説明

フレキシブルプリント基板およびその製造方法

【課題】リジッド基板のように部品の高密度化実装が可能な新規なフレキシブルプリント基板の提供。
【解決手段】フィルム状基材10上に導電層12と絶縁層14および文字層16を順に重ね合わせると共に、部品が実装される非屈曲領域A1の導電層12の残存量を屈曲領域A2の導電層12の残存量よりも多くする。これによって、非屈曲領域A1の剛性や機械的強度が高くなっているため、部品実装時に撓んだりすることがなくなってハンドリングが向上してリジッド基板と同様な高密度な部品実装が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密電子機器などに用いられるフレキシブルプリント基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にパソコンやプリンタや、DVDプレーヤー、ゲーム機器などの精密電子機器には、その電気部品の実装部分として多くのプリント基板が用いられているが、このうちヘッダなどの可動部への配線やプリント基板間の配線などは、耐屈曲性に優れたフレキシブルプリント配線板(基板)が多用されている。
このフレキシブルプリント配線板は、一般に耐熱性や耐屈曲性に優れたシートまたはフィルム状の基材上に導電線路を形成すると共にその上を絶縁層で被覆し、その導電線路の両端にそれぞれ接続端子などを設けたものであり、さらにその材料や構造などについては従来から様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1には、ハードディスクドライブ(HDD)の配線などに用いられるフレキシブルプリント配線板として、ポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などからなるベースフィルム上に銅箔を接着し、その銅箔をエッチングして配線となるべきところを残して他の部分を除去することによってパターン回路を形成し、このパターン回路の上に保護シートを積層させて形成したものが開示されている。
【0004】
また、以下の特許文献2には、ポリイミドフィルム上に導体を形成し、その導体をエッチングして回路を形成したフレキシブルプリント配線板が開示されている。
【特許文献1】特開2003−298198号公報
【特許文献2】特開2004−312042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近の精密電子機器のうち特に携帯用の精密電子機器、例えば、携帯電話、モバイル用ノートパソコン、PDA、携帯用音楽プレーヤー、携帯用ゲーム機などの携帯性を重視した精密電子機器の場合は、そのサイズの軽薄・短小化の傾向が著しく、これに伴い、これらに用いられるプリント基板も小型、軽量、薄型化の要求が高くなってきている。
【0006】
しかしながら、従来のリジッドなプリント基板(以下、適宜「リジッド基板」と略す)は、ガラスエポキシ樹脂などの硬くて厚い材料でできているため、その小型、軽量、薄型化には限界がある。
一方、フレキシブルプリント基板(以下、適宜「フレキシブル基板」と略す)は、前述したようにポリイミドフィルムなどを基材として用いているため、基板全体としての柔軟性は勿論、軽量、薄型化は可能であるが、その柔軟性故、部品実装時に基板が撓んでしまい、正確な位置決めや部品取付け時のハンドリングが難しく、リジッド基板のような部品の高密度化実装が極めて困難である。
【0007】
また、従来のフレキシブル基板に部品を実装するには、銅箔の上に積層された保護シート(カバーレイ)の一部に開口部を形成して実装部品をはんだ付けするためのパッドやランドを形成する必要があるが、この開口部は、一般に金型プレスや機械的切削によって形成することになるため、その精度に限界があり、このことが高密度な加工ができないといった大きな要因となっている。
【0008】
さらに、従来のフレキシブル基板のカバーレイ上には、従来のリジッド基板で採用しているような通常のシンボルインクが密着し難いため、シンボルインクによる高精度なシンボル層の形成が難しいといった問題がある。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その主たる目的は、リジッド基板のように部品の高密度化実装が可能な新規なフレキシブルプリント基板を提供するものである。
また、他の主な目的は、高精度なシンボル層を容易に形成できる新規なフレキシブルプリント基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1のフレキシブルプリント基板は、
フィルム状の基材の片面あるいは両面または内層に導電層を備えると共に、当該導電層上に絶縁層層を備えたことを特徴とするフレキシブルプリント基板であって、屈曲領域と非屈曲領域とを有し、当該非屈曲領域の導電層の残存量が前記屈曲領域の導電層の残存量よりも多くなっていることを特徴とするものである。
また、請求項2のフレキシブルプリント基板は、
フィルム状の基材の片面あるいは両面または内層に導電層を備えると共に、当該導電層上に絶縁層を備えたことを特徴とするフレキシブルプリント基板であって、屈曲領域と非屈曲領域とを有し、当該非屈曲領域の導電層の厚さが前記屈曲領域の導電層の厚さよりも厚くなっていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3のフレキシブルプリント基板は、
請求項1または2に記載のフレキシブルプリント基板において、前記基材がポリイミド樹脂またはアラミド繊維樹脂からなると共に、前記導電層が銅箔からなり、前記絶縁層がレジストインクからなることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載のフレキシブルプリント基板は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板において、前記絶縁層上にさらに文字層を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法は、
フィルム状の基材上に導電層を形成した後、当該導電層をエッチングして所定の導電回路を形成すると共に当該導電回路上を絶縁層で覆ってなるフレキシブルプリント基板の製造方法において、前記ベースフィルム上の導電層をエッチングして所定の導電回路を形成するに際し、屈曲領域の導電層の残存量が、非屈曲領域の導電層の残存量よりも多くなるように前記導電層をエッチングすることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法は、
フィルム状の基材上に導電層を形成した後、当該導電層をエッチングして所定の導電回路を形成すると共に当該導電回路上を絶縁層で覆ってなるフレキシブルプリント基板の製造方法において、前記基材上に導電層を形成するに際し、非屈曲領域の導電層の厚さが屈曲領域の導電層の厚さよりも厚くなるように形成したことを特徴とするものである。
また、請求項7に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法は、
請求項5または6に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法において、前記導電回路上に形成される絶縁層は、当該導電回路上に当該導電回路の一部が露出するようにレジストインクを形成してなることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項8に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法は、
請求項7に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法において、前記レジストインクを塗布する前に、前記基材および導電回路の表面に微小な凹凸を形成することを特徴とするものである。
また、請求項9に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法は、
請求項7または8に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法において、前記絶縁層を形成した後、当該絶縁層上にシンボルインクからなる文字層をさらに形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、非屈曲領域の導電層の残存量が屈曲領域の導電層の残存量よりも多くなっているため、非屈曲領域の剛性を屈曲領域よりも高くすることができる。
従って、この非屈曲領域に関しては、部品の実装に際して正確な位置決めや取付け精度などのハンドリングの向上、並びに部品取付け後の安定性や耐久性などを確保することが可能となるため、従来のリジッド基板と同様に部品の高密度化実装が可能となる。
【0015】
また、基材がフィルム状をしているため、従来のフレキシブル基板と同様に耐屈曲性を発揮できると共に、基板全体の軽量、薄型化が達成できる。
また、請求項2に記載の発明によれば、非屈曲領域の導電層の厚さが前記屈曲領域の導電層の厚さよりも厚くなっているため、請求項1の発明と同様に非屈曲領域の剛性を屈曲領域よりも高くすることができる。
【0016】
これによって、請求項1と同様にこの非屈曲領域に対し、基板の片面もしくは両面へ部品の高密度化実装が可能になると共に、耐屈曲性と軽量、薄型化が達成できる。
また、請求項3に記載の発明によれば、前記基材がポリイミド樹脂またはアラミド繊維樹脂からなるため、薄型・軽量化と耐屈曲性を発揮することができる。また、前記導電層が銅箔からなるため、その厚さや残存量を変化させるだけで、その領域の剛性や機械的強度を容易に調整することができる。さらに、前記絶縁層がレジストインクからなるため、その絶縁層に対して端子やパッド用の開口部を高精度かつ容易に形成できる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、その絶縁層上にさらに文字層を備えたため、その文字や記号などが認識しやすく、また、その絶縁層上の任意の位置にリジッド基板のような高精度な文字や記号などを容易に形成することができる。
また、請求項5および6に記載の発明によれば、請求項1および2に示したような耐屈曲性と軽量、薄型化を図りつつ従来のリジッド基板と同様に部品の高密度化実装が可能なフレキシブルプリント基板を容易に得ることができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明によれば、請求項3の発明と同様にその絶縁層に対して端子やパッド用の開口部を高精度かつ容易に形成できる。
また、請求項8に記載の発明によれば、
前記レジストインクを塗布する前に、前記基材および導電回路の表面に微小な凹凸を形成したため、前記基材および導電回路の表面に塗布されたレジストインクがその微小な凹凸に入り込んで喰い込むように硬化することでアンカー効果が発揮されて絶縁層の密着性が向上する。
また、請求項9に記載の発明によれば、請求項4の発明と同様に、その絶縁層上にリジッド基板のような高精度な文字層を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明に係るフレキシブルプリント基板100の実施の一形態を示す部分拡大断面図である。
図において、10は厚さが例えば数十μm〜数百μm程度のフィルム状の基材であり、その両面には、例えば厚さが数μm〜数十μmの銅(Cu)箔などの金属箔からなるからなる導電層12,12が積層されている。
【0020】
さらに、この導電層12,12および基材10上には、例えば厚さが数μm〜数十μmの絶縁層(ソルダーレジスト層)14,14が積層して形成されていると共に、その絶縁層14,14上には、文字や記号などからなる文字層16,16が形成されている。
この基材10は、特に耐熱性および耐屈曲性に優れた材料、例えば、前述したような従来のフレキシブル基板のベースフィルムとして用いられているポリイミド樹脂(polyimide)やアラミド繊維樹脂(aromatic polyamide fiber)などから形成されている。
【0021】
ここで、アラミド繊維樹脂は、その分子骨格が芳香族(ベンゼン環)からなるポリアミド繊維を分散させた樹脂であり、その耐屈曲性が一般に数百回程度であって、耐屈曲性が数万回以上のポリイミド樹脂に比べると劣ってしまうが、コストが比較的安価であるという長所を有している。従って、本実施の形態に係るフレキシブルプリント基板100の基材10を構成する材料として通常は、ポリイミド樹脂を用いることが望ましいが、繰り返し屈曲を受けないような部位に用いる場合などには、アラミド繊維樹脂を用いることも可能である。
【0022】
導電層12は、銅箔や銀、金箔などの良導電材料(金属箔)から構成されており、メタライジング法やキャスティング法あるいはラミネート法などの公知の方法によって基材10上に積層するように形成されている。
例えば、メタライジング法による積層方法としては、ポリイミド樹脂からなる基材10上にニッケル合金をスパッタ蒸着してそのスパッタ膜の上に硫酸銅(CuSO4)をメッキする方法などを用いることができる。また、キャスティング法による積層方法としては、例えば、銅箔上にポリイミド樹脂ワニスを塗布し、この塗布膜をヒータによって加熱する方法などを用いることができる。さらに、ラミネート法による積層方法としては、例えば、接着剤付きポリイミド樹脂からなる基材10上に銅箔をロール型ヒートプレスなどによってラミネートする方法などを用いることができる。
【0023】
なお、図示するようにこの基材10に複数のスルーホール18を形成すると共に、そのスルーホール18を介して基材10両面の導電層12,12同士を導通する場合は、そのスルーホール18内面にも導電材を形成する必要があるため、このような構成の場合は、銅メッキによるメタライジング法が採用されることになる。
一方、絶縁層14は、ソルダーレジストインク(合成樹脂)などの絶縁材料からなり、前述したような従来のリジッド基板上に形成されるレジスト層とほぼ同様の成分および製法によって形成することができる。
【0024】
ここでこのようなソルダーレジストインクなどからなる絶縁層14は、従来のリジッド基板の製造装置をそのまま利用することで比較的容易に形成することができるが、本発明のような柔軟な基材(ポリイミド樹脂)10上に、従来のリジッド基板で用いられているソルダーレジストインクからなるレジスト層をそのまま塗布した場合には、数百回程度の耐屈曲性は発揮できるものの、通常のフレキシブル配線板に要求されるような屈曲試験に耐えることができず、一部で剥がれや割れが生じたりすることが分かった。
【0025】
そこで本発明で用いることが望ましいソルダーレジストインク(合成樹脂)としては、基材10(ポリイミド樹脂)と銅箔の屈曲特性に近く、かつ基材10(ポリイミド樹脂)と銅箔とも密着性に優れているものを用いることが望ましい。
具体的には、アクリル酸エステル樹脂、臭素化アクリル酸エステル樹脂、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどを用いることができる。
【0026】
なお、このソルダーレジストインクを用いて実際に絶縁層(レジスト層)14を形成し、その屈曲試験を実施したところ、屈曲数が数百回を超えても絶縁層に剥がれや割れが一切発生せず、カバーレイを採用した従来のフレキシブル基板に劣らない耐屈曲性を発揮することができた。
その一方、このようなソルダーレジストインクからなる絶縁層(レジスト層)14を基材10や導電層12上へそのまま形成しただけでは、耐屈曲性は満足できても、基材10や導電層12との密着強度が低いため、ピール強度は十分でないことが分かった。
【0027】
そのため、本発明では図2に示すようにこのソルダーレジストインクからなる絶縁層(レジスト層)14を形成する前に、基材10(ポリイミド樹脂)および導電層12の表面を化学処理(ケミカル研磨)して微小な凹凸を形成するようにしたものである。
具体的には、この基材10(ポリイミド樹脂)、導電層12(銅箔)に対して酸性の薬液例えば、過酸化水素、硫酸を用いて表面改質を行うことでその表面に微小な凹凸を形成することができる。
【0028】
これによって、この基材10および導電層12上に塗布されるソルダーレジストインクがこの微小な凹凸に入り込んで喰い込むように硬化することでアンカー効果が発揮されて基材10および導電層12と絶縁層14との密着性が大幅に向上することになる。
そして、実際にこのような表面改質を行って絶縁層14を積層させた後に同様なピ−ル強度試験を行ったところ、カバーレイを採用した従来のフレキシブル基板にも劣らない優れた密着強度を発揮することができた。
【0029】
また、このようなレジストインクからなる絶縁層14は、従来のリジッド基板で用いられているシンボルインクとの密着性に優れており、従来のリジッド基板のそれと同様に、シルクスクリーン印刷や凸版印刷、インクジェット方式などの公知・公用の印刷法によって容易に形成することができるため、基板の最表面に高精度なシンボル層16を明確かつ容易に形成することができる。
【0030】
なお、本発明で用いることができるシンボルインクとしては、例えば、エポキシ樹脂ビスフェノールA型エポキシ樹脂、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、シリカ、アミン化合物などがある。
また、図1および図3に示すように、本発明のフレキシブルプリント基板100は、さらに非屈曲領域A1と、屈曲領域A2といった2つの領域が一体的に形成されている(なお、図3のフレキシブルプリント基板100にあっては、絶縁層14および文字層16については省略)
非屈曲領域A1は、種々な電子実装部品(図示せず)が高密度に実装される領域であり、その非屈曲領域A1の絶縁層14には、導電層12の導電回路12aに対して実装部品をはんだ付けするための端子やパッド用の開口部20(図1)が形成されると共に、その導電回路12aの周囲には、この導電層12をメッキによって形成したときの、残り銅箔部分が可能な限りそのまま残存している。
【0031】
これによってその非屈曲領域A1の剛性や機械的強度が、これがない場合に比べて飛躍的に向上することになるため、部品実装時に基板が撓んでしまうことがなくなり、正確な位置決めや部品取付け時のハンドリングが容易となり、従来のリジッド基板のような高密度な部品実装が可能となる。
一方、屈曲領域A2は、部品が実装されない、主に配線部分であり、その配線部分を除く他の銅箔は全て可能な限り除去されているため、フィルム状基材10(および絶縁層14)本来の優れた柔軟性と耐屈曲性を発揮することができる。
【0032】
そして、図4はこのような構成をしたフレキシブルプリント基板100の製造工程の一例を示したものである。
図示するように、本発明のフレキシブルプリント基板100の製造工程は、(1)導電層12形成工程と、(2)絶縁層14形成工程と、(3)文字層16形成工程といった3つの工程に大別することができる。
【0033】
(1)先ず、導電層12形成工程は、予め所定のスルーホール18が形成されたフィルム状のポリイミド樹脂上にメタライジング法によって銅メッキ(銅箔)を施した後、所定の回路パターンが形成されるようにマスキングを行った後、塩化第二鉄(FeCl)の溶液や塩酸(HClaq)などによってその回路パターンの周縁部に沿ってエッチングを行って導電回路12aを形成すると共に、その導電回路12aの周囲の銅箔12bを可能な限りそのまま残すようにする。図3の例では、導電回路12aやスルーホール18の外縁に沿って銅メッキ(銅箔)が一定の幅(例えば、20μm)で除去されており、その外側の銅箔部分12bはそのまま除去されずに残った状態となっている。
【0034】
(2)次に、絶縁層14形成工程は、従来のリジッド基板で用いられているレジスト印刷機などを用いてその導電層12上にレジストインクを形成した後、硬化炉に所定時間(例えば、2時間程度)投入して熱硬化もしくはUV硬化させ、その後、キュア炉にて所定時間(例えば、1時間程度)キュア処理して導電層12との密着を安定させる。なお、このレジストインクを形成するに際して開口部20を除くようなパターンで形成すれば、その後に、端子やパット用の開口部20も同時に形成できることはいうまでもない。
【0035】
(3)そして、文字層16形成工程は、同じく従来のリジッド基板で用いられているレジスト印刷機と同様な印刷機を用いてシンボルインクをこの絶縁層14上に塗布した後、硬化させる。なお、このシンボルインクが紫外線硬化樹脂の場合は、そのシンボルインクに紫外線(UV)を照射することで短時間(数秒)でこれを硬化させることができる。
その後、このようにして絶縁層14上に所定の文字層16を形成したならば、裁断機(プレス、ルータ)を用いてこの積層板を所定の製品形状にカットすることで図1および図3に示すような本発明のフレキシブルプリント基板100を得ることができる。
【0036】
このように本発明は基材10として耐屈曲性に優れた柔軟なポリイミドフィルムなどを用い、その上に銅箔などからなる導電層12とソルダーレジストインクなどからなる絶縁層14およびシンボルインクなどからなる文字層16を順に重ね合わせて形成したことから、薄型・軽量で耐屈曲性や密着性に優れたフレキシブルプリント基板100を容易に得ることができる。
【0037】
そして、このようにして得られた本発明のフレキシブルプリント基板100は、さらに部品が実装される非屈曲領域A1の導電層12の残存量が屈曲領域A2の導電層12の残存量よりも多くなって剛性や機械的強度が高くなっているため、部品実装時に撓んだりすることがなくなってハンドリングが向上するため、リジッド基板と同様な高密度な部品実装が可能となる。
【0038】
また、この導電層12上にはソルダーレジストインクなどからなる絶縁層14が密着して形成されるため、文字や記号などの文字層14を高精度に形成することができる。また、任意の色で文字層14を形成できるため、その文字や記号が極めて見やすくなり、また、部品の配置位置を適所に表記できるため、手実装(人の手ではんだ付けして部品を搭載)する仕様であっても対応することができる。
【0039】
すなわち、従来のフレキシブル基板の場合では絶縁層のカバーレイ上にはシンボルインクが付着しないことから、基板に文字や記号を描くためには、導電回路の余白部分の銅箔をエッチングしたり、カバーレイ自体を文字抜き加工するなどして対応していたが、この方法では精細な文字や記号を描くことが困難であり、真に情報が必要な開口部20などには描くことはできない。また、カバーレイを透過して文字や記号を目視することになるため、見づらくその色調も限られるため、カメラなどによる検査装置による検査ができないといった欠点があった。これに対し、本発明は、最も表面部に文字や記号を描くことになるため、上記のような優れた効果を発揮することができる。
【0040】
なお、図3に示したように、導電回路12aの周囲の銅箔をそのまま残すことによって非屈曲領域A1の剛性や機械的強度を向上させることができるが、その分基板全体の重量が増す傾向にある。そのため、例えば、図6に示すように、導電回路12aの周囲の銅箔部分12bに多数の抜き12c(穿孔)をあけてその一部を除去するようにすれば、元の剛性や機械的強度を殆ど犠牲にすることなく、基板全体の軽量化を達成することができる。
【0041】
また、前述したように導電層12の導電回路12a周囲の銅箔をそのまま残すことにより非屈曲領域A1の剛性や機械的強度を向上させる構造の他に、あるいはこれらの構造と共に、図6や図7に示すように非屈曲領域A1と屈曲領域A2との導電層12(導電回路12a)の厚さを変えるようにしても良い。
すなわち、図6は、基材10の一面に導電層12をメタライジング法によるメッキによって形成するに際し、そのメッキ厚さを非屈曲領域A1と屈曲領域A2とで異ならしめたものであり、図7は、図1のようにさらにその基材10にスルーホール18や開口部20などを形成したものである。
【0042】
これによって、図1や図3に示すようなフレキシブルプリント基板100の構成と同様に、屈曲領域A2の柔軟性を確保しつつ、非屈曲領域A1の剛性や機械的強度を向上させることができる。
また、図8は、この屈曲領域A2の幅が非屈曲領域A1よりも狭く、かつこの屈曲領域A2の一部にも部品を実装する場合の基板の構造の一例を示したものであり、その屈曲領域A2の両側の基材10および導電層12からなる補強領域12d、12dを部品実装後、適当な時期に手作業などで容易に除去できるような形態で残したものである。
【0043】
これによって、この屈曲領域A2の一部に部品を実装する際にこの屈曲領域A2に対して適度な剛性および機械的強度を付与できるため、部品実装時のハンドリングが向上すると共に、部品実装後は、この補強領域12d、12dをその連結部分12eなどから手作業でもぎ取ることでその屈曲領域A2の柔軟性を後から発揮することができる。
さらに、本実施の形態では、基材10の片面あるいは両面に導電層12を形成した例で説明したが、この導電層12をさらにその基材10の内部に形成した構造(いわゆる多層基板)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るフレキシブルプリント基板100の実施の一形態を示す部分拡大断面図である。
【図2】図1中S部を示す部分拡大図である。
【図3】本発明に係るフレキシブルプリント基板100の実施の一形態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るフレキシブルプリント基板100の製造工程の一例を示す図である。
【図5】本発明に係るフレキシブルプリント基板100の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るフレキシブルプリント基板100の他の実施の形態を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明に係るフレキシブルプリント基板100の他の実施の形態を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明に係るフレキシブルプリント基板100の他の実施の形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
100…フレキシブルプリント基板
10…フィルム状基材(ポリイミド樹脂またはアラミド繊維樹脂)
12…導電層(銅箔)
12a…導電回路
12b…銅箔部分
12c…抜き
12d…補強領域
14…絶縁層(ソルダーレジスト層)
16…文字層(シンボル層)
18…スルーホール
20…開口部
A1…非屈曲領域
A2…屈曲領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材の片面あるいは両面または内層に導電層を備えると共に、当該導電層上に絶縁層を備えたフレキシブルプリント基板であって、
屈曲領域と非屈曲領域とを有し、当該非屈曲領域の導電層の残存量が前記屈曲領域の導電層の残存量よりも多くなっていることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
フィルム状の基材の片面あるいは両面または内層に導電層を備えると共に、当該導電層上に絶縁層を備えたフレキシブルプリント基板であって、
屈曲領域と非屈曲領域とを有し、当該非屈曲領域の導電層の厚さが前記屈曲領域の導電層の厚さよりも厚くなっていることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフレキシブルプリント基板において、
前記基材がポリイミド樹脂またはアラミド繊維樹脂からなると共に、前記導電層が銅箔からなり、前記絶縁層がレジストインクからなることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント基板において、
前記絶縁層上にさらに文字層を備えたことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項5】
フィルム状の基材上に導電層を形成した後、当該導電層をエッチングして所定の導電回路を形成すると共に当該導電回路上をレジスト層で覆ってなるフレキシブルプリント基板の製造方法において、
前記基材上の導電層をエッチングして所定の導電回路を形成するに際し、屈曲領域の導電層の残存量が、非屈曲領域の導電層の残存量よりも多くなるように前記導電層をエッチングすることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項6】
フィルム状の基材上に導電層を形成した後、当該導電層をエッチングして所定の導電回路を形成すると共に当該導電回路上を絶縁層で覆ってなるフレキシブルプリント基板の製造方法において、
前記基材上に導電層を形成するに際し、非屈曲領域の導電層の厚さが屈曲領域の導電層の厚さよりも厚くなるように形成したことを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法において、
前記導電回路上に形成される絶縁層は、当該導電回路上に当該導電回路の一部が露出するようにレジストインクを形成してなることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法において、
前記レジストインクを塗布する前に、前記基材および導電回路の表面に微小な凹凸を形成することを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法において、
前記絶縁層を形成した後、当該絶縁層上にシンボルインクからなる文字層をさらに形成することを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−250884(P2007−250884A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73068(P2006−73068)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(591129508)シライ電子工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】