラである場合、薄層規制部材とのギャップが変動して、所望の厚さにトナーを形成することができず、濃度ムラが発生する。また、感光体との接触圧が変化し、現像能力が低下してしまい、画像が劣化してしまう。また、例えば、ニップ形成部材が転写ローラである場合は、像担持体と転写体とのエアギャップが変動して、転写チリが発生してしまう。また、転写ニップでトナーの凝集力を高めることができず、転写ニップ出口で転写チリが発生し、画像が劣化する。また、帯電ローラの場合は、感光体との微小ギャップが維持できず、画像の劣化等を引き起こしてしまう。
しかしながら、本実施形態においては、金属材料の0.2%耐力を700[MPa]以上としているので、所定の当接圧で像担持体と当接してニップ形成部材が変形したときに塑性変形を起こしてしまことが抑制される。よって、上述のような不具合が抑制され、画像の劣化を引き起こすことが抑制される。
(3)
また、本実施形態のニップ形成部材を焼結チタン合金(ゴムメタル)としている。このようにゴムメタルを用いることで、ヤング率が70[GPa]以下で、0.2%耐力が700[MPa]以上のニップ形成部材とすることができる。
(4)
また、冷間加工が施されている焼結チタン合金とすることで、ヤング率が低く、0.2%耐力が高いニップ形成部材とすることができる。これにより、より良好な弾力性をもつ表層とすることができる。
(5)
また、錫が2〜8質量%含有されている焼結チタン合金とすることで、ヤング率が低く、0.2%耐力が高いニップ形成部材とすることができる。これにより、より良好な弾力性をもつ表層とすることができる。
(6)
また、本実施形態のニップ形成部材は、弾性層を有し、表層を上記金属材料で構成している。これにより、ニップ形成部材をより柔軟性の高い部材とすることができる。よって、感光体への当接圧が低くても、所望のニップ幅を形成することができる。これにより、感光体のトルクを低減することができる。
(7)
また、本実施形態によれば、上記ニップ形成部材を現像剤担持体としての現像ローラに適用している。これにより、表層が柔軟で耐磨耗性の高い現像ローラとすることができる。よって、所定の当接圧により現像ローラが柔軟にたわんで感光体と当接するので、ある程度の現像ニップ幅を形成することができる。また、表層は良好な弾性変形性能を有するので、表層が感光体へ反発力をもって接触することができる。このように現像ニップにおいて、表層が反発力をもって感光体と当接することができるので、感光体や現像ローラに軸方向に組付け誤差や製造誤差があっても、感光体との接触圧が軸方向に大幅にずれることがない。よって、濃度ムラを抑制することができる。また、表層が金属であるので、従来のゴムに比べて耐磨耗性が良好であるので、現像ローラの耐久性を向上することができる。このため、現像ローラの厚みが変化することがないので、現像ローラの体積抵抗が変化することが抑制される。その結果、感光体と現像ローラとの間の現像電界が径時にわたり一定に保つことができ、径時に現像能力を低下させることがないので、径時にわたり良好な画像を維持することができる。
(8)
また、本実施形態によれば、ニップ形成部材としての現像ローラの表層面を樹脂でコートしている。例えば、トナーと離型性の高い樹脂を表面層にコートすれば、径時で現像ローラ表面のトナーフィルミングを抑制することができる。特に、本実施形態の現像ローラは、耐磨耗性の優れた金属で表層を形成しているので、従来の表層がゴムの現像ローラのように摩耗によりフィルミングとともに削れるようなことがないため、フィルミングが進行しやすい。しかし、上述のように、表層面をトナーに対して離型性の良い樹脂でコートすことで、金属で耐磨耗性の優れた表層であっても、フィルミングの進行が抑制され、径時で画像の劣化を抑制することができる。
(9)
さらに、上記樹脂材を導電性樹脂とすることで、現像ローラに印加される現像バイアスが現像ニップにおいて低下することがない。このため、現像ローラに印加する現像バイアスを高めなくても安定した現像を行うことができる。
(10)
また、本実施形態によれば、上記ニップ形成部材を帯電部材としての帯電ローラに適用している。これにより、表層が柔軟で耐磨耗性の高い帯電ローラとすることができる。よって、所定の当接圧により柔軟に感光体と当接して所望の帯電ニップを形成することができる。これにより、感光体と帯電ローラとの間に微小帯電ギャップを形成することができ、帯電バイアスを小さくして、帯電ローラ2や感光体の劣化、画像の劣化を抑えることができる。更に、オゾンによる環境汚染を抑えることもできる。また、感光体との摩耗を抑制することができ、高耐久の帯電ローラとすることができる。このため、帯電ローラの厚みが変化することがないので、帯電ローラの体積抵抗が変化することが抑制される。その結果、感光体へ印加する帯電バイアスを径時にわたり一定に保つことができ、径時にわたり良好な画像を維持することができる。また、表面層や弾性層が摩耗することがないので、径時にわたり、良好な弾性性能を維持することができる。このため、径時にわたり微小ギャップを維持することができ、帯電性能を低下させることがなく、径時にわたり良好な画像を維持することができる。
(11)
また、本実施形態によれば、上記ニップ形成部材を転写部材としての転写ローラに適用している。これにより、表層が柔軟で耐磨耗性の高い転写ローラとすることができる。よって、所定の当接圧により表層が柔軟に弾性変形して感光体と当接し、所望の転写ニップを形成することができる。これにより、像担持体と転写体とのエアギャップを低減でき、転写チリの発生を抑えることができる。また、転写ニップでトナーの凝集力を高めることができ、転写ニップ出口での転写チリの発生を抑えることができる。また、感光体との摩耗を抑制することができ、高耐久の転写ローラとすることができる。このため、転写ローラの厚みが変化することがないので、転写ローラの体積抵抗が変化することが抑制される。その結果、感光体と転写ローラとの間の転写電界を径時にわたり一定に保つことができ、径時にわたり良好な画像を維持することができる。また、表面層や弾性層が摩耗することがないので、径時にわたり、良好な弾性性能を維持することができる。このため、径時にわたりエアギャップを維持することができ、また、トナーの凝集力が変化することがないので、径時にわたり転写チリの発生を抑制でき、径時にわたり良好な画像を維持することができる。
(12)
また、本実施形態の現像装置によれば、上記現像ローラを備えているので、濃度ムラなどの画像の劣化を抑えることができる現像装置とすることができる。また、耐久性の高い現像装置とすることができる。
(13)
また、本実施形態の現像装置によれば、トナー粒子の平均円形度が1.0〜0.96としている。このようにトナーを円形上に近い形状とすることで、現像ローラ表面に付着しにくく、フィルミングの発生が抑制される。さらに、円形度が高く回転しやすいので、攪拌によるトナー劣化を抑制することができる。よって、径時にわたりトナーが凝集することがなく、この凝集したトナーによるフィルミングも抑制することができる。
(14)
また、本実施形態の現像装置によれば、体積平均粒径が4[μm]以上10[μm]以下で、トナーに添加する添加剤の粒子径を50[nm]以上150[nm]以下のものを用いている。添加剤の平均粒径が50[nm]より小さいと、母体樹脂への添加剤の埋没が早まり、トナーが劣化しやすくなる。また、150[nm]を越えると現像ローラと規制部材の間にトナーが挟まりやすく、薄層が均一にできなくなり、画像では白スジになる。よって、添加剤の粒子径を50[nm]以上150[nm]以下とすることで、白スジ画像と、トナー劣化を抑制することができる。
(15)
また、本実施形態の帯電装置によれば、上記帯電ローラを備えているので、感光体の劣化、画像の劣化を抑えることができる帯電装置とすることができる。また、オゾンによる環境汚染を抑えた帯電装置とすることができる。さらに、帯電ローラが高寿命化するので、耐久性に優れた帯電装置とすることができる。
(16)
また、本実施形態の転写装置によれば、上記転写ローラを備えているので、転写チリが抑制された転写装置とすることができる。
(17)
また、本実施形態の画像形成装置によれば、上述の帯電装置、現像装置、転写装置のうち、いずれかひとつを備えている。よって、画像劣化を抑制し、耐久性に優れた画像形成装置とすることができる。
(18)
また、本実施形態のプロセスカートリッジによれば、上述の帯電装置、現像装置のうち、いずれかひとつを備えている。よって、画像劣化を抑制し、耐久性に優れたプロセスカートリッジとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】現像装置の概略構成図。
【図3】現像ローラの断面図。
【図4】一般的なチタン合金の応力−歪み線図。
【図5】焼結チタン合金の応力−歪み線図。
【図6】現像ニップとその周囲を示す断面図。
【図7】ヤング率の異なる表層材料の現像ローラの初期画像の品質を調べたグラフ。
【図8】表層材料がゴムからなる現像ローラと表層材料が焼結チタン合金からなる現像ローラとの径時の画像品質を調べたグラフ。
【図9】表層材料がゴムからなる現像ローラと表層材料が焼結チタン合金からなる現像ローラとの径時の表層の摩耗量を調べたグラフ。
【図10】転写ニップとその周囲とを示す側面図。
【図11】感光体と、これに向けて十分な圧力で押圧される転写ローラとによって形成される同転写ニップの一例を示す拡大模式図。
【図12】帯電ローラ2とその周囲とを示す断面図である。
【図13】添加剤の平均粒径が20nmの従来のトナーと、添加剤の平均粒径が60nmの本実施形態のトナーとの、径時における現像ローラ上トナー付着量を調べたグラフ。
【図14】中間転写体を有した画像形成装置の一例を示す図。
【図15】タンデム型画像形成装置を示す図。
【符号の説明】
【0047】
1 感光体
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニング装置
41 現像ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体に圧接して像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材において、表層をヤング率70[GPa]以下の金属材料としたことを特徴とするニップ形成部材。
【請求項2】
請求項1または2のニップ形成部材において、上記金属材料の0.2%耐力を700[MPa]以上としたことを特徴とするニップ形成部材。
【請求項3】
請求項1、2または3のニップ形成部材において、上記金属材料をVa族(バナジウム族)元素とチタンとを焼結させた焼結チタン合金であることを特徴とするニップ形成部材。
【請求項4】
請求項4のニップ形成部材において、上記焼結チタン合金には、冷間加工が施されていることを特徴するニップ形成部材。
【請求項5】
請求項4または5のニップ形成部材において、上記焼結チタン合金には、錫が2〜8質量%含有されていることを特徴とするニップ形成部材。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5のニップ形成部材において、該ニップ形成部材は、弾性層を有することを特徴とするニップ形成部材。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6のニップ形成部材において、該ニップ形成部材が現像剤担持体であることを特徴とするニップ形成部材。
【請求項8】
請求項7のニップ形成部材において、上記表層の表面を樹脂でコートすることを特徴とするニップ形成部材。
【請求項9】
請求項8のニップ形成部材において、上記樹脂が導電性樹脂であることを特徴とするニップ形成部材。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5または6のニップ形成部材において、該ニップ形成部材が帯電部材であることを特徴とするニップ形成部材。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5または6のニップ形成部材において、該ニップ形成部材が転写部材であることを特徴とするニップ形成部材。
【請求項12】
像担持体に対向して回動可能に配置され、該像担持体にトナーを供給する現像剤担持体を備えた現像装置において、該現像剤担持体は、該像担持体を押し圧して該像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材であり、該現像剤担持体として、請求項7、8または9のニップ形成部材を用いたことを特徴とする現像装置。
【請求項13】
請求項12の現像装置において、上記像担持体上にトナー像を形成するためのトナーとして、粒子の平均円形度が1.00〜0.96であるものを用いることを特徴とする現像装置。
【請求項14】
請求項12または13の現像装置において、上記トナーとして、体積平均粒径が4[μm]以上10[μm]以下で、該トナーに添加する添加剤の粒子径を50[nm]以上150[nm]以下のものを用いることを特徴とする現像装置。
【請求項15】
像担持体に対向配置される帯電部材を具備し、該帯電部材に電圧を印加して像担持体を帯電する帯電装置において、該帯電部材は、該像担持体を押し圧して該像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材であり、該帯電部材として、請求項10のニップ形成部材を用いたことを特徴とする帯電装置。
【請求項16】
像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写部材を有する転写装置において、該転写部材は、該像担持体を押し圧して該像担持体との間にニップを形成するニップ形成部材であり、該転写部材として、請求項11のニップ形成部材を用いたことを特徴とする転写装置。
【請求項17】
像担持体と、帯電部材を備え該帯電部材に電圧を印加して該像担持体を帯電する帯電装置と、該像担持体に現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置と、該像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写部材を有する転写装置とを有する画像形成装置において、該帯電装置として請求項15の帯電装置、該現像装置として請求項12、13、14の現像装置、または該転写装置として請求項16の転写装置のうちすくなくともいずれかひとつを用いていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
像担持体と、帯電部材を備え該帯電部材に電圧を印加して像担持体を帯電する帯電装置、該像担持体に現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置のうち少なくともひとつとを備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に一体構造物として構成されたプロセスカートリッジにおいて、該帯電装置が請求項15の帯電装置、または該現像装置が請求項12、13、14の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−17962(P2006−17962A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194972(P2004−194972)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】