説明

ハイブリッド電気自動車の制御装置

【課題】目的地に到達した時点でバッテリのSOCを確実に確保でき、もって目的地で静粛性の高いモータ走行を行って騒音による周囲への迷惑を未然に防止できるハイブリッド電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】電動機2の出力確保に重点をおいた高出力バッテリ16に加えて、電動機2の長時間駆動に適するエネルギ密度が高い高容量バッテリ17を搭載し、この高容量バッテリ17のSOCに基づき、高容量バッテリ17によるモータ走行で目的地での宅配を完了可能か否か判定し(ステップS8)、宅配を完了可能なときには、可能な限りEVモードによるモータ走行を継続しながら(ステップS12)、高容量バッテリ17のSOCが不足する場合には適宜HEV充電モードを実行して高容量バッテリ17を充電し(ステップS16)、これにより車両が宅配地域に侵入した時点での高容量バッテリ17のSOCを確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの駆動力と電動機の駆動力とを任意に駆動輪に伝達可能としたハイブリッド電気自動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、走行用動力源としてエンジン及び電動機を搭載し、これらエンジンの駆動力と電動機の駆動力とを任意に駆動輪に伝達可能としたハイブリッド電気自動車が実用化されている。
この種のハイブリッド電気自動車では、運転者によるアクセル操作量や車速などから車両走行に必要な要求トルクを算出し、この要求トルクからエンジン及び電動機がそれぞれ発生すべき駆動力を設定し、これらの駆動力を達成するようにエンジンと電動機とを運転制御している。また、車両の減速時には、駆動輪側からの逆駆動により電動機を発電機として作動させてバッテリに充電する回生制御を行う一方、バッテリの残存容量(SOC:State Of Charge)が低下したときには、車両の走行中であってもエンジンの駆動力の一部を用いて電動機を発電機として作動させてバッテリを充電することによりSOCの回復を図っている。
【0003】
ところで、ハイブリッド電気自動車は電動機による走行時(以下、モータ走行という)に得られる静粛性、及び有害成分を排出しないゼロエミッション性が大きな利点である。
例えば配送トラックの場合には宅配の目的地付近での走行などにおいて、乗用車の場合には自宅車庫付近での走行や車庫入れ時などにおいて特に静粛性が要求されるが、このようなときにハイブリッド電気自動車ではモータ走行を行うことにより、深夜の住宅地であっても周囲への迷惑を防止することができる。
また、例えばオフィス街では朝夕の通勤時、商店街では夕飯準備のための夕方頃などに狭い地域に多数の人々が集まることから、近接した道路を走行する車両の排ガスがより多くの人々に影響を及ぼすことになる。よって、このようなときにハイブリッド電気自動車ではモータ走行を行うことにより、人々への排ガスによる影響を未然に防止することができる。
しかしながら、従来のハイブリッド電気自動車では、所定のSOCを目標値とし、実際のバッテリのSOCが目標値に近づくように回生制御やエンジン駆動による充電を実行するだけのため、上記した宅配の目的地付近や車庫付近或いはオフィス街や商店街などのように、肝心の静粛性やゼロエミッション性を必要とする地域に到達したときにバッテリのSOCが不足してモータ走行を継続できない場合があった。
このような不具合の対策として、例えば特許文献1の技術が提案されている。当該特許文献1の技術では、車両の現在地より目的地までの距離が第1の所定値より少なくなると、この距離が第1の所定値以上である場合に比べてバッテリの目標SOCを増大し、これにより目的地付近でのモータ走行を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−359904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、目的地付近でどの程度の時間モータ走行が必要となるかは状況によって大幅に相違する。例えば、多数の目的地が密集している地域において配送トラックが各目的地を巡って順次宅配を行う場合には、当該地域内で連続してモータ走行を行う必要が生じ、モータ走行を継続する時間はかなり長時間になる。
特許文献1の技術は、目標SOCの増大により目的地に到達した時点でのバッテリのSOCを確保しているが、限られたバッテリ容量をできるだけ有効に利用しているに過ぎない。このため、通常の目標SOCに基づく制御時に比較して実際のバッテリのSOCをそれほど多く確保することはできず、結果として当該地域内での宅配中にバッテリのSOCが不足してしまい、モータ走行を中断してエンジン走行やエンジン・モータ併用走行に切り換える必要が生じる。よって、以降はモータ走行による静粛性やゼロエミッション性が得られず、ハイブリッド電気自動車の利点を十分に活かしているとは言い難かった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、目的地に到達した時点でバッテリのSOCを確実に確保でき、もって目的地でモータ走行を行うことにより、静粛性やゼロエミッション性などのモータ走行による利点を十分に活かすことができるハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、出力密度が高い特性の高出力バッテリと、エネルギ密度が高い特性の高容量バッテリと、高出力バッテリおよび高容量バッテリの残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段と、車両の駆動輪に駆動力を伝達可能なエンジンと、高容量バッテリまたは高出力バッテリから供給される電力によって発生する駆動力を駆動輪に伝達可能であると共に、車両の減速時に駆動輪からの逆駆動により回生発電して高出力バッテリまたは高容量バッテリを充電可能な電動機と、エンジン及び電動機を駆動制御し、高容量バッテリから供給される電力によって発生する電動機の駆動力により車両を走行させるEVモードと、少なくとも高出力バッテリから供給される電力によって発生する電動機の駆動力及びエンジンの駆動力を併用して車両を走行させるHEVモードと、少なくとも高出力バッテリから供給される電力によって発生する電動機の駆動力及びエンジンの駆動力を併用して車両を走行させると共に車両の減速時に電動機により回生発電される電力を高容量バッテリに充電させるHEV充電モードの何れかを選択的に実行可能なエンジン・電動機制御手段と、車両の目的地を設定するための目的地設定手段と、バッテリ残存容量検出手段によって検出した高容量バッテリの残存容量に基づき、目的地設定手段により設定された目的地に車両がEVモードによる走行によって到達可能であるか否かを判定する第1の判定手段と、第1の判定手段により車両が目的地に到達可能であると判定されたときはエンジン・電動機制御手段にEVモードを実行させる一方、第1の判定手段により車両が目的地に到達不能であると判定されたときにはエンジン・電動機制御手段にHEVモードを実行させ、EVモードによる走行中に高容量バッテリの残存容量が第1の所定未満になったときはエンジン・電動機制御手段にHEV充電モードを実行させるSOC管理手段とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、SOC管理手段が、第1の判定手段により車両が目的地に到達不能であると判定されたときにエンジン・電動機制御手段にHEVモードを実行させると共に、このとき高容量バッテリの残存容量が第2の所定値未満であると、エンジン・電動機制御手段にHEV充電モードを実行させるものである。
請求項3の発明は、請求項1または2において、第1の判定手段が、車両が目的地に到達して宅配を完了した後に目的地を中心とした所定の宅配地域を離脱できるか否かを判定するものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3において、SOC管理手段が、車両が宅配地域に進入してから離脱するまでの走行に必要な残存容量として設定された第1の所定値または第2の所定値に基づき判定を行うものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかにおいて、目的地で静粛性が要求されるか否かを判定する第2の判定手段を備え、エンジン・電動機制御手段が、第2の判定手段により静粛性が要求されると判定されたときに目的地でEVモードを実行し、第2の判定手段により静粛性が要求されないと判定されたときに目的地でHEVモードを実行するものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかにおいて、目的地でゼロエミッション性が要求されるか否かを判定する第3の判定手段を備え、エンジン・電動機制御手段が、第3の判定手段によりゼロエミッション性が要求されると判定されたときに目的地でEVモードを実行し、第3の判定手段によりゼロエミッション性が要求されないと判定されたときに目的地でHEVモードを実行するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように請求項1の発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エネルギ密度が高くて電動機の長時間駆動に適した高容量バッテリを用いることにより、EVモード(電動機による走行)のみで目的地に到達可能な走行距離を十分に確保した上で、高容量バッテリの残存容量に基づき、EVモードにより目的地に到達可能と判定したときには、可能な限りEVモードによる走行を継続しながら、EVモードの実行中に高容量バッテリの残存容量が不足するとHEV充電モードに切り換え、車両減速時に電動機により回生発電された電力を高容量バッテリに充電するようにした。よって、目的地に到達したときに高容量バッテリの残存容量を確実に確保できるため、目的地でEVモードによる走行を行うことができ、もって静粛性やゼロエミッション性などのEVモードの走行による利点を十分に活かすことができる。
【0010】
請求項2の発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、請求項1に加えて、EVモードにより車両が目的地に到達不能であると判定されたときに高出力バッテリを電源としたHEVモードを実行するため、その時点の高容量バッテリの残存容量を維持でき、しかも、このとき高容量バッテリの残存容量が不足していると、HEV充電モードに切り換えて、車両減速時に電動機により回生発電された電力を高容量バッテリに充電するようにした。よって、目的地に到達したときに高容量バッテリの残存容量を確実に確保できるため、目的地でEVモードによる走行を行うことができる。
【0011】
請求項3の発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、請求項1または2に加えて、目的地での宅配完了後に目的地を中心とした宅配地域を離脱できるか否かを判定するため、宅配地域でEVモードによる走行を確実に行うことができる。
請求項4の発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、請求項3に加えて、宅配地域に進入してから離脱するまでに必要な残存容量である第1の所定値または第2の所定値に基づき判定を行うため、宅配地域でEVモードによる走行を確実に行うことができる。
請求項5の発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、請求項1乃至4の何れかに加えて、目的地で静粛性が要求されないときにはEVモードに代えてHEVモードを実行するようにしたため、高容量バッテリの残存容量を温存してその後のEVモードによる走行に有効利用することができる。
請求項6の発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、請求項1乃至5の何れかに加えて、目的地でゼロエミッション性が要求されないときにはEVモードに代えてHEVモードを実行するようにしたため、高容量バッテリの残存容量を温存してその後のEVモードによる走行に有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態のパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置を示す全体構成図である。
【図2】エネルギ密度を縦軸とし出力密度を横軸としたバッテリ特性を示す図である。
【図3】車両ECUが実行する走行モード切換ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】同じく車両ECUが実行する走行モード切換ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】別例の車両ECUが実行する走行モード切換ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化したパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置の一実施形態を説明する。
図1の全体構成図に示すように、本実施形態のハイブリッド電気自動車は宅配便などに使用する配送トラックであり、宅配業務前に宅配会社で事前に走行用バッテリを充電可能なプラグイン型として構成されている。走行用動力源としては、ディーゼルエンジン(以下、エンジンという)1、及び例えば永久磁石式同期電動機のように発電も可能な電動機2が搭載されている。エンジン1の出力軸にはクラッチ3の入力軸が連結されており、クラッチ3の出力軸に電動機2の回転軸を介して自動変速機(以下、変速機という)4の入力軸が連結されている。
クラッチ3の断接操作は図示しないアクチュエータにより自動的に行われ、変速機4の変速操作も図示しないアクチュエータにより自動的に行われるようになっている。変速機4の出力軸はプロペラシャフト5、差動装置6及び駆動軸7を介して左右の駆動輪8に連結されている。
【0014】
従って、クラッチ3が接続されているときには、エンジン1の出力軸と電動機2の回転軸の両方が変速機4を介して駆動輪8と機械的に接続され、エンジン1及び電動機2の駆動力が共に変速機4により変速された後に駆動輪8に伝達される。また、クラッチ3が切断されているときには、電動機2の回転軸のみが変速機4を介して駆動輪8と機械的に接続され、電動機2の駆動力が変速機4により変速された後に駆動輪8に伝達される。
エンジン1及び電動機2の運転、クラッチ3の断接操作、変速機4の変速操作などは、車両ECU11により統合制御される。このために車両ECU11には、エンジン1を制御するエンジンECU12、電動機2を制御するモータECU13、クラッチ3の断接操作及び変速機4の変速操作を制御する変速ECU14、電動機2の電源であるバッテリ16,17のSOCを検出するバッテリECU15などが接続されている。
【0015】
図示はしないが車両ECU11には、運転者によるアクセルペダルの操作量θaccを検出するアクセルセンサ21、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ22、車速Vを検出する車速センサ23などのセンサ類から検出情報が入力され、これらの検出情報に基づき車両ECU11は各ECUに各種指令を出力するようになっている。
例えばエンジン1及び電動機2のトルク制御に関しては、アクセル操作量θaccから求めた運転者の要求トルクをエンジン側及びモータ側に割り当て、それぞれの要求トルクを達成するようにエンジンECU12及びモータECU13に指令を出力する(エンジン・電動機制御手段)。また、変速制御に関しては、アクセル操作量θacc及び車速Vに基づき所定のシフトマップから目標変速段を算出し、この目標変速段を達成するように変速ECU14に指令を出力する。
【0016】
また、車両ECU11にはナビゲーション装置24が接続され、ナビゲーション装置24は自己のメモリに記憶されている地図データ、及びアンテナ24aを介して受信したGPS情報やVICS情報などに基づき、配送トラックが各宅配先を運行するときの現在地から目的地までの最適ルートを割り出して、ディスプレイ25及びスピーカ26により道路案内を行う。ディスプレイ25はタッチパネル式として構成され、運転者が宅配先の目的地などの情報を入力できるようになっている(目的地設定手段)。
例えばエンジンECU12は、車両ECU11からの指令に基づきエンジン1のアイドル運転制御や図示しない排ガス浄化装置の再生制御など、エンジン1の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU11から指令される要求トルクを達成すべく、エンジン1の燃料噴射量や噴射時期などを制御する。
【0017】
例えばモータECU13は、走行用のバッテリ16,17に蓄えられた直流電力をインバータ27により交流電力に変換した上で電動機2に供給し、電動機2をモータとして作動させ、この際に車両ECU11から指令される要求トルクを達成すべく、電動機2への駆動電流を制御する。また、車両減速時には駆動輪8側からの逆駆動により電動機2を発電機(ジェネレータ)として作動させ、電動機2で発電された交流電力をインバータ27により直流電力に変換した後にバッテリ16,17に充電し、このときに電動機2が発生する負側の駆動力により駆動輪8に回生制動力を発生させる。また、モータECU13は、バッテリ16のSOCが低下して充電を必要とするときに、車両の走行中であっても電動機2を発電機として作動させてエンジン駆動力の一部を用いて発電させてバッテリ16を充電し、SOCの回復を図る。
【0018】
ところで、一般的なハイブリッド電気自動車は、電動機2の出力確保に重点をおいて出力密度が高い特性のバッテリ(以下、高出力バッテリという)が搭載されるが、本実施形態では、このような高出力バッテリ16に加えてエネルギ密度が高い特性のバッテリ17(以下、高容量バッテリという)も搭載されている。
図2はエネルギ密度を縦軸とし出力密度を横軸としたバッテリ特性を示す図である。pb-Acid(鉛酸)バッテリやNi-cd(ニッケルカドニウム)バッテリに比較してNi-MH(ニッケル水素)バッテリ及びLi-ion(リチウムイオン)バッテリは相対的に高い性能を実現しているが、エネルギ密度と出力密度とを高次元で両立させることが困難なため、例えば図中に2つの星印で示すように、何れか一方を重視してバッテリの特性が設定される。一般的に航続距離の確保が必要な電気自動車(EV)では、電動機2の長時間駆動に適するエネルギ密度が高い高容量バッテリ17が採用され、電動機2の駆動時間よりも出力確保が重要なハイブリッド電気自動車(HEV)では、電動機2の高出力駆動に適する出力密度が高い高出力バッテリ16が採用される。
【0019】
本実施形態のハイブリッド電気自動車は、このようなエネルギ密度と出力密度に関して全く相反する特性を有する高出力バッテリ16及び高容量バッテリ17が搭載され、後述するように、それらの特性を最大限に有効利用すべく両バッテリ16,17を使い分けている。バッテリ16,17の種別はNi-MHバッテリでもLi-ionバッテリでも、或いは他の種類のバッテリでもよい。
一方、例えば変速ECU14は、車両ECU11から指令される目標変速段を達成すべく、図示しないアクチュエータによりクラッチ3の断接操作及び変速機4の変速操作を実行する。即ち、車両の走行中に目標変速段が切り換わってシフトアップやシフトダウンを要するときには、アクチュエータの制御によりクラッチ3を一旦遮断した上で変速機4を次変速段に切り換え、その後にクラッチ3を接続する一連の操作を実行する。また、エンジン走行やエンジン・モータ併用走行時にはクラッチ3を接続してエンジン1及び電動機2の駆動力を共に駆動輪8に伝達し、モータ走行時にはクラッチ3を切断して電動機2の駆動力のみを駆動輪8に伝達する。
【0020】
また、例えばバッテリECU15は、高出力バッテリ16及び高容量バッテリ17のSOCを検出し、そのSOC情報を車両ECU11に入力する。
ところで、[発明が解決しようとする課題]でも述べたように、単に目標SOCを増大するだけで目的地に到達した時点でのバッテリのSOCを確保する特許文献1の技術では、実際のバッテリのSOCを十分に確保することができず、肝心の目的地付近の地域内でSOCの不足によりモータ走行を中断せざるを得ない場合がある。このような不具合を鑑みて本実施形態では、上記したように高出力バッテリ16に加えて高容量バッテリ17を備えており、これらのバッテリ16,17を車両の走行状態やSOCなどに基づき使い分けることにより、目的地付近の地域での確実なモータ走行を可能としており、そのために車両ECU11が実行する処理を以下に説明する。
【0021】
まず、車両ECU11が高出力バッテリ16と高容量バッテリ17とを使い分けながら実行する3種の走行モードの概要について述べる。
基本的に車両ECU11は、HEVモード、EVモード、及びHEV充電モードを適宜切り換えながら車両を走行させる。
HEVモードは一般的なハイブリッド電気自動車と同様の制御内容であり、ハイブリッド電気自動車に好適な高出力バッテリ16を電源として用い、高出力バッテリ16のSOCや車両の走行状態に応じてエンジン走行、モータ走行、及びエンジン・モータ併用走行を適宜行うものである。
【0022】
また、EVモードは一般的な電気自動車と同様の制御内容であり、電気自動車に好適な高容量バッテリ17を電源として用いてモータ走行を行うものである。
また、HEV充電モードは、上記HEVモードと同じく高出力バッテリ16を用いてエンジン走行、モータ走行、及びエンジン・モータ併用走行を適宜行う制御内容であるが、車両減速時に電動機2により回生発電された電力を高出力バッテリ16に充電する代わりに、発電電力を高容量バッテリ17に充電する点が相違する。なお、HEV充電モードの制御内容はこれに限ることはなく、例えば回生による高容量バッテリ17の充電だけでなく、車両走行中にエンジン駆動力の一部を用いて電動機2を発電機として作動させて高容量バッテリ17を充電するようにしてもよい。
【0023】
次に、具体的に各走行モードを切り換えるために実行する車両ECU11の処理について述べる。
車両ECU11は車両のイグニションスイッチがオンされているときに、図3,4に示す走行モード切換ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
まず、ステップS2でディスプレイ25のタッチパネルにより宅配先である目的地が入力されたか否かを判定し、No(否定)のときには一旦ルーチンを終了する。配送トラックによる宅配業務が開始されて運転者により目的地が入力されると、ナビゲーション装置24では現在地から目的地までの最適ルートを割り出して道路案内を開始すると共に、このときの最適ルートを車両ECU11に出力する。車両ECU11は入力した最適ルートに基づき、ステップS4で現在地から目的地での宅配を完了するまでに要する走行距離(以下、宅配完了距離Daという)を算出する。
【0024】
モータ走行による静粛性は目的地付近のピンポイントで要求されるだけでなく、目的地を中心とした所定の地域内(例えば半径500m内であり、以下、宅配地域という)で静粛性が要求される。よって、モータ走行は目的地での宅配を終えて宅配地域を車両が離脱するまで継続することが望ましい。そこで、このような観点から宅配完了距離Daは、最適ルートを辿った現在地から目的地までの走行距離に対して、目的地での宅配後に宅配地域から離脱するために要する走行距離(直線距離でないことを考慮して、例えば700m)を加算した値として算出される。但し、宅配完了距離Daはこれに限ることはなく、例えば所定の余裕分を加算した値としてもよい。
【0025】
その後ステップS6で、バッテリECU15から入力される現在の高容量バッテリ17のSOCに基づき、高容量バッテリ17からの電力供給によるモータ走行を行って走行可能な距離(以下、走行可能距離Dbという)を算出し、続くステップS8でこれらの宅配完了距離Da及び走行可能距離Dbに基づき、車両が目的地に到達できるか否か、即ち目的地で宅配を完了した後に宅配地域を離脱できるか否か(本発明の「目的地に到達可能か否かに相当」)を判定する(第1の判定手段)。
具体的には、走行可能距離Dbが宅配完了距離Da以上のときには、高容量バッテリ17によるモータ走行を行って目的地での宅配を完了可能と判定し、走行可能距離Dbが宅配完了距離Da未満のときには、高容量バッテリ17によるモータ走行を行って目的地での宅配を完了不能と判定する。
【0026】
電動機2の出力確保を優先した高出力バッテリ16では電動機2の駆動時間が短いことから、モータ走行のみで宅配を完了できるのは目的地が現在地に極めて近い場合に限られてしまう。これに対して高容量バッテリ17は電動機2の駆動時間を優先した特性のため、SOCが十分に確保されている状態であれば十分な宅配完了距離Daを実現でき、かなり遠方に目的地がある場合でもモータ走行のみで宅配を完了することができる。
なお、この例では、走行距離のみを指標として目的地に到達可能か否かを判定したが、これに限ることはない。例えば走行距離に加えて路面の起伏を考慮したり、VICS情報に基づく目的地までの渋滞状態を考慮したりしてもよい。
また、走行距離に代えてSOCを指標としてもよい。具体的には、現在地から目的地での宅配を完了するまでに要する高容量バッテリ17のSOCを路面の起伏や渋滞状態に基づく補正を加えて算出し、この必要なSOCが現在の高容量バッテリ17のSOC未満のときには目的地での宅配を完了可能と判定し、必要なSOCが実際のSOC以上のときには目的地での宅配を完了不能と判定してもよい。
【0027】
目的地での宅配を完了可能として上記ステップS8でYesの判定を下したときには、ステップS10に移行して高容量バッテリ17のSOCが最低必要量判定値SOC0(第1の所定値)以上であるか否かを判定する。最低必要量判定値SOC0としては、車両が宅配地域に進入してから宅配を終えて宅配地域から離脱するまでの走行に必要なSOCとして設定されている。但し、最低必要量判定値SOC0はこれに限ることはなく、例えば所定の余裕分を加算した値としてもよい。
上記ステップS8の判定がYesであることから、走行開始時点の高容量バッテリ17のSOCは最低必要量判定値SOC0よりも格段に高く、ステップS10でYesの判定を下してステップS12でEVモードを実行する(SOC管理手段)。上記したようにEVモードでは、高容量バッテリ17を電源として用いてモータ走行が行われる。その後、ステップS14で車両が宅配地域に進入したか否かを判定し、Noのときには上記ステップS10に戻る。
【0028】
モータ走行を継続して目的地に接近するに従って高容量バッテリ17のSOCは次第に低下して最低必要量判定値SOC0に接近するが、通常なら上記ステップS8で目的地での宅配を完了可能(宅配後に宅配地域から離脱可能)と判定しているため、最低必要量判定値SOC0以上のSOCを残した状態で宅配地域への進入が可能なはずである。よって、この場合にはモータ走行を継続して宅配地域に車両が進入し、車両ECU11はステップS14でYesの判定を下してステップS26に移行する。
但し、ステップS8の判定処理は、あくまでも走行開始時点の推測であるため、例えば酷い渋滞などの予想外の交通状態、或いはエアコンなどの電気負荷の多用があれば、宅配地域に進入する以前にSOCが最低必要量判定値SOC0未満になる場合もあり得る。このようなとき車両ECU11はステップS10でNoの判定を下し、ステップS16でHEV充電モードを実行する(SOC管理手段)。上記したようにHEV充電モードでは、高出力バッテリ16から供給される電力を使用してエンジン走行、モータ走行、及びエンジン・モータ併用走行が適宜行われると共に、車両減速の度に電動機2により回生発電された電力が高容量バッテリ17に充電されるため、そのSOCは次第に増加する。
【0029】
結果として以上の処理により、可能な限りEVモードによるモータ走行を継続しながら、高容量バッテリ17のSOCが不足する場合には適宜HEV充電モードを実行して充電することにより、最低必要量判定値SOC0以上の高容量バッテリ17のSOCを確保した状態で車両が宅配地域に侵入する。HEV充電モードでは、回生発電による電力のみで高容量バッテリ17を充電するため、発電のためのエンジン駆動に伴う燃費悪化などの弊害を発生することなく、高容量バッテリ17のSOCを確保することができる。
一方、目的地での宅配を完了不能として上記ステップS8でNoの判定を下したときには、ステップS18に移行して高容量バッテリ17のSOCが最低必要量判定値SOC0(第2の所定値)以上であるか否かを判定する。最低必要量判定値SOC0は上記ステップS10と同じく、車両が宅配地域に進入してから宅配を終えて宅配地域から離脱するまでの走行に必要なSOCとして設定されている。但し、これに限ることはなく、双方の最低必要量判定値SOC0を異なる値に設定してもよい。
【0030】
ステップS8の判定がNoの場合には、走行開始時点の高容量バッテリ17のSOCが最低必要量判定値SOC0以上のときも未満のときもあり得る。例えば目的地での宅配を完了するために高容量バッテリ17のSOCが僅かに不足する程度なら最低必要量判定値SOC0よりはSOCが高く、事前に宅配会社で高容量バッテリ17を充電していなければ最低必要量判定値SOC0よりもSOCは低い。
SOCが最低必要量判定値SOC0以上であるとしてステップS18でYesの判定を下したときには、ステップS20でHEVモードを実行する(SOC管理手段)。上記したようにHEVモードでは、高出力バッテリ16から供給される電力を使用してエンジン走行、モータ走行、及びエンジン・モータ併用走行が適宜行われ、それに伴って高出力バッテリ16は適宜充放電されるものの、高容量バッテリ17は充放電されずにその時点のSOCが維持される。続くステップS22では車両が宅配地域に進入したか否かを判定し、この判定がNoの間はステップS20でHEVモードを継続し、判定がYesになると上記ステップS26に移行する。
【0031】
また、SOCが最低必要量判定値SOC0未満であるとしてステップS18でNoの判定を下したときには、ステップS24でHEV充電モードを実行する(SOC管理手段)。従って、車両減速の度に電動機2の回生発電により高容量バッテリ17が充電され、そのSOCは次第に増加する。
結果として以上の処理により、高容量バッテリ17のSOCが最低必要量判定値SOC0以上のときにはHEVモードによりその時点のSOCを維持し、高容量バッテリ17のSOCが最低必要量判定値SOC0未満のときにはHEV充電モードにより充電し、何れの場合も最低必要量判定値SOC0以上の高容量バッテリ17のSOCを確保した状態で車両が宅配地域に侵入する。上記と同じく回生発電による電力を利用して充電するHEV充電モードでは、燃費悪化などの弊害を発生することなく高容量バッテリ17のSOCを確保することができる。
【0032】
以上のステップS8の判定及びステップS10,18の判定に応じた走行モードの実行状況を表1にまとめて示す。
【表1】

このように何れの場合も高容量バッテリ17のSOCを最低必要量判定値SOC0以上に確保した状態で車両は宅配地域に侵入し、車両ECU11はステップS26で当該目的地を中心とした宅配地域が静音区域であるか否かを判定する(第2の判定手段)。静音区域とは車両走行の際に静粛性が要求される地域であり、予めナビゲーション装置24の地図データ上には、各宅配地域が静音区域と非静音区域とに区分して登録されている。例えば住宅地などは静音区域として登録され、民家が少ない工場地帯や高速道路などは非静音区域として登録されている。
【0033】
静音区域であるとしてステップS26でYesの判定を下したときにはステップS28に移行し、静音時間帯であるか否かを判定する(第2の判定手段)。宅配地域が静音区域であったとしても、白昼であれば車両走行にそれほどの静粛性は要求されず、深夜であれば強く静粛性が要求される。ナビゲーション装置の地図データ上に登録された各静音区域には併せて静音時間帯と非静音時間帯とが区分して登録されており、現在時刻が静音時間帯に該当するときにはステップS28でYesの判定を下してステップS30に移行する。ステップS30ではEVモードを選択し、その後にルーチンを終了する。
従って、この場合の車両は宅配地域を高容量バッテリ17を電源としてモータ走行し、高容量バッテリ17のSOCが最低必要量判定値SOC0以上に確保されていることから、宅配地域に進入して目的地での宅配後に宅配地域から離脱するまでモータ走行を継続可能となる。
また、非静音区域であるとしてステップS26でNoの判定を下したとき、或いは非静音時間帯であるとしてステップS28でNoの判定を下したときには、ステップS32に移行してHEVモードを選択し、その後にルーチンを終了する。
【0034】
非静音区域であればエンジン走行やエンジン・モータ併用走行によりエンジン音を発しても周囲への迷惑にはならず、また静音区域であっても非静音時間帯であれば同様にエンジン音による迷惑は発生せず、HEVモードの選択による弊害はないものと見なせる。
そして、このような場合にHEVモードを実行することにより、宅配地域への進入の時点で確保されている高容量バッテリ17のSOC(最低必要量判定値SOC0以上)を温存できる。目的地での宅配後に引き続き別の目的地で宅配する予定がある場合、温存した高容量バッテリ17のSOCを次の目的地での宅配のためのモータ走行に有効利用でき、その分だけHEVモードによるエンジン運転時間が減少することから、結果として燃費向上を達成することができる。
【0035】
以上のように本実施形態のパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、電動機2の長時間駆動に適した高容量バッテリ17を用いることにより、モータ走行のみで宅配可能な走行距離(上記宅配完了距離Daに相当)を十分に確保した上で、この高容量バッテリ17のSOCに基づき、高容量バッテリ17によるモータ走行で目的地での宅配を完了可能なときには(ステップS8がYes)、可能な限りEVモードによるモータ走行を継続しながら(ステップS12)、高容量バッテリ17のSOCが不足する場合には適宜HEV充電モードを実行している(ステップS16)。このため、車両が宅配地域に侵入した時点で最低必要量判定値SOC0以上の高容量バッテリ17のSOCを確保でき、静粛性が要求される宅配地域で確実にモータ走行を継続して騒音による周囲への迷惑を未然に防止することができる。
【0036】
また、高容量バッテリ17のSOCに基づき、高容量バッテリ17によるモータ走行で目的地での宅配を完了不能なときには(ステップS8がNo)、高容量バッテリ17のSOCが最低必要量判定値SOC0以上であればHEVモードによりその時点のSOCを維持し(ステップS20)、SOCが最低必要量判定値SOC0未満であればHEV充電モードにより高容量バッテリ17を充電している(ステップS24)。よって、この場合も上記と同様に、車両が宅配地域に侵入した時点で最低必要量判定値SOC0以上の高容量バッテリ17のSOCを確保でき、宅配地域でモータ走行を継続して騒音による周囲への迷惑を未然に防止することができる。
ところで、本実施形態では、ハイブリッド電気自動車の利点の一つである静粛性を有効利用すべく、宅配地域が静音区域で且つ静音時間帯であるときにEVモードによりモータ走行を行ったが、バイブリッド電気自動車は静粛性以外にも有害成分を排出しないというゼロエミッション性という利点も有する。そこで、当該ゼロエミッション性に関する利点を有効利用するための別例について、以下に説明する。
ゼロエミッション性が要求される地域としては、例えば多数の人々が集まるオフィス街や商店街などを挙げることができる。そこで、本別例では、宅配先である目的地としてオフィス街が入力され、車両ECU11が走行モード切換ルーチンとして図3,4に代えて図3,5の処理を実行するものとして説明する。なお、車両ECU11の他の処理は実施形態と相違ない。
実施形態で述べたように、最適ルートを辿って車両が宅配地域に侵入すると、車両ECU11はステップS42で宅配地域がゼロエミッション区域であるか否かを判定する(第3の判定手段)。ゼロエミッション区域とはゼロエミッション性が要求される地域であり、予めナビゲーション装置の地図データ上には、各宅配地域がゼロエミッション区域と非ゼロエミッション区域とに区分して登録されており、上記オフィス街や商店街はゼロエミッション区域に相当する。
【0037】
ゼロエミッション区域であるとしてステップS42でYesの判定を下したときにはステップS44に移行し、ゼロエミッション時間帯であるか否かを判定する(第3の判定手段)。宅配地域がオフィス街であったとしても、朝夕の通勤時以外では必ずしもゼロエミッション性は要求されず、朝夕の通勤時には強くゼロエミッション性が要求される。ナビゲーション装置24の地図データ上に登録された各ゼロエミッション区域には併せてゼロエミッション時間帯と非ゼロエミッション時間帯とが区分して登録されており、現在時刻がゼロエミッション時間帯に該当するときにはステップS44でYesの判定を下し、ステップS30でEVモードを選択する。
また、非ゼロエミッション区域であるとしてステップS42でNoの判定を下したとき、或いは非ゼロエミッション時間帯であるとしてステップS44でNoの判定を下したときには、ステップS32でHEVモードを選択する。この場合には、HEVモードによる走行で多少の排ガスを排出しても弊害が発生しない。そして、HEVモードの実行により、宅配地域への進入の時点で確保されている高容量バッテリ17のSOCを温存でき、その後の宅配でのモータ走行に有効利用することができる。
なお、この別例に限ることはなく、例えば、静粛性に関するステップS26,28の要件、及びゼロエミッション性に関するステップS42,44の要件を共に判定するようにしてもよい。
【0038】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は宅配便などに使用する配送トラックとし、且つプラグイン型のハイブリッド電気自動車として具体化したが、これらに限ることはなく、例えば乗用車に具体化してもよいし、プラグイン型でない通常のハイブリッド電気自動車として具体化してもよい。
また、上記実施形態では、目的地を中心とした所定の宅配地域で静粛性を確保すべく、図3のステップS4で、現在地から目的地までの走行距離に対して宅配後に宅配地域から離脱するための走行距離を加算した値として宅配完了距離Daを算出したが、これに限ることはない。例えば現在地から目的地までの走行距離として宅配完了距離Daを算出してもよい。また、図3のステップS10,18では、宅配地域への進入から離脱までに必要なSOCとして設定された最低必要量判定値SOC0に基づき判定を行ったが、最低必要量判定値SOC0はこれに限ることはなく任意に変更可能である。これらの場合でも、車両が目的地に到達した時点で高容量バッテリ17には所定のSOCが確保されているため、目的地付近でモータ走行を行って騒音を防止することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、ステップS14,22で車両の宅配地域への侵入を判定し、ステップS26,28で静粛性が要求されるか否かを判定し、それに応じてEVモードとHEVモードとを切り換えたが、これらの処理は必ずしも車両ECU11に実行させる必要はない。運転者はナビゲーション装置24のディスプレイ25上で宅配地域への進入を判断できると共に、過去の経験などから静粛性を要する地域及び時間帯であるかを判断できるため、運転者が手動操作で走行モードを切り換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 エンジン
2 電動機
8 駆動輪
11 車両ECU (エンジン・電動機制御手段、第1の判定手段、
第2の判定手段、第3の判定手段、SOC管理手段)
12 エンジンECU(エンジン・電動機制御手段)
13 モータECU(エンジン・電動機制御手段)
16 高出力バッテリ
17 高容量バッテリ
25 ディスプレイ(目的地設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力密度が高い特性の高出力バッテリと、
エネルギ密度が高い特性の高容量バッテリと、
上記高出力バッテリおよび高容量バッテリの残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段と、
車両の駆動輪に駆動力を伝達可能なエンジンと、
上記高容量バッテリまたは上記高出力バッテリから供給される電力によって発生する駆動力を上記駆動輪に伝達可能であると共に、上記車両の減速時に上記駆動輪からの逆駆動により回生発電して上記高出力バッテリまたは高容量バッテリを充電可能な電動機と、
上記エンジン及び電動機を駆動制御し、上記高容量バッテリから供給される電力によって発生する電動機の駆動力により車両を走行させるEVモードと、少なくとも上記高出力バッテリから供給される電力によって発生する電動機の駆動力及びエンジンの駆動力を併用して車両を走行させるHEVモードと、少なくとも上記高出力バッテリから供給される電力によって発生する電動機の駆動力及びエンジンの駆動力を併用して車両を走行させると共に上記車両の減速時に上記電動機により回生発電される電力を上記高容量バッテリに充電させるHEV充電モードの何れかを選択的に実行可能なエンジン・電動機制御手段と、
上記車両の目的地を設定するための目的地設定手段と、
上記バッテリ残存容量検出手段によって検出した上記高容量バッテリの残存容量に基づき、上記目的地設定手段により設定された目的地に上記車両が上記EVモードによる走行によって到達可能であるか否かを判定する第1の判定手段と、
上記第1の判定手段により上記車両が目的地に到達可能であると判定されたときは上記エンジン・電動機制御手段に上記EVモードを実行させる一方、上記第1の判定手段により上記車両が目的地に到達不能であると判定されたときには上記エンジン・電動機制御手段に上記HEVモードを実行させ、上記EVモードによる走行中に上記高容量バッテリの残存容量が第1の所定未満になったときは上記エンジン・電動機制御手段に上記HEV充電モードを実行させるSOC管理手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
上記SOC管理手段は、上記第1の判定手段により上記車両が目的地に到達不能であると判定されたときに上記エンジン・電動機制御手段にHEVモードを実行させると共に、このとき上記高容量バッテリの残存容量が第2の所定値未満であると、上記エンジン・電動機制御手段に上記HEV充電モードを実行させることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
上記第1の判定手段は、上記車両が上記目的地に到達して宅配を完了した後に該目的地を中心とした所定の宅配地域を離脱できるか否かを判定することを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
上記SOC管理手段は、上記車両が宅配地域に進入してから離脱するまでの走行に必要な残存容量として設定された上記第1の所定値または上記第2の所定値に基づき判定を行うことを特徴とする請求項3記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項5】
上記目的地で静粛性が要求されるか否かを判定する第2の判定手段を備え、
上記エンジン・電動機制御手段は、上記第2の判定手段により静粛性が要求されると判定されたときに上記目的地でEVモードを実行し、上記第2の判定手段により静粛性が要求されないと判定されたときに上記目的地でHEVモードを実行することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項6】
上記目的地でゼロエミッション性が要求されるか否かを判定する第3の判定手段を備え、
上記エンジン・電動機制御手段は、上記第3の判定手段によりゼロエミッション性が要求されると判定されたときに上記目的地でEVモードを実行し、上記第3の判定手段によりゼロエミッション性が要求されないと判定されたときに上記目的地でHEVモードを実行することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111369(P2012−111369A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262396(P2010−262396)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】