説明

ビーム照射装置

【課題】消費電力の抑制と半導体レーザの長寿命化を図りつつ、レーザ光の照射位置を円滑にモニタできるビーム照射装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ100は、パルス発光間の期間において、レーザ発振閾値以下の電流にて自然放出光を発光する。自然放出光は、ビームスプリッタ400によって分離され、PSD600に受光される。PSD600からの出力電流は、I/V変換回路60にて電圧信号に変換される。PSD信号処理回路70は、この電圧信号をもとに、PSD受光面上における分離光の受光位置に応じた位置電圧信号を出力する。ADC80は、自然放出光の発光期間にて位置電圧信号をサンプリングし、サンプル値をDSP10に出力する。DSP10は、このサンプル値に基づいて、各パルス発光タイミングにおけるレーザ光の照射位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム照射装置に関し、たとえば、車間検出器や距離検出器等に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を用いて前方車両との距離等を検出する検出器が家庭用乗用車等に搭載されている。この検出器には、前方空間にレーザ光を照射するためのビーム照射装置が配備されている。
【0003】
ここで、レーザ光は、たとえば、ビーム走査用レンズをレーザ光軸に垂直な方向に変位させることにより、目標領域内において、水平方向および垂直方向にスキャンされる(特許文献1)。この他、ポリゴンミラーを用いてレーザ光をスキャンさせることもできる。
【0004】
ところが、これらのスキャン機構では、使用環境や経年変化等のために、ビーム照射位置が所期の目標位置からずれるとの問題が起こり得る。かかる問題を解消するため、ビーム照射装置には、目標領域内におけるビームの照射位置をモニタするための構成が必要となる。
【0005】
ビーム照射位置をモニタするための構成として、出願人は、先に、特許文献2に記載の発明を提案している。この発明では、目標領域に照射されるレーザ光の一部が分離され、分離されたレーザ光がPSD(Position Sensitive Detector)によって受光される。そして、PSDからの検出信号をもとに、目標領域上におけるレーザ光の照射位置がモニタされる。
【特許文献1】特開平11−83988号公報
【特許文献2】特願2004−348989号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のビーム照射装置では、スキャン軌道上の予め設定された位置(目標位置)において、レーザ光が目標領域に向けて照射される。つまり、目標位置に応じたタイミングにて、レーザ光がパルス状に発光される。
【0007】
ところが、レーザ光のパルス発光期間は、通常、極めて微小(数10nsec程度)に設定される。このため、パルス発光期間にタイミング合わせしつつ、上述の照射位置の検出処理を行うのは極めて困難である。したがって、通常は、パルス発光期間以外の期間を利用して照射位置の検出処理が行われる。
【0008】
この場合、パルス発光期間以外の期間にもレーザ光を発光させ、そのときにPSDにて検出される検出信号をもとに、照射位置の検出処理を行うよう構成することができる。しかし、こうすると、レーザ光が常時発光されることとなり、消費電力が大きくなってしまう。また、このようにレーザ光を常時発光させると、半導体レーザの寿命が短くなるとの問題も生じる。
【0009】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、消費電力の抑制と半導体レーザの長寿命化を図りつつ、レーザ光の照射位置を円滑にモニタできるビーム照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み本発明は、それぞれ以下の特徴を有する。
【0011】
請求項1の発明は、目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置において、レーザ光を出射する光源と、所定間隔にてパルス光を発光するとともに前記パルス光間の所定期間においてレーザ発振閾値以下の電流にて自然放出光を発光するよう前記光源を駆動するレーザ駆動回路と、前記レーザ光の一部を分離する光学素子と、前記光学素子によって分離されたレーザ光を受光して受光位置に応じた信号を出力する受光素子と、前記自然放出光の発光期間に前記受光素子から出力される信号に基づいて前記目標領域におけるレーザ光の照射位置を検出する検出回路を有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、パルス発光間に発光される自然放出光を用いてレーザ光の照射位置が検出されるため、レーザ光を常時発光させる場合に比べ、レーザ出力による消費電力を大幅に削減することができる。また、このようにパルス発光と自然放出光による発光を組み合わせることにより、常時発光する場合に比べ、光源の寿命を長期化させることができる。さらに、本発明によれば、パルス発光間の期間を利用してレーザ光の照射位置の検出が行われるため、パルス発光期間が極めて微小であっても、円滑に、照射位置の検出処理を行うことができる。
【0013】
このように、本発明によれば、消費電力の抑制と半導体レーザの長寿命化を図りつつ、レーザ光の照射位置を円滑にモニタできるビーム照射装置を提供することができる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のビーム照射装置において、前記レーザ駆動回路は、前記パルス発光間の全期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動することを特徴とする。この発明によれば、パルス発光間の全期間において自然放出光が発光されるため、自然放出光を用いた照射位置検出処理タイミングに、余裕を持たせることができる。よって、ビーム照射装置全体の処理制御を、流れよく行うことができる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1に記載のビーム照射装置において、前記レーザ駆動回路は、前記パルス発光間の期間のうち一部の期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動することを特徴とする。この発明によれば、パルス発光間の期間のうち一部の期間において自然放出光が発光されるため、パルス発光間の全期間において自然放出光が発光される場合に比べ、自然放出光の発光による消費電力をさらに削減することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れか一項に記載のビーム照射装置において、前記レーザ駆動回路は、一連の前記パルス発光のうち所定のパルス発光間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動することを特徴とする。この発明によれば、全てのパルス発光間の期間において自然放出光を発光する場合に比べ、自然放出光の発光による消費電力をさらに削減することができる。また、全てのパルス発光間の期間において照射位置の検出処理を行う場合に比べ、当該検出処理の頻度が低下するため、検出回路の処理負担を軽減することができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れか一項に記載のビーム照射装置において、前記レーザ駆動回路は、前記目標領域のうち、特定領域において前記パルス光と前記自然放出光を発光し、前記特定領域以外の非特定領域において前記自然放出光のみを発光するよう前記光源を駆動することを特徴とする。この発明によれば、パルス発光の頻度を抑制できるため、レーザ出力による消費電力の削減と、光源の寿命の長期化をさらに進めることができる。
【0018】
なお、特定領域とは、たとえば、目標領域のうち、障害物検出や距離測定の対象となっている領域を意味する。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5に記載のビーム照射装置において、前記レーザ駆動回路は、前記非特定領域に対応する全期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動することを特徴とする。この発明によれば、非特定領域におけるレーザ光の照射位置検出を、任意のタイミングにて行うことができる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項5に記載のビーム照射装置において、前記レーザ駆動回路は、前記非特定領域に対応する期間のうち一部の期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動することを特徴とする。この発明によれば、非特定領域に対応する期間の全てにおいて自然放出光を発光する場合に比べ、自然放出光の発光による消費電力をさらに削減することができる。
【0021】
請求項8の発明は、請求項7に記載のビーム照射装置において、前記レーザ駆動回路は、前記非特定領域に対応する期間において前記自然放出光を所定間隔にて発光するよう前記光源を駆動することを特徴とする。
【0022】
なお、上記発明における「光源」は、以下の実施形態において、半導体レーザ100が対応する。また、上記発明における「レーザ駆動回路」は、以下の実施形態において、レーザ駆動回路30およびDSP10が対応する。また、上記発明における「光学素子」は、以下の実施形態において、ビームスプリッタ400が対応する。また、上記発明における「受光素子」は、以下の実施形態において、PSD600が対応する。また、上記発明における「検出回路」は、以下の実施形態において、PSD信号処理回路70、ADC80およびDSP10が対応する。
【0023】
ただし、以下の実施形態は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、本発明によれば、消費電力の抑制と半導体レーザの長寿命化を図りつつ、レーザ光の照射位置を円滑にモニタできるビーム照射装置を提供することができる。
【0025】
本発明の特徴ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、例示であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に、実施の形態に係るビーム照射装置の構成を示す。
【0027】
図示の如く、ビーム照射装置は、DSP(Digital Signal Processor)10と、DAC(Digital Analog Converter)20と、レーザ駆動回路30と、アクチュエータ駆動回路40と、ビーム照射ヘッド50と、I/V(電流/電圧)変換回路60と、PSD信号処理回路70と、ADC(Analog Digital Converter)80を備えている。
【0028】
DSP10は、レーザ駆動回路30に制御信号を出力する。ここで、レーザ駆動回路30に供給される制御信号は、半導体レーザ100にパルス発光を行わせるための制御信号(パルス発光用制御信号)と、半導体レーザ100にレーザ発振閾値以下の電流にて自然放出光を発光させるための制御信号(微弱発光用制御信号)の2種類からなっている(以下、自然放出光の発光のことを「微弱発光」と称する)。
【0029】
また、DSP10は、アクチュエータ駆動回路40を駆動制御する信号をDAC20に出力する。さらに、DSP10は、ADC80にサンプリング信号(後述)を供給するとともに、ADC80から入力された信号(位置電圧値)をもとに、目標領域におけるレーザ光の照射位置を検出する。なお、照射位置の検出処理については、追って、詳述する。
【0030】
DAC20は、DSP10から入力された制御信号をアナログ信号に変換してアクチュエータ駆動回路40に出力する。
【0031】
レーザ駆動回路30は、DSP10から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内の半導体レーザ100を駆動する。すなわち、パルス発光用制御信号の入力に応じて半導体レーザ100にパルス発光を行わせ、微弱発光用制御信号の入力に応じて半導体レーザ100に微弱発光を行わせる。
【0032】
アクチュエータ駆動回路40は、DAC20から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内のレンズアクチュエータ300を駆動する。
【0033】
ビーム照射ヘッド50は、前方空間に設定された目標領域にレーザ光をスキャンさせる。図示の如く、ビーム照射ヘッド50は、半導体レーザ100と、アパーチャ200と、レンズアクチュエータ300と、ビームスプリッタ400と、集光レンズ500と、PSD600を備えている。
【0034】
半導体レーザ100から出射されたレーザ光は、アパーチャ200によって所望の形状に整形された後、レンズアクチュエータ300に支持された照射レンズに入射される。ここで、照射レンズは、同図のY−Z平面方向に変位可能となるよう、レンズアクチュエータ300に支持されている。したがって、照射レンズを通過したレーザ光は、レンズアクチュエータ300の駆動に応じて、Y−Z平面方向に出射角度が変化する。これにより、目標領域におけるレーザ光のスキャンが行われる。
【0035】
照射レンズを通過したレーザ光は、ビームスプリッタ400によってその一部が反射され、目標領域に照射されるレーザ光(以下、「照射レーザ光」という)から分離される。分離されたレーザ光(以下、「分離光」という)は、集光レンズ500を通してPSD600上に収束される。
【0036】
なお、半導体レーザ100からレーザ発振閾値以下の電流にて自然放出光が発光された場合にも、その分離光が、集光レンズ500を通してPSD600上に収束される。この場合、PSD600に収束される分離光の強度は、半導体レーザ100がレーザ発振される場合に比べて小さい。しかし、この場合にも、PSD600からは、分離光の収束位置を検出できる程度の電流が出力される。
【0037】
PSD600は、図1のX−Y平面に平行な受光面を有しており、この受光面上における分離光の収束位置に応じた電流を出力する。ここで、受光面上における分離光の収束位置と目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置は一対一に対応している。よって、PSD600から出力される電流は、目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置に対応するものとなっている。なお、PSD600の構成および電流の出力動作については、図4、図5を参照しながら追って詳述する。
【0038】
PSD600からの出力電流は、I/V変換回路60によって電圧信号に変換されPSD信号処理回路70に入力される。
【0039】
PSD信号処理回路70は、I/V変換回路60から入力された信号から分離光の収束位置を表す電圧信号(位置電圧)を生成し、これをADC80に出力する。ADC80は、PSD信号処理回路70から入力された電圧信号を、DSP10から供給されるサンプリング信号に応じてサンプリングし、サンプル値をデジタル信号に変換して、これをDSP10に出力する。DSP10は、ADC80から入力されたデジタル信号をもとに、受光面上における分離光の収束位置を検出する。
【0040】
図2にレンズアクチュエータの構成例を示す。
【0041】
照射レンズ301は、レンズホルダー302中央の開口に装着される。レンズホルダー302には、4つの側面にそれぞれコイルが装着されており、各コイル内にヨーク303中央の突出部が図示矢印のように挿入される。各ヨーク303は、両側の舌片が一対のヨーク固定部材305の凹部に嵌入される。さらに、それぞれのヨーク固定部材305に、ヨーク303の舌片を挟むようにして磁石304が固着される。この状態にて、ヨーク固定部材305が磁石304とともにベース(図示せず)に装着される。
【0042】
さらに、ベースには一対のワイヤー固定部材306が装着されており、このワイヤー固定部材306にワイヤー307を介してレンズホルダー302が弾性支持される。レンズホルダー302には四隅にワイヤー307を嵌入するための孔が設けられている。この孔にそれぞれワイヤー307を嵌入した後、ワイヤー307の両端をワイヤー固定部材306に固着する。これにより、レンズホルダー302がワイヤー307を介してワイヤー固定部材306に弾性支持される。
【0043】
駆動時には、レンズホルダー302に装着されている各コイルに、上記アクチュエータ駆動回路40から駆動信号が供給される。これにより、電磁駆動力が発生し、照射レンズ301がレンズホルダー302とともに2次元駆動される。
【0044】
図3は、レンズアクチュエータ300を駆動して照射レンズ301を一方向に変位させたときの、照射レーザ光の出射角度とPSD受光面上における分離光(同図ではモニター光)の収束位置の関係(シミュレーション)を示すものである。同図に示す如く、分離光の変位量は照射レーザ光の出射角度に比例して増加する。なお、同図の特性にうねりが生じているのは、照射レンズを2次元駆動することによって、PSD受光面上の分離光に収差が生じるためである。
【0045】
図4に、PSD600の構造を示す。なお、同図は、図1において、PSD600をY軸方向から見たときの構造を示すものである。
【0046】
図示の如く、PSD600は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、図1のX方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、図1のY方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0047】
受光面に分離光が収束されると、収束位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、分離光の収束位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における収束位置を検出することができる。
【0048】
図5(a)は、PSD600の有効受光面を示す図である。また、図5(b)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流をもとにPSD信号処理回路70にて生成される位置検出電圧と、有効受光面上における分離光の収束位置の関係を示す図である。なお、図5(a)では有効受光面を正方形としている。また、図5(b)では、有効受光面のセンター位置を基準位置(0位置)として、基準位置に対する収束位置のX方向およびY方向の変位量と出力電圧の関係を示している。
【0049】
上記I/V変換回路60は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流を、それぞれ電圧VX1、VX2、VY1、VY2に変換する。PSD信号処理回路70は、電圧VX1とVX2の比率から、X方向における分離光の収束位置に応じた位置検出電圧Xoutを生成するとともに、電圧VY1とVY2の比率から、Y方向における分離光の収束位置に応じた位置検出電圧Youtを生成する。そして、生成した位置検出電圧Xout、Youtを、ADC80に出力する。
【0050】
ADC80は、位置検出電圧Xout、Youtを、DSP10からのサンプリング信号をもとにサンプリングする。そして、サンプル値をデジタル信号に変換し、これをDSP10に出力する。DSP10は、入力された電圧XoutとYoutから収束位置のX方向変位量とY方向変位量を検出する。
【0051】
図6は、半導体レーザ100の発光タイミングとADC80におけるサンプリングタイミングの関係を示すものである。
【0052】
なお、同図(a)には、障害物検出や距離検出等に用いるパルス光(測定用パルス)の間の全期間において、微弱発光が行われる場合のレーザ出力が示されている。また、同図(b)には、パルス光(測定用パルス)間の一部の期間において、微弱発光が行われる場合のレーザ出力が示されている。同図(c)には、ADC80に入力されるサンプリング信号が示されている。
【0053】
同図(c)に示す如く、ADC80におけるサンプリングタイミングは、一つのパルス発光から次のパルス発光までの期間の略中間に設定されている。このタイミングにおいて、PSD信号処理回路70からの位置電圧信号Xout、Youtは、同図(a)(b)何れの場合においても、微弱発光に応じたものとなっている。DSP10は、この位置電圧信号Xout、Youtをもとに、分離光の収束位置の検出処理を行う。なお、位置電圧信号のサンプリングタイミングは、微弱発光に応じた位置電圧信号が安定している期間内において適宜設定され得る。
【0054】
なお、本実施の形態では、分離光の収束位置をもとに照射レーザ光の照射位置が検出される。そして、この検出結果に基づいて、照射レーザ光の照射位置にサーボを掛けるよう、DSP10からアクチュエータ駆動回路40に制御信号が出力される。具体的には、DSP10は、PSD受光面上における分離光の収束位置を随時モニタし、照射レーザ光の照射位置が所期のスキャン軌道に沿うよう、アクチュエータ300にサーボ信号を出力する。
【0055】
図7は、有効受光面上における分離光のスポット軌道の一例を示すものである。この場合、DSP10は、分離光の収束位置を目標軌道に引き込むよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。
【0056】
今、所定のパルス発光タイミングにおける分離光の収束位置がP(x,y)にあり、このとき、目標軌道上にあるべき収束位置がP’(x',y')であるとする。ここで、目標軌道上の収束位置P’(x',y')は、DSP10内に設定された軌道テーブルから取得される。具体的には、照射レーザ光のスキャン位置に対応する収束位置が軌道テーブルから取得される。
【0057】
このとき、DSP10は、P(x,y)とP’(x',y')をもとに、Ex=x−x’とEy=y−y’を演算し、演算結果をもとに、Ex=0、Ey=0になるよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。これにより、照射レーザ光のスキャン位置は、当該タイミングにおいてスキャン軌道上にあるべきスキャン位置の方向に引き戻される。これに応じて、分離光の収束位置も、当該タイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')の方向に引き込まれる。かかるサーボ動作によって、照射レーザ光は所期のスキャン軌道に追従するようスキャンされる。
【0058】
なお、図6に示す例では、全てのパルス発光間において微弱発光が行われ、レーザ光の照射位置の検出が行われる。このように全てのパルス発光間においてレーザ光の照射位置検出を行うようにするとたとえば、図7に示すスキャンサーボをより安定に行うことができる。
【0059】
図8は、微弱発光タイミングとサンプリングタイミングの変更例である。
【0060】
この例では、一連のパルス発光間期間のうち一つ飛ばし毎に微弱発光が行われ、レーザ光の照射位置検出が行われる。この場合には、上記図6の例に比べ、照射レーザ光の位置検出頻度が低下する。このため、たとえば、図7に示すサーボ動作がやや不安定となる。しかし、その反面、位置検出処理の実行間隔が長くなるため、DSP10の処理負担が軽減される。なお、この例では、一連のパルス発光間期間のうち一つ飛ばし毎に微弱発光を行うようにしたが、パルス発光間の期間を2つ以上飛ばしながら微弱発光を行うようにすることもできる。あるいは、一連のパルス発光間期間のうち、レーザ光の照射位置検出を微細に行うべき期間では微弱発光を密に行う等、微弱発光を行うべきパルス発光間期間を適宜設定するようにしても良い。
【0061】
図9は、目標領域をスキャンする期間のうち、障害物検出や距離測定が行われる期間(測定期間)と、これらが行われない期間(非測定期間)における微弱発光タイミングとサンプリングタイミングの一例を示すものである。
【0062】
なお、同図(a)には、非測定期間の全期間において、微弱発光が行われる場合のレーザ出力が示されている。また、同図(b)には、非測定期間において、所定の間隔にて微弱発光が行われる場合のレーザ出力が示されている。同図(c)には、ADC80に入力されるサンプリング信号が示されている。
【0063】
この場合、非測定期間における微弱発光の間隔は、当該期間におけるレーザ光照射位置に検出頻度に応じて設定される。このように、非測定期間にもレーザ光の照射位置検出を行うことにより、たとえば、図7に示すサーボ動作を安定化させることができ、照射位置が非測定位置から測定期間へと移行する際の動作を円滑化させることができる。
【0064】
なお、図9に示す例では、測定期間における微弱発光を、全てのパルス発光間期間にて行うようにしているが、図8を参照して説明した如く、一つあるいはそれ以上パルス発光間期間を飛ばしながら微弱発光を行うようにしても良い。
【0065】
以上、本実施の形態によれば、レーザ発振閾値以下の電流にて自然放出光を発光させることによって、照射レーザ光の照射位置が検出されるため、レーザ光を常時発光させる場合に比べ、レーザ出力による消費電力を大幅に削減することができ、また、半導体レーザ100の寿命を長期化させることができる。また、分離光ないし照射レーザ光の位置検出処理は、パルス発光タイミングではなく、パルス発光間の期間を利用して行われるため、レーザ光の照射位置検出処理タイミングに余裕を持たせることができ、もって、当該検出処理を円滑に行うことができる。このように、本実施の形態によれば、消費電力の抑制と半導体レーザの長寿命化を図りつつ、レーザ光の照射位置を円滑にモニタできるビーム照射装置を提供することができる。
【0066】
なお、本発明の適用形態は、上記実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
【0067】
たとえば、上記実施の形態では、レンズアクチュエータを用いてレーザ光をスキャンさせるようにしたが、この他、ポリゴンミラーを用いたアクチュエータによりレーザ光をスキャンするようにしても良い。
【0068】
また、パルス光と微弱発光は、必ずしも一定周期で行われる必要はなく、目標領域上におけるレーザ光のスキャン速度等に応じて適宜変化させるようにしても良い。
【0069】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態に係るビーム照射装置の構成を示す図
【図2】実施の形態に係るレンズアクチュエータの構成を示す図
【図3】実施の形態に係る照射レーザ光の出射角度と分離光の収束位置の関係を示す図
【図4】実施の形態に係るPSD構造を示す図
【図5】実施の形態に係るPSDの構造と位置検出電圧の変動を説明する図
【図6】実施の形態に係る発光タイミングとサンプリングタイミングを示す図
【図7】実施の形態に係る軌道サーボの掛け方を説明する図
【図8】実施の形態に係る発光タイミングとサンプリングタイミングの変更例
【図9】実施の形態に係る発光タイミングとサンプリングタイミングの変更例
【符号の説明】
【0071】
10 DSP
30 レーザ駆動回路
50 ビーム照射ヘッド
70 PSD信号処理回路
80 ADC
100 半導体レーザ
400 ビームスプリッタ
500 集光レンズ
600 PSD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置において、
レーザ光を出射する光源と、
所定間隔にてパルス光を発光するとともに前記パルス光間の所定期間においてレーザ発振閾値以下の電流にて自然放出光を発光するよう前記光源を駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ光の一部を分離する光学素子と、
前記光学素子によって分離されたレーザ光を受光して受光位置に応じた信号を出力する受光素子と、
前記自然放出光の発光期間に前記受光素子から出力される信号に基づいて前記目標領域におけるレーザ光の照射位置を検出する検出回路を有する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記レーザ駆動回路は、前記パルス発光間の全期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記レーザ駆動回路は、前記パルス発光間の期間のうち一部の期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項において、
前記レーザ駆動回路は、一連の前記パルス発光のうち所定のパルス発光間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項において、
前記レーザ駆動回路は、前記目標領域のうち、特定領域において前記パルス光と前記自然放出光を発光し、前記特定領域以外の非特定領域において前記自然放出光のみを発光するよう前記光源を駆動する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記レーザ駆動回路は、前記非特定領域に対応する全期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記レーザ駆動回路は、前記非特定領域に対応する期間のうち一部の期間において前記自然放出光を発光するよう前記光源を駆動する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記レーザ駆動回路は、前記非特定領域に対応する期間において前記自然放出光を所定間隔にて発光するよう前記光源を駆動する、
ことを特徴とするビーム照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−256175(P2007−256175A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83175(P2006−83175)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】