説明

ハイブリッド型建設機械における制御システム

【課題】ハイブリッド型建設機械において、蓄電装置と発電機とのロスをトータルで改善できる制御システムを構築する。
【解決手段】制御システムを構成する制御装置27において、蓄電装置34の充電量が満充電範囲SOCfullでないことの判断に基づいて、エンジン12および発電機13を駆動する構成とし、エンジン12および発電機13の駆動時では、発電機13の出力が作業ダイヤル43で設定された出力値となるよう発電機13に制御指令を出力する一方、発電機13が前記出力値を発電機効率の高い状態で出力する回転数となるようエンジン12に制御指令を出力する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用するハイブリッド型建設機械における制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の建設機械においても、省エネルギー化、燃費の向上、排ガス低減等を達成するべく、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用するハイブリッド型建設機械が実用化されつつある。このようなハイブリッド型建設機械の制御システムとしては、シリーズ式、または、パラレル式のものが一般的に知られており、これらのシステムでは、軽負荷作業時等にエンジン出力の余剰分を発電機を介して電気エネルギーに変換して蓄電装置に蓄え、中負荷、重負荷作業時に、エンジン出力の不足分を蓄電装置に蓄電(充電)された電気エネルギーで補って作業部を駆動するように構成されている。このため、エンジンが起動している状態において軽負荷作業が継続した場合では、蓄電装置への充電が継続されて充電量が上限値に達し、その後も軽負荷作業が継続すると余剰分の電気エネルギーが充電されず、燃料消費にロスが生じる。そこで、蓄電装置の充電量を検知する検知手段を設けて、蓄電装置の充電量が充電上限値に達し、かつ、軽負荷作業が継続する場合では、エンジン駆動を停止する制御システムが提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−322926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記従来のものは、蓄電装置の出力可能電力量の領域において第一設定値と第二設定値とを設け、出力可能電力量が第一設定値と第二設定値とのあいだにあって、かつ、作業が軽負荷作業である場合に、蓄電装置が単独で駆動源となって作業部に電力エネルギーを供給する運転状態となるように構成されている。
ところで、蓄電装置は一回の充放電のロスは小さいが、充放電が繰り返しなされるような運転状態になると大きなロスが発生するという問題がある。また、蓄電装置が電気二重層コンデンサ(EDLC)のように、抵抗損が主となる種類の電池において、蓄電装置が単独の駆動源となって作業する場合のように、蓄電装置の分担率が高くなり、しかも、充放電量に大きな変動があるような運転状態になると、大きなロスが発生するという問題がある。このため、前記従来のもののように、蓄電装置が単独で駆動源となり、その状態が比較的長く継続されるものでは、蓄電装置のロスが大きくなるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
また、ハイブリッド型建設機械の制御システム全体の効率を考えたとき、蓄電装置と発電機とのトータルとしての効率を考慮した場合、発電機は出力変動に伴い発電機効率を低下することが知られており、発電機の出力変化を低減することが発電機効率の向上となるが、発電機効率を高めながら蓄電装置のロスを低減するシステムについて検討したものは見当たらず、ここにも本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンと、該エンジンの動力を受けて作動する作業部と、エンジンと作業部との動力伝達経路に接続される発電機と、発電機と作業部との動力伝達経路に接続され、エンジンの動力と作業部の要求動力との差に基づいて蓄放電する蓄電装置とを設けてなるハイブリッド型建設機械において、エンジンを駆動制御するエンジン制御手段と、発電機を駆動制御する発電機制御手段と、作業部を駆動制御する作業部制御手段と、これらエンジン制御手段、発電機制御手段、作業部制御手段に制御指令を出力する制御装置とを設けるとともに、蓄電装置の充電量を検出する充電量検出手段と、充電量検出手段の検出値に基づいてエンジンおよび発電機の駆動/停止を切替える駆動/停止切替え手段と、発電機出力を任意の出力値に設定する発電機出力設定手段と、発電機が前記任意の出力値において発電機効率を高める回転数となるためのエンジン回転数を設定するエンジン回転数設定手段とを設けて、制御装置は、蓄電装置の充電量が満充電範囲でないことの判断に基づいてエンジンおよび発電機を駆動するものとし、エンジンおよび発電機の駆動時では、発電機出力設定手段により設定された制御指令を発電機に出力する一方、エンジン回転数設定手段により設定された制御指令をエンジンに出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、発電機出力設定手段は、オペレータが発電機出力を任意に切替えるための発電機出力切替え手段により構成されるものとし、発電機出力切替え手段は、発電機出力切替え手段の操作値に応じて発電機出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項3の発明は、請求項1において、作業部が消費する動力を測定する負荷測定手段を設けるとともに、発電機出力設定手段は、負荷測定手段により測定される予め設定される基準時間毎の作業部の消費動力の平均値に応じて発電機出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項4の発明は、請求項3において、基準時間設定手段を設け、基準時間を充電量検出手段の検出値に基づいて設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、蓄電装置のロスおよび発電機のロスをトータルで改善することができる。
請求項2の発明とすることにより、発電機の出力をオペレータが任意に、しかも、容易な操作で切替えることができる。
請求項3の発明とすることにより、蓄電装置の分担率が一層低下し、蓄電装置のロスおよび発電機のロスをトータルで改善することができる。
請求項4の発明とすることにより、蓄電装置が満充電範囲になりにくいうえ、発電機のロスの低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ハイブリッド型油圧ショベルの側面図である。
【図2】第一の実施の形態におけるハイブリッド型油圧ショベルに設けられる制御システムの全体構成を示す図である。
【図3】第一の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】第一の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の制御手順を示すフローチャートである。
【図5】第一の実施の形態における駆動/停止判定部の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】第二の実施の形態におけるハイブリッド型油圧ショベルに設けられる制御システムの全体構成を示す図である。
【図7】第二の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】第二の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、第一の実施の形態について図1〜図5に基づいて説明する。図1において、1は本発明のハイブリッド型建設機械の一例であるハイブリッド型油圧ショベルであって、該ハイブリッド型油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業機4等から構成され、さらに、フロント作業機4は、ブーム5、アーム6、バケット7等を用いて構成されている。また、ハイブリッド型油圧ショベル1は、前記ブーム5、アーム6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、下部走行体2を走行せしめる左右の走行モータ11L、11R等の各種油圧アクチュエータを備えるとともに、上部旋回体3には、動力源としてのエンジン12や、該エンジン12により駆動される(エンジン12に連結される)発電機13、後述する蓄電装置34等が搭載されている。
【0009】
つぎに、図2に基づいて、前記ハイブリッド型油圧ショベル1を運転せしめる制御システムの全体構成を説明する。本実施の形態の制御システムはシリーズ式となっており、エンジン12の動力により発電機13が駆動するとともに、該発電機13で発電された電力は、発電機制御器14、母線15、電動機制御器16〜20を介して、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25(本発明の作業部の構成部材)に供給されるように構成されている。
【0010】
前記エンジン12は、エンジンコントローラ26による燃料噴射量調整により回転数(回転速度)が制御されるとともに、該エンジンコントローラ26は、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、エンジン回転数を制御するように構成されている。尚、前記エンジンコントローラ26は、本発明のエンジン制御手段に相当する。
【0011】
また、エンジン12と作業部との動力伝達経路に接続される発電機13に設けられる発電器制御器14は、発電機13で発電された交流電力を直流に変換するとともに、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、発電機13の出力を制御するように構成されている。尚、前記発電機制御器14は、本発明の発電機制御手段に相当する。
【0012】
さらに、前記電動機制御器16〜20は、直流を交流に変換するとともに、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25の出力あるいは回転数あるいはトルクをそれぞれ制御するように構成されている。尚、前記電動機制御器16〜20は、本発明の作業部制御手段に相当する。
【0013】
そして、前記メインポンプ用電動機21は、前記ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11Rの油圧供給源であるメインポンプ28を駆動せしめる専用の電動機である。また、旋回用電動機22は、旋回減速機29を介して上部旋回体3の旋回機構30を駆動せしめる専用の電動機である。パイロットポンプ用電動機23は、パイロット圧の油圧供給源であるパイロットポンプ31を駆動せしめる専用の電動機である。冷却ファン用電動機24は、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器(図示せず)やエンジン12に冷却風を供給する冷却ファン32を駆動せしめる専用の電動機である。サブポンプ用電動機25は、ハイブリッド型油圧ショベル1に設けられる他の油圧アクチュエータ(図示しないが、前記ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R以外の油圧アクチュエータ)の油圧供給源であるサブポンプ33を駆動せしめる専用の電動機である。そして、これら電動機21〜25の出力あるいは回転数あるいはトルクの制御は、前述したように、制御装置27から電動機制御器16〜20に出力される制御指令に基づいて行なわれるように構成されている。
ここで、本実施の形態では、前記メインポンプ28およびサブポンプ33は、容量可変手段28a、33aを備えた可変容量型ポンプが用いられているとともに、該容量可変手段28a、33aは、制御装置27から出力される制御指令に基づいてメインポンプ28、サブポンプ33の容量をそれぞれ制御するように構成されている。また、パイロットポンプ31には定容量型ポンプが用いられている。
尚、前記メインポンプ28、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33は、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25とともに本発明の作業部を構成する。
【0014】
さらに、図2において、34はバッテリやキャパシタ等の蓄電装置であって、該蓄電装置34は、発電機14と作業部との動力伝達経路であって、発電機制御器14と電動機制御器16〜20とのあいだの母線15に接続されており、発電機13の出力と電動機21〜25の出力とのあいだの過不足に応じて電力を蓄放電(充放電)するように構成されている。該蓄電装置34の蓄放電は、本実施の形態では、母線15の電圧と蓄電装置34の電圧との差により自動的に行なわれるように構成されている。つまり、発電機13の出力が電動機21〜25の出力に対して余剰がある場合には、母線15の電圧が蓄電装置34の電圧よりも高くなることより、発電機13の余剰電力が蓄電装置34に蓄電(充電)される一方、発電機13の出力が電動機21〜25の出力に対して不足する場合には、母線15の電圧が蓄電装置34の電圧よりも低くなることにより、蓄電装置34から放電されて電動機21〜25に不足電力が供給されるように構成されている。
【0015】
一方、前記制御装置27にはメモリ35が設けられている。前記メモリ35には、エンジン12の特性(エンジン効率、エンジン出力、エンジン回転数、エンジン無負荷時回転数等に関する特性)、発電機13の特性(発電機効率、発電機出力、発電機回転数、励磁電流等に関する特性)、メインポンプ28の特性(ポンプ効率、ポンプ用量、ポンプ回転数等に関する特性)、電動機21〜25の特性(電動機効率、電動機出力、電動機回転数、電動機トルク等に関する特性)、パイロット設定圧(パイロットポンプ31の吐出ラインの圧力として予め設定される圧力)、蓄電装置34の特性(容量、効率等に関する特性)等の種々のデータや、後述する制御に用いるデータ等が保存されている。さらに、制御装置27には、エンジン12や発電機13を制御するエンジン・発電機制御部36や、電動機21〜25やメインポンプ28、サブポンプ33を制御する電動機・ポンプ制御部37等が設けられている。
そして制御装置27は、前記エンジン・発電機制御部36や電動機・ポンプ制御部37において、蓄電装置34の充電量を検出する充電量センサ(本発明の充電量検出手段に相当する)38、母線15の電圧を計測する電圧センサ39、発電機13の発電電流を検出する発電機電流センサ40、蓄電装置34の蓄放電電流を検出する蓄電装置電流センサ41、走行用、旋回用、ブーム用、アーム用、バケット用、他の油圧アクチュエータ用の各操作具(図示しないが、操作レバーや操作ペダル、操作スイッチ等)の操作を検出する操作検出手段(例えば、操作具の操作量を電気的に検出するポテンショメータや、操作具操作に基づいて出力されるパイロット圧の圧力を検出する圧力センサ等)42、後述するように発電機13の出力を設定する作業ダイヤル43等からの信号を入力し、これら入力信号と前記メモリ35に収納されたデータとに基づいて、前記エンジンコントローラ26、発電機制御器14、電動機制御器16〜20、メインポンプ28、サブポンプ33の容量可変手段28a、33a等に制御指令を出力するように構成されている。
【0016】
前記作業ダイヤル43は、オペレータが作業に合わせて発電機13の出力を任意に切替えるための操作具であって、本発明の発電機出力設定手段の構成部材である発電機出力切替え手段に相当している。尚、本実施の形態では、作業ダイヤル43は「高」、「中」、「低」の三つのダイヤル値を備えて構成され、作業ダイヤル43を「高」、「中」、「低」の何れかのダイヤル値に合せることにより、発電機13は、予めメモリ35にデータとして保存される「高出力値」、「中出力値」、「低出力値」の何れかの出力値で出力するように構成されている。尚、作業ダイヤル43の各ダイヤル値は本発明の発電機出力切替え手段の操作値に相当する。
【0017】
つぎに、前記エンジン・発電機制御部36の構成について、図3のブロック図に基づいて説明すると、エンジン、発電機制御部36は、入力側に前記メモリ35、充電量センサ38、電圧センサ39、発電機電流センサ40、蓄電装置電流センサ41、作業ダイヤル43が接続され、出力側にエンジンコントローラ26、発電機制御器14が接続されている。さらに、エンジン・発電機制御部36には、駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、負荷演算部46、発電機出力指令値設定部47、エンジン回転数指令値設定部48、駆動/停止切替え部49を具備して構成されている。尚、前記駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、駆動/停止切替え部49は本発明の駆動/停止切替え手段を構成し、作業ダイヤル43、発電機出力指令値設定部47は本発明の発電機出力設定手段を構成する。
【0018】
さらに、前記エンジン・発電機制御部36の行なうエンジン12および発電機13の制御について、前記図3のブロック図、および図4、図5のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ハイブリッド型油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電機制御部36は、ステップ1において、メモリ35に収納されているデータを読み込む。
【0019】
続くステップS2では、駆動/停止基準値設定部44において、エンジン12および発電機13の駆動/停止を切替える基準値である駆動/停止基準値を設定する。つまり、駆動/停止基準値設定部44は、エンジン12および発電機13の駆動/停止を、蓄電装置34の充電量SOCと、エンジン12および発電機13に対して負荷となる作業部(メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用電動機21〜25により駆動されるメインポンプ28、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33)が消費する動力、即ち、負荷消費動力Pfの大きさとにより判断するように構成されている。このため、本実施の形態では、前記駆動/停止基準値として、蓄電装置34の充電量SOCに基づく充電基準値と、負荷部消費動力Pfの大きさに基づく負荷基準値とが設定される。
前記蓄電装置34の充電量SOCに基づく基準値としては、蓄電限界付近である満充電範囲SOCfullが設定され、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲SOCfull以下となることにより、エンジン12および発電機13を駆動するように設定されている。このように、充電量SOCの基準値を満充電範囲SOCfullとするため、本実施の形態では、基準値として満充電範囲SOCfullにおける下限値である第一充電基準値SOC1と、満充電範囲SOCfullにおける上限値(限界値)である第二充電基準値SOC2とを設定する。尚、満充電範囲SOCfullの設定はサービスマンやオペレータが任意に設定できる基準値設定手段を設けてもよく、このようにすることで、充電量SOCに基づく駆動/停止基準値を使用状況に応じて適宜調整することができる。
また、負荷消費動力Pfに基づく基準値としては、アイドリング時の消費動力(アイドリング時の消費動力)を負荷基準値Psとして設定する。尚、負荷消費動力Pfに基づく基準値としては、サービスマンやオペレータが任意に設定できる基準値設定手段を設ける構成としてもよく、このようにすることで、負荷消費動力Pfに基づく駆動/停止基準値を使用状況に応じて適宜調整することができる。
【0020】
さらに、ステップS3では、充電量センサ38により検出される蓄電装置34の充電量SOCと、電圧センサ39により検出される母線15の電圧と、発電機電流センサ40により検出される発電機13の発電電流と、蓄電装置電流センサ41により検出される蓄電装置34の蓄放電電流とを読み込む。
【0021】
ステップS4では、負荷演算部46において、前記各センサ38、39、40、41からの検出値に基づいて、作業部であるメインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用電動機21〜25により駆動されるメインポンプ28、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33が消費する負荷消費動力Pf(各電動機21〜25に供給する負荷消費動力Pf)を演算する。この場合、本実施の形態では、発電機13および蓄電装置34から電動機21〜25への供給電力Pmを負荷消費動力Pfとして用い、該電動機21〜25への供給電力Pmを、以下の式(1)に基づいて演算する。
Pf=Pm=(Ig×V)+(Ib×V) ・・・(1)
前記式(1)において、Igは発電機電流センサ40により検出される発電機13の発電電流、Vは電圧センサ39により検出される母線15の電圧、Ibは蓄電装置電流センサ41により検出される蓄電装置34の蓄放電電流である。前記蓄電装置34の蓄放電電流は、蓄電装置34の放電時にはプラス符号とし、蓄電装置34の蓄電時にはマイナス符号とする。これによって、蓄電装置34の放電時には、発電機13の発電電力と蓄電装置34の放電電力との合計電力が電動機21〜25への供給電力Pmとして演算され、また、蓄電装置34の蓄電時には、発電機13の発電電力から蓄電装置34の蓄電電力を減じた電力が電動機21〜25への供給電力Pmとして演算される。尚、前起電圧センサ39、発電機電流センサ40、蓄電装置電流センサ41は本発明の負荷測定手段を構成する。
【0022】
つぎに、ステップS5において、作業ダイヤル43のダイヤル値を読み込む。
【0023】
続くステップS6では、発電機出力指令値設定部47において、前記読み込まれた作業ダイヤル43のダイヤル値(「高」、「中」、「低」)に応じて、発電機制御器14に出力する発電機出力指令値Pgcを設定する。前述したように、作業ダイヤル43の「高」、「中」、「低」に対応する発電機13の出力値(「高出力値」、「中出力値」、「低出力値」)は、予めメモリ35にデータとして保存されており、発電機出力指令値設定部47では、前記データに基づいてダイヤル値に対応する出力値(「高出力値」、「中出力値」、「低出力値」)になるべく発電器制御器14に出力する発電機出力指令値Pgcを設定する。
【0024】
さらに、ステップS7では、エンジン回転数指令値設定部48において、発電機13が、前記発電機出力指令値Pgcの出力を発電機効率が高い状態で出力する回転数となるよう、エンジンコントローラ26に出力するエンジン回転数指令値ωcを設定する。ここで、前記メモリ35には、予め発電機13の出力値と回転数との対応表が記憶されており、該対応表から、発電機13が、「高出力値」、「中出力値」、「低出力値」をそれぞれ発電機効率の高いポイントで出力するときの回転数となるためのエンジン12の回転数として、エンジンコントローラ26に出力するエンジン回転数指令値ωcを設定する。これによって、発電機13は、作業ダイヤル43のダイヤル値に対応する「高出力値」、「中出力値」、「低出力値」の何れかの一定出力を、発電機効率の高い状態で出力するように制御される構成となっている。尚、エンジン回転数指令値設定部48は、本発明のエンジン回転数設定手段を構成する。
【0025】
つぎに、ステップS8では、駆動/停止判定部45において、エンジン12および発電機13の駆動/停止を判定する。つまり、ステップS2において設定された第一、第二充電基準値SOC1、SOC2、負荷基準値Psと、充電量センサ38の検出値に基づく充電量SOC、さらには、ステップS4で演算された負荷消費動力Pfに基づいて、エンジン12および発電機13の駆動/停止を判定する。
この場合に、本実施の形態の駆動/停止判定部45は、図5のフローチャートに示すように、エンジン12および発電機13が駆動か停止かを判断し、駆動中である場合に、蓄電装置34の充電量SOCが第二充電基準値SOC2よりも小さいか否か、即ち、満充電範囲SOCfullの上限値(第二充電基準値SOC2)に達しているか否かを判断する。そして、充電量SOCが第二充電基準値SOC2より小さくない(満充電範囲SOCfullに達している)場合では、エンジン12および発電機13を停止すると判定し、充電量SOCが第二充電基準値SOC2より小さい(満充電範囲SOCfullに達していない)場合では、続いて負荷消費動力Pfが負荷基準値Ps以下であるか否か、即ち、アイドリング状態よりも小さい負荷であるか否かを判断し、負荷消費動力Pfが負荷基準値Ps以下の(アイドリング状態より小さい)負荷である場合に、エンジン12および発電機13を停止すると判定するように設定されている。また、負荷消費動力Pfと負荷基準値Psとの比較において、負荷消費動力Pfが負荷基準値Psより大きい(アイドリング状態より大きい)負荷である場合では、エンジン12および発電機13の駆動を継続すると判定するように設定されている。
【0026】
一方、エンジン12および発電機13が停止中である場合に、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲SOCfullの下限値(第一充電基準値SOC1)より小さいか否か、即ち、満充電範囲SOCfullの下限値に達しているか否かを判断する。そして、充電量SOCが第一充電基準値SOC1より小さい(満充電範囲SOCfullに達してない)場合では、エンジン12および発電機13を駆動すると判断し、充電量SOCが第一充電基準値SOC1以上(満充電範囲SOCfullに達している)場合では、続いて負荷消費動力Pfが負荷基準値Ps以下であるか否か、即ち、アイドリング状態よりも小さい負荷であるか否かを判断し、負荷消費動力Pfが負荷基準値Ps以下の(アイドリング状態より小さい)負荷である場合に、エンジン12および発電機13の停止を継続すると判定するように設定されている。また、負荷消費動力Pfと負荷基準値Psとの比較において、負荷消費動力Pfが負荷基準値Psより大きい(アイドリング状態より大きい)負荷である場合では、エンジン12および発電機13を駆動すると判定するように設定されている。
【0027】
そして、ステップS9では、駆動/停止切替え部49において、前記駆動/停止判定部43の判定に基づいて、エンジン12および発電機13を駆動(駆動継続を含む)、停止(停止継続を含む)の何れかに切替える。
このように、エンジン12および発電機13は、ステップS8による判定に基づいてステップS9において駆動/停止が切替えられるが、これによって、蓄電装置34の蓄電量が満充電範囲SOCfullよりも少ない状態では、エンジン12および発電機13を駆動状態とするエンジン優先制御がなされて、蓄電装置34が単独で駆動することが少なくなって、蓄電装置34のロスを低減することができるように構成されている。そのうえ、作業部による作業中にエンジン12および発電機13が駆動停止した状態では、蓄電装置34の蓄電量が満充電範囲SOCfullに保持されるため、作業部による負荷の大きな過渡変動があったような場合であっても、蓄電装置34からの放電により円滑、かつ、迅速に作業を継続することができるように構成されている。
また、負荷消費動力Pfが負荷基準値Psより小さいアイドリング状態では、充電量が第一充電基準値SOC1を下回らないことを条件に、エンジン12および発電機13を停止する制御がなされて、エンストを防止できるように構成されている。尚、前記構成は必ずしも設ける必要はなく、その場合では、制御システムに負荷演算部46、および、負荷演算部46に入力される各種センサ39、40、41を設ける必要はない。
【0028】
前記ステップS9の判断において、エンジン12および発電機13を駆動と判断された場合、ステップS10において、駆動/停止切替え部49は発電機制御器14に対して発電機出力指令値Pgcを出力するとともに、エンジンコントローラ26に対してエンジン回転数指令値ωcを出力する。これによって、発電機13は、作業ダイヤル43のダイヤル値に応じた出力を、発電機効率の高い状態で出力するように制御される。そして、ステップS10の処理後は、前記ステップS3に戻る。
【0029】
一方、ステップS9の判断において、エンジン12および発電機13を停止と判断された場合、ステップS11において、駆動/停止切替え部49はエンジンコントローラ26に対してエンジン12の停止指令(エンジン回転数指令値ωc=0)を出力するとともに、発電機制御器14に対して発電機13の停止指令(発電機出力指令値Pgc=0)を出力する。これによって、エンジン12および発電機13は停止する。そして、ステップS11の処理後は、前記ステップS3に戻る。
【0030】
このように、エンジン・発電機制御部36の行なう制御によって、エンジン12および発電機13は、アイドリング状態ではなく、かつ、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲SOCfull以外であれば駆動するように駆動/停止の切替え制御が行なわれるとともに、エンジン12および発電機13が駆動する場合では、オペレータが作業に合わせて設定する作業ダイヤル43のダイヤル値(「高」、「中」、「低」)に応じて、発電機13が一定の出力値で、しかも、発電機効率の高い状態で運転されるように構成されている。
【0031】
尚、前記電動機・ポンプ制御部37は、前記メモリ35、操作検出手段42からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前記電動機制御器16〜20、および、メインポンプ28、サブポンプ33の容量可変手段28a、33aに制御指令を出力する。この場合に、メインポンプ用電動機21を制御する電動機制御器16およびメインポンプ28の容量可変手段28aに対しては、メインポンプ28の吐出流量を、該メインポンプ28を油圧源とする油圧アクチュエータ(本実施の形態では、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)用操作具の操作量に応じて要求される流量にするべく制御指令を出力する。また、旋回用電動機22を制御する電動機制御器17に対しては、旋回用操作具の操作量に応じた速度で旋回機構30を駆動させるべく制御指令を出力する。また、パイロットポンプ用電動機23を制御する電動機制御器18に対しては、パイロットポンプ31の吐出圧を予め設定されたパイロット設定圧にするべく制御指令を出力する。また、冷却ファン用電動機24を制御する電動機制御器19に対しては、冷却ファン32が必要な冷却風を供給できる回転数にするべく制御指令を出力する。また、サブポンプ用電動機25を制御する電動機制御器20およびサブポンプ33の容量可変手段33aに対しては、サブポンプ33の吐出流量を、該左部ポンプ33を油圧源とする他の油圧アクチュエータ用操作具の操作量に応じて要求される流量にするべく制御指令を出力する。
【0032】
さらに、電動機・ポンプ制御部37は、メインポンプ用電動機21を制御する電動機制御器16およびメインポンプ28の容量可変手段28aに対して、メインポンプ28の吐出流量を油圧アクチュエータ用操作具の操作量に応じた流量にするべく制御指令を出力するが、このとき、メインポンプ用電動機21およびメインポンプ28のトータルでの効率が最大になるように、メインポンプ用電動機21の回転数とメインポンプ28の容量とを制御するように構成されている。
また、電動機・ポンプ制御部37は、サブポンプ33の吐出流量制御を行なう場合にも、前記メインポンプ28の場合と同様に、サブポンプ用電動機25およびサブポンプ33のトータルでの効率が最大になるよう、サブポンプ用電動機25の回転数とサブポンプ33の容量とを制御するように構成されている。
これによって、メインポンプ用電動機21およびメインポンプ28、サブポンプ用電動機25およびサブポンプ33は、それぞれトータルでの効率が最大になる状態で運転されるように構成されている。
【0033】
叙述の如く構成された第一の実施の形態において、ハイブリッド型油圧ショベル1は、エンジン12と、該エンジン12と作業部との動力伝達経路に接続される発電機13と、該発電機13から電力供給されるメインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の電動機21〜25(作業部)と、前記発電機13とこれら電動機21〜25とのあいだに接続され、これら電動機21〜25の出力に対して発電機13の出力に余剰がある場合には余剰電力を蓄電し、不足する場合には該不足電力を電動機21〜25に放電する蓄電装置34とを備えているが、さらに、ハイブリッド型油圧ショベル1には、エンジン12の回転数を制御するエンジンコントローラ26と、発電機の出力を制御する発電機制御器14と、電動機21〜25の出力あるいは回転数あるいはトルクをそれぞれ制御する電動機制御器16〜20と、これらエンジンコントローラ26、発電制御器14、電動機制御器16〜20に制御指令を出力する制御装置27と、蓄電装置34の充電量を検出する充電量センサ38が設けられており、充電量センサ38により検出された蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲SOCfullに達していないと判断された場合は、エンジン12および発電機13を駆動するように構成される。さらに、ハイブリッド型油圧ショベル1には、オペレータが発電機13の出力を任意に切替える作業ダイヤル43が設けられており、制御装置27は、エンジン12および発電機13を駆動する場合に、作業ダイヤル43のダイヤル値応じた出力値になるよう発電機13に制御指令を出力するとともに、発電機13が前記出力値を発電機効率の高い状態で出力する回転数となるようエンジン12に制御指令を出力する。
【0034】
この結果、蓄電装置34の蓄電量が満充電範囲SOCfullよりも少ない状態ではエンジン12および発電機13が駆動状態となるエンジン優先制御がなされ、蓄電装置34が単独で駆動することが低減されて分担率が低下し、もって、蓄電装置34のロスを低減できる。そのうえ、作業中にエンジン12および発電機13が停止する場合では、蓄電装置34の蓄電量が満充電範囲SOCfullに保持されて、大きな過渡変動があったような場合であっても、蓄電装置34からの放電により円滑に作業を継続することができる。
さらに、エンジン12および発電機13が駆動する場合において、発電機13は、オペレータが作業に合わせて設定した作業ダイヤル43のダイヤル値に応じた一定の出力値で、しかも、発電機効率のよい状態で運転されることになるので、作業部の負荷変動により発電機13の出力が変動することがなく、発電機13が発電機出力指令値Pgcに確実に保持されて、発電機13のロスを低減することができ、もって、蓄電装置34と発電機13とのロスをトータルで改善することができる。
【0035】
さらに、発電機13の出力は、オペレータが自由に切替えることができる作業ダイヤル43のダイヤル値に応じて「高出力値」、「中出力値」、「低出力値」に切替えることができ、発電機13の出力を切替える操作を容易に行なうことができる。
【0036】
つぎに、本発明の第二の実施の形態を図6〜8の図面に基づいて説明する。尚、図1については第一の実施の形態のものを共用する。
まず、図6に第二の実施の形態の制御システムの全体構成を示すが、該図6において、50は第二の実施の形態の制御装置27に設けられるエンジン・発電機制御部であり、51は第二の実施の形態の制御装置27に設けられるメモリである。前記メモリ51には、第一の実施の形態と同様に、エンジン12、発電機13の特性、パイロット設定圧、蓄電装置34の特性等の種々のデータや、後述する制御に用いられるデータであって、例えば、運転開始時の発電機13の出力値等のデータが保存されている。また、図6において、エンジン12、エンジンコントローラ26、発電機13、発電制御器14、母線15、電動機制御器16〜20、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25、メインポンプ28、メインポンプ28の容量可変手段28a、旋回減速機29、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33、サブポンプの容量可変手段33a、蓄電装置34、充電量センサ38、電圧センサ39、発電機電流センサ40、蓄電装置電流センサ41、操作検出手段42については、前記第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)であるため、説明は省略する。さらに、制御装置27に設けられる電動機・ポンプ制御部37についても、前記第一の実施の形態と同様の制御を行なうため、説明は省略する。尚、第二の実施の形態には、前記第一の実施の形態の作業ダイヤル43のようにオペレータが任意に操作する発電機出力切替え手段は設けられていない。
【0037】
図7は、第二の実施の形態のエンジン・発電機制御部50の構成を説明するブロック図であって、該エンジン・発電機制御部50は、入力側についてはメモリ51、充電量センサ38、電圧センサ39、発電機電流センサ40、蓄電装置電流センサ41が接続され、出力側にエンジンコントローラ26、発電機制御器14が接続されている。そして、エンジン・発電機制御部50は、本発明の基準時間設定手段に相当する基準時間設定部52、駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、負荷演算部46、発電機出力指令値設定部53、エンジン回転数指令値設定部48、駆動/停止切替え部49を具備して構成されている。
尚、前記基準時間設定部52、発電機出力指令値設定部53の制御構成については後述するが、駆動/停止基準値設定部44、駆動/停止判定部45、負荷演算部46、エンジン回転数指令値設定部48、駆動/停止切替え部49は前記第一の実施の形態と同様の制御を行なうように構成されている。
【0038】
つぎに、エンジン12および発電機13の制御について、前記図7のブロック図、図8のフローチャートに基づいて説明する。
ハイブリッド型油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電機制御部53は、ステップS12において、メモリ51に保存されているデータを読み込むが、前記データのなかには、運転開始時において発電機制御器14に出力する初期発電機出力指令値Pg0を含むデータを読み込む。
【0039】
続くステップS13において、充電量センサ38の検出値を読み込む。
【0040】
そして、ステップS14では、基準時間設定部52において、発電機13の出力を設定するための基準時間tsを設定する。本実施の形態において、前記基準時間tsは、充電量センサ38により検出された充電量SOCに基づいて設定されている。つまり、予めメモリ51に保存されている蓄電装置34の特性から、蓄電装置34が蓄電される場合の最大蓄電時において、前記検出された充電量SOCから満充電範囲(例えば、第一基準値SOC1または第二基準値SOC2)に達するのに要する時間tを算出し、前記算出した時間tより少し小さい値を基準時間ts(ts<t)として設定する。尚、基準時間tsは、必ずしも充電量SOCに基づいて設定する必要はなく、予め複数の基準時間を設定してメモリ51に保存し、作業状態にあわせて設定する構成としてもよく、その場合に、複数の基準時間を保存して、基準時間設定手段により任意の基準時間を選択する構成としてもよい。
【0041】
つぎのステップS15では、駆動/停止基準値設定部44において、前記第一の実施の形態と同様に、エンジン12および発電機13の駆動/停止を切替える基準値である駆動/停止基準値(第一、第二充電基準値SOC1、SOC2、負荷基準値Ps)を設定する。
【0042】
続いて、ステップS16において、充電量センサ38により検出される蓄電装置34の充電量SOCと、電圧センサ39により検出される母線15の電圧と、発電機電流センサ40により検出される発電機13の発電電流と、蓄電装置電流センサ41により検出される蓄電装置34の蓄放電電流とを読み込む。
【0043】
そして、ステップS17では、負荷演算部46において、前記各センサ38、39、40、41からの検出値に基づいてメインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用電動機21〜25により駆動されるメインポンプ28、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33が消費する負荷消費動力Pfを、前記第一の実施の形態と同様にして演算する。
【0044】
ステップS18では、発電機出力指令設定部53において、ステップ17で演算された負荷消費動力PfとステップS14で算出された基準時間tsとを用いて、基準時間tsが経過する毎に、負荷消費動力Pfの平均値を平均負荷消費動力Pavを算出する。
【0045】
続いて、ステップS19では、発電機出力指令設定部53において、基準時間tsが経過する毎に算出される平均負荷消費動力Pavと発電機13の出力が等しくなるよう、発電器制御器14に出力する発電機出力指令値Pgc(Pgc=Pav)を基準時間ts毎に設定する。これによって、発電機出力指令設定部53は、つぎの平均負荷消費動力Pavが算出されるまでのあいだ同じ発電機出力指令値Pgcを設定する。
尚、運転初期状態、あるいは、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲SOCfull内にあって、基準時間tsが0に設定される場合では、メモリ51に予め設定されている初期発電機出力指令値Pg0を発電機出力指令値Pgcとして設定する。
【0046】
そして、ステップS20では、エンジン回転数指令値設定部48において、発電機13が前記発電機出力指令値Pgcの出力を、発電機効率の高いポイントで出力するべく、エンジンコントローラ26に出力するエンジン回転数指令値ωcを設定する。ここで、前記エンジン回転数指令値ωcは、予めメモリ51に保存されている発電機13の回転数と出力値との対応表に基づいて設定され、これによって、発電機13は、平均負荷消費動力Pavに応じた発電機出力指令値Pgcを、発電機効率の高い状態で出力するように制御される構成となっている。
【0047】
そして、ステップS19、S20において発電機出力指令値Pgcとエンジン回転数指令値ωcとを設定した後は、ステップS21〜S24の制御を行なうが、該ステップS21〜S24の制御は、前述した第一の実施の形態におけるステップS8〜S11の制御と同様であるため説明を省略する。そして、ステップS23、S24の処理後は、ステップS16に戻る。
これによって、前記エンジン・発電機制御部50は、アイドリング状態ではなく、かつ、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲SOCfullでなければ、エンジン12および発電機13を駆動するように駆動/停止の切替え制御を行うとともに、エンジン12および発電機13を駆動する場合に、発電機13が平均負荷消費動力Pvcに応じた一定の出力値(発電機出力指令値Pgc)を、発電機効率の高い状態で基準時間tsのあいだ出力する制御を行うように構成されている。
【0048】
叙述の如く構成された第二の実施の形態において、エンジン12および発電機13は、蓄電装置34の蓄電量が満充電範囲SOCfullよりも少ない状態では駆動状態となるエンジン優先制御がなされて、蓄電装置34が単独で駆動することが少なくなって分担率を低下することができる。そのうえ、このものでは、発電機13が作業部の基準時間ts毎の負荷の平均値(平均負荷消費動力Pvc)と等しい一定の出力値(発電機出力指令値Pgc)で運転されるので、蓄電装置34の分担率を一層低下することができるうえ、運転状態にかかわらず蓄電装置34が満充電範囲SOCfullになりにくくすることができ、しかして蓄電装置34のロスを低減できる。そのうえ、作業中にエンジン12および発電機13が停止する場合では、蓄電装置34の蓄電量が満充電範囲SOCfullに保持されて、大きな過渡変動があったような場合であっても、蓄電装置34からの放電により円滑に作業を継続することができる。
さらに、エンジン12および発電機13が駆動する場合において、発電機13は、発電機効率よく基準時間tsのあいだ一定出力となるので、発電機13出力の変動を低減することができるうえ、発電機効率の高い状態で運転することができて、発電機13のロスが低減され、蓄電装置34のロス、発電機13のロスをトータルで改善できる。
【0049】
しかも、このものにおいて、発電機13が一定の出力値となる基準時間tsを、蓄電装置34が最大蓄電状態で満充電になるまでの時間tよりも少し少ない時間である基準時間tsに設定したので、蓄電装置34の充電量が満充電範囲SOCfullになりにくく、しかも、発電機13の出力が一定となる時間をできるだけ長くすることができて、蓄電装置34のロス、発電機13のロスのトータルでの改善を一層向上させることができる。
【0050】
さらに、本発明は、発電機および蓄電装置から電力供給される電動機として、電動機と発電機との両者の機能を備えた発電電動機を用いることもできる。例えば、旋回機構を駆動せしめる電動機を発電電動機を用いて構成することができ、この場合、発電電動機は旋回機構の制御時に発電機として機能することになる。尚、このような発電電動機を用いた場合、該発電電動機の消費動力の演算は、電動機として機能している場合と発電機として機能している場合とでプラス、マイナスの符号を異ならしめることで対応できる。
【0051】
さらに、蓄電装置は、電動機の出力に対して発電機の出力に余剰がある場合には該余剰電力を蓄電し不足する場合には該不足電力を電動機に供給するとともに、該蓄電装置の蓄放電は、前記第一、第二実施の形態では、母線の電圧と蓄電装置の電圧との差により自動的に行われる構成になっているが、これに限定されることはなく、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を行なう構成にすることもできる。この場合には、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を制御する蓄放電制御手段が必要になるとともに、制御装置は、発電機の出力と電動機の出力との差を演算し、該差に基づいて蓄放電制御手段に制御指令を出力する。
【0052】
また、本発明は、エンジンと作業部との動力伝達経路に発電機が設けられる構成であればよく、エンジンが動力伝導機構を介して油圧ポンプおよび発電電動機に機械的に接続されるパラレル式の制御システムに実施する場合では、発電電動機が発電機として機能する場合に、本発明を実施することができる。
【0053】
さらに、本発明は、ハイブリッド型油圧ショベルに限らず、種々のハイブリッド型建設機械に実施できることは勿論であるとともに、電動機により駆動される負荷も、ハイブリッド型建設機械の種類やサイズ、あるいはハイブリッド型建設機械の行なう作業内容等に応じて適宜設けられることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、エンジンにより発電機を駆動させ、該発電機と蓄電装置とから電力供給される電動機により作業部を駆動させるハイブリッド型建設機械において、蓄電装置と発電機との効率をトータルで向上させる場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ハイブリッド型油圧ショベル
12 エンジン
13 発電機
14 発電器制御器
16〜20 電動機制御器
21 メインポンプ用電動機
22 旋回用電動機
23 パイロットポンプ用電動機
24 冷却ファン用電動機
25 サブポンプ用電動機
26 エンジンコントローラ
27 制御装置
34 蓄電装置
36、50 エンジン・発電機制御部
38 充電量センサ
39 電圧センサ
40 発電機電流センサ
41 蓄電装置電流センサ
43 作業ダイヤル
44 駆動/停止基準値設定部
45 駆動/停止判定部
46 負荷演算部
47、53 発電機出力指令値設定部
48 エンジン回転数知れ位置設定部
49 駆動/停止切替え部
52 基準時間設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンの動力を受けて作動する作業部と、エンジンと作業部との動力伝達経路に接続される発電機と、発電機と作業部との動力伝達経路に接続され、エンジンの動力と作業部の要求動力との差に基づいて蓄放電する蓄電装置とを設けてなるハイブリッド型建設機械において、エンジンを駆動制御するエンジン制御手段と、発電機を駆動制御する発電機制御手段と、作業部を駆動制御する作業部制御手段と、これらエンジン制御手段、発電機制御手段、作業部制御手段に制御指令を出力する制御装置とを設けるとともに、蓄電装置の充電量を検出する充電量検出手段と、充電量検出手段の検出値に基づいてエンジンおよび発電機の駆動/停止を切替える駆動/停止切替え手段と、発電機出力を任意の出力値に設定する発電機出力設定手段と、発電機が前記任意の出力値において発電機効率を高める回転数となるためのエンジン回転数を設定するエンジン回転数設定手段とを設けて、制御装置は、蓄電装置の充電量が満充電範囲でないことの判断に基づいてエンジンおよび発電機を駆動するものとし、エンジンおよび発電機の駆動時では、発電機出力設定手段により設定された制御指令を発電機に出力する一方、エンジン回転数設定手段により設定された制御指令をエンジンに出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項2】
請求項1において、発電機出力設定手段は、オペレータが発電機出力を任意に切替えるための発電機出力切替え手段により構成されるものとし、発電機出力切替え手段は、発電機出力切替え手段の操作値に応じて発電機出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項3】
請求項1において、作業部が消費する動力を測定する負荷測定手段を設けるとともに、発電機出力設定手段は、負荷測定手段により測定される予め設定される基準時間毎の作業部の消費動力の平均値に応じて発電機出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項4】
請求項3において、基準時間設定手段を設け、基準時間を充電量検出手段の検出値に基づいて設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−7336(P2012−7336A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142746(P2010−142746)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】