説明

ファゴサイト−シス抑制剤

【課題】美白用の化粧料などに好適な、新規のファゴサイト−シス抑制剤、並びに、これらを含有する皮膚外用剤の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物、又その異性体、アグリコン。


(1)[式中、R1は、単糖類残基又は二糖類残基を表し、R2及びR3は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のファゴサイト−シス抑制剤、及び、これを含有する化粧料などの皮膚外用剤に関する。本発明において、「化粧料」には、医薬部外品が含まれる。
【背景技術】
【0002】
加齢、ストレス、紫外線などの要因により引き起こされるシミ、シワ、たるみ等の皮膚症状の悪化に対し肌の美観を美しく保つことは、女性にとって非常に重要な関心事であり、この様な皮膚症状の悪化を防止・改善するために様々な研究がなされてきた。特に、シミ、ソバカスや日焼け後の色素沈着は、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によるメラニン生成が著しく亢進することが原因で起こる。これらの皮膚色素トラブルを防止・改善することを目的とし、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン、又はカテコ−ル等を配合した皮膚外用剤(特に美白剤)が開発されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照)。しかしながら、アスコルビン酸類は、含水化粧料などの水分を多く含む系においては、酸化され易く不安定であり、皮膚外用剤を変色させる原因となる。また、過酸化水素には、保存上の安定性、並びに、安定性に関し課題が存し、グルタチオンやコロイド硫黄は、著しい異臭を放つため、その使用に制限が加えられている。さらに、ハイドロキノン、カテコ−ルは、皮膚刺激性、アレルギ−性等の安全性に問題がある場合がある。加えて、これらの美白剤は何れも、有効に作用する場合があると同時に、効果が現れない場合があることが知られている。また、その原因に付いては、詳細に知られていないのが現状であり、顕著な美白作用を示し、高い安定性及び安全性を有する新たな美白剤の提供が望まれている。
【0003】
前記の皮膚外用剤の有効成分となる美白剤が有する作用機作としては、チロシナ−ゼ阻害効果、チロシナ−ゼ関連蛋白の分解、メラノサイトのデンドライトの伸長抑制によるメラニンの移送阻害等の多様な作用機作が存し(例えば、非特許文献1を参照)、それぞれの作用機作に対し美白効果を発揮するのに最適な化学構造的な特徴を有する化合物群が存すると考えられる。高い美白作用を有する化合物を見出すためには、同時に複数の作用機序に働きかける化合物、新規作用機序により美白作用を発現する化合物など、従来にない美白剤を探索することが必要とされる。また、この様な研究に加え、従来の美白剤及び/又は新規な美白剤を用い異なる作用機序を有する美白剤を組み合わせることにより(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)、シミ、ソバカスなどの色素沈着に関する症状を予防・改善する方法が盛んに研究されている。
【0004】
前記の美白作用を有する物質は、色素細胞におけるメラニン産生又は移送を阻害することにより美白作用を発現することが知られており、それらの物質の作用は色素細胞内に限定されている。一方、シミ、ソバカスなどの日焼け後の色素沈着においては、色素細胞中のメラノソ−ムにおいて合成されたメラニンが、ケラチノサイトに受け渡されることにより色素沈着が起こり、表皮が黒化することが知られている。この際、ケラチノサイトが、ファゴサイト−シス(貧食作用)によりメラノソ−ムを取り込むことが報告されている。また、前記ケラチノサイトによるファゴサイト−シスは、プル−ン、トウガン、レタス、シイタケ、ワイルドタイム、ヤグルマギク、モヤシ、オウギ、サイシン、ウイキョウ、アマチャズル、サンシュユ、イリス、エンジュ、チョウセンニンジン、アンソクコウ、イタドリ、サイコから得られる植物抽出物により抑制されること(例えば、特許文献3を参照)が知られている。しかしながら、シソ科に属する植物、取り分け、シソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物に、かかる作用が存することは全く知られていなかった。
【0005】
テルペンは、精油または植物樹脂に含有されている炭素鎖構造を有する植物の二次代謝物質であり、分子構造中の炭素数5個のイソプレンユニットの数による分類されている。トリテルペンは、3個のイソプレンユニットが二重になるダブルユニット構造を有している構造的な特徴に加え、抗ガン作用(例えば、特許文献4を参照)、抗酸化作用(例えば、非特許文献3を参照)、抗炎症作用(例えば、特許文献5を参照)等の様々な薬理作用を示すことにより注目されている。特に、水酸基を有するトリテルペン酸(単にトリテルペン酸という場合もある)であるウルソ−ル酸、オレアノ−ル酸、ベツリン酸等は、前述の通り抗酸化作用、抗炎症作用、メラニン産生抑制作用(例えば、特許文献6を参照)等の薬理作用を示すため、これらを有効成分として含有する化粧料をはじめとする皮膚外用剤に応用されている。また、前記一般式(1)に表される化合物である3β,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyrus−11−ene−3−O−β−D−glucopyranosideが、シソ科メリッサ属メリッサに含有される(例えば、非特許文献4を参照)こと、さらには、該化合物が、抗酸化作用、並びに、抗真菌作用を有することは、既に報告されている。しかしながら、この様なトリテルペン化合物に、ファゴサイト−シス抑制作用が存することは全く知られていなかった。さらに、これらの化合物及び該化合物を含有する植物抽出物を有効成分とする皮膚外用剤において、色素沈着に起因する肌症状の悪化に対し優れた防止又は改善効果を示すことも全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−200408号公報
【特許文献2】特開2004−352630号公報
【特許文献3】特開2006−347926号公報
【特許文献4】特開平8−119866号公報
【特許文献5】特開2004−91438号公報
【特許文献6】特開平9−143050号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】武田克之ら監修、「化粧品の有用性、評価技術と将来展望」、薬事日報社刊(2001年)
【非特許文献2】メラニン色素の制御と美白剤の開発、フレグランスジャ−ナル社、No14(1995)
【非特許文献3】Zdenka Ovesna, Katarina Kozics and Darina Slameova、Mutation Research/Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis、600(1−2)、P131−137(2006)
【非特許文献4】Myun-Ho Bang et.al.,Arch.Pharm.Res.,25(4)、438−440(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況下においてなされたものであり、美白用の化粧料などに好適な、新規のファゴサイト−シス抑制剤、並びに、これらを含有する皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者等は、紫外線照射後の色素沈着の発生を予防又は改善するための方法を求め、鋭意努力を重ねた結果、下記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、並びに、一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩、ならびに、該物質を含有する植物抽出物が、ファゴサイト−シス抑制作用を示し、当該ファゴサイト−シス抑制剤を含有する皮膚外用剤が、紫外線照射後の色素沈着の発生を予防又は改善に対し優れた効果を有すること、さらには、前記ファゴサイト−シス抑制剤と、メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤又はプロトンポンプ阻害剤を共に皮膚外用剤に配合することにより、紫外線照射後の色素沈着の予防又は改善が相乗的に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示す通りである。
<1> 下記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩からなるファゴサイト−シス抑制剤。
【0010】
【化1】

(1)
[式中、R1は、単糖類残基又は二糖類残基を表し、R2及びR3は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【0011】
<2> 前記一般式(1)に表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
【0012】
【化2】

(2)
[式中、R4は、単糖類残基又は二糖類残基を表す。]
【0013】
<3> 前記の単糖類残基又は二糖類残基が、グルコ−ス、ガラクト−ス、マンノ−ス、キシロ−ス、フルクト−ス、マルト−ス、セロビオ−ス、ゲンチオビオ−ス、コ−ジビオ−ス、ラミナリビオ−ス、ニゲロ−ス、サンブビオ−ス、ネオヘスペリド−ス、マルトトリオ−ス、イソマルトトリオ−ス、セロトリオ−ス及びゲンチオトリオ−スより選択される1種又は2種であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
<4> <1>〜<3>に記載の化合物が、3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>〜<3>の何れか一項目に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
【0014】
【化3】

3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside(3)
【0015】
<5> 一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の起源が、シソ科に属する植物より得られる抽出物であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
<6> 前記シソ科に属する植物が、シソ科メリッサ属メリッサ(Mellissa officinalis)であることを特徴とする、<5>に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
<7> <1>〜<6>に記載のファゴサイト−シス抑制剤を含有する皮膚外用剤。
<8> 前記の一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、皮膚外用剤全量に対し0.000001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、<7>に記載の皮膚外用剤。
<9> 前記シソ科メリッサ属メリッサの植物抽出物は、皮膚外用剤全量に対し0.0001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、<8>に記載の皮膚外用剤。
<10> 油中水乳化剤形であることを特徴とする、<7>〜<9>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<11> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<7>〜<10>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<12> 色素沈着予防用であることを特徴とする、<7>〜<11>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<13> 紫外線照射の直後に使用することを特徴とする、<7>〜<12>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
<14> 前記ファゴサイト−シス抑制剤を含有する皮膚外用剤の製造方法であって、シソ科メリッサ属メリッサ乃至はその近類植物を選択し、果皮部を採取し、エタノ−ル溶媒で抽出した後、分画精製し、ファゴサイト−シス抑制作用を確認したしかる後に、皮膚外用剤に配合させることを特徴とする、製造方法。
<15> 前記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるファゴサイト−シス抑制剤を含有する皮膚外用剤の製造方法であって、標識化マイクロビ−ズを加え、検体の存在下、乃至は、検体の非存在下、ケラチノサイトを培養し、マイクロビ−ズのケラチノサイトへの取り込みを、標識の有無を指標に判別し、マイクロビ−ズの細胞内への取り込みが、検体の存在により抑制されていることを確認し、しかる後に、皮膚外用剤に配合させることを特徴とする、製造方法。
<16> 前記ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制剤と、メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤から選択されるものとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<17> 前記ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制剤は、標識化マイクロビ−スを加えて、検体の存在下、乃至は、検体の非存在下、ケラチノサイトを培養し、マイクロビ−ズのケラチノサイトへの取り込みを、標識の有無を指標に判別し、マイクロビ−ズの細胞内への取り込みが、検体の存在により抑制されているものであることを特徴とする、<16>に記載の皮膚外用剤。
<18> 前記ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制剤は、<1>〜<5>の何れか一項に記載のファゴサイト−シス抑制剤であることを特徴とする、<16>又は<17>に記載の皮膚外用剤。
<19> 前記メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤から選択されるものは、次の何れかであることを特徴とする、<16>〜<18>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
(メラニン産生抑制剤)4−アルキルレゾルシノ−ル及び/又はその塩、アスコルビン酸誘導体及び/又はその塩、アルブチン及び/又はその塩、トラネキサム酸及び/又はその誘導体、ウルソ−ル酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、パントテテイン−S−スルホン酸及びその塩
(メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤)メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科セイヨウノコギリソウの抽出物、ユリ科バクモンドウの抽出物
(プロトンポンプ阻害剤)シソ科タチジャコウソウ属タイムの抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャの抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウの抽出物、マメ科クララ属クララの抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガの抽出物、ショウブ科ショウブ属ショウブの抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマの抽出物
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ラテックスビ−ズを用いた化合物1のファゴサイト−シス抑制効果検討に関する図である。
【図2】ラテックスビ−ズを用いたシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物のファゴサイト−シス抑制効果検討に関する図である。
【図3】合成メラニンを用いたシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物のファゴサイト−シス抑制効果に関する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<本発明のファゴサイト−シス抑制剤>
本発明の皮膚外用剤は、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩からなるファゴサイト−シス抑制剤を含有することを特徴とする。メラニンは、色素細胞(メラノサイト)のメラノソ−ムにおいて合成された後、メラノソ−ムに包含されたままケラチノサイトへ受け渡され、表皮が黒化する。このメラノサイトからケラチノサイトへの受け渡しに際し、ケラチノサイトがメラノソ−ムを取り込む作用がファゴサイト−シス(貧食作用)である。本発明におけるファゴサイト−シス抑制剤とは、前記のケラチノサイトがメラノソ−ムに包含されたメラニンを取り込む作用を抑制する物質を意味する。本発明のファゴサイト−シス抑制剤としては、前記の一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば、特段の限定なく使用することが出来る。また、本発明におけるファゴサイト−シス抑制剤としては、後記の「ラテックスビ−ズを用いたファゴサイト−シス抑制効果検討」により、目視又は定量化可能な測定装置により、評価物質添加群が、評価物質無添加群に比較し、蛍光ビ−ズの取り込みを抑制することが確認される物質が好適に例示出来る。
【0018】
ここで一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べれば、式中、R1は、単糖類残基又は二糖類残基を表し、R2及びR3は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。前記R1は、単糖類残基又は二糖類残基を表し、より好ましくは、単糖類残基が好適に例示出来る。単糖類残基又は二糖類残基としては、グルコ−ス残基、ガラクト−ス残基、マンノ−ス残基、キシロ−ス残基、フルクト−ス残基、マルト−ス残基、セロビオ−ス残基、ゲンチオビオ−ス残基、コ−ジビオ−ス残基、ラミナリビオ−ス残基、ニゲロ−ス残基、サンブビオ−ス残基、ネオヘスペリド−ス残基、マルトトリオ−ス残基、イソマルトトリオ−ス残基、セロトリオ−ス残基及びゲンチオトリオ−ス残基より選ばれる1種又は2種の糖類が好適に例示出来、より好ましくは、グルコ−ス、ガラクト−ス等が好適に例示出来る。前記R2及びR3は、水素原子、炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し、具体例を挙げれば、3β,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside、3β,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−methoxy−3−O−β−glucopyranoside、3β,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−ethoxy−3−O−β−glucopyranoside、3β,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−methoxy−3−O−β−glucopyranoside、3β,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−ethoxy−3−O−β−glucopyranoside、3α,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−α−glucopyranoside、3α,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−methoxy−3−O−α−glucopyranoside、3α,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−ethoxy−3−O−α−glucopyranoside、3α,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−methoxy−3−O−α−glucopyranoside、3α,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−ethoxy−3−O−α−glucopyranoside、3β,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−galactopyranoside、3β,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−methoxy−3−O−β−galactopyranoside、3β,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−ethoxy−3−O−β−galactopyranoside、3β,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−methoxy−3−O−β−galactopyranoside、3β,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−ethoxy−3−O−β−galactopyranoside、3α,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−α−galactopyranoside、3α,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−methoxy−3−O−α−glalactopyranoside、3α,23−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−16−ethoxy−3−O−α−galactopyranoside、3α,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−methoxy−3−O−α−galactopyranoside、3α,16β−dihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−23−ethoxy−3−O−α−galactopyranoside、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましくは、3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside、3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−galactoside、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の内、より好ましくは、一般式(2)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。かかる化合物は、ファゴサイト−シス抑制作用、取りわけ、ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制作用に対する力価、安全性又は皮膚貯留性に優れる。さらには、ファゴサイト−シス抑制作用とは、全く異なる作用機序により美白作用を発揮する後記の美白成分と共に配合することにより美白効果が増強される等の利点が存する。また、かかる化合物の異性体としては、不斉炭素における光学異性体などの立体異性体が例示出来る。かかる一般式(1)に表される化合物の主たる効能の発現部位は、一般式(1)の化合物より糖鎖構造を除いたアグリコン部分にも存在することから、かかるアグリコン乃至はその塩を除いて、ケラチノサイトのファゴサイト−シスを抑制する技術も、本願発明の技術分野に属する。アグリコンは、一般式(1)に表される化合物をグルコシダ−ゼなどの様な解糖系酵素で処理することにより得ることが出来る。斯くの如くに、アグリコンに変換すると、水性担体への溶解度などが低下することから、配糖体の形態で使用することが、本発明の実施の形態としては好ましい。
【0019】
ここで一般式(2)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べれば、式中、R1は、単糖類残基又は二糖類残基を表す。前記R1は、単糖類残基又は二糖類残基を表し、より好ましくは、単糖類残基が好適に例示出来る。単糖類残基又は二糖類残基としては、グルコ−ス残基、ガラクト−ス残基、マンノ−ス残基、キシロ−ス残基、フルクト−ス残基、マルト−ス残基、セロビオ−ス残基、ゲンチオビオ−ス残基、コ−ジビオ−ス残基、ラミナリビオ−ス残基、ニゲロ−ス残基、サンブビオ−ス残基、ネオヘスペリド−ス残基、マルトトリオ−ス残基、イソマルトトリオ−ス残基、セロトリオ−ス残基及びゲンチオトリオ−ス残基より選ばれる1種又は2種の糖類が好適に例示出来、より好ましくは、グルコ−ス残基、ガラクト−ス残基等が好適に例示出来る。前記一般式(2)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し、具体例を挙げれば3β,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside、3α,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−α−glucopyranoside(化合物1)、3β,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−galactopyranoside、3α,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−α−galactopyranoside、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましくは、3β,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside(化合物1)、3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−galactoside、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。かかる化合物は、ファゴサイト−シス抑制作用、取りわけ、ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制作用に対する力価、安全性又は皮膚貯留性に優れる。さらには、ファゴサイト−シス抑制作用とは、全く異なる作用機序により美白作用を発揮する後記の美白成分と共に配合することにより美白効果が増強される等の利点が存する。
【0020】
本発明の皮膚外用剤において、一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、一種を単独で含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。斯くして得られた一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコンは、そのまま使用することも出来るし、アルカリと共に処理するなどして、塩の形態として使用することも出来る。前記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコンの塩としては、生理的に許容される塩であれば特に限定されない。生理的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノ−ルアミン塩、ピペリジン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩などが好適に例示出来る。また、前記の一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、本願発明の皮膚外用剤に配合する場合には、皮膚外用剤全量に対し、0.000001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.000005質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.00001質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の含有量が、少なすぎると前記効果を奏しない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。斯くして得られたファゴサイト−シス抑制剤は、ケラチノサイトへのメラニンの取り込みを阻害するという機作で美白効果を具現化するため、他の機作の美白剤、例えば、メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤などとともに用いると相加効果、相乗効果が得られるので、これらの成分と併用することが好ましい。
【0021】
かかる一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、精製されたものであってもよいが、一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分として含む植物の抽出物若しくはその分画物等であってもよく、この様な植物としては、シソ科に属する植物、例えば、シソ科メリッサ属メリッサなどを挙げることができる。尚、本発明においては、抽出物とは、抽出物自体、抽出物を分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。実際、一般式(1)に表される化合物は、天然にも存していることから、天然物より抽出し、精製を行い得ることも出来る(例えば、非特許文献4を参照)。一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコンとしては、例えば、下記の3β,16β,23−trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside(化合物1)が好適に例示出来、かかる化合物は、シソ科メリッサ属メリッサの植物体の抽出物に含有される。かかるシソ科メリッサ属メリッサの抽出物作製に用いる植物部位としては、全草または地上部が好適に例示出来る。メリッサは、南ヨ−ロッパ原産の植物であり、比較的早い時期に日本に移入され、現在は日本全土においてその成育が認められ、一部には自生しているところも存する。本発明の実施例では、日本で育成されたメリッサを購入し、使用した。抽出に際して、植物体乃至はその乾燥物は予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物は、植物体乃至はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去することが出来る。しかる後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ−などで分画精製し、所望の抽出物を得ることが出来る。
【0022】
シソ科メリッサ属メリッサの地上部又は全草の乾燥物50(kg)を細断し、1000(L)の70%エタノ−ル水溶液を加え、50℃以下の温度にて4時間浸漬した後、水性エタノ−ルにて調整した。その後、濾過にて不溶物を除去した後、留出溶媒に含水エタノ−ルを用いたシリカゲル又は樹脂処理などにより分画精製し、分画液を濃縮、オリビキ処理し、メリッサ抽出物(本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物)を得た。前記方法により得たメリッサ抽出物より、分取液体クロマトグラフィ−(カラム:ODS、移動相:MeCN−0.1(%aq)TFA(45:55))により、化合物1を単離精製した。
【0023】
【化4】


3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside(化合物1)
【0024】
<化合物1の物理恒数>
H-NMR(C5D5N)δ:0.86−1.99(18H、m)、0.91(3H、s)、0.95(3H、s)、0.97(3H、s)、1.04(3H、s)、1.06(3H、s)、1.19(3H、s)、1.35(3H、s)、2.28−2.32(1H、m)、2.60(1H、d、J=4.0Hz)、3.68(1H、d、J=12.0Hz)、3.71−3.79(1H、m)、3.99(1H、t、J=8.0Hz)、4.03−4.38(6H、m)、4.46(2H、dd、J=4.0Hz,J=8.0Hz)、5.09(1H、d、J=8.0Hz)、5.72(1H、dd、J=4.0Hz、J=8.0Hz)、5.82(1H、d、J=8.0Hz).
13C-NMR(C5D5N)δ:13.0、17.7、18.6、18.8、19.6、19.9、25.8、30.1、31.4、31.8、36.3、36.3、38.5、38.6、41.1、42.4、43.6、46.2、47.5、48.0、52.9、62.3、63.0、64.5、65.2、71.8、72.8、75.9、78.3、78.7、79.7、81.9、84.1、105.8、129.4、133.2.
【0025】
前記化合物1の核磁気共鳴スペクトルは、公知文献(例えば、J. Nat. Prod.,2007,70(12),1889−1894を参照)に記載された物理物理恒数と一致した。記載の化合物1の化学構造を有することが判った。
【0026】
前記抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、水、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ルなどのアルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類から選択される1種乃至は2種以上が好適に例示出来る。
【0027】
一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩のファゴサイト−シス抑制作用、並びに、後記の美白成分と共に皮膚外用剤に含有させ、美白作用、即ち、紫外線照射によって皮膚が受けたダメ−ジを、炎症が起こる前に消去し、重篤な症状発現に至らない様に予防する効果は、一般式(1)に表される化合物をマ−カ−とすることが出来る。また、前記の植物抽出物を本願発明の皮膚外用剤に配合する場合には、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.01質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、植物抽出物の含有量が、少なすぎると前記効果を奏しない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。斯くして得られたファゴサイト−シス抑制剤は、ケラチノサイトへのメラニンの取り込みを阻害するという機作で美白効果を具現化するため、他の機作の美白剤、例えば、メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤などとともに用いると相加効果、相乗効果が得られるので、これらの成分と併用することが好ましい。
【0028】
<本発明におけるメラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤>
本発明におけるメラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤は、メラニン産生抑制作用、メラノサイトのデンドライド伸長抑制作用又はプロトンポンプ阻害作用を有する物質であれば、特段の限定なく適応することが出来る。本発明におけるメラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤、並びに、プロトンポンプ阻害剤は、単純な化学物質、生薬及び動植物からの抽出物を意味し、かかる成分を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。ここで、本発明の抽出物とは、抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。本発明におけるメラニン産生抑制作用を有する物質とは、例えば、特開2009−155236号公報などに記載の方法に従い、正常ヒト表皮メラノサイトを用いたメラニン産生抑制作用評価において、化合物又は植物抽出物を添加し、培養した場合、溶媒コントロ−ルに比較し、明らかに黒味の少ない挙動を示す物質などが好適に例示出来る。具体的には、評価物質を添加し培養した後のメラニン量が、溶媒コントロ−ルに比較し50%以下である物質が好適に例示出来る。また、本発明におけるメラノサイトのデンドライド伸長抑制作用を有する物質とは、例えば、特開2009−046503号公報に記載のデンドライド伸長抑制作用評価において、デンドライド増殖因子を加えたコントロ−ル群に比較し、デンドライドの伸長が抑制されている物質が好適に例示出来る。さらに、本発明におけるプロトンポンプ阻害作用を有する物質とは、例えば、特願2009−050226号公報に記載のヒト正常メラノサイトを用いた細胞内酸性化作用の評価方法に従い、プロトンポンプ阻害作用を評価した場合に、pH感受性蛍光色素の発色強度が、レ−ザ−顕微鏡による目視的観察により発色強度の増強が認められる物質などが好適に例示出来る。
【0029】
ここで、前記のメラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤に付いて述べれば、メラニン産生抑制剤としては、例えば、コウジ酸及びその塩、エラグ酸及びその塩、パントテテイン−S−スルホン酸及びその塩、レゾルシノ−ル誘導体及びその塩、アスコルビン酸誘導体及びその塩、ハイドロキノン配糖体及びその塩、トリテルペン酸誘導体及びその塩、ビタミンE誘導体及びその塩、サリチル酸誘導体及びその塩、ビフェニル誘導体及びその塩などが好適に例示出来、より好ましくは、パンテテイン−S−スルホン酸及びその塩としては、パントテテイン−S−スルホン酸、パンテテイン−S−スルホン酸カルシウム、レゾルシノ−ル誘導体及びその塩としては、4−プロピルレゾルシノ−ル、4−ブチルレゾルシノ−ル、4−ペンチルレゾルシノ−ル、4−(1−メチルプロピル)レゾルシノ−ル、4−(1−メチルブチル)レゾルシノ−ル、4−(2−メチルプロピル)レゾルシノ−ル、4−(2−メチルブチル)レゾルシノ−ル及びそれらの薬理学的に許容される塩、アスコルビン酸誘導体及びその塩としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリル、アスコルビン酸パルミチル、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸−2−グルコシド及びそれらの薬理学的に許容される塩が、ハイドロキノン配糖体及びその塩としては、アルブチン及びその塩が、ウルソ−ル酸誘導体及びその塩としては、ウルソ−ル酸、ウルソ−ル酸ベンジル、ウルソ−ル酸リン酸エステル及びそれらの薬理学的に許容される塩が、サリチル酸誘導体及びその塩としては、4−メトキシサリチル酸及びその塩が、ビフェニル誘導体及びその塩としては、5,5’−ジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオ−ル及びその塩が、さらには、ビタミンE及びその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。また、メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤としては、メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科セイヨウノコギリソウの抽出物、ユリ科バクモンドウの抽出物などが好適に例示出来る。さらに、プロトンポンプ阻害剤としては、シソ科タチジャコウソウ属の抽出物、ユキノシタ科アジサイ属の抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核の抽出物、マメ科クララ属の抽出物、ショウガ科ショウガ属の抽出物、ショウブ科ショウブ属の抽出物、ウリ科ヘチマ属の抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、シソ科タチジャコウソウ属タイムの抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャの抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウの抽出物、マメ科クララ属クララの抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガの抽出物、ショウブ科ショウブ属ショウブの抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマの抽出物が好適に例示出来る。
【0030】
本発明のメラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤は、そのまま使用することも出来るし、薬理学的に許容される酸又は塩基と共に処置し塩の形態に変換し、塩として使用することも可能である。例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの鉱酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩などの有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノ−ルアミン塩、ピペリジン塩などの有機アミン塩、リジン塩、アルギニン酸塩などの塩基性アミノ酸塩などが好適に例示出来る。また、本発明のメラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤は、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.01質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤の含有量が、少なすぎると、各成分が有する作用に基づく美白作用、並びに、前記のファゴサイト−シス抑制剤と共存することによる併用効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合は存するためである。
【0031】
<本発明の皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、前記の必須成分を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で適用されるものであれば、特段の限定無く使用することができ、例えば、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨などが好適に例示でき、化粧料に適用することが特に好ましい。これは本発明の皮膚外用剤が、比類無き使用感の良さを有しているため、使用感が重要な化粧料に特に好適であるためである。化粧料としては、油中水乳化剤形を応用できるものであれば、特段の限定はなく、例えば、エッセンス、乳液、クリ−ム等の基礎化粧料、アンダ−メ−クアップ、ファンデ−ション、チ−クカラ−、マスカラ、アイライナ−などのメークアップ化粧料、ヘアクリ−ムなどの毛髪化粧料などが好適に例示できる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤に於いては、前記必須成分に加えて、油中水乳化剤形を形成するための乳化剤を含有することが好ましく、該乳化剤としては、有機変性粘土鉱物やジグリセリンモノオレ−トやトリグリセリンジイソステアレ−ト等が好適に例示できる。ジグリセリンモノオレ−トを乳化剤として用いる場合に於いては、必須成分としての量に、乳化のための量を積算し、安定化作用のための役割と、乳化のための役割を兼ねさせることもできる。
【0033】
前記有機変性粘土鉱物に於いて、有機変性とは、粘土鉱物の一部に有機化合物の一部を共有結合乃至はイオン結合を介して強固乃至は緩やかな結合を生ぜしめ、有機化合物の性質の一部乃至は全部を粘土鉱物に付与させることを意味し、この様な変性としては4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法、カルボキシル基と粘土鉱物のカチオン部分を結合させる方法等が例示でき、4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法が特に好ましく例示できる。
【0034】
粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されるわけではないが、クオタニウムと称される化合物が例示される。クオタニウムとは、低分子の置換第4級アンモニウム塩であって、国際基準化粧品原材料(INCI)に登録された化粧料原料が好ましい。さらに、粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物は、クオタニウム化合物のなかでも、従来の皮膚外用剤に含有されるクオタニウム化合物であることが好ましい。従来の皮膚外用剤で使用されているクオタニウム化合物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等が好ましく例示される。ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等は、粘土鉱物とともに安定な油中水乳化構造を形成することができるので好ましい。
【0035】
一方、4級アミノ基を有する化合物で変性される粘土鉱物(未変性粘土鉱物)としては、従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物であれば特段の限定無く使用することができる。従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物としては、スメクタイト系のヘクトライト、ベントナイトやモンモリロナイト;カオリナイト;イライト;マリ−ン粘土鉱物(海泥);デザ−トロ−ズ粘土鉱物;パスカライトなどが好ましく挙げられる。これらのうち、油中水乳化構造を安定化させることができるベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト又はカオリナイトが好ましく例示される。
【0036】
本発明の皮膚外用剤に含有される4級アミノ基を有する化合物で変性された粘土鉱物の製造方法の一例を以下に説明する。
前記未変性粘土鉱物を分散媒に分散させる。該分散剤は水系の溶媒であることが好ましく、水であってもよい。分散未変性粘土鉱物を含む分散液に、さらに4級アミノ基を有する化合物を加え、よく撹拌する。4級アミノ基を有する化合物は、水に溶解されて加えられてもよい。加えられる4級アミノ基を有する化合物の量は、分散未変性粘土鉱物の量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。この様な構成を取ることにより、乳化系において、好ましい使用感を呈するためである。撹拌後、分散質を濾取し、脱水、乾固することにより本発明における変性粘土鉱物を得ることができる。あるいは、分散質を濾取することなく、減圧濃縮することにより分散剤を除去して乾固させることにより、本発明における変性粘土鉱物を得ることもできる。得られた変性粘土鉱物は、好ましくは所望のサイズ(粒径が1〜1000μmであることが好ましい)に粉砕され、本発明の皮膚外用剤に含有される。
【0037】
本発明における変性粘土鉱物は、前述したように調製して使用されることもできるが、市販されているものを使用することもできる。市販されている変性粘土鉱物には、化粧料などの皮膚外用剤などとして用いられているものもある。市販されている変性粘土鉱物としては、例えば、エレメンティス社より「ベントン38V」の名称で販売されている、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどが好ましく例示される。
【0038】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分は0.5〜10質量%好ましく含有され、より好ましくは1〜5質量%含有される。かかる成分は、前記の含有量の範囲において、乳化剤として、高内相の油中水乳化剤形を形成すべく働く。
【0039】
ジグリセリンモノオレ−ト及び/又はトリグリセリンジイソステアレ−トを乳化剤として含有する場合には、かかる乳化剤の質量の0.5〜2倍のマルチト−ルやソルビト−ルの様な多価アルコ−ルをともに含有させることが好ましい。前記ジグリセリンモノオレ−トの化粧料用の原料としては、「ニッコ−ルDGMO−C」(日本サ−ファクタント株式会社製)が好ましく例示できるし、トリグリセリンジイソステアレ−トの化粧料用の原料としては、「エメレスト2452」(エメリ−社製)などが好ましく例示できる。かかる成分の好ましい含有量は、皮膚外用剤全量に対して、1〜10質量%であり、より好ましくは2〜7質量%である。これはこの量範囲を逸脱すると乳化できない場合や溶状の安定性が損なわれる場合が存するためである。
【0040】
本発明の皮膚外用剤に於いては、前記必須成分の他に、油性成分、水性成分ともに溶解しにくい成分、取り分け、ジメチコンなどのシリコ−ン類や流動パラフィンなどの炭化水素類のような非極性成分に難溶な成分を好ましく含有し、該溶解しにくい成分としては、例えば、フィトステロ−ル配糖体、スフィンゴ糖脂質が好適に例示できる。かかる成分は、皮膚に対して、光老化防止効果、タ−ンオ−バ−調整効果、保湿効果などの好ましい働きを有する、有効成分であり、前記フィトステロ−ルは、植物性ステロ−ル類の総称であり、植物性のステロ−ル類には、スチグマスタノ−ル、カンペステロ−ル、シトステロ−ルなどが存し、これらを一括して、フィトステロ−ルと総称している。フィトステロ−ル配糖体は、このフィトステロ−ルに糖鎖が結合したもので、該フィトステロ−ル配糖体としては小麦胚芽などの植物体から、複数のフィトステロ−ル配糖体を含有するステロ−ル配糖体分画を取り出して用いる場合が多く、この様な分画のみを精製した化粧料原料も市販されており、本発明のかかる市販原料を購入して利用することができる。通常この様な成分には、スフィンゴ糖脂質も同時に抽出されて含まれていることが多い。この様な市販原料としては、例えば、岡安商店株式会社から販売されている「フィトステサイド」などが存する。かかる「フィトステサイド」は約85質量%がフィトステロ−ルの配糖体であり、約15質量%がスフィンゴ糖脂質である。この様な溶けにくい有効成分、取り分け固形の成分の好ましい含有量は、それぞれ0.05〜0.5質量%である。
【0041】
本発明の皮膚外用剤は、油中水乳化剤形に形態を取るため、油中水乳化剤形の使用感、仕上がり感の欠点を補うために、シリコ−ン、特に好ましくは、シクロメチコン及び/又は粘度1mPa・s以下のジメチコンを含有することが好ましく、該シリコ−ンの含有量としては、化粧料全量に対しては、10〜50質量%含有することが好ましく、より好ましくは、20〜40質量%であり、シクロメチコン及び粘度1mPa・s以下のジメチコンの含有量の和が油相全量に対して、50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であることが好ましい。
【0042】
本発明の皮膚外用剤は、油中水乳化剤形に形態を取るため、油中水乳化剤形の使用感、仕上がり感の欠点を補うために、シリコ−ン、特に好ましくは、シクロメチコン及び/又は粘度1mPa・s以下のジメチコンを含有することが好ましく、該シリコ−ンの含有量としては、化粧料全量に対しては、10〜50質量%含有することが好ましく、より好ましくは、20〜40質量%であり、シクロメチコン及び粘度1mPa・s以下のジメチコンの含有量の和が油相全量に対して、50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であることが好ましい。
【0043】
又、本発明の皮膚外用剤では、乳化剤として前記有機変性粘土鉱物を用いる場合、前記有機変性粘土鉱物の乳化作用を補助する意味で、POE変性メチルポリシロキサン、POP変性メチルポリシロキサン、POP・POE変性メチルポリシロキサン等のポリエ−テル変性メチルポリシロキサンを含有することが好適に例示できる。かかるポリエ−テル変性メチルポリシロキサンの好ましい含有量は、0.5〜5質量%、1〜3質量%がより好ましい。
【0044】
乳化剤として前記有機変性粘土鉱物を用いる場合、更に、上記の成分以外の好ましい任意成分としては、乳化状態を安定化できる、多価アルコ−ルが例示できる。特に、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコ−ルが好適に例示できる。かかる成分は唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、5〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。更に加えて、1,2−ペンタンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル及び1,2−オクタンジオ−ルから選択される1種乃至は2種以上を3〜7質量%含有させることも、防腐力を向上させる見地から好ましい。
【0045】
上記以外にも、本発明の皮膚外用剤に於いては、本発明の効果を損ねない限度に於いて、通常使用される任意成分を含有することもできる。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコ−ル等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコ−ル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコ−ル類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0046】
本発明の皮膚外用剤は、前述の成分を常法に従って処理することにより本発明の皮膚外用剤を製造することができる。
【0047】
以下に、実施例をあげて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0048】
<試験例1:ラテックスビ−ズを用いた化合物1、本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られた植物抽出物のファゴサイト−シス抑制効果検討>
本発明の一般式(1)に表される化合物(化合物1)、並びに、本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物を用い、以下に記載の方法に従い、表皮細胞におけるファゴサイト−シス抑制作用を評価した。チャンバ−スライドに、表皮細胞(クラボウ社製)を4×10(cell/well)の濃度で播種する。翌日、評価物質(本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物:添加濃度、化合物1:3×10−3(w/v%)、本発明のメリッサ抽出物:0.4(w/v%)を含んだ培地に交換し、蛍光標識されたマイクロビ−ズを5×10(個/well)添加し、培養を継続する。培地交換24時間後、培地を除去し、PBSで1回洗浄した後、細胞を固定し、蛍光顕微鏡によりファゴサイト−シス抑制作用を評価した。
【0049】
結果を図1及び図2に示す。図1及び図2の結果より、化合物1及び本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物は、評価物質を添加しないコントロ−ル群に比較し、蛍光標識されたマイクロビ−ズの取り込みを抑制していた。前記結果は、評価物質のファゴサイト−シス抑制作用による。
【実施例2】
【0050】
<試験例2:合成メラニンを用いた本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物のファゴサイト−シス抑制効果検討>
本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物を用い、以下に記載の方法に従い、表皮細胞におけるファゴサイト−シス抑制作用を評価した。チャンバ−スライドに、表皮細胞(クラボウ社製)を5×10(cell/well)の濃度で播種する。翌日、DMSOに溶解した合成メラニン(シグマ社製:添加濃度1×10-3%)および評価物質(本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物:添加濃度0.4w/v%)を含んだ培地に交換し、培養を継続する。培地交換7時間後、培地を除去し、PBSで1回洗浄した後、細胞を固定し、顕微鏡観察によりファゴサイト−シス抑制作用を評価した。
【0051】
結果を図3に示す。結果を図3に示す。本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物は、評価物質を添加しないコントロ−ル群に比較し、合成メラニンの取り込みが抑制されていた。図3の結果より、本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物は、顕著なファゴサイト−シス抑制作用を示すことが認められた。
【実施例3】
【0052】
<本発明の皮膚外用剤の製造>
表1に示す処方に従い、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」を含有する油中水乳化剤形(化粧料)の皮膚外用剤を製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加温し、イの中にニを加えて溶解させ、混練してゲルを形成させ、これにロを加え希釈し、これに攪拌下徐々にハを加えて乳化し、攪拌冷却し、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形の化粧料1を作製した。さらに、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」を水に置換した比較例1を作製した。
【0053】
【表1】

【実施例4】
【0054】
<紫外線照射後の色素沈着に対する予防効果の検討>
紫外線照射後炎症を起こし、該炎症部位が色素沈着を起こす特性を有するパネラ−(n=1)を用いて、色素沈着予防効果を検討した。即ち、前腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を上下2段に分け合計4箇所を設け、部位1〜3は最少紅斑量(MED)の1.5倍の紫外線照射を行い、部位1〜3には、照射後直ちに化粧料1、比較例1をそれぞれ40μL投与し、部位3は照射対照とし、部位4は無処置対照とした。照射後24時間に紅斑の程度をドレ−ズの基準(−:無反応、±:擬陽性反応、+:明瞭な紅斑を伴う反応、++:浮腫を伴う反応)に従って判定し、更に、その10日後に、色素沈着の指標となる、無処置部位とのL値の差をコニカミノルタ色彩色差計CR400で計測した。結果を表2に示す。表2の結果より、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」には、紫外線照射による素沈着に対する予防効果が認められた。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【実施例5】
【0056】
実施例3に記載の油中水乳化剤形の化粧料1の成分中、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」の質量%を0.1質量%に変更した化粧料2を同様の方法により作製した。減少した質量%は、水により調整した。化粧料2を用い、実施例4に記載の方法に従い紫外線照射後の色素沈着に対する予防効果の検討を実施したところ、紅斑の程度は、±、△L値は、−1.62であった。「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」には、紫外線照射による色沈着に対する予防効果が認められた。
【実施例6】
【0057】
表1に記載の成分中、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」として、「本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物」を用い、皮膚外用剤(化粧料3)を製造した。本発明のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物の皮膚外用剤全量に対する割合は、0.1質量%であり、表1における増減分は、水にて調整した。実施例4に記載の方法に従い、化粧料3の紫外線による色素沈着予防効果を検討したところ、△L*値は、−1.34であり、顕著な色素沈着予防効果が認められた。
【実施例7】
【0058】
「表1に記載の化粧料1の処方成分中、「ベントン38V」を「シリコ−ンKF6017」に置換した化粧料4、「1,2−ペンタンジオ−ル」を「ポリエチレングリコ−ル400」に置換した化粧料5を作製し、実施例4に記載の方法に従い、紫外線照射による色素沈着予防効果を検討したところ、化粧料4は、紅斑の程度は、+、△L値は、−1.95、化粧料5は、紅斑の程度は、+、△L値は、−2.01の値を示し、何れも化粧料においても顕著な紫外線照射による色素沈着予防効果がほとんど認められなかった。
【実施例8】
【0059】
表3に示した処方に従い、水中油水乳化剤形をとる化粧料6を作製した。実施例4に示した方法に従い、紫外線照射による色素沈着予防効果を評価したところ、紅斑の程度は、±、△L値は、−2.16であった。水中油乳化剤形をとる化粧料6は、紫外線照射による色素沈着予防効果がほとんど認められなかった。
【0060】
【表3】

【実施例9】
【0061】
表4及び表5に記載の処方に従い、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」及び「メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤」を含有する油中水乳化剤形(化粧料)の皮膚外用剤を製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加温し、イの中にニを加えて溶解させ、混練してゲルを形成させ、これにロを加え希釈し、これに攪拌下徐々にハを加えて乳化し、攪拌冷却し、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形の化粧料7〜16を作製した。さらに、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」を水に置換した比較例2、「メラニン産生抑制剤、メラニサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤」を水に置換した比較例3、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」及び「メラニン産生抑制剤、メラニサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤」を共に水に置換した比較例4を作製した。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【実施例10】
【0064】
表4及び表5に記載の処方成分よりなる化粧料7〜16に関し、実施例4に記載の方法に従い、紫外線照射による色素沈着予防効果を検討した。結果を表6に示す。
【0065】
【表6】

【0066】
表6に示した結果より、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」及び「本発明のメラニン産生抑制剤、デンドライド伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤」を共に含有する油中水乳化剤形の皮膚外用剤(化粧料7〜化粧料16)は、顕著な紫外線照射による色素沈着予防効果を示した。また、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」を単独で配合した皮膚外用剤に比較し、「本発明のファゴサイト−シス抑制剤(化合物1)」及び「本発明のメラニン産生抑制剤、デンドライド伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤」を共に含有した油中水乳化剤形の皮膚外用剤は、著しい効果の向上が認められた。
【実施例11】
【0067】
「表4及び表5に記載の化粧料7の処方成分中、「ベントン38V」を「シリコ−ンKF6017」に置換した化粧料17、「1,2−ペンタンジオ−ル」を「ポリエチレングリコ−ル400」に置換した化粧料18を作製し、実施例4に記載の方法に従い、紫外線照射による色素沈着予防効果を検討したところ、化粧料17は、紅斑の程度は、+、△L値は、−1.99、化粧料18は、紅斑の程度は、+、△L値は、−2.05の値を示し、何れも化粧料においても、ほとんど紫外線照射による色素沈着予防効果が認められなかった。
【実施例12】
【0068】
表7に示した処方に従い、水中油水乳化剤形をとる化粧料19を作製した。実施例4に示した方法に従い、紫外線照射による色素沈着予防効果を評価したところ、紅斑の程度は、±、△L値は、−2.11であった。水中油乳化剤形をとる化粧料19は、紫外線照射による色素沈着予防効果がほとんど認められなかった。
【0069】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、美白用の化粧料などに応用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩からなるファゴサイト−シス抑制剤。
【化1】

(1)
[式中、R1は、単糖類残基又は二糖類残基を表し、R2及びR3は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)に表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
【化2】

(2)
[式中、R4は、単糖類残基又は二糖類残基を表す。]
【請求項3】
前記の単糖類残基又は二糖類残基が、グルコ−ス、ガラクト−ス、マンノ−ス、キシロ−ス、フルクト−ス、マルト−ス、セロビオ−ス、ゲンチオビオ−ス、コ−ジビオ−ス、ラミナリビオ−ス、ニゲロ−ス、サンブビオ−ス、ネオヘスペリド−ス、マルトトリオ−ス、イソマルトトリオ−ス、セロトリオ−ス及びゲンチオトリオ−スより選択される1種又は2種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の化合物が、3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項目に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
【化3】

3β,16β,23−Trihydroxy−13,28−epoxyurs−11−ene−3−O−β−glucopyranoside(3)
【請求項5】
一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の起源が、シソ科に属する植物より得られる抽出物であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
【請求項6】
前記シソ科に属する植物が、シソ科メリッサ属メリッサ(Mellissa officinalis)であることを特徴とする、請求項5に記載のファゴサイト−シス抑制剤。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のファゴサイト−シス抑制剤を含有する皮膚外用剤。
【請求項8】
前記の一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、皮膚外用剤全量に対し0.000001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、請求項7に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
前記シソ科メリッサ属メリッサの植物抽出物は、皮膚外用剤全量に対し0.0001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、請求項8に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
油中水乳化剤形であることを特徴とする、請求項7〜9の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項7〜10の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
色素沈着予防用であることを特徴とする、請求項7〜11の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項13】
紫外線照射の直後に使用することを特徴とする、請求項7〜12の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項14】
前記ファゴサイト−シス抑制剤を含有する皮膚外用剤の製造方法であって、シソ科メリッサ属メリッサ乃至はその近類植物を選択し、果皮部を採取し、エタノ−ル溶媒で抽出した後、分画精製し、ファゴサイト−シス抑制作用を確認したしかる後に、皮膚外用剤に配合させることを特徴とする、製造方法。
【請求項15】
前記一般式(1)に表される化合物、その異性体、アグリコン及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなるファゴサイト−シス抑制剤を含有する皮膚外用剤の製造方法であって、標識化マイクロビ−ズを加え、検体の存在下、乃至は、検体の非存在下、ケラチノサイトを培養し、マイクロビ−ズのケラチノサイトへの取り込みを、標識の有無を指標に判別し、マイクロビ−ズの細胞内への取り込みが、検体の存在により抑制されていることを確認し、しかる後に、皮膚外用剤に配合させることを特徴とする、製造方法。
【請求項16】
前記ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制剤と、メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤から選択されるものとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項17】
前記ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制剤は、標識化マイクロビ−スを加えて、検体の存在下、乃至は、検体の非存在下、ケラチノサイトを培養し、マイクロビ−ズのケラチノサイトへの取り込みを、標識の有無を指標に判別し、マイクロビ−ズの細胞内への取り込みが、検体の存在により抑制されているものであることを特徴とする、請求項16に記載の皮膚外用剤。
【請求項18】
前記ケラチノサイトのファゴサイト−シス抑制剤は、請求項1〜5の何れか一項に記載のファゴサイト−シス抑制剤であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の皮膚外用剤。
【請求項19】
前記メラニン産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤から選択されるものは、次の何れかであることを特徴とする、請求項16〜18の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
(メラニン産生抑制剤)4−アルキルレゾルシノ−ル及び/又はその塩、アスコルビン酸誘導体及び/又はその塩、アルブチン及び/又はその塩、トラネキサム酸及び/又はその誘導体、ウルソ−ル酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、パントテテイン−S−スルホン酸及びその塩
(メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤)メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科セイヨウノコギリソウの抽出物、ユリ科バクモンドウの抽出物
(プロトンポンプ阻害剤)シソ科タチジャコウソウ属タイムの抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャの抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウの抽出物、マメ科クララ属クララの抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガの抽出物、ショウブ科ショウブ属ショウブの抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマの抽出物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−68572(P2011−68572A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219288(P2009−219288)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】