説明

ハイブリッド車両の冷却装置

【課題】ハイブリッド車両の冷却装置において、車両前方からの外力作用時に、電動ウォータポンプが車両後方へ移動するラジエータと駆動装置との間に挟まれて損傷することを防止することにある。
【解決手段】エンジンルーム(6)の前面部に配置されるラジエータ(30)とインバータ(41)及び駆動装置(10)との間をモータ機器用冷却回路(44)によって連結し、モータ機器用冷却回路(44)に冷却水を循環させる電動ウォータポンプ(45)を配置し、駆動装置(10)を車体(4)に支持するマウント装置(15)を駆動装置(10)の車両幅方向(Y)側方に配置し、マウント装置(15)の下方に電動ウォータポンプ(45)を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両の冷却装置に係り、特に電動ウォータポンプを保護するハイブリッド車両の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両には、エンジンの車両幅方向側部に、エンジンで駆動される発電機と走行用モータとデファレンシャル装置とを備えた駆動装置を配置し、この駆動装置の上方に走行用モータに供給する電力を変換するインバータを配設したものがある。
また、ラジエータとインバータ及び駆動装置との間をモータ機器用冷却回路によって連結し、このモータ機器用冷却回路に冷却水を循環させる電動ウォータポンプを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112519号公報
【0004】
特許文献1に係るウォータポンプの取り付け構造は、ブラケット部と電動ウォータポンプとの間に中間プレートを配置し、電動ウォータポンプと中間プレートとの間に防振ブッシュを介設し、中間プレートとブラケット部間に防振ブッシュを介設し、そして、電動ウォータポンプを車体側の下部に取り付けたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、上記の特許文献1においては、電動ウォータポンプがラジエータと駆動装置とに挟まれた空間に配置されているため、車両前方からの外力作用時に、車両後方へ移動するラジエータが電動ウォータポンプに衝接してしまい、電動ウォータポンプが損傷するおそれがあった。
また、電動ウォータポンプを駆動装置の上方に配置した場合に、冷却水が漏れると周辺部品にかかり易くなって、ゴム部品等の周辺部品を劣化させるおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、車両前方からの外力作用時に、電動ウォータポンプを保護できるとともに、電動ポンプから漏れた冷却水が周辺部品にかからない構造とするハイブリッド車両の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、エンジンによって駆動される発電機と走行用モータとデファレンシャル装置とを備えた駆動装置を設け、この駆動装置をエンジンルームに搭載される前記エンジンの車両幅方向側部に取り付け、前記走行用モータに供給する電力を変換するインバータを前記駆動装置の上方に配置し、前記エンジンルームの前面部に配置されるラジエータと前記インバータ及び前記駆動装置との間をモータ機器用冷却回路によって連結し、このモータ機器用冷却回路に冷却水を循環させる電動ウォータポンプを配置したハイブリッド車両の冷却装置において、前記駆動装置を車体に支持するマウント装置を前記駆動装置の車両幅方向側方に配置し、前記マウント装置の下方に前記電動ウォータポンプを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のハイブリッド車両の冷却装置は、車両前方からの外力作用時に、電動ウォータポンプを保護できるとともに、電動ポンプから漏れた冷却水が周辺部品にかからなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は駆動装置の左後方斜視図である。(実施例)
【図2】図2は駆動装置の正面図である。(実施例)
【図3】図3は車両前部の左側面図である。(実施例)
【図4】図4は車両前部の平面図である。(実施例)
【図5】図5は冷却装置のシステム構成図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、車両前方からの外力作用時に、電動ウォータポンプを保護するとともに、電動ポンプから漏れた冷却水が周辺部品にかからなくする目的を、駆動装置を車体に支持するマウント装置を駆動装置の車両幅方向側方に配置し、マウント装置の下方に電動ウォータポンプを配置して実現する。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
図1〜図4において、1はハイブリッド車両(以下「車両」という)、2は車両ボディ、3R・3Lは右前輪・左前輪、4は車体、5R・5Lは車体4を構成する右サイドフレーム・左サイドフレーム、6はエンジンルーム、7はダッシュパネルである。
エンジンルーム6内には、パワーユニット8が搭載される。このパワーユニット8は、エンジン9と、このエンジン9に連結した駆動装置10とからなる。
エンジン9は、図4に示すように、車両中心線1Cよりも右方に配設されている。
駆動装置10は、エンジン9によって駆動される発電機11と走行用モータ12とデファレンシャル装置13とを備え、エンジン9の車両幅方向Yの側部に取り付けられる。つまり、駆動装置10においては、エンジン9の左端部に発電機11が連結され、この発電機11と略同位置で車両前後方向Xの後方に走行用モータ12が配設され、この走行用モータ12の車両右方で且つ下方にデファレンシャル装置13が配設されている。
パワーユニット8は、右端部がエンジン9に連結した右側マウント装置14によって右サイドフレーム5Rに弾性的に支持され、左端部が発電機11に連結した左側マウント装置15によって左サイドフレーム5Lに弾性的に支持され、後端部が走行用モータ12に連結した中央部位の後側マウント装置16によって後側クロスメンバ17に弾性的に支持されている。
【0012】
右側マウント装置14は、図2に示すように、エンジン9に連結した右側ユニット用マウントブラケット18と、右サイドフレーム5Rに連結した右側車体用マウントブラケット19と、この右側ユニット用マウントブラケット18と右側車体用マウントブラケット19との間に介設した右側マウントゴム20とを備え、パワーユニット8の右端部を右側サイドフレーム5Rに弾性的に支持する。
左側マウント装置15は、図1、図2に示すように、発電機11に連結した左側ユニット用マウントブラケット21と、左サイドフレーム5Lに連結した左側車体用マウントブラケット22と、この左側ユニット用マウントブラケット21と左側車体用マウントブラケット22との間に介設した左側マウントゴム23とを備え、パワーユニット8の左端部を左側サイドフレーム5Lに弾性的に支持する。
後側マウント装置16は、図3、図4に示すように、走行用モータ12に連結した後側ユニット用マウントブラケット24と、後側クロスメンバ17に連結した後側車体用マウントブラケット25と、この後側ユニット用マウントブラケット24と後側車体用マウントブラケット25との間に介設した後側マウントゴム26とを備え、パワーユニット8の後端部を後側クロスメンバ17に弾性的に支持する。
【0013】
車両1には、図5に示すように、冷却装置27が設けられる。この冷却装置27は、エンジン9を冷却するエンジン用冷却装置28と、駆動装置10及び後述するインバータ41を冷却する駆動装置用冷却装置29とからなる。
エンジン用冷却装置28においては、図2〜図4に示すように、駆動装置10の前面部に、エンジン9の冷却水を冷却するエンジン用ラジエータ30が配置されている。このエンジン用ラジエータ30の後面部には、エンジン用冷却ファン31が取り付けられている。このエンジン用冷却ファン31の後方には、リザーブタンク32が配置されている。
エンジン9には、図5に示すように、冷却水取入口にエンジン9の冷却水をエンジン用冷却回路33で循環させるエンジン用ウォータポンプ34が備えられ、冷却水取出口にサーモスタット35が備えられている。
エンジン用冷却回路33は、図5に示すように、サーモスタット35とエンジン用ラジエータ30間の第1エンジン用冷却水管36と、エンジン用ラジエータ30とエンジン用ウォータポンプ34間の第2エンジン用冷却水管37とを備える。
【0014】
駆動装置用冷却装置29においては、図2〜図4に示すように、エンジン9の前面部に、駆動装置10の冷却水を冷却する駆動装置用ラジエータ38が配置されている。この駆動装置用ラジエータ38の前面部には、駆動装置用冷却ファン39が取り付けられている。
駆動装置10の上方には、図1〜図3に示すように、走行用モータ12に供給する電力を変換するインバータ41が配置されている。このインバータ41は、左端部を夫々左サイドフレーム5Lに連結した前側取付用ブラケット42と後側取付用ブラケット43とを介して発電機11及び走行用モータ12の上方の空間に配設されている。
図5に示すように、エンジンルーム6の前面部に配置される駆動装置用ラジエータ38とインバータ41及び駆動装置10との間は、モータ機器用冷却回路44によって連結されている。このモータ機器用冷却回路44には、冷却水を循環させる電動ウォータポンプ45が配置されている。
モータ機器用冷却回路44は、図5に示すように、駆動装置用ラジエータ38と電動ウォータポンプ45間の第1機器用冷却水管46と、電動ウォータポンプ45とインバータ41間の第2機器用冷却水管47と、インバータ41と走行用モータ12間の第3機器用冷却水管48と、走行用モータ12と発電機11間の第4機器用冷却水管49と、発電機11と駆動装置用ラジエータ38間の第5機器用冷却管50とを備える。また、インバータ41とリザーブタンク32とは、連絡冷却水管51で連絡している。
【0015】
電動ウォータポンプ45は、図1に示すように、駆動装置10を車体4に支持するマウント装置である左側マウント装置15を駆動装置10の車両幅方向Yの左側方に配置して、その左側マウント装置15の下方に配置され、よって、モータ機器用冷却回路44の鉛直方向で低部に配置される。
電動ウォータポンプ45は、第1電動ウォータポンプ45Aと第2電動ウォータポンプ45Bとからなる複数個のポンプによって構成される。図1、図2に示すように、第1電動ウォータポンプ45Aは、左側ユニット用マウントブラケット21の側面に複数のブラケット用取付ボルト52で固定された第1ポンプ支持用ブラケット53によって支持され、左側ユニット用マウントブラケット21の下方の空間に配置されている。また、第2電動ウォータポンプ45Bは、左側ユニット用マウントブラケット21の下部に固定される第2ポンプ支持用ブラケット54によって支持され、左側ユニット用マウントブラケット21の下方の空間に配置されている。
【0016】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に係る発明は、駆動装置10を車体4に支持するマウント装置である左側マウント装置15を駆動装置10の車両幅方向Yの左側方に配置し、左側マウント装置15の下方に電動ウォータポンプ45を配置している。
このような構造によって、車両前方からの外力作用時に、電動ウォータポンプ45が車両後方へ移動するエンジン用ラジエータ30と駆動装置10との間に挟まれて損傷することを防止できる。また、電動ウォータポンプ45をモータ機器用冷却回路44中の鉛直方向で低部に配置できるため、電動ウォータポンプ45から冷却水が漏れた場合、冷却水が周辺部品にかかることを防止できる。更に、電動ウォータポンプ45をモータ機器用冷却回路44中の鉛直方向で低部に配置できるため、モータ機器用冷却回路44中に混入したエアが電動ウォータポンプ45内に滞留してエアロックすることを防止できる。
また、請求項2に係る発明では、左側マウント装置15は、一端が駆動装置10に連結されともに他端が車体4に弾性的に支持されるマウントブラケットである左側ユニット用マウントブラケット21を備え、電動ウォータポンプ45を左側ユニット用マウントブラケット21に支持している。
これにより、車両前方からの外力作用時に、左側ユニット用マウントブラケット21を電動ウォータポンプ45への周辺部品の衝突を防止するガードとして機能させ、電動ウォータポンプ45を保護できる。また、電動ウォータポンプ45を左側ユニット用マウントブラケット21と一体化した状態で駆動装置10へ組み付けでき、電動ウォータポンプ45の組付性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明の冷却装置は、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 車両
4 車体
6 エンジンルーム
8 パワーユニット
9 エンジン
10 駆動装置
11 発電機
12 走行用モータ
13 デファレンシャル装置
14 右側マウント装置
15 左側マウント装置
16 後側マウント装置
21 左側ユニット用マウントブラケット
22 左側車体用マウントブラケット
23 左側マウントゴム
27 冷却装置
30 エンジン用ラジエータ
33 エンジン用冷却回路
38 駆動装置用ラジエータ
41 インバータ
44 モータ機器用冷却回路
45 電動ウォータポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって駆動される発電機と走行用モータとデファレンシャル装置とを備えた駆動装置を設け、この駆動装置をエンジンルームに搭載される前記エンジンの車両幅方向側部に取り付け、前記走行用モータに供給する電力を変換するインバータを前記駆動装置の上方に配置し、前記エンジンルームの前面部に配置されるラジエータと前記インバータ及び前記駆動装置との間をモータ機器用冷却回路によって連結し、このモータ機器用冷却回路に冷却水を循環させる電動ウォータポンプを配置したハイブリッド車両の冷却装置において、前記駆動装置を車体に支持するマウント装置を前記駆動装置の車両幅方向側方に配置し、前記マウント装置の下方に前記電動ウォータポンプを配置したことを特徴とするハイブリッド車両の冷却装置。
【請求項2】
前記マウント装置は一端が前記駆動装置に連結されともに他端が車体に弾性的に支持されるマウントブラケットを備え、前記電動ウォータポンプを前記マウントブラケットに支持したことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−68229(P2011−68229A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219973(P2009−219973)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】