説明

ビルドアップ用樹脂組成物およびその用途

【課題】 耐熱性に優れ、かつ誘電損失が小さいフィルム状硬化物の製造に適したビルドアップ用樹脂組成物およびその用途を提供すること。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)熱可塑性樹脂および(D)充填材を含み、かつエポキシ樹脂硬化剤(B)が、下記式(1)で表されるものであるビルドアップ用樹脂組成物。該ビルドアップ用樹脂組成物および有機溶剤からなるワニス、該ワニスを用いて得られるビルドアップ用フィルム、該ワニスを用いて得られる樹脂付き銅箔、ならびに該ビルドアップ用樹脂組成物の硬化物の層を有するプリント配線基板。


(tは1または2を表し、rは1〜15を表す。複数のBは炭化水素置換もしくは未置換のベンゼン環またはナフタレン環を表す。R10〜R13は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ用樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気・電子機器の小型軽量化に伴い、プリント配線板の高密度化が進んでいる。この様なプリント配線板の一形態として、導電回路層と絶縁層とを交互に積層し、プリント配線板の表面のみならず、その内部にも導電回路を形成したビルドアッププリント配線板が知られている。このビルドアッププリント配線板の絶縁層はビルドアップ用フィルムと呼ばれる熱硬化性フィルムを硬化させたものからなるものが知られている。
このビルドアップ用フィルムに適したビルドアップ用樹脂組成物の一例に、エポキシ樹脂としてトリフェノールメタン骨格含有エポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック、熱可塑性樹脂としてポリエーテルサルホンおよび充填材としてシリカからなるビルドアップ用樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−72833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のビルドアップ用樹脂組成物は耐熱性に優れるものの、それから得られるフィルム状硬化物は誘電損失が十分小さくないという問題があった。本発明の目的は、耐熱性に優れ、かつ誘電損失が小さいフィルム状硬化物の製造に適したビルドアップ用樹脂組成物およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)熱可塑性樹脂および(D)充填材を含み、かつエポキシ樹脂硬化剤(B)が、下記式(1)で表されるものであるビルドアップ用樹脂組成物にかかるものであり、また本発明は、該ビルドアップ用樹脂組成物および有機溶剤からなるワニス、該ワニスを用いて得られるビルドアップ用フィルム、該ワニスを用いて得られる樹脂付き銅箔、ならびに該ビルドアップ用樹脂組成物の硬化物の層を有するプリント配線基板にかかるものである。

(式中、tは1または2を表し、rは1〜15の平均繰り返し数を表す。複数のBはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭化水素置換もしくは未置換のベンゼン環またはナフタレン環を表す。R10〜R13はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R10〜R13がそれぞれ複数存在する場合のそれらそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ誘電損失の小さいフィルム状硬化物の製造に適したビルドアップ用樹脂組成物およびその用途が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いられる(A)成分のエポキシ樹脂は、例えば、具体的にはフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック系樹脂類、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のビスフェノール系エポキシ樹脂類、トリスヒドロキシフェニルメタン系エポキシ樹脂類、テトラフェニルエタン系エポキシ樹脂類、アラルキル芳香族系エポキシ樹脂類、ジシクロペンタジエンフェノール系エポキシ樹脂類、芳香族ビスフェノール化合物および/またはポリフェノール化合物の水素添加化合物のエポキシ樹脂類、シクロヘキセンオキシド等の脂環式エポキシ樹脂類、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等の各種誘導体類等があげられる。エポキシ樹脂は一種もしくは二種以上を用いることができる。
本発明の(A)成分であるエポキシ樹脂としては、高耐熱性および低誘電損失の面からトリスヒドロキシフェニルメタン系エポキシ樹脂類、ビスフェノール系樹脂類、およびアラルキル芳香族系エポキシ樹脂類よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0007】
上記のトリスヒドロキシフェニルメタン系エポキシ樹脂類の具体例としては、例えば、下記式(2)で示されるエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0008】

(式中、nは1〜10の平均繰り返し数を表す。複数あるiはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、1〜4の整数値を示す。複数あるR1はそれぞれ同一であっても異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、iが2以上の場合、同一環上の複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Glyはグリシジル基を示す。)
【0009】
上記R1におけるアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、アラルキル基の炭素数は7〜10が好ましく、アリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
【0010】
上記のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐鎖、脂環式のアルキル基を挙げることができる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基等を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらのアラルキル基やアリール基にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の置換基が存在しても良い。
【0011】
1は、水素原子、メチル基およびtert−ブチル基からなる群より選ばれるものであれば好ましい。一般式(2)で表されるエポキシ樹脂の軟化点は、導体回路に対する埋め込み性確保、ガラス転移温度低下防止という観点から、軟化点が40〜100℃であることが好ましく、更に好ましくは50〜90℃である。
【0012】
また、上記のビスフェノール系樹脂類の具体例としては、例えば、下記式(3)で示されるエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0013】

(式中、qは0〜15の平均繰り返し数を表す。R6〜R9はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R6〜R9がそれぞれ複数存在する場合のそれらそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。Xは単結合を表すか、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基および炭素数5〜7のシクロアルキレン基からなる群から選ばれる一種の基または二種以上組み合わせてなる基を表す。Glyはグリシジル基を示す。)
【0014】
上記R6〜R9におけるアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、アラルキル基の炭素数は7〜10が好ましく、アリール基の炭素数は6〜10が好ましい。上記Xにおけるアルキレン基の炭素数は1〜4が好ましく、アリーレン基の炭素数は6〜10が好ましく、シクロアルキレン基の炭素数は5〜6が好ましい。
【0015】
上記のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐鎖、脂環式のアルキル基を挙げることができる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基等を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらのアラルキル基やアリール基にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の置換基が存在しても良い。
アルキレン基としては、例えば、メチレン、ジメチレン、イソプロピリデン基等の直鎖、分岐鎖の炭化水素基を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。これらのアリーレン基にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の置換基が存在しても良い。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等を挙げることができる。アルキレン基、アリーレン基およびシクロアルキレン基からなる群から二種以上組み合わせてなる基としては、アルキレン基−アリーレン基、アルキレン基−シクロアルキレン基、アルキレン基−アリーレン基−アルキレン基、アルキレン基−シクロアルキレン基−アルキレン基といった基が挙げられる。
【0016】
6〜R9は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であれば好ましい。またXは、単結合、メチレン基またはイソプロピリデン基が好ましい。式(3)で表されるエポキシ樹脂の平均繰返し数qは、導体回路に対する埋め込み性確保という観点から、q=0〜8であることが好ましく、更に好ましくはq=0〜4である。
【0017】
また、上記のアラルキル芳香族系エポキシ樹脂類の具体例としては、例えば、下記式(4)で示されるエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0018】

(式中、pは1または2を表し、mは1〜15の平均繰り返し数を表す。複数のAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭化水素置換もしくは未置換のベンゼン環またはナフタレン環を表す。R2〜R5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R2〜R5がそれぞれ複数存在する場合のそれらそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。Glyはグリシジル基を表す。)
【0019】
上記R2〜R5におけるアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、アラルキル基の炭素数は7〜10が好ましく、アリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
【0020】
上記のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐鎖、脂環式のアルキル基を挙げることができる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基等を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらのアラルキル基やアリール基にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の置換基が存在しても良い。
【0021】
複数のAはそれぞれ独立に、無置換のベンゼン環または無置換のナフタレン環が好ましく、特に好ましくは無置換のベンゼン環である。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基が好ましい。式(4)で表されるエポキシ樹脂の平均繰返し数mは、導体回路に対する埋め込み性確保という観点から、m=1〜8であることが好ましく、更に好ましくはm=1〜4である。
【0022】
本発明に用いられる(A)成分であるエポキシ樹脂の配合割合は、本発明の目的を達成するものであれば特に限定されないが、樹脂フィルム用樹脂成分に対して、通常1重量%以上、好ましくは、他の配合成分との関係に応じて1〜80重量%の範囲から適宜選択することができる。
【0023】
本発明に用いられるエポキシ樹脂硬化剤(B)は下記式(1)で表されるものである。

(式中、tは1または2を表し、rは1〜15の平均繰り返し数を表す。複数のBはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭化水素置換もしくは未置換のベンゼン環またはナフタレン環を表す。R10〜R13はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R10〜R13がそれぞれ複数存在する場合のそれらそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。)
【0024】
上記R10〜R13におけるアルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、アラルキル基の炭素数は7〜10が好ましく、アリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
【0025】
上記のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐鎖、脂環式のアルキル基を挙げることができる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基等を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらのアラルキル基やアリール基にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の置換基が存在しても良い。
【0026】
複数のBはそれぞれ独立に、無置換のベンゼン環または無置換のナフタレン環が好ましく、特に好ましくは無置換のベンゼン環である。R10〜R13は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基が好ましい。
【0027】
本発明で用いられるエポキシ樹脂硬化剤(B)としては下記式(5)で表されるフェノールビフェニルアラルキル型樹脂または式(6)で表されるフェノールフェニルアラルキル型樹脂がさらに好ましく、式(5)で表されるフェノールビフェニルアラルキル型樹脂が特に好ましい。

(sはそれぞれ独立に1〜15の平均繰り返し単位を表す。)
式(5)で表される硬化剤の軟化点は、導体回路に対する埋め込み性確保、ガラス転移温度低下防止という観点から、軟化点が60〜120℃であることが好ましく、更に好ましくは75〜110℃である。
【0028】
エポキシ樹脂硬化剤(B)の配合割合は、エポキシ樹脂との組み合せで任意の割合で使用することができるが、通常はガラス転移温度が高くなるようにその配合比が決定され、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量とエポキシ樹脂硬化剤(B)の水酸基当量が1:1になるように配合するのが好ましい。
【0029】
本発明に用いられる(C)成分である熱可塑性樹脂の例としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリカーボネート等のエンジニアプラスチック類、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド等のスーパーエンジニアプラスチック類、ポリエチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン類、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のポリアクリレート類、末端アミンおよび末端カルボキシル基変性ポリブタジエン−アクリロニトリルゴムおよびそれらの変性物等のゴム類等が挙げられる。この中でも強靭性や難燃性の観点からポリエーテルスルホンがさらに好ましい。
【0030】
上記のポリエーテルスルホンは、分子末端がハロゲン原子、アルコキシ基、フェノール性水酸基である公知のポリエーテルスルホンを用いることができる。中でも(A)成分との相溶性や反応性、そして硬化物の耐溶剤性の観点から両末端の両方がフェノール性水酸基であるポリエーテルスルホンが特に好ましい。
【0031】
ポリエーテルスルホンの使用量は、通常、本発明の樹脂組成物全体に対して、10〜70重量%である。この使用量が少なすぎると、硬化物の靭性が低下する恐れがあり、多すぎると、組成物の加工性が低下したり、硬化物の吸水率が上昇する恐れがある。
【0032】
ポリエーテルスルホンの製造方法としては、公知の方法を採用することができ、また、市販品の例としては、住友化学工業製、商品名:スミカエクセル、アモコ社製、商品名:REDEL、等が挙げられる。
【0033】
本発明に用いられる(D)成分である充填材の例としては、例えば、有機フィラーや無機フィラー等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えばエポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、グアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末等の樹脂粉末類を挙げることができる。また、無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の無機粉末類を挙げることができる。この中でも特に熱膨張率を低下させるためには無機フィラーが好ましく、無機フィラーの中でも誘電特性の観点からシリカが特に好ましい。
【0034】
本発明に用いられる(D)充填材は、通常はその最大粒径が0.1〜20μmの範囲内のものであるが、0.1〜5μmの範囲内であれば好ましく、さらに0.1〜1μmの範囲内のものであればなお好ましい。
【0035】
無機フィラーの含有割合は、通常、樹脂組成物全体に対して10〜80重量%である。この含有割合が少ないと、硬化物の低吸水性や低熱膨張率の効果が小さくなることがあり、一方、多いと、レーザー加工性が低下することがある。また、一般的なガラスクロス基材積層板と同等の低熱膨張率を達成するためには、シリカの場合、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
【0036】
また、本発明のビルドアップ用樹脂組成物には硬化触媒を配合することができる。この様な硬化触媒としては、具体的には、例えばトリフェニルホスフィン、トリ−4−メチルフェニルホスフィン、トリ−4−メトキシフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリ−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン化合物類およびこれらのテトラフェニルボレート塩類、トリブチルアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリアミルアミン等のアミン類、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート等の四級アンモニウム塩類、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。硬化触媒はこれらの例示に限定されるものではないが、本発明では有機ホスフィン化合物やイミダゾール類の使用が特に好ましい。
硬化触媒の配合割合は、所望のゲルタイムが得られるように任意の割合で増減することができる。通常、組成物のゲルタイムが80℃〜250℃の温度範囲で1分〜15分となるように配合するのが好ましく、本発明の樹脂組成物の成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計量に対して通常0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0037】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でエポキシ樹脂成分以外の熱硬化性樹脂を含有させてもよい。例えば、ビスフェノールAのシアネート等のシアネート樹脂類、ジアミノジフェニルメタンビスマレイミド等のビスマレイミド類、ジアミノジフェニルメタン等のジアミン類、ビスマレイミド類とジアミン類との付加重合物類、ビスフェノールAのビスビニルベンジルエーテル化物、ビスフェノールAのジプロパギルエーテル化物等のアルキニルエーテル類、レゾール樹脂類、ビニル基含有ポリオレフィン化合物等のポリオレフィン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
さらに、本発明のビルドアップ用樹脂組成物には、必要に応じて例えば、アクリレート類、メタクリレート類、スチレン類等を含有させることにより光硬化性を付与してもよい。
【0039】
加えて、本発明のビルドアップ用樹脂組成物には、必要に応じて、ブロモ含有ポリカーボネート、ブロモ含有ポリフェニレンオキサイド、ブロモ含有ポリアクリレート、ブロモ含有ポリスチレン等の有機系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、赤リン等の無機系難燃剤、ワックス類、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、シランカップリング剤等の表面処理剤等を含有させてもよい。
【0040】
本発明のビルドアップ用樹脂組成物は、その硬化物が耐熱性および低誘電損失性に優れることからビルドアップ工法用の絶縁材料に好適に用いられる。この様な絶縁材料としては、例えば、本発明のビルドアップ用樹脂組成物および有機溶剤とからなるワニス、このワニスを用いて得られるビルドアップ用フィルム、このワニスを用いて得られる樹脂付き銅箔等が挙げられる。
【0041】
上記のワニスは、本発明のビルドアップ用樹脂組成物を有機溶剤と混合することにより得られる。
有機溶剤としては、通常、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等が用いられる。
【0042】
また、上記のビルドアップ用フィルムは、ワニスをロールコーターやテーブルコーター等を使用してポリエチレンテレフタレート等のキャリアフィルム上に塗布し、有機溶剤を留去し、半硬化させることにより、キャリアフィルム付きビルドアップ用フィルムとして得られる。これからキャリアフィルムを剥がせばビルドアップ用フィルムが得られるが、キャリアフィルムが付いたまま、そのビルドアップ用フィルムの面を銅箔や、既に幾層か積層して回路を作製しつつあるビルドアッププリント配線板に宛てて圧着してからキャリアフィルムを剥がすといった使用法も可能である。
前記有機溶剤の留去、半硬化の条件は、使用するビルドアップ用樹脂組成物の各成分、溶媒の種類、使用量等に応じて適宜選択されるが、通常、60℃〜200℃、1分間〜30分間の範囲である。
【0043】
また、先の樹脂付き銅箔は、ワニスを銅箔上にテーブルコーター等を利用して塗布し、薄膜化させ、有機溶剤を留去し、半硬化させて得られるし、また前記のように、キャリアフィルム付きビルドアップ用フィルムのビルドアップ用フィルムの面を銅箔に宛てて圧着してからキャリアフィルムを剥がすといった方法でも得られる。
有機溶剤の留去、半硬化の条件は、使用するビルドアップ用樹脂組成物の各成分や溶媒の種類や使用量に応じて適宜選択されるが、通常、60℃〜200℃、1分間〜30分間の範囲である。
【0044】
ビルドアッププリント配線板の絶縁層は、上記のビルドアップ用フィルムや樹脂付き銅箔の樹脂を加熱硬化させることにより得られる。加熱硬化させる際の条件は、通常、60℃〜200℃、30分間〜5時間の範囲である。
【0045】
次に上記のビルドアップ用フィルム、樹脂付き銅箔等を用いてビルドアッププリント配線板を製造する方法について説明する。ビルドアッププリント配線板を製造する方法は、例えば次の方法がある。
【0046】
(i)ビルドアップ用フィルムをコア基板に貼合し、加熱硬化させてビルドアッププリント配線板の絶縁層を形成する。この後、レーザー加工、メッキプロセス等を経てバイア形成、配線層形成を行なってから、再度配線層上にビルドアップ用フィルムを貼合し、加熱硬化させる工程を繰り返すことにより、ビルドアッププリント配線板を製造する方法。
なおビルドアップ用フィルムをコア基板に貼合する条件は、0.1〜5hPaの減圧下、80〜150℃で0.05〜0.5MPa、10秒間〜2分間、真空ラミネートし、引き続き、常圧に戻して80〜150℃で0.5〜2MPa、20秒間〜2分間、加圧し平坦化する。その後、熱風オーブン中、100〜200℃、30分間〜5時間硬化させるのが通常である。
【0047】
(ii)コア基板上にワニスをロールコーターやテーブルコーター等を使用して塗布し、溶媒を留去した後、加熱硬化させ絶縁層を形成する。この後、レーザー加工、メッキプロセスを経てバイア形成、配線層形成を行なってから、配線層上にワニスを塗布し、加熱硬化させる工程を繰り返すことにより、ビルドアッププリント配線板を製造する方法。
【0048】
(iii)コア基板上に樹脂付き銅箔を真空ラミネーターあるいは真空プレスで貼合し、引き続き加熱硬化した後、銅箔をエッチングして回路形成を行ない、続けて樹脂付き銅箔を貼合、加熱硬化する工程を繰り返すことにより、ビルドアッププリント配線板を製造する方法。
なお、樹脂付き銅箔をコア基板にプレス貼合および硬化する条件は、通常、1〜10kPaの減圧下、80〜250℃の範囲で選択される所定温度まで1〜5℃/分で昇温し、所定温度に到達した段階で、1MPa〜10MPaで加圧成型する。引き続き、減圧および加圧下に20分間〜300分間硬化させるのが通常である。
【0049】
上記の方法で得られるビルドアッププリント配線板用の絶縁層の厚みは通常、10〜300μmの範囲である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0051】
実施例で使用した(A)〜(D)の各成分は次の通りである。
成分(A)エポキシ樹脂
A1:EPPN 502H
(日本化薬製 エポキシ樹脂、エポキシ当量=169g/eq、式(1)に該当)
A2:エポトート YD−128M
(東都化成製 エポキシ樹脂、エポキシ当量=185g/eq、式(2)に該当)
A3:エピクロン 830S
(大日本インキ化学工業製 エポキシ樹脂、エポキシ当量=170g/eq、式(2)に該当)
A4:NC−3000
(日本化薬製 エポキシ樹脂、エポキシ当量=275g/eq、式(3)に該当)
【0052】
成分(B)フェノール樹脂系硬化剤
B1:フェノールビフェニルアラルキル型樹脂
(明和化成製 MEH7851−M、水酸基当量=209g/eq、式(5)に該当)
B2:フェノールビフェニルアラルキル型樹脂
(明和化成製 MEH7851−H、水酸基当量=216g/eq、式(5)に該当)
B3:フェノールビフェニルアラルキル型樹脂
(明和化成製 MEH7851−3H、水酸基当量=230g/eq、式(5)に該当)
B4:フェノールフェニルアラルキル型樹脂
(明和化成製 MEH7800−4S、水酸基当量=169g/eq、式(6)に該当)
B5:フェノールノボラック樹脂
(明和化成製 H−4、水酸基当量=105g/eq;下式に該当)

B6:クレゾールノボラック樹脂
(大日本インキ化学工業製 KA−1160、水酸基当量=110g/eq;下式に該当)

B7:液状ポリブタジエンのフェノール変性物
(新日本石油化学製 PP−700−300S、水酸基当量=317g/eq)
【0053】
成分(C)ポリエーテルスルホン
C1:末端フェノール性水酸基型ポリエーテルスルホン
(住友化学製 スミカエクセル PES 5003P)
【0054】
成分(D)無機フィラー
D1:球状シリカ
(電気化学製 SFP−20X)
【0055】
表1に記載の各成分および有機溶剤を表1に記載の組成(重量部)で混合、分散し、ビルドアップ用樹脂組成物を有機溶剤との混合物(ワニス)として得た。
【0056】
(1)ビルドアップ用フィルムの製造例
得られたワニスをフィルムコーター(テスター産業株式会社製 PI−1210)で50μmのPETフィルム(東レ株式会社製 ルミラー)上に、塗布厚みが約130μmとなるように塗布した。引き続き、80℃のオーブンで15〜30分乾燥し、ドライフィルムを得た。乾燥後の塗膜厚みは40〜60μmであった。200℃、60分の熱処理条件で測定した塗膜の不揮発分は92〜98%であった。
【0057】
(2)誘電損失の測定方法
得られたワニスをフィルムコーターでガラス板上に、塗布厚み80μm程度となるよう塗布した。このガラス板を160℃の真空オーブン中で15分間硬化および真空乾燥させ、半硬化物を作製した。得られた半硬化物をガラス板から剥離し、さらに180℃で10分間加圧成型し、錠剤状(厚さ:約1mm)の試験片を得た。得られた試験片を250℃/30分アニールし、錠剤の両面を平滑に研磨した。23℃、50%RHにおいてアジレント株式会社製 インピーダンスアナライザーにより1GHzでの誘電損失(tanδ)を測定した。また、誘電損失の逆数をQ値と定義し、tanδおよびQ値を表1にまとめた。
【0058】
(3)ガラス転移温度の測定方法
PETフィルムをポリイミドフィルム(宇部興産製 ユーピレックス50S)に変更する以外は、ビルドアップ用フィルム製造例と同様にしてビルドアップ用フィルムを得た。引き続き180℃で2時間熱処理した後、セイコーインスツルメント製 熱分析装置TMA−120を用い、引張モードでセカンド・スキャンにおける測定データからJIS C 6481に準拠しガラス転移温度を求めた。尚、昇温条件は23℃から200℃まで20℃/分で昇温した後(ファースト・スキャン)、引き続き、45℃まで冷却し5℃/分で255℃まで昇温した(セカンド・スキャン)。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の樹脂組成物は溶融粘度が適当でビルドアップ加工性に優れ、保存安定性にも優れるので、ビルドアップ用として優れている。また、ビルドアップ用途に加え、絶縁材料、複合材料、接着剤材料、塗料材料等に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)熱可塑性樹脂および(D)充填材を含み、かつエポキシ樹脂硬化剤(B)が、下記式(1)で表されるものであるビルドアップ用樹脂組成物。

(式中、tは1または2を表し、rは1〜15の平均繰り返し数を表す。複数のBはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭化水素置換もしくは未置換のベンゼン環またはナフタレン環を表す。R10〜R13はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表し、R10〜R13がそれぞれ複数存在する場合のそれらそれぞれは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)において、Bが無置換のベンゼン環または無置換のナフタレン環であり、R10〜R13がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である請求項1記載のビルドアップ用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のビルドアップ用樹脂組成物および有機溶剤からなるワニス。
【請求項4】
請求項3のワニスを用いて得られるビルドアップ用フィルム。
【請求項5】
請求項3のワニスを用いて得られる樹脂付き銅箔。
【請求項6】
請求項1または2記載のビルドアップ用樹脂組成物の硬化物の層を有するプリント配線基板。

【公開番号】特開2006−89595(P2006−89595A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276789(P2004−276789)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】