説明

ハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置

【課題】エンジン温度を容易且つ適切に制御することが可能なハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン(2)と電動機(10)とを搭載し、エンジンを発電機(4)の駆動源とすると共に、電動機(10)のみを走行用の動力源として用いるハイブリッド電気自動車(1)のエンジン温度制御装置であって、エンジン(2)が載置されるエンジンルーム(52)内と車外との間で空気の流動が生じる流動経路に設けられ、上記空気の流動を規制する規制位置と、上記規制を解除する規制解除位置とに切り換え可能な第1シャッタ(56)及び第2シャッタ(58)を備え、HEV−ECU18は、エンジン(2)を構成するエンジン本体(28)の温度として冷却水温センサ(50)が検出したエンジン本体(28)の冷却水温(Tw)が基準温度(To)より低いときに、第1シャッタ(56)及び第2シャッタ(58)を規制位置に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと電動機とを搭載し、エンジンを発電機の駆動源とすると共に、電動機のみを走行用の動力源として用いるハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンを専ら発電機の駆動に用いて発電機の発電電力をバッテリに蓄えると共に、バッテリの電力を走行駆動用の電動機に供給して当該電動機の駆動力により車両の駆動輪を駆動するようにした、いわゆるシリーズ式のハイブリッド電気自動車が開発され実用化されている。
このようなシリーズ式ハイブリッド電気自動車では、バッテリの充電率が低下した場合にエンジンを運転し、エンジンによって駆動された発電機の発電電力をバッテリに充電する。そして、発電機の発電電力によりバッテリの充電率が所定充電率まで復帰すると、エンジンが停止される。
【0003】
シリーズ式ハイブリッド電気自動車に搭載されるエンジンは、上述のように発電機の駆動専用であるため、燃費改善の観点からできるだけ小型化される傾向にある。また、バッテリの充電状態に応じて運転及び停止が繰り返されるため、エンジンの冷却水は温度が低下しやすい。このため、エンジンの始動のたびに暖機運転が必要となると共に、暖機運転の時間も長くなる場合がある。
【0004】
エンジンの暖機を促進するための装置としては、上記のようなハイブリッド電気自動車に適用されるものではないが、ラジエータの前方に配設されると共にスイッチ操作により開閉可能な電動式のロールスクリーンが、特許文献1によって提案されている。特許文献1のロールスクリーンは、エンジンの暖機運転を行う際にスイッチの操作によって閉じられ、それによってラジエータへの通風を遮断することでエンジンの暖機を促進するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−015551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリーズ式ハイブリッド電気自動車の場合、上述したようにエンジンの小型化及び始動停止の繰り返しによってエンジン温度が低下しやすく、エンジン始動のたびに暖機運転が比較的長時間継続することによって燃費が悪化するという問題や、低温での運転が増えることにより大気中への有害物質の排出量が増大するという問題がある。
また、エンジンの冷却水は車室内の暖房に用いられるのが一般的であるが、このようにエンジン温度が低下しやすいと、暖房の効きが悪くなるという問題が生じる。そして、エンジンの小型化に伴い発生熱量も減少するため、一旦低下したエンジン温度が再び暖房に適する温度まで上昇するのに時間がかかるという問題も生じる。
【0007】
特許文献1のロールスクリーンを用いればエンジンの暖機が促進されるので、上述したような問題を解消することができるかもしれないが、特許文献1のロールスクリーンはスイッチの手動操作によって開閉されるものであるため、エンジンの暖機が必要な状態であるか否かを操作者が予め的確に把握している必要がある。このため、操作者に負担がかかるばかりでなく、必ずしも適切にエンジン温度を制御することができるわけではないという問題がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジン温度を容易且つ適切に制御することが可能なハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置は、エンジンと電動機とを搭載し、上記エンジンを発電機の駆動源とすると共に、上記電動機のみを走行用の動力源として用いるハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置であって、上記エンジンが載置されるエンジンルーム内と車外との間で空気の流動が生じる流動経路に設けられ、上記空気の流動を規制する規制位置と、上記規制を解除する規制解除位置とに切り換え可能な開閉手段と、上記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、上記エンジン温度検出手段によって検出された上記エンジンの温度が所定の基準温度より低いときに、上記開閉手段を上記規制位置に制御する制御手段とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成されたハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置によれば、エンジン温度検出手段が検出したエンジンの温度が基準温度に達していない場合には、制御手段が開閉手段を規制位置に制御することにより、エンジンが載置されるエンジンルーム内と車外との間での空気の流動が開閉手段によって規制される。この結果、エンジンルーム内から外気への放熱量が減少する。従って、エンジン運転中であればエンジンの暖機が促進され、エンジン停止中であればエンジン温度の低下が抑制されることになる。
【0010】
上記制御手段は、上記エンジン温度検出手段によって検出された上記エンジンの温度が上記基準温度より低いときに上記エンジンが停止している場合には、上記開閉手段を上記規制位置に制御すると共に、上記エンジンを始動するようにしてもよい(請求項2)。
【0011】
このようにハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置を構成した場合、エンジンが停止した状態にあって、エンジン温度検出手段が検出したエンジンの温度が基準温度に達していない場合には、制御手段がエンジンを始動すると共に、開閉手段を規制位置に制御する。これにより、上述のように開閉手段によってエンジンルーム内から外気への放熱量が減少するのに加え、エンジンの運転によってエンジン温度が迅速に上昇する。
【0012】
また、上記エンジンが、排気中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを排気通路に備える場合、上記エンジン温度制御装置において、上記制御手段は、更に上記パティキュレートフィルタの強制再生を行う際に、上記開閉手段を上記規制位置に制御するようにしてもよい(請求項3)。
【0013】
このようにハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置を構成した場合、パティキュレートフィルタの強制再生を行う際に、制御手段が開閉手段を規制位置に制御することにより、上述のようにエンジンルーム内から外気への放熱量が低下する。この結果、エンジン温度の上昇に伴ってエンジンの排気温度もパティキュレートフィルタの強制再生に必要な温度まで迅速に上昇する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置によれば、エンジンの温度が基準温度に達していない場合には、開閉手段が規制位置に制御されるので、エンジンが載置されるエンジンルーム内と車外との間で空気の流動が規制され、エンジンルーム内から車外への放熱量が減少する。
従って、エンジン運転中であればエンジンの暖機が促進されるので、暖機に要する時間が短縮され、エンジンの燃費を改善することができる。また、エンジンを低温状態で運転すると、暖機状態に比べて排気中の有害物質が増大する傾向にあるが、このような暖機運転に要する時間の短縮とエンジン温度の迅速な上昇とにより、エンジンからの有害物質の排出量を低減することができる。また、エンジンの冷却水を車両室内の暖房に利用する場合には、暖房に必要な温度までエンジン温度を迅速に上昇させて、冷却水による良好な暖房効果を早期に得ることができる。
【0015】
一方、エンジン停止中である場合も、エンジン温度の低下が抑制されるので、次にエンジンが始動されるときにエンジン温度があまり低下しておらず、暖機に要する時間を短縮することができる。従って、この点でもエンジンの燃費を改善することができると共に、エンジンからの有害物質の排出量を低減することができる。また、エンジンの冷却水を車両室内の暖房に利用する場合には、良好な暖房効果を得ることができる期間を延長することができる。
そして、このような開閉手段の一連の制御は、エンジン温度検出手段が検出したエンジンの温度に基づき制御手段が実行するので、手間をかけることなくエンジンの温度を的確に制御することが可能である。
【0016】
また、請求項2のハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置によれば、エンジンが停止状態にあって、エンジンの温度が基準温度に達していない場合には、エンジンが始動されると共に、開閉手段が規制位置に制御される。この結果、上述のようにエンジンルーム内から外気への放熱量が低下するのに加え、エンジンの始動によってエンジン温度を迅速に上昇させることができる。
従って、例えばエンジンの冷却水を車室内の暖房に使用するような場合には、エンジンの停止に伴ってエンジンの温度が暖房に不適な温度まで低下するようなことがあっても、再び暖房に必要な温度までエンジン温度を迅速に上昇させることができ、良好な暖房効果を確保することができる。
【0017】
また、請求項3のハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置によれば、エンジンが排気通路にパティキュレートフィルタを有する場合に、パティキュレートフィルタの強制再生を行う際には、開閉手段が規制位置に制御されることにより、上述のようにエンジンルーム内から外気への放熱量が低下する。この結果、エンジン温度の上昇に伴ってエンジンの排気温度もパティキュレートフィルタの強制再生に必要な温度まで迅速に上昇するので、パティキュレートフィルタの強制再生に要する時間を短縮して、燃費を改善することができる。また、エンジンの排気温度が十分に上昇せずに、フィルタの再生が不十分なまま強制再生が終了してしまうといった事態を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジン温度制御装置が適用されたハイブリッド電気自動車の全体構成図である。
【図2】図1のハイブリッド電気自動車に搭載されたエンジンの概略構成図である。
【図3】図1のハイブリッド電気自動車の後部における主要部材の配置を示す概略平面図である。
【図4】図1のハイブリッド電気自動車の後部を示す概略側面図である。
【図5】図1のハイブリッド電気自動車において、エンジンルーム側から見た場合の第1シャッタの概略構成図である。
【図6】図5の第1シャッタの開状態を、一部の部材を省略して示す図である。
【図7】図5の第1シャッタの閉状態を、一部の部材を省略して示す図である。
【図8】図1のハイブリッド電気自動車において、下方から見た場合の第2シャッタの概略構成図である。
【図9】図8の第2シャッタの開状態を、一部の部材を省略して示す図である。
【図10】図8の第2シャッタの開状態から閉状態への移行途中の状態を、一部の部材を省略して示す図である。
【図11】図8の第2シャッタの閉状態を、一部の部材を省略して示す図である。
【図12】HEV−ECUが実行するエンジン温度制御のフローチャートである。
【図13】エンジン温度制御の変形例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン温度制御装置が適用されたハイブリッド電気自動車1の全体構成図である。なお、本実施形態では、ハイブリッド電気自動車1が大型乗合バスとして構成されている。
エンジン2は、エンジンのみを走行用の動力源とする同程度の規模の車両に搭載されたエンジンより小容量のディーゼルエンジンを中心とし、後述する冷却機構や排気浄化機構などの様々なエンジン用周辺機器を含めたエンジンシステムである。エンジン2に含まれる後述するエンジン本体の回転出力軸は発電機4の回転軸に連結されており、エンジン2は走行用の動力源としては用いられず、発電機4の駆動源として用いられる。
【0020】
エンジン2によって駆動される発電機4の発電電力は、インバータ6を介してバッテリ8に蓄えられる。インバータ6は、発電機4から供給される電力によってバッテリ8が適正に充電されるよう、発電機4とバッテリ8との間に流れる電流を制御することにより、発電機4の発電電力を調整する。また発電機4は、エンジン2が停止しているときにバッテリ8からインバータ6を介して電力が供給されることによりモータとして作動し、エンジン2のエンジン本体をクランキングする機能も有している。
一方、ハイブリッド電気自動車1には走行用の動力源として電動機10が搭載されており、電動機10の出力軸は、差動装置12及び1対の駆動軸14を介して左右の駆動輪16に連結されている。従って、ハイブリッド電気自動車1は、いわゆるシリーズ式ハイブリッド電気自動車として構成されている。
【0021】
電動機10は、インバータ6を介してバッテリ8の電力が供給されることによりモータとして作動し、インバータ6によって電動機10への供給電力を調整することにより、電動機10から駆動輪16に伝達される駆動力を調整することができるようになっている。
また、車両制動時などの車両減速時には、電動機10が発電機として作動し、ハイブリッド電気自動車1の運動エネルギが電動機10によって交流電力に変換され、このとき電動機10が回生制動トルクを発生する。そして、この交流電力はインバータ6によって直流電力に変換された後、バッテリ8に充電され、ハイブリッド電気自動車1の運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0022】
ハイブリッド電気自動車1には、エンジン2、発電機4、インバータ6及び電動機10が適正に作動するよう、総合的な制御を行うためのHEV−ECU(制御手段)18が搭載されている。この総合的な制御を行うため、HEV−ECU18は、エンジン2、発電機4、インバータ6、バッテリ8及び電動機10の作動状態、並びにハイブリッド電気自動車1の運転状態などに関する情報を収集する。ハイブリッド電気自動車1には更に、エンジン2を制御するためのエンジンECU20、及びバッテリ8の状態を監視するバッテリECU22が設けられており、HEV−ECU18は、収集した情報に基づき、エンジンECU20やバッテリECU22に指令を送りながら様々な制御を実行する。
【0023】
HEV−ECU18が実行する制御の具体的な内容は以下の通りである。HEV−ECU18には、アクセルペダル24の操作量を検出するアクセル開度センサ26が接続されている。そして、HEV−ECU18は、アクセル開度センサ26が検出したアクセルペダル24の操作量に応じてインバータ6を制御することにより電動機10をモータとして作動させ、運転者の要求に応じて電動機10から駆動輪16に伝達される駆動力を調整する。
【0024】
また、HEV−ECU18は車両制動時などの車両減速時にインバータ6を制御し、発電機として作動する電動機10からバッテリ8に供給される電力を調整して、電動機10が発生する回生制動力の制御を行う。
更に、HEV−ECU18は、バッテリ8を充電する必要が生じたときにエンジン2を始動し、バッテリ8の充電に必要な発電機4の発電状態を得るための運転状態にエンジン2を制御するようエンジンECU20に指令を送る。そして、このときHEV−ECU18は、バッテリ8を適正に充電するために必要な発電電力を発電機4が発生するようにインバータ6を制御する。
【0025】
エンジンECU20は、エンジン2の運転制御全般を行うために設けられており、HEV−ECU18からの指令に基づき、燃料の噴射量や噴射時期などを調整して、HEV−ECU18からの指令に対応した運転状態にエンジン2を制御する。またエンジンECU20は、エンジン2から得た各種情報をHEV−ECU18に送る。
バッテリECU22は、バッテリ8の温度や電圧、インバータ6とバッテリ8との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ18の充電率SOCを求め、上記検出結果と共にHEV−ECU18に送る。
【0026】
このように構成されたハイブリッド電気自動車1において運転者がアクセルペダル24を踏み込むと、HEV−ECU18はアクセル開度センサ26が検出したアクセルペダル24の操作量と、図示しない走行速度センサが検出したハイブリッド電気自動車1の走行速度とに基づき、駆動輪16に伝達すべき駆動トルクを求め、求められた駆動トルクを電動機10が発生するようにインバータ6を制御する。これによりバッテリ8の電力がインバータ6を介して電動機10に供給され、モータとして作動する電動機10が発生した駆動トルクが差動装置12及び駆動軸14を介して左右の駆動輪16に伝達されて車両が走行する。
【0027】
電動機10への電力供給によってバッテリ8の充電率は徐々に低下するので、バッテリ8が過放電状態にならないようにするため、HEV−ECU18はバッテリECU22から送られたバッテリ8の充電率SOCが所定の下限基準充電率より低下して充電が必要となったときに、エンジン2を運転するようエンジンECU20に指令を送ると共に、インバータ6を制御して発電機4をモータとして作動させ、エンジン2のエンジン本体をクランキングする。
このときエンジンECU20は、HEV−ECU18からの指令に従い、エンジン2への燃料の供給を開始してエンジン2を始動し、エンジン2の始動完了後はエンジン2の運転制御を行って、エンジン2に発電機4を駆動させる。
【0028】
エンジン2の始動完了に伴ってHEV−ECU18は、所定の目標回転数において所定の目標電力が発電機4によって発電されるようにインバータ6を制御し、これに対応してエンジンECU20はエンジン2の回転数が目標回転数となるようにエンジン2を制御する。そして、このときの目標回転数及び目標電力は、バッテリ8を効率良く充電可能であると共に、エンジン2の回転数及び負荷が予め設定された運転領域内にあるように定められている。この予め定められた運転領域としては、例えば排気中のNOxの濃度を極力低くするような運転領域や、エンジン2の運転効率が比較的高くなるような運転領域などであり、ハイブリッド電気自動車1の仕様や、エンジン2の仕様などによって予め定められる。
【0029】
発電機4が発生した電力によってバッテリ8が充電され、バッテリ8の充電率SOCが所定の上限基準充電率に達すると、HEV−ECU18は、エンジン2を停止して発電機4の駆動を終了するようエンジンECU20に指令を送る。エンジンECU20は、HEV−ECU18からの指令に従ってエンジン2への燃料供給を停止し、エンジン2を停止させる。これに伴い、HEV−ECU18はインバータ6の作動を停止し、発電機4とバッテリ8との間の電力のやりとりを遮断する。
【0030】
次に、エンジン2の構成について、その概略構成図である図2に基づき、以下に詳細に説明する。
前述したように、エンジン2はディーゼルエンジンを中心としたエンジンシステムであって、図2に示すように、ディーゼルエンジンのエンジン本体28を有している。このエンジン本体28の各気筒(図示せず)には、燃料を燃焼させるための空気が吸気管30を介して供給される。また、エンジン本体28の各気筒には、燃料の燃焼によって発生した排気を排出するための排気管(排気通路)32が接続されている。
【0031】
排気管32には、エンジン本体28から排出される排気を浄化して大気中に排出するための排気後処理装置34が介装されている。この排気後処理装置34は、排気管32の途中に介装されて内部を排気が流動するケーシング36を有し、ケーシング36内には、前段酸化触媒38が収容されると共に、この前段酸化触媒38の下流側にパティキュレートフィルタ(以下フィルタという)40が収容されている。
【0032】
フィルタ40は、排気中のパティキュレートを捕集することによりエンジン本体28から排出される排気を浄化する。また、前段酸化触媒38は排気中のNO(一酸化窒素)を酸化させてNO(二酸化窒素)を生成するので、このように前段酸化触媒38とフィルタ40とを配置することにより、フィルタ40に捕集され堆積しているパティキュレートは、前段酸化触媒38から供給されたNOと反応して酸化し、フィルタ40の連続再生が行われるようになっている。
【0033】
このようにしてフィルタ40の連続再生が行われるためには、前段酸化触媒38が活性化している必要がある。しかしながら、上述したようにエンジン2はバッテリ8の充電率に応じて始動及び停止されるため、エンジン2の排気温度が低下しやすく、前段酸化触媒38が不活性状態となりやすい。このため、連続再生のみではフィルタ40に堆積したパティキュレートを十分に除去することができないので、フィルタ40におけるパティキュレートの堆積量が所定量に達したと判断した場合に、エンジンECU20はフィルタ40の強制再生を実行する。
【0034】
この強制再生では、エンジン2の排気温度を上昇させ、フィルタ40に堆積しているパティキュレートを焼却除去するため、エンジンECU20はバッテリ8の充電率に関わりなくエンジン2を運転する。排気後処理装置34には、フィルタ40の上流側に、フィルタ40に流入する排気の温度を検出する排気温度センサ42が設けられており、エンジンECU20は、この排気温度センサ42が検出した排気の温度がフィルタ40の強制再生に必要な温度となるようにエンジン2を制御する。そして、フィルタ40の強制再生が完了すると、エンジンECU20はエンジン2を停止させる。
【0035】
なお、このようなフィルタ40の強制再生を行っているときに、HEV−ECU18はバッテリECU22から入手したバッテリ8の充電率SOCに基づき、インバータ6を制御する。即ち、バッテリ8の充電率が上限基準充電率に達していない場合には、発電機4が電力を発生するようにインバータ6を制御し、発電機4が発生した電力をバッテリ8に充電する。一方、バッテリ8の充電率が上限基準充電率に達している場合には、発電機4が電力を発生しないようにインバータ6を制御し、バッテリ8の過充電を防止する。
【0036】
エンジン本体28には、冷却水を用いてエンジン本体28を冷却するための冷却機構が設けられている。即ち、図2に示すように、エンジン本体28内の冷却水路を流動してエンジン本体28の各所を冷却した冷却水が流出する冷却水流出管44がエンジン本体28の冷却水流出口に接続されている。そして、この冷却水流出管44は、エンジン本体28から流出した冷却水を外気との熱交換により冷却するラジエータ48に接続されている。更に、ラジエータ48とエンジン本体28の冷却水流入口との間には、冷却水流入管46が接続され、ラジエータ48で冷却された冷却水が冷却水流入管46を介して再びエンジン本体28内に流入するようになっている。なお、このような冷却機構において冷却水を適切に流動させるため、エンジン本体28の内部には図示しないウォータポンプが設けられている。冷却機構自体はよく知られているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0037】
冷却水流出管44には、その内部を流動する冷却水の温度を検出する冷却水温センサ50が設けられている。この冷却水温センサ50は、エンジン本体28から流出した冷却水の温度をエンジン本体28の温度として検出するものであり、本発明のエンジン温度検出手段に相当する。
このようにして冷却機構を介してエンジン本体28内を流動することにより温度が上昇した冷却水は、図示しない暖房用ヒータ機構に供給され、ハイブリッド電気自動車1の車室内の暖房に利用されるようになっている。なお、このような暖房用ヒータ機構についても、既に広く知られているものであるので、ここでは構成や動作の説明を省略する。
【0038】
図3は、ハイブリッド電気自動車1の後部における、電動機10やエンジン本体28などの主要部材の配置を示す概略平面図である。また、図4は、ハイブリッド電気自動車1の後部を示す概略側面図である。
図3に示すように、エンジン本体28はハイブリッド電気自動車1の最後部に設けられたエンジンルーム52内に横向きに配設されており、エンジン本体28の回転出力軸が発電機4の回転軸に連結されている。また、エンジン本体28よりも車両前方側に配設された電動機10は、回転軸が差動装置12に連結されて、前述したように電動機10の駆動力が差動装置12及び左右の駆動軸14を介して左右の駆動輪16に伝達されるようになっている。
【0039】
エンジン本体28に対して発電機4とは反対側の位置には、ラジエータ48がハイブリッド電気自動車1のサイドパネルに沿って配置されている。また、図4に示すように、ハイブリッド電気自動車1の後部のサイドパネルには、エンジンルーム52内と車外とを連通するメッシュ状の開口54が形成され、エンジンルーム52内と車外との間で空気が流動する流動経路を形成している。ラジエータ48は、この開口54に対向するように配置され、ラジエータ48における冷却水と、開口54を介して導入された車外の空気との間での熱交換が効率的に行われるようになっている。
【0040】
エンジン本体28は、ハイブリッド電気自動車1の前後方向に延設された2本のメインフレームと、これらメインフレーム間で車幅方向に掛け渡された2本のサブフレームとによって支持されている。そして、エンジンルーム52内は、上述の開口54に加え、エンジン本体28の下方の空間を介して車外と連通しており、エンジン本体28の下方にも、エンジンルーム52内と車外との間で空気が流動する流動経路が形成されるようになっている。
このような開口54やエンジン本体28下方の空間を介した空気の流動によってエンジン本体28が冷却されることになるので、冷態状態からエンジン2を始動した場合に、エンジン本体28の温度が上昇しにくくなるおそれがある。また、エンジン2を停止した場合には、エンジン本体28の温度が急速に低下する可能性がある。
【0041】
前述したように、エンジン本体28によって加熱された冷却水を車室内の暖房に用いているので、エンジン2の始動後にエンジン本体28の温度が上昇しにくい場合や、エンジン2の停止後にエンジン本体28の温度が急速に低下してしまう場合には、十分な暖房効果が得られなくなったり、場合によっては全く暖房が効かなくなる可能性がある。
また、フィルタ40の強制再生を行う場合には、フィルタ40に堆積したパティキュレートが燃焼可能な温度まで排気温度を上昇させる必要があるが、エンジン本体28の温度が上昇しにくい場合には、強制再生を実行可能な温度まで排気温度を上昇させるのに時間を要し、燃費の悪化を招いたり、フィルタ40を十分に再生できずに強制再生が終了してしまうといった問題が生じる可能性がある。
更に、エンジン2を効率よく運転すると共に排ガス特性を良好に維持するためには、エンジン2の暖機運転が必要となるが、エンジン本体28の温度が上昇しにくい場合には、暖機運転に時間を要し、燃費の悪化を招いたり、排ガス特性が低下した状態で長時間エンジン2を運転することによる大気中への有害物質の排出量増大を招いたりする可能性がある。
【0042】
そこで、本実施形態では、このような問題が生じないようにするため、エンジン本体28の温度を良好に制御するための温度制御機構を有している。以下では、このような温度制御機構について図面に基づき詳細に説明する。
エンジン本体28の温度上昇を阻害したり、エンジン本体28の急速な温度低下を招いたりする要因は、上述したようにエンジンルーム52内と車外との間の空気の流動にあることから、本実施形態では、このような空気の流動を規制するための規制部材を設けている。具体的には、このような規制部材として、図3及び図4に示すように、エンジンルーム52側から開口54を覆うように第1シャッタ(開閉手段)56を設けると共に、エンジン本体28の下方にハイブリッド電気自動車1の車体下面に沿うようにして第2シャッタ(開閉手段)58を設けている。
【0043】
まず、第1シャッタ56の構造及び作動について、図5乃至図7に基づき、以下に詳細に説明する。なお図5は、エンジンルーム52側から見た第1シャッタ56の概略構成図である。また、図6及び図7は、便宜上一部の部材を省略した状態で、図5の左方から見たときの第1シャッタ56を示す図である。
【0044】
図5に示すように第1シャッタ56は、上下方向に互いに平行に延設された2本の縦フレーム60,62と、これら縦フレーム60,62の上端部及び下端部で両縦フレーム60,62間に掛け渡された2本の横フレーム64,66とによって形成された四角形の枠体をベースとして構成されている。そして、2本の縦フレーム60,62が、ハイブリッド電気自動車1のサイドパネルに沿って上下方向に延設されたボディーフレーム(図示せず)に固定されることにより、第1シャッタ56がハイブリッド電気自動車1に取り付けられている。
【0045】
2本の縦フレーム60,62の間には、複数のフラップ68が縦フレーム60,62の長手方向に沿って等間隔に配設されている。各フラップ68の長手方向両端部は、各フラップ68の幅方向一端側(以下、第1端部側という)において、ピン70,72を介して縦フレーム60,62にそれぞれ支持されており、各フラップ68はピン70,72を中心に揺動可能となっている。
一方、各フラップ68の幅方向他端部側(以下、第2端部側という)は、図6に示すように、ピン74を介し連動リンク76によって等間隔に連結されている。ピン74を介した連動リンク76と各フラップ68との連結部分は、連動リンク76に対する各フラップ68の相対的な揺動を可能とするようになっているので、ピン70,72を中心として各フラップ68が揺動する際には、連動リンク76により各フラップ68が同じ角度で同様に揺動するようになっている。
【0046】
各フラップ68を揺動させるため、第1シャッタ56にはアクチュエータとして電磁ソレノイド78が設けられている。電磁ソレノイド78は、各フラップ68の揺動の妨げとならない位置で縦フレーム60に固定されており、電気信号に応答して可動部78aが突出位置と引き込み位置とに選択的に切り替わるようになっている。
また、最上部にあるフラップ68のピン74と、電磁ソレノイド78の可動部78aとは、図6に示すように、駆動リンク80によって連結されている。駆動リンク80は、最上部のフラップ68に対して相対的に揺動可能にピン74で連結されると共に、可動部78aに対しても相対的に揺動可能にピン78bで連結されている。
【0047】
図6は、便宜上縦フレーム60を省略した状態で、図5の左側、即ち縦フレーム60側から第1シャッタ56を見たときの図であって、図6の右方向がエンジンルーム52側となる。図6において、電磁ソレノイド78の可動部78aは突出状態にある。このとき、可動部78aと駆動リンク80で連結された最上部のフラップ68は、図6に示すように水平状態にあり、これに伴ってほかの各フラップ68も同様に水平状態となっている。従って、ハイブリッド電気自動車1の車外とエンジンルーム52内との間で、開口54及び第1シャッタ56を介した空気の流動が可能となる。
【0048】
第1シャッタ56が図6に示す状態にあるときに、電磁ソレノイド78の可動部78aが引き込み位置に切り替わると、可動部78aが図6中の矢印Aの方向に移動するのに伴い、駆動リンク80が最上部のフラップ68の第2端部側を下方に移動させ、当該フラップ68がピン70,72を中心として下方に揺動する。最上部のフラップ68のこのような動きに追従し、連動リンク76で連結された他のフラップ68も同様に、ピン70,72を中心として下方に揺動する。
【0049】
図7は、便宜上縦フレーム60と駆動リンク80とを省略した状態で、図5の左側、即ち縦フレーム60側から第1シャッタ56を見たときの図であって、図6と同様に図7の右方向がエンジンルーム52側となる。図7に示すように、各フラップ68の配置間隔は各フラップ68の幅より幾分短く設定されており、電磁ソレノイド78の可動部78aが引き込み位置にあるときに、各フラップ68は、隣接するフラップ68との間の間隙を閉鎖するようになっている。従って、このような状態では、ハイブリッド電気自動車1の車外とエンジンルーム52内との間で、開口54及び第1シャッタ56を介した空気の流動が規制されることになる。
【0050】
第1シャッタ56が図7に示す状態にあるときに、電磁ソレノイド78の可動部78aが突出位置に切り替わると、可動部78aが駆動リンク80を介して最上部のフラップ68を上方に揺動させるので、ほかのフラップ68も同様に上方に揺動し、各フラップ68は再び図6に示す状態となる。
このように、電磁ソレノイド78の可動部78aが突出位置にあるとき、第1フラップ56は図6に示すような開状態となり、電磁ソレノイド78の可動部78aが引き込み位置にあるとき、第1フラップ56は図7に示すような閉状態となる。従って、本実施形態の場合、第1シャッタ56については、図7に示す第1シャッタ56の閉状態が本発明の規制位置に相当し、図6に示す第1シャッタ56の開位置が本発明の規制解除位置に相当する。
【0051】
次に、第2シャッタ58の構造及び作動について、図8乃至図11に基づき以下に詳細に説明する。なお、図8はハイブリッド電気自動車1の下方から見た第2シャッタ58の概略構成図であって、図8の上方がハイブリッド電気自動車1の前方側となる。また、図9乃至図11は、便宜上一部の部材を省略した状態で、図8の右側から見たときの第2シャッタ58を示す図である。
【0052】
図8に示すように第2シャッタ58は、車両前後方向に互いに平行に延設された2本のガイドフレーム82,84と、これらガイドフレーム82,84の前端部及び後端部で両ガイドフレーム82,84間に掛け渡された2本の横フレーム86,88とによって形成された四角形の枠体をベースとして構成されている。そして、これら2本のガイドフレーム82,84が、ハイブリッド電気自動車1の前後方向に互いに平行に延設された2本のメインフレーム(一方のみ図示)90に固定されることにより、第2シャッタ58がハイブリッド電気自動車1に取り付けられている。
【0053】
2本のガイドフレーム82,84の間にはシート92が配設されており、シート92の前端部が横フレーム86に連結されている。このシート92には、図10に示すように、シート92の下方から見たときに谷折りと山折りとが交互に生じるように、横フレーム86と平行な方向に沿って等間隔に折り目が設けられており、アコーディオン状に折り畳むことができるようになっている。なお、シート92の前端部と横フレーム86との連結部分は、横フレーム86に対するシート92の揺動を許容するようになっており、この連結部分に最も近いシート92の折り目は、シート92の下方から見たときに谷折りとなっている。
【0054】
シート92下方から見たときに山折りとなる折り目の位置には、図10に示すように、シート92の折り目方向両端部にピン94がそれぞれ突設されている。これらのピン94は、ガイドフレーム82,84の互いに対向する内側側面に長手方向にそれぞれ形成されたガイド溝96に摺動可能に係合している。なお、ガイドフレーム84側のガイド溝については図示を省略しているが、ガイドフレーム82側のガイド溝96と同様の構成で、ガイドフレーム82側のガイド溝96の開口に開口が対向するように設けられている。
【0055】
図10に示すように、横フレーム88に最も近いシート92の折り目は、シート92の下方から見たときに谷折りとなっており、この折り目から更に横フレーム88側に延びるシート92の後端部がバー98に連結されている。なお、シート92の後端部とバー98との連結部分は、バー98に対するシート92の揺動を許容するようになっている。
シート92をこのように構成することで、各ピン94をガイドフレーム82,84のガイド溝96にそれぞれ摺動させながら、シート92をアコーディオン状に折り畳んだり、平坦な状態に展開することができるようになっている。
そして、このようなシート92の折り畳みや展開を行うため、第2シャッタ58にはアクチュエータとして電動モータ100が設けられている。この電動モータ100は、図9乃至図11に示すように、ブラケット102を介して横フレーム86に固定されている。
【0056】
電動モータ100の回転軸104は、図8乃至図11に示すように、ガイドフレーム82,84の延設方向、即ちシート92の伸縮方向に延設されており、その端部は、横フレーム88に固定された軸受106に回転可能に支持されている。回転軸104は、ねじ山が形成されることによってウォームシャフトとして機能する。そして、この回転軸104には、回転軸104が貫通すると共に回転軸104のねじ山に螺合する駆動部材108が設けられており、駆動部材108はバー98に連結されている。従って、電動モータ100が作動して回転軸104が一方の方向に回転すると、回転軸104に螺合する駆動部材108が横フレーム86側から横フレーム88側へと移動し、回転軸104が逆方向に回転すると、駆動部材108が横フレーム88側から横フレーム86側へと移動する。
【0057】
図9乃至図11は、便宜上ガイドフレーム84を省略した状態で、ガイドフレーム84側から第2シャッタ58を見たときの図である。このうち図9は、シート92が最も折り畳まれた状態にあるときの第2シャッタ58を示している。図9に示すように駆動部材108は、シート92が最も折り畳まれた状態となる位置まで横フレーム86に向けて移動した状態にある。このような状態では、ハイブリッド電気自動車1の下方の空間を介し、車外とエンジンルーム52内との間で、第2シャッタ58を介した空気の流動が可能となる。従って、このとき第2シャッタ58は開状態となる。
【0058】
第2シャッタ58が図9に示す開状態にあるときに電動モータ100を作動させ、駆動部材108を横フレーム88に向けて移動させる方向に回転軸104を回転させると、回転軸104の回転に伴い駆動部材108が横フレーム88に向けて移動していく。
図10は、駆動部材108がこのような移動中であるときの第2シャッタ58を示している。図10に示すように、矢印Bの方向に向けての駆動部材108の移動に伴い、バー98に連結されたシート92の後端部も矢印Bの方向に移動していく。このとき、シート92の各ピン94がガイドフレーム82,84のガイド溝96に沿って摺動することにより、折り畳まれていたシート92が徐々に展開していく。
【0059】
図11は、バー98が横フレーム88に当接するまで駆動部材108が移動したときの第2フレーム58を示している。図11に示すように、バー98が横フレーム88に当接した状態にあるとき、シート92は平坦な状態まで展開するようにその寸法が設定されている。このようにシート92が平坦な状態まで展開すると、2本のガイドフレーム82,84及び2本の横フレーム86,88によって形成された四角形の枠体をシート92が塞いだ状態となる。
【0060】
なお、電動モータ100の作動によって駆動部材108を横フレーム88に向けて移動させているときに、バー98が横フレーム88に当接すると、電動モータ100の作動が停止するようになっているが、このような電動モータ100の作動停止は、バー98或いは駆動部材108の位置を検出するポジションセンサ(図示せず)や、横フレーム88に対して作用するバー98の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)などを用いて行うことができる。
【0061】
図11に示す状態では、2本のガイドフレーム82,84及び2本の横フレーム86,88によって形成された四角形の枠体を、展開したシート92が塞ぐことにより、ハイブリッド電気自動車1の下方の空間を介した車外とエンジンルーム52内との間で空気の流動が規制される。従って、このとき第2シャッタ58は閉状態となる。
即ち、本実施形態の場合、第2シャッタ58については、図11に示す第2シャッタ58の閉状態が本発明の規制位置に相当し、図9に示す第2シャッタ58の開状態が本発明の規制解除位置に相当する。
【0062】
第2シャッタ58が図11に示す閉状態にあるとき、駆動部材108が横フレーム88から離間する方向に移動するように電動モータ100を逆方向に回転させると、回転軸104の回転に伴い駆動部材108が横フレーム86に向けて移動していく。このような駆動部材108の移動に伴い、バー98が横フレーム86に向けて移動し、シート92が再び折り畳まれていく。そして、図9に示すようにシート92が完全に折り畳まれた開状態となると、電動モータ100が作動を停止し、駆動部材108の移動も停止する。なお、このような電動モータ100の作動停止も、バー98或いは駆動部材108の位置を検出するポジションセンサ(図示せず)などを用いて行うことができる。
【0063】
第1シャッタ56及び第2シャッタ58の構成及び作動は以上の通りであるが、HEV−ECU18は、エンジン本体28の温度を適正に調整するため、エンジン温度制御として第1シャッタ56及び第2シャッタ58の制御を実行する。
以下では、HEV−ECU18が実行するエンジン温度制御について、図12に基づき詳細に説明する。図12は、エンジン温度制御のフローチャートであり、HEV−ECU18は、ハイブリッド電気自動車1の車室内に設けられた図示しないキースイッチがオン位置に操作されると、図12のフローチャートに従ってエンジン温度制御を実行する。なお、このエンジン温度制御は、所定の制御周期で繰り返し実行され、キースイッチがオフ位置に操作されると終了する。
【0064】
エンジン温度制御を開始すると、まずHEV−ECU18はステップS1において、冷却水温センサ50が検出したエンジン本体28の冷却水温度Twが、所定の基準温度To以上であるか否かを判定する。冷却水温センサ50は、前述したようにエンジン本体28の冷却水の温度をエンジン本体28の温度として検出するものである。従って、ステップS1では、エンジン本体28の温度が基準温度To以上であるか否かを判定することになる。また、本実施形態ではエンジン本体28の冷却水をハイブリッド電気自動車1の車室内の暖房に利用しており、ここで用いる基準温度Toは、冷却水を暖房に使用可能な温度の下限値に基づき、下限値より幾分高めの例えば80℃に設定されている。
【0065】
冷却水温度Twが基準温度Toに達していない場合、HEV−ECU18は処理をステップS2に進める。
ステップS2においてHEV−ECU18は、第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも閉状態とする。即ち、HEV−ECU18は、第1シャッタ56の電磁ソレノイド78を制御して可動部78aを引き込み位置とし、第1シャッタ56を図7に示す閉状態とすると共に、第2シャッタ58の電動モータ100を制御してシート92を展開させ、第2シャッタ58を図11に示す閉状態とする。
【0066】
第1シャッタ56を閉状態とすることにより、ハイブリッド電気自動車1の車外とエンジンルーム52内との間での、開口54及び第1シャッタ56を介した空気の流動が規制される(規制位置)。また、第2シャッタ58を閉状態とすることにより、ハイブリッド電気自動車1の下方の空間を介した車外とエンジンルーム52内との間での空気の流動がシート92によって規制される(規制位置)。
【0067】
前述したように、エンジン2はバッテリ8の充電率SOCが下限基準充電率より低下してバッテリ8の充電が必要となったとき運転され、充電によってバッテリ8の充電率SOCが上限基準充電率に達すると停止されるようになっている。
従って、エンジン2が運転中である場合には、ステップS2で第1シャッタ56及び第2シャッタ58を共に閉状態となることにより、エンジン本体28の温度上昇が促進されて冷却水温が迅速に上昇していく。
一方、エンジン2が停止中である場合には、ステップS2で第1シャッタ56及び第2シャッタ58を共に閉状態となることにより、エンジン本体28の温度低下が抑制されて冷却水温が低下しにくくなる。
【0068】
こうしてステップS2の処理を行うと、HEV−ECU18はその制御周期を終了し、次の制御周期で再びステップS1から処理を開始する。冷却水温度Twが依然として基準温度Toより低い場合、HEV−ECU18は処理をステップS2に進める。従って、冷却水温度Twが基準温度Toより低い場合には、ステップS2の処理によって、第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも閉状態に保持されることになる。
【0069】
このようにして第1シャッタ56及び第2シャッタ58が閉状態に保持されることにより、エンジン2が運転されているときには、エンジン本体28の温度上昇が促進されて冷却水温が迅速に上昇し、エンジン2が停止しているときには、エンジン本体28の温度低下が抑制されて冷却水温が低下しにくくなる。従って、エンジン2を始動した場合のエンジン2の暖機に要する時間が短縮され、燃費を改善することができると共に、冷態運転時に増大する排気中の有害物質の排出量も低減することができる。また、エンジン2の運転時には、冷却水温が迅速に上昇することによって、良好な暖房効果を早期に得ることができ、エンジン2の停止時には冷却水温が低下しにくいので、エンジン2を停止した後も、良好な暖房効果が得られる時間を延長することができる。
【0070】
このようにして第1シャッタ56及び第2シャッタ58が閉状態に保持されている間にエンジン2が運転されると、エンジン本体28の温度が上昇する。そして、エンジン本体28の温度が上昇するのに伴って冷却水温度Twが基準温度Toに達すると、HEV−ECU18はステップS1の判定により、処理をステップS1からステップS3に進める。
ステップS3でHEV−ECU18は、エンジンECU20からの情報に基づき、フィルタ40の強制再生を実行中であるか否かの判定を行う。そして、フィルタ40の強制再生が実行されていない場合、HEV−ECU18はステップS3の判定によって処理をステップS4に進める。
【0071】
ステップS4においてHEV−ECU18は、第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態として、制御周期を終了する。即ち、HEV−ECU18は、第1シャッタ56の電磁ソレノイド78を制御して可動部78aを突出位置とし、第1シャッタ56を図6に示す開状態とすると共に、第2シャッタ58の電動モータ100を制御してシート92を折り畳み、図9に示す開状態とする。
こうして第1シャッタ56を開状態とすることにより、ハイブリッド電気自動車1の車外とエンジンルーム52内との間での開口54を介した空気の流動に対する規制が解除される(規制解除位置)。また、第2シャッタ58を開状態とすることにより、ハイブリッド電気自動車1の下方の空間を介した車外とエンジンルーム52内との間での空気の流動に対する規制が解除される(規制解除位置)。
【0072】
次の制御周期で、HEV−ECU18は再びステップS1から処理を開始する。このとき、エンジン本体28の冷却水温Twが依然として基準温度To以上であれば、HEV−ECU18はステップS1の判定によって処理をステップS3に進める。このときもフィルタ40の強制再生が行われていなければ、HEV−ECU18はステップS3の判定により処理をステップS4に進める。
【0073】
従って、冷却水温Twが基準温度To以上であってフィルタ40の強制再生が行われていない場合には、ステップS4の処理によって第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも開状態に保持される。
このように、冷却水温Twが基準温度To以上となった場合には第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態とすることにより、エンジン本体28の温度が必要以上に上昇しないようにしている。
【0074】
エンジン2が停止状態であることによって、エンジン本体28の温度が徐々に低下し、冷却水温Twが基準温度Toを下回った場合には、ステップS1の判定によって、HEV−ECU18が再び処理をステップS1からステップS2に進めるようになる。そして、ステップS1からステップS2に処理を進むようになった場合の制御内容については上述したとおりである。
【0075】
一方、冷却水温Twが基準温度To以上であって、HEV−ECU18が処理をステップS1からステップS3に進めたときに、フィルタ40の強制再生が行われている場合、HEV−ECU18はステップS3の判定によって処理をステップS2に進める。
従って、冷却水温度Twが基準温度To以上であっても、フィルタ40の強制再生が行われている場合には、第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも閉状態とされることになる。フィルタ40の強制再生を行う際には、前述したようにエンジン2が運転され、このときエンジン本体28から排出される排気の温度を上昇させる必要がある。そこで、このように第1シャッタ56及び第2シャッタ58を共に閉状態とすることで、エンジン本体28の排気温度を、フィルタ40の強制再生が可能となる温度まで迅速に上昇させるようにしている。
【0076】
この場合もHEV−ECU18は、ステップS2の処理を行うと、その制御周期を終了して次の制御周期で再びステップS1から処理を開始するが、冷却水温度Twは既に基準温度To以上となっている。そこで、HEV−ECU18はステップS1の判定によって処理をステップS3に進め、フィルタ40の強制再生を実行中であるか否かの判定を再び行う。従って、冷却水温度Twが基準温度To以上であっても、フィルタ40の強制再生が行われている間は、第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも閉状態に保持される。この結果、エンジン本体28の温度が高温に維持され、これに伴って高温となった排気によりフィルタ40の強制再生が迅速に行われる。
【0077】
フィルタ40の強制再生が完了すると、HEV−ECU18はエンジンECU20から強制再生終了の情報を受け取り、ステップS3の判定によって処理をステップS4に進める。ステップS4における処理の内容は上述のとおりであって、HEV−ECU18は、第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態として、その制御周期を終了する。
【0078】
次の制御周期で再びステップS1から処理を開始したとき、エンジン本体28の冷却水温Twが依然として基準温度To以上であれば、HEV−ECU18はステップS1の判定によって処理をステップS3に進める。このときにはフィルタ40の強制再生を終了したばかりであるので、HEV−ECU18はステップS3の判定により処理をステップS4に進める。従って、冷却水温Twが基準温度To以上であってフィルタ40の強制再生が行われていない場合には、ステップS6の処理によって第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも開状態に保持される。
【0079】
エンジン2が停止状態であることによって、エンジン本体28の温度が徐々に低下し、冷却水温Twが基準温度Toを下回った場合、HEV−ECU18はステップS1の判定により、再び処理をステップS1からステップS2に進めるようになる。そして、ステップS1からステップS2に処理を進むようになった場合の制御内容については上述したとおりである。
【0080】
なお、キースイッチが一旦オフ位置に操作された後、あまり時間をおかずにキースイッチが再びオン位置に操作されて、エンジン温度制御が開始されたときの冷却水温Twが既に基準温度To以上である場合も、HEV−ECU18はステップS1の判定により、処理をステップS3に進める。
このときフィルタ40の強制再生が行われていなければ、HEV−ECU18はステップS3の判定により、処理をステップS4に進める。従って、この場合も上述のように、ステップS4の処理により第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも開状態に保持される。
【0081】
一方、このときフィルタ40の強制再生が行われていると、HEV−ECU18はステップS3の判定により、処理をステップS2に進める。従って、この場合には、ステップS2の処理により第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも閉状態とされる。フィルタ40の強制再生が実行されていることによりエンジン2は運転状態にあるので、第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも閉状態に保持されることにより、エンジン本体28の温度が高温に維持され、これに伴って高温となった排気によりフィルタ40の強制再生が迅速に行われる。
フィルタ40の強制再生が完了すると、前述したように、HEV−ECU18はステップS3の判定によって処理をステップS4に進める。そして、ステップS4の処理により第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも開状態に保持される。
【0082】
以上のようにしてエンジン温度制御が行われることにより、エンジン本体28の温度として検出した冷却水温Twが基準温度Toに達していない場合には、第1シャッタ56及び第2シャッタ58が共に閉状態とされるので、エンジンルーム52内から車外への放熱量が低下する。この結果、エンジン2が運転されているときには、エンジン本体28の温度上昇が促進されて冷却水温が迅速に上昇し、エンジン2が停止しているときには、エンジン本体28の温度低下が抑制されて冷却水温が低下しにくくなる。
【0083】
従って、エンジン2を始動した場合にはエンジン2の暖機に要する時間が短縮され、燃費を改善することができると共に、冷態運転時に増大する排気中の有害物質の排出量も低減することができる。また、エンジン2の運転時には、冷却水温が迅速に上昇することにより、良好な暖房効果を早期に得ることができ、エンジン2の停止時には、冷却水温が低下しにくいので、エンジン2の停止後も良好な暖房効果が得られる時間を延長することができる。
そして、このようなエンジン温度制御は、冷却水温センサ50がエンジン温度として検出した冷却水温Twに基づきHEV−ECU18が自動的に実行するので、運転者がエンジン2の暖機状態や暖房に効き具合に基づいて作業をする必要がなく、エンジン温度を容易且つ的確に制御することが可能である。
【0084】
更に、フィルタ40の強制再生を行う際にも、第1シャッタ56及び第2シャッタ58が共に閉状態とされ、エンジンルーム52内から外気への放熱量が低下することにより、エンジン本体28の温度が迅速に上昇する。これに伴ってエンジン本体28から排出される排気の温度も、フィルタ40の強制再生に必要な温度まで迅速に上昇させることができる。従って、フィルタ40の昇温に要する時間や、強制再生に要する時間を短縮することができ、燃費を改善することができる。また、フィルタ40の強制再生を実行中に、エンジン本体28の温度が低下してしまい、フィルタ40の強制再生が不完全なまま終了してしまうといった事態も回避することができる。
【0085】
なお、上述のエンジン温度制御において、冷却水温Twが基準温度Toに達していないときに、ステップS1から直ちにステップS2に処理を進めずに、ハイブリッド電気自動車1の車室内を暖房するための暖房用ヒータ機構を作動させるスイッチ(図示せず)がオン操作された場合に限り、HEV−ECU18が処理をステップS1からステップS2に進めるようにしてもよい。この場合、暖房用ヒータ機構を作動させるスイッチがオン操作されなければ、フィルタ40の強制再生が行われている場合を除き、HEV−ECU18は第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態に保持する。
このようにした場合も、暖房用ヒータ機構を作動させるスイッチがオン操作されていれば、上述したエンジン温度制御で得られる効果と同様の効果が得られる。
【0086】
また、上述のエンジン温度制御では、フィルタ40の強制再生を実行中に、処理をステップS3からステップS2に進めて、第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも閉状態とするときには、強制再生終了まで第1シャッタ56及び第2シャッタ58の閉状態を保持するようにしている。
しかし、これに代えて、フィルタ40の強制再生を実行中に冷却水温センサ50が検出した冷却水温Twが所定の上限温度に達したときには、第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態として、エンジン本体28の過剰な温度上昇を防止することもできる。また、このときには第1シャッタ56及び第2シャッタ58のいずれか一方を開状態とするようにしてもよい。
【0087】
本実施形態において、HEV−ECU18が行うエンジン温度制御では、上述のようにエンジン2の運転及び停止についての制御には積極的に関与していない。しかしながら、エンジン温度制御においてエンジン2の運転及び停止を積極的に制御することも可能である。そこで、このようなエンジン温度制御を本実施形態の変形例として、図13に基づき以下に説明する。
【0088】
図13は、HEV−ECU18が行うエンジン温度制御の変形例のフローチャートであり、上述した実施形態と同様に、ハイブリッド電気自動車1の車室内に設けられた図示しないキースイッチがオン位置に操作されると、エンジン温度制御が開始され、所定の制御周期で繰り返し実行さる。そして、キースイッチがオフ位置に操作されると、HEV−ECU18はエンジン温度制御を終了する。
【0089】
なお、図13のフローチャートは、図12のフローチャートをベースとして、更にステップS5乃至S7を追加したものであって、ステップS1乃至S4の処理内容は、上述した実施形態と全く同様である。具体的には、ステップS1とステップS2との間にステップS5及びステップS6が挿入されている点、及びステップS4の後にステップS7が追加されている点で、本変形例は上述の実施形態と相違している。そこで、以下では、このような相違点の部分を中心に説明し、上述の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0090】
また、上述した実施形態では、エンジン2の運転及び停止がバッテリ8の充電のための運転制御に依存しており、積極的にエンジン2を運転してエンジン本体28の温度を上昇させていないため、ステップS1で用いる基準温度Toを、暖房に使用可能な冷却水の温度の下限値に基づき、下限値より幾分高めの例えば80℃に設定した。これに対し、本変形例ではエンジン温度制御においてもエンジン2の運転及び停止を行うため、上述の実施形態に比べ、ステップS1で用いる基準温度Toを、暖房に使用可能な冷却水の温度の下限値に更に近付けてもよい。
【0091】
本変形例では、エンジン温度制御を開始したときに、冷却水温センサ50が検出したエンジン本体28の冷却水温度Twが基準温度Toに達していない場合、ステップS2で直ちに第1シャッタ56及び第2シャッタ58を共に閉状態とするのではなく、HEV−ECU18はステップS5において、エンジンECU20からの情報に基づき、エンジン2が停止状態にあるか否かを判定する。
【0092】
エンジン2が停止状態にある場合、HEV−ECU18は処理をステップS5からステップS6に進め、エンジンECU20にエンジン2を始動するよう指令すると共に、インバータ6を制御して発電機4をモータとして作動させ、エンジン本体28をクランキングする。エンジンECU20は、HEV−ECU18からの指令を受けると、エンジン本体28への燃料の供給を開始してエンジン2を始動し、エンジン2を運転状態とする。そして、HEV−ECU18は処理をステップS6からステップS2に進める。
一方、エンジン2が既に運転状態にある場合、HEV−ECU18は処理をステップS5から直接ステップS2に進める。
【0093】
ステップS2の処理は前述したとおりであって、HEV−ECU18は、第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも閉状態とし、その制御周期を終了する。エンジン2は運転状態にあるので、前述の実施形態においてエンジン2が運転中の場合と同様に、第1シャッタ56及び第2シャッタ58が共に閉状態となることによってエンジン本体28の温度上昇が促進され、冷却水温が迅速に上昇していく。
【0094】
次の制御周期でもエンジン本体28の温度がまだ十分に上昇しておらず、冷却水温度Twが基準温度Toに達していない場合、HEV−ECU18は再びステップS5でエンジン2が停止状態にあるか否かを判定する。エンジン2は既に運転状態にあるので、HEV−ECU18はステップS5の判定によって処理をステップS2に進める。従って、冷却水温度Twが基準温度Toに達していない場合には、ステップS2の処理によって、第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも閉状態に保持されることになる。
【0095】
このように、冷却水温度Twが基準温度Toに達していない場合には、エンジン2が運転状態に維持されると共に第1シャッタ56及び第2シャッタ58が閉状態に保持されるので、エンジン本体28の温度上昇が促進されて冷却水温が迅速に上昇する。従って、エンジン2の暖機に要する時間が短縮され、燃費を改善することができると共に、冷態運転時に増大する排気中の有害物質の排出量も低減することができる。また、冷却水温が迅速に上昇することにより、良好な暖房効果を早期に得ることができる。
【0096】
第1シャッタ56及び第2シャッタ58が閉状態に保持されてエンジン本体28の温度が上昇し、冷却水温度Twが基準温度To以上になった場合、前述の実施形態を同様に、HEV−ECU18は処理をステップS1からステップS3に進める。
このときに、フィルタ40の強制再生が行われていれば、HEV−ECU18は処理をステップS2に進め、前述の実施形態と同様の処理を行うので、フィルタ40の強制再生中には、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
一方、ステップS3に処理を進めたときにフィルタ40の強制再生が行われていない場合、HEV−ECU18は処理をステップS4に進め、前述の実施形態と同様に第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態とする。
本変形例では、上述のように冷却水温Twが基準温度Toに達していない場合には必ずエンジン2を運転状態としており、フィルタ40の強制再生も行われていないので、HEV−ECU18は、ステップS4の後で更に処理をステップS7に進め、運転中のエンジン2を停止状態とした後、その制御周期を終了する。
【0098】
次の制御周期で、HEV−ECU18は再びステップS1から処理を開始する。このとき、エンジン本体28の冷却水温Twが依然として基準温度To以上であれば、HEV−ECU18はステップS1の判定によって処理をステップS3に進める。このときもフィルタ40の強制再生が行われていなければ、HEV−ECU18はステップS3の判定により処理をステップS4に進める。従って、冷却水温Twが基準温度To以上であってフィルタ40の強制再生が行われていない場合には、ステップS4の処理によって第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも開状態に保持されると共に、次のステップS7の処理によってエンジン2が停止状態に維持される。
【0099】
エンジン2が停止状態であることによって、エンジン本体28の温度が徐々に低下するのに伴い、冷却水温Twが基準温度Toより低下すると、HEV−ECU18はステップS1の判定により、再び処理をステップS5に進めるようになる。そして、ステップS1からステップS5に処理を進むようになった場合の制御内容については上述したとおりである。
【0100】
なお、フィルタ40の強制再生が行われていて、この強制再生が終了した場合も、HEV−ECU18は前述の実施形態と同様に、ステップS3の判定によって処理をステップS4に進める。従って、この場合も、ステップS4の処理によって第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも開状態に保持されると共に、次のステップS7の処理によってエンジン2が停止状態に維持される。
【0101】
なお、キースイッチが一旦オフ位置に操作された後、あまり時間をおかずにキースイッチが再びオン位置に操作されて、エンジン温度制御が開始されたときの冷却水温Twが、既に基準温度To以上である場合も、前述の実施形態と同様に、HEV−ECU18はステップS1の判定によって処理をステップS3に進める。
このときフィルタ40の強制再生が行われていなければ、HEV−ECU18はステップS3の判定により、処理をステップS4に進める。従って、この場合も上述のように、ステップS4の処理により第1シャッタ56及び第2シャッタ58がいずれも開状態に保持されると共に、ステップS7の処理によりエンジン2が停止状態に維持される。
一方、このときフィルタ40の強制再生が行われている場合は、前述の実施形態と同様の処理が行われ、同様の効果を得ることができる。
【0102】
以上のようにしてエンジン温度制御が行われることにより、エンジン本体28の温度として検出した冷却水温Twが基準温度Toに達していない場合には、第1シャッタ56及び第2シャッタ58が共に閉状態とされるので、前述の実施形態と同様にエンジンルーム52内から車外への放熱量が低下する。このときエンジン2は必ず運転状態となるので、エンジン本体28の温度上昇が促進されて冷却水温が迅速に上昇する。
【0103】
従って、エンジン2の暖機に要する時間が短縮され、燃費を改善することができると共に、冷態運転時に増大する排気中の有害物質の排出量も低減することができる。また、冷却水温が迅速に上昇することにより、良好な暖房効果を早期に得ることができる。更に、フィルタ40の強制再生を行う際も、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
そして、このようなエンジン温度制御についても、冷却水温センサ50がエンジン温度として検出した冷却水温Twに基づきHEV−ECU18が自動的に実行するので、運転者がエンジン2の暖機状態や暖房に効き具合に基づいて作業をする必要がなく、エンジン温度を容易且つ的確に制御することが可能である。
【0104】
なお、本変形例のエンジン温度制御においても、冷却水温Twが基準温度Toに達していないときに、ステップS1から直ちにステップS5に処理を進めずに、ハイブリッド電気自動車1の車室内を暖房するための暖房用ヒータ機構を作動させるスイッチがオン操作された場合に限り、HEV−ECU18が処理をステップS1からステップS5に進めるようにしてもよい。この場合、暖房用ヒータ機構を作動させるスイッチがオン操作されなければ、EV−ECU18はエンジン温度制御でのエンジン2の始動を行わず、第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態に保持する。
【0105】
このようにした場合も、暖房用ヒータ機構を作動させるスイッチがオン操作されていれば、上述したエンジン温度制御で得られる効果と同様の効果が得られる。また、暖房用ヒータ機構を作動させるスイッチがオン操作されなければステップS6によるエンジン2の始動が行われないので、エンジン温度制御によるエンジン2の始動の頻度を減少させることができる。
【0106】
なお、本変形例のエンジン温度制御でも、前述の実施形態の場合と同様に、フィルタ40の強制再生を実行中に冷却水温センサ50が検出した冷却水温Twが所定の上限温度に達したときには、第1シャッタ56及び第2シャッタ58を閉状態に保持せず、いずれも開状態として、エンジン本体28の過剰な温度上昇を防止するようにしてもよい。
【0107】
以上で本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、第1シャッタ56を規制解除位置に対応した開状態とする場合に、図6に示すように第1シャッタ56を全開とする一方、第1シャッタ56を規制位置に対応した閉状態とする場合に、図7に示すように第1シャッタ56を全閉とした。しかしながら、第1シャッタ56の開状態及び閉状態はこれに限定されるものではなく、必要に応じて変更することが可能である。
【0108】
即ち、例えば図6の全開の状態よりも各フラップ68を閉じた中間開度の状態を、規制解除位置に対応する開状態とすると共に、図7に示す全閉の状態を規制位置に対応する閉状態としてもよいし、図6に示す全開の状態を規制解除位置に対応した開状態とすると共に、図7の全閉の状態よりも各フラップ68を開いた中間開度の状態を、規制位置に対応する閉状態としてもよい。更に、開状態及び閉状態のいずれも、各フラップ68を中間開度とした状態とし、開状態の方が閉状態よりも各フラップ68の開度が大きくなるようにしてもよい。
【0109】
同様に第2シャッタ58についても、例えば図9のようにシート92を完全に折り畳んだ状態と、図11のようにシート92を最大限に展開した状態との中間の状態を、規制解除位置に対応する開状態とすると共に、図11に示す状態を規制位置に対応する閉状態としてもよいし、図9に示す状態を規制解除位置に対応する開状態とすると共に、図9の状態と図11の状態との中間の状態を、規制位置に対応する閉状態としてもよい。更に、開状態及び閉状態のいずれも、図9の状態と図11の状態との中間の状態とし、開状態の方が閉状態よりもシート92が折り畳まれた状態となるようにしてもよい。
【0110】
また、上記実施形態で用いた第1シャッタ56及び第2シャッタ58の構成は一例を示すものであって、それぞれの構成を限定するものではない。例えば、第1及び第2シャッタを、本実施形態の第1シャッタ56及び第2シャッタ58のいずれか一方と同様の構成としてもよいし、第2シャッタ58のような折り畳み式のシート92に代えて、巻き取り式のシートを用いるようにしてもよい。
【0111】
更に、第1シャッタ56及び第2シャッタ58の2つのシャッタを配設しなければならないわけではなく、その配設位置も上記実施形態に限定されるものではない。即ち、エンジン本体28が載置されるエンジンルーム52内と車外との間で空気の流動が生じる流動経路に設けられ、空気の流動を規制する規制位置と、上記規制を解除する規制解除位置とに切り換え可能なものであれば、数や位置などは、どのような形態であってもよい。
【0112】
また、本発明のエンジン温度検出手段は、上記実施形態及び変形例のように、エンジン本体28の冷却水温をエンジン温度として検出する冷却水温センサ50に限定されるものではない。例えば、本発明のエンジン温度検出手段として、エンジン本体28に温度センサを装着し、エンジン本体28自体の温度をエンジン温度として検出するようにしてもよいし、排気後処理装置34に設けられた排気温度センサ42を本発明のエンジン温度検出手段とし、排気温度センサ42が検出した排気温度をエンジン温度として用いるようにしてもよい。なお、それぞれの場合に対応し、エンジン温度制御で用いる基準温度Toを適正に変更することはいうまでもない。
【0113】
また、上記変形例において、HEV−ECU18がエンジン温度制御を行う際に、停止状態にあるエンジン2を始動した場合には、前述したフィルタ40の強制再生の場合と同様に、HEV−ECU18がバッテリECU22から入手したバッテリ8の充電率SOCに基づき、インバータ6を制御するようにしてもよい。即ち、バッテリ8の充電率が上限基準充電率に達していない場合には、発電機4が電力を発生するようにインバータ6を制御し、発電機4が発生した電力をバッテリ8に充電するようにしてもよい。一方、バッテリ8の充電率が上限基準充電率に達している場合には、発電機4が電力を発生しないようにインバータ6を制御し、バッテリ8の過充電を防止するようにしてもよい。
【0114】
また、上記変形例において、フィルタ40の強制再生が行われておらずに、ステップS3からステップS4に処理を進めた場合、ステップS4で第1シャッタ56及び第2シャッタ58をいずれも開状態とすると共に、ステップS7でエンジン2を停止した。
しかしながら、このときエンジン2の運転を継続し、前述したフィルタ40の強制再生の場合と同様に、HEV−ECU18がバッテリECU22から入手したバッテリ8の充電率SOCに基づき、インバータ6を制御するようにしてもよい。そして、バッテリ8の充電率SOCが上限基準充電率に達すると、エンジン2を停止するようにしてもよい。
このようにエンジン2の運転を継続する場合、エンジン2は既に暖機状態にあるので、ステップS4に処理が進んだ時点で直ちに第1シャッタ56及び第2シャッタ58を開状態としてもよいし、エンジン2が停止するまでは第1シャッタ56及び第2シャッタ58の閉状態を維持するようにしてもよい。
【0115】
なお、本実施形態では、エンジン本体28をディーゼルエンジンとしたが、エンジン本体28を中心としたエンジン2の構成はこれに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更が可能である。また、ハイブリッド電気自動車1におけるエンジンルーム52や、発電機4、エンジン本体28、電動機10などの配置は、図3の例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0116】
1 ハイブリッド電気自動車
2 エンジン
4 発電機
10 電動機
18 HEV−ECU(制御手段)
28 エンジン本体
40 パティキュレートフィルタ
50 冷却水温センサ(エンジン温度検出手段)
52 エンジンルーム
56 第1シャッタ(開閉手段)
58 第2シャッタ(開閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと電動機とを搭載し、上記エンジンを発電機の駆動源とすると共に、上記電動機のみを走行用の動力源として用いるハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置であって、
上記エンジンが載置されるエンジンルーム内と車外との間で空気の流動が生じる流動経路に設けられ、上記空気の流動を規制する規制位置と、上記規制を解除する規制解除位置とに切り換え可能な開閉手段と、
上記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
上記エンジン温度検出手段によって検出された上記エンジンの温度が所定の基準温度より低いときに、上記開閉手段を上記規制位置に制御する制御手段と
を備えることを特徴とするハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記エンジン温度検出手段によって検出された上記エンジンの温度が上記基準温度より低いときに上記エンジンが停止している場合には、上記開閉手段を上記規制位置に制御すると共に、上記エンジンを始動することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置。
【請求項3】
上記エンジンは、排気中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを排気通路に備え、
上記制御手段は、更に上記パティキュレートフィルタの強制再生を行う際に、上記開閉手段を上記規制位置に制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車のエンジン温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−98596(P2011−98596A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253056(P2009−253056)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】