説明

ブレード素材とその製造方法および製造装置

【課題】全面2層あるいは部分的に2層化した合成樹脂製ブレードを連続的に生産する方法を提供し、品質の安定した多層ブレードを提供する。
【解決手段】外周に成形溝及び内部に加熱装置を備えた成形ドラムを用いて、合成樹脂を成形用原料とするブレードの素材を連続成形する方法において、2種以上の異なる液状合成樹脂原料を別々に注型することにより、異種材料を組み合わせたブレード素材を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂製の弾性ゴムを利用した多層ブレードに関する。電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等において、用いられるブレードおよびその製造方法並びにその製造装置に関し、特に、熱硬化型ポリウレタンからなるブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来電子写真方式でのトナークリーニングには、装置の小型化、コスト等のメリットのある合成樹脂製のブレードクリーニング方式が広く使用されている。
ブレードには長寿命(耐摩耗性)、低トルク化=消費電力の低下(低μ化)、使用環境範囲の拡大による高温での異音対策、低温でのクリーニング性低下の対策、高温下の長期圧接状態でのヘタリによるクリーニング性低下の対策等が求められる。
また近年、カラー化に伴う画質向上などの理由により略球形状のトナーである所謂球形トナーを用いる機種が増えており、この球形トナーはクリーニングエッジの楔上の隙間に入り込みやすく、エッジを押し上げてすり抜けやすくなってきている。
装置が高速化するに伴い、ますますそのクリーニングブレードに対する要求は複雑で厳しくなってきている。
【0003】
これらの要求に対して、ブレードを単一、単層の材料ですべてを満足することは困難であり、過去クリーニングブレードを複層構造にして、複数種類の材料で要求特性を分けて受け持たせることが好ましい方法であるとして、種々の方法が提案されてきている。
【0004】
表面コーティング法
表面をコーティング剤で処理し、改質したものが提案されている(例えば、特許文献1:特開2001−356566号公報)。これは、遠心成形法で成形した板状のポリウレタンシート(第1層)の表層に、液状の原料を塗布し、加熱硬化することにより第2層を積層したブレード用ゴム部材とした例である。このブレード素材は、成形が2工程になり、コストがかかる。生産性が従来の単層のブレードより落ちる。
コーティング方法としてディッピング方式を用いる方法(例えば、特許文献2:特開2004−46145号公報)がある。この方法は、同じコーティング液を繰り返し使用するために、コーティング液のポットライフが長くなくてはならない。コーティング液の物性(粘度、固形分比率等)を一定に保つために設備が大規模なものになる。マスキングが必要であり、コーティング液の塗布、乾燥の前後にマスキングの着脱作業が必要となり、自動化が困難である。スプレー塗布方式は、コーティング液は使いきりでポットライフの点ではディッピングより優れるが、塗布効率が悪く、マスキングも必要となる。また温湿度等の環境により皮膜にばらつきを生じやすい。ディスペンサーを用いた塗布法では皮膜層の幅や厚みを均一にするのが難しい。特にクリーニングブレードに使用する場合、エッジ精度に問題を生じやすい。
【0005】
遠心成型法、割型法、貼り合わせ法
遠心成形で2層になるように成形する方法(例えば、特許文献3:特開2004−184462号公報 [0074]参照)がある。また、別々に作ったゴム部材を接着して張り合わせる方法(例えば、特許文献4:特開昭60−165682号公報)がある。
接着加工では均一に貼り合わせが難しい。遠心成形の場合、遠心成形機の回転ブレや、注入する材料の量のバラツキ、硬化反応速度の影響による平面性の不安定さ等により、各層の厚さ精度が低い。(通常遠心成形での厚さバラツキはレンジで0.1mmは発生する。)
遠心成形では全面2層のブレードとなるが、バラツキが大きいと、高硬度部分と低硬度部分の2層の設計などでは、高硬度部分のバラツキが圧接力をバラツかせる。
部分的に2層にする場合、エッジ部のみ別素材とするときには、たとえば割り型で成形法を使用した場合、第1の素材を注型し、硬化させた後、第2の素材を後から注型すると、第一の素材を均一に注入するのが難しく、液流れの跡や、ムラが生じやすく、ブレードとして圧接力が高い・低い部分ができ、安定しない。また、注型が2工程になりコストがかかる。生産性に問題がある。
【0006】
ゴムに別素材含浸・改質法
ポリウレタンブレードの処理不必要な部分にマスキングを行い、ポリシアノアクリレートやイソシアネート、水、シリコンなどをポリウレタンブレードに含浸させ、その後加熱等で反応硬化させ、ブレードエッジ近傍の質を変える(硬度を上げる、粘弾性特性を変える、摩擦係数を変える 等)ことにより、クリーニングブレードとしての性能を改良する方法が提案されている(例えば、特許文献2:特開2004−46145号公報、特許文献5:特開2004−233818号公報)。
この製法では、工程が追加されコストがかかる。生産性に問題がある。品質の点でも、液状物を含浸させる場合、ゴムの深さ方向で浸透している量が変化してしまう。そのためマスキングしているとしても不必要な部分が処理されたり、処理されている濃度が深さ方向で傾斜していたり、ムラが生じたりしてしまう。微妙な調整が難しい。またゴムの膨潤現象を利用しているため、処理している部分は膨らみ、処理していない部分とのバランスがくずれ、エッジが波打つ、反る、変形するなどがおきやすい。
本出願人も多層ブレードについて例えば、特許文献6:特開平9−127846号公報、特許文献7:特開2002−214990号公報、特許文献8:特開平11−212414号公報に例示される表面コーティング法、遠心成型法、含浸法等を研究開発して提案してきた。

【0007】
【特許文献1】特開2001−356566号公報
【特許文献2】特開2004−46145号公報
【特許文献3】特開2004−184462号公報
【特許文献4】特開昭60−165682号公報
【特許文献5】特開2004−233818号公報
【特許文献6】特開平9−127846号公報
【特許文献7】特開2002−214990号公報
【特許文献8】特開平11−212414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、部分的に2層化した合成樹脂製ブレードを連続的に生産する方法を提供し、品質の安定した多層ブレードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外周に形成した成形溝を有する成形ドラムを用いて、成形ドラムを回転させつつ、異なる組成の樹脂液を成形溝に注型することにより、同時に硬化成形をさせつつ多層化した樹脂テープ状のブレード素材を連続して製造するものである。
本発明の主な解決手段は次のとおりである。

(1)外周に成形溝及び内部に加熱装置を備えた成形ドラムを用いて、合成樹脂を成形用原料とするブレードの素材を連続成形する方法において、2種以上の異なる液状合成樹脂原料を別々に注型することにより、異種材料を組み合わせたブレード素材を製造する方法。
(2)異なる液状合成樹脂は、成形溝底面の一部に一方の液状合成樹脂を注型し、その後他方の合成樹脂を注型することを特徴とする(1)記載のブレード素材を製造する方法。
(3)一方の樹脂の形状を円弧状の横断面形状に形成することを特徴とする(2)記載のブレードを製造する方法。
(4)クリーニングブレードであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
(5)現像ブレードであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
(6)帯電ブレードであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
(7)成形溝を外周に備え、内部に加熱装置を備えた成形ドラムであって、該成形ドラムの外周に沿って、成形溝に合成樹脂供給手段、成形ドラムの成形溝を覆いながら成形ドラムの回転に同期して回走するエンドレスベルトを順次配置し、成形溝に供給した合成樹脂原料をエンドレスベルトと成形溝から形成される成形空間によって、所定の幅と厚さを有する帯状のブレード素材を成形ドラムの回転に従い製造する方法であって、合成樹脂供給手段を複数備えたことを特徴とするブレード素材を連続して製造する方法。
(8)合成樹脂が、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
(9)外周に成形溝及び内部に加熱装置を備えた回転する成形ドラムを用いて、合成樹脂を成形用原料とするブレードの素材を連続成形する装置において、成形用原料である合成樹脂を成形溝に吐出する注型機を複数設けたことを特徴とするブレード素材製造装置。
(10)断面凹状の成形用溝を全外周面に形成され、内部加熱装置を備えた回転する成形ドラムと、
合成樹脂原料を調整して吐出する樹脂原料注型機と、
前記成形ドラムの外周面に当接し、前記成形ドラムに従動して回走する金属製のエンドレスベルトと、
取出部に一端部を近接してブレード用の成形物を搬出する装置とを備えたブレード素材の製造装置であって、
成型ドラムの回転方向に沿って、前記樹脂原料注型機を複数設け、該樹脂原料注型機の注型口を成形ドラムの回転方向に対して並列及び/又は前後に配置し、その下流に金属製エンドレスベルト、更に、搬出装置の順に配設したことを特徴とするブレード素材の製造装置。
(11)複数設置された樹脂原料注型機は、成形溝幅の一部に供給する注型機と、成形溝全幅に樹脂原料を供給する注型機であることを特徴とする(9)又は(10)記載のブレード素材の製造装置。
(12)成形用溝は、横断面方向の溝深さに変化が付与されていることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載のブレード素材の製造装置。
(13)異なる組成の液状の合成樹脂原料を一体に成形硬化積層してなる電子写真用ブレード素材。
(14)合成樹脂として、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタンを用いることを特徴とする(13)記載の電子写真用ブレード素材。
(15)長手方向に弧状の部分層とそれ以外のベース層を異なる合成樹脂素材としたことを特徴とする(13)又は(14)に記載の電子写真用ブレード素材。
(16)長手方向に弧状の部分層は、ニップ部であることを特徴とする(15)に記載の電子写真用ブレード素材。
(17)異形断面であることを特徴とする(13)〜(16)のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
(18)クリーニングブレード用素材であることを特徴とする(13)〜(17)のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
(19)現像ブレード用素材であることを特徴とする(13)〜(17)のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
(20)帯電ブレード用素材であることを特徴とする(13)〜(17)のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
(21)(13)〜(18)のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材を金属製ホルダーと接合したクリーニングブレード。
(22)(13)〜(17)、(19)のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材を金属製ホルダーと接合した現像ブレード。
(23)(13)〜(17)、(20)のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材を金属製ホルダーと接合した帯電ブレード。
【発明の効果】
【0010】
1.多層化した合成樹脂製のブレード素材を連続して製造できる。
2.一定速度で回転している成形ロールに一定量の液を注入し、連続した定常状態を維持して連続成形するので、一定の形状が作りこまれる。特に、層間の横断面を弧状とすることができる。
3.ブレードの当接部分の平滑性は金型表面で作りこまれるので安定したエッジ精度が得られる。
4.多層化は、注型位置をコントロールすることによりエッジ部あるいは中間部など自由度が高い。
5.異なる組成の合成樹脂は、前後に連続して供給、あるいは並列して供給するので、同時に硬化成形が進行し、両者の界面は強固に一体化される。
6.成形溝底面を粗面化した場合には、粗面を形成した多層ブレードを製造することができる。
7.長手方向に連続して一部分の性質を異ならせた合成樹脂製のテープを提供することができる。
8.電子写真装置用のトナークリーニングブレード、現像ブレードあるいは帯電ブレードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、異なる組成の合成樹脂を多層にした合成樹脂製のテープ状物の製造方法、製造装置、合成樹脂製のテープ状物、特に、電子写真に用いられるトナークリーニング用のブレードあるいは現像用のブレード、帯電ブレードの素材に適している。
外周に成形溝及び内部に加熱装置を備えた成形ドラムを用いて、合成樹脂を成形用原料とするテープ状の素材を連続成形する手段を用いて、2種以上の異なる液状合成樹脂原料を別々に注型することにより、異種材料を組み合わせたテープ状の合成樹脂素材を製造する方法を基本とする。
製造装置は、外周に成形溝及び内部に加熱装置を備えた成形ドラムの成型溝にそれぞれ異なる組成の合成樹脂を注型する注型機を複数近接して配置し、それぞれの注型機から連続して合成樹脂を供給し、成型ドラムの回転中に合成樹脂が硬化させ、途中から硬化した樹脂テープを引き出すことによって、成型溝の断面形状を有する多層となった樹脂テープを製造する物である。
得られた、樹脂テープは電子写真用のブレード素材に適するものである。
使用される合成樹脂は熱硬化性合成樹脂が適しており、例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂が用いられる。硬さや弾性などの物性に応じた組成とした樹脂を用いる。また、添加剤を加えることができる。
以下は、電子写真用のブレード素材を中心に説明する。
1.電子写真用のブレードの概要
トナークリーニング用のブレードあるいはトナーを帯電させる現像ブレードは通常使用されているもので、合成樹脂製の弾性ゴム体からなるテープを金属製の支持部材一側縁に沿って接合したものであり、合成樹脂としては、主に、熱硬化性ポリウレタンが用いられる。
図1及び図2にクリーニングブレードの例を示す。図8にバリエーションの例を断面図で示す。
クリーニングブレードは、金属製などの支持部材4の一方の側辺部に弾性ゴム部材3が接合されている。図1はクリーニングブレードの斜視図を示し、図2は横断面を示す。この図示の例では、摺擦してトナーを掻き落とすエッジ部分1をベース部材2と別組成とした多層弾性ゴム部材の例を示している。
本発明で実現できる層構成は、特に限定されるものではなく、それらの層構成の例を断面表示として図8に示す。図8(a)〜(e)は、ベース層2の一部に部分層1(以下「ニップ部」と表記することもある)を設けた例が示されている。(a)〜(c)は、部分層1が先端のエッジ部から辺中央までの任意位置に設けることができる例である。図示は辺中央まで示しているが、当然に、右端側まで任意に設定することが可能である。(d)(e)は、部分層2の大きさを変更できる例を示している。注型量を調整することにより、部分層とベース層の比率を変更することができる。
(f)は異形断面であるクリーニングブレードの一部に部分層2を設けた例を示している。(g)は部分層2の底面をやや凸状に形成した例を示している。(f)(g)は、成形溝の形状を変更することにより形成することができる。また、底面を粗面化することにより、粗面を転写したブレードを製造することもできる。
この図8に示した例に限らず、部分層を複数設けることも可能である。
【0012】
2.製法
本発明では、これらのブレードに使用されている合成樹脂製の弾性ゴムからなるテープの幅と同一かそれよりやや大きい幅を有する合成樹脂製のテープを連続して製造し、その長尺テープを定寸にカットし、金属製の支持体の一側縁に接合してクリーニングブレード等に仕上げる技術を基本製法とする。
この製法に用いる基本的な製造手段は、外周に成形溝を設けた成形ドラムを、水平軸を中心に回転させつつ、ポリウレタン等の液状原料を頂点付近から成形溝に連続注型し、成形ドラムの回転動作中に重合させて、注型箇所より前の位置でテープ状となったポリウレタン等の連続成型物を剥離して、成形溝から取り出し、後工程に供給するものを用いるものである。テープ状の成型物が連続して産出されるので、後工程では、一本の定尺にカット、金属支持体との接合と一連の作業を連続して実施でき、稼働に無駄が無く生産性が高い。
この基本製造手段は、本出願人が提案した、特許第2645980号公報や特開2005−7676号公報が存在する。
【0013】
本発明は、複数の注型機を備えたものである。それぞれの注型機から組成の異なる合成樹脂を成形ドラムの成形溝に連続供給することにより、2層あるいはそれ以上の合成樹脂層を備えた合成樹脂製のブレード素材を製造する方法である。連続回転する成形ドラムの成形溝に対して、注型口を前後に配置した場合は、先に注型された合成樹脂の上に後から注型された合成樹脂が被覆された状態で硬化して層が形成される。先に注型する合成樹脂の位置、供給量、合成樹脂の組成や種類、成形ドラムの回転スピードなどによって、樹脂層の位置と幅、厚さをコントロールすることができる。後から注型する合成樹脂は、全体を充填するにするに必要な量を供給することとなり、ベース層を形成する。
先行する合成樹脂を成形溝のコーナー部に注型した場合は、エッジ部に異種材料を設けたブレード素材を製造することができる。中間部に注型した場合は、ブレード素材の中間に異種材料を設けることができる。薄く溝底面全体に注型した場合は、全面に2層あるいは多層にしたブレード素材を製造することができる。
【0014】
成形溝断面の深さに変化を付けると、部分的に厚さを変化させたブレード素材を製造することができる。深い部分に先行する合成樹脂を供給した場合には、その部分に異種材料層を形成することができる。
成形溝の底面を粗面化した場合は、その粗面を反映した表面を持つブレード素材を製造することができる。
エッジ部に異種材料層を設けたブレード素材は、エッジ部を当接するクリーニングブレードに適しており、中間部を異種材料層としたものは、その部分をニップ部として使用しトナーを摺擦して帯電する現像ブレード用の素材や帯電ブレードの素材に適する。
また、異種材料を組み合わせることにより、弾性ゴムの物性値をコントロールすることができるので、高温域や低温域等の温度変化適性、あるいは、摩耗耐性などを向上させることができる。
また、この成形ドラムを用いた合成樹脂テープの連続成形法は、本出願人が既に提案した各製法、構成要素を使用できるものである。
【0015】
成形溝に注型された合成樹脂は、成形ドラムの外周の一部に成形溝に蓋をする状態で設けられた回転する金属製のエンドレスベルトで覆われた領域において、成形ドラムから熱を受けて、硬化重合が進行し、エンドレスベルトが成形ドラムから離れる位置では、溝の断面形状を備えたテープ状に形成されている。このテープを成形溝から引き出して連続した合成樹脂テープが得られることは、従来の提案と同様である。
この手法においては、樹脂注型後数十秒以内(例えば、30〜60秒程度)に成形溝から取り出されること、成形のために加圧されないこと、重合硬化は回転する成型ドラムの下半部が中心であること、成形溝からの引き剥がし角度が小さくすることができる等の成形条件であるので、成形溝底面からの剥離が比較的容易であり、必ずしも離型剤を使用する必要がない。トナーが微細化やカラー化することによって、離型剤が悪影響となることがあり、本発明の一形態として、離型剤を使用しない場合は、このような不都合も生じない。
また、離型剤を用いる必要がないことは、他の表面処理剤を作用させることもできることとなり積極的に表面改質に利用することも可能である。
【0016】
また、重合をコントロールするために、合成樹脂供給位置とエンドレスベルトで覆われるまでの間に、成形ドラムの溝に向けて加熱する外部加熱手段を講ずることもできる。テープ取り出し部近傍では、剥離を容易にするために外部から冷風などを吹きつける冷却手段を講ずることもできる。
本発明で得られる樹脂テープのサイズは、幅、厚みとも十分に従来から使用されている現像ブレードやクリーニングブレードの範囲を満足することができる。例えば、厚みが0.40〜3.00mm程度のものは十分に製造できる。
【0017】
弧状に部分層を形成する一例を模式的に示す。
この例は、試験的に行った実測値に基づく一例であって、これに限定されるものではない。図10は、ベース層2と弧状の部分層1を備えた弾性ゴム部材を示す。弧を模式的に円弧として扱うと次のようになる。円弧状の部分層1は、仮想の半径Rの部分弧となり、その弦Xの2倍が幅となり、高さが円弧の高さYとなるものと想定することができる。
実測した3例を表1に示す。これらの例では、幅Xが2.564〜4.524mm、高さYが0.69〜0.97mmを得ることができた。この幅Xと高さYの関係をグラフ化して図11に示す。なお、想定半径Rと高さYの関係をグラフ化して図12に示す。高さ約1mmは幅5mmで十分実現できることがわかる。
この手法に基づいて製造できる部分層のバリエーションの例を図13に示す。(a)が基本形である。(b)は(a)の例の左端側をカットすることにより部分層1をエッジ部とすることができる。(c)は、表面張力を大きくする、あるいは重合速度を早くすることにより、高さYを大きくする例である。(d)は(c)の(b)と同様に左端側をカットした例である。(e)は、弾性ゴム層の厚さと同じ高さの部分層を形成し、左端側をカットしてエッジ部を形成した例である。なお、(e)は、(b)や(d)の上面側を研削することによっても実現可能である。((f)は、合成樹脂の調合と左端や上面のトリミングを工夫することにより、小さな幅で大きな高さを実現する例を示している。なお、幅Xに比して高さYを大きく盛り上げる手法としては、成形溝底面を幅Xに相当する部分を少し深くすることにより、部分層が広がることを防止することもできる。
【0018】
【表1】

【0019】
3 樹脂例
本発明で用いられる合成樹脂は、主に熱硬化性のポリウレタン樹脂である。特に、非溶剤型の2液性の熱硬化性ポリウレタンが適している。注型から取り出しまでの時間は、成形ドラムの一回転以内であり、30〜60秒程度で取り出し可能な程度に重合固化している必要がある。このような条件を満たすイソシアネートとポリオール、架橋剤、触媒を選定し設計する。取り出した後工程において、2次架橋、熟成工程を施すことができる。
【0020】
添加成分として、潤滑剤、導電性付与剤、研磨粒子などがある。
潤滑剤の例としては、ポリ四フッ化エチレン、窒化ホウ素、グラファイト、ニ硫化モリプデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコン化合物がある。
導電性付与物質としては、特に限定されるものではないが、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、グラファイト、金属フィラー、金属酸化物ウィスカー等の電子伝導性物質、金属石鹸、過塩素酸塩等のイオン伝導性物質等を単独で、もしくは2種以上の物質を組合わせて使用することができ、現像ブレードや帯電ブレードに適用される。
研磨粒子は、感光体等、当接する相手材の表面をリフレッシュする目的で使用されるブレードに適用される。
【0021】
例えば、本願出願人が先に特許第3004586号公報、特許第2942183号公報、特許第2645980号公報、特開2002−214989号公報、特開2002−214990号公報等に提案したポリウレタン樹脂を例示することができる次のようなポリウレタンを使用することができる。
ウレタンプレポリマーの液状物および架橋剤との液状物のうち少なくとも一方に混合される高分子量ポリオールの成分が数平均分子量1000〜3000の2官能ポリオールと、数平均分子量92〜980の3官能ポリオールとを平均官能基数が2.02〜2.20となるポリオールにイソシアネート基の含量が5〜20%となる量のジイソシアネート化合物を混合してプレポリマーを調製し、そのプレポリマーに、OH基/NCO基の当量比が0.90〜1.05となる量の架橋剤とを40〜70゜Cにおいて混合してポリウレタン液状物(未硬化ポリウレタン組成物)を調製する。
【0022】
なお、前記高分子量ポリオール成分の数平均分子量は、好ましくは1000〜3000の範囲がより望ましい。この組成物を注型することにより反応が円滑に行われ、得られるブレードの物性も好ましい。すなわち、使用される2官能ポリオールの数平均分子量は、1000〜3000の範囲であり、1000未満であると、できあがったウレタンゴムが硬くなりすぎて必要な物性(柔軟性)が得られず、3000を超えると成形時の粘度が高く、注型加工することが困難となる。
また平均官能基数(f)がf=1ではモノオールとなるため重合せず、f≧5では多官能になりすぎるために、重合物の粘度が増大し且つ物性が低下するからである。
【0023】
本発明に係るポリウレタンエラストマー製造の為の成分としては、次のようなものが使用できる。高分子量ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類あるいは、ビスフェノールA、グリセリンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシド付加物類のポリエーテル型ポリオールおよびアジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマール酸等の2塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等のグリコール類との重合反応により得られるポリエステル型ポリオールならびにポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。
【0024】
ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。鎖延長剤として、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の低分子量ジオール並びにエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミンを挙げることができる。望ましくは、低分子量ジオールが用いられる。さらに必要に応じて多官能成分としてトリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、グリセリン、及びこれらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物を添加してもよい。
【0025】
上記のポリウレタンの製造においては、OH基/NCO基の当量比は生成するポリウレタンの物性から0.8〜1.05がよく、望ましくは0.90〜1.05の範囲である。また必要に応じて一般的なアミン化合物や有機錫系化合物等の反応促進剤が用いられる。例えば、特許第2942183号公報、第0022段落に開示される反応促進剤は下記の一般化学式で表されるイミダゾール誘導体等であって、その具体例としては、化学構造上から反応温度依存性の高い2−メチルイミダゾールや1,2ジメチルイミダゾール等を挙げることができる。
【0026】
【化1】

式中Rは水素、メチル基,又はエチル基を示す。
【0027】
かかる、反応促進剤は有効量としてプレポリマー100重量部に対して、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で用いられる。望ましくは更に感温性、或は遅効性を有するものが混合した樹脂の可使時間を長くとれ、脱型時間が短くなるため好適に用いられる。その具体例としては、ブロックアミンと称される1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−有機酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5−有機酸塩またはこれらの混合物等が挙げられる。本発明では熱硬化型ポリウレタンの原料成分であるウレタンプレポリマーの液状物と架橋剤の液状物との混合撹拌に使用する2液混合注型機には、市販のものを使用できる。また計量ポンプはその定量精度を考慮して、3連以上のプランジャータイプを使用することが好ましいがギアーポンプタイプも使用可能である。特に、本発明の製造装置では、脱型時に所定の硬度を得るために反応促進剤を使用して速硬化処方にする必要があるので、撹拌混合室は、特公平6−11389号公報に開示されているような、混合室内での滞留を防ぎ、且つ反応熱による発熱を抑制した小容量のタイプが好ましい。
【0028】
2液性の熱硬化性のポリウレタン樹脂について詳しく例示したが、本発明で使用できるブレード用の樹脂としては、これに限られることはない。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。加熱された回転する成型ドラムを使用するので、加熱硬化反応が注型直後から開始されるので、溶剤を含まない非溶剤型が好ましい。
【0029】
これらの合成樹脂成分を配合して、部分層になる樹脂組成とベース層になる樹脂組成を作成して、使用する。一般に、エッジ部やニップ部などに使用される部分層となる合成樹脂は高硬度、高反発弾性、ベース層に使用される樹脂はエッジ層よりも低硬度、低反発弾性に設計される。
【0030】
4.装置
本発明の製造装置は、基本的な構成は本出願人が先に提案した特許第3004586号公報、特許第2942183号公報、特許第2645980号公報、特開2005−7676号公報等に開示されたブレード素材の連続製造装置の構成に準ずる。
本発明の製造装置は、これらの製造装置において、ブレード素材の層構成に応じた複数の合成樹脂注型機を備えたものである。これら複数の注型機を目標とする層構造が形成されるように注型の順番、位置、量が特定されることとなる。
【0031】
断面凹状の成形用溝を外周面の全周にわたり形成し、水平に支持され中心軸を中心に回転する成形ドラムと、回転方向を時計回りとした場合、合成樹脂注型機の注型口を前記成形用溝に臨ませて前記成形ドラムの頂点付近(約9時から2時の間の位置)に配設され、熱硬化型ポリウレタンの原料成分であるウレタンプレポリマーの液状物と架橋剤及び必要に応じて他の添加成分を加えた液状物を混合撹拌し吐出するための混合注型機と、必要に応じて前記成形ドラム上方に配設された外部加熱装置と、前記成形ドラムの外周面に当接され前記成形ドラムに従動して回走する金属製のエンドレスベルトと、必要に応じて剥離部直前に外部冷却装置と、前記成形ドラムの前記成形用溝における帯状ブレード素材成形物の取出部に一端部を近接して前記帯状ブレード素材成形物の搬送部を水平に配置したコンベヤ(冷却可能)と、このコンベヤを必要応じて冷却する冷却装置と、成形された前記帯状ブレード素材を所定長さごとに切断する裁断装置とを備えている。
【0032】
上記の製造装置によると、複数の混合注型機の注型口からポリウレタン液状物を、加熱され回転している成形ドラムの成形用溝部に吐出し、成形ドラムで加熱されつつ、必要に応じて成形ドラム上方の外部加熱装置でポリウレタン液状物を加熱し、さらに、この成形用溝部と金属製エンドレスベルトとにより構成される空間部(キャビテイ)内に充満しながら、そのキャビテイ内で所定の時間成形ドラムにより加熱して重合反応させ、所定の幅と厚さで帯状に連続するポリウレタンエラストマー(ブレード素材等の成形物)を連続的に成形する。そして、剥離部の直前に必要に応じて冷却装置を設けて外部から金属製エンドレスベルトを介して冷却して成形ドラムの成形用溝部から連続的に剥離され、取り出される帯状の多層となった合成樹脂成形物は、平坦なコンベアベルト上で放熱冷却されながら搬出される。一方、コンベヤベルトは成形物の熱を吸収し温度が上昇するが、必要に応じて冷却装置によって冷却される。こうして、帯状の合成樹脂成形物は常温付近まで冷却されて、硬化して安定する。この状態で、ブレード等の製品の長さに裁断装置で次々と切断され、所定の幅と厚さおよび長さを有する熱硬化型ポリウレタン製のブレード用の弾性ゴム部材が完成する。
【0033】
切断操作は、一旦搬送を止めて行われる場合には、間欠搬送となるので、搬送タイミングを調整するために、裁断装置の前に、間欠駆動する送りロールと帯状の現像ブレード素材をたるませて余裕をもたせる弛み部分を形成して、切断操作と送りの同調制御を行う装置構成を設ける。刃物にセラミックを使用することにより、ポリウレタンとの滑りがよく、切断面が鋭利でかつ長期間連続して切断できる。
【0034】
4−1装置 各構成要素
本発明の多層ブレード素材の製造装置について、図3〜図7に基づいて説明する。
図3はブレード素材の製造装置の実施例を概要的に示す全体図、図4は成形装置部分を示す図、図5は合成樹脂硬化挙動説明用成形ドラム概略図、図6は合成樹脂硬化過程を示す図、図7は成形ドラムと帯状ブレード素材成形概略図である。
図3に示すように、弾性ゴム部材であるブレード素材の製造装置は、成形ドラム13、樹脂を供給する供給口する第1注型機11、第2注型機、スチール製の鏡面を備えたエンドレスベルト14、冷却用コンベア20、裁断装置24、搬出用のコンベア25等から構成される。
【0035】
ポリウレタン樹脂の液状物を注型する第1注型機11の注型口は、成形ドラム13頂点より約10時の時計方向の位置に配設され、第2注型機12の注型口は成形ドラムの頂部付近に配置され、それぞれ成形溝に臨んでいる。それに続いて成形ドラムの外周面に接してその約半分を覆うエンドレスベルト14が配設され、剥離された帯状のブレード素材101を冷却搬送、定尺切断する切断装置、搬送装置の順に工程に沿って配設されている。
第2注型機12とエンドレスベルト14の間や第1注型機と第2注型機の間に外部加熱装置を付加することもできる。また、剥離直前の位置にエンドレスベルト14を冷却する冷却装置を付加することもできる。注型機は2つ例示してあるが、層構成に応じて増加することができ、その供給口の位置は、約9時〜2時の間で移動することが可能である。
成形ドラム13は、材質を例えば、硬質アルミニウムやステンレスとし、回転駆動機構、成形溝、内蔵された加熱機器を備えている。
【0036】
成形溝30は、ブレード素材の巾と厚みに相当する所定の寸法で彫り込まれた断面凹状の成形溝が成形ドラムの外周に沿って周回形成されている。この成形溝30は金型に相当することとなる。また、成形ドラムには加熱手段が内蔵され、成形溝30にポリウレタン等の樹脂を硬化させる熱を供給する。この加熱手段は、電気ヒータ、加熱オイル、蒸気等であって、特に限定されるものではない。その加熱温度は、使用される樹脂や回転速度等によって適宜決定される。例えば、110℃〜150℃に設定される。回転駆動は、水平な回転軸15により回転自在に支持され、図示を省略した駆動装置により、所定速度で回転する。回転方向は、図示では、時計回りに設定してある。
【0037】
樹脂を供給する注型機は、使用する樹脂の成分を混合調整して一定量を連続して、注型口から成形ドラム13の成形溝30に供給する。
外部加熱装置を設けた場合は、注型口から成形溝30に注型された樹脂に熱を照射して加熱する機能を果たす。この熱によって、樹脂の表面側の硬化が促進される。注型された樹脂は成形ドラムの熱と外からの熱によって硬化が促進され、粘度が上がって、エンドレスベルトの接触始端部への流れ込みを制御することができる。外部加熱手段として、非接触タイプである遠赤外線、レーザー光、紫外線、誘導加熱などがある。加熱温度の調整は、使用する樹脂、製造スピード、ブレードの厚さなどによって、変更される。出力を調整することや溝までの距離を調整することでも加熱条件の調整が可能である。使用する樹脂との関係では、紫外線硬化剤を添加した樹脂を用いた場合は、紫外線を照射することによっても、効果を促進することができる。外部加熱を行うことによって、ブレードの厚さを大きくすることが可能で、あるいは、成形スピードを上げることができる。
【0038】
金属製のエンドレスベルト14は、成形溝30を覆って空間部を形成して、ポリウレタン液状物を充満する構造となっている。エンドレスベルト14と成形溝30によって、成形用のキャビティが形成され、ブレード素材の外形が整えられて樹脂の硬化反応が進行される。エンドレスベルト14が成形ドラム13の成形溝30を覆う区間は、樹脂の硬化が進み帯状のテープ101として成形溝30から剥離して取り出すことができる程度に設計する必要がある。例えば、時計で2時から8時までの区間に相当する180°が操作し易い領域である。
剥離直前には、エンドレスベルトの外側から冷風などを吹き付けて冷却する冷却装置を必要に応じて設置する。
【0039】
冷却コンベヤ20は、成型ドラムの13成型溝から剥離された樹脂製の帯状のテープに成型されたブレード素材101を冷却しながら後工程に搬送するものである。なお、この冷却コンベヤは、ブレード素材によっては冷却を必要としない場合もあり、冷却が不要な場合は、このコンベヤは後工程への搬送装置となるか、あるいは、省略することができる。
裁断装置24は、連続した帯状の素材をブレードの長さに切断する装置である。この裁断によって、ブレード素材は弾性ゴムの最終形状に形成されることとなる。この後は、金属製のブレード支持体への固着工程へ搬出される。この裁断装置の作用と同期させるために、裁断装置24の直前に送りを制御する送りロール23を配置し、送りロール23の前にテープをたるませる空間を持たせて、冷却用のコンベア20と裁断装置24のタイミング調整を計る。
なお、さらに二次架橋を行って、硬化反応を最終的に実施させる二次架橋のために加熱工程を後工程として必要に応じて加えることができる。
次に、装置の各部分の構成例について、さらに記載する。
【0040】
成形ドラム13のほぼ半分の外周面には、鏡面仕上げされたステンレスなどの金属帯板からなる成形用空間(金型)形成用のエンドレスベルト14が当接され、このエンドレスベルト14は、このエンドレスベルト14を予熱する予熱ロール16、ベルト走行を調整するガイドロール17、エンドレスベルトに張力を付与するテンションロール18およびエンドレスベルト14を冷却する冷却ロール19に掛け渡されて、成形ドラム13の回転に従動して回転する。また、エンドレスベルト14は、ヒータにより所定温度(例えば、成形ドラムと同程度の145℃前後)に加熱されており、この温度によってポリウレタン液状物の温度低下を防止する。
【0041】
冷却ロール19に隣接して、下部に冷却装置21が設けられた冷却用コンベヤ20が水平に設けられ、帯状ブレード素材を冷却して、搬送する。
【0042】
冷却用コンベヤ20のロールの下流に隣接して、弛み検知機22、送りロール23、裁断装置24およびコンベヤ25がこの順序で配備されている。弛み検知機22は、鉛直に立設された一対の支柱に上下一対のセンサーを取り付け、その間に帯状のブレード成形素材を案内してその弛み状態を検知する。
送りローラ23は、裁断装置24と連動して弛み、検知機22の信号を受けて所定の速度で帯状ブレード素材を裁断装置24に送り、帯状のブレード素材を所定の長さに裁断する。コンベヤ25は、裁断されたブレード成形素材を次工程(架橋工程、金具接着工程、検査工程等)に搬送する。
【0043】
上記のようにして本実施例のブレード用弾性ゴム製造装置が構成される。次に、この製造装置による電子写真装置用ブレードの製造工程を説明する。
成形ドラムを用いた基本的な製造概略が図7に示されている。成形溝30を外周に備えた水平な軸15を中心にして回動する成形ドラム13を用いて、熱硬化性合成樹脂液を注型機の注型口から、成形ドラムの頂点付近から成形溝に溝断面をちょうど満たす程度の定量を連続して供給し、その後図示しないエンドレスベルトで溝の開放表面を覆いながら、回転する過程で合成樹脂の硬化重合が進み、テープ状に取り出し可能な程度に硬化した箇所において、帯状のブレード素材を成形溝から剥離して取り出し、連続して帯状の素材を得るものである。
【0044】
本発明の1実施形態である2層構造の弾性ゴム部材を作成する場合は、注型機を2台設け、前後に配置し、それぞれの注型機はプレポリマーと架橋剤とを計量して、均一に撹拌・混合しながら注型口より所定温度、例えば、145℃に温度調節された成形ドラム13の成形用溝内にポリウレタン液状物を順次吐出して注型する。このとき、成形ドラム13は所定の速度(例えば80秒/1回転)で時計方向に回転しており、ドラム13の周速と成形溝30の彫り込み深さおよび幅に対応する必要量が連続的に注入され、先に注型された樹脂を後から注型された樹脂が覆う状態の層となって充満している。
【0045】
部分2層構造の成型工程を模式的に図5、図6に基づいて説明する。
部分層を形成するポリウレタン液状物は、5図の例では成形ドラム13の上方から約10時半の時計位置図示A点に配設された第1注型機11の注型口11aから供給され、ベース層を形成するポリウレタン液状物は、ほぼ成形ドラムの真上C点に位置する第2注型機12の注型口12aから供給され、成形ドラムによる熱を受けながら徐々に硬化しつつ、エンドレスベルトの当接開始位置F点に至り、その後エンドレスベルトによって覆われた状態でG点までの間、加熱・保持される。これにより、液状物のウレタン重合反応がほぼ完了し、必要な幅と厚を備えた部分的に2層に形成されたブレード素材が帯状に連続的に成形される。
注型口の位置は、層構成、樹脂の種類やブレードの厚み、製造スピードなどによって、調整される。本例では、成形ドラムの反回転方向で約9時から2時の時計位置に調整設置される。好ましくは、10時付近と0時付近からやや左よりに設置される。
【0046】
図6に基づいて第1注型のA点からエンドレスベルトが被覆するF点までの成形過程を模式的に説明する。この図示の例では、弾性ゴム部材の面の中間部に筋状に部分層1を形成する例を示している。また、注型された合成樹脂の硬化状態を斜線で示し、未硬化の部分は白抜きに標記している。ただし、この硬化進行状況はイメージ的表示であって、加熱されている成型溝の底面や壁面に接した部分から硬化が進行し、エンドレスベルトも加熱されているので、接触によって溝部開放側も硬化が促進されるというイメージである。
まず、A点では、成形溝内に第1注型口から部分層1に相当する樹脂液を注型する。この例では、筋状になるような一定量を連続して供給する。重合に適した温度に加温された成形溝底面に接した樹脂は重合が始まり、B点では溝底面側が硬化をはじめている状態を示している。C点においてベース層2を形成する樹脂を第2注型口から残りの成形溝断面を充填する量を連続して供給する。D点では成形溝底面や壁面の高温部に接触した部分から硬化が進行している状態を現している。エンドレスベルトが接触する直前のE点では、成形溝開放部表面側が流動状態を残し、下流側への流れ込みが生ずるため、やや盛り上がった状態を示している。F点では、エンドレスベルトの鏡面と接触し、余熱で高温とされたベルトと接触して、表面側も硬化が進行することとなる。なお、F点では全体に斜線が入っているが、重合硬化が完全に終了したことを意味するものではない。
このF点から取り出し位置のG点までの間に更に重合が進行し、テープ状に引出可能とされる。
なお、B点付近やD点付近に外部加熱装置を配置すると、表面側の重合を促進することができる。また、G点の直前に冷風送風装置等の冷却装置を配置すると、成形溝からの剥離性を向上させることができる。また、離型剤や表面処理剤などを連続して供給する場合は、G点とA点の間に配置することができる。
【0047】
こうして連続的に成形された帯状のブレード成形物は、G点で成形ドラム13の成形溝30から剥離され、冷却用コンベヤ20であるエンドレスコンベヤベルト上に導かれる。
【0048】
なお、図6に示された成形溝断面は底面がフラットである例を示しているが、これに限らず肉厚を途中で変えた異形断面の弾性ゴム部材を作成する場合は、成形断面形状も段差を設ける。また、部分層をやや凸状に設ける場合はその部分に層とする部分を深くすることができる。また、溝底面を粗面化すると、粗面が形成されたブレード素材が得られ、微小、球状のトナーの帯電用ブレード用として適している。
【0049】
エンドレスコンベヤベルトは冷却装置21で冷却されているため、帯状ブレード素材101はエンドレスコンベヤベルト上で常温(20℃前後)近くまで冷却されつつ搬送される。ブレードの種類によっては、冷却コンベヤを積極的に冷却する必要がないことは前述のとおりである。この場合は、このコンベヤ20上で、搬送されながら帯状のブレード素材は自然に放熱する。
【0050】
そして、冷却された帯状ブレード素材は、冷却用コンベヤ20より弛み検知機22、送りロール23、裁断装置24およびコンベヤ25に導かれる。弛み検知機22は、支柱に取り付けられたセンサーの間を通って帯状ブレード素材を、送りロール23に誘導する。送りロール23は、帯状ブレード素材を挟持して冷却用コンベヤ20より速く走行するので、その帯状ブレード素材が上側センサー26に接するときは停止し、下側センサー27に接するとき送りを開始して、帯状ブレード素材の製造速度と、裁断装置24の処理速度とを調整する(帯状ブレード素材に過剰な張力を掛けない)。裁断装置24は、上刃および下刃の間にブレード素材を誘導して所定の長さ(製品としての長さ)に裁断する。これによって、所定の長さに裁断された平板状のブレード用弾性ゴム部材の製造工程が終了する。
裁断装置は、上下の刃に限定されることはなく、テーブルと上側に刃を設けた構成によっても構成することができる。送りロールからテーブル上に載置されたテープを押さえて刃を作用させて、所定長に切断することができる。
【0051】
このようにして製造されるブレード用の弾性ゴム部材は、その一側縁部を、図2に図示するように金属製支持部材4の一側縁に接着剤によって接着して、最終製品としてのクリーニングブレード等が完成する。
また本発明の場合には、従来の遠心成形法と違って、クリーニングブレード等が連続して一本ずつ製造されていくので、ホルダーと接着する工程などの後工程も一本ごとに処理すればよいので、これらの工程の自動化が容易となる。成形型を用いる方法では、バリが発生することが避けられず、ブレードの先端側の稜線を裁断により形成する必要があり、バリの裁断などによる廃棄物が発生し、無駄になる樹脂原料が多く発生する問題がある。
【0052】
[クリーニングブレード例]
図1に示されるクリーニングブレードは、ニップ層部分と他のベース層部分とからなる弾性ゴム部材を、次の組成によって製造したクリーニングブレードの例である。サイズは、320mm×15mm×2mmである。これをメッキ鋼板からなる支持部材に接着し、電子写真装置用クリーニングブレードを作製した。実施例1〜6は、以下に示すA〜Fの樹脂を用いてベース層とニップ層を形成した。比較例1,2は、部分層を設けていない例である。
クリーニングブレードとして使用するために、図9に示すようにニップに相当する部分層の幅方向長さは2Xの中央部、即ちXとなるように切断して、エッジを形成した
得られた電子写真装置用クリーニングブレードを市販の普通紙複写機(有機感光体使用、速度10枚/分)に装着し、印字テストを行った。印字テストは、常温(23℃)で100枚ごとにトナーのすり抜けが生じているか否かをチェックして、印刷物にトナーのすり抜けに起因するスジが認められた時点で終了とし、その印刷枚数を記録した。30000枚印刷してもスジが発生しなかったものはそこでテストを終了した。
さらに、クリーニングブレード実施例1〜3は、装置内が50〜55℃に達した際の異音(鳴き)の発生の有無を確認した。結果を表2に示した。またさらに、クリーニングブレード例4〜6は、低温(10℃)にてそれぞれ印字テストを行った。結果を表2に示した。

【0053】
<ニップ層(エッジ)>
・ポリウレタンA
エチレンアジペート系プレポリマー(NCO含有量8.0%)100重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン:エチレングリコール=80:10:10)7.6重量部
・ポリウレタンB
エチレンアジペート系プレポリマー(NCO含有量8.0%)100重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン:エチレングリコール=85:5:10)7.7重量部
・ポリウレタンC
エチレンアジペート系プレポリマー(NCO含有量16.5%)100重量部、
ポリエチレンアジペート47重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=80:20)14.4重量部
・ポリウレタンD
エチレンアジペート系プレポリマー(NCO含有量16.5%)100重量部、
ポリエチレンアジペート63重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=70:30)13.7重量部

【0054】
<ベース層>
・ポリウレタンE
エチレンアジペート系プレポリマー(NCO含有量16.5%)100重量部、
ポリエチレンアジペート92重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=60:40)11.6重量部
・ポリウレタンF
カプロラクタム系プレポリマー(NCO含有量13.0%)100重量部、
ポリカプロラクタム58重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=65:35)9.5重量部
【0055】
【表2】



【0056】
実施例1〜3クリーニングブレードは、小粒径トナー及び球形トナーのいずれのトナーをも良好に掻き取ることができ、また、高温下でも異音(鳴き)を抑制できる電子写真装置用クリーニングブレードであった。実施例例4〜6クリーニングブレードは、低温下においても常温下においても、小粒径トナー及び球形トナーのいずれのトナーをも良好に掻き取ることができるクリーニングブレードであった。

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】クリーニングブレードの例
【図2】図1に示すクリーニングブレードの断面図
【図3】製造装置概要全体図
【図4】成形装置を示す図
【図5】合成樹脂硬化挙動説明用成形ドラム概略図
【図6】硬化過程説明図
【図7】成形ドラム概略斜視図
【図8】多層弾性ゴム部材バリエーション例を示す図
【図9】実施例1〜6に用いるクリーニングブレード作成図
【図10】弧状の部分層を備えた弾性ゴム部材
【図11】弧状部分層の幅と高さの関係を示すグラフ
【図12】弧の想定半径と弧の高さ関係を示すグラフ
【図13】弧状部分層のバリエーション
【符号の説明】
【0058】
1 部分層
2 ベース層
3 弾性ゴム部材
4 支持部材
10 外部加熱装置
11 第1注型機
12 第2注型機
13 成形ドラム
14 エンドレスベルト
15 回転軸
16 予熱ロール
17 ガイドロール
18 テンションロール
19 冷却ロール
20 冷却コンベヤ
21 冷却装置
22 弛み検知器
23 送りロール
24 裁断装置
25 コンベア
26 上側センサー
27 下側センサー
30 成形溝
101 帯状ブレード素材
102 定尺寸法ブレード部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に成形溝及び内部に加熱装置を備えた成形ドラムを用いて、合成樹脂を成形用原料とするブレードの素材を連続成形する方法において、2種以上の異なる液状合成樹脂原料を別々に注型することにより、異種材料を組み合わせたブレード素材を製造する方法。
【請求項2】
異なる液状合成樹脂は、成形溝底面の一部に一方の液状合成樹脂を注型し、その後他方の合成樹脂を注型することを特徴とする請求項1記載のブレード素材を製造する方法。
【請求項3】
一方の樹脂の形状を円弧状の横断面形状に形成することを特徴とする請求項2記載のブレードを製造する方法。
【請求項4】
クリーニングブレードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
【請求項5】
現像ブレードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
【請求項6】
帯電ブレードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
【請求項7】
成形溝を外周に備え、内部に加熱装置を備えた成形ドラムであって、該成形ドラムの外周に沿って、成形溝に合成樹脂供給手段、成形ドラムの成形溝を覆いながら成形ドラムの回転に同期して回走するエンドレスベルトを順次配置し、成形溝に供給した合成樹脂原料をエンドレスベルトと成形溝から形成される成形空間によって、所定の幅と厚さを有する帯状のブレード素材を成形ドラムの回転に従い製造する方法であって、合成樹脂供給手段を複数備えたことを特徴とするブレード素材を連続して製造する方法。
【請求項8】
合成樹脂が、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のブレード素材を製造する方法。
【請求項9】
外周に成形溝及び内部に加熱装置を備えた回転する成形ドラムを用いて、合成樹脂を成形用原料とするブレードの素材を連続成形する装置において、成形用原料である合成樹脂を成形溝に吐出する注型機を複数設けたことを特徴とするブレード素材製造装置。
【請求項10】
断面凹状の成形用溝を全外周面に形成され、内部加熱装置を備えた回転する成形ドラムと、
合成樹脂原料を調整して吐出する樹脂原料注型機と、
前記成形ドラムの外周面に当接し、前記成形ドラムに従動して回走する金属製のエンドレスベルトと、
取出部に一端部を近接してブレード用の成形物を搬出する装置とを備えたブレード素材の製造装置であって、
成型ドラムの回転方向に沿って、前記樹脂原料注型機を複数設け、該樹脂原料注型機の注型口を成形ドラムの回転方向に対して並列及び/又は前後に配置し、その下流に金属製エンドレスベルト、更に、搬出装置の順に配設したことを特徴とするブレード素材の製造装置。
【請求項11】
複数設置された樹脂原料注型機は、成形溝幅の一部に供給する注型機と、成形溝全幅に樹脂原料を供給する注型機であることを特徴とする請求項9又は10記載のブレード素材の製造装置。
【請求項12】
成形用溝は、横断面方向の溝深さに変化が付与されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のブレード素材の製造装置。
【請求項13】
異なる組成の液状の合成樹脂原料を一体に成形硬化積層してなる電子写真用ブレード素材。
【請求項14】
合成樹脂として、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタンを用いることを特徴とする請求項13記載の電子写真用ブレード素材。
【請求項15】
長手方向に弧状の部分層とそれ以外のベース層を異なる合成樹脂素材としたことを特徴とする請求項13又は14に記載の電子写真用ブレード素材。
【請求項16】
長手方向に弧状の部分層は、ニップ部であることを特徴とする請求項15に記載の電子写真用ブレード素材。
【請求項17】
異形断面であることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
【請求項18】
クリーニングブレード用素材であることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
【請求項19】
現像ブレード用素材であることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
【請求項20】
帯電ブレード用素材であることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材。
【請求項21】
請求項13〜18のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材を金属製ホルダーと接合したクリーニングブレード。
【請求項22】
請求項13〜17、19のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材を金属製ホルダーと接合した現像ブレード。
【請求項23】
請求項13〜17、20のいずれかに記載の電子写真用ブレード素材を金属製ホルダーと接合した帯電ブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−30385(P2007−30385A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218238(P2005−218238)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】