説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】ハイブリッド車両において、変速比モードの切り替えビジーの発生を低減すると共に、燃費を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両(10)の制御装置(100)は、目標駆動トルク及び駆動軸回転数に応じて変速比モードの切り替えを制御する制御手段(110)を備え、制御手段は、変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替え、及び、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えのうちいずれか一方の切り替えを車速に応じて選択し、該選択した一方の切り替えの際には、変速比モードの切り替えを所定時間禁止して、切り替え前の変速比モードを継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハイブリッド車両として、内燃機関及びモータジェネレータを駆動源として備え、変速比モードを無段変速比モード及び固定変速比モード間で切り替え可能に構成されたものが知られている(例えば特許文献1から3参照)。無段変速比モードは、モータジェネレータの回転数を連続的に変化させることにより内燃機関の機関回転数を連続的に変化させる変速比モードであり、固定変速比モードは、内燃機関の機関回転数が、駆動軸(或いは駆動輪)の回転数により一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)変速比モードである。
【0003】
このようなハイブリッド車両では、変速比モードの切り替えが頻繁になされる切り替えビジー(或いは「ビジーシフト」又は「ビジー変速」)が発生する場合がある。切り替えビジーが発生すると、例えば、変速比モードの切り替えに伴う内燃機関の機関回転数の変動により運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。
【0004】
例えば特許文献1では、変速比モードが無段変速比モード及び固定変速比モード間で切り替わるモード遷移の発生が検出されたときに、遷移前の変速比モードを所定時間保持することで、切り替えビジー(モードチャッタリング)を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−25483号公報
【特許文献2】特開2006−300274号公報
【特許文献3】特開2005−16570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1に開示された技術では、遷移前の変速比モードを所定時間保持するので、車速によっては、燃費(単位燃料消費量当たりの走行距離)が悪化してしまうおそれがあるという技術的問題点がある。例えば、変速比モードを固定変速比モードから無段変速比モードに切り替える際に固定変速比モードを所定時間継続させた場合には、車速が低いほど、燃料消費量が増大してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、変速比モードの切り替えビジーの発生を低減すると共に、燃費を向上させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は上記課題を解決するために、内燃機関及びモータジェネレータを駆動源として備え、変速比モードを無段変速比モード及び固定変速比モード間で切り替え可能に構成されたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、目標駆動トルク及び駆動軸回転数に応じて前記変速比モードの切り替えを制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記変速比モードの前記無段変速比モードから前記固定変速比モードへの切り替え、及び、前記変速比モードの前記固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えのうちいずれか一方の切り替えを車速に応じて選択し、該選択した一方の切り替えの際には、前記変速比モードの切り替えを所定時間禁止して、切り替え前の変速比モードを継続させる。
【0009】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、その制御対象となるハイブリッド車両は、内燃機関及びモータジェネレータを駆動源として備え、変速比モードを無段変速比モード及び固定変速比モード間で切り替え可能に構成されている。ここで、無段変速比モードは、モータジェネレータの回転数を連続的に変化させることにより内燃機関の機関回転数を連続的に変化させる変速比モードであり、固定変速比モードは、内燃機関の機関回転数が、駆動軸(或いは駆動輪)の回転数により一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)変速比モードである。ハイブリッド車両は、内燃機関及びモータジェネレータに加えて、例えば、相互に差動回転可能に構成された、内燃機関の出力軸に連結される第1回転要素、モータジェネレータの回転軸に連結される第2回転要素、及び駆動輪に連結された駆動軸に連結される第3回転要素を有する動力分割機構と、モータジェネレータの回転軸に連結された第1係合要素及び該第1係合要素に係合可能な第2係合要素を有し、第1及び第2係合要素が互いに係合することにより、モータジェネレータの回転軸を停止した状態で固定(或いはロック)可能なロック機構とを更に備えている。ロック機構が解放状態(即ち、第1及び第2係合要素が互いに係合しない状態)である場合には、無段変速比モードを実現可能であり、ロック機構が係合状態((即ち、第1及び第2係合要素が互いに係合した状態))である場合には、固定変速比モードを実現可能である。
【0010】
本発明では、制御手段は、目標駆動トルク及び駆動軸回転数(或いは車速)に応じて変速比モードの切り替えを制御する。具体的には、例えば、制御手段は、目標駆動トルクと駆動軸回転数とによって規定され、無段変速比モード領域及び固定変速比モード領域が設定されたマップ上において、基本的には、現在の運転動作点の位置に応じて、変速比モードの切り替えを制御する。無段変速比モード領域は、変速比モードを無段変速比モードとすべき領域として予め設定された領域であり、固定変速比モード領域は、変速比モードを固定変速比モードとすべき領域として予め設定された領域である。例えば、制御手段は、変速比モードが無段変速比モードで運転中に、マップ上における現在の運転動作点が固定変速比モード領域に位置するようになった場合には、変速比モードを無段変速比モードから固定変速比モードへ切り替える。また、制御手段は、変速比モードが固定変速比モードで運転中に、マップ上における現在の運転動作点が無段変速比モード領域に位置するようになった場合には、変速比モードを固定変速比モードから無段変速比モードへ切り替える。
【0011】
本発明では特に、制御手段は、変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替え、及び、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えのうちいずれか一方の切り替えを車速に応じて選択し、該選択した一方の切り替えの際には、変速比モードの切り替えを所定時間禁止して、切り替え前の変速比モードを継続させる。例えば、制御手段は、車速が高車速(即ち、例えば時速80km等の所定の基準速度よりも高速な車速)である場合には、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを一方の切り替えとして選択し、車速が低車速(即ち、例えば時速80km等の所定の基準速度以下の低速な車速)である場合には、変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替えを一方の切り替えとして選択する。
【0012】
具体的には、車速が高車速である場合には、制御手段は、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えの際に、変速比モードの切り替えを所定時間(例えば5秒間)禁止して、切り替え前の変速比モードである固定変速比モードを継続させる。即ち、制御手段は、車速が高車速であって、変速比モードが固定変速比モードで運転中に、上述したマップ上において現在の運転動作点が無段変速比モード領域に位置することを検出した場合、この検出した時点から、現在の運転動作点が所定時間継続的に無段変速比モード領域に位置するときに、変速比モードを固定変速比モードから無段変速比モードへ切り替える、言い換えれば、現在の運転動作点が無段変速比モード領域に位置することを検出した時点から所定時間中に、現在の運転動作点が無段変速比モード領域から固定変速比モード領域に移動する場合には、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを禁止して(即ち、変速比モードを切り替えず)、変速比モードを固定変速比モードのままとする。
【0013】
一方、車速が低車速である場合には、制御手段は、変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替えの際に、変速比モードの切り替えを所定時間(例えば5秒間)禁止して、切り替え前の変速比モードである無段変速比モードを継続させる。即ち、制御手段は、車速が低車速であって、変速比モードが無段変速比モードで運転中に、上述したマップ上において現在の運転動作点が固定変速比モード領域に位置することを検出した場合、この検出した時点から、現在の運転動作点が所定時間継続的に固定変速比モード領域に位置するときに、変速比モードを無段変速比モードから固定変速比モードへ切り替える、言い換えれば、現在の運転動作点が固定変速比モード領域に位置することを検出した時点から所定時間中に、現在の運転動作点が固定変速比モード領域から無段変速比モード領域に移動する場合には、変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替えを禁止して(即ち、変速比モードを切り替えず)、変速比モードを無段変速比モードのままとする。
【0014】
よって、変速比モードの切り替えが頻繁になされる切り替えビジー(或いは「ビジーシフト」又は「ビジー変速」)の発生を低減或いは防止できる。更に、車速に応じて選択した一方の切り替えの際に、変速比モードの切り替えを所定時間禁止するので、仮に例えば車速によらず、変速比モードの切り替えの全てにおいて(即ち、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替え及び変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替えの両方において)一律に、変速比モードの切り替えを所定時間禁止する場合と比較して、燃費を向上させることができる。
【0015】
以上説明したように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、変速比モードの切り替えビジーの発生を低減すると共に、燃費を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の一態様では、前記制御手段は、前記車速が高車速である場合には、前記変速比モードの前記固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えの際に、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記固定変速比モードを継続させる。
【0017】
この態様によれば、車速が高車速である場合に、変速比モードが固定変速比モードから無段変速比モードへ無駄に切り替わることを低減或いは防止でき、変速比モードを固定変速比モードに保持する時間を長くすることができる。よって、燃費を向上させることができる。
【0018】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記変速比モードの切り替えビジーが発生するか否かを判定する判定手段を更に備え、前記制御手段は、前記車速が高車速である場合において、前記判定手段によって前記切り替えビジーが発生すると判定されたときには、前記変速比モードの前記固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えの際に、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記固定変速比モードを継続させる。
【0019】
この態様によれば、判定手段は、変速比モードの切り替えビジーが発生するか否かを判定する。ここで、切り替えビジーは、変速比モードの切り替えが頻繁になされる現象であり、例えば、目標駆動トルク或いは駆動軸回転数が頻繁に変動することにより発生する。判定手段は、例えば、直前の一定期間(例えば60秒)内に変速比モードの切り替えが所定回数(例えば4回)以上発生している場合には、切り替えビジーが発生すると判定する。制御手段は、車速が高車速である場合において、判定手段によって切り替えビジーが発生すると判定されたときには、変速比モードの切り替えを所定時間禁止して、切り替え前の変速比モードである固定変速比モードを継続させる。よって、変速比モードの切り替えビジーの発生をより確実に低減すると共に、燃費を向上させることが可能となる。
【0020】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記車速が低車速である場合には、前記変速比モードの前記無段変速比モードから前記固定変速比モードへの切り替えの際に、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記無段変速比モードを継続させる。
【0021】
この態様によれば、車速が低車速である場合に、変速比モードが無段変速比モードから固定変速比モードへ無駄に切り替わることを低減或いは防止でき、変速比モードを無段変速比モードに保持する時間を長くすることができる。よって、ドライバビリティを向上させることができる。
【0022】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記変速比モードの切り替えビジーが発生するか否かを判定する判定手段を更に備え、前記制御手段は、前記車速が低車速である場合において、前記判定手段によって前記切り替えビジーが発生すると判定されたときには、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記無段変速比モードを継続させる。
【0023】
この態様によれば、変速比モードの切り替えビジーの発生をより確実に低減すると共に、ドライバビリティを向上させることが可能となる。
【0024】
上述した、車速が高車速である場合に固定変速比モードを継続させる態様では、前記制御手段は、前記ハイブリッド車両が高速道路を走行中であることを検出した場合には、前記車速が前記高車速であると判定してもよい。
【0025】
この場合には、車速が高車速であるか否かを容易に判定することができる。尚、高速道路とは、車両(自動車)が高車速で走行するための車両(自動車)専用道路である。
【0026】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ハイブリッド車両は、相互に差動回転可能に構成された、前記内燃機関の出力軸に連結される第1回転要素、前記モータジェネレータの回転軸に連結される第2回転要素、及び駆動輪に連結された駆動軸に連結される第3回転要素を有する動力分割機構と、前記モータジェネレータの回転軸に連結された第1係合要素及び該第1係合要素に係合可能な第2係合要素を有し、前記第1及び第2係合要素が互いに係合することにより、前記第1モータジェネレータの回転軸を停止した状態で固定可能なロック機構とを更に備え、前記制御手段は、前記変速比モードの前記無段変速比モードから前記固定変速比モードへの切り替えの際には、前記第1及び第2係合要素が、互いに係合されない解放状態から互いに係合された合状態に切り替わるように、前記ロック機構を制御する。
【0027】
この態様によれば、制御手段によって、ロック機構を制御することにより、変速比モードを切り替えることができる。
【0028】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】ロック機構の構成を概念的に示す模式図である。
【図3】目標駆動トルク及び駆動軸回転数によって規定される運転領域を示すマップである。
【図4】エンジントルク及びエンジン回転数によって定まるエンジン動作点の、変速比モードの切り替えによる移動を説明するための説明図である。
【図5】第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による変速比モードの切り替えの制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】車速が高車速である場合(自動車専用道路を走行中の場合)における変速比モードの切り替えの制御を説明するための説明図である。
【図7】車速が低車速である場合(一般道を走行中の場合)における変速比モードの切り替えの制御を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0031】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成について、図1を参照して説明する。
【0032】
図1は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【0033】
図1において、本実施形態に係るハイブリッド車両10は、エンジン200、第1モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、第2モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、駆動軸50、動力分割機構300、ロック機構400、PCU(Power Control Unit)500、バッテリ600、減速機11、車軸12、駆動輪13、アクセル開度センサ14及びECU100を備えている。
【0034】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能するように構成されている。エンジン200の出力軸であるクランクシャフト210は、後述する動力分割機構300のキャリア304に連結されている。尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランクシャフト等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。
【0035】
第1モータジェネレータMG1は、電動発電機であり、エンジン200からトルクの供給を受けてその回転軸が回転することにより、バッテリ600を充電するための、或いは第2モータジェネレータMG2に電力を供給するための発電を主として行うことが可能に構成されている。尚、第1モータジェネレータMG1は、本発明に係る「モータジェネレータ」の一例である。
【0036】
第2モータジェネレータMG2は、電動発電機であり、エンジン200の動力を補助(即ち、アシスト)する電動機として、或いはバッテリ600を充電するための発電機として機能するように構成されている。より具体的には、第2モータジェネレータMG2は、駆動力或いは制動力をアシストする装置であり、駆動力をアシストする場合には、第1モータジェネレータMG1及びバッテリ600の少なくとも一方から電力が供給されて電動機として機能し、制動力をアシストする場合には、ハイブリッド車両10の駆動輪13側から伝達されるトルクによって回転させられて電力を発電する発電機として機能するように構成されている。第2モータジェネレータMG2は、駆動軸50に対し動力を供給することが可能となるように、その回転軸が駆動軸50に連結されている。
【0037】
駆動軸50は、ハイブリッド車両10の駆動輪(或いは車輪)である駆動輪13に連結される車軸12に、デファレンシャル等の各種減速ギア装置を含む減速機11を介して連結されている。
【0038】
動力分割機構300は、遊星歯車機構を含んでおり、エンジン200の動力を第1モータジェネレータMG1の回転軸及び駆動軸50に分割或いは分配することが可能に構成されている。より具体的には、動力分割機構300は、外歯歯車のサンギア301と、サンギア301と同心円上に配置された内歯歯車のリングギア302と、サンギア301及びリングギア302に噛合するピニオンギア303と、ピニオンギア303を自転且つ公転自在に保持するキャリア304とを備えており、サンギア301、リングギア302及びキャリア304が3つの回転要素として相互に差動作用を生じるように構成されている。キャリア304には、エンジン200の出力軸であるクランクシャフト210が連結されている。サンギア301には、第1モータジェネレータMG1の回転軸が連結されている。リングギア302には、駆動軸50が連結されている。動力分割機構300は、キャリア304から入力されるエンジン200からの動力を、サンギア301側(即ち、第1モータジェネレータMG1側)とリングギア302側(即ち、駆動軸50側)とにそのギア比に応じて分配する。尚、キャリア304は、本発明に係る「第1回転要素」の一例であり、サンギア301は、本発明に係る「第2回転要素」の一例であり、リングギア302は、本発明に係る「第3回転要素」の一例である。
【0039】
ロック機構400は、例えばドグクラッチ或いは湿式多板クラッチ等から構成され、第1モータジェネレータMG1の回転軸を停止した状態で機械的に固定すること(即ち、第1モータジェネレータMG1をロックすること)が可能に構成されている。
【0040】
図2は、ロック機構400の構成を概念的に示す模式図である。
【0041】
図2において、ロック機構400は、係合部410及びアクチュエータ420を有している。係合部410は、第1モータジェネレータMG1の回転軸MG1sに連結された第1係合部材411と、この第1係合部材411に係合可能な第2係合部材412とを含んでなる。第2係合部材412は、固定部材であるケース430に固定されている。第1係合部材411及び第2係合部材412は、例えば一対のドグ歯或いはクラッチ板等として構成される。アクチュエータ420は、第1係合部材411を駆動可能に構成された電磁アクチュエータであり、ECU100の制御下で、第1係合部材411及び第2係合部材412を互いに係合させることが可能に構成されている。尚、第1係合部材411は、本発明に係る「第1係合要素」の一例であり、第2係合部材412は、本発明に係る「第2係合要素」の一例である。
【0042】
図1及び図2において、ロック機構400における第1係合部材411及び第2係合部材412が互いに係合することにより(即ち、ロック機構400が係合状態となることにより)、第1モータジェネレータMG1の回転軸MG1sは停止した状態で固定される(即ち、第1モータジェネレータMG1がロック状態となる)。よって、ロック機構400が係合状態である(言い換えれば、第1モータジェネレータMG1がロック状態である)場合には、第1モータジェネレータMG1の回転数は「0(ゼロ)」となる。一方、ロック機構400における第1係合部材411及び第2係合部材412が互いに係合しないことにより(即ち、ロック機構400が解放状態となることにより)、第1モータジェネレータMG1の回転軸MG1sは回転可能な状態となる(即ち、第1モータジェネレータMG1が非ロック状態となる)。ロック機構400は、ハイブリッド車両10の変速比モードを無段変速比モードと固定変速比モードとの間で切り替えるために用いられる。ロック機構400が解放状態である場合には、第1モータジェネレータMG1の回転数を連続的に変化させることによりエンジン200のエンジン回転数を連続的に変化させる無段変速比モードを実現可能であり、ロック機構400が係合状態である場合には、エンジン200のエンジン回転数が、駆動軸50(或いは駆動輪13)の回転数により一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)固定変速比モードを実現可能である。尚、駆動軸50には、上述したように第2モータジェネレータMG2の回転軸が連結されているので、固定変速比モードでは、エンジン200のエンジン回転数は、第2モータジェネレータMG2の回転数により一義的に決定される。
【0043】
図1において、PCU500は、バッテリ600から取り出した直流電力を交流電流に変換して第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2に供給すると共に、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ600に供給することが可能に構成されたインバータ等を含み、バッテリ600と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を個別に制御することが可能に構成された制御ユニットである。PCU500は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
【0044】
バッテリ600は、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2に電力を供給する電力供給源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。
【0045】
アクセル開度センサ14は、ハイブリッド車両10のアクセルペダル(不図示)の操作量たるアクセル開度を検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度は、ECU100によって一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0046】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。
【0047】
本実施形態では特に、ECU100は、変速比モード制御部110及びビジーシフト判定部120を備えている。
【0048】
変速比モード制御部110は、本発明に係る「制御手段」の一例であり、アクセル開度センサ14によって検出されたアクセル開度に応じて定められる目標駆動トルク及び駆動軸50の回転数である駆動軸回転数に応じて、変速比モードの切り替えを制御することが可能に構成されている。
【0049】
図3は、目標駆動トルク及び駆動軸回転数によって規定される運転領域を示すマップである。図3では、横軸に駆動軸回転数を示し、縦軸に目標駆動トルクを示している。尚、図2に示すマップは、エンジン200が定常燃焼状態にある場合に出力すると予め推定された出力トルクに基づいて予め作成されている。
【0050】
変速比モード制御部110は、図3に示すマップ上において、基本的には、目標駆動トルク及び駆動軸回転数によって定まる点である運転動作点が、どの位置にくるかによって、変速比モードを「無段変速比モード」及び「固定変速比モード」のいずれにするかを決定する。即ち、変速比モード制御部110は、図3に示すマップ上において、基本的には、現在の運転動作点の位置に応じて、変速比モードの切り替えを制御する。
【0051】
図3に示すように、このマップには、MG1ロック領域R1、電気CVT(Continuously Variable Transmission)領域Q1、Q2及びQ3が設定されている。
【0052】
MG1ロック領域R1は、変速比モードを固定変速比モードとすべき固定変速比モード領域(言い換えれば、第1モータジェネレータMG1がロック状態となるようにロック機構400を制御すべき領域)として予め設定された領域である。MG1ロック領域R1は、駆動軸回転数が下限回転数Nrmin以上、且つ、目標駆動軸トルクがトルク上限値MBL以下且つ燃費最適境界線L1で規定されるトルク値以上の領域として設定されている。
【0053】
電気CVT領域Q1、Q2及びQ3は、変速比モードを無段変速比モードとすべき無段変速比モード領域(言い換えれば、第1モータジェネレータMG1が非ロック状態となるようにロック機構400を制御すべき領域)として予め設定された領域である。電気CVT領域Q1は、駆動軸回転数が下限回転数Nrmin以上、且つ、目標駆動軸トルクが燃費最適境界線L1で規定されるトルク値以上の領域として設定されている。電気CVT領域Q2は、駆動軸回転数が下限回転数Nrminより小さい領域として設定されている。電気CVT領域Q3は、駆動軸回転数が下限回転数Nrmin以上、且つ、目標駆動軸トルクがトルク上限値MBLより大きい領域として設定されている。尚、ここでは、図3に示すマップ上に設定された電気CVT領域を、説明の便宜上、電気CVT領域Q1、Q2及びQ3の3つの領域に分けて説明するが、図3に示すマップ上におけるMG1ロック領域R1を除く領域が電気CVT領域として設定されているということもできる。
【0054】
変速比モード制御部110は、変速比モードが無段変速比モードで運転中(即ち、第1モータジェネレータMG1が非ロック状態で運転中)に、図3に示すマップ上における現在の運転動作点がMG1ロック領域R1に位置するようになった場合には、変速比モードを無段変速比モードから固定変速比モードへ切り替える、具体的には、第1モータジェネレータMG1がロックされるように、ロック機構400を制御する。また、変速比モード制御部110は、変速比モードが固定変速比モードで運転中(即ち、第1モータジェネレータMG1がロック状態で運転中)に、図3に示すマップ上における現在の運転動作点が電気CVT領域Q1、Q2又はQ3に位置するようになった場合には、変速比モードを固定変速比モードから無段変速比モードへ切り替える、具体的には、第1モータジェネレータMG1がロックされないように、ロック機構400を制御する。
【0055】
ここで、仮に、何らの対策も施さずに、図3に示すマップ上における現在の運転動作点の位置に応じて変速比モードの切り替えを行う場合、例えば、アクセル開度の変動に応じた目標駆動トルクの変動に伴って、MG1ロック領域R1と電気CVT領域Q1との境界付近(即ち、燃費最適境界線L1付近)において現在の運転動作点が例えば矢印A1で示すように変動することにより、変速比モードの切り替えが頻繁になされるビジーシフト(即ち、切り替えビジー)が発生するおそれがある。
【0056】
図4は、エンジントルク及びエンジン回転数によって定まるエンジン200の動作点(以下、「エンジン動作点」と称する)の、変速比モードの切り替えによる移動を説明するための説明図である。図4では、横軸にエンジントルクを示し、縦軸にエンジン回転数を示している。
【0057】
図4には、無段変速比モードでの動作線Lcと、固定変速比モードでの動作線Lsと、等パワー線Leとが示されている。変速比モードが無段変速比モードである場合には、エンジン動作点は動作線Lc上を移動し、変速比モードが固定変速比モードである場合には、エンジン動作点は動作線Ls上を移動する。等パワー線Leは、エンジン200から出力されるエンジン出力或いはパワー(即ち、エンジントルクとエンジン回転数との積)が一定となるように規定されている。例えば、変速比モードを固定変速比モードから無段変速比モードへ切り替える際には、エンジン動作点が点P2から等パワー線Le上に沿って点P1へ移動するように、ECU100は、エンジン200を制御する。このようにエンジン動作点が等パワー線Leに沿って移動するように、エンジン200を制御することにより、変速比モードの切り替えの前後でエンジン出力を等しくすることができる。ここで、例えば、変速比モードを固定変速比モードから無段変速比モードへ切り替えることで、エンジン動作点が点P2から点P1へ移動すると、エンジン回転数の変動ΔNe(即ち、点P2でのエンジン回転数Ne2と点P1でのエンジン回転数Ne1との差)が生じる。よって、上述したようなビジーシフトが発生して、変速比モードの切り替えが頻繁になされると、エンジン回転数が頻繁に変動してしまうため、このエンジン回転数の変動により運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。
【0058】
そこで、本実施形態では、変速比モードの切り替えを後述するように制御することにより、ビジーシフトの発生の低減を図っている。尚、変速比モードの切り替えの制御については、後に図5から図7を参照して詳細に説明するが、本実施形態では特に、ハイブリッド車両10の車速に応じて選択した変速比モードの切り替えの際、変速比モードの切り替えを時間ヒステリシスとしての設定される所定時間禁止する。
【0059】
図1において、ビジーシフト判定部120は、本発明に係る「判定手段」の一例であり、変速比モードのビジーシフトが発生するか否かを判定することが可能に構成されている。具体的には、例えば、ビジーシフト判定部120は、直前の一定期間(例えば60秒)内に変速比モードの切り替えが所定回数(例えば4回)以上発生している場合には、ビジーシフトが発生すると判定する。或いは、例えば、ビジーシフト判定部120は、ハイブリッド車両10が走行する進路上の渋滞情報や交差点の信号情報に基づいて車速(言い換えれば、駆動軸回転数)の変動を予測或いは推定することにより、ビジーシフトが発生するか否かを判定する。或いは、例えば、ビジーシフト判定部120は、ハイブリッド車両10に搭載されたカーナビゲーションシステムからの進路におけるカーブや登降坂などの地形情報に基づいて加速や減速を予測或いは推定することにより、ビジーシフトが発生するか否かを判定する。或いは、例えば、ビジーシフト判定部120は、当該ハイブリッド車両10とその前方を走行中の前方走行車両との間の車間距離に基づいて加速や減速を予測或いは推定することにより、ビジーシフトが発生するか否かを判定する。或いは、例えば、ビジーシフト判定部120は、毎日定期的に走行する経路を、車速や時刻から特定し、過去にビジーシフトが発生した地点を記憶しておき、この過去にビジーシフトが発生した地点を走行する際にビジーシフトが発生すると判定する。
【0060】
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による変速比モードの切り替えの制御について、図1に加えて図5から図7を参照して説明する。
【0061】
図5は、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による変速比モードの切り替えの制御の流れを示すフローチャートである。図6は、車速が高車速である場合(自動車専用道路を走行中の場合)における変速比モードの切り替えの制御を説明するための説明図である。図7は、車速が低車速である場合(一般道を走行中の場合)における変速比モードの切り替えの制御を説明するための説明図である。
【0062】
図5において、先ず、自動車専用道路か否かがECU100によって判定される(ステップS10)。即ち、ハイブリッド車両10が自動車専用道路(例えば高速道路)を走行中であるか否かがECU100によって判定される。言い換えれば、ハイブリッド車両10の車速が所定の基準速度α(例えば時速80km)よりも高速な高車速であるか否かがECU100によって判定される。
【0063】
自動車専用道路を走行中である(即ち、高車速である)と判定された場合には(ステップS10:Yes)、所定勾配を超える降坂路が所定距離以上継続するか否かがECU100によって判定される(ステップS20)。即ち、ハイブリッド車両10の現在地点から、所定勾配(例えば−3%)を超える降坂路が所定距離(例えば100m)以上継続するか否かが、例えばハイブリッド車両10に搭載されたカーナビゲーションシステムからの地形情報に基づいて、ECU100によって判定される。
【0064】
ここで、ハイブリッド車両10が自動車専用道路を走行中である場合(即ち、ハイブリッド車両10の車速が高車速である場合)においても、運転者が、車速や前方走行車両との車間距離を調節するために、アクセル開度を変動させると、ビジーシフトが発生する可能性がある。しかし、ハイブリッド車両10の車速が高車速であって、所定勾配(例えば−3%)を超える降坂路が所定距離(例えば100m)以上継続する場合には、例えばアクセル開度がゼロ(即ち、アクセルオフ)になったときでも、車速が殆ど或いは全く低下しないと考えられるので、ハイブリッド車両10が平坦な道路を高車速で走行している場合と比べてビジーシフトが発生する可能性は低いと考えられる。
【0065】
尚、ハイブリッド車両10が平坦な道路を高車速(例えば80km)で走行中に、アクセルオフになったときには、車速は、例えば、毎秒、1km/hずつ低下する。
【0066】
尚、所定勾配及び所定距離は、ハイブリッド車両10の走行中に、アクセル開度がゼロになったときでも、車速が殆ど或いは全く低下しないような値として、実験的、経験的、シミュレーション等により定めればよい。
【0067】
所定勾配を超える降坂路が所定距離以上継続しないと判定された場合には(ステップS20:No)、電気CVT領域Q1の「ロック→CVT」の時間ヒステリシスを所定時間T1(例えば5〜10秒間)に変更する(ステップS60)。
【0068】
ここで、図5及び図6において、電気CVT領域Q1の「ロック→CVT」の時間ヒステリシスとは、第1モータジェネレータMG1がロック状態である場合(即ち、変速比モードが固定変速比モードである場合)において、現在の運転動作点が電気CVT領域Q1に位置することが検出されたとき(言い換えれば、現在の運転動作点がMG1ロック領域R1から電気CVT領域Q1に移動したことが検出されたとき)に、変速比モード制御部110が変速比モードを切り替えるに際し、その切替を禁止する時間である。よって、第1モータジェネレータMG1がロック状態である場合において、現在の運転動作点が電気CVT領域Q1に位置することが検出されたときには、その検出された時点から切り替え前の変速比モード(即ち、固定変速比モード)が時間ヒステリシスだけ継続される。
【0069】
同様に、電気CVT領域Q2(或いはQ3)の「ロック→CVT」の時間ヒステリシスとは、第1モータジェネレータMG1がロック状態である場合において、現在の運転動作点が電気CVT領域Q2(或いはQ3)に位置することが検出されたときに、変速比モード制御部110が変速比モードを切り替えるに際し、その切替を禁止する時間である。
【0070】
本実施形態では、電気CVT領域Q1、Q2及びQ3の「ロック→CVT」の時間ヒステリシスの初期値I2は、ゼロ(0秒)に設定されている。言い換えれば、初期状態では、電気CVT領域Q1、Q2及びQ3の「ロック→CVT」の時間ヒステリシスは使用されない。
【0071】
即ち、車速が高車速であって、所定勾配を超える降坂路が所定距離以上継続しないと判定された場合には(ステップS20:No)、変速比モード制御部110は、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えの際に、変速比モードの切り替えを時間ヒステリシスとして設定される所定時間T1(例えば5〜10秒間、初期値I2より大きな値)禁止して、切り替え前の変速比モードである固定変速比モードを継続させる(ステップS60)。よって、変速比モードの切り替えが頻繁になされるビジーシフトの発生を低減或いは防止できる。即ち、ハイブリッド車両10の車速が高車速である場合に、変速比モードが固定変速比モードから無段変速比モードへ無駄に切り替わることを低減或いは防止でき、変速比モードを固定変速比モードに保持する時間を長くすることができる。よって、燃費を向上させることができる。
【0072】
一方、所定勾配を超える降坂路が所定距離以上継続すると判定された場合には(ステップS20:Yes)、「ロック→CVT」の時間ヒステリシス及び「CVT→ロック」の時間ヒステリシスはECU100の変速比モード制御部110によってそれぞれ初期値I1及びI2とされる(ステップS30)。
【0073】
ここで、「ロック→CVT」の時間ヒステリシスは、上述した、電気CVT領域Q1の「ロック→CVT」の時間ヒステリシス、電気CVT領域Q2の「ロック→CVT」の時間ヒステリシス、及び電気CVT領域Q3の「ロック→CVT」の時間ヒステリシスを意味する。本実施形態では、「ロック→CVT」の時間ヒステリシスの初期値I2は、上述したように、ゼロ(0秒)に設定されている。
【0074】
また、「CVT→ロック」の時間ヒステリシスとは、第1モータジェネレータMG1が非ロック状態である場合(即ち、変速比モードが無段変速比モードである場合)において、現在の運転動作点がロック領域R1に位置することが検出されたとき(言い換えれば、現在の運転動作点が電気CVT領域Q1、Q2又はQ3からMG1ロック領域Q1に移動したことが検出されたとき)に、変速比モード制御部110が変速比モードを切り替えるに際し、その切替を禁止する時間である。よって、第1モータジェネレータMG1が非ロック状態である場合において、現在の運転動作点がMG1ロック領域R1に位置することが検出されたときには、その検出された時点から切り替え前の変速比モード(即ち、無段変速比モード)が時間ヒステリシスだけ継続される。本実施形態では、「CVT→ロック」の時間ヒステリシスの初期値I1は、1秒間に設定されている。
【0075】
図5において、自動車専用道路を走行中でない(即ち、ハイブリッド車両10の車速が所定の基準速度α(例えば時速80km)よりも低速な低車速である、言い換えれば、一般道を走行中である)と判定された場合には(ステップS10:Yes)、ビジーシフトが発生するか否かがECU100のビジーシフト判定部120によって判定される(ステップS40)。
【0076】
ビジーシフトが発生しないと判定された場合には(ステップS40:No)、「ロック→CVT」の時間ヒステリシス及び「CVT→ロック」の時間ヒステリシスはECU100の変速比モード制御部110によってそれぞれ初期値I2及びI1とされる(ステップS30)。
【0077】
図5及び図7において、ビジーシフトが発生すると判定された場合には(ステップS40:Yes)、「CVT→ロック」の時間ヒステリシスを所定時間T2(例えば5〜10秒間、初期値I1よりも大きな値)に変更する(ステップS50)。即ち、車速が低車速であって、ビジーシフトが発生すると判定された場合には(ステップS20:Yes)、変速比モード制御部110は、変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替えの際に、変速比モードの切り替えを時間ヒステリシスとして設定される所定時間T2(例えば5〜10秒間)禁止して、切り替え前の変速比モードである無段変速比モードを継続させる(ステップS50)。よって、変速比モードの切り替えが頻繁になされるビジーシフトの発生を低減或いは防止できる。即ち、ハイブリッド車両10の車速が低車速である場合に、変速比モードが無段変速比モードから固定変速比モードへ無駄に切り替わることを低減或いは防止でき、変速比モードを無段変速比モードに保持する時間を初期状態よりも長くすることができる。従って、ドライバビリティを向上させることができる。尚、上述したように、本実施形態では、「CVT→ロック」の時間ヒステリシスの初期値I1は、1秒間に設定されている。
【0078】
ここで、上述した変速比モードの切り替えの制御において、本実施形態では特に、変速比モード制御部110は、変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替え、及び、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えのうちいずれか一方の切り替えをハイブリッド車両10の車速に応じて選択し、該選択した一方の切り替えの際には、変速比モードの切り替えを所定時間禁止して、切り替え前の変速比モードを継続させている。即ち、変速比モード制御部110は、ハイブリッド車両10の車速が高車速である場合には(ステップS10:Yes)、時間ヒステリシスを変更すべき変速比モードの切り替えとして固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを選択して、電気CVT領域Q1の「ロック→CVT」の時間ヒステリシスを所定時間T1に変更し(ステップS60)、ハイブリッド車両10の車速が低車速である場合には(ステップS10:No)、時間ヒステリシスを変更すべき変速比モードの切り替えとして無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替えを選択して、「CVT→ロック」の時間ヒステリシスを所定時間T2に変更する(ステップS50)。つまり、ハイブリッド車両10の車速に応じて選択した一方の切り替えの際の変速比モードの切り替えを、変更された時間ヒステリシスとしての所定時間T1或いはT2、禁止する。よって、仮に例えば車速によらず、変速比モードの切り替えの全てにおいて(即ち、変速比モードの固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替え及び変速比モードの無段変速比モードから固定変速比モードへの切り替えの両方において)一律に、変速比モードの切り替えを所定時間禁止する場合と比較して、燃費を向上させることができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、変速比モードの切り替えが頻繁になされるビジーシフトの発生を低減すると共に、燃費を向上させることが可能となる。
【0080】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
10…ハイブリッド車両、50…駆動軸、100…ECU、110…変速比モード制御部、120…ビジーシフト判定部、200…エンジン、300…動力分割機構、400…ロック機構、MG1…第1モータジェネレータ、MG2…第2モータジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及びモータジェネレータを駆動源として備え、変速比モードを無段変速比モード及び固定変速比モード間で切り替え可能に構成されたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
目標駆動トルク及び駆動軸回転数に応じて前記変速比モードの切り替えを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記変速比モードの前記無段変速比モードから前記固定変速比モードへの切り替え、及び、前記変速比モードの前記固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えのうちいずれか一方の切り替えを車速に応じて選択し、該選択した一方の切り替えの際には、前記変速比モードの切り替えを所定時間禁止して、切り替え前の変速比モードを継続させる
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記車速が高車速である場合には、前記変速比モードの前記固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えの際に、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記固定変速比モードを継続させる請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記変速比モードの切り替えビジーが発生するか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記車速が高車速である場合において、前記判定手段によって前記切り替えビジーが発生すると判定されたときには、前記変速比モードの前記固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えの際に、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記固定変速比モードを継続させる請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記車速が低車速である場合には、前記変速比モードの前記無段変速比モードから前記固定変速比モードへの切り替えの際に、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記無段変速比モードを継続させる請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記変速比モードの切り替えビジーが発生するか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記車速が低車速である場合において、前記判定手段によって前記切り替えビジーが発生すると判定されたときには、前記変速比モードの切り替えを前記所定時間禁止して、前記切り替え前の変速比モードである前記無段変速比モードを継続させる
請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ハイブリッド車両が高速道路を走行中であることを検出した場合には、前記車速が前記高車速であると判定する請求項2又は3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記ハイブリッド車両は、
相互に差動回転可能に構成された、前記内燃機関の出力軸に連結される第1回転要素、前記モータジェネレータの回転軸に連結される第2回転要素、及び駆動輪に連結された駆動軸に連結される第3回転要素を有する動力分割機構と、
前記モータジェネレータの回転軸に連結された第1係合要素及び該第1係合要素に係合可能な第2係合要素を有し、前記第1及び第2係合要素が互いに係合することにより、前記第1モータジェネレータの回転軸を停止した状態で固定可能なロック機構と
を更に備え、
前記制御手段は、前記変速比モードの前記無段変速比モードから前記固定変速比モードへの切り替えの際には、前記第1及び第2係合要素が、互いに係合されない解放状態から互いに係合された合状態に切り替わるように、前記ロック機構を制御する
請求項1から6のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−254131(P2010−254131A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106539(P2009−106539)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】