説明

パターン化された接地平面を有するインダクタ

パターン化された接地平面を有するインダクタが、説明される。一設計においては、インダクタは、第1の層上に形成された導体と、その導体の下の第2の層上に形成されたパターン化された接地平面と、を含む。パターン化された接地平面は、オープンな中心エリアと、導体の形状に整合した形状と、を有する。パターン化された接地平面は、複数のシールド、例えば、八角形の形状の導体の8つの辺についての8つのシールド、を含んでいる。各シールドは、導体に垂直に形成された複数のスロットを有する。パターン化された接地平面を別個のシールドへと分割することと、各シールド上にスロットを形成することとは、パターン化された接地平面上の渦電流の流れを防止するのに役立ち、これは、インダクタのQを改善することができる。複数の相互接続は、複数のシールドを回路接地へと結合し、この回路接地は、導体の中心に位置することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
[I.分野]
本開示は、一般にエレクトロニクスに関し、そしてより詳細には集積回路(IC)またはプリント回路基板(PCB)のためのインダクタに関する。
【0002】
[II.背景]
ICプロセス技術における現代の進歩と共に、ワイヤレス通信、ネットワーキング(networking)、コンピューティング(computing)など、様々なアプリケーションのための無線周波数IC(radio frequency ICs)(RFIC)を製造することが可能である。これらのRFICは、かさばるディスクリート回路コンポーネントを用いて以前にはインプリメントされたアナログ回路ブロック、を含むことができる。RFIC上にアナログ回路ブロックをインプリメントすることによって、より小さなサイズ、より低いコスト、改善された信頼性など、ある種の利点が、実現されることができる。
【0003】
多数のアナログ回路ブロックは、望ましい機能を実行し、かつ/または望ましい性能を達成するためにインダクタを利用する。例えば、フィルタ、共振器タンク回路、およびインピーダンス整合回路網は、望ましい回路応答を得るために、インダクタを含むことができる。電圧制御発振器(voltage controlled oscillator)(VCO)のための共振器タンク回路など、いくつかのアプリケーションでは、高い品質因子(quality factor)(Q)を有するインダクタは、VCOについての良い性能を得るために望ましい。しかしながら、以下で説明されるように様々なタイプの損失に起因して高いQを得ることは、難しい可能性がある。これは、多数のワイヤレス通信システムによって使用される高周波数では、特に真実である可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
パターン化された接地平面を有し、そして高周波数においてより高いQと、良い性能とを有するインダクタが、ここにおいて説明される。パターン化された接地平面は、エッチアウトされた部分のパターンを有する接地平面であり、これは、どのようなエッチアウトされた部分もない中実な(solid)接地平面と対照的である。
【0005】
一設計においては、インダクタは、第1の層上に形成された導体と、その導体の下の第2の層上に形成されたパターン化された接地平面と、を含む。パターン化された接地平面は、オープンな中央エリアと、導体の形状に整合した形状とを有することができる。パターン化された接地平面は、複数のシールドを含むことができる。一設計においては、導体は、8つの辺を有する八角形の形状を有し、そしてパターン化された接地平面は、導体の8つの辺について8つのシールドを有する。各シールドは、導体に垂直な複数のスロットを有する。パターン化された接地平面を別個のシールドに分割することと、各シールド上にスロットを形成することとは、パターン化された接地平面上の渦電流の流れを防止するのに役立ち、これは、インダクタのQを改善することができる。複数の相互接続は、複数のシールドを回路接地に結合し、この回路接地は、パターン化された接地平面の中心に位置づけられることができる。
【0006】
パターン化された接地平面を有するインダクタは、VCO、低雑音増幅器(low noise amplifier)(LNA)など、様々な回路ブロックのために使用されることができる。本開示の様々な態様と特徴とは、以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、VCOの概略図を示している。
【図2】図2は、どのようなシールドもないインダクタの平面図を示している。
【図3】図3は、パターン化された接地平面を有するインダクタの平面図を示している。
【図4】図4は、パターン化された接地平面の一部分のより詳細な平面図を示している。
【図5】図5は、パターン化された接地平面を有するインダクタの側面図を示している。
【図6】図6は、パターン化された接地平面を有するインダクタQにおける改善を示している。
【図7】図7は、分離のための、ガードリングと、パターン化された接地平面との使用を示している。
【図8】図8は、異なる分離メカニズムを有する分離のプロットを示している。
【図9】図9は、パターン化された接地平面を有するインダクタを形成するためのプロセスを示している。
【図10】図10は、ワイヤレスデバイスのブロック図を示している。
【詳細な説明】
【0008】
図1は、VCO100の一設計の概略図を示している。この設計においては、VCO100は、増幅器(AMP)110と共振器タンク回路(resonator tank circuit)120とを含み、この共振器タンク回路は、インダクタ130と可変キャパシタ(バラクタ)140とから成る。増幅器110は、発振のために必要とされる信号利得を提供する。増幅器110と共振器タンク回路120とは、まとめて、発振のために必要とされる360°の位相シフトを提供する。VCO100は、foscの周波数を有する発振器信号(OSC)を供給する。発振周波数foscは、インダクタ130のインダクタンスと、バラクタ140のキャパシタンスとによってほとんど決定される。インダクタ130を含めて、VCO100のコンポーネントのすべては、より小さなサイズ、より低いコスト、改善された信頼性など、様々な利点を得るためにRFIC上で製造されることができる。
【0009】
図2は、RFIC上にインプリメントされることができるオンチップインダクタ200の平面図を示している。インダクタ200は、図1の中のインダクタ130のために使用されることができる。インダクタ200は、八角形の形状を有する1巻きの導体210を含んでいる。一般に、インダクタは、任意の数の巻き数と、任意の形状と、例えば、正方形、長方形、六角形、八角形、円形などとを有することができる。八角形の形状は、良好なQと、インプリメンテーションの容易さとを提供することができる。
【0010】
導体210の幅と、巻き(turn)の数と、巻きの間の間隔とは、インダクタ200についての望ましいインダクタンスやQなど、様々な因子に基づいて選択されることができる。導体210は、(i)金属層上の低損失金属(low-loss metal)(例えば、銅)、(ii)金属層の下の層上の損失の多い金属(例えば、アルミニウム)、または(iii)何らかの他の材料など、様々なタイプの導電性材料を用いて製造されることができる。導体210が、低損失金属を用いて製造される場合に、より高いQが、インダクタ200について達成されることができる。より小さなサイズのインダクタ200は、異なるIC設計ルールが適用できるので、損失の多い金属層上に製造されることができる。
【0011】
オンチップインダクタ200は、シリコン基板損失に起因してより低いQを有する可能性があり、このシリコン基板損失は、シリコンの抵抗に起因する可能性がある。シリコン基板損失は、磁気損失と電気損失とを含む可能性がある。磁気損失は、シリコン上で誘導される渦電流に起因する可能性がある。電気損失は、シリコンの抵抗に起因する可能性がある。シリコン基板損失は、高周波数においてより悪くなる可能性があり、そして4から12ギガヘルツ(GHz)の範囲で動作するVCOではQを制限する主要な原因(contributor)である可能性がある。
【0012】
オンチップインダクタ200はまた、比較的大きなサイズを有する可能性もあり、そして基板雑音に対してより脆弱な可能性がある。基板上の雑音は、導体210に結合し、そして導体の中の信号の品質を悪化させる可能性がある。ガードリングが、基板結合を低減させるために導体210の周囲に形成されることができる。しかしながら、ガードリングは、十分な基板分離を提供することができない可能性がある。
【0013】
シリコン基板損失を軽減し、そして基板分離を改善するために、中実の接地平面が、導体210の下に形成されることができる。この中実の接地平面は、導体210からの電界を基板の代わりに接地平面に終端させることにより、電気損失を改善することができる。中実の接地平面はまた、基板分離を改善し、そして基板雑音結合を低減させることもできる。しかしながら、中実の接地平面が、低損失金属を用いて形成される場合、そのときには導体210からの磁界は、ブロックされることができ、これは、磁気損失を増大させ、そしてインダクタ200の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。逆に、中実の接地平面が、ポリシリコンなど、損失の多い材料を用いて形成される場合、そのときには磁界は、もっと簡単に中実の接地平面を通過することができ、これは、磁気損失を低減させることができる。しかしながら、損失の多い接地平面は、電界が基板に終端することを阻止することに有効ではない可能性がある。
【0014】
図3は、パターン化された接地平面(ground plane)320を有するインダクタ300の一設計の平面図を示している。インダクタ300は、図1の中のインダクタ130のために使用されることができる。この設計においては、インダクタ300は、八角形の形状を有し、そして図3の中で太い破線によって示される、1巻きの導体310を含んでいる。八角形の形状のサイズと、導体310の幅とは、インダクタ300についての望ましいインダクタンスとQとを得るために選択されることができる。
【0015】
パターン化された接地平面320は、以下の機能:
・ 導体310からの電界を終端する、そして
・ 磁界が、パターン化された接地平面320を通過することを可能にする、
を達成するように設計されることができる。パターン化された接地平面320は、上記機能を達成する様々な特徴を含んでいる。
【0016】
図3に示される設計においては、パターン化された接地平面320は、実質的に導体310の下に形成され、そしてそれ故に電界が、基板に進むことからシールドすることができる。これは、そのときには、電界損失を低減させ、そして基板雑音の分離を提供することもできる。パターン化された接地平面320は、導体のエッジにあるフリンジ電界を捕捉する(capture)ために、導体310よりもわずかに大きい形状を有することができる。パターン化された接地平面320は、導体310の中心エリアをカバーしてはいない。これは、磁界が、自由に中心エリアを通過することを可能にすることができ、そしてそれ故に磁気損失を低減させることができる。インダクタ300についての磁界は、どのような接地平面もない図2の中のインダクタ200についての磁界に類似したものとすることができ、そして良い磁界分布が、パターン化された接地平面320を用いてさえ、保持されることができる。その結果として、インダクタ300のインダクタンスと直列抵抗とは、パターン化された接地平面320の存在と共にさえ、ほとんど変化しない可能性がある。接地平面が、電界を終端させるために中心エリアにおいて必要とされず、この電界は、実質的に、導体310から下方に下のパターン化された接地平面へと伝わる。
【0017】
導体310上を流れる電流からの磁界は、パターン化された接地平面320上で渦電流を引き起こす可能性がある。パターン化された接地平面320上の渦電流は、インダクタンスを低減させ、そしてインダクタ300のQを低下させる可能性がある。したがって、パターン化された接地平面320上の渦電流の流れを防止し、または低減させることが望ましい。
【0018】
図3に示される設計においては、パターン化された接地平面320は、導体310の8つの辺についての8つの別個のシールド330aないし330hへと分割される。8つのシールド330aないし330hは、パターン化された接地平面320の8つの隅の近くに位置する8つの切れ目(cut)によって互いに電気的に分離される。別個のシールド330aないし330hへとパターン化された接地平面320を分割することは、そのパターン化された接地平面を通しての渦電流の流れを防止するのに役立つ。
【0019】
8つのシールド330aないし330hは、それぞれ8つの相互接続332aないし332hを経由して、パターン化された接地平面320の中心に位置する中央接地ポイント340へと結合される。相互接続332aないし332hは、シールド330aないし330hと同じ層上に、そして同じ材料を用いて形成されることができる。
【0020】
一設計においては、パターン化された接地平面320は、導体310の下の金属層の中の低損失金属を用いて形成される。低損失金属は、ポリシリコンと比べて、より高い導電性と、より低いシート抵抗とを有することができる。低損失のパターン化された接地平面は、導体310からの電界を終端させることにもっと有効とすることができ、これは、そのときに、インダクタ300についてのQと基板分離とを改善することができる。しかしながら、低損失金属は、磁界が通過することをより難しくする可能性がある。
【0021】
図3に示される設計において、スロット350が、パターン化された接地平面320に沿って切り取られ、そしていくつかの機能を実行する。第1に、スロット350は、磁界が、通過することを可能にし、これは、磁気損失を低減させることができる。第2に、スロット350は、各シールド330内の渦電流の流れをカットするのに役立ち、これは、Qを改善することができる。スロットが存在しない場合、そのときには導体320上の電流からの磁界は、導体320上の電流と逆方向に、パターン化された接地平面320上で渦電流を誘導することになる。スロット350は、パターン化された接地平面320内の渦電流の通常の流れと、垂直であり、そしてそれ故に渦電流の流れをカットすることができる。スロット350のサイズと間隔とは、(i)磁界が通過することを可能にするように、そして(ii)パターン化された接地平面320上で電界の大部分を終端させるように、選択されることができる。一設計においては、スロット350は、0.1マイクロメートル(μm)ほども狭くすることができるが、他のサイズもまた使用されることができる。
【0022】
図3に示される設計においては、スロット350は、パターン化された接地平面320の外側エッジ(outer edges)から内側エッジ(inner edges)に向かってカットされるが、内側エッジの寸前で停止する。スロット350はまた、導体のすべての8辺に沿って導体310と垂直(またはそれに関して90度の角度)でもある。スロット350の垂直な方向は、渦電流の流れをカットするのに役立つ。相互接続332aないし332hは、パターン化された接地平面320のそれぞれシールド330aないし330hの内側エッジに結合される。コンピュータシミュレーションは、このようにしてカットされたスロットと、シールド330の内側エッジに対する相互接続332の接続とが、良い性能を提供することができることを示す。
【0023】
図3に示される設計においては、パターン化された接地平面320は、左側と右側との間で対称であり、そして上半分と下半分との間でも対称である。この対称性は、相互接続332aないし332h内の渦電流の相殺を可能にすることができる。
【0024】
図4は、より詳細に、パターン化された接地平面320の一部分の平面図を示している。パターン化された接地平面320のシールド330bと330cとは、渦電流を回避するように切れ目334によって電気的に分離される。スロット350は、各シールド330上に形成され、そしてシールド上の導体310と垂直である。スロット350は、渦電流の流れを防止するために、隅においてさえも存在することができる。各シールド330についてのスロット350は、シールドの外側エッジ上のスロット開口部と、内側エッジ上の共通接続部とを有するくし状のパターンを形成する。各シールド330は、それぞれの相互接続332を経由して中央接地ポイントに結合される。
【0025】
図5は、インダクタ300の一部分の側面図を示している。導体310は、RFICの1つの層上に形成されることができる。パターン化された接地平面320のためのシールド330と、相互接続332とは、RFICの第2の層上に形成されることができる。第2の層は、基板360上のRFICの任意の層とすることができる。電界(E−フィールド)は、導体310からシールド330へと走っていることができる。電界のほとんどは、シールド330によって終端されることができる。シールド330はまた、基板分離を提供し、そして導体310への結合からの基板上での雑音を防止する。磁界(H−フィールド)は、オープンな中心エリアのためにパターン化された接地平面320の中心を自由に通過することができる可能性がある。磁界は、スロット350(図5には図示されず)を経由してシールド330のある種の部分を通過することもできる。スロット350は、導体310と垂直であり、そして磁界と平行である。
【0026】
明確にするために、パターン化された接地平面の様々な詳細は、八角形の形状を有する1巻きのインダクタについて上記で説明されてきている。一般に、インダクタのための導体は、任意の形状と、任意の巻き数とを有することができる。導体のためのパターン化された接地平面は、導体の形状に整合する形状を有することができる。パターン化された接地平面は、パターン化された接地平面を通しての渦電流の流れをカットするために、任意の数の別個のシールドへと分割されることができる。パターン化された接地平面は、図3に示されるように、導体の各辺について1つのシールドが存在するように分割されることができる。パターン化された接地平面は、より多くの、またはより少ない数のシールドへと分割されることもできる。シールドは、図3に示されるように、共通接地ポイントへと相互接続を経由して結合されることができる。代わりに、シールドは、他の方法で回路接地へと結合されることもでき、例えば、各シールドは、回路接地へと直接に結合されることもできる。各シールドは、任意の数のスロットを有することができ、これらのスロットは、任意の適切なサイズと間隔とを有することができる。スロットは、導体に垂直にすることができ、そして渦電流の流れをカットするために、図3に示されるように、くし状パターンに形成されることができる。スロットはまた、他のパターンを有することもできる。
【0027】
パターン化された接地平面は、電界についての良い終端を提供するために、そして基板分離を改善するために、低損失金属を用いて形成されることができる。パターン化された接地平面は、他の考察のために、損失の多い材料を用いて形成されることもできる。
【0028】
図6は、ここにおいて説明されるパターン化された接地平面を用いて達成されるインダクタQにおける改善を示している。プロット610は、図2におけるインダクタ200のQを示しており、このインダクタは、パターン化された接地平面を有していない。インダクタ200は、約6GHzの周波数で約28の最大のQを有する。プロット620は、図3におけるインダクタ300のQを示しており、このインダクタは、パターン化された接地平面320を有する。インダクタ300は、約8GHzの周波数で約38の最大のQを有する。図6に示されるように、インダクタ300のQは、4から12GHzの周波数範囲上でインダクタ200のQよりも著しく良く、これらの周波数範囲は、多数の通信システムについてのVCO動作周波数をカバーする。
【0029】
インダクタは、そのインダクタに対して干渉を生成する可能性のある回路に近接して製造される可能性がある。干渉は、基板を経由して、かつ/または他のメカニズムを通してインダクタに結合する可能性がある。回路からの干渉の量を低減させることが、望ましい可能性がある。
【0030】
図7は、近隣の干渉の分離を達成するためのいくつかのメカニズムを示している。インダクタ700は、回路714の近くに形成される可能性があり、この回路は、干渉を生成する可能性がある。インダクタ700は、図3ないし5の場合に上記で説明されるようにインプリメントされるパターン化された接地平面を有することができる。パターン化された接地平面は、基板を経由して結合される干渉の分離を提供することができる。さらに、分離を改善するために、ガードリング712が、インダクタ700の周囲に形成されることができ、そして回路接地に結合されることができる。ガードリング712は、シリコン基板を通して結合される干渉の分離を提供することができる。ガードリング712とインダクタ700との間の距離D2と、ガードリング712と回路714との間の距離D1とは、分離の望ましい量に基づいて選択されることができる。
【0031】
図8は、異なる分離メカニズムを有する、図7におけるインダクタ700と回路714との間の分離のプロットを示している。プロット810は、ガードリング712だけを有するが、パターン化された接地平面は有さない、インダクタ700と回路714との間の分離を示している。プロット812は、パターン化された接地平面だけを有するが、ガードリングを有さないインダクタ700と回路714との間の分離を示している。プロット810と812とは、パターン化された接地平面が、ガードリングよりも良い分離を提供することができることを示している。これは、パターン化された接地平面が、インダクタ700に対してずっと近く(例えば、数μm)にある可能性があり、そしてインダクタが、シリコン基板を見る方向をブロックすることができるのに対して、ガードリングは、インダクタからさらにずっと(例えば、数十μm)離れている可能性があり、そして基板上に既に結合されている雑音の一部分を収集することだけしかできないことに起因する可能性がある。
【0032】
プロット814は、パターン化された接地平面とガードリング712との両方を有する、インダクタ700と回路714との間の分離を示している。プロット810、812および814は、パターン化された接地平面とガードリングとの組合せが、いずれか単独よりもより多くの分離を提供することができることを示している。ガードリングは、それ故に、より多くの分離が、例えば、VCOなど、影響を受けやすい回路のために望ましいときに、インダクタのために使用されることができる。
【0033】
ここにおいて説明されるパターン化された接地平面は、上記で説明されるように、シングルエンドのインダクタのために、そしてまた差動インダクタのためにも使用されることができる。パターン化された接地平面は、変圧器、差動からシングルエンドへの変換のために使用されるバラン(balun)などのために使用されることもできる。例えば、変圧器、またはバランは、1からNへと順に番号付けされることができるN個の巻き数を有することができる。奇数番号付けされた巻き(turns)(例えば巻き1および3)は、一次導体のために使用されることができ、そして偶数番号付けされた巻き(例えば巻き2および4)は、二次導体のために使用されることができる。
【0034】
図9は、パターン化された接地平面を有する回路コンポーネントを形成するためのプロセス900の一設計を示している。導体(例えば、インダクタ、変圧器、またはバランのための)は、ICまたはプリント回路基板の第1の層上に形成されることができる(ブロック912)。導体は、任意の形状と、任意の数の巻きとを有することができる。パターン化された接地平面は、例えば、低損失金属を用いて、導体の下の第2の層上に形成されることができる(ブロック914)。パターン化された接地平面は、オープンな中心エリアと、導体の形状に整合した形状とを有することができる。パターン化された接地平面は、複数のシールドを備えることができる。一設計においては、導体は、8つの辺を有する八角形の形状を有し、そしてパターン化された接地平面は、導体の8つの辺についての8つのシールドを有する。パターン化された接地平面は、導体の中心に関して対称とすることができる。
【0035】
各シールドは、シールド上に形成された複数のスロットを有することができる。スロットは、導体に垂直とすることができ、そして導体に沿って、導体の隅にも同様に形成されることができる。各シールドについてのスロットは、シールドの外側エッジから、内側エッジに向かって走っていることができ、そして内側エッジに先立って停止することができる。
【0036】
複数の相互接続は、複数のシールドを回路接地に結合するために形成されることができ、この回路接地は、パターン化された接地平面の中心に位置することができる(ブロック916)。各相互接続は、それぞれのシールドの内側エッジと回路接地との間に結合されることができる。より多くの分離が望ましい場合、ガードリングが、導体の周囲に形成されることもできる(ブロック918)。
【0037】
ここにおいて説明されるパターン化された接地平面を有するインダクタは、通信、ネットワーキング、コンピューティングなど、様々なシステムおよびアプリケーションのために使用されることができる。ワイヤレス通信デバイスにおける、パターン化された接地平面を有するインダクタの使用は、以下で説明される。
【0038】
図10は、ワイヤレス通信のために使用されることができるワイヤレスデバイス1000のブロック図を示している。ワイヤレスデバイス1000は、セルラ電話、携帯型個人情報端末(personal digital assistant)(PDA)、端末、ハンドセット、ワイヤレスモデム、ラップトップコンピュータなどとすることができる。ワイヤレスデバイス1000は、送信経路と受信経路とを経由して双方向通信を提供することができる。
【0039】
送信経路上で、デジタルプロセッサ1010は、送信されるべきデータを処理し、そしてチップのストリームをトランシーバユニット1020へと供給することができる。トランシーバユニット1020内において、1つまたは複数のデジタルアナログ変換器(digital-to-analog converters)(DAC)1022は、チップのストリームを1つまたは複数のアナログ信号へと変換することができる。アナログ信号(単数または複数)は、フィルタ1024によってフィルタがかけられ、可変利得増幅器(variable gain amplifier)(VGA)1026によって増幅され、そしてアップコンバートされた信号を生成するようにミキサ1028によってベースバンドからRFへと周波数アップコンバートされることができる。周波数アップコンバージョンは、VCO1030からの送信局部発振器(local oscillator)(LO)信号に基づいて実行されることができる。アップコンバートされた信号は、フィルタ1032によってフィルタがかけられ、電力増幅器(power amplifier)(PA)1034によって増幅され、デュプレクサ(duplexer)(D)1036を通して経路指定され、そしてアンテナ1040を経由して送信されることができる。
【0040】
受信経路上で、RF信号は、アンテナ1040によって受信され、デュプレクサ1036を通して経路指定され、LNA1044によって増幅され、フィルタ1046によってフィルタがかけられ、そしてVCO1050からの受信LO信号を用いて、ミキサ1048によってRFからベースバンドへと周波数ダウンコンバートされることができる。ミキサ1048からのダウンコンバートされた信号は、バッファ(BUF)1052によってバッファされ、フィルタ1054によってフィルタがかけられ、サンプルの1つまたは複数のストリームを得るために1つまたは複数のアナログデジタル変換器(analog-to-digital converters)(ADC)1056によってデジタル化されることができる。サンプルストリーム(単数または複数)は、処理するためにデジタルプロセッサ1010に供給されることができる。
【0041】
図10は、特定のトランシーバ設計を示している。一般に、各経路についての信号調整は、増幅器と、フィルタと、ミキサとの1つまたは複数のステージを用いて実行されることができる。図10は、送信経路と受信経路との上での信号調整のために使用されることができるいくつかの回路ブロックを示している。
【0042】
図10に示される設計においては、トランシーバユニット1020は、それぞれ送信経路および受信経路についての2つのVCO1030および1050を含む。デジタルプロセッサ1010は、プロセッサ1010内の様々なユニットのためのクロックを生成することができる高速VCO1012を含んでいる。VCO1012、1030、および1050は、図1に示される設計など、様々なVCO設計を用いてインプリメントされることができる。各VCOは、特定の周波数、または周波数の範囲において動作するように設計されることができる。例えば、VCO1030および1050は、1つまたは複数の以下の周波数帯域−1850から1990MHzのパーソナルコミュニケーションシステム(Personal Communication System)(PCS)帯域、824から894MHzのセルラ帯域、1710から1880MHzのデジタルセルラシステム(Digital Cellular System)(DCS)帯域、890から960MHzのGSM(登録商標)900帯域、1920から2170MHzの国際移動電気通信−2000(IMT−2000)帯域、および1574.4から1576.4MHzの全地球測位システム(Global Positioning System)(GPS)帯域の整数倍(例えば、1倍、2倍、または4倍)で動作するように設計されることができる。位相ロックループ(phase locked loop)(PLL)1060は、デジタルプロセッサ1010から制御情報を受信し、そしてそれぞれ適切な送信および受信のLO信号を生成するためにVCO1030および1050についての制御を提供することができる。
【0043】
パターン化された接地平面を有するインダクタ(これは、図10において「Ind」として示される)は、ワイヤレスデバイス1000内の様々な回路ブロックのために使用されることができる。例えば、パターン化された接地平面を有するインダクタは、VCO1012、1030および/または1050のための共振器タンク回路の中で使用されることができる。パターン化された接地平面を有するインダクタは、LNA1044についての負荷インダクタおよび/または変性インダクタ(degeneration inductor)として使用されることもできる。パターン化された接地平面を有するインダクタは、トランシーバユニット1020におけるフィルタのどれかのために使用されることもできる。パターン化された接地平面を有するインダクタは、ミキサ1028もしくは1048の前で、かつ/または後で、PA1034に先立つドライバ増幅器(図10に示されず)の後でなどで使用されることもできる。
【0044】
ここにおいて説明されるパターン化された接地平面を有するインダクタは、IC、アナログIC、RFIC、混合信号IC、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit)(ASIC)、プリント回路基板(PCB)、電子デバイスなどの上にインプリメントされることができる。パターン化された接地平面を有するインダクタは、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal oxide semiconductor)(CMOS)、N−チャネルMOS(NMOS)、P−チャネルMOS(PMOS)、バイポーラ接合トランジスタ(bipolar junction transistor)(BJT)、バイポーラ−CMOS(BiCMOS)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ガリウムヒ素(GaAs)など、様々なICプロセス技術を用いて製造されることもできる。
【0045】
ここにおいて説明されるパターン化された接地平面を有するインダクタをインプリメントする装置は、スタンドアロンデバイスであってもよいし、あるいはより大きなデバイスの一部分であってもよい。デバイスは、(i)スタンドアロンIC、(ii)データおよび/または命令を記憶するためのメモリICを含むことができる1組の1つまたは複数のIC、(iii)RFレシーバ(RFR)やRFトランスミッタ/レシーバ(RTR)などのRFIC、(iv)移動局モデム(MSM)などのASIC、(v)他のデバイス内に埋め込まれることができるモジュール、(vi)レシーバ、セルラ電話、ワイヤレスデバイス、ハンドセット、またはモバイルユニット、(vii)その他、であってもよい。
【0046】
本開示の以上の説明は、任意の当業者(any person skilled in the art)が、本開示を作り、または使用することを可能にするために提供される。本開示に対する様々な修正は、当業者にとって簡単に明らかになり、そしてここにおいて定義される包括的な原理は、本開示の範囲を逸脱することなく他の変形に対しても適用されることができる。したがって、本開示は、ここにおいて説明される例および設計だけに限定されるようには意図されず、ここにおいて開示される原理および新規特徴と整合した最も広い範囲が与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層上に形成された導体と;
前記導体の下の第2の層上に形成されたパターン化された接地平面と、なお前記パターン化された接地平面は、オープンな中心エリアを有し、そして複数のシールドを備え、各シールドは、複数のスロットを有する;
を備える装置。
【請求項2】
前記パターン化された接地平面は、前記導体の形状に整合した形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パターン化された接地平面は、低損失金属を用いて形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記パターン化された接地平面は、前記導体の中心に関して対称である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
各シールドについての前記複数のスロットは、前記導体に垂直である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
各シールドについての前記複数のスロットは、前記シールドの外側エッジから内側エッジに向かって走っており、そして前記内側エッジに先立って停止する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
スロットは、前記導体に沿って前記複数のシールド上で、そして前記導体の隅においてもまた、形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記パターン化された接地平面の中心に位置する回路接地に前記複数のシールドを結合する複数の相互接続、
をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項9】
各相互接続は、それぞれのシールドの内側エッジと、前記回路接地との間に結合される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記導体は、8つの辺を有する八角形の形状を有し、そして前記パターン化された接地平面は、前記導体の前記8つの辺についての8つのシールドを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記導体は、単一の巻きを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記導体の周囲に形成されたガードリング、
をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記導体と、前記パターン化された接地平面とは、インダクタのためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記導体と、前記パターン化された接地平面とは、変圧器またはバランのためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
第1の層上に形成された導体と;
前記導体の下の第2の層上に形成されたパターン化された接地平面と、なお前記パターン化された接地平面は、オープンな中心エリアを有し、そして複数のシールドを備え、各シールドは、複数のスロットを有する;
を備える集積回路。
【請求項16】
前記パターン化された接地平面は、前記導体の形状に整合した形状を有する、請求項15に記載の集積回路。
【請求項17】
各シールドについての前記複数のスロットは、前記導体に垂直である、請求項15に記載の集積回路。
【請求項18】
前記パターン化された接地平面の中心に位置する回路接地に前記複数のシールドを結合する複数の相互接続、
をさらに備える請求項15に記載の集積回路。
【請求項19】
第1の層上に導体を形成することと;
前記導体の下の第2の層上にパターン化された接地平面を形成することと、なお前記パターン化された接地平面は、オープンな中心エリアを有し、そして複数のシールドを備え、各シールドは、複数のスロットを有する;
を備える方法。
【請求項20】
前記の前記パターン化された接地平面を形成することは、前記導体の形状に整合した形状を有する前記パターン化された接地平面を形成すること、を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導体に垂直な、各シールドについての前記複数のスロットを形成すること、
をさらに備える請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記パターン化された接地平面の中心に位置する回路接地に前記複数のシールドを結合するための複数の相互接続を形成すること、
をさらに備える請求項19に記載の方法。
【請求項23】
第1の層上に導体を形成するための手段と;
前記導体の下の第2の層上にパターン化された接地平面を形成するための手段と、なお前記パターン化された接地平面は、オープンな中心エリアを有し、そして複数のシールドを備え、各シールドは、複数のスロットを有する;
を備える装置。
【請求項24】
前記パターン化された接地平面を形成するための前記手段は、前記導体の形状に整合した形状を有する前記パターン化された接地平面を形成するための手段、を備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記導体に垂直な、各シールドについての前記複数のスロットを形成するための手段、
をさらに備える請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記パターン化された接地平面の中心に位置する回路接地に前記複数のシールドを結合するための複数の相互接続を形成するための手段、
をさらに備える請求項23に記載の装置。
【請求項27】
第1の層上に形成された導体と、前記導体の下の第2の層上に形成されたパターン化された接地平面と、を備えるインダクタと、なお前記パターン化された接地平面は、オープンな中心エリアを有し、そして複数のシールドを備え、各シールドは、複数のスロットを有する;
前記インダクタに結合された増幅器と;
を備える装置。
【請求項28】
前記インダクタと、前記増幅器とは、発振器を形成し、そして前記インダクタは、前記発振器のための共振器タンク回路の一部分である、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記インダクタと、前記増幅器とは、低雑音増幅器(LNA)を形成し、そして前記インダクタは、前記LNAのための変性インダクタまたは負荷インダクタである、請求項27に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−518433(P2011−518433A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503225(P2011−503225)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/039525
【国際公開番号】WO2009/124280
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】