説明

ブッシュ軸受及びそれを用いた自動車のラック−ピニオン式操舵装置

【課題】 ラック軸を、径方向であってピニオンの歯から離れる方向に関しては所定の剛性をもって支持できる一方、軸方向に関しては低い摩擦抵抗をもって移動自在に支持できる上に、クリープ変形及び熱履歴に伴う応力緩和の影響を低減できるブッシュ軸受及びそれを用いた自動車のラック−ピニオン式操舵装置を提供すること。
【解決手段】 自動車のラック−ピニオン式操舵装置1は、ピニオンと、このピニオンの歯に噛み合うラック歯2を有したラック軸3と、ラック軸3が貫通したハウジング4と、ハウジング4に嵌装されていると共にハウジング4に対してラック軸3を軸方向であるA方向に移動自在に支持するブッシュ軸受5とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシュ軸受、特に自動車のラック−ピニオン式操舵装置におけるラック軸を移動自在に支持するために用いて好適なブッシュ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3543652号掲載公報
【0003】
ラック−ピニオン式操舵装置において、ピニオンの歯に噛み合うラック歯を有したラック軸は、ハウジングとしてのギアボックスにブッシュ軸受を介して移動自在に支持される。ブッシュ軸受としては合成樹脂製のものが種々提案されているが、斯かる合成樹脂製のブッシュ軸受は、通常、締め代をもってラック軸を移動自在に支持するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂製のブッシュ軸受において、支持するラック軸に対して大きな締め代をもつようにすると、ラック軸を径方向に関して所定の剛性をもってしっかりと支持できるが、ラック軸をきつく締め付けることになるので、摺動摩擦抵抗が大きくなって、ラック軸を良好な移動特性をもって支持できなくなる一方、支持するラック軸に対して小さな締め代をもつようにすると、ラック軸に対して低い摺動摩擦抵抗をもった良好な移動特性は期待できるが、ラック軸に大きな心ずれやラック軸との間に隙間等が生じ易くなって、径方向の剛性的支持が低下し、ラック軸の移動においてピニオンの歯とラック歯との間に打音(歯打ち音)が発生することにもなる。
【0005】
また合成樹脂製のブッシュ軸受では、クリープ変形及び熱履歴に伴う合成樹脂の応力緩和によって、ラック軸との間に隙間が生じて、径方向の剛性的支持が低下し、上記と同様に打音(歯打ち音)が発生するような不具合が生じ易く、また、合成樹脂の応力緩和によって特に径方向の収縮が生じる場合には、ラック軸に対する締め代が増加して摺動摩擦抵抗が大きくなる虞がある。
【0006】
加えて、自動車のラック−ピニオン式操舵装置におけるラック軸を摺動自在に支持するために斯かる合成樹脂製のブッシュ軸受を用いると、ラック−ピニオン式操舵装置のギアボックス内が密閉されてギアボックス内の空気の流出入が困難となり、無理矢理な空気の流出入でもって、異音が生じたり或いはラック軸との間の隙間に適用されたグリース等の潤滑剤の早期の消失が生じたりする虞がある。
【0007】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ラック軸を、径方向であってピニオンの歯から離れる方向に関しては所定の剛性をもって支持できる一方、軸方向に関しては低い摩擦抵抗をもって移動自在に支持できる上に、クリープ変形及び熱履歴に伴う応力緩和の影響を低減できるブッシュ軸受及びそれを用いた自動車のラック−ピニオン式操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のブッシュ軸受は、外周面に少なくとも一つの円周方向溝を有する合成樹脂製のブッシュと、このブッシュの円周方向溝に装着されている無端環状弾性部材とを具備しており、ブッシュは、凹面状又は平面状の内側内周面と、径方向において該内側内周面よりも外側に配された外側内周面と、径方向において内側内周面に対応する部位に配されていると共に内側内周面を径方向であって内外方向に移動自在とする少なくとも一個のスリットとを具備しており、外側内周面は、内側内周面と外側内周面とにより規定された貫通孔に挿着されるラック軸のラック歯側の外周面との間で隙間を形成するようになっており、内側内周面は、ラック軸のラック歯側とは反対側の外周面に摺動自在に接触するようになっている。
【0009】
本発明のブッシュ軸受によれば、ブッシュが凹面状又は平面状の内側内周面とこの内側内周面よりも径方向において外側に配された外側内周面と径方向において内側内周面に対応する部位に配された少なくとも一個のスリットとを具備して、内側内周面がラック軸のラック歯側とは反対側の外周面に摺動自在に接触するようになっている上に、無端環状弾性部材がブッシュの円周方向溝に装着されているために、ラック軸を径方向であってピニオンの歯から離れる方向に関しては所定の剛性をもって支持でき、外乱によるラック軸のラック歯側とは反対側への変位を内側内周面で抑制でき、軸方向の移動に関しては低い摩擦抵抗をもって移動自在に支持でき、しかも、外側内周面がラック軸のラック歯側の外周面との間で隙間を形成するようになっているために、上記と相俟ってクリープ変形及び熱履歴に伴う応力緩和の影響を低減できる。
【0010】
ブッシュの形成材料としての合成樹脂は、耐摩耗性に優れて低摩擦特性を有し、しかも、所定の撓み性と剛性とを有すると共に熱伸縮の少ないものが好ましく、具体的には、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及びフッ素樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂等を挙げることができる。
【0011】
無端環状弾性部材は、断面において円形、楕円形、矩形又は扁平状の長円形を有しているが、本発明はこれらに限定されず、断面X字形状、断面U字形状又は断面台形状等の他の形状であってもよく、また、好ましくは、天然ゴム製又は合成ゴム製であるが、その他の弾性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばポリエステルエラストマーであってもよい。なお、無端環状弾性部材として、一般に使用されているOリングを好ましく用いることができる。
【0012】
本発明のブッシュ軸受では、ブッシュは、少なくとも一つの円周方向溝を具備していればよいのであるが、複数の円周方向溝をその外周面に具備する場合には、各円周方向溝に無端環状弾性部材を装着するとよい。
【0013】
内側内周面は、ラック軸のラック歯側とは反対側の外周面に摺動自在に接触して、ラック軸を径方向であってピニオンから離れる方向に関しては所定の剛性をもって支持できる程度にラック軸の中心に関しての中心角θ1をラック軸のラック歯側とは反対側で有していればよく、好ましくは、ラック軸のラック歯側とは反対側でラック軸の中心に関して60°以上であって180°以下の中心角θ1を、より好ましくは、ラック軸のラック歯側とは反対側でラック軸の中心に関して90°以上であって180°以下の中心角θ1を、更により好ましくは、ラック軸のラック歯側とは反対側でラック軸の中心に関して120°以上であって180°以下の中心角θ1を夫々有しており、これらの場合、外側内周面は、内側内周面の中心角θ1の夫々に対応して、ラック軸の中心に関して、(360°−θ1)の中心角θ2、(360°−θ1)の中心角θ2及び(360°−θ1)の中心角θ2を夫々ラック軸のラック歯側で有しているとよい。内側内周面は、円周方向において連続であって一個からなる凹面状、好ましくは円筒面状のものであってもよいが、これらに代えて、円周方向において不連続(断続的)であって複数個、好ましくは少なくとも3個からなる凹面状又は平面状のものであってもよい。
【0014】
本発明において、内側内周面を径方向であって内外方向に移動自在とすることができればスリットを一個だけ具備していてもよいが、均等にこれを移動自在とするために、複数個を具備しているとよい。
【0015】
好ましい例では、スリットは、ブッシュの軸方向の一端面で開口していると共に軸方向においてブッシュの軸方向の他端面の途中まで伸びており、他の好ましい例では、軸方向において円周方向溝を挟んでいると共に円周方向に伸びた一対の円周方向スリット部と、この一対の円周方向スリット部を橋絡していると共に軸方向に伸びた軸方向スリット部とを具備している。
【0016】
ブッシュの軸方向の一端面で開口していると共に軸方向においてブッシュの軸方向の他端面の途中まで伸びたスリットは、軸方向に対して傾斜していてもよく、また、軸方向に対して傾斜する傾斜スリット部と、軸方向において傾斜スリット部を間にして当該傾斜スリット部と連続して配されていると共に軸方向と平行に伸びた一対の軸方向スリット部とを有していてもよい。
【0017】
ブッシュは、一つのスリットがブッシュの軸方向の一端面から軸方向にブッシュの軸方向の他端面の手前まで伸び、他の一つのスリットがブッシュの軸方向の他端面から軸方向にブッシュの軸方向の一端面の手前まで伸びているように複数個のスリットを有していてもよく、この場合、ブッシュは、一つのスリットと他の一つのスリットとを複数個有していて、斯かる複数個の一つのスリットと他の一つのスリットとが円周方向において交互に配されていてもよい。
【0018】
好ましい例では、ブッシュは、前記内側内周面、外側内周面及び円周方向溝を有した本体部と、この本体部の外周面に一体的に設けられていると共に円周方向において互いに離間している複数の突起とを具備しており、この複数の突起は、ラック軸が貫通するハウジングの内周面に接触するようになっている。
【0019】
本発明のブッシュ軸受は、外側内周面が内側内周面と外側内周面とにより規定された貫通孔に挿着されるラック軸のラック歯側の外周面との間で隙間を形成し、内側内周面がラック軸のラック歯側とは反対側の外周面に摺動自在に接触するように、ブッシュがラック軸に対して配されることを確保するために、円周方向におけるブッシュのハウジングの内周面に対する位置を決定する位置決め手段を更に具備しているとよい。
【0020】
位置決め手段は、好ましい例では、ハウジングの内周面に設けられた凹所に嵌合するように、ブッシュに一体的に設けられた突起を具備している。
【0021】
本発明の自動車のラック−ピニオン式操舵装置は、ピニオンと、このピニオンの歯に噛み合うラック歯を有したラック軸と、このラック軸が貫通したハウジングと、このハウジングに嵌装されていると共にハウジングに対してラック軸を移動自在に支持する上述の種々の態様のブッシュ軸受とを具備している。
【0022】
本発明のラック−ピニオン式操舵装置において、ハウジングとしては、ピニオンを収容するギアハウジングであってもよい一方、ギアハウジングと共にラック軸を支持する中空支持部材であってよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ラック軸を径方向であってピニオンの歯から離れる方向に関しては所定の剛性をもって支持できる一方、軸方向の移動に関しては低い摩擦抵抗をもって移動自在に支持できる上に、クリープ変形及び熱履歴に伴う応力緩和の影響を低減できるブッシュ軸受及びそれを用いた自動車のラック−ピニオン式操舵装置を提供することができる。
【0024】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1から図7において、本例の自動車のラック−ピニオン式操舵装置1は、ピニオン(図示せず:特許第3543652号掲載公報参照)と、このピニオンの歯に噛み合うラック歯2を有したラック軸3と、ラック軸3が貫通したハウジング4と、ハウジング4に嵌装されていると共にハウジング4に対してラック軸3を軸方向であるA方向に移動自在に支持するブッシュ軸受5とを具備している。
【0026】
ラック軸3はブッシュ軸受5で支持される部位では円筒状の外周面11を有しており、ハウジング4はブッシュ軸受5が嵌装される円筒状の内周面12を有している。
【0027】
ブッシュ軸受5は、その外周面15に円周方向溝16を有する合成樹脂製のブッシュ17と、ブッシュ17の円周方向溝16に装着されていると共に天然ゴム製又は合成ゴム製のOリング等からなる無端環状弾性部材18と、円周方向であるB方向におけるブッシュ17のハウジング4の内周面12に対する位置を決定する位置決め手段19とを具備している。
【0028】
ブッシュ17は、外周面15、円周方向溝16、凹面状としての円筒凹面状の内側内周面21及び径方向であるC方向において内側内周面21よりも外側に配された円筒凹面状の外側内周面22を有した本体部23と、本体部23の外周面15に一体的に設けられていると共にB方向において互いに離間している三個の突起24〜26とを具備している。
【0029】
本体部23は、外周面15、円周方向溝16、内側内周面21及び外側内周面22に加えて、C方向において内側内周面21に対応する部位に配されていると共に内側内周面21をC方向であって内外方向に移動自在とする四個のスリット31〜34と、そのA方向の一端面35において内側内周面21に設けられたテーパ面36と、そのA方向の他端面37において内側内周面21に設けられたテーパ面38とを具備している。
【0030】
内側内周面21は、ラック軸3のラック歯2側と反対側でラック軸3の中心Oに関して180°の中心角θ1を有しており、当該内側内周面21と外側内周面22とにより規定された貫通孔40に挿着されるラック軸3の外周面11においてラック歯2側とは反対側の外周面41にA方向に摺動自在に接触するようになっている。
【0031】
ラック軸3のラック歯2側でラック軸3の中心Oに関して(360°−θ1)=180°の中心角θ2を有している本体部23の外側内周面22は、ラック軸3のラック歯2側の外周面42との間で円筒状の隙間43を形成するようになっている。
【0032】
スリット31〜34の夫々は、ブッシュ17の本体部23の一端面35で開口していると共にA方向においてブッシュの他端面37の途中まで伸びており、スリット31及び32は、内側内周面21のB方向における略中央部に対応して配された突起24に隣接していると共にB方向において突起24を挟んで配されており、内側内周面21のB方向における一方の端部近傍に対応して配されたスリット33は突起25に隣接しており、内側内周面21のB方向における他方の端部近傍に対応して配されたスリット34は突起26に隣接している。
【0033】
突起24〜26において、突起24は、内側内周面21のB方向における略中央部に対応して配されており、突起25は、内側内周面21のB方向における一方の端部近郷に対応して配されており、突起26は、内側内周面21のB方向における他方の端部近郷に対応して配されており、突起24〜26の夫々は、そのC方向における円筒状の先端面44でハウジング4の内周面12に合成樹脂製のブッシュ17の弾性力をもってぴったりと接触しており、而して、ブッシュ17は、突起24〜26を介してハウジング4の内周面12に嵌合されている。
【0034】
位置決め手段19は、本体部23の一端面35に一体的に形成された突起45を具備しており、突起45は、ハウジング4の内周面12に形成された凹所46にそのC方向の先端部において係合しており、これによりブッシュ17は、B方向においてハウジング4に対して回転しないようにされていると共に内側内周面21、突起24〜26及びスリット31〜34がラック軸3のラック歯2に関して図7に示すように位置決めされて配されている。
【0035】
以上のラック−ピニオン式操舵装置1では、ラック軸3がブッシュ軸受5の内側内周面21によってA方向に摺動自在に支持されるようになっている結果、ラック軸3のラック歯2のピニオンの歯からの離反を抑制できて、ラック軸3のラック歯2とピニオンの歯との噛み合いが維持され、ラック歯2とピニオンの歯との衝突による歯打ち音の発生を抑制できる。しかも、ブッシュ軸受5によれば、ブッシュ17が内側内周面21と内側内周面21よりもC方向において外側に配された外側内周面22とC方向において内側内周面21に対応する部位に配されたスリット31〜34とを具備して、内側内周面21がラック軸3のラック歯2側とは反対側の外周面41にA方向に摺動自在に接触するようになっている上に、無端環状弾性部材18がブッシュ17の円周方向溝16に装着されているために、ラック軸3をラック歯2側とは反対側で内側内周面21により支持でき、外乱によるラック軸3のラック歯2側とは反対側への変位、即ちピニオンの歯との噛み合いを緩くする方向のラック軸3の変位を内側内周面21で阻止でき、加えて、内側内周面21を無端環状弾性部材18の弾性力に基づいてC方向であって内外方向に移動できる結果、ラック軸3をC方向であってピニオンの歯から離れる方向に関しては所定の剛性をもって支持でき、その上、外側内周面22がラック軸3のラック歯2側の外周面42との間で円筒状の隙間43を形成するようになってラック軸3の全体的な締め付けを回避するようになっているために、ラック軸3をA方向の移動に関しては低い摩擦抵抗をもって移動自在に支持できる上に、ブッシュ17のクリープ変形及び熱履歴に伴う応力緩和の影響を低減でき、ラック軸3に対して長期に亘って安定した支持性を発揮することができる。
【0036】
上記のブッシュ軸受5では、ブッシュ17の一端面35で開口していると共にA方向においてブッシュ17の他端面37の途中まで伸びているスリット31〜34をブッシュ17に設けたが、これに代えて、図8及び図9に示すように、A方向において円周方向溝16を挟んでいると共にB方向に伸びた一対の円周方向スリット部51及び52と、一対の円周方向スリット部51及び52を橋絡していると共にA方向に伸びた軸方向スリット部53とを夫々具備しているスリット54及び55を、各軸方向スリット部53が互いに隣接し、しかも、当該軸方向スリット部53がB方向において内側内周面21の中央部に対応して位置するように、B方向に並置してブッシュ17の本体部23に設けてもよい。斯かるスリット54及び55によれば、円周方向溝16に装着される無端環状弾性部材18の内側内周面21から貫通孔40への張り出しの虞を低減できる。
【0037】
また、図3及び図5に示すように、スリット31〜34の夫々と同等であって外側内周面22のB方向における略中央部に対応してスリット61をブッシュ17の本体部23に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい実施の形態の一例の図2に示すI−I線矢視断面図である。
【図2】図1に示す例の左側面図である。
【図3】図1に示す例の右側面図である。
【図4】図1に示す例の平面図である。
【図5】図1に示す例の底面図である。
【図6】図1に示す例を自動車のラック−ピニオン式操舵装置に用いた例の説明図である。
【図7】図6に示す例の右側面図である。
【図8】本発明の好ましい実施の形態の他の例の平面図である。
【図9】図8に示す例の無端環状弾性部材を省略した平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ラック−ピニオン式操舵装置
2 ラック歯
3 ラック軸
4 ハウジング
5 ブッシュ軸受
15 外周面
16 円周方向溝
17 ブッシュ
18 無端環状弾性部材
21 内側内周面
22 外側内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に少なくとも一つの円周方向溝を有する合成樹脂製のブッシュと、このブッシュの円周方向溝に装着されている無端環状弾性部材とを具備しており、ブッシュは、凹面状又は平面状の内側内周面と、径方向において該内側内周面よりも外側に配された外側内周面と、径方向において内側内周面に対応する部位に配されていると共に内側内周面を径方向であって内外方向に移動自在とする少なくとも一個のスリットとを具備しており、外側内周面は、内側内周面と外側内周面とにより規定された貫通孔に挿着されるラック軸のラック歯側の外周面との間で隙間を形成するようになっており、内側内周面は、ラック軸のラック歯側とは反対側の外周面に摺動自在に接触するようになっているブッシュ軸受。
【請求項2】
内側内周面は、ラック軸のラック歯側とは反対側でラック軸の中心に関して60°、90°又は120°以上であって180°以下の中心角θ1を有しており、外側内周面は、ラック軸のラック歯側でラック軸の中心に関して(360°−θ1)の中心角θ2を有している請求項1に記載のブッシュ軸受。
【請求項3】
スリットは、ブッシュの軸方向の一端面で開口していると共に軸方向においてブッシュの軸方向の他端面の途中まで伸びている請求項1又は2に記載のブッシュ軸受。
【請求項4】
スリットは、軸方向において円周方向溝を挟んでいると共に円周方向に伸びた一対の円周方向スリット部と、この一対の円周方向スリット部を橋絡していると共に軸方向に伸びた軸方向スリット部とを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載のブッシュ軸受。
【請求項5】
ブッシュは、前記内側内周面、外側内周面及び円周方向溝を有した本体部と、この本体部の外周面に一体的に設けられていると共に円周方向において互いに離間している複数の突起とを具備しており、この複数の突起は、ラック軸が貫通したハウジングの内周面に接触するようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載のブッシュ軸受。
【請求項6】
ブッシュの円周方向におけるハウジングの内周面に対する位置を決定する位置決め手段を更に具備している請求項1から5のいずれか一項に記載のブッシュ軸受。
【請求項7】
ピニオンと、このピニオンの歯に噛み合うラック歯を有したラック軸と、このラック軸が貫通したハウジングと、このハウジングに嵌装されていると共にハウジングに対してラック軸を移動自在に支持する請求項1から6のいずれか一項に記載のブッシュ軸受とを具備した自動車のラック−ピニオン式操舵装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−9962(P2007−9962A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188843(P2005−188843)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】