説明

ヒータおよび成膜装置

【課題】強度を確保できる形状の面状発熱体を有するヒータおよびそれを用いた成膜装置を提供する。
【解決手段】ヒータの発熱体1は、断面がコの字形状となるリボン状の発熱体部材2を基本構造とし強度を確保できる形状を有する。発熱体1は、発熱体部材2が長手方向に曲げられた構造を有して環状または円盤状をなし、面状発熱体を構成する。発熱体1を有するヒータは、成膜装置に適用され、発熱体1の上部面Sがウェハの裏面と対向するようにウェハの下方に配置される。発熱体1では撓みの発生が低減され、変形の発生を抑えることができる。成膜装置では、発熱体1を有するヒータによって、所望条件でのウェハの加熱を実現するとともに、ウェハ裏面からの均一な加熱を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ等の基板を加熱するためのヒータと、このヒータを用いた成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板であるウェハの表面にシリコンなどの単結晶膜を形成したエピタキシャルウェハの製造には、枚葉式の成膜装置が使用されることが多い。
【0003】
成膜装置は、ウェハを載置するサセプタを収納した成膜室内に反応ガスを供給するとともに、ウェハの裏面を加熱して、ウェハの表面にエピタキシャル膜を形成するように構成されている。こうした裏面加熱方式は、上方に加熱源がなく、垂直方向に反応ガスを供給できるため、均一な成膜処理が可能である。
【0004】
また、成膜装置は、上端にサセプタ用の支持部材が連結され、成膜室の底壁部に開設した貫通孔を通して下方にのびる回転軸と、成膜室の下方に配置された回転軸用の回転機構部とを配置し、成膜時にウェハを回転させることで、より均一な厚みの膜が形成されるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
成膜装置の加熱源としては、例えば、ジュール熱による加熱を行う抵抗加熱ヒータが用いられる。そして、例えば、Si(シリコン)膜のエピタキシャル成長の場合、ウェハの温度は1200℃程度まで加熱される。このとき、ヒータの発熱部である発熱体の温度はこれより高い温度になる。したがって、ヒータは高温の加熱を可能とするとともに、高温下で汚染物質を放出することのない部材を用いて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−152207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、Siに代わる高耐圧のパワー半導体デバイス用材料としてSiC(炭化珪素)が注目されている。SiCは、SiやGaAs(ガリウム砒素)といった従来の半導体材料と比較するとエネルギーギャップが2〜3倍大きく、絶縁破壊電圧が1桁程度大きいといった特徴を有する。
【0008】
SiC膜は、例えば、SiCウェハ上に、H(水素)をキャリアガスとし、SiH(モノシラン)およびC(プロパン)を供給することで形成される。具体的には、成膜室内に供給されたこれらのガスは、加熱されたサセプタ上に載置されたSiCウェハの表面領域を層流で周回して排気されるまでの間に、SiCウェハの表面でエピタキシャル成長反応を起こす。このとき、SiC膜のエピタキシャル成長は、Si膜の場合より高い温度で行われる。このため、ヒータの温度はさらに高い温度になり、その発熱部である発熱体の温度は、例えば、2000℃程度にまで達する。
【0009】
しかしながら、従来のヒータを用いて、例えば、上述した1200℃、さらには2000℃に達する高温での加熱を実現しようとする場合、ヒータの強度が問題となることがあった。すなわち、ヒータに発生する変形、特に発熱部である発熱体の変形が問題となることがあった。こうしたヒータにおける変形が加熱時に発生すると、ウェハの裏面を均一に加熱することができなくなる。その結果、ウェハの表面に均一な特性のエピタキシャル膜を形成できなくなることがあった。
【0010】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、強度を確保できる形状のヒータを提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、強度の確保できる形状のヒータを用い、高温下で基板を加熱しながら基板上に所定の膜を形成することのできる成膜装置を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、面状発熱体と、
その面状発熱体に電気的に接続する電極とを有するヒータであって、
面状発熱体は、断面がコの字形状の発熱体部材が組み合わされた構造または断面がコの字形状の発熱体部材が長手方向に曲げられた構造の環状または円盤状であることを特徴とするヒータに関する。
【0014】
本発明の第1の態様において、面状発熱体の発熱体部材は、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料およびSiC材よりなる群から選ばれる材料を用いて構成されることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の態様において、面状発熱体の発熱体部材は、短手方向の幅aと側縁部の厚さXの比(a/X)が3〜10であることが好ましい。
【0016】
本発明の第2の態様は、成膜室と、
その成膜室内に載置される基板を加熱するヒータとを備えた成膜装置であって、
ヒータは、面状発熱体と、その面状発熱体に電気的に接続する電極とを有し、
面状発熱体は、断面がコの字形状の発熱体部材が組み合わされた構造または断面がコの字形状の発熱体部材が長手方向に曲げられた構造の環状または円盤状であることを特徴とする成膜装置に関する。
【0017】
本発明の第2の態様において、面状発熱体の発熱体部材は、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料およびSiC材よりなる群から選ばれる材料を用いて構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、発熱体が強度を確保できる形状を有し、成膜装置に適用されて変形の発生が抑えられたヒータを提供することができる。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、強度の確保できる形状の発熱体を有するヒータを用い、高温下で基板を加熱しながら基板上に所定の膜を形成することのできる成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態のヒータの発熱体の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】本実施の形態のヒータの発熱体の一例を模式的に説明する図であり、(a)は本実施の形態のヒータの発熱体の一例の構造を模式的に説明する平面図であり、(b)は(a)のA−A’線に沿った断面を模式的に示す図である。
【図3】本実施の形態のヒータの発熱体の別の一例を模式的に説明する図であり、(a)は本実施の形態のヒータの発熱体の別の一例の構造を模式的に説明する平面図であり、(b)は(a)のB−B’線に沿った断面を模式的に示す図である。
【図4】本実施の形態における枚葉式の成膜装置の模式的な断面図である。
【図5】本実施の形態の成膜装置の別の例の構造を説明する模式的な断面図である。
【図6】従来のヒータの発熱体の構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、成膜装置においてヒータを用いてウェハを高温に加熱しようとする場合、例えば、1200℃、さらには2000℃に達する高温での加熱が求められることがある。その場合、ヒータによる非常に高温の発熱が求められる。
【0022】
ジュール熱による加熱を行う抵抗加熱タイプのヒータは、発熱をする発熱体と、その発熱体に電圧を印加する電極とを用いて構成することができる。そして、抵抗加熱タイプのヒータの発熱は、その電極を介してヒータの発熱体に印加される電圧によって制御することができる。すなわち、ヒータの発熱体および電極を流れる電流の値と、ヒータの発熱体の抵抗値とにより制御される。
【0023】
ヒータにおいて、より高い発熱を実現するために印加電圧を増大させた場合、ヒータの発熱体の抵抗値が一定であれば、ヒータの発熱体を流れる電流値が増大することになる。このとき、ヒータの電流値については、電極やそれらと接続する配線の材料等による制約がある場合が多い。したがって、ヒータの発熱に対し、印加電圧を増大させる方向での制御を困難にさせることが多い。
【0024】
例えば、上述のように電極や配線の材料等による制約から、ヒータを流れる電流値の上限が300A(アンペア)に制限されている場合、ヒータの発熱体の抵抗値が0.5Ω(オーム)であれば、印加電圧の上限は、約150V(ボルト)に制限されることになる。したがって、印加電圧を150V以上に増大することによってヒータの発熱を高めることは困難となる。
【0025】
そこで、このような電流値の制限がある場合に、ヒータの発熱体の抵抗を高くしておくことができれば、印加電圧の増大が可能となる。例えば、ヒータの発熱体の抵抗値を1Ωにすることができれば、印加電圧を150Vから300Vまで増大させても、ヒータを流れる電流の値は、概ね300A以下になり、上述の配線の材料等による制約の範囲内に抑えられることになる。そして、ヒータにおいては、より高い発熱を実現することができる。したがって、ヒータの発熱を高めるためには、ヒータの抵抗を、より具体的には、ヒータの発熱体の抵抗を制御する方法が有効となる。
【0026】
ヒータの発熱体の抵抗を制御する方法の1つとしては、ヒータの発熱体の形状を制御する方法がある。
【0027】
図6は、従来のヒータの発熱体の構造を模式的に示す斜視図である。
【0028】
図6に示すように、従来のヒータの発熱体1000は、短手方向の断面が長方形となるリボン状の発熱体部材1001を基本構造として構成される。このような従来のヒータでは、発熱体1000の抵抗を形状によって制御することが可能であり、その場合、発熱体部材1001の厚さYaを制御することが有効である。具体的には、発熱体部材1001の厚さYaを薄くすることでヒータの発熱体1000の抵抗を高くする制御が可能となる。
【0029】
しかしながら、そうした制御方法では、発熱体1000の抵抗を高くするのにつれて、発熱体1000の厚さYaは薄くなる。その結果、ヒータの発熱は増大するものの、発熱体1000の強度の確保が困難となり、上述したようなヒータの変形の問題を生じることがあった。
【0030】
例えば、成膜装置においては、ヒータの発熱体1000をウェハの下方に配置して使用することができる。その場合、発熱体部材1001を基本構造とする発熱体1000を両端で支持するようにし、発熱体部材1001の上面Saがウェハの裏面と対向するように配置することが好ましい。しかしながら、発熱体1000のYaが薄いと、例えば、発熱時において、発熱体1000が自重によって下方側に撓む変形を生じることがあった。
【0031】
成膜装置では、ウェハの加熱が所望とする条件で行われるように、ウェハとヒータの発熱体との間の距離が定められている。したがって、発熱体に撓みが生じると、ウェハとヒータの発熱体との間の距離が当初の設定値からずれることになり、所望とする条件でのウェハの加熱ができなくなる。また、ウェハを裏面から均一に加熱することができなくなり、ウェハ上に均一な特性のエピタキシャル膜を形成できなくなることがあった。
【0032】
本発明の実施形態であるヒータは、こうした従来のヒータの問題に鑑みて、ヒータの発熱体が強度を確保できる形状を有するようにして構成される。併せて、ヒータの発熱体の形状を制御して行うヒータの抵抗の制御を容易なものとする。そして、本発明の実施形態であるヒータは、本実施の形態の成膜装置に適用される。
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いてより詳しく説明する。尚、図面の記載において、共通する構成要素については同一の符号を付している。そして、重複する説明は省略している。
【0034】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態のヒータの発熱体の構造を模式的に示す斜視図である。
【0035】
本実施の形態のヒータの発熱体1は、短冊状の平板の短手方向の両端が折り曲げられた形状の発熱体部材を基本構造として構成される。そして、より具体的には、図1に示すように、本実施の形態のヒータの発熱体1は、断面がコの字形状となるリボン状の発熱体部材2を基本構造として構成される。
【0036】
本実施の形態のヒータの発熱体1において、基本構造をなす発熱体部材2の上部の厚さY、側縁部の厚さX、短手方向の幅a、および側縁部の高さbの関係は、電気的特性を考慮して決められる。そして、さらに発熱体部材2の上部面Sをウェハの裏面と対向するように成膜装置内に配置する場合を想定して、発熱体1の強度を確保できる関係とすることが好ましい。例えば、上部の厚さYと側縁部の厚さXとは同一とすることが可能である。また、短手方向の幅aと側縁部の厚さXとの比(a/X)は3〜10とすることが好ましく、4〜8とすることがより好ましい。こうした構造とすることにより、発熱体1は、好ましい抵抗を備え、強度の確保に有効な形状を有することができる。
【0037】
そして、発熱体1の基本構造をなし、発熱体1を構成する発熱体部材2は、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料、およびSiC材よりなる群から選ばれる材料を用いて構成することが可能である。
【0038】
以上の本実施の形態のヒータの発熱体1は、強度を確保できる形状を有している。そして、本実施の形態のヒータは、発熱体1の発熱体部材2の上部面Sをウェハの裏面と対向するように、発熱体1をウェハの下方に配置することができる。そうして、成膜装置に適用された場合、発熱体1での撓みの発生が低減され、変形の発生を抑えることができる。その結果、本実施の形態のヒータは、成膜装置内において所望条件でのウェハの加熱を実現するとともに、ウェハ裏面からの均一な加熱を可能とする。
【0039】
さらに、本実施の形態のヒータの発熱体1の発熱体部材2は、断面がコの字形状で強度を確保できる形状を有しているため、図6の従来ヒータの発熱体1000の発熱体部材1001に比べて、対応する上部の厚さYを薄く制御することができる。すなわち、本実施の形態のヒータは、発熱体1の形状を制御してその抵抗を制御しようとする場合、発熱体1の抵抗制御の範囲を、従来に比べて広くすることができる。その結果、本実施の形態のヒータでは、より高温の発熱をするように制御することが可能となり、例えば、2000℃などの非常に高温での加熱が求められる成膜装置においても好適に使用することができる。
【0040】
そして、本実施の形態のヒータの発熱体1は、図1に示すように、断面がコの字形状のリボン状の発熱体部材2を基本構造とする。したがって、発熱体部材2を基本構造として、発熱体1の内部に、長手方向に曲げられた構造を設けることより、発熱体1は多様な形状を実現することが可能である。またさらに、図1に示された発熱体部材2を基本構造として、複数組み合わされた構造とすることにより、さらに多様な形状を実現することが可能である。例えば、発熱体1の内部に、長手方向に曲げられた構造として、長手方向に屈曲した構造や湾曲した構造を設けることにより、発熱体1は全体の形状が面状をなす、面状発熱体を構成することが可能である。そして、より具体的には、管状(リング状)や円盤状の面状発熱体を構成することなどが可能である。
【0041】
図2は、本実施の形態のヒータの発熱体の一例を模式的に説明する図であり、図2(a)は本実施の形態のヒータの発熱体の一例の構造を模式的に説明する平面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’線に沿った断面を模式的に示す図である。
【0042】
図2(a)に示す本実施の形態の一例であるヒータの発熱体10は、図1に示した断面がコの字形状のリボン状の発熱体部材2を基本構造とし、長手方向に曲げられた構造を備えて円盤状をなし、面状発熱体を構成するようにされたものである。そして、発熱体10は、両端部分のそれぞれにより図示されない電極と電気的接続がなされて、本実施の形態の一例であるヒータを構成する。発熱体10では、図2(b)に示すように、面状発熱体を構成する各部の断面が、発熱体部材2の構造に由来して、コの字形状を有するように構成されている。発熱体10を構成する発熱体部材2の構成材料については、上述したように、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコート材料、およびSiC材よりなる群から選ばれる材料とすることが可能である。このような面状発熱体を構成する発熱体10を有する本実施の形態のヒータは、成膜装置に適用されてウェハの加熱に好適なヒータとなる。
【0043】
そして、図2(a)および図2(b)に示す発熱体10では、コの字形状を有する発熱体部材2の上部面Sから1つの面が構成されており、発熱体10全体として1つの上面が構成されている。したがって、発熱体10を有する本実施の形態のヒータは、成膜装置に適用されて、ウェハと発熱体10との間の距離を容易かつ高精度に定めることが可能となる。
【0044】
さらに、上述のように、発熱体10は、断面がコの字形状の発熱体部材2を基本構造として、強度を確保できる形状を有する。したがって、成膜装置に適用されて、発熱体10の上面をウェハの裏面と対向するようにしてウェハの下方に配置することができる。そうして、本実施の形態の一例であるヒータでは、発熱体10における撓みの発生が低減され、変形の発生を抑えることができる。その結果、成膜装置内において所望条件でのウェハの加熱を実現するとともに、ウェハ裏面からの均一な加熱を可能とする。
【0045】
図3は、本実施の形態のヒータの発熱体の別の一例を模式的に説明する図であり、図3(a)は本実施の形態のヒータの発熱体の別の一例の構造を模式的に説明する平面図であり、図3(b)は図3(a)のB−B’線に沿った断面を模式的に示す図である。
【0046】
図3(a)に示す本実施の形態の別の一例であるヒータの発熱体20は、図1に示したリボン状の発熱体部材2を基本構造とし、長手方向に曲げられた構造を備えて、一部に切り欠け部分を有する管状(リング状)をなし、面状発熱体を構成するようにされたものである。そして、発熱体20は、両端部分のそれぞれにより図示されない電極と電気的接続がなされて、本実施の形態の別の一例であるヒータを構成する。
【0047】
発熱体20では、図3(b)に示すように、断面がコの字型の形状を有するように構成され、強度を確保できる形状を有している。発熱体20を構成する発熱体部材2の構成材料については、上述したように、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料、およびSiC材よりなる群から選ばれる材料とすることが可能である。このような面状発熱体を構成する発熱体20を有する本実施の形態のヒータは、成膜装置に適用されて、ウェハの加熱に好適なヒータとなる。
【0048】
図3(a)および図3(b)に示す発熱体20では、中央の開口部を挟んで対向する部分同士の他、コの字形状を有する発熱体部材2の上部面Sから1つの面が構成されており、発熱体20全体として1つの上面が構成されている。したがって、発熱体20を有する本実施の形態のヒータは、成膜装置に適用されて、ウェハと発熱体20との間の距離を容易かつ高精度に定めることが可能となる。
【0049】
さらに、上述のように、発熱体20では、断面がコの字形状を有しており、強度を確保できる形状を有する。したがって、成膜装置に適用されて、発熱体20の上面をウェハの裏面と対向するようにしてウェハの下方に配置することができる。そうして、本実施の形態の別の一例であるヒータでは、発熱体20における撓みの発生が低減され、変形の発生を抑えることができる。その結果、成膜装置内において所望条件でのウェハの加熱を実現するとともに、ウェハ裏面からの均一な加熱を可能とする。
【0050】
次に、本実施の形態のヒータを用いて構成された、本実施の形態の成膜装置について、図面を用いて説明する。
【0051】
<実施の形態2>
図4は、本実施の形態における枚葉式の成膜装置の模式的な断面図である。以下の説明では、SiC膜の成膜を例にとり、本実施の形態の成膜装置100の構造を説明する。そして、基板としてSiCウェハ101を用いる。但し、本実施の形態は、これらの例に限られるものではない。本実施の形態は、Si膜のエピタキシャル成長等に適用することも可能である。そして、基板についても、場合に応じて、シリコンウェハなど他の材料からなるウェハを用いることが可能である。
【0052】
成膜装置100は、成膜室としてのチャンバ103を有する。
【0053】
チャンバ103の上部には、加熱されたSiCウェハ101の表面に結晶膜を成膜するための原料ガスを供給するガス供給部123が設けられている。また、ガス供給部123には、原料ガスの吐出孔が多数形成されたシャワープレート124が接続している。シャワープレート124をSiCウェハ101の表面と対向して配置することにより、SiCウェハ101の表面に原料ガスを供給できる。
【0054】
原料ガスとしては、SiH(モノシラン)およびC(プロパン)を用いることができ、キャリアガスとしての水素ガスと混合した状態で、ガス供給部123からチャンバ103の内部に導入する。尚、SiHに代えて、SiH(ジシラン)、SiHCl(モノクロロシラン)、SiHCl(ジクロロシラン)、SiHCl(トリクロロシラン)、SiCl(テトラクロロシラン)などを用いてもよい。
【0055】
チャンバ103の下部には、反応後の原料ガスを排気するガス排気部125が複数設けられている。ガス排気部125は、調整弁126および真空ポンプ127からなる排気機構128に接続されている。排気機構128は、図示しない制御機構により制御されてチャンバ103内を所定の圧力に調整する。
【0056】
チャンバ103の内部には、サセプタ102が、回転部104の上に設けられている。サセプタ102は、SiCウェハ101の外周部を支持する第1のサセプタ部102aと、第1のサセプタ部102aの開口部分に密嵌される第2のサセプタ部102bとからなる。第1のサセプタ部102aと第2のサセプタ部102bは、高温下にさらされることから、例えば、高純度のSiCを用いて構成される。
【0057】
サセプタ102は、第1のサセプタ部102aと第2のサセプタ部102bとが一体化されたものであってもよい。また、サセプタ102は、第2のサセプタ部102bがなく第1のサセプタ部102aのみから構成されていてもよい。但し、ヒータ11や回転部104で発生した汚染物質によってSiCウェハ101が汚染されるのを防ぐ点から、第2のサセプタ部102bを設ける構成とすることが好ましい。
【0058】
回転部104は、回転胴104aと、回転ベース104bと、回転軸104cとを有している。サセプタ102を支持する回転胴104aは、回転ベース104bの上に固定されている。回転胴104aは、本発明の支持部に対応していて、上部にサセプタ102を、内部にヒータ11をそれぞれ配置する。また、回転ベース104bは、ネジ106によって回転軸104cに接続している。
【0059】
回転軸104cは、チャンバ103の外部まで延設されており、図示しない回転機構に接続している。回転軸104cが回転することにより、回転ベース104bおよび回転胴104aを介してサセプタ102を回転させることができ、ひいてはサセプタ102に支持されたSiCウェハ101を回転させることができる。成膜時にSiCウェハ101を回転させることで、均一な厚みの膜を形成できる。回転胴104aは、SiCウェハ101の中心を通り、且つ、SiCウェハ101に直交する線を軸として回転することが好ましい。
【0060】
図4において、回転胴104aは、上部が解放された構造であるが、サセプタ102が設けられることにより、上部が覆われて中空領域(以下、P領域と称す。)を形成する。尚、第2のサセプタ部102bがない場合には、SiCウェハ101が第1のサセプタ部102aで支持されることでP領域が形成される。ここで、チャンバ103内をP領域とすると、P領域は、サセプタ102によって実質的にP領域と隔てられた領域となる。
【0061】
領域には、SiCウェハ101を裏面から加熱するヒータ11が設けられている。ヒータ11は、面状発熱体である上述した第1の実施形態の発熱体10と電極122とを有する。ヒータ11において、発熱体10は、アーム状のブースバー121によって支持されている。ブースバー121は、発熱体10を支持する側とは反対の側の端部で電極122に接続している。すなわち、ヒータ11では、発熱体10と電極122とが、発熱体10を支持するブースバー121を介して、電気的に接続している。
【0062】
発熱体10を構成する材料については、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料、およびSiC材からなる群より選ばれた材料とすることが可能である。本実施の形態では、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料、あるいはSiC材を選択することが好ましい。
【0063】
ヒータ11の発熱体10では、図1に示した発熱体部材2を基本構造として、断面がコの字形状を有しており、強度を確保できる形状を有する。したがって、ヒータ11では、発熱体10が成膜装置100内でSiCウェハ101の下方に配置されて使用されても、発熱体10の撓みの発生が低減され、変形の発生は抑えられている。そして、ヒータ11は、成膜装置100において所望条件でのSiCウェハ101の加熱を実現するとともに、SiCウェハ101の裏面からの均一な加熱を可能とする。
【0064】
発熱体10を支持するブースバー121は、導電性の高耐熱性部材、例えば、SiCをコートしたカーボン材からなる。電極122はMo(モリブデン)製である。これにより、ヒータ11では、ヒータ支持部であるブースバー121を介して、電極122から発熱体10への給電が可能となっている。具体的には、電極122から発熱体10に通電がなされて発熱体10が発熱し、昇温する。
【0065】
加熱により変化するSiCウェハ101の表面温度は、チャンバ103の上部に設けられた放射温度計140によって計測される。放射温度計140は、本発明における温度測定部を構成する。尚、シャワープレート124を透明石英製とすることによって、放射温度計140による温度測定がシャワープレート124で妨げられないようにすることができる。計測した温度データは、図示しない制御機構に送られた後、ヒータ11の出力制御にフィードバックされる。これにより、SiCウェハ101を所望の温度となるように加熱できる。
【0066】
次に、本実施の形態では、インヒータとアウトヒータの2種類のヒータによってSiCウェハ101を加熱する構成としてもよい。この場合、アウトヒータは、サセプタ102の周縁部を主に加熱するようにし、インヒータは、アウトヒータの下部に配置されて、サセプタ102の周縁部以外を主に加熱するようにすることができる。
【0067】
図5は、本実施の形態の成膜装置の別の例の構造を説明する模式的な断面図である。
【0068】
図5に示す本実施の形態の別の例である成膜装置200は、インヒータとアウトヒータの2種類のヒータによってSiCウェハ101を加熱する構成を有する。そして、インヒータとしては、図4に示した成膜装置100と同様の、本実施の形態のヒータ11を使用することができる。アウトヒータとしては、面状発熱体である図3の第1の実施の形態の発熱体20を有するヒータ21を使用することができる。成膜装置200のその他の主要な構造については、上述した成膜装置100と同様とすることができる。
【0069】
ヒータ21は、発熱体20の形状が異なる以外、上述したヒータ11と同様の構造を備えており、面状発熱体である発熱体20は、発熱体20を支持するブースバー(図示されない)を介して、電極122と電気的に接続している。ヒータ21の発熱体20を構成する材料については、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料、およびSiC材からなる群より選ばれた材料とすることが可能である。本実施の形態では、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料、あるいはSiC材を選択することが好ましい。
【0070】
以上の構成を有することにより、成膜装置200は、SiCウェハ101を、裏面から、より均一に加熱できるため、SiCウェハ101の温度分布の均一性が向上する。そして、ヒータ11およびヒータ21は、それぞれの発熱体10および発熱体20が、いずれも断面がコの字形状の発熱体部材2を基本構造としており、強度を確保できる形状を有する。したがって、ヒータ11およびヒータ21では、発熱体10および発熱体20が成膜装置200内で、SiCウェハ101の下方に配置されて使用されても、それらの撓みの発生が低減され、変形の発生は抑えられている。その結果、成膜装置200において所望とする条件でのSiCウェハ101の加熱を維持することができる。
【0071】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0072】
上記実施の形態では、成膜室内に載置されるウェハを回転させながら成膜処理を行う例について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。本発明の成膜装置は、ウェハを回転させないで成膜してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態では、成膜装置の一例としてエピタキシャル成長装置を挙げたが、本発明はこれに限られるものではない。成膜室内に反応ガスを供給し、ウェハを加熱しながらその表面に膜を形成する成膜装置であれば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置などの他の成膜装置であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1、10、20、1000 発熱体
2、1001 発熱体部材
11、21 ヒータ
100、200 成膜装置
101 SiCウェハ
102 サセプタ
102a 第1のサセプタ部
102b 第2のサセプタ部
103 チャンバ
104 回転部
104a 回転胴
104b 回転ベース
104c 回転軸
106 ネジ
121 ブースバー
122 電極
123 ガス供給部
124 シャワープレート
125 ガス排気部
126 調整弁
127 真空ポンプ
128 排気機構
140 放射温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状発熱体と、
前記面状発熱体に電気的に接続する電極とを有するヒータであって、
前記面状発熱体は、断面がコの字形状の発熱体部材が組み合わされた構造または断面がコの字形状の発熱体部材が長手方向に曲げられた構造の環状または円盤状であることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記面状発熱体の発熱体部材は、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料およびSiC材よりなる群から選ばれる材料を用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記面状発熱体の発熱体部材は、短手方向の幅aと側縁部の厚さXの比(a/X)が3〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
成膜室と、
前記成膜室内に載置される基板を加熱するヒータとを備えた成膜装置であって、
前記ヒータは、面状発熱体と、前記面状発熱体に電気的に接続する電極とを有し、
前記面状発熱体は、断面がコの字形状の発熱体部材が組み合わされた構造または断面がコの字形状の発熱体部材が長手方向に曲げられた構造の環状または円盤状であることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
前記面状発熱体の発熱体部材は、カーボン材、カーボン材またはSiC材にSiCをコートした材料およびSiC材よりなる群から選ばれる材料を用いて構成されることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65792(P2013−65792A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204765(P2011−204765)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】