説明

ハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法及び制御装置

【課題】始動モータの故障時にもエンジンを始動させ、エンジンの動力を使用することができるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法及び制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン、エンジンの始動を行う始動モータ、自動車の走行のための動力を提供する駆動モータ、及び少なくとも1つの遊星ギヤセットと少なくとも1つの摩擦部材を有するハイブリッド自動車のパワートレインにおいて、始動モータの故障を判断する段階、始動モータが故障であると判断されれば、駆動モータの動力によってエンジンを始動する段階、駆動モータの動力だけを使用して自動車が走行する段階、駆動モータの動力を使用した自動車の走行中にエンジンの動力を使用するか否かを判断する段階、及びエンジンの動力を使用すると判断されれば、エンジン及び駆動モータの動力を全て使用して自動車が走行する段階、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法及び制御装置に係り、より詳しくは、ハイブリッド自動車の始動モータの故障時にパワートレインを制御するハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド自動車はモータとエンジンを有する。なかでも始動モータ(starting motor)を駆動モータとは別に備えたハイブリッド自動車は、始動モータと、駆動モータと、エンジンと、少なくとも1つの遊星ギヤセット及び少なくとも1つの摩擦部材とが連結されてハイブリッド自動車のパワートレインを構成する。また、遊星ギヤセット及び摩擦部材の連結構造により複数の変速モードが実現される。
ここで、始動モータは、クランク軸を回転させてエンジンの始動を行うモータをいい、駆動モータは、直接的に自動車の走行を行うモータをいう。これらの始動モータ及び駆動モータはバッテリーから電源が伝達されて作動する。また、駆動モータ及びエンジンの選択的な作動によって駆動軸(drive shaft)が回転する(例えば、引用文献1〜3参照)。
【0003】
上記したハイブリッド自動車のパワートレインは、始動モータが故障すれば、エンジンの始動が不可能になる。また、エンジンの動力を使用することができないために回生制動が不可能になる。したがって、駆動モータの動力を使用した走行だけが可能であり、電池の残存容量(State Of Charging:SOC)が枯渇すると、車両の運行ができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−117840号公報
【特許文献2】特開2001−336466号公報
【特許文献3】特開2007−246030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、始動モータの故障時にもエンジンを始動させ、エンジンの動力を使用することができるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法及び制御装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的とするところは、始動モータの故障時にも回生制動を可能にするハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法及び制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法は、エンジン、エンジンの始動を行う始動モータ、自動車の走行のための動力を提供する駆動モータ、及び少なくとも1つの遊星ギヤセットと少なくとも1つの摩擦部材を有するハイブリッド自動車のパワートレインにおいて、始動モータの故障を判断する段階、始動モータが故障であると判断されれば、駆動モータの動力によってエンジンを始動する段階、駆動モータの動力だけを使用して自動車が走行する段階、駆動モータの動力を使用した自動車の走行中にエンジンの動力を使用するか否かを判断する段階、及びエンジンの動力を使用すると判断されれば、エンジン及び駆動モータの動力を全て使用して自動車が走行する段階、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記のパワートレイン制御方法は、自動車の走行中に自動車を停止させるか否かを判断する段階、及び自動車を停止させると判断されれば、駆動モータを停止させる段階、をさらに含むことが好ましい。
エンジンを始動する段階においてエンジンが始動すると、エンジンはアイドル(idle)状態に制御されることが好ましい。
【0008】
本発明の他の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置は、第1動力源であるエンジン、エンジンを始動させるための始動モータ、第2動力源である駆動モータ、第1サンギヤ、第1遊星キャリア、及び第1リングギヤをその作動部材として保有し、第1遊星キャリアはエンジンに直接連結し、第1リングギヤは始動モータに直接連結する第1遊星ギヤセット、第2サンギヤ、第2遊星キャリア、及び第2リングギヤをその作動部材として保有し、第2サンギヤは第1サンギヤ及び駆動モータに直接連結し、第2遊星キャリアは出力軸に直接連結する第2遊星ギヤセット、第1遊星ギヤセットを直結させる第1クラッチ、第1遊星キャリアを第2リングギヤに選択的に連結させる第2クラッチ、第1リングギヤを変速機ケースに選択的に連結させる第1ブレーキ、第2リングギヤを変速機ケースに選択的に連結させる第2ブレーキ、及びエンジン、始動モータ、駆動モータ、第1、2クラッチ、及び第1、2ブレーキの作動を制御する制御部、を有し、制御部は、始動モータが故障であると判断されれば、第1クラッチを結合させ、第2ブレーキを解除させて、駆動モータの動力をエンジンに印加し、それによってエンジンを始動させることを特徴とする。
【0009】
エンジンの始動が完了すると、制御部は第1クラッチを解除することによってエンジンをアイドル状態に制御することが好ましい。
エンジンの始動が完了した後、自動車が駆動モータの動力によって走行しなければならない場合、制御部は第2ブレーキを結合させることが好ましい。
エンジンの始動が完了した後、エンジンの動力を使用して自動車が走行しなければならない場合、制御部は第1クラッチを結合させることが好ましい。
制御部は、自動車が停止しなければならない場合、第1クラッチを解除し、駆動モータを停止させることが好ましい。
制御部は、エンジンを制御するエンジン制御ユニット、第1、2クラッチと第1、2ブレーキを制御する変速機制御ユニット、及び始動モータと駆動モータを制御するモータ制御ユニット、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施例によれば、始動モータの故障時にもエンジンの始動を行うことができ、エンジンの動力を使用することができる。したがって、始動モータの故障時にもハイブリッド自動車の正常な走行が可能である。
また、始動モータの故障時にも回生制動を行うことができる。したがって、ハイブリッド自動車の商品価値の向上及び信頼の確保が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレインの構成図である。
【図2】は、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法であり、(a)は駆動モータの動力を使用してエンジンを始動させる段階の段階別速度線図、(b)は、始動した後、エンジンがアイドル(idle)状態に制御される段階別速度線図、(c)は、停止状態から駆動モータだけで自動車が走行する段階別速度線図、(d)は、エンジンの動力を使用して自動車が加速される段階別速度線図、(e)は、エンジンの動力によって加速された自動車が減速され駆動モータだけで自動車が走行する段階別速度線図、(f)は自動車が停止する段階別速度線図である。
【図3】本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法のフローチャートである。
【図4】本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレインの構成図である。図1に示したとおり、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレインは、エンジン10、始動モータ20、駆動モータ30、第1、2入力軸(IS1、IS2)、出力軸(OS)、及び第1、2遊星ギヤセット(PG1、PG2)からなる。
エンジン10は、第1入力軸(IS1)に動力を伝達する。
始動モータ20は、エンジン10に動力を伝達してエンジン10を始動させる。
駆動モータ30は、第2入力軸(IS2)に動力を伝達する。
始動モータ20及び駆動モータ30はバッテリー40から電源の伝達を受けて作動し、動力を生み出す。
【0013】
第1入力軸(IS1)は、エンジン10の選択的な作動によって伝達された動力を第1遊星ギヤセット(PG1)に伝達する。
第2入力軸(IS2)は、駆動モータ30の選択的な作動によって伝達された動力を第2遊星ギヤセット(PG2)に伝達する。
出力軸(OS)は、パワートレインから動力を出力する。
第1遊星ギヤセット(PG1)は、第1サンギヤ(S1)、第1遊星キャリア(PC1)、及び第1リングギヤ(R1)をその作動部材として含むシングルピニオン遊星ギヤセットである。第1遊星キャリア(PC1)は、第1サンギヤ(S1)及び第1リングギヤ(R1)にギヤ結合する第1ピニオンギヤ(図示せず)を回転可能に支持する。
【0014】
第2遊星ギヤセット(PG2)は、第2サンギヤ(S2)、第2遊星キャリア(PC2)、及び第2リングギヤ(R2)をその作動部材として含むシングルピニオン遊星ギヤセットである。第2遊星キャリア(PC2)は、第2サンギヤ(S2)及び第2リングギヤ(R2)にギヤ結合する第2ピニオンギヤ(図示せず)を回転可能に支持する。
第1遊星ギヤセット(PG1)及び第2遊星ギヤセット(PG2)は同一軸線上に配置することができる。
第1サンギヤ(S1)及び第2サンギヤ(S2)は駆動モータ30に直接連結される。
【0015】
第1遊星キャリア(PC1)はエンジン10に直接連結され、第1リングギヤ(R1)に選択的に連結され、第2リングギヤ(R2)に選択的に連結される。第1遊星キャリア(PC1)と第1リングギヤ(R1)の連結は第1ピニオンギヤによる連結とは別個であり、第1遊星ギヤセット(PG1)を直結させるためのものである。
第1リングギヤ(R1)は始動モータ20に直接連結され、変速機ケース50に選択的に連結される。
第2リングギヤ(R2)は変速機ケース50に選択的に連結される。
第2遊星キャリア(PC2)は出力軸(OS)に直接連結される。
【0016】
また、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレインは、第1、2遊星ギヤセット(PG1、PG2)の作動部材を選択的に相互連結させるか、または変速機ケース50に選択的に連結させる、複数の摩擦部材(CL1、CL2、BK1、BK2)を有する。
第1クラッチ(CL1)は第1遊星キャリア(PC1)を第1リングギヤ(R1)に選択的に連結させ、第2クラッチ(CL2)は第1遊星キャリア(PC1)を第2リングギヤ(R2)に選択的に連結させる。
第1ブレーキ(BK1)は第1リングギヤ(R1)を変速機ケース50に選択的に連結させ、第2ブレーキ(BK2)は第2リングギヤ(R2)を変速機ケース50に選択的に連結させる。
【0017】
図2は、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法の段階別速度線図である。
図2に示したとおり、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法は、始動モータ20の故障時にもエンジン10及び駆動モータ30の動力を選択的に使用することによって自動車の加速及び減速を行うことができる。この作動は、第1クラッチ(CL1)及び第2ブレーキ(BK2)の制御によって行われる。
【0018】
以下、図1及び図2を参照して、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法の段階別作動状態を説明する。
作動状態の説明に先立って、エンジンの始動及び作動、そしてその動力を使用した自動車の加速を扱う本発明の実施例では、複数の変速モードの実現に必要な第2クラッチ(CL2)及び第1ブレーキ(BK1)は解除されていると仮定する。
【0019】
図2(a)は、駆動モータ30の動力を使用してエンジン10を始動させる段階を示す。
図1において、駆動モータ30がバッテリー40から電源の供給を受けて作動すると、第2入力軸(IS2)によって駆動モータ30と直接連結された第2サンギヤ(S2)、及び第2サンギヤ(S2)に直接連結された第1サンギヤ(S1)が互いに同一の速度で回転する。この時、第1クラッチ(CL1)を結合させ、第2ブレーキ(BK2)を解除させれば、第1クラッチ(CL1)の結合によって第1遊星キャリア(PC1)と第1リングギヤ(R1)が連結されて、第1遊星ギヤセット(PG1)を構成する3個の作動部材(S1、PC1、R1)は同一の速度で回転する。したがって、第1入力軸(IS1)によって第1遊星キャリア(PC1)と直接連結されたエンジン10に動力が伝達されて、エンジン10の始動が行われる。この時、第2遊星キャリア(PC2)は回転せず、自動車は停止状態を維持する。ここでは、自動車が停止した状態で始動させることを例示したが、これに限定されない。すなわち、自動車が運行中の状態でも始動することができ、この時には第2ブレーキ(BK2)が結合されないため、第2リングギヤ(R2)は第2サンギヤ(S2)と第2遊星キャリア(PC2)の速度によって回転する。
【0020】
図2(b)は、始動した後、エンジン10がアイドル(idle)状態に制御される段階を示す。
図2(a)の状態で第1クラッチ(CL1)が解除されると、エンジン10がアイドル(idle)状態に制御されて、一定の速度まで加速される。また、エンジン10と駆動モータ30は互いに拘束しないため、駆動モータ30はもとの速度で回転し、自動車は停止状態を維持する。
【0021】
図2(c)は、駆動モータ30だけで自動車が走行する段階を示す。
図2(b)の状態で第2ブレーキ(BK2)が結合されると、第2リングギヤ(R2)が停止することによって第2遊星キャリア(PC2)は一定の速度で回転する。すなわち、自動車は駆動モータ30の動力によって一定の速度で走行する。
また、図2(b)及び図2(c)に示した段階において、第1クラッチ(CL1)の解除と第2ブレーキ(BK2)の結合は同時に行われる。
【0022】
図2(d)は、エンジン10の動力を使用して自動車が加速される段階を示す。
図2(c)の状態で第1クラッチ(CL1)が結合されると、第1遊星キャリア(PC1)と第1リングギヤ(R1)が連結されて、第1遊星ギヤセット(PG1)を構成する3個の作動部材(S1、PC1、R1)が同一の速度で回転する。したがって、エンジン10の速度は第1、2サンギヤ(S1、S2)を通じて第2遊星ギヤセット(PG2)に入力され、エンジン10の動力と駆動モータ30の動力が合わせられることによって自動車は加速される。
【0023】
図2(e)に示した段階は、図2(c)に示した段階と同様に駆動モータ30だけで自動車が走行する段階を示す。ただし、図2(c)は、停止状態の自動車が走行を始める段階を示し、図2(e)は、エンジン10の動力によって加速された自動車が減速される段階を示す。
図2(d)の状態で第1クラッチ(CL1)が解除されると、エンジン10は再びアイドル状態で制御され、駆動モータ30は図2(c)の段階と同様にもとの速度で回転する。すなわち、自動車は駆動モータ30の動力だけで走行する速度に減速される。
【0024】
図2(f)は、自動車が停止する段階を示す。
図2(c)及び図2(e)の状態で駆動モータ30の作動が停止すると、第2遊星ギヤセット(PG2)を構成する3個の作動部材(S2、PC2、R2)が全て回転を止める。したがって、自動車が停止する。また、図2(d)の状態でも第1クラッチ(CL1)の解除及び駆動モータ30の停止が同時に行われて自動車を停止させる。
【0025】
図1、2を参照して説明した作動は、図4に示した制御部100によって行われる。制御部100は、中央制御ユニット60、エンジン制御ユニット70、変速機制御ユニット90、及びモータ制御ユニット80などを有する。
中央制御ユニット60は、自動車の運転状況に応じてエンジン制御ユニット70、変速機制御ユニット90、及びモータ制御ユニット80と信号を送受信して、各構成要素の制御を行う。
エンジン制御ユニット70及びモータ制御ユニット80は、それぞれエンジン10とモータ20、30を制御する。また、変速機制御ユニット90は、摩擦部材(CL1、CL2、BK1、BK2)を結合または解除することによって、エンジン10及び/またはモータ20、30の動力を所望のギヤ比によって変換する。すなわち、変速機55を制御する。
このような制御ユニットは、当業者によく知られているので、詳しい説明は省略する。ただし、本発明の実施例では複数の制御ユニットなどを示したが、これに限定されず、一つの制御ユニットによる構成要素の総括的な制御が可能であるのは勿論である。
【0026】
図3は、本発明の実施例によるハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法のフローチャートである。
図3に示したとおり、エンジン10を始動させる場合、エンジン10を始動させる始動モータ20の故障を判断する(S100)。この故障判断(S100)は、エンジン10の動力を必要とするときに備えて、事前に行うことも可能である。
故障判断(S100)の方法は、当該技術分野で通常の知識を有する者によく知られているので、ここでは詳細な説明を省略する。
始動モータ20が故障でないと判断されれば、始動モータ20の動力を使用したエンジン10の正常的な始動が行われ、制御部100はS100段階に戻る。
【0027】
一方、始動モータ20が故障であると判断されれば、制御部100は第1クラッチ(CL1)を結合させ、第2ブレーキ(BK2)を解除させる(S110)。したがって、図2(a)に示したとおり、駆動モータ30の動力を使用してエンジン10を始動させる(S120)。エンジン10の始動は、第1遊星ギヤセット(PG1)を構成する3個の作動部材(S1、PC1、R1)が一体に回転することによって、エンジン10が駆動モータ30の動力の伝達を受けて行われる。
万一、駆動モータ30が作動していなければ、制御部100がS110段階を行う前に駆動モータ30を先に作動させる。
エンジン10の始動が完了すると、制御部100は第1クラッチ(CL1)を解除する(S130)。したがって、図2(b)に示したとおり、エンジン10がアイドル(idle)状態に制御される(S140)。また、エンジン10がアイドル状態に制御されると、エンジン10の速度は一定の速度まで加速される。
【0028】
エンジン10がアイドル状態に制御される途中、制御部100は第2ブレーキ(BK2)を結合させる(S150)。したがって、図2(c)に示したとおり、駆動モータ30だけの動力を使用して自動車が一定の速度で走行する(S160)。すなわち、第2ブレーキ(BK2)の作動によって第2リングギヤ(R2)が停止するので、第2遊星キャリア(PC2)が一定の速度で回転する。したがって、自動車は一定の速度で走行する。
なお、S130段階乃至S160段階は同時に行うことができる。
【0029】
自動車の走行が始まると、制御部100はエンジン10の動力を使用するか否かを判断する(S170)。
S170段階でエンジン10の動力を使用すると判断されれば、制御部100は第1クラッチ(CL1)を結合する(S180)。図2(d)に示したとおり、第1クラッチ(CL1)が結合されると、エンジン10の動力は第1、2サンギヤ(S1、S2)を通じて第2遊星ギヤセット(PG2)に伝達される。
エンジン10の動力を使用しないと判断されれば、制御部100は第1クラッチ(CL1)が解除された状態を維持する(S190)。この場合、エンジン10はアイドル状態に制御され、駆動モータ30はもとの速度で回転する。すなわち、エンジン10及び駆動モータ30が互いに拘束されないため、自動車は駆動モータ30だけの動力によって走行する。
【0030】
その後、制御部100は自動車を停止させるか否かを判断する(S200)。
自動車が停止しなくても良いと判断されれば、制御部100はS170段階に戻る。
一方、自動車を停止させなければならないと判断されれば、制御部100は第1クラッチ(CL1)を解除し、駆動モータ30を停止させる(S210)。図2(f)に示したとおり、第2リングギヤ(R2)が停止した状態で駆動モータ30が停止することによって、第2遊星ギヤセット(PG2)を構成する3個の作動部材(S2、PC2、R2)が全て回転を止める。
また、第1クラッチ(CL1)が解除されているので、エンジン10の動力は第2遊星ギヤセット(PG2)に伝達されない。したがって、自動車は停止する(S220)。
【0031】
前述のとおり本発明の実施例によれば、始動モータの故障時にもエンジンの始動を行うことができ、エンジンの動力を使用することができる。したがって、始動モータの故障時にもハイブリッド自動車の正常的な走行が可能である。
また、始動モータの故障時にも回生制動を行うことができる。したがって、ハイブリッド自動車の商品性及び信頼性の向上が可能である
【0032】
以上、本発明を好ましい実施例に基づいて詳しく説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるのではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を習得した者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
10 エンジン
20 始動モータ(MG1)
30 駆動モータ(MG2)
40 バッテリー
50 変速機ケース
55 変速機
60 中央制御ユニット
70 エンジン制御ユニット
80 モータ制御ユニット
90 変速機制御ユニット
100 制御部
BK1 第1ブレーキ
BK2 第2ブレーキ
CL1 第1クラッチ
CL2 第2クラッチ
IS1 第1入力軸
IS2 第2入力軸
OS 出力軸
PC1 第1遊星キャリア
PC2 第2遊星キャリア
PG1 第1遊星ギヤセット
PG2 第2遊星ギヤセット
R1 第1リングギヤ
R2 第2リングギヤ
S1 第1サンギヤ
S2 第2サンギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、該エンジンの始動を行う始動モータ、自動車の走行のための動力を提供する駆動モータ、及び少なくとも1つの遊星ギヤセットと少なくとも1つの摩擦部材を有するハイブリッド自動車のパワートレインにおいて、
前記始動モータの故障を判断する段階、
前記始動モータが故障であると判断されれば、前記駆動モータの動力によって前記エンジンを始動する段階、
前記駆動モータの動力だけを使用して自動車が走行する段階、
前記駆動モータの動力を使用した自動車の走行中に前記エンジンの動力を使用するか否かを判断する段階、及び
前記エンジンの動力を使用すると判断されれば、前記エンジン及び前記駆動モータの動力を全て使用して自動車が走行する段階、
を含むことを特徴とするハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法。
【請求項2】
前記パワートレイン制御方法は、自動車の走行中に自動車を停止させるか否かを判断する段階、及び
自動車を停止させると判断されれば、前記駆動モータを停止させる段階、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法。
【請求項3】
前記エンジンを始動する段階において、前記エンジンが始動すると、前記エンジンはアイドル(idle)状態に制御されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車のパワートレイン制御方法。
【請求項4】
第1動力源であるエンジン、
前記エンジンを始動させるための始動モータ、
第2動力源である駆動モータ、
第1サンギヤ、第1遊星キャリア、及び第1リングギヤをその作動部材として保有し、前記第1遊星キャリアは前記エンジンに直接連結し、前記第1リングギヤは前記始動モータに直接連結する第1遊星ギヤセット、
第2サンギヤ、第2遊星キャリア、及び第2リングギヤをその作動部材として保有し、前記第2サンギヤは前記第1サンギヤ及び前記駆動モータに直接連結し、前記第2遊星キャリアは出力軸に直接連結する第2遊星ギヤセット、
前記第1遊星ギヤセットを直結させる第1クラッチ、
前記第1遊星キャリアを前記第2リングギヤに選択的に連結させる第2クラッチ、
前記第1リングギヤを変速機ケースに選択的に連結させる第1ブレーキ、
前記第2リングギヤを前記変速機ケースに選択的に連結させる第2ブレーキ、及び
前記エンジン、前記始動モータ、前記駆動モータ、前記第1、2クラッチ、及び前記第1、2ブレーキの作動を制御する制御部、
を有し、
前記制御部は、前記始動モータが故障であると判断されれば、前記第1クラッチを結合させ、前記第2ブレーキを解除させて、前記駆動モータの動力を前記エンジンに印加し、それによって前記エンジンを始動させることを特徴とするハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置。
【請求項5】
前記エンジンの始動が完了すると、前記制御部は前記第1クラッチを解除することによって前記エンジンをアイドル状態に制御することを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置。
【請求項6】
前記エンジンの始動が完了した後、自動車が前記駆動モータの動力によって走行しなければならない場合、前記制御部は前記第2ブレーキを結合させることを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置。
【請求項7】
前記エンジンの始動が完了した後、前記エンジンの動力を使用して自動車が走行しなければならない場合、前記制御部は前記第1クラッチを結合させることを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置。
【請求項8】
制御部は、前記自動車が停止しなければならない場合、前記第1クラッチを解除し、前記駆動モータを停止させることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記エンジンを制御するエンジン制御ユニット、
前記第1、2クラッチと前記第1、2ブレーキを制御する変速機制御ユニット、及び
前記始動モータと前記駆動モータを制御するモータ制御ユニット、
を有することを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド自動車のパワートレイン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10487(P2013−10487A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250048(P2011−250048)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】