説明

パターン形成方法、平面ディスプレイ用部材の製造方法ならびにプラズマディスプレイ用部材およびフィールドエミッションディスプレイ用部材。

【課題】露光光の回折、表面−マスク間反射、表面散乱を抑制することで、高精細なパターン形成方法を提供する。
【解決手段】基材上に感光性有機成分を含むパターン形成層と、該パターン形成層上に位置するコート層の少なくとも2つ以上の層を設け、コート層側から露光を行った後に現像処理を行うパターン形成方法であって、該コート層が光褪色性材料を含み、かつ該コート層の屈折率N1とパターン形成層の屈折率N2が下式(1)を満たすことを特徴とするパターン形成方法。
|N2−N1|<0.1 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの形成方法、平面ディスプレイ用部材の製造方法ならびにプラズマディスプレイ用部材およびフィールドエミッションディスプレイ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイビジョン放送の高精細映像を完全表示させるために、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイのような平面ディスプレイの分野では画素の高精細化が強く求められている。画素の高精細化のために、例えばプラズマディスプレイでは画素を仕切る隔壁、液晶ディスプレイでは部材の一つであるカラーフィルターにおけるカラーパターン、フィールドエミッションディスプレイでは絶縁層に設けられるビアホールや電子放出素子といったパターンの高精細化等が必要となっている。高精細化したパターンの形成方法としては、フォトリソグラフィー法が適しているといわれているが、フォトリソグラフィー法を用いた場合であっても次の3つの原因がさらなる高精細化を困難なものにしていた。すなわち、露光時に(A)マスクの高精細化が進んだため、マスクの開口部を通過する露光光が回折して広がってしまうこと(露光光の回折)、(B)パターン形成材料層表面で反射した露光光がマスク表面で再反射してしまい、マスクの開口部よりも広い領域が露光されてしまうこと(表面−マスク間反射)、(C)パターン形成材料層とそれが接する大気との屈折率が異なるために表面の凹凸で露光光が散乱透過してしまうこと(表面散乱)によりパターンの解像度が低下してしまうことである。
【0003】
そのため、液晶ディスプレイの分野では、例えば液晶ディスプレイを構成するカラーフィルターの製造方法において、パターンの高精細化のため顔料を分散した感光性樹脂の上に光褪色性部材を含む樹脂を塗布することで顔料を分散した感光性樹脂のコントラストを増大させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、プラズマディスプレイの分野では、例えばプラズマディスプレイの隔壁の製造方法において、感光性ペーストからなる隔壁形成層の上に透明塗膜を設けて、表面散乱を抑制する隔壁の形成方法を提案している(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、特許文献1では(A)、(B)については改善されるが、顔料を分散した感光性樹脂の屈折率と光褪色性部材を含む樹脂の屈折率の差を小さくすることは記載されておらず、両者の屈折率差に起因する界面での透過散乱が起こるため(C)の表面散乱の低減効果については不十分である。
【0006】
また、特許文献2記載の発明は(A)、(B)の課題を解決するものではない。また、(C)については改善効果が期待できるが、隔壁形成層と透明塗膜の屈折率差がそれほど小さくないため、十分ではなかった。
【特許文献1】特許第3553105号公報(請求項1等)
【特許文献2】特開2004−303550号公報(請求項1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記課題に着目し、(A)露光光の回折、(B)表面−マスク間反射、(C)表面散乱を抑制することで、高精細なパターンを高精度に形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわち、本発明は基材上に感光性有機成分を含むパターン形成層と、該パターン形成層上に位置するコート層の少なくとも2つ以上の層を設け、コート層側から露光を行った後に現像処理を行うパターン形成方法であって、該コート層が光褪色性材料を含み、該コート層の屈折率N1と該パターン形成層の屈折率N2が下式(1)を満たすこと特徴とするパターン形成方法である。
|N2−N1|<0.1 (1)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精細なパターンを形成する場合であっても露光量マージンを広く、高精度にパターンを形成することができる。また、本発明のパターン形成方法を用いたディスプレイ部材により高精細ディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明者らは、パターンの高精細化を阻む主な要因である(A)露光光の回折、(B)表面−マスク間反射、(C)表面散乱を抑制し、高精細なパターンを形成する場合であっても露光マージンを広く、高精度なパターン形成が可能なパターン形成方法を鋭意検討した結果、基材上に感光性有機成分を含むパターン形成層と、該パターン形成層上に位置するコート層の少なくとも2層以上の層を設け、コート層側から露光を行った後に現像処理を行うパターン形成方法であって、該コート層を光褪色性材料を含む層とし、該コート層の屈折率N1と該下層のパターン形成材料層の屈折率N2が下式(1)を満たすことが重要であることを見出した。
|N2−N1|<0.1 (1)
本発明の基材としては、材質、形状を問わず用いることができる。特にディスプレイの表示面側の基材として用いる場合はガラス板、透明樹脂板等の透明基材が好ましく、現像後に焼成することによって隔壁を形成する場合は耐熱性の観点からガラス板を用いることが好ましい。
【0011】
本発明において、パターン形成層とは、基材上に設けられる層であって、感光性有機成分を含有し、パターン露光および現像をすることによってパターン加工を行うことが可能な層をいう。ここで、感光性有機成分としては、紫外線を照射した時に化学的な変化が生じることによって、紫外線照射前には現像液に可溶であったものが露光後は現像液に不溶になるネガ型感光性有機成分と、紫外線照射前には現像液に不溶であったものが露光後は現像液に可溶になるポジ型感光性有機成分のいずれかを選ぶことができるが、本発明は特にネガ型感光性有機成分を用いた場合に好適に使用することができる。ネガ型感光性有機成分を含むパターン形成層としては、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分と、低融点ガラスと、フィラーとして高融点ガラスを少なくとも各1種類ずつ含むものが好ましい。基材上にパターン形成層を形成する方法としては、上述のパターン形成層を構成する材料と、必要に応じて溶媒を含むパターン形成用ペーストを基材上に塗布し、乾燥する方法、フィルムなどの剥離部材上にパターン形成層を形成した後に基材上に転写する方法等を用いることができる。
【0012】
パターン形成層がアルカリ現像によりパターン形成される場合は、基質となるポリマーは、アルカリ現像液に可溶なカルボキシル基を有するコポリマーであり、樹脂酸価は50〜150mgKOH/gであることが好ましい。酸価が150を超えると現像許容幅が狭くなる。また、酸価が50未満では現像液に対する溶解性が低下する。カルボキシル基を有するポリマーは、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレートなどのモノマを選択し、アゾビスイソブチロニトリルのような開始剤を用いて共重合することにより得られるポリマーやジアミンと酸二無水物の反応によって得られるポリアミック酸などが挙げられる。
【0013】
また、パターン形成層が水現像によりパターン形成される場合は、基質となるポリマーは水溶性のポリエーテルやポリエステル、水溶性セルロース等が好ましく用いられる。また、ヒドロキシル基、グリセロール基、カルボキシル基等を側鎖にもつ水溶性アクリルポリマー等も好ましく用いることができる。
【0014】
本発明において、コート層とは、前記パターン形成層上に隣接して設けられ、かつ部材最表面に位置する層をいう。本発明のコート層は光褪色性材料を含むことが必要であり、さらに基質となるポリマーを含むことが好ましい。コート層を形成する方法としては、上述のコート層を構成する材料と溶媒を含むコート層用塗液をパターン形成層上に塗布し、乾燥する方法が好ましい。基質となるポリマーや溶媒は、光褪色性材料が十分溶解または分散し、露光光である紫外線を十分に透過すること、製膜性が良好であることといった条件を満たせば自由に選ぶことができる。さらに、現像液で除去できるポリマーを選択すれば、光褪色性材料を含むコート層が現像液で除去できるため、光褪色性材料を含むコート層の除去工程を省略できるため好ましい。そこで、前記パターン形成層がアルカリ現像によりパターン形成される場合は、基質となるポリマーは、アルカリ現像液に可溶なカルボキシル基を有するコポリマーであり、樹脂酸価が50〜200mgKOH/gであるものを用いることが好ましい。酸価が200を超えるとコート層用塗液が増粘しやすくなる。また、酸価が50未満では現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。ポリマーの酸価はJIS K0070(1992)に記載される中和滴定法を用いて測定することができる。
【0015】
カルボキシル基を有するポリマーは、パターン形成層で用いられる基質ポリマーを好ましく用いることができる。例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレートなどのモノマを選択し、アゾビスイソブチロニトリルのような開始剤を用いて共重合することにより得られるポリマーやジアミンと酸二無水物の反応によって得られるポリアミック酸などが挙げられる。
【0016】
また、水現像によりパターン形成される場合は、基質となるポリマーは水溶性のポリエーテルやポリエステル、水溶性セルロース等が好ましく用いられる。また、ヒドロキシル基、グリセロール基、カルボキシル基等を側鎖にもつ水溶性アクリルポリマー等も好ましく用いることができる。
【0017】
本発明でいう光褪色性材料とは、露光光を照射したときに、露光光を吸収し、光分解や光変性などの化学構造の変化を通し、露光光の波長領域での吸光度が照射前に比べて小さくなる材料をいう。光褪色性材料が最表面に位置するコート層に含まれていると、マスク開口部に位置する領域は露光光の照射エネルギーが強いため、紫外域の吸収がすぐに失われて露光光のコート層の透過率が大きくなる。一方、(A)露光光の回折や(B)表面−マスク間反射によりマスク開口部に位置する領域から外れた範囲に広がった露光光のエネルギーは光褪色性材料の紫外域の吸収を失わせるほど強くはないので、光褪色性材料でほぼ吸収されてしまい下層には到達しない。すなわち、コート層に光褪色性材料が含まれていることによって、(A)露光光の回折や(B)表面−マスク間反射によるパターンの太り、コントラストの低下が抑制される効果が得られる。いわば、パターン形成材料層と露光マスクの間にギャップを形成するプロキシミティ露光でありながらパターン形成材料と露光マスクを密着させるコンタクト露光と同様の効果が得られるわけで、コンタクト露光におけるマスクの汚染等の問題発生を回避しながら露光のコントラストを増加させることができる。
【0018】
光褪色性材料はg線、h線、i線付近の紫外域の吸収能を有し、露光光の照射によってg線、h線、i線付近の紫外域の吸収能が失われる材料であればなんでもよい。しかし、一般的に用いられる露光光線であるg線、h線およびi線のうち、h線およびi線は、パターン形成層に含まれる光重合開始剤などの感光性有機成分による吸収が大きく、被膜の表面で吸収されるので下層まで到達しにくい。そこで、露光部と非露光部のコントラストをより明確にするためには、露光部でのg線の透過率を、非露光部でのg線の透過率より高くすることが有効である。
【0019】
上記を達成するための光褪色性材料としては、例えば、光褪色性染料、光酸発生剤、光塩基発生剤、ニトロン化合物などの光分解性化合物や、アゾ系染料、フォトクロミック化合物などの光変性化合物が挙げられる。
【0020】
本発明においては、光褪色性材料として光酸発生剤を特に好ましく用いることができる。光酸発生剤は、酸の存在により現像液に溶解化する樹脂を用いてパターン形成を行うポジ型感光性ペースト法で多用されているものである。本発明において用いられる光酸発生剤としては、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾケトン化合物などを例として挙げることができる。
【0021】
オニウム塩の具体的な例としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスニウム塩、オキソニウム塩などを挙げることができ、好ましいオニウム塩としてはジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネートなどが挙げられる。
【0022】
ハロゲン含有化合物の具体的な例としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有へテロ環状化合物などが挙げることができ、好ましいハロゲン含有化合物としては、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0023】
ジアゾメタン化合物の具体的な例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロへキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル−ジアゾメタン、ビス(p−クロロフェニルスルホニル−ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタンなどを挙げることができる。
【0024】
スルホン化合物の例としては、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物などを挙げることができ、好ましいスルホン化合物としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタンなどが挙げられる。
【0025】
スルホン酸エステル化合物の例としては、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなどを挙げることができ、好ましいスルホン酸エステル化合物としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネートなどが挙げられる。
【0026】
スルホンイミド化合物の具体的な例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシルイミドなどを挙げることができる。
【0027】
ジアゾケトン化合物の具体的な例としては、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ベンゾキノンジアジド化合物、ナフトキノンジアジド化合物などが挙げられる。
【0028】
本発明において、製膜乾燥時の耐熱性と焼成時の低残渣性の観点から、光酸発生剤として特に好ましく用いられるのはナフトキノンジアジド化合物であり、具体的なナフトキノンジアジド化合物としては、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−カルボン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−カルボン酸、4−ニトロ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、5−ニトロ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、4−シアノ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、5−シアノ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸や1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸と、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンや1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとのエステル、ジアミノジフェニルエーテルなどとのアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−カルボン酸や1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−カルボン酸と、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンや1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとのエステル、ジアミノジフェニルエーテルなどとのアミドが挙げられる。また、フェナントレンキノンジアジド化合物も化学的安定性に優れており、9,10−フェナントレンキノン−10−ジアジドや、その誘導体などを挙げることができる。
【0029】
また、アゾ系染料やフォトクロミック化合物などの光変性型褪色性化合物を用いることも好ましい。アゾ系染料は紫外光の照射により、トランス体からシス体に異性化し、変色することが知られている。本発明に用いることのできるアゾ系染料は、アゾベンゼン誘導体が好ましく、特に好ましいアゾベンゼン誘導体は、(フェニルアゾ)フェノール、ヒドロキシアゾベンゼンカルボン酸、フェニルアゾアニリン、ジメチルアミノアゾベンゼン、ニトロアゾベンゼン、ニトロジメチルアミノアゾベンゼン、などが挙げられる。
【0030】
フォトクロミック化合物も同様に、紫外光の照射により、光変性を通して可逆的に着色あるいは褪色する化合物である。本発明においては、紫外光の照射により紫外光の吸光度が低下するものが好ましく、スピロピラン類、スピロオキサジン類、ジアリールエテン類、フルギド類、シクロファン類などが挙げられる。
【0031】
また、ニトロン化合物も光により褪色する化合物であり、光褪色性材料として好ましく使用できる。ニトロン化合物としては公知のものを使用することができ、例えば、フェニルニトロン誘導体、ナフチルニトロン誘導体をあげることができる。
【0032】
本発明に用いることのできる光褪色性材料は1種類を単独で使用しても良いし、2種以上の複数種を混合して用いても良い。光褪色性材料の配合比は、光褪色性材料の露光前の吸光度にもよるが、コート層用塗液に対して0.001〜3質量%の範囲で加えることが好ましい。0.001質量%より少ない場合は、光褪色性材料の効果が得られない場合がある。また、3質量%を超える場合はg線が下層部まで到達しにくく、パターン形成層の露光感度が低下する場合がある。光褪色性材料がコントラスト増強剤として適切に機能するためには、0.002〜1.5質量%の範囲で配合することがより好ましい。
【0033】
また、(C)表面散乱は、パターン形成層を部材最表面に形成して露光する場合、パターン形成層と大気の屈折率が大きく異なり、かつパターン形成材料表面に凹凸があるために生じる。散乱は屈折率の異なる相が接する界面で起こるからである。そこで、コート層N1とその下に位置するパターン形成層の屈折率N2が上記式(1)を満たすことによって、コート層とパターン形成層の屈折率差が小さくなるため、たとえコート層とパターン形成層の間に凹凸があっても露光光の表面における散乱は抑制される。
【0034】
屈折率差のより好ましい範囲は|N2−N1|<0.03である。屈折率差をこの範囲にすることによって、パターン形成層の凹凸の影響をより小さくすることができる。
【0035】
露光後、コート層は現像工程で除去されることが好ましい。すでに露光時のコントラスト増強という役目を終えているため、その後の工程では不要となるためである。ただし、焼成工程を含む場合、コート層を熱分解することによって除去してもよい。そのため、光褪色性材料を含むコート層は、主に有機成分からなることが好ましい。
【0036】
また、コート層とパターン形成層との屈折率を式(1)の範囲内とするため、コート層が、平均粒径が0.005〜0.08μmの無機微粒子を含有することが好ましい。前記無機微粒子は、露光光の波長より十分小さく、有機成分に混合しても露光光に対して透明である。屈折率の高い無機微粒子を含有させることによって褪色性材料を含むコート層の屈折率を上げることができ、屈折率の低い微粒子を含有させることによって褪色性材料を含むコート層の屈折率を下げることができる。すなわち、褪色性材料を含むコート層に無機微粒子を含有させることで、屈折率を容易に調整することができる。
【0037】
ここでいう無機微粒子の平均粒径は一次粒子径を指し、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば堀場製作所製LB−550等)により測定することができる。
【0038】
パターン形成層の屈折率は1.5〜1.6の範囲にあることが多いが、一般的な有機成分の屈折率は1.4〜1.5の範囲にある。従って、光褪色性材料を含むコート層の屈折率を上げるためには、屈折率の高いアルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア、セリア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化ホルミウム、酸化鉛、酸化錫等を、屈折率を下げるためには、屈折率の低いシリカを混合するのがよい。入手しやすく、安価であるといった点から、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等が好ましい。特に、チタニアは屈折率が最も高いため少ない添加量で屈折率を向上させることができるので好ましい。
【0039】
無機微粒子の屈折率をN3、コート層の有機成分の屈折率をN4とすると、コート層の屈折率N1は下式(2)によって見積もることができ、微粒子の種類の選定や混合比の決定の目安とすることができる。
N2=φnano.N3+φorg.N4 (2)
ここで、φnano.はコート層中の微粒子の体積分率、φorg.はコート層中の有機成分の体積分率を示す。ただし、微粒子の添加濃度はコート層用塗液中に体積分率で40%以下であることが好ましい。これを超えると、塗液がゲル化する場合がある。より好ましくは15%以下である。この範囲とすることにより塗液の粘度の時間変化を低く抑えることができる。
【0040】
以上のような構成により、(A)露光光の回折、(B)表面―マスク間反射、(C)表面散乱によるパターン形状の太り等が抑えられ、露光量マージンの広い高精細パターンを形成することができる。露光量マージンとは高精細パターンを形成する場合、許容範囲内のパターンが形成可能な露光量の幅をいい、幅、高さ、直径等のパターン形状があるスペックを満たす最低露光量をE(mJ/cm)、最高露光量をE(mJ/cm)とし、中心露光量Eを(E+E)/2(mJ/cm)とするとき、Eに対してスペックを満たす露光量範囲をM=(E−E)/E×100(%)で表し、中心露光量Eに対して露光量マージンがM%であると表示するものをいう。露光光の回折、表面―マスク間反射、表面散乱の影響が大きいと、非露光部分において回折、反射、散乱による光によって感光性有機成分の変化が起こらない露光量で露光する必要があるため、露光量マージンが非常に狭くなる。そのため、たとえ高精細パターンを形成することができても、露光量マージンが狭いと安定して生産することができないため、露光量マージンを広くとれることは歩留まり等の生産性向上に重要である。
【0041】
本発明のパターン形成方法は、高精度なパターン加工が要求される、液晶ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、プラズマディスプレイ等の平面ディスプレイの製造に好適に用いることができる。中でもパターン高さがパターン幅に対して大きい、すなわちアスペクト比の高いパターン形成が要求される隔壁の形成に好適であり、隔壁を有するプラズマディスプレイ用部材の製造に好適に用いることができる。また、フィールドエミッションディスプレイ用の絶縁層に形成される直径10〜20μmのビアホールのような高精細パターンや直径5〜20μmのドット状パターンの電子放出素子のような高精細パターンを感光性有機成分を含むパターン形成層により形成する場合に好適であり、絶縁層にビアホールを有するフィールドエミッションディスプレイ用部材の製造にも好適に用いることができる。
【0042】
以下に、プラズマディスプレイ用隔壁パターン形成およびフィールドエミッションディスプレイ用電子放出素子を例に本発明について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるわけではなく、液晶のカラーフィルターのカラーパターンやフィールドエミッションディスプレイの絶縁層等のパターン形成にも適用できるものである。
【0043】
はじめに、プラズマディスプレイ用隔壁パターン形成方法について説明する。ソーダガラスやPDP用の耐熱ガラスである旭硝子社製のPD200等の基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属によりアドレス電極を形成する。次いで、放電の安定化や隔壁の倒れ防止などの目的で、アドレス電極上に誘電体層を設けるのが好ましい。電極と誘電体層の形成方法は公知のものを用いることができ、特に限定はない。
【0044】
隔壁パターンは、フォトリソグラフィー法の一つである感光性ガラスペースト法により形成することが好ましい。感光性ガラスペースト法とは、低融点ガラスおよび感光性を持つ有機物を含む感光性ガラスペーストを基板上に塗布し、フォトマスクのパターンを露光により形成した後に、未露光部を現像により洗い流して隔壁パターンを形成し、その後焼成して有機物を除去して隔壁を得る方法である。
【0045】
アドレス電極と誘電体層が形成された基板上に、感光性ガラスペーストを塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の方法を用いることができる。この感光性ガラスペースト塗布膜がパターン形成材料層となる。
【0046】
感光性ガラスペーストは公知のものを用いることができる。例えば、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分と、低融点ガラスと、フィラーとして高融点ガラスを少なくとも各1種類ずつ含む。これら各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラーや混練機で均質に混合分散し、感光性ガラスペーストを作製することができる。ペースト粘度は、ガラス粉末、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・sである。また、例えば、基板への塗布をスリットダイコーター法やスクリーン印刷法ではなくスピンコート法で行う場合は、0.2〜5Pa・sが好ましい。
【0047】
上述の隔壁用感光性ガラスペーストを塗布し、必要に応じ乾燥処理を行って得られたパターン形成層上に、光褪色性材料を含むコート層を作製する。このコート層の形成に用いるコート層用塗液は、光褪色性材料と基質となるポリマー、および溶媒を含むことが好ましい。光褪色性材料はg線、h線、i線付近の紫外域の吸収能を有し、露光光の照射によってg線、h線、i線付近の紫外域の吸収能が失われる材料であればなんでもよい。しかし、一般的に用いられる露光光線であるg線、h線およびi線のうち、h線およびi線は、パターン形成層に含まれる光重合開始剤などの感光性有機成分による吸収が大きく、被膜の表面で吸収されるので下層まで到達しにくい。そこで、露光部と非露光部のコントラストをより明確にするためには、露光部でのg線の透過率を、非露光部でのg線の透過率より高くすることが有効である。
【0048】
上記を達成するための光褪色性材料としては、光酸発生剤を特に好ましく用いることができる。光酸発生剤は、酸の存在により現像液に溶解化する樹脂を用いてパターン形成を行うポジ型感光性ペースト法で多用されているものである。特に、製膜乾燥時の耐熱性と焼成時の低残渣性の観点から、ナフトキノンジアジド化合物が好適であり、具体的なナフトキノンジアジド化合物としては、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−カルボン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−カルボン酸、4−ニトロ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、5−ニトロ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、4−シアノ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、5−シアノ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸や1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸と、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンや1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとのエステル、ジアミノジフェニルエーテルなどとのアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−カルボン酸や1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−カルボン酸と、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンや1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとのエステル、ジアミノジフェニルエーテルなどとのアミドが挙げられる。また、フェナントレンキノンジアジド化合物も化学的安定性に優れており、9,10−フェナントレンキノン−10−ジアジドや、その誘導体などを挙げることができる。
【0049】
コート層は、コート層用塗液をパターン形成層上に均一に塗布した後に、塗液中の有機溶媒の種類や量、膜厚にもよるが、およそ60〜150℃で10〜120分の乾燥を行って製膜することが好ましい。従って、本発明に用いる光褪色性材料は乾燥時の熱安定性に優れ、露光時に初めて光分解または光変性するものが好ましく、30℃から100℃まで10分/分で昇温され、100℃で2時間保持したときの重量保持率が98質量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは99質量%以上である。
【0050】
また、本発明に使用する光褪色性材料は、分子内にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンや硫黄元素およびリン元素を含有しないことが好ましい。これらの元素は、焼成時に環境に対して有害な化合物として排出される可能性が高いためである。またハロゲンの燃焼物は焼成炉に蓄積されるため、工程管理上好ましくない。
【0051】
上記のような熱特性を有する最も好ましい光褪色性材料としては、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−カルボン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−カルボン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−6−カルボン酸、1,4−ナフトキノン−4−ジアジド−2−カルボン酸、4−ニトロ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、5−ニトロ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、4−シアノ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、5−シアノ−1,2−ナフトキノン−2−ジアジド、9,10−フェナントレンキノン−10−ジアジドなどのナフトキノンジアジド部位を有する化合物および、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基などの水素、炭素、窒素からなる置換基により置換を受けたアゾベンゼン誘導体を挙げることができる。
【0052】
本発明に用いることのできる光褪色性材料は1種類を単独で使用しても良いし、2種以上の複数種を混合して用いても良い。光褪色性材料の配合比は、光褪色性材料の露光前の吸光度にもよるが、コート層用塗液に対して0.001〜3質量%の範囲で加えることが好ましい。0.001質量%より少ないと、光褪色性材料の効果が得られない場合がある。また、3質量%より多い場合はg線が下層部まで到達しにくく、感光性ペーストの感度が低下することがある。光褪色性材料がコントラスト増強剤として適切に機能するためには、0.002〜1.5質量%の範囲で配合することがより好ましい。
【0053】
基質となるポリマーや溶媒は、光褪色性材料が十分溶解し、露光光である紫外線を十分に透過すること、製膜性が良好であること、といった条件を満たせば自由に選ぶことができる。さらに、隔壁用感光性ガラスペーストの現像液で除去できるポリマーを選択すれば、光褪色性材料を含むコート層が、隔壁用感光性ガラスペーストの現像液で除去できるため、光褪色性材料を含むコート層の除去工程を省略でき好ましい。ポリマーは上述のコート層用ポリマーを用いることができる。
【0054】
また、光褪色性材料を含むコート層の屈折率を式(1)の範囲にするため、必要に応じて無機微粒子を混合することができる。微粒子は、前述のコート層用微粒子を用いることができる。感光性ガラスペーストの屈折率は1.5〜1.6の範囲にあることが多いが、一般的な有機成分の屈折率は1.4〜1.5の範囲にある。従って、光褪色性材料を含むコート層の屈折率をあげるためには、屈折率の高いアルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア、セリア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化ホルミウム、酸化鉛、酸化錫等を、屈折率を下げるためには、屈折率の低いシリカを混合するのがよい。
【0055】
入手しやすく、安価であるといった点から、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等が好ましい。特に、チタニアは屈折率が最も高いため少ない添加量で屈折率を向上させることができるので好ましい。
【0056】
無機微粒子の添加濃度はコート層用塗液中に体積分率で40%以下が好ましい。これを超えると、塗液がゲル化する。より好ましくは15%以下である。これにより塗液の粘度の時間変化を低く抑えることができる。
【0057】
隔壁用感光性ガラスペースト塗布膜と、その上に光褪色性材料を含むコート層を形成した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は、通常のフォトリソグラフィー法で行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によってネガ型、ポジ型を選択することができる。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。
【0058】
露光後、感光部分と非感光部分の現像液に対する溶解度差を利用して現像を行うが、この場合、浸漬法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法で行う。光褪色性材料を含むコート層もこの現像工程で除去されるのが好ましい。
【0059】
隔壁パターンを含む基板の焼成工程は焼成炉により行う。焼成雰囲気や温度はペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素等の雰囲気下で焼成する。焼成温度は400〜610℃で行う。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。また、以上の工程中に乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃加熱工程を導入してもよい。
【0060】
アドレス電極、誘電体、隔壁を形成したガラス基板上に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体を形成する。感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィー法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等によって形成できる。蛍光体の厚みも特に限定されるものではないが、10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。
【0061】
蛍光体粉末は特に限定されないが、発光強度、色度、色バランス、寿命などの観点から、以下の蛍光体が好適である。青色は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu)やCaMgSiである。緑色では、パネル輝度の点からZnSiO:Mn、YBO:Tb、BaMgAl1424:Eu,Mn、BaAl1219:Mn、BaMgAl1423:Mnが好適である。さらに好ましくはZnSiO:Mnである。赤色では、同様に(Y、Gd)BO:Eu、Y:Eu、YPVO:Eu、YVO:Euが好ましい。さらに好ましくは(Y、Gd)BO:Euである。
【0062】
蛍光体を形成した後に、絶縁性の材料で蛍光体の一部あるいは全てを被覆してもよい。被覆の方法などは、前述の隔壁の被覆のところで記したものと同様であるが、蛍光体を被覆する層の焼成温度は、蛍光体の劣化を最小限にするために550℃以下であることが好ましい。より好ましくは510℃以下である。
【0063】
次にプラズマディスプレイの製造方法について説明する。
【0064】
上述の方法で製造した背面基板と予めガラス基板上に走査・維持電極、ブラックストライプ、透明誘電体層、そしてMgO等の保護膜を作製した前面基板を封着後、2枚の基板間隔に形成された空間を加熱しながら真空排気を行った後に、ヘリウム、ネオン、キセノンなどから構成される放電ガスを封入して封止する。放電電圧と輝度の両面からはXe5〜10%−Ne bal.混合ガスが好ましい。紫外線の発生効率を大きくするために、さらにXeを30%程度まで高くしてもよい。
【0065】
最後に、駆動回路を装着し、エージングを行いPDPを作製できる。
【0066】
次に、フィールドエミッションディスプレイ用電子放出素子の形成方法について説明する。ソーダガラスやPDP用の耐熱ガラスである旭硝子社製のPD200等の基板上にITOなどによりカソード電極を形成する。その上に絶縁層となるシリカなどの酸化物薄膜を2〜15μmの厚みで成膜し、さらに絶縁層上にゲート電極となるクロムやアルミ等の金属を50〜300nmの厚みで成膜する。金属層の上にポジ型あるいはネガ型レジストをスピンナー等で塗布し、露光および現像によって絶縁層およびゲート電極の直径10〜20μmのヴィアホールとなるべきパターン形成を行う。次に、金属エッチング液を用いてヴィアホールパターン部の金属を除去し、さらにフッ素系ガス(CF,CHF、Cなど)の反応性ガスを用いてヴィアホールパターン部のシリカ等の酸化物薄膜を除去する。このようにして、カソード電極上に直径10〜20μmのヴィアホールが存在する絶縁層とゲート電極の形成された背面基板を作製することができる。電極、薄膜および絶縁層の形成方法は公知のものを用いることができ、特に限定はない。
【0067】
次に、ヴィアホール内に電子放出素子を形成する。電子放出素子には、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)が物理的・化学的耐久性に優れているだけでなく、電界放出に適した先鋭な先端形状と大きなアスペクト比を持っているため、好ましく用いられる。CNTの他に、カーボンナノホーン、カーボンナノコイルも用いることができる。このCNTを用いた電子放出源を作製する方法の一つにCNTを感光性ペーストにして印刷することによりカソード電極上にCNTを有する膜を作製する方法がある。この方法は、カソード電極上にCNTを含むペーストを印刷し、露光・現像によりパターン加工を行い、その後焼成することによってペースト中の有機成分を分解し、さらにレーザー法、プラズマ法、テープ剥離法等の起毛処理を、CNTを有する膜に行うことによって電子放出源を作製するものである。
【0068】
この感光性CNTペーストを背面基板上に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の方法を用いることができる。この感光性CNTペースト塗布膜がパターン形成材料層となる。
【0069】
感光性CNTペーストは公知のものを用いることができる。例えば、CNT、溶媒、光重合開始剤、および感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーの3種類のうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分を含む。
【0070】
溶媒としては、エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール、アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート)などが挙げられる。より具体的には、テルピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトールアセテートなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0071】
光重合開始剤としては、ラジカル種を発生するものから選んで用いられる。光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2ーヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、N−フェニルグリシン、テトラブチルアンモニウム(+1)n−ブチルトリフェニルボレート(1−)、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0072】
感光性ポリマー、感光性オリゴマーとしてはカルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有するポリマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物等のカルボキシル基含有モノマーおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレート等のモノマーを選択し、アゾビスイソブチロニトリルのような開始剤を用いて共重合することにより得られる。
【0073】
カルボキシル基を有するポリマーとしては、焼成時の熱分解温度が低いことから、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸を共重合成分とするコポリマーが好ましく用いられる。とりわけ、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体が好ましく用いられる。
【0074】
カルボキシル基を有するコポリマーの樹脂酸価は50〜150mgKOH/gであることが好ましい。酸価が150より大きいと、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が50未満では未露光部の現像液に対する溶解性が低下する。現像液濃度を高くすると露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくくなる。
【0075】
側鎖にエチレン性不飽和結合を導入する方法として、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライド、マレイン酸等のカルボン酸を反応させて作る方法がある。
【0076】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル等が挙げられる。とりわけ、CH=C(CH)COOCHCHOHCH−が好ましく用いられる。
【0077】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量反応させることが好ましい。
【0078】
エチレン性不飽和結合を有するアミン化合物の調製は、エチレン性不飽和結合を有するグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物等をアミノ化合物と反応させればよい。複数のエチレン性不飽和基含有化合物を混合して用いてもよい。
【0079】
感光性モノマーとしては、光反応性を有する炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物を用いることができ、例えばアルコール類(例えば、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、カルボン酸(例えば、酢酸プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸など)とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジル、またはテトラグリシジルメテキシリレンジアミンとの反応生成物、アミド誘導体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなど)、エポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸との反応物などを挙げることができる。また、多官能感光性モノマーにおいて、不飽和基は、アクリル、メタクリル、ビニル、アリル基が混合して存在しても良い。これらを1種または2種以上使用することができる。
【0080】
これら各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラーやボールミルなどの混練機で均質に混合分散し、感光性CNTペーストを作製することができる。ペースト粘度は、CNT、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・sである。また、例えば、基板への塗布をスリットダイコーター法やスクリーン印刷法ではなくスピンコート法で行う場合は、0.2〜5Pa・sが好ましい。
【0081】
上述の感光性CNTペーストを塗布し、必要に応じ乾燥処理を行って得られたパターン形成層上に、光褪色性材料を含むコート層を作製する。このコート層の形成に用いるコート層用塗液は、プラズマディスプレイ用隔壁の形成方法で述べたものと同様のものを使用することができる。
【0082】
感光性CNTペースト塗布膜と、その上に光褪色性材料を含むコート層を形成した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は、通常のフォトリソグラフィー法で行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によってネガ型、ポジ型を選択することができる。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。
【0083】
露光後、感光部分と非感光部分の現像液に対する溶解度差を利用して現像を行うが、この場合、浸漬法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法で行う。光褪色性材料を含むコート層もこの現像工程で除去されるのが好ましい。
【0084】
電子放出素子パターンを含む基板の焼成工程は焼成炉により行う。焼成雰囲気や温度はペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素等の雰囲気下で焼成する。CNTは空気中で500℃以上に熱せられると酸化されて分解してしまうので、窒素などの還元雰囲気下で焼成することが好ましい。焼成温度は400〜610℃で行う。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。また、以上の工程中に乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃加熱工程を導入してもよい。
【0085】
さらに、ヴィアホール内に形成された電子放出素子をレーザー法、プラズマ法、テープ剥離法等の起毛処理を行い、電子放出素子パターンからCNTをほぼ垂直に起毛、配列させ、電子放出素子を形成する。
【0086】
次にフィールドエミッションディスプレイの製造方法について説明する。
【0087】
上述の方法で製造した背面基板と予めガラス基板上にアノード電極、蛍光体層を作製した前面基板を高さ200〜10000μmのガラスの板状やピラー状のスペーサーを介して封着後、2枚の基板間隔に形成された空間を加熱しながら真空排気を行った後に封止する。
【0088】
最後に、駆動回路を装着し、エージングを行いフィールドエミッションディスプレイを作製できる。
【実施例】
【0089】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(屈折率測定)
コート層、感光性ガラスペースト、及び感光性CNTペーストの屈折率は、塗布および乾燥工程後に、エリプソメトリー法によって、25℃における436nmの波長の光に関して位相差測定装置NPDM−1000((株)ニコン製)にて測定を行った。
(隔壁形成用感光性ガラスペーストの作製方法)
隔壁形成用感光性ガラスペーストは以下の要領で作製した。感光性モノマ、感光性ポリマ、光重合開始剤、増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を所定量秤量後、溶媒としてγ−ブチロラクトンを適宜添加して粘度を調整し、低融点ガラス粉末/フィラー=80/20(質量比)、溶媒を除いた有機成分/無機微粒子=30/70(質量比)となる無機成分を添加後3本ローラー混練機にて混練し、感光性ガラスペーストとした。溶媒を除く有機成分の添加量を表1に示した。
【0090】
【表1】

【0091】
隔壁形成用感光性ガラスペーストに用いた原料は次の通りである。
感光性モノマー1:トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマー2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤:IC369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、チバスペシャリティーケミカルズ社製)。
増感剤:2,4−ジエチルチオキサントン
酸化防止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
紫外線吸収剤:スダンIV(東京応化工業株式会社製、吸収波長;350nmおよび520nm)
無機微粒子:
低融点ガラス粉末:酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%からなるガラス(平均粒径2.6μm、ガラス転移温度491℃)
フィラー:以下の組成からなる高融点ガラス粉末。酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%(平均粒径2.8μm、ガラス転移温度;652℃)
(2層CNTの合成方法)
はじめに固体触媒を調整した。無水塩化第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40mlに溶かし、10.0gのチタノシリケート型ゼオライト粉末(NEケムキャット社製TS-1)を加え、超音波洗浄機で30分間処理し、120℃恒温下で水を除去して、ゼオライトの表面に金属を担持した固体触媒を得た。次に、この固体触媒を内径100mm、長さ1.5mの石英管の中央部にを3.0g取り、石英管を電気炉に設置して、アルゴンを150ml/分で供給した。石英管を30回転/分で回転させながら電気炉の中心温度を850℃に加熱し、アセチレン(竹中高圧工業社製)を5ml/分で180分間供給した後、アセチレンの供給を止め、温度を室温まで冷却し、固体触媒を含むCNT生成物を得た。このCNT生成物から固体触媒を取り除くことによって、使用するCNT(粉末)を得た。日立製透過型電子顕微鏡H7100型で生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が15m以下の細いCNTが主成分であることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で観察した結果、2層CNTの生成が確認された。
(電子放出素子形成用感光性CNTペーストの作製方法)
電子放出素子形成用感光性CNTペーストは以下の要領で作製した。感光性モノマ、感光性ポリマ、光重合開始剤、増感剤、酸化防止剤を所定量秤量後、溶媒としてテルピネオール(豊玉香料社製)を適宜添加して粘度を調整し、CNTを溶媒を除いた有機成分/CNT=99/1(質量比)となるように添加後ボールミルにて混合し、感光性CNTペーストとした。溶媒を除く有機成分の添加量を表2に示した。
【0092】
【表2】

【0093】
電子放出素子形成用感光性CNTペーストに用いた原料は次の通りである。
感光性モノマー1:トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマー2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤:IC369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、チバスペシャリティーケミカルズ社製)。
増感剤:2,4−ジエチルチオキサントン
酸化防止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
CNT:2層カーボンナノチューブ(東レ社製)
(コート層用塗液の作製法)
コート層は、光褪色性材料、ポリマー、溶媒、微粒子を添加して粘度を調整し、フラスコ内にて撹拌して得た。組成は表2に示す。また、各材料について下記に示す。
光褪色性材料:1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム塩(和光純薬株式会社製、吸収極大波長;355nmおよび400nm、100℃で2時間保持したときの重量保持率;99.8%)
ポリマー1:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
ポリマー2:ポリプロピレングリコール(数平均分子量425)
モノマー:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
光重合開始剤:IC369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
溶媒:γ−ブチロラクトン(γ−BL)
微粒子:チタニア(粒径4nm、20wt%γ−BL溶液)
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
(隔壁パターンの形成方法)
プラズマディスプレイ用隔壁パターンは以下の手順にて作製した。旭硝子株式会社製 “PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、平均粒径1.5μmの銀粉末、低軟化点ガラス、および感光性有機成分からなる感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィ法によりアドレス電極パターンを形成した。次いで、アドレス電極が形成されたガラス基板上に鉛ガラス、フィラー、バインダー、および架橋剤からなる誘電体層をスクリーン印刷法により焼成後10μmの厚みになるように形成した。
【0097】
しかる後、ネガ型感光性ペーストをスクリーン印刷法によりアドレス電極パターンおよび誘電体層が形成された背面板ガラス基板上に所望の厚みになるまで均一に塗布した。塗布膜にピンホールなどの発生を回避するために塗布・乾燥を数回以上繰り返し行い、乾燥後の厚みが150μmとなるようにした。途中の乾燥は100℃で10分行った。上記隔壁形成用感光性ガラスペーストを用いる場合、焼成後の隔壁高さは約120μmとなる。
【0098】
次いで、コート層を感光性ガラスペースト塗布膜上に塗布した。コート層用塗液はスピンナーにより厚みが10μmになるようにし、100℃で5分乾燥した。
引き続き、上記のネガ型クロムマスク(ストライプ状、線幅35μm、ピッチ220μm)を用いて、上面から50mW/cm出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。
【0099】
次に、35℃に保持したものエタノールアミンの0.3質量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していない部分およびコート層を除去した。さらに、560℃で30分保持して焼成することにより隔壁を形成した。
(電子放出素子パターンの形成方法)
フィールドエミッションディスプレイ用電子放出素子パターンは以下の手順にて作製した。旭硝子株式会社製 “PD−200”ガラス基板(5インチ)上に、ITOをスパッタリング法により150nmの厚みになるように成膜し、カソード電極パターンを形成した。次いで、カソード電極が形成されたガラス基板上にシリカからなる絶縁体層をスパッタリング法により5μmの厚みになるように形成した。絶縁体層上に、クロムからなるゲート電極層をスパッタリング法により150nmの厚みになるように形成した。クロム上にポジ型レジストを1μmの厚みになるようにスピンナーで塗布し、露光・現像により直径15μmのヴィアホールパターンを形成した。さらにクロムエッチング液でゲート電極層に直径15μmのヴィアホールパターンを形成し、CFによるエッチングガスにより絶縁層にも15μmのヴィアホールを形成した。
【0100】
しかる後、カソード電極および絶縁層とゲート電極層にヴィアホールが形成された背面板ガラス基板上に感光性CNTペーストをスクリーン印刷により乾燥厚みが5μmになるよう均一に塗布した。乾燥は85℃で10分行った。
【0101】
次いで、コート層を感光性CNTペースト塗布膜上に塗布した。コート層用塗液はスピンナーにより厚みが10μmになるようにし、100℃で5分乾燥した。
引き続き、上記のネガ型クロムマスク(ドット状、直径10μm)を用いて、上面から50mW/cm出力の超高圧水銀灯で30秒間紫外線露光した。
【0102】
次に、35℃に保持したものエタノールアミンの0.3質量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していない部分およびコート層を除去した。さらに、500℃で30分保持して焼成することにより電子放出素子を形成した。
(隔壁パターンの露光量マージンの評価)
パネルを切断して小片にし、隔壁の長手方向と垂直な断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所S2400)で観察し、ランダムに5カ所選び、隔壁の底部幅Lを計測し、その平均値を算出した。40≦L≦55(μm)を満たす最低露光量をE(mJ/cm)、最高露光量をE(mJ/cm)とし、中心露光量Eを(E+E)/2(mJ/cm)とした。この時、露光量マージンをM=(E−E)/E×100(%)とし、中心露光量Eに対する露光量マージンM(%)として示した。
【0103】
この露光量マージンは、大きいほど高精細なパターンを安定に製造することができるため好ましいが、フルハイビジョン表示が可能なプラズマディスプレイ用部材を安定に製造するためには、15%以上であることが好ましい。
(電子放出素子パターンの露光量マージンの評価)
パネルを切断して小片にし、上面から電子放出素子を走査型電子顕微鏡(日立製作所S2400)で観察し、ランダムに5カ所選び、電子放出素子の直径Rを計測し、その平均値を算出した。9≦R≦11(μm)を満たす最低露光量をE(mJ/cm)、最高露光量をE(mJ/cm)とし、中心露光量Eを(E+E)/2(mJ/cm)とした。この時、露光量マージンをM=(E−E)/E×100(%)とし、中心露光量Eに対する露光量マージンM(%)として示した。
【0104】
この露光量マージンは、大きいほど高精細なパターンを安定に製造することができるため好ましいが、フィールドエミッション用部材を安定に製造するためには、15%以上であることが好ましい。
(実施例1〜4)
隔壁パターンに関する評価結果を表5に示す。実施例1〜4ともに隔壁パターンの露光量マージンは比較例と比べて1.5〜3.0倍に大きく向上し、高精細パターンの形成に適していた。しかし、実施例3では焼成炉の一部にタール状物質が付着し、焼成プロセスの作業性がやや低下した。実施例4では実施例1と比較して褪色性材料が褪色するために必要な露光量が多くなり、露光プロセスの作業性がやや低下した。
(実施例5〜8)
電子放出素子パターンに関する評価結果を表6に示す。実施例5〜8ともに電子放出素子パターンの露光量マージンは比較例と比べて1.7〜3.3倍に大きく向上し、高精細パターンの形成に適していた。しかし、実施例7では焼成炉の一部にタール状物質が付着し、焼成プロセスの作業性がやや低下した。実施例8では実施例1と比較して褪色性材料が褪色するために必要な露光量が多くなり、露光プロセスの作業性がやや低下した。
(比較例1)
コート層がないこと以外は実施例1と同様に隔壁パターンを形成した。表5に示すように露光量マージンは実施例と比較して狭い。
(比較例2)
N2−N1=0.15となるコート層を用いたこと以外は実施例1と同様に隔壁パターンを形成した。表5に示すように露光量マージンは実施例と比較して狭い。
(比較例3)
N2−N1=0.09であるが、光褪色性材料を含まないこと以外は実施例1と同様に隔壁パターンを形成した。表5に示すように露光量マージンは実施例と比較して狭い。
(比較例4)
コート層がないこと以外は実施例5と同様に電子放出素子パターンを形成した。表6に示すように露光量マージンは実施例と比較して狭い。
(比較例5)
N2−N1=0.15となるコート層を用いたこと以外は実施例5と同様に電子放出素子パターンを形成した。表6に示すように露光量マージンは実施例と比較して狭い。
(比較例6)
N2−N1=0.09であるが、光褪色性材料を含まないこと以外は実施例5と同様に電子放出素子パターンを形成した。表6に示すように露光量マージンは実施例と比較して狭い。
【0105】
【表5】

【0106】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に感光性有機成分を含むパターン形成層と、該パターン形成層上に位置するコート層の少なくとも2つ以上の層を設け、コート層側から露光を行った後に現像処理を行うパターン形成方法であって、該コート層が光褪色性材料を含み、かつ該コート層の屈折率N1と該パターン形成層の屈折率N2が下式(1)を満たすことを特徴とするパターン形成方法。
|N2−N1|<0.1 (1)
【請求項2】
前記コート層が、現像工程で除去されることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記コート層が、平均粒径が0.005〜0.08μmの無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法によりパターンを形成する工程を含む平面ディスプレイ用部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法により隔壁を形成する工程を含む平面ディスプレイ用部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法により電子放出素子を形成する工程を含む平面ディスプレイ用部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法により形成された隔壁を有するプラズマディスプレイ用部材。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法により形成された電子放出素子を有するフィールドエミッションディスプレイ用部材。

【公開番号】特開2007−86772(P2007−86772A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230122(P2006−230122)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】