説明

フィルムの検査装置

【課題】 フィルム中に分散する粒子の種々の分散特性を正確に検査することができるフィルムの検査装置を提供する
【解決手段】 粒子が分散された光透過性フィルムの一面側に配される光源(照明200)と、このフィルムの他面側に配されて前記フィルムの透過画像を取得する受像手段(カメラ100)を有する。また、受像手段で得た原画像から微細粒子を顕在化させて微細粒子顕在画像を作成する微細粒子顕在化手段350と、原画像から粗大粒子を顕在化させて粗大粒子顕在画像を作成する粗大粒子顕在化手段360とを有する。そして、微細粒子顕在画像と粗大粒子顕在画像から検査画像を作成する検査画像作成手段370と、検査画像中の粒子の特性を演算する特性演算手段380とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの検査装置に関するものである。特に、異方導電性接着フィルムなど、多数の粒子が分散されたフィルムにおける粒子の分散状態を正確に検査できるフィルムの検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品と回路基板の電極間の接続や、回路基板同士の電極の接続に、異方導電性接着フィルムが用いられている。このフィルムは、エポキシ樹脂などの絶縁バインダ内に導電性粒子を分散させたテープ状フィルムで、接続対象となる電極間に配置され、加熱・圧着されることで電極面を損傷することなく接続を行う。
【0003】
このようなフィルムは、接続する電極間に導電性粒子が介在されるように、所定の密度で導電性粒子がほぼ均一に分散されていなければならない。このため、異方導電性接着フィルムの製造においては、製品出荷前にフィルム中の導電性粒子の分散状態を検査することが行われている。
【0004】
このようなフィルムの検査技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。この技術は、フィルムを透過した光をCCDカメラの撮像素子が受け、撮像素子の光信号を明度に変換する。一方、フィルム中の所定の領域における粒子数と明度との関係(相関グラフや関係式等)を実験等により予め求めておく。そして、その関係式に撮像素子により計測した明度を代入したり、相関グラフと計測した明度と比較したりしてフィルムの所定面積中に存在する微細粒子の数を決定する。この技術によれば、CCDカメラによりフィルムを直接撮影して、予め求めた明度と粒子数との相関関係から、コンピュータ処理により短時間で粒子数を測定できる。
【0005】
【特許文献1】特開2003-222584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の検査技術では、次のような問題があった。
【0007】
(1)フィルム中の個々の粒子を正確に認識することが難しい。
上記の従来技術では、単位領域当たりの平均明度を求め、この平均明度と予め求めておいた粒子数と明度との関係から粒子数を演算で推測している。そのため、個々の粒子を認識しているわけではなく、求められる粒子数は演算で求めた推測値に過ぎないから正確性に欠ける。
【0008】
一方、フィルムの透過画像に対して、二値化処理を施すことで個々の粒子を顕在化することも考えられる。しかし、二値化のしきい値を適切に設定することが難しく、例えば微細な粒子を見落としてしまうことがある。特に、異方導電性接着フィルムの場合、導電性粒子にアスペクト比が大きく細長い形状の粒子を用いる場合がある。その際、細長い粒子の長径がフィルムを撮影するカメラの光軸に沿って配向されていると、その粒子は極めて微細な粒子としてしか画像中に表されないため、画像中のノイズと区別して把握することが非常に難しい。
【0009】
(2)粒子数以外の特性、特に粒子の配向状態を検知できない。
前述したように、異方導電性接着フィルムの場合、導電性粒子にアスペクト比が大きく細長い形状の粒子を用いる場合がある。その際、細長い粒子の長径がフィルムのどの方向に配向しているのかも重要な特性である。上記従来技術では導電性粒子の数は推測できるものの、その配向状態に関わらず粒子数は変化しないため、配向状態まで検査することは全くできない。特に、上述したように個々の粒子を的確に把握することが困難なため、導電性粒子のサイズを正確に測定することすら期待できない。
【0010】
(3)フィルムの膜厚変動などがあると鮮明な画像を得ることが難しい。
従来の技術に用いられているCCDカメラとフィルムとの間隔は一定に保持されている。そのため、フィルムの膜厚が異なる製品を検査する場合などには、CCDカメラの焦点を正確にフィルムに合わせることができなくなり、フィルムの適正な透過画像を得ることができない。
【0011】
従って、本発明の主目的は、フィルム中に分散する粒子の種々の分散特性を正確に検査することができるフィルムの検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、粒子が分散されたフィルムの透過画像を得て、その画像から微細な粒子と粗大な粒子をそれぞれ顕在化させた2種類の画像を作成し、両画像を利用することで個々の粒子の的確な把握を可能にして、上記の目的を達成する。
【0013】
本発明検査装置は、粒子が分散された光透過性フィルムの一面側に配される光源と、このフィルムの他面側に配されて前記フィルムの透過画像を取得する受像手段と、受像手段で得た原画像から微細粒子を顕在化させて微細粒子顕在画像を作成する微細粒子顕在化手段と、原画像から粗大粒子を顕在化させて粗大粒子顕在画像を作成する粗大粒子顕在化手段と、微細粒子顕在画像と粗大粒子顕在画像から検査画像を作成する検査画像作成手段と、検査画像中の粒子の特性を演算する特性演算手段とを有することを特徴とする。
【0014】
この検査装置では、粒子が分散されたフィルムの透過画像にコンピュータを用いて画像処理を施し、微細な粒子と粗大な粒子をそれぞれ顕在化させた2種類の画像を作成する。これら両画像を用いることで、粗大な粒子のみならず微細な粒子も明確化された検査画像を作成し、この検査画像から粒子の特性を演算する。そのため、フィルム中の個々の粒子を正確に把握することができ、各粒子の種々の特性を演算することが可能になる。
【0015】
以下、本発明装置をより詳しく説明する。
【0016】
本発明装置では、光源と受像手段の間に検査対象のフィルムが配されるようにする。この光源と受像手段の配置により、フィルムの透過画像を得ることができる。
【0017】
フィルムは、光源と受像手段との間において、走行させることが好ましい。フィルムを走行させて、順次フィルム長手方向の異なる位置における検査を実行することで、フィルムの一部、主要部、或いは全部など、任意の位置における検査を短時間で行なうことができる。
【0018】
光源は、受像手段でフィルムの透過画像を取得できるのに十分な明るさを有するものであればよい。
【0019】
受像手段は、フィルムの透過画像を撮影する。代表的には、多数の撮像素子を有し、各素子で受光した光の強度を電気信号に変換出力するCCDカメラが好適に利用できる。この受像手段によりフィルムの原画像を得る。
【0020】
微細画像顕在化手段は、微細な粒子を正確に把握できるように、透過画像から粗大な粒子を除去し、微細な粒子を顕在化できるものであればよい。例えば、原画像に膨張収縮処理を施して膨張収縮画像を得る膨張収縮手段と、原画像と膨張収縮画像との差分画像を作成する差分画像作成手段と、この差分画像を二値化処理して二値化差分画像を得る二値化手段とを有するものが挙げられる。粗大な粒子と微細な粒子が含まれる原画像に膨張収縮処理を施すと、粗大な粒子が拡大され、微細な粒子が実質的に除去される。一般に、膨張処理は、ある画素の近傍(例えば4方あるいは8方)に一つでも1(例えば白)があれば、その画素を1にする処理であり、収縮処理は、ある画素の近傍に一つでも0(例えば黒)があれば、その画像を0にする処理である。例えば、ほぼ白の絶縁バインダ中にほぼ黒の粒子が分散された原画像の場合、この原画像に膨張処理を施すと、微細な粒子は除去され、この膨張画像に収縮処理を施すことで、残存した粗大な粒子が明確になった膨張収縮画像が生成される。
【0021】
膨張収縮画像を作成したら、原画像から膨張収縮画像を除して差分画像を得る。この処理により、原画像から粗大な粒子は除去されて、微細な粒子が表された差分画像が作成される。そして、この差分画像を二値化処理することで、微細な粒子が顕在化され、粗大な粒子が除去された二値化差分画像を得ることができる。
【0022】
一方、粗大粒子顕在化手段は、粗大な粒子を正確に把握できるように、透過画像から微細な粒子あるいは微細な粒子と区別しにくいノイズを除去し、粗大な粒子を顕在化できるものであればよい。例えば、原画像を二値化処理して二値化原画像を得る二値化手段を有するものが挙げられる。この二値化処理により、二値化するしきい値よりも明るい画素は白、しきい値よりも暗い画素は黒に二極化されるため、微細な粒子やノイズは除去されて粗大な粒子を顕在化させることができる。
【0023】
検査画像作成手段は、例えば、二値化原画像と二値化差分画像を加算して検査画像を作成することが挙げられる。上述の二値化原画像と二値化差分画像は、各々粗大粒子が顕在化された画像、微細粒子が顕在化された画像であり、両画像を加算することで、全ての粒子を漏れなく把握することができる。従って、この検査画像に基づいて粒子性状の検出を行えば、より正確なフィルムの検査を実現することができる。
【0024】
特性演算手段は、検査画像から粒子の性状を演算する。粒子の性状の具体例としては、アスペクト比、面積、粒径、粒子密度、粒子ピッチ、一定領域内の粒子存在数および一定領域内の粒子不存在面積の少なくとも一つが挙げられる。これらの多数の粒子特性を正確に求めることで、フィルム中の粒子の数のみならず、配向性など従来では的確に検知できなかった項目も計測することができる。
【0025】
また、本発明装置では、前記フィルムと受像手段との距離を可変とする駆動機構を有することも望ましい。駆動機構はフィルム側、受像手段側のいずれを駆動してもよいが、走行されるフィルム側を駆動するよりは受像手段を駆動する方が簡易な構成とできる。駆動機構の具体例としては、受像手段をフィルムに対して上下動させる昇降機構が挙げられる。その場合、前記受像手段は、フィルムと受像手段との距離が異なる各位置で予備画像を取得し、これら複数の予備画像の中から最も受像手段の焦点が的確な画像を原画像として選択することができる。
【0026】
つまり、各予備画像を微分処理して、予備画像中における粒子輪郭部の輝度の微分値を演算する微分処理手段と、予備画像中における粒子の面積を演算する面積演算手段と、各予備画像から求めた微分値と粒子面積の比率「微分値/粒子面積」をフォーカス値として求め、このフォーカス値が極大となる予備画像を原画像と判断するフォーカス判定手段とを有することが好ましい。
【0027】
受像手段、例えばカメラのフォーカスが甘い場合、予備画像上で粒子はぼけて表現され、かつ適正なフォーカスの画像上の粒子よりも大きく表現される。これに対して、フォーカスが適切な場合、予備画像上で粒子は鮮明に表現され、かつフォーカスが甘い画像上の粒子よりも小さく表現される。そのため、予備画像中における粒子輪郭部の輝度の微分値を演算すれば、フォーカスの甘い予備画像では微分値が小さくなり(輪郭部での輝度の変化割合が小さくなり)、フォーカスの適切な予備画像では微分値が大きくなる(輪郭部での輝度の変化割合が大きくなる)。また、予備画像中における粒子の面積を計測すれば、フォーカスの甘い予備画像では粒子面積が大きくなり、フォーカスの適切な予備画像では粒子面積が小さくなる。そして、各予備画像から求めた微分値と粒子面積の比率「微分値/粒子面積」をフォーカス値として求めることで、粒子の本来の大きさの影響を排除してフォーカスの適正度合いを判断することができる。すなわち、フォーカス値の極大点の得られた予備画像が最もフォーカスの合った画像であると判断することができる。
【0028】
本発明装置の検査対象には、粒子が分散されるフィルムが好適である。透過画像を得る必要上、透明または半透明のフィルムとする。代表的には、絶縁バインダの中に多数の導電性粒子が分散された異方導電性接着フィルムが挙げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明装置によれば、単に原画像を二値化処理したりするだけでなく、微細粒子が顕在化された画像と、粗大粒子が顕在化された画像の双方を組み合わせて検査画像を作成するため、微細な粒子から粗大な粒子までを漏れなく正確に把握することができる。そのため、個々の粒子が鮮明に表された検査画像を得ることができ、その検査画像から種々の粒子性状を画像処理により求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、異方導電性フィルムの検査を行う場合を例として、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
(装置構成)
図1は本発明装置の概略構成図、図2は同装置の機能ブロック図である。
【0032】
本発明装置は、水平面上を一方向に走行される異方導電性フィルム500の上方に配されるカメラ100と、同フィルム500の下方に配置される照明200と、カメラ100で撮像した画像に対して画像処理を行なう画像処理装置(コンピュータ300)と、検査結果などを表示するモニタ400とを有する。
【0033】
ここで、フィルム500は、透明状の絶縁バインダ中に多数の導電性粒子が分散されたもので、図示しないサプライリールから供給され、透明のガラス板600上を走行して、同じく図示しない巻き取りリールで巻き取られていく。このフィルム500の搬送機構にはエンコーダ610が設けられ、このエンコーダ610で検知されるリールの回転数からフィルム500の長手方向の進行位置を把握することができる。
【0034】
また、カメラ100にはCCDカメラを用いた。照明200から照射された光はフィルム500を透過し、その透過光をカメラ100が捉えて、その透過光を画像データに変換出力する。このデータはカメラアンプ110で増幅されて、後述する予備画像あるいは原画像として画像メモリ310に記憶される。
【0035】
このカメラ100は、X-Zステージ120に支持されて、カメラを上下動すると共にフィルムの幅方向にもスライド可能に構成されている。X-Zステージ120は、コンピュータ300からの指令により、モータドライバ320を介して動作を制御される。カメラ100の昇降動作は、後述するように、カメラ100の焦点をフィルム500に合わせる際に利用される。そのため、本例のカメラ100は固定焦点式のものを用いている。
【0036】
照明200は、コンピュータ300の指令により発光されるストロボ照明を用いた。このストロボ照明の光は、光ファイバを介してカメラ100と対向する位置に配された集光レンズから照射される。
【0037】
上記カメラ100および照明200には、エンコーダ610の信号に対応して同期信号発生部330から同期信号が出力され、ストロボ照明の発光に対応してカメラ100はフィルム500の透過画像を取得する。これにより、フィルム500の長手方向におけるどの位置の画像を取得しているかを認識することができる。また、フィルム500の幅方向のどの位置の画像を取得しているかはモータドライバ320からX-Zステージ120への指令信号から把握することができる。
【0038】
一方、画像メモリ310に記憶された画像データは、カメラ100のフォーカスの適正判断および検査画像の作成に利用される。フォーカスの適性判断は、画像メモリ310に取得された予備画像を用い、微分処理手段341で導電性粒子の輪郭部における輝度の微分値を求めると共に、面積演算手段342で同粒子の面積を演算して、フォーカス判定手段343で、この微分値と面積との比率からフォーカスの最も合った予備画像を原画像として選択する。
【0039】
選択された原画像は、導電性粒子のうち微細な粒子を顕在化させる微細粒子顕在化手段350と、粗大な粒子を顕在化させる粗大粒子顕在化手段360とで処理されて、各々微細粒子顕在画像および粗大粒子顕在画像を作成する。続いて、これら両顕在画像を利用することで、検査画像作成手段370により検査画像を作成する。
【0040】
得られた検査画像に対して、特性演算手段380でフィルム500の特性評価を行う。ここでは、導電性粒子のアスペクト比、面積、粒径、粒子密度、粒子ピッチ、一定領域内の粒子存在数および一定領域内の粒子不存在面積を演算で求める。
【0041】
そして、これら評価結果をモニタ400に表示する。モニタ400は、必要に応じて、検査の各段階で取得・生成される各画像、つまり予備画像、原画像、微細粒子顕在化画像、粗大粒子顕在化画像、差分画像、二値化原画像、二値化差分画像も表示する。
【0042】
(処理手順)
図3は本発明装置の処理手順を示すフローチャートである。以下の説明で、装置の各構成部については図1および図2を参照する。
【0043】
<ピント合わせと原画像の選択>
正確にピントの合った透過画像を得るため、まず、X-Zステージ120でカメラ100を昇降して、フィルム500に対するカメラ100の垂直位置を変化させ、各位置での予備画像を取得する(ステップS1)。予備画像は検査画像を作成する元になる原画像の候補群となるもので、各カメラ位置で撮影されたフィルム500の透過画像から構成される。
【0044】
得られた各予備画像の輝度データを微分処理手段341で微分する(ステップS2)。この微分結果から、いずれかの導電性粒子の輪郭部の微分値を取得する(ステップS3)。この微分値は、粒子の輪郭部における輝度の変化割合を示すもので、値が大きいほど粒子が明確に画像上に表されピントが合っていることを示し、値が小さいほど不鮮明に表されてピントがずれていることを示す。
【0045】
次に、面積演算手段342で、微分値を求めた対象粒子の面積を演算する(ステップS4)。一般に、カメラのピントがずれた画像では、粒子の輪郭がぼけて表されるため粒子面積は大きくなり、ピントが合った画像では、粒子の輪郭が鮮明で粒子面積は小さくなる。
【0046】
この微分値と粒子面積を各予備画像ごとに求め、さらに比率「微分値/粒子面積」をフォーカス値として各予備画像ごとに求める(ステップS5)。比率「微分値/粒子面積」を求めることで、粒子の本来の大きさの影響を排除してフォーカスの適正度合いを判断することができる。この判断は、フォーカス判定手段343により、比率「微分値/粒子面積」の極大点を求めることにより行う。
【0047】
フィルムとカメラ間の垂直距離とフォーカス値の関係の一例を図4のグラフに示す。このグラフに示すように、フィルム・カメラ間の垂直距離が小さすぎても大きすぎてもフォーカス値は小さく、中間に極大点が存在することがわかる。この極大点の得られた予備画像が最もピントの合った予備画像であり、その予備画像を原画像として選択すればよい(ステップS6)。
【0048】
<微細粒子の顕在化>
次に、原画像が選択されれば、この原画像を一旦画像メモリに記憶する(ステップS7)。この原画像は、フィルムの透過画像であるが、そのままでは導電性粒子を正確に認識することが難しいため、以下に述べる画像処理を施して、導電性粒子の性状判断に最適な検査画像の作成に利用する。
【0049】
検査画像の作成には、まず原画像における微細粒子の顕在化を行う。この処理では、原画像に対して膨張収縮手段351にて膨張収縮処理を施し、一旦微細な粒子を除去し、粗大な粒子のみが表された膨張収縮画像を得る(ステップS8)。
【0050】
続いて、差分画像作成手段352にて原画像から膨張収縮画像を減じて、差分画像を作成する(ステップS9)。膨張収縮画像では粗大な粒子のみが表されているため、原画像から膨張収縮画像を減じれば、微細な粒子のみが残存した差分画像が得られる。そして、この差分画像を二値化手段353で二値化することにより、微細な粒子が顕在化された微細粒子顕在化画像(二値化差分画像)を作成する(ステップS10)。つまり、この膨張収縮処理、差分処理および二値化処理を組み合わせることで、微細粒子顕在化画像を作成することができる。
【0051】
<粗大粒子の顕在化>
一方、原画像から粗大粒子の顕在化された粗大粒子顕在化画像を作成する。この顕在化画像は、画像メモリ310から原画像を読み出し、その原画像に対して二値化処理手段361で二値化処理を施して二値化原画像を得ることで作成される(ステップS11)。つまり、原画像を二値化することで、ある程度微細な粒子は実質的に除去され、結果的に粗大な粒子が顕在化されることになる。
【0052】
<検査画像の作成と評価>
次に、二値化差分画像と二値化原画像とを用いて検査画像作成手段370により検査画像を作成する。ここでは二値化差分画像と二値化原画像とを加算することで検査画像を作成する(ステップS12)。これら2つの画像の加算により、粗大な粒子のみならず、微細な粒子も明確に表される画像を得ることができる。
【0053】
あらゆるサイズの導電性粒子が明確に表された検査画像から同粒子の特性を演算で求める(ステップS13)。図5に検査画像における粒子の状態を模式的に示す。この図では、カメラで観察される平面図の他、実際にはカメラで観察されないフィルムの側面から見た粒子の配置状態も推定図として示している。細長い粒子の長径がフィルムの厚さ方向に沿って配向している場合を(A)図に、この長径とフィルムの厚さ方向とがランダムになっている場合を(B)図に示している。この平面図から明らかなように配向性のある粒子(ハッチング表示)はアスペクト比がほぼ1となり、配向性にばらつきのある粒子はアスペクト比がばらばらとなるため、粒子のアスペクト比を求めることができれば、配向性を検査することができる。
【0054】
本例では、この検査画像から特性演算手段380により、粒子数、粒径、粒子面積、アスペクト比を求める。各項目の演算方法は次の通りである。
【0055】
粒子数:1視野内に存在する粒子数をカウントする。
粒径:各粒子の最大径をその粒子の粒径とする。最大径は、図6(A)に示すように粒子(ハッチング表示)をX-Y軸上に投影し、図6(B)に示すように、X-Y軸を回転させたときに生じる最大投影長とする。
粒子面積:粒子を構成する領域の画素数から算出する。
アスペクト比:粒径/粒子幅から算出する。この粒径は前記最大径のことであり、粒子幅には図6(B)に示す短径を用いる。
【0056】
そして、これら粒子の特性評価結果をモニタ400に表示する(ステップS14)。
【0057】
このように、本発明装置を用いれば、個々の粒子を画像上で明確に把握することができ、異方導電性フィルムの導電性粒子の性状を正確に把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、粒子が分散された光透過性のフィルムの検査に利用することができる。特に、電子部品製造分野で利用される異方導電性フィルムの検査に有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明装置の概略構成図である。
【図2】本発明装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】フィルムからカメラの垂直距離とフォーカス値との関係を示すグラフである。
【図5】フィルム中の粒子の状態を示す模式図である。
【図6】フィルム中の粒子の特性を演算する手法の説明図である。
【符号の説明】
【0060】
100 カメラ 110 カメラアンプ 120 X-Zステージ
200 照明 300 コンピュータ 310 画像メモリ 320 モータドライバ
330 同期信号発生部 341 微分処理手段 342 面積演算手段
343 フォーカス判定手段 350 微細粒子顕在化手段 360粗大粒子顕在化手段
351 膨張収縮手段 352 差分画像作成手段 353、361 二値化手段
370 検査画像作成手段 380 特性演算手段
400 モニタ 500 フィルム(異方導電性フィルム) 600 ガラス板
610 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が分散された光透過性フィルムの一面側に配される光源と、
このフィルムの他面側に配されて前記フィルムの透過画像を取得する受像手段と、
受像手段で得た原画像から微細粒子を顕在化させて微細粒子顕在画像を作成する微細粒子顕在化手段と、
原画像から粗大粒子を顕在化させて粗大粒子顕在画像を作成する粗大粒子顕在化手段と、
微細粒子顕在画像と粗大粒子顕在画像から検査画像を作成する検査画像作成手段と、
検査画像中の粒子の特性を演算する特性演算手段を有することを特徴とするフィルムの検査装置。
【請求項2】
微細画像顕在化手段は、
原画像に膨張収縮処理を施して膨張収縮画像を得る膨張収縮手段と、
原画像と膨張収縮画像との差分画像を作成する差分画像作成手段と、
この差分画像を二値化処理して二値化差分画像を得る二値化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルムの検査装置。
【請求項3】
粗大粒子顕在化手段は、
原画像を二値化処理して二値化原画像を得る二値化手段を有することを特徴とする請求項2に記載のフィルムの検査装置。
【請求項4】
検査画像作成手段は、二値化原画像と二値化差分画像を加算して検査画像を作成することを特徴とする請求項3に記載のフィルムの検査装置。
【請求項5】
特性演算手段は、粒子のアスペクト比、面積、粒径、粒子密度、粒子ピッチ、一定領域内の粒子存在数および一定領域内の粒子不存在面積の少なくとも一つを求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムの検査装置。
【請求項6】
前記フィルムと受像手段との距離を可変とする駆動機構を有し、
前記受像手段は、フィルムと受像手段との距離が異なる各位置で予備画像を取得し、
さらに、各予備画像を微分処理して、予備画像中における粒子輪郭部の輝度の微分値を演算する微分処理手段と、
予備画像中における粒子の面積を演算する面積演算手段と、
各予備画像から求めた微分値と粒子面積の比率「微分値/粒子面積」をフォーカス値として求め、このフォーカス値が極大となる予備画像を原画像と判断するフォーカス判定手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−64541(P2006−64541A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247464(P2004−247464)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】