説明

ブレーキブースタを備えた車両用の駐車ブレーキ及び車両のブレーキ装置

【課題】極めて少数の構成部材を有しており且つ操作時に不都合な騒音を生ぜしめない駐車ブレーキを提供する。
【解決手段】駐車ブレーキが液圧回路(6)を介して操作可能であり、アクチュエータ(2)が常用ブレーキのブレーキブースタであるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキブースタを備えた車両用の駐車ブレーキ及び車両のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の駐車ブレーキ(ハンドブレーキ)は、従来技術から種々様々な構成で公知である。最近は、車両内に配置されたハンドブレーキレバーが省かれ、代わりにボタン又はスイッチにより駐車ブレーキの操作が行われる駐車ブレーキを使用することが増えている。この場合、駐車ブレーキを車両の常用ブレーキに組み込むことが提案されていた。駐車ブレーキを操作したい場合は、駐車を実施するために、例えばESPポンプ等の、常用ブレーキ回路内に設けられたポンプを作動させてから、駐車ブレーキの駐車ポジションをロック装置によりロックすることができる。これにより、車両は位置固定されている。駐車ブレーキを解除するためには、同様に常用ブレーキのポンプを再度作動させ、その結果、ロック装置のロックが解除され、これにより、駐車ブレーキはポンプを遮断し且つブレーキ回路に圧力を逃がした後で解除される。しかし、このようなシステムには、常用ブレーキのポンプが極めて高い騒音レベルを有しているという欠点がある。但し、このようなシステムは、常用ブレーキ回路のポンプが極めて高い騒音レベルを有しているという点において不都合である。一般に、駐車ブレーキは車両停止状態において、特にエンジン遮断状態においても操作されるので、不快な騒音が車両内室に聞こえてしまう。この場合、運転者には駐車ブレーキが故障したという意識が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、公知の欠点を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために本発明では、駐車ブレーキが液圧回路を介して操作可能であり、アクチュエータが常用ブレーキのブレーキブースタであるようにした。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の特徴部に記載の構成を有する、本発明による車両用駐車ブレーキは、駐車ブレーキを操作するために、つまり、駐車ブレーキをかけ且つ解除するために、不都合な騒音を生ぜしめないという利点を有している。この場合、本発明では常用ブレーキの液圧回路内のポンプを作動させることが省かれる。本発明では、駐車ブレーキの操作は常用ブレーキのブレーキブースタを介して行われる。このブレーキブースタを使用することにより、駐車ブレーキをかけた場合若しくは解除した場合に不都合な騒音は生じない。これにより更に、本発明による駐車ブレーキは極めて少数の構成部材を有している。それというのも、駐車ブレーキを操作するための別個のポンプが不要だからである。この場合、本発明による駐車ブレーキは、車両に既存の構成部材を用いることができる。更に、本発明による駐車ブレーキは、ESP,ABS,TCS等の電子ブレーキシステムを有していない常用ブレーキでも使用可能である。それというのも、駐車ブレーキを作動させるためには、前記ブレーキシステムのために設けられるポンプを1つも必要としないからである。
【0006】
本発明の有利な改良は従属請求項に記載されている。
【0007】
有利には、アクチュエータは負圧式ブレーキブースタである。このようなブレーキブースタを使用することは有利であるということが判っており且つ比較的廉価である。
【0008】
車両のエンジン運転と無関係であるためには、有利には負圧形成装置が設けられており、この負圧形成装置は負圧式ブレーキブースタの負圧室内に負圧を形成する。
【0009】
有利には、負圧形成装置は電動モータによって駆動可能な負圧蓄え器及び/又はサクションポンプである。これにより、エンジンの運転とは無関係に負圧が形成され得るので、駐車ブレーキは如何なる任意の時点でも操作可能である。この場合、電動モータを駆動するための電流は、有利には車両バッテリー又は電動モータ用の別個のバッテリーから取り出される。
【0010】
車両を位置固定するための液圧回路内の圧力が十分であるということを保証するためには、有利には液圧回路内に圧力センサが配置されている。
【0011】
車両を位置固定するための圧力が十分であるか否かを検出する別の手段は、負圧式ブレーキブースタの負圧室内の圧力を検出することにより実施可能である。この場合、負圧室内の圧力は液圧回路内の圧力検出に加えて付加的に検出されるか、又は負圧室内の圧力自体が車両を位置固定するための指標として使用され得る。
【0012】
更に有利には、本発明による駐車ブレーキは、この駐車ブレーキの位置固定力を検出するための力センサを有している。この力センサはそれだけで、又は上で説明した他のセンサと組み合わされて、駐車ブレーキの位置固定の監視を実施することができる。
【0013】
有利には、駐車ブレーキの駐車ブレーキポジションをロックするために役立つロック装置は、マニュアル式の非常解除装置を有している。この非常解除装置は、駐車ブレーキをロックされた状態からロック解除することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の第1実施例による駐車ブレーキ1を図1につき説明する。
【0015】
図1に示したように、駐車ブレーキ1は車両の標準的な常用ブレーキに組み込まれている。図1には車両の2つのホイールブレーキ7が示されている。図面を見やすくする理由から、車両の他のホイールブレーキは図示していない。ホイールブレーキ7はそれぞれ、ブレーキディスク8、ブレーキキャリパ9及びブレーキパッド10を有している。更にブレーキブースタ2が設けられており、このブレーキブースタ2は、車両の通常の運転状態においてペダル3を介して当該ブレーキブースタ2に入力される運転者の制動力を増強する。ブレーキブースタ2は負圧式ブレーキブースタであり、マスタシリンダ4と負圧ブースタ5とを有している。マスタシリンダ4は常用ブレーキの液圧回路6を介して、ホイールブレーキ7と導管6a,6bを介して接続されている。
【0016】
更に、駐車ブレーキ1は各ホイールブレーキ7にそれぞれロック装置13を有している。このロック装置13は、ホイールブレーキ7の駐車ブレーキポジションをロックするために働く。この実施例では、常用ブレーキの標準的なホイールブレーキが、同時に駐車ブレーキとしても使用される。これにより、駐車ブレーキ用の構成部材数を著しく減少させることができる。
【0017】
駐車ブレーキの制御ユニット12は、駐車ブレーキの位置固定及び解放を制御する。図1から判るように、制御装置12は導線14を介して操作装置11に接続されている。この操作装置11は車両内に配置されており、例えば駐車ブレーキを操作するためのボタン又はスイッチである。更に、制御ユニット12は導線15を介してブレーキブースタの負圧ブースタ5に接続されている。更に、制御ユニット12は導線16を介して、駐車ブレーキのロック装置13にそれぞれ接続されている。この場合、ロック装置13は駐車ブレーキの解除を防止するために、駐車ポジションを機械的にロックするために役立つ。ロック装置13は、任意で所定の伝動装置を介してスピンドル装置を駆動する電動モータを有している。前記スピンドル装置はスピンドルの回転運動をナットの長手方向運動に変換するので、このナットによって機械的に駐車ブレーキの駐車ブレーキポジションがロックされ得る。
【0018】
次に、本発明による駐車ブレーキの機能を説明する。運転者が駐車ブレーキを所望した場合、この運転者は車両内の操作装置11を操作する。これにより、対応する信号が導線14を介して制御ユニット12に供給される。この制御ユニット12は、運転者が駐車ブレーキを所望しているということを認識し且つ対応する信号を導線15を介して負圧ブースタ5に送る。これにより、負圧ブースタ5が作動されるので、負圧の形成に基づいて常用ブレーキの液圧回路6内に所定の液圧が形成される。液圧回路内に圧力が形成されることにより、この圧力は導管6a,6bを介してホイールブレーキ7へも案内される。これにより、ホイールブレーキ7のブレーキパッド10がブレーキディスク8に押し付けられる。この場合、負圧ブースタ5による圧力形成は、常用ブレーキの通常のブレーキ動作中の圧力形成に対応しており、これにより、ブレーキパッド10が十分な制動力を以てブレーキディスク8に当て付けられるということが保証される。次いで、制御ユニット12は導線16を介してホイールブレーキ7のロック装置13を作動させる。このロック装置13はブレーキディスク8におけるブレーキパッド10の位置を機械的にロックする。これにより、駐車ブレーキは作動状態にある。今、ブレーキパッド10はロック装置13を介して機械的にロックされているので、車両を保持するための十分な制動力が供給される。そこから液圧回路6内の液圧は再び減圧されてよい。この場合、制御ユニット12は、例えばロック装置13の電動モータの消費電流及び/又は消費電圧の監視を介して、駐車ブレーキポジションが機械的にロックされているかどうか、監視することができる。
【0019】
駐車ブレーキポジションを再び解除しようとする場合は、再度操作装置11を操作して、導線14を介して対応する信号を制御ユニット12に供給する。この制御ユニット12が導線15を介して再び負圧ブースタ5を作動させるので、やはり再び液圧回路6内に圧力が形成される。液圧回路6内に形成されたこの圧力は、ホイールブレーキ7のロック装置13が再度ロック解除され得るということを可能にする。液圧回路6内に適当な圧力が形成された後で、制御ユニット12により対応する信号が導線16を介してロック装置13に送られる。これにより、例えば電動モータが逆方向で運転されるので、駐車ブレーキポジションの機械的なロックは解除され、ロック装置13は再びその出発位置へ戻される。このことは、場合によってはばね部材の支持により簡略化することもできる。
【0020】
ロック装置13が駐車ブレーキポジションを解放すると、液圧回路6内の圧力が再び減圧されるので、最終的に駐車ブレーキは解除されている。
【0021】
即ち、本発明では駐車ブレーキを作動させるために、つまり、駐車ブレーキポジションを位置固定し且つ解除するために、既に車両に存在する負圧式ブレーキブースタ2が使用される。これにより、本発明による駐車ブレーキのためには、付加的な構成部材としてロック装置13、操作装置11及びこれらの構成部材と制御ユニット12との間の対応する接続導線しか設けなくてよい。この場合、駐車ブレーキのための制御ユニット12は、例えば既に車両内に存在する制御装置、例えばブレーキ装置の制御装置に組み込まれていてもよい。即ち、本発明では不都合なノイズが発生する恐れのある液圧ポンプ等を操作するということは不要である。この場合、負圧式ブレーキブースタの運転に必要な負圧は、回転する内燃機関によって公知の形式で形成され得る。必要な負圧を供給するためには、駐車ブレーキの作動時に負圧ブースタ5と接続される別個の負圧蓄え器が設けられているということも、択一的に可能である。負圧蓄え器内の負圧は、例えば車両の通常運転中に形成され得る。
【0022】
次に、本発明の第2実施例による駐車ブレーキ1を図2につき説明する。この場合、同一構成部材若しくは同一機能の構成部材は、第1実施例と同じ符号を付してある。
【0023】
第1実施例とは異なり、第2実施例では別個の負圧ポンプ17が設けられている。この負圧ポンプ17は電動モータ18によって駆動される。負圧ポンプ17は、導線19を介して制御ユニット12により制御され、これにより、車両のエンジン運転とは無関係に負圧ブースタ5内に負圧を形成することができる。その他の点では、第2実施例は第1実施例に対応しているので、第1実施例の説明を参照されたい。
【0024】
次に、図3につき本発明の第3実施例による駐車ブレーキ1を説明する。この場合、同一構成部材若しくは同一機能の構成部材は、第1及び第2実施例と同じ符号を付してある。
【0025】
第3実施例は第2実施例にほぼ対応しているが、第2実施例とは異なり、第3実施例では更に付加的に圧力センサ20が液圧回路6内に設けられている。圧力センサ20は、導線21を介して制御ユニット12に接続されており且つ液圧回路6内の圧力を検出する。これにより、第3実施例の駐車ブレーキは、駐車ブレーキの作動中及び駐車ブレーキの解除中の液圧回路6内の圧力を監視するための監視装置を有している。これにより、車両の確実な位置固定が可能になる。その他の点では、この第3実施例は第1及び第2実施例に対応しているので、第1及び第2実施例の説明を参照されたい。
【0026】
次に、図4につき本発明の第4実施例による駐車ブレーキを説明する。この第4実施例は第3実施例にほぼ対応しているが、第3実施例とは異なり、更に付加的に負圧センサ22が設けられている。この負圧センサ22は、導線24を介して負圧ブースタ5に接続されており且つこの負圧ブースタ5内の負圧を検出する。負圧センサ22は、対応する値を制御ユニット12に供給するために、導線23を介して制御ユニット12に接続されている。負圧ブースタ5内の負圧に基づいて、液圧回路6内の圧力を求めることができるので、負圧センサ22もやはり、液圧回路6内の圧力形成を監視するために使用される。
【0027】
更に、第4実施例の駐車ブレーキ1は、各ホイールブレーキ7に力センサ25をそれぞれ有している。これらの力センサ25は、それぞれ車両を位置固定するための、ホイールブレーキ7における位置固定力を検出する。力センサ25は、例えばひずみゲージ等であってよい。位置固定力の検出により、駐車ブレーキの別の監視手段が可能になる。対応する力の値が導線26を介して制御ユニット12へ送られ、この制御ユニット12は対応する評価を、例えばメモリされた値との比較によって実施する。
【0028】
図3及び図4において説明した、圧力センサ20及び/又は負圧センサ22及び/又は力センサ25による監視手段を備えた駐車ブレーキに関しては、例えば液圧回路6内の圧力について規定された値を下回った場合及び/又は負圧ブースタ5内の圧力値を上回った場合及び/又はホイールブレーキにおける位置固定力の所定の値を下回った場合に、制御ユニットがその都度音響的及び/又は視覚的な警告信号を運転者に送ることができる。このことは、駐車ブレーキ1が正常に作動しなかったということを運転者に信号で知らせようとするものである。前記センサは任意の組合わせで設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施例による駐車ブレーキの概略図である。
【図2】本発明の第2実施例による駐車ブレーキの概略図である。
【図3】本発明の第3実施例による駐車ブレーキの概略図である。
【図4】本発明の第4実施例による駐車ブレーキの概略図である。
【符号の説明】
【0030】
1 駐車ブレーキ、 2 ブレーキブースタ、 3 ペダル、 4 マスタシリンダ、 5 負圧式ブースタ、 6 液圧回路、 6a,6b 導管、 7 ホイールブレーキ、 8 ブレーキディスク、 9 ブレーキキャリパ、 10 ブレーキパッド、 11 操作装置、 12 制御ユニット、 13 ロック装置、 14,15,16,19,21,23,24,26 導線、 17 負圧ポンプ、 18 電動モータ、 20 圧力センサ、 22 負圧センサ、 25 力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の駐車ブレーキであって、該駐車ブレーキが、駐車ブレーキユニット(7)、操作信号を制御ユニット(12)に供給する、車両内に配置された操作装置(11)、駐車ブレーキユニット(7)に接続された、車両の常用ブレーキの液圧回路(6)、アクチュエータ(2)及び駐車ブレーキの位置固定ポジションをロックするためのロック装置(13)を有している形式のものにおいて、
駐車ブレーキが液圧回路(6)を介して操作可能であり、アクチュエータ(2)が常用ブレーキのブレーキブースタであることを特徴とする、車両用の駐車ブレーキ。
【請求項2】
アクチュエータ(2)が負圧式ブレーキブースタである、請求項1記載の駐車ブレーキ。
【請求項3】
負圧式ブレーキブースタの負圧室(5)が負圧形成装置(17)に接続されている、請求項2記載の駐車ブレーキ。
【請求項4】
負圧形成装置(17)が、電動モータ(18)によって駆動可能な負圧蓄え器及び/又はサクションポンプである、請求項3記載の駐車ブレーキ。
【請求項5】
駐車ブレーキ操作時の液圧を検出するために、液圧回路(6)内に圧力センサ(20)が配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の駐車ブレーキ。
【請求項6】
更に、ブレーキブースタ(2)の負圧室(5)内の圧力を検出するための圧力センサ(22)を有している、請求項2から5までのいずれか1項記載の駐車ブレーキ。
【請求項7】
更に、駐車ブレーキの位置固定力を検出するための力センサ(25)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の駐車ブレーキ。
【請求項8】
ロック装置(13)が、駐車ブレーキをロックされた状態からロック解除するために、マニュアル式の非常解除装置を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の駐車ブレーキ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の駐車ブレーキを有していることを特徴とする、車両のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−91217(P2007−91217A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263188(P2006−263188)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】