説明

プラズマ処理方法

【課題】 例えばプリヒ−トを行ってから成膜する場合に、プリヒ−ト時間を短縮すること。
【解決手段】 プリヒ−ト時と成膜時との間で主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流値を変えることにより、得られる磁界の形状を変化させ、成膜時は均一性が大きいが磁束密度が小さい磁界、プリヒ−ト時は均一性は小さいが磁束密度が大きい磁界とする。この結果成膜時はウエハWの面内においてほぼ均一なプラズマが発生するので均一な成膜処理を行うことができる。一方プリヒ−ト時は均一性は悪いもののプラズマ密度が成膜時よりも大きいプラズマが発生するのでウエハWへの入熱量が成膜時よりも多くなり、プリヒ−ト時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体ウエハ等の被処理基板に対して、ECR(Electron Cyclotron Resonance)処理等のプラズマ処理により、SiO2 膜やフッ素添加カ−ボン膜等の薄膜の形成やエッチング等を行うプラズマ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイスの高集積化を図るために、パターンの微細化、回路の多層化といった工夫が進められており、そのうちの一つとして配線を多層化する技術がある。多層配線構造をとるためには、n層目の配線層と(n+1)番目の配線層の間を導電層で接続すると共に、導電層以外の領域は層間絶縁膜と呼ばれる薄膜が形成される。この層間絶縁膜の代表的なものとしてSiO2 膜やSiOF膜があるが、これらは例えば図8に示すようなECRプラズマ処理を行うプラズマ処理装置を用いて形成されている。
【0003】例えばこの装置では、プラズマ生成室1A内に例えば2.45GHzのマイクロ波を導波管11を介して供給すると共に、例えば875ガウスの磁界を印加して、マイクロ波と磁界との相互作用(電子サイクロトロン共鳴)によりArガスやO2 ガス等のプラズマガスや、成膜室1B内に導入された例えばSiH4 ガス等の成膜ガスをプラズマ化して、載置台12上に載置された半導体ウエハWに対して薄膜を形成している。
【0004】前記磁界はプラズマ室1Aを囲むように設けられた主電磁コイル13と、成膜室1Bの下方側に設けられた補助電磁コイル14との組み合わせにより、プラズマ室1Aから成膜室1Bに亘って下向きの磁界を形成するように印加されている。そして膜質の均一性を向上させるために、ウエハ面上の磁束密度がほぼ均一になるように主電磁コイル13及び補助電磁コイル14の位置や電流を調整して、均一なプラズマを発生させるようにしている。
【0005】ところで実際のプロセスでは、ウエハWを載置台12に載置した後プリヒ−トと呼ばれる処理を行っている。このプリヒ−トは、常温のウエハWを載置台12に載置した後直ちに成膜ガスを導入して成膜処理を行うと、ウエハWはプラズマにより加熱されるものの成膜時に設定されている所定の温度までは温度が上昇していないので、予定よりも低い温度で成膜が進行してしまい、これにより膜質の悪い薄膜が形成されてしまうため、これを防止するために行われる処理である。
【0006】具体的にはウエハWを載置台12上に載置した後成膜ガスを導入する前にプラズマを発生させ、このプラズマによりウエハWを所定の温度例えば成膜温度まで加熱し、次いで成膜ガスを導入して成膜処理を行うようにしている。この際プリヒ−トと成膜とは、マイクロ波や磁界のパラメ−タは変えずに、成膜で最適と考えられていたプラズマを発生させてこれらの処理を行なうようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述の方法では、成膜に合わせてウエハの近傍に均一なプラズマを発生させており、このため磁束密度が広げられた状態であるので、単位面積当たりの入熱量は均一になるが、入熱量の総量は少なくなってしまう。従ってプリヒ−トの面から見ると時間が長くかかり過ぎ、ウエハWを載置した後直ちにプラズマを発生させても、例えば80℃のウエハWを成膜処理の温度である400℃まで上昇させるためには約60秒必要であって、ト−タルのスル−プットが低下してしまうという問題があった。
【0008】本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的はプリヒ−ト時間を短縮することができるプラズマ処理方法を提供することにあり、他の目的は複数の種類の薄膜を成膜する場合に、夫々の膜の膜質の均一性を向上させることができるプラズマ処理方法を提供することにあり、さらに他の目的はエッチング後にエッチングガスの残渣の除去やレジスト膜の除去等の後処理を行う場合に、後処理に要する時間を短縮することができるプラズマ処理方法を提供することにある。更にまた基板表面に形成されている自然酸化膜を除去するなどの前処理を行う場合に、前処理に要する時間を短縮することができるプラズマ処理方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】このため本発明は、高周波発生手段により真空容器内にマイクロ波を供給すると共に、磁界形成手段により前記真空容器内に磁場を形成し、前記真空容器内においてマイクロ波と磁界との電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを発生させ、このプラズマにより被処理基板を処理するプラズマ処理方法において、前記真空容器内に被処理基板を搬入し、プラズマを発生させて被処理基板を加熱する第1の工程と、次いで前記真空容器内において成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板上に薄膜を形成する第2の工程と、を含み、前記第1の工程は第2の工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、第1の工程と第2の工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とする。
【0010】また本発明は、前記真空容器内において第1の成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板上に第1の膜を形成する第1の成膜工程と、次いで前記真空容器内において第2の成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより前記第1の膜上に第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を含み、前記第1の成膜工程と第2の成膜工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とする。
【0011】さらに本発明は、前記真空容器内においてエッチングガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板をエッチングするエッチング工程と、次いで前記真空容器内において後処理用のガスをプラズマ化し、このプラズマにより後処理を行う後処理工程と、を含み、前記後処理工程はエッチング工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、エッチング工程と後処理工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とする。ここで前記後処理には、エッチングガスの残渣を除去する処理やレジスト膜を酸素ガスによりアッシングする処理が含まれる。
【0012】また本発明は、真空容器内においてエッチングガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板の表面の自然酸化膜をエッチングするエッチング工程と、次いで前記真空容器内において成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板の表面に薄膜を形成する成膜工程と、を含み、前記エッチング工程は成膜工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、エッチング工程と成膜工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させるようにしてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】先ず本発明の実施の形態に用いられるプラズマ処理装置の一例を図1に示す。この装置は例えばアルミニウム等により形成された真空容器2を有しており、この真空容器2は上方に位置してプラズマを発生させる筒状の第1の真空室21と、この下方に連通させて連結され、第1の真空室21よりは口径の大きい筒状の第2の真空室22とからなる。なおこの真空容器2は接地されてゼロ電位になっている。
【0014】この真空容器2の上端は開口されて、この部分にマイクロ波を透過する部材例えば石英等の材料で形成された透過窓23が気密に設けられており、真空容器2内の真空状態を維持するようになっている。この透過窓23の外側には、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生する高周波発生手段をなす高周波電源部24に接続された導波管25が設けられており、高周波電源部24にて発生したマイクロ波を例えばTEモードにより導波管25で案内して、またはTEモ−ドにより案内されたマイクロ波を導波管25でTMモ−ドに変換して、透過窓23から第1の真空室21内へ導入し得るようになっている。
【0015】第1の真空室21を区画する側壁には例えばその周方向に沿って均等に配置したガスノズル31が設けられると共に、このガスノズル31には例えば図示しないプラズマ生成用ガス源が接続されており、第1の真空室21内の上部にArガスやO2 ガス等のプラズマ生成用ガスをムラなく均等に供給し得るようになっている。なお図中ガスノズル31は図面の煩雑化を避けるために2本しか記載していないが、実際にはそれ以上設けている。
【0016】前記第2の真空室22内には、前記第1の真空室21と対向するように被処理基板をなす半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wの載置台4が設けられている。この載置台4は表面部に静電チャック41を備えており、この静電チャック41の電極には、ウエハを吸着する直流電源(図示せず)の他、ウエハにイオンを引き込むためのバイアス電圧を印加するように高周波電源部42が接続されている。
【0017】一方前記第2の真空室22の上部即ち第1の真空室21と連通している部分にはリング状の成膜ガス供給部5が設けられており、この成膜ガス供給部5は、ガス供給管51から例えばSiH4 ガス等の成膜ガスが供給され、このガスを内周面のガス穴52から真空容器2内に供給するように構成されている。
【0018】前記第1の真空室21を区画する側壁の外周には、これに接近させて例えばリング状の主電磁コイル26が配置されると共に、第2の真空室22の下方側には例えばリング状の補助電磁コイル27が配置されている。また第2の真空室22の底部には例えば真空室22の中心軸に対称な2個所の位置に各々排気管28が接続されている。本実施の形態では主電磁コイル26及び補助電磁コイル27により磁界形成手段が構成されている。
【0019】次に上述の装置を用いてウエハW上にSiO2 膜よりなる層間絶縁膜を形成する場合の一連のプロセスについて図2により説明する。先ず真空容器2の側壁に設けた図示しないゲートバルブを開いて図示しない搬送アームにより、例えば表面にアルミニウム配線が形成されたウエハWを図示しないロードロック室から搬入して載置台4上に載置し、静電チャック41により静電吸着して図2(a)に示すようにプリヒ−ト(第1の工程)を行う。
【0020】つまりゲートバルブを閉じて内部を密閉した後、排気管28より内部雰囲気を排気して所定の真空度まで真空引きし、真空容器2内を所定のプロセス圧に維持した状態で、先ずガスノズル31から第1の真空室21内へArガスを所定の流量で導入する。そして高周波電源部24から2.45GHz,2.8kWの高周波(マイクロ波)を供給し、かつ高周波電源部42により載置台4に13.56MHz,0kWのバイアス電力を印加する。なお、載置台4の表面温度は例えば常に80℃に設定する。バイアス電力を0kWとするのは、不均一な仕様下でのデバイスのダメージを少なくするためのものであるが、ダメージが少なくて済むデバイスの成膜時には300W程度の微細なバイアス電力を印加して、より高速なプリヒートを行ってもよい。
【0021】このようにすると高周波電源部24からのマイクロ波は導波管25を通って真空容器2の天井部に至り、ここの透過窓23を透過して第1の真空室21内へ導入される。また真空容器2内には主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流を夫々220A,250Aとして、第1の真空室21の上部から第2の真空室22の下部に向かい、例えば第1の真空室21の下部付近にて875ガウスとなる磁場を形成する。
【0022】こうして磁界とマイクロ波との相互作用によってE(電界)×H(磁界)が誘発されて電子サイクロトロン共鳴が生じ、この共鳴によりArガスがプラズマ化され、且つ高密度化される。またこのようにArガスのプラズマを生成させることにより、プラズマが安定化する。こうして発生したプラズマ流は第1の真空室21より第2の真空室22内に流れ込んで行き、このプラズマ流によってウエハWが加熱される。こうしてウエハWが約400℃になるまで約20秒間プラズマを発生させ、プリヒ−トを行う。
【0023】続いて図2(b)に示すようにSiO2 膜の成膜(第2の工程)を行う。つまりArガス及びO2 ガスを所定の流量で第1の真空室21内に導入すると共に、成膜ガス供給部5からSiH4 ガスを第2の真空室22内に導入する。そして真空容器2内を所定のプロセス圧に設定し、13.56MHz,2.7kWのバイアス電圧を印加する。
【0024】一方第1の真空室21内に2.45GHz,1.8kWのマイクロ波を導入すると共に、主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流を夫々200A,120Aとして、電子サイクロトロン共鳴によりSiH4 ガスを活性化(プラズマ化)して活性種(プラズマ)を形成する。ここでプラズマイオンはバイアス電圧によりウエハWに引き込まれ、ウエハW表面のパタ−ン(凹部)の角を削り取って間口を広げ、このスパッタエッチング作用と平行してSiO2 膜が成膜されて凹部内に埋め込まれ、こうしてSiO2 膜からなる層間絶縁膜が形成される。
【0025】このような実施の形態では、プリヒ−ト時と成膜時とで主電磁コイル26と補助電磁コイル27の電流を変えることにより磁界の形状を変化させ、夫々の処理に適したプラズマを発生させているので、プリヒ−トの時間を短縮することができる。
【0026】つまりプリヒ−ト時は均一性よりもウエハWへの入熱量を重視し、入熱量が多くなるような磁界を形成し、成膜時は入熱量よりも均一性を重視し、面内均一性が高い磁界を形成するようにしている。ここで磁界は上述のように主電磁コイル26と補助電磁コイル27とにより形成されるが、主電磁コイル26の磁場は下側に向かうにつれて外側に広がる形状であり、補助電磁コイル27の磁場は上側に向かうにつれて外側に広がる形状であって、補助電磁コイル27により主電磁コイル26の外側に広がった磁場が内側に絞り込まれる状態になる。またプラズマは上述のように電界と磁界との相互作用により発生するが、その形状は磁場の形状に依存する。
【0027】従って例えば成膜時は主電磁コイル26を200A、補助電磁コイル27を120Aとしているので、補助電磁コイル27で絞り込まれる量が少なく、結果として外側の磁場はある程度広げられた状態となる。これにより磁界Bは図2(b)に示すように磁力線がウエハWの面内においてほぼ均一になるが、磁束密度は小さくなる。ここで発生したプラズマのプラズマ密度(ウエハWへの入熱強度)は磁束密度に比例するので、この場合にはプラズマ密度はウエハWの面内においてほぼ均一になるものの、入熱量の総量は小さくなる(図3参照)。
【0028】一方プリヒ−トでは主電磁コイル26を220A、補助電磁コイル27を250Aとしているので、補助電磁コイル27で絞り込まれる量が多く、結果として磁界Bは磁力線がウエハの中心部付近に集められる状態となる。この場合では磁束密度はウエハ中心部付近で大きくなるので、図3に示すように発生したプラズマの入熱強度はウエハの面内で不均一ではあるが、入熱量の総量は成膜時に比べてかなり多くなる。
【0029】このようにこの方法では、主電磁コイル26と補助電磁コイル27との電流量を制御することにより、プリヒ−ト時はウエハWへの入熱量が多くなるような磁場を形成し、成膜時は面内均一性が高い磁界を形成するようにしているので、例えば常温のウエハWを真空容器2内に搬入してから、載置台4に載置、吸着させ、この時点で80℃程度まで温度が上昇したウエハWを成膜温度である400℃程度まで加熱するまでの時間(プリヒ−ト時間)を20秒程度とすることができ、プリヒ−ト時間を従来に比べて1/3程度に短縮することができる。
【0030】次に本発明の他の実施の形態について図4により説明する。この実施の形態は本発明方法を数種類の膜を積層して形成する場合に適用したものである。この実施の形態で形成される膜の構造の一例について説明すると、例えばSiO2 膜よりなる基板の上面にフッ素添加カ−ボン膜63(以下「CF膜」という)を形成したものであり、SiO2 膜61とCF膜63との間には密着層としてSiN膜62が介在されている。
【0031】このような積層構造の膜の製造方法について説明すると、例えば上述のプラズマ処理装置において、SiO2 膜61上に第1の膜であるSiN膜62を成膜する第1の成膜工程を行う。つまりプラズマ生成用ガス例えばArガスと第1の成膜ガス例えばシランガス及びN2 ガスとを夫々所定の流量で導入し、所定のプロセス圧の下、13.56MHzのバイアス電圧と2.45GHzのマイクロ波とを導入すると共に、主電磁コイル26の電流を200A、補助電磁コイル27の電流を主電磁コイル26よりも小さい値(0も含む)例えば50Aとして、電子サイクロトロン共鳴により上記ガスをプラズマ化させて、SiO2 膜61の上面に厚さ約50オングストロ−ムのSiN膜62を形成する。
【0032】次いでSiN膜62上に第2の膜であるCF膜63を成膜する第2の成膜工程を行う。つまり上述のプラズマ処理装置において、プラズマ生成用ガスとしてArガス、第2の成膜ガスとしてC4 8 ガス及びC2 4 ガスを用いると共に、主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流を夫々200A,160Aとして、前記電子サイクロトロン共鳴によりC4 8 ガス及びC2 4 ガスをプラズマ化させて、SiN膜62の上面に厚さ約8000オングストロ−ムのCF膜63を形成する。
【0033】このような実施の形態では、SiN膜62の成膜時とCF膜63の成膜時とで主電磁コイル26と補助電磁コイル27の電流を変えることにより磁場の形状を変え、夫々の処理に適したプラズマを発生させているので、夫々の膜の膜質の面内均一性を高めることができる。
【0034】つまりSiN層62を形成する場合には、補助電磁コイル27の電流値を主電磁コイル26よりもかなり小さくしているので、補助電磁コイル27で絞り込まれる量が極めて少なく、図4(a)に示すように磁界Bは下側に向かうに連れて外側に広がる発散磁界に近い形状となる。このような磁界では成膜速度が小さくなるので、50オングストロ−ムと極めて薄いSiN層62の成膜であっても成膜量の調整ができ、膜質の均一な薄膜を形成することができる。
【0035】一方CF膜63の成膜の際は、補助電磁コイル27の電流値を大きくして、補助電磁コイル27で絞り込まれる量を多くしているので、図4(b)に示すように磁界Bは下側に向かうに連れて膨らむもののさらに下側に向かうに連れてまた絞り込まれる形状となり、ミラ−磁界を形成する。このような磁界では成膜速度が大きくなるが、CF膜63は膜厚が8000オングストロ−ムとSiN膜62に比べて厚いので、成膜速度が大きくても成膜量の調整ができるため、大きな速度で膜質の均一な薄膜を形成することができる。
【0036】続いて本発明のさらに他の実施の形態について図5により説明する。この実施の形態は本発明をエッチングに適用したものである。この実施の形態のエッチングの一例について説明すると、例えばSiO2 膜よりなる基板71の上面にアルミニウム(Al)層72を形成し、当該Al層72の上面にレジスト膜73よりなるパタ−ンを形成して、エッチングガス例えばCl2 ガスでAl層72をエッチングするというものである。
【0037】このようなエッチングについて具体的に説明すると、先ず図5(a)に示すように、上述のプラズマ処理装置においてAl層72をCl2 ガスでエッチングする工程を行う。つまりプラズマ生成用ガス例えばArガスとCl2 ガスとを夫々所定の流量で導入し、所定のプロセス圧の下、13.56MHzのバイアス電圧と2.45GHzのマイクロ波とを導入すると共に、主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流を夫々200A,120Aとして、プロセス圧0.5Paの下、電子サイクロトロン共鳴によりCl2 ガスをプラズマ化させて、このプラズマによりAl層72のエッチングを行う。つまりプラズマイオンをバイアス電圧によりAl層72に引き込みながら、表面のパタ−ン(凹部)の角を削り取って間口を広げ、スパッタエッチングを行う。
【0038】この後図5(b)に示すように、エッチングにより形成された溝部74に残ったCl2 ガスの残渣75を後処理用のガスで除去する後処理工程を行う。つまりプラズマ生成用ガス例えばArガスと後処理用ガスであるNH3 (アンモニア)ガスとを夫々所定の流量で導入し、主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流を夫々220A,250Aとして、プロセス圧133Paの下、電子サイクロトロン共鳴によりNH3 ガスをプラズマ化させることにより、残渣75であるCl(塩素)を還元及び熱的に蒸発して除去する。
【0039】このような実施の形態では、Al層72のエッチング時と後処理時との間で主電磁コイル26と補助電磁コイル27の電流を変えることにより磁場の形状を変え、夫々の処理に適したプラズマを発生させているので、均一なエッチングができると共に、後処理に要する時間を短縮することができる。
【0040】つまりエッチング時は、主電磁コイル26を200A、補助電磁コイル27を120Aとしているので、上述の実施の形態で説明したように、磁界Bは図5R>5(a)に示すように磁力線が基板71の面内においてほぼ均一なミラ−磁界となる。このような磁界ではプラズマ密度は基板71の面内においてほぼ均一になるので均一なエッチングを行うことができる。
【0041】一方後処理時は主電磁コイル26を220A、補助電磁コイル27を250Aとしているので、上述の実施の形態で説明したように、磁界Bは図5(b)に示すように磁力線が基板71の中心部付近に集められるようなミラ−磁界となる。このような磁界ではプラズマ密度はエッチング時に比べてかなり大きくなるが、プラズマ密度が大きくなると活性種が多くなることから残渣の除去処理が進行しやすくなり、後処理に要する時間を短縮することができる。
【0042】続いて本発明をエッチングに適用した例の他の例について図6により説明する。この実施の形態のエッチングの一例について説明すると、例えばポリシリコンよりなる基板81の上面にSiO2 膜82を形成し、当該SiO2 膜82の上面にレジスト膜83を形成して、エッチングガス例えばC4 8 ガス等のC(炭素)とF(フッ素)との化合物ガス(以下「CF系ガス」という)でSiO2 膜82をエッチングするというものである。
【0043】このようなエッチングについて具体的に説明すると、先ず図6(a)に示すように、上述のプラズマ処理装置においてSiO2 膜82をC4 8 ガスでエッチングする工程を行う。つまりプラズマ生成用ガス例えばArガスとC4 8 ガスとを夫々所定の流量で導入し、プロセス圧0.8Paの下、13.56MHzのバイアス電圧と2.45GHzのマイクロ波とを導入すると共に、主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流を夫々200A,120Aとして、電子サイクロトロン共鳴によりC4 8 ガスをプラズマ化させて、このプラズマによりSiO2 膜82のエッチングを行う。
【0044】この後図6(b)に示すように、レジスト膜83をO2 ガスでアッシングする後処理工程を行う。つまりプラズマ生成用ガス例えばArガスと後処理用ガスであるO2 ガスとを夫々所定の流量で導入し、主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流を夫々220A,250Aとして、プロセス圧1.5Paの下、電子サイクロトロン共鳴によりO2 ガスをプラズマ化させ、このプラズマによりレジスト膜83をH2 OとCO2 にして除去する。
【0045】このような実施の形態では、エッチング時には磁力線が基板81の面内においてほぼ均一となるような磁界を形成し、一方アッシング時は磁力線が基板81の中心部付近に集められるような磁界を形成しているので、エッチング時には基板81の面内においてほぼ均一なプラズマが発生し、均一なエッチングを行うことができる一方、アッシング時にはプラズマ密度をエッチング時よりも大きくすることができるのでアッシング時間を短縮することができる。
【0046】更に本発明は、例えばP型やn型のシリコン膜を形成したウエハの表面に例えばポリシリコン膜を形成する場合に、先ずウエハ表面(シリコン膜の表面)に形成されている自然酸化膜をエッチングし、次いでポリシリコン膜を形成するプロセスにも適用できる。この場合先ず磁力線が中心部付近に集められるような磁場を形成して、シリコン膜の表面の自然酸化膜を例えばCF系のガスでエッチングし、次いでウエハ表面で均一なプラズマ密度が得られるようなミラー磁界を形成して処理を行う。この場合にも自然酸化膜除去という前処理を短時間で行うことができる。
【0047】以上において本発明方法が実施されるプラズマ処理装置では、例えば図7に示すような主電磁コイル9を用いるようにしてもよい。この主電磁コイル9は例えば3個に分割されており、各電磁コイル91〜93の電流が夫々変えられるようになっている。またこの例ではガスノズル94は第1の真空室21及び第2の真空室22の壁部を通って、第1の真空室21内にプラズマ生成用ガスを導入するように構成されている。その他の構成は図1に示すプラズマ処理装置と同様である。
【0048】上述のように磁場を変えることは、処理空間における磁場のプロファイルを変えることによって基板のプラズマ処理をコントロールすることである。そして処理時間における磁場のプロファイルの変更は、基板の面内における処理結果に対し、中央への集中と周辺への拡散という制御を可能とする。
【0049】また本発明方法は、SiO2 膜以外にSiOF膜やCF膜を形成する場合に適用することができる。また複数の種類の膜を積層する場合では、SiOF膜とSiO2 膜の組み合わせ等に適用することができる。さらにAl層72のエッチングではNH3 ガスを添加せずにプラズマを発生させ、このプラズマの熱によって後処理を行うようにしてもよく、この場合においても基板へのプラズマの入熱量が大きくなるように主電磁コイル26及び補助電磁コイル27の電流値を調整する。
【0050】さらにまた本発明はECRによりプラズマを生成することに限られず、例えばICP(Inductive Coupled Plasuma)などと呼ばれている、ドーム状の容器に巻かれたコイルから電界及び磁界を処理ガスに与える方法などによりプラズマを生成する場合にも適用できる。さらにヘリコン波プラズマなどと呼ばれている例えば13.56MHzのヘリコン波と磁気コイルにより印加された磁場との相互作用によりプラズマを生成する場合や、マグネトロンプラズマなどと呼ばれている2枚の平行なカソ−ドにほぼ平行をなすように磁界を印加することによってプラズマを生成する場合、平行平板などと呼ばれている互いに対向する電極間に高周波電力を印加してプラズマを生成する場合にも適用することができる。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、磁場のプロファイルを変更することで、2つの工程のそれぞれに適したプラズマ処理を行うことができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するためのプラズマ処理装置の一例を示す縦断側面図である。
【図2】主電磁コイルと補助電磁コイルの電流値と磁界形状の関係を説明するための断面図である。
【図3】入熱強度を説明するための説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図7】本発明を実施するためのプラズマ処理装置の他の例を示す縦断断面図である。
【図8】従来のプラズマ処理装置を説明するための断面図である。
【符号の説明】
W 半導体ウエハ
2 真空容器
21 第1の真空室
22 第2の真空室
24 高周波電源部
25 導波管
26,9 主電磁コイル
27 補助電磁コイル
28 排気管
31 ガスノズル
4 載置台
5 成膜ガス供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 高周波発生手段により真空容器内にマイクロ波を供給すると共に、磁界形成手段により前記真空容器内に磁場を形成し、前記真空容器内においてマイクロ波と磁界との電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを発生させ、このプラズマにより被処理基板を処理するプラズマ処理方法において、前記真空容器内に被処理基板を搬入し、プラズマを発生させて被処理基板を加熱する第1の工程と、次いで前記真空容器内において成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板上に薄膜を形成する第2の工程と、を含み、前記第1の工程は第2の工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、第1の工程と第2の工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】 高周波発生手段により真空容器内にマイクロ波を供給すると共に、磁界形成手段により前記真空容器内に磁場を形成し、前記真空容器内においてマイクロ波と磁界との電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを発生させ、このプラズマにより被処理基板を処理するプラズマ処理方法において、前記真空容器内において第1の成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板上に第1の膜を形成する第1の成膜工程と、次いで前記真空容器内において第2の成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより前記第1の膜上に第2の膜を形成する第2の成膜工程と、を含み、前記第1の成膜工程と第2の成膜工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】 高周波発生手段により真空容器内にマイクロ波を供給すると共に、磁界形成手段により前記真空容器内に磁場を形成し、前記真空容器内においてマイクロ波と磁界との電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを発生させ、このプラズマにより被処理基板を処理するプラズマ処理方法において、前記真空容器内においてエッチングガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板をエッチングするエッチング工程と、次いで前記真空容器内において後処理用のガスをプラズマ化し、このプラズマにより後処理を行う後処理工程と、を含み、前記後処理工程はエッチング工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、エッチング工程と後処理工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】 高周波発生手段により真空容器内にマイクロ波を供給すると共に、磁界形成手段により前記真空容器内に磁場を形成し、前記真空容器内においてマイクロ波と磁界との電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを発生させ、このプラズマにより被処理基板を処理するプラズマ処理方法において、前記真空容器内においてエッチングガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板をエッチングするエッチング工程と、次いで前記真空容器内において後処理用のガスをプラズマ化し、このプラズマによりエッチングガスの残渣を除去する後処理工程と、を含み、前記後処理工程はエッチング工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、エッチング工程と後処理工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】 高周波発生手段により真空容器内にマイクロ波を供給すると共に、磁界形成手段により前記真空容器内に磁場を形成し、前記真空容器内においてマイクロ波と磁界との電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを発生させ、このプラズマにより被処理基板を処理するプラズマ処理方法において、前記真空容器内においてエッチングガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板をエッチングするエッチング工程と、次いで前記真空容器内において酸素ガスをプラズマ化し、この酸素プラズマによりレジスト膜をアッシングする後処理工程と、を含み、前記後処理工程はエッチング工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、エッチング工程と後処理工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】 高周波発生手段により真空容器内にマイクロ波を供給すると共に、磁界形成手段により前記真空容器内に磁場を形成し、前記真空容器内においてマイクロ波と磁界との電子サイクロトロン共鳴によりプラズマを発生させ、このプラズマにより被処理基板を処理するプラズマ処理方法において、前記真空容器内においてエッチングガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板の表面の自然酸化膜をエッチングするエッチング工程と、次いで前記真空容器内において成膜ガスをプラズマ化し、このプラズマにより被処理基板の表面に薄膜を形成する成膜工程と、を含み、前記エッチング工程は成膜工程よりもプラズマ発生時の被処理基板上の磁束密度が大きくなるように、エッチング工程と成膜工程との間で磁界形成手段の電流を変えて磁場形状を変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−21871(P2000−21871A)
【公開日】平成12年1月21日(2000.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−201287
【出願日】平成10年6月30日(1998.6.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】