説明

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

【課題】窓部の損傷を低減させることができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は処理容器2と、前記処理容器の内部を減圧する減圧部9と、被処理物を載置する載置部4と、内部にガスを供給するガス供給部18と、電磁波を透過させる窓部3と、前記窓部の外方に配置され、電磁場を発生させる複数の導体部21と複数の容量部とを有した負荷部20と、前記負荷部20に電力を印加する電源6bと、を備えている。前記導体部21と前記容量部とは電気的に交互に接続され、被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記容量部同士の間に設けられた前記導体部21において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じるようにされ、前記負荷部20の第1の端子と、第2の端子と、の間における電位差の虚数成分の値が電位差の実数成分の値以下とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電力を印加することで発生させるプラズマに誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)がある。誘導結合型プラズマは、広い領域に高密度なプラズマを発生させることができるため各種のプラズマ処理に広く利用されている。
この様な誘導結合型プラズマを発生可能なプラズマ処理装置には、高周波電力が印加されるプラズマ励起用の負荷部(アンテナなどとも称される)が設けられている。また、負荷部は、処理容器の外部に設けられ、処理容器に設けられた誘電体などからなる窓部を介して電磁場を処理容器の内部に発生させることができるようになっている。
【0003】
ここで、高密度なプラズマを発生させるために、負荷部に印加する高周波電力を大きくすると絶縁破壊を起こしたり、生成されたイオンが窓部側に引き寄せられて窓部に衝突して窓部が損傷したりするおそれがある。
【0004】
そのため、負荷部における電位差が最大となる点の電位差の値が小さくなるように、負荷部に設けられた導体部(部分アンテナなどとも称される)のインダクタンスやコンデンサの容量を規定する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
特許文献1に記載された技術によれば、窓部の損傷を低減させることができる。
しかしながら、窓部の損傷をなくすことができないため、窓部の損傷をさらに低減させることができる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3586198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、窓部の損傷を低減させることができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るプラズマ処理装置は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、前記処理容器の内部に設けられ、被処理物を載置する載置部と、前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給部と、前記処理容器に設けられ、電磁波を透過させる窓部と、前記窓部の外方に配置され、電磁場を発生させる複数の導体部と複数の容量部とを有した負荷部と、前記負荷部に電力を印加する電源と、を備えている。そして、前記導体部と前記容量部とは電気的に交互に接続され、被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記容量部同士の間に設けられた前記導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じるようにされ、前記負荷部の第1の端子と、第2の端子と、の間における電位差の虚数成分の値が電位差の実数成分の値以下とされている。
【0008】
また、実施形態に係るプラズマ処理方法は、誘導結合型プラズマを用いたプラズマ処理方法であって、導体部と容量部とが電気的に交互に接続された負荷部に電力を印加する工程と、前記導体部のインダクタンス、前記容量部の容量、前記電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つの制御を行う工程と、を備えている。そして、被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記制御を行う工程において、前記負荷部の第1の端子と、第2の端子と、の間における電位差の虚数成分の値が電位差の実数成分の値以下となるように制御される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、窓部の損傷を低減させることができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
【図2】図1におけるA−A矢視図である。
【図3】比較例に係る負荷部を例示するための模式図である。(a)は比較例に係る負荷部の構成を例示するための模式図、(b)は比較例に係る負荷部における電位の分布を例示するための模式グラフ図である。
【図4】比較例に係る負荷部の一例を例示するための模式図である。(a)は比較例に係る負荷部の構成を例示するための模式図、(b)は比較例に係る負荷部における電位の分布を例示するための模式グラフ図である。
【図5】本実施の形態に係る負荷部の例を例示するための模式図である。
【図6】図5に例示をした負荷部の一例を例示するための模式図である。(a)は負荷部の構成を例示するための模式図、(b)は負荷部における電位の分布を例示するための模式グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、特に断らない限り、電位差と電流の振幅や位相はフェーザ表示を使って表し、フェーザ表示の基準を電流が実数成分のみの場合、すなわち位相が0の場合とする。
また、本明細書において、電位が0(ゼロ)は接地電位を意味し、特に断らない限り、電位差は接地電位に対するものとしている。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
図2は、図1におけるA−A矢視図である。
図1に示すように、プラズマ処理装置1には、処理容器2、窓部3、載置部4、電源6a、電源6b、減圧部9、ゲートバルブ17、ガス供給部18、負荷部20、制御部24、測定部25などが設けられている。
【0012】
処理容器2は、両端が閉塞された略円筒形状を呈し、大気圧よりも減圧された雰囲気が維持可能な気密構造となっている。
処理容器2の内部には、被処理物Wをプラズマ処理するための空間である処理空間15が設けられている。被処理物Wは、例えば、半導体ウェーハ、フォトマスク基板、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板などとすることができる。
【0013】
処理容器2の天井中央部分には、ガスGを導入するためのガス導入口12が設けられている。
窓部3は、誘電体材料(例えば、石英など)などから形成されており、後述する負荷部20にて発生した電磁場を透過させる。窓部3は、処理容器2の天井中央部分であって、ガス導入口12の周囲に設けられている。
載置部4は、処理容器2の内部であって、処理空間15の下方に設けられている。載置部4の上面は被処理物Wを載置するための載置面となっており、載置部4の内部に内蔵された図示しない静電チャックなどにより載置された被処理物Wを保持することができるようになっている。
絶縁リング5は、誘電体材料(例えば、石英など)などから形成され、載置部4の周囲を覆うようにして設けられている。
【0014】
電源6aは、整合器16aを介して載置部4に電気的に接続されている。電源6aは、いわゆるバイアス制御用の高周波電源である。すなわち、電源6aは、載置部4に載置、保持された被処理物Wに引き込むイオンのエネルギーを制御するために設けられている。 電源6aは、イオンを引き込むために適した比較的低い周波数(例えば、13.56MHz以下の周波数)を有する高周波電力を載置部4に印加するものとすることができる。 整合器16aには、電源6a側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路などが設けられている。
【0015】
電源6bは、整合器16bを介して負荷部20に電気的に接続されている。電源6bは、プラズマPを発生させるための高周波電源である。すなわち、電源6bは、処理空間15において高周波放電を生じさせてプラズマPを発生させるために設けられている。
電源6bは、100KHz〜100MHz程度の周波数を有する高周波電力を負荷部20に印加するものとすることができる。この場合、プラズマPの発生に適した比較的高い周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力を負荷部20に印加するものとすることができる。
また、電源6bは、出力する高周波電力の周波数を変化させることができるものとすることができる。
整合器16bには、電源6b側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路などが設けられている。
【0016】
減圧部9は、処理容器2の内部が所定の圧力となるように減圧する。減圧部9は、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。減圧部9は、処理容器2の底部に設けられた排気口7に圧力制御部8を介して接続されている。 圧力制御部8は、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器2の内圧が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部8は、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0017】
処理容器2の側壁には、被処理物Wを搬入搬出するための搬入搬出口19が設けられ、搬入搬出口19を気密に閉鎖できるようゲートバルブ17が設けられている。
ゲートバルブ17は、O(オー)リングのようなシール部材14を備える扉13を有し、図示しないゲート開閉機構により開閉される。扉13が閉まった時には、シール部材14が搬入搬出口19の壁面に押しつけられ、搬入搬出口19が気密に閉鎖されるようになっている。
【0018】
ガス供給部18は、ガス導入口12を介して処理容器2の内部にガスGを供給する。ガス供給部18は、例えば、ガスGを収納した高圧ボンベなどとすることができる。
また、処理容器2の内部に供給するガスGの種類を切り替える切換部21を設けるようにすることができる。
例えば、エッチング処理などのような被処理物Wのプラズマ処理に用いられるガスを供給するガス供給部18aと、クリーニング処理などに用いられるガスを供給するガス供給部18bとを備え、プラズマ処理の種類に応じて処理容器2の内部に供給するガスGの種類を切り替える切換部21を例示することができる。
また、ガス供給部18から処理容器2の内部にガスGを供給する際に流量や圧力などを制御する図示しないMFC(Mass Flow Controller)などを設けるようにすることができる。
負荷部20は、窓部3の外方に配置され、電磁場を発生させる複数の導体部と複数の容量部(コンデンサ)とを有している。また、導体部と容量部とが電気的に交互に接続されている。そのため、負荷部20は、処理容器2に設けられた誘電体などからなる窓部3を介して電磁場を処理容器2の内部に導入することができる。
なお、負荷部20の構成に関する詳細は後述する。
【0019】
また、負荷部20と窓部3との間にはファラデーシールド10が設けられている。負荷部20とファラデーシールド10との間には絶縁部11が設けられている。
【0020】
図2に示すように、ファラデーシールド10には、金属などの導体から形成された本体部10aと、複数のスリット10bとが設けられている。
ファラデーシールド10の本体部10aは、電気的に接地することができる。
なお、後述するクリーニング処理などの場合に本体部10aに電圧を印加するようにすることもできる。ファラデーシールド10の本体部10aに電圧を印加する場合には、図示しない電源を本体部10aに電気的に接続すればよい。
スリット10bは、放射状に配置することができる。この場合、放射状のスリット10bの中心は、環状に設けられた負荷部20の導体部の中心と一致するようにすることができる。この様にすれば、負荷部20による高周波電界方向に対して実質的に直角な方向に延在するスリット10bとすることができる。
【0021】
ファラデーシールド10にこの様なスリット10bを設けるものとすれば、負荷部20の導体部による高周波電界の方向と同一方向に電流経路が形成されることを抑制することができる。そのため、処理容器2の内部に高周波電界を発生させることができるとともに、負荷部20の導体部とプラズマPとの間の容量結合を抑制することができる。その結果、負荷部20から導入される電磁場のエネルギーをプラズマPの生成に効率よく利用することができる。
また、負荷部20の導体部とプラズマPとの間の容量結合を抑制することができるので、プラズマ処理中に窓部3などに負のバイアスがかかることを抑制することができる。そのため、窓部3にプラズマP中のイオンが衝突することを抑制することができるので、窓部3の損傷を抑制することができる。
絶縁部11は、誘電体からなるものとすることができる。絶縁部11は、例えば、樹脂材料、石英、セラミックス、空気(空間)などや、これらを組み合わせたものからなるものとすることができる。
絶縁部11に樹脂材料を用いる場合は、例えば電気絶縁性が高く且つ耐熱温度が100℃を超える樹脂材料(PTFE、PCTFE、PI、PEEKポリエーテルエーテルケトン、ULTEM)を用いることができる。
また、負荷部20から流れる電流の一部がファラデーシールド10に漏れることで処理容器2内のプラズマPの密度分布に影響を及ぼす場合がある。このような場合、絶縁部11の厚みや材料、構造を選択し絶縁部11の静電容量を小さくすることによって、負荷部20からファラデーシールド10への漏れ電流を抑制し、プラズマPの密度分布を均一にすることができる。この場合、例えば、絶縁部11は誘電率の低いポーラス材料とすることができる。または、漏れ電流が発生する場所に応じて絶縁部の厚みを決定し、静電容量の分布を調整することにより、プラズマPの密度分布を均一にすることができる。
【0022】
制御部24は、導体部のインダクタンス、容量部の容量、電力の周波数の少なくとも1つを制御する。
測定部25は、容量部同士の間に設けられた導体部の電位を測定する。測定部25としては、例えばネットワークアナライザを用いることができる。
そして、制御部24は、測定部25による測定結果に基づいて、導体部のインダクタンス、容量部の容量、電力の周波数の少なくとも1つの制御を実行する。
また、制御部24は、エッチング処理などのような被処理物Wのプラズマ処理を行う場合には、容量部同士の間に設けられた導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるように制御する。
この場合、正側と負側における電位の最大値の絶対値が同程度となるように制御することが好ましい。
例えば、導体部の容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるように制御すれば、正側と負側における電位の最大値の絶対値が同程度となるようにすることができる。
そのようにすれば、電位差の最大値が小さくなるようにすることができる。
また、クリーニング処理を行う場合には、容量部同士の間に設けられた導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じないように制御する。
なお、制御部24、測定部25に関する詳細は後述する。
【0023】
次に、負荷部20についてさらに例示する。
図3は、比較例に係る負荷部を例示するための模式図である。なお、図3(a)は比較例に係る負荷部の構成を例示するための模式図、図3(b)は比較例に係る負荷部における電位の分布を例示するための模式グラフ図である。
図3(a)に示すように、比較例に係る負荷部220には電磁場を発生させる3個の導体部222と、3個の容量部223とが設けられている。また、端子B1(第1の端子の一例に相当する)、端子B2(第2の端子の一例に相当する)には導体部222が電気的にそれぞれ接続され、導体部222と容量部223とが電気的に交互に接続されている。そして、3個の導体部222のインダクタンスは等しいものとされ、3個の容量部223の容量は等しいものとされている。
【0024】
この様な構成を有する負荷部220の端子B1と端子B2とに高周波電力を印加すると、負荷部220における電位の分布は図3(b)に示すもののようになる。
この場合、容量部223が設けられていない場合には、負荷部220における電位差の虚数成分の分布は図3(b)中の破線D1に示すもののようになる。
【0025】
これに対し、容量部223を設けるようにすれば、負荷部220における電位差の虚数成分の分布は図3(b)中の実線D2に示すもののようになる。また、負荷部220における電位差の実数成分の分布は図3(b)中の一点鎖線D3に示すようになる。すなわち、容量部223における電位の上昇と、導体部222における電位の下降とが交互に行われることになるため負荷部220の両端子間における電位差の虚数成分V2を低減させることができる。
しかしながら、負荷部220における電位が最大となる点の電位差の虚数成分V1が高ければ、生成されたイオンの窓部3への衝突が激しくなり窓部3の損傷が激しくなるおそれがある。
そのため、負荷部220における電位が最大となる点の電位差の虚数成分V1をさらに低下させるようにすることが望ましい。
【0026】
図4は、他の比較例に係る負荷部の一例を例示するための模式図である。なお、図4(a)は他の比較例に係る負荷部の構成を例示するための模式図、図4(b)は他の比較例に係る負荷部における電位の分布を例示するための模式グラフ図である。
図4(a)に示すように、負荷部20aには電磁場を発生させる3個の導体部22aと、計3個の容量部23a、23bとが設けられている。また、導体部22aと容量部23a、23bとが電気的に交互に接続されており、容量部23bは端子B2に電気的に接続されている。また、1個の導体部22aは端子B1に電気的に接続されている。そして、3個の導体部22aのインダクタンスは等しいものとされ、容量部23bの容量は他の2個の容量部23aの容量の2倍とされている。
【0027】
この様な構成を有する負荷部20aの端子B1と端子B2とに高周波電力を印加すると、負荷部20aにおける電位の分布は図4(b)に示すもののようになる。
この場合、容量部23a、23bが設けられていない場合には、図3(b)において例示をしたものと同様に負荷部20aにおける電位差の虚数成分の分布は図4(b)中の破線D1に示すもののようになる。
これに対し、容量部23a、23bを設けるようにすれば、負荷部20aにおける電位差の虚数成分の分布は図4(b)中の実線D4に示すもののようになる。また、負荷部20aにおける電位差の実数成分の分布は図4(b)中の一点鎖線D5に示すもののようになる。すなわち、容量部23a、23bにおける電位の上昇と、導体部22aにおける電位の下降とが交互に行われることになるため負荷部20aの両端子間における電位差の虚数成分V3を低減させることができる。この場合、容量部23bは端子B2に電気的に接続されており、容量部23bの容量は容量部23aの容量の2倍とされている。
そのため、容量部同士の間に設けられた導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるようにすることができる。また、図4(b)に示したものの場合には、導体部22aの容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるようになっているので、正側と負側における電位の最大値の絶対値が同程度となるようにすることができる。その結果、図3において例示をした負荷部220の場合に比べて、負荷部20aにおける電位が最大となる点の電位差を大幅に低下させることができるので、窓部3の損傷を抑制することができる。しかしながら、この場合、負荷部20aにおける電位が最大となる点の電位差の虚数成分と両端子間における電位差の虚数成分V3とがほぼ同じであり、電位差の虚数成分V3がまだ大きいため、その高い電位差により両端子間において異常放電が発生するおそれがある。
【0028】
図5は、本実施の形態に係る負荷部の例を例示するための模式図である。なお、図5は負荷部の構成を例示するための模式図である。
図5に示すように、負荷部20bには電磁場を発生させるN個の導体部と、(N−1)個の容量部とが設けられている。また、導体部と容量部とが電気的に交互に接続されており、1番目の導体部が端子B1に電気的に接続され、N番目の導体部が端子B2に電気的に接続されている。なお、Nは正の整数である。
【0029】
そして、各導体部のインダクタンスと、各容量部の容量と、高周波電力の周波数とが、負荷部20bにおける合計インピーダンスの虚数成分が0(ゼロ)となるような関係となっている。すなわち、動作周波数において負荷部20b全体が共振するような関係となっている。
またさらに、端子B1、B2に電気的に接続された導体部以外の(N−2)個の各導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるようになっている。すなわち、容量部同士の間に設けられた導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるようになっている。
また、負荷部20bの端子B1、B2の間における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるようになっている。
【0030】
動作周波数において負荷部20b全体が共振し、負荷部20bの端子B1、B2の間における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となり、また、端子B1、B2に電気的に接続された導体部以外の(N−2)個の各導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるようになっている。
なお、図5に例示をしたものの場合には、(N−2)個の各導体部の容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるようになっている。
この場合、(N−2)個の各導体部の容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるようにするためには、導体部のインダクタンスと、容量部の容量と、高周波電力の周波数とが以下の(1)式〜(3)式を満足するような関係となればよい。なお、角周波数をω、周波数をfとすれば、ω=2πfと表すことができる。
【0031】
例えば、端子B1に一番近い容量部の容量Cが以下の(1)式を満足するようにすればよい。
【数1】


ここで、Cは端子B1側から見て1番目に設けられた容量部の容量、Lは端子B1側から見て1番目に設けられた導体部のインダクタンス、Lは端子B1側から見て2番目に設けられた導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【0032】
そして、端子B1側から見てn番目の容量部の容量Cが以下の(2)式を満足するようにすればよい。なお、nは正の整数である。
【数2】


ここで、Cは端子B1側から見てn番目に設けられた容量部の容量、Lは端子B1側から見てn番目に設けられた導体部のインダクタンス、Ln+1は端子B1側から見て(n+1)番目に設けられた導体部のインダクタンス、fは電力の周波数である。
【0033】
またさらに、端子B1側から見て(N−1)番目の容量部の容量CN−1が以下の(3)式を満足するようにすればよい。すなわち、端子B2に一番近い容量部の容量CN−1が以下の(3)式を満足するようにすればよい。
【数3】


ここで、CN−1は端子B1側から見て(N−1)番目に設けられた容量部の容量、Lは端子B1側から見てN番目に設けられた導体部のインダクタンス、LN−1は端子B1側から見て(N−1)番目に設けられた導体部のインダクタンス、fは電力の周波数である。
【0034】
また、この様にすれば、1個の導体部と1個の容量部とで構成される部分的なLC直列回路がすべてω・L・C=1を満たすようにすることができるので、負荷部20b全体を共振させることができる。
【0035】
次に、図5に例示をした負荷部20bについてさらに例示をする。
図6は、図5に例示をした負荷部の一例を例示するための模式図である。なお、図6(a)は負荷部の構成を例示するための模式図、図6(b)は負荷部における電位の分布を例示するための模式グラフ図である。
図6(a)に示すように、負荷部20b1には電磁場を発生させる4個の導体部22b1〜22b4と、3個の容量部23b1〜23b3とが設けられている。また、導体部と容量部とが電気的に交互に接続されており、1番目の導体部22b1が端子B1に電気的に接続され、4番目の導体部22b4が端子B2に電気的に接続されている。
【0036】
そして、導体部22b2と導体部22b3とのインダクタンスが等しいものとされ、導体部22b1と導体部22b4とのインダクタンスが等しいものとされている。また、導体部22b2または導体部22b3のインダクタンスは、導体部22b1または導体部22b4のインダクタンスの2倍とされている。すなわち、容量部同士の間に設けられた導体部22b2、22b3のインダクタンスは、端子B1および端子B2にそれぞれ接続された導体部22b1、22b4のインダクタンスの2倍とされている。
【0037】
この様なインダクタンスの関係を(1)式〜(3)式に代入して容量部23b1〜23b3の容量を求めるといずれの容量もCa=ω−2/Lとなる。すなわち、3個の容量部23b1〜23b3の容量は等しいものとなる。
【0038】
この様な構成を有する負荷部20b1の端子B1と端子B2とに高周波電力を印加すると、負荷部20b1における電位の分布は図6(b)に示すもののようになる。
この場合、容量部23b1〜23b3が設けられていない場合には、図3(b)において例示をしたものと同様に負荷部20b1における電位差の虚数成分の分布は図6(b)中の破線D1に示すもののようになる。
これに対し、前述した関係を満足する導体部22b1〜22b4と、容量部23b1〜23b3とを設けるようにすれば、負荷部20b1における電位差の虚数成分の分布は図6(b)中の実線D6に示すもののようになる。また、負荷部20b1における電位の実数成分の分布は図6(b)中の一点鎖線D7に示すもののようになる。
すなわち、負荷部20b1における電位が最大となる点の電位差を大幅に低下させることができるので、窓部3の損傷を抑制することができる。
さらに、負荷部20b1の端子B1、B2における電位差の虚数成分と、導体部22b2、22b3の中心位置における電位差の虚数成分とが0(ゼロ)となるようにすることができる。
ここで、電位差の虚数成分は実数成分に比べて極めて大きく、窓部3がスパッタされることに関して支配的である。
そのため、両端子間における電位差の虚数成分を0(ゼロ)とすれば、負荷部20b1の両端子間における電位差V4は実数成分となるのでその値を極めて低くすることができる。その結果両端子間における異常放電を抑制することができ、窓部3の損傷を抑制することもできる。
この場合、両端子間における電位差の虚数成分は制御可能な限り0(ゼロ)となるようにすることが好ましいが、電位差の虚数成分の値が電位差の実数成分の値以下となればよい。
また、この様にすれば1個の導体部と1個の容量部とで構成される部分的なLC直列回路がすべてω・L・C=1を満たすようにすることができるので、負荷部20b1全体を共振させることもできる。
【0039】
ここで、発生したプラズマPの状態により、導体部のインダクタンスが変化して前述した関係が満たされなくなる場合がある。
その様な場合には、発生したプラズマPの状態に基づいて、導体部のインダクタンス、容量部の容量、高周波電力の周波数の少なくとも1つを制御して、前述した関係が満たされるようにすればよい。
例えば、プラズマPの電子密度に基づいて導体部のインダクタンス、容量部の容量、高周波電力の周波数の少なくとも1つを制御するようにすることができる。
この場合、導体部22b2や導体部22b3などの電位を測定部25により測定し、測定部25による測定結果に基づいて、制御部24によりこの電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるように導体部のインダクタンス、容量部の容量、高周波電力の周波数の少なくとも1つを制御するようにすることができる。なお、測定部25により導体部22b2や導体部22b3などの中間位置における電位を測定するようにすることができる。
なお、測定部25による測定結果に基づいて、作業者などが導体部のインダクタンス、容量部の容量、高周波電力の周波数の少なくとも1つを調整するようにすることもできる。
【0040】
導体部においては、例えば、インダクタンスの異なる導体部に取り替えたり、導体部に接続点を設けて導体部と容量部との接続位置を変化させたりすることで導体部のインダクタンスを制御するようにすることができる。
また、容量部においては、例えば、容量の異なる容量部に取り替えたり、可変容量のコンデンサを容量部に用いて容量を変化させたりすることで容量部の容量を制御するようにすることができる。
なお、導体部のインダクタンスや容量部の容量を制御部24により制御する場合には、ステップモータなどの制御モータなどにより可変範囲内の各制御位置を選択することで制御を行うようにすることができる。
また、高周波電力の周波数においては、例えば、可変周波数の高周波電源を用いて高周波電力の周波数を制御するようにすることができる。
【0041】
次に、プラズマ処理装置1の作用について例示する。
この場合、一例として、被処理物Wをエッチング処理する場合について例示する。
ゲートバルブ17の扉13を、図示しないゲート開閉機構により開く。
図示しない搬送部により、搬入搬出口19から被処理物Wを処理容器2内に搬入する。搬入された被処理物Wは載置部4上に載置され、載置部4に内蔵された図示しない静電チャックなどにより保持される。
図示しない搬送部を処理容器2の外に退避させる。
図示しないゲート開閉機構によりゲートバルブ17の扉13を閉じる。
減圧部9により処理容器2内が所定の圧力となるように減圧される。この際、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器2内が所定の圧力となるように圧力制御部8により制御される。
【0042】
次に、ガス供給部18aから切換部21、ガス導入口12を介して処理空間15内にエッチング処理に用いられるガスを供給する。この際、図示しないMFC(Mass Flow Controller)などにより供給するガスの流量や圧力などが制御される。エッチング処理に用いられるガスとしては、例えば、CF、CHF、NFなどやこれらの混合ガスなどを例示することができる。
【0043】
次に、電源6bにより所定の周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力が負荷部20に印加される。また、電源6aにより所定の周波数(例えば、13.56MHz以下の周波数)を有する高周波電力が載置部4に印加される。
【0044】
すると、負荷部20の導体部が誘導結合型電極を構成するので、負荷部20の導体部から窓部3を介して電磁場が処理容器2の内部に導入される。そのため、処理容器2の内部に導入された電磁場により処理空間15にプラズマPが発生する。発生したプラズマPによりエッチング処理に用いられるガスが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などの反応生成物が生成される。この生成された反応生成物が、処理空間15内を下降して被処理物Wの表面に到達し、エッチング処理が施される。
【0045】
この場合、負荷部を図4において例示をした構成とすれば、負荷部における電位が最大となる点の電位差を大幅に低下させることができるので、窓部3の損傷を抑制することができる。
負荷部を図5、図6において例示をした構成とすれば、負荷部における電位が最大となる点の電位差を大幅に低下させることができるので、窓部3の損傷を抑制することができる。さらに、負荷部の両端子間における電位差を極めて低くすることができるので両端子間における異常放電を抑制することができるとともに窓部3の損傷を抑制することができる。
【0046】
ここで、発生したプラズマPの状態により、導体部のインダクタンスが変化して図4〜図6において例示をした関係が満たされなくなる場合がある。
その様な場合には、測定部25による測定結果に基づいて、制御部24により導体部のインダクタンス、容量部の容量、高周波電力の周波数の少なくとも1つを制御して、前述した関係が満たされるようにする。
【0047】
また、ファラデーシールド10の作用により、負荷部20の導体部とプラズマPとの間の容量結合が抑制される。そのため、エッチング処理中に窓部3などに負のバイアスがかかることを抑制することができるので、窓部3にプラズマP中のイオンが衝突することを抑制することができる。その結果、窓部3の損傷を抑制することができる。また、負荷部20から導入される電磁場のエネルギーをプラズマPの生成に効率よく利用することもできる。
【0048】
また、電源6aにより高周波電力が載置部4に印加されることにより、被処理物Wにバイアスが印加される。そのため、被処理物Wの表面に生成されたイオンを引き込むことができるので、効率の良い異方性エッチング処理を行うことができる。なお、電源6aによる高周波電力の印加を行わずにエッチング処理を行うこともできる。
【0049】
残余のガス、反応生成物、副生成物などの多くは、排気口7から処理容器2外に排出される。
【0050】
被処理物Wのエッチング処理が終了すると、処理容器2内の圧力とゲートバルブ17の扉13の外側の圧力とがほぼ等しくなるように、ガス導入口12からパージガスなどが導入される。
そして、ゲートバルブ17の扉13を図示しないゲート開閉機構により開く。
図示しない搬送部により、エッチング処理が施された被処理物Wを搬出する。
以上のようにして、被処理物Wのエッチング処理が終了する。
【0051】
次に、クリーニング処理を行う場合について例示をする。
ここで、生成されたイオンを窓部3などに衝突させることができれば、副生成物が付着することで形成されたデポ物を除去することができる。
そのため、クリーニング処理を行う場合には、負荷部における電位差が最大となる点の電位差の値を所定の範囲内で大きくしたり、負荷部の両端子間における電位差を所定の範囲内で大きくしたりするようにする。
【0052】
この場合、測定部25による測定結果に基づいて、制御部24により導体部のインダクタンス、容量部の容量、高周波電力の周波数の少なくとも1つを制御することで、負荷部における電位差が最大となる点の電位差の値を所定の範囲内で大きくする。
【0053】
クリーニング処理を行う場合には、まず、図示しないゲート開閉機構によりゲートバルブ17の扉13を閉じる。
次に、減圧部9により処理容器2内が所定の圧力となるように減圧される。この際、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器2内が所定の圧力となるように圧力制御部8により制御される。
【0054】
次に、切換部21により供給されるガスの種類が切り換えられる。そして、ガス供給部18bから切換部21、ガス導入口12を介して処理空間15内にクリーニング処理に用いられるガスを供給する。この際、図示しないMFC(Mass Flow Controller)などにより供給するガスの流量や圧力などが制御される。クリーニング処理に用いられるガスとしては、例えば、O、SF、NF、ClF、Cl、HCl、Arなどを例示することができる。
【0055】
次に、電源6bにより所定の周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力が負荷部20に印加される。
すると、負荷部20の導体部が誘導結合型電極を構成するので、負荷部20の導体部から窓部3を介して高周波電力が処理容器2の内部に導入される。そのため、処理容器2の内部に導入された高周波電力により処理空間15にプラズマPが発生する。発生したプラズマPによりクリーニング処理に用いられるガスが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などの反応生成物が生成される。この生成された反応生成物により処理容器2内に付着しているデポ物が除去される。
【0056】
ここで、測定部25による測定結果に基づいて、制御部24により導体部のインダクタンス、容量部の容量、高周波電力の周波数の少なくとも1つを制御することで、負荷部における電位差が最大となる点の電位差の値を所定の範囲内で大きくしたり、負荷部の両端子間における電位差を所定の範囲内で大きくしたりする。
すなわち、負荷部における電位差を制御することで前述した関係が満たされないようにして、窓部3などに衝突するイオンを増やすようにする。
なお、窓部3などに衝突するイオンを増加させすぎると窓部3などが損傷するおそれがある。そのため、デポ物の付着量などに基づいて予め実験などにより求められた制御範囲内において制御を行うようにする。
【0057】
またさらに、ファラデーシールド10の本体部10aに電圧を印加することで、クリーニング処理中に窓部3などに負のバイアスを印加するようにすることもできる。そのようにすれば、窓部3などにより多くのイオンを衝突させることができるので、クリーニング処理の効率を向上させることができる。
【0058】
残余のガス、反応生成物、除去されたデポ物などは、排気口7から処理容器2外に排出される。
なお、載置部4の載置面を保護するためにダミーの被処理物Wを載置した状態で前述したクリーニング処理を行うようにすることもできる。
以上のようにして、クリーニング処理が終了する。
【0059】
本実施の形態によれば、窓部3の損傷を低減させることができる。また、プラズマ処理の種類によって負荷部における電位差を制御することができる。そのため、例えば、エッチング処理などのように被処理物Wをプラズマ処理する場合には窓部3の損傷や異常放電の発生を抑制することができ、クリーニング処理などの場合には付着しているデポ物を効率よく除去することができる。
【0060】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係るプラズマ処理方法について例示をする。
本実施の形態に係るプラズマ処理方法は、誘導結合型プラズマを用いたプラズマ処理方法であって、導体部と容量部とが電気的に交互に接続された負荷部に電力を印加する工程と、導体部のインダクタンス、容量部の容量、電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つの制御を行う工程と、を備えている。そして、前記制御を行う工程において、導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるように制御される。例えば、導体部の容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるように制御される。
【0061】
この場合、前記制御を行う工程において、負荷部の端子B1と端子B2との間における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるように制御されるようにすることができる。
また、導体部はN個設けられ、容量部は(N−1)個設けられ、端子B1および端子B2にはそれぞれ導体部が接続され、前記制御を行う工程において、導体部のインダクタンスと、容量部の容量と、電力の周波数との関係が前述した以下の(1)式乃至(3)式を満たすように制御されるようにすることができる。
【0062】
また、端子B1および端子B2にはそれぞれ導体部が接続され、前記制御を行う工程において、容量部同士の間に設けられた導体部のインダクタンスは、端子B1および端子B2にそれぞれ接続された導体部のインダクタンスの2倍となり、容量部の容量が等しいものとなるように制御されるようにすることができる。
また、容量部同士の間に設けられた導体部の電位を測定する工程を備え、前記制御を行う工程において、前記測定を行う工程における測定結果に基づいて制御を実行するようにすることができる。この場合、前記測定を行う工程において、導体部の容量部同士の間の中間位置における電位を測定するようにすることができる。
【0063】
また、前記制御を行う工程において、被処理物のプラズマ処理を行う場合には、導体部おいて電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるように制御し、クリーニング処理を行う場合には、導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じないように制御するようにすることができる。
この場合、被処理物のプラズマ処理を行う場合には、導体部の容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるように制御し、クリーニング処理を行う場合には、導体部の容量部同士の間の中間位置における電位差の虚数成分が0(ゼロ)とならないように制御するようにすることができる。
【0064】
また、負荷部と電磁波を透過させる窓部との間に設けられたファラデーシールドの電位を制御する工程を備え、被処理物のプラズマ処理を行う場合には、ファラデーシールドの電位を接地電位とし、クリーニング処理を行う場合には、ファラデーシールドにバイアス電源を接続し、バイアス電圧を印加するようにしたものとすることができる。
なお、各工程における内容や作用、効果などは、前述したプラズマ処理装置1において例示をしたものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0065】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、プラズマ処理装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、プラズマ処理装置1の天井部分に平面的に配置された負荷部20を例示したが、プラズマ処理装置に螺旋状に巻きつけられた負荷部とすることもできる。
また、プラズマ処理の一例として、エッチング処理、クリーニング処理を例示したがこれらに限定されるわけではない。誘導結合型プラズマを用いて行うプラズマ処理に広く適用させることができる。
また同様に、エッチング処理を行うプラズマエッチング処理装置に限定されるわけではない。誘導結合型プラズマを発生可能なプラズマ処理装置に広く適用させることができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
1 プラズマ処理装置、2 処理容器、3 窓部、4 載置部、6a 電源、6b 電源、9 減圧部、10 ファラデーシールド、17 ゲートバルブ、18 ガス供給部、20 負荷部、20a 負荷部、20b1 負荷部、21 切換部、22a 導体部、22b1〜22b4 導体部、23a 容量部、23b 容量部、23b1〜23b3 容量部、24 制御部、25 測定部、G ガス、P プラズマ、W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な処理容器と、
前記処理容器の内部を所定の圧力まで減圧する減圧部と、
前記処理容器の内部に設けられ、被処理物を載置する載置部と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器に設けられ、電磁波を透過させる窓部と、
前記窓部の外方に配置され、電磁場を発生させる複数の導体部と複数の容量部とを有した負荷部と、
前記負荷部に電力を印加する電源と、
を備え、
前記導体部と前記容量部とは電気的に交互に接続され、
被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記容量部同士の間に設けられた前記導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じるようにされ、
前記負荷部の第1の端子と、第2の端子と、の間における電位差の虚数成分の値が電位差の実数成分の値以下とされたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記負荷部の第1の端子と、第2の端子と、の間における電位差の虚数成分が0(ゼロ)とされたことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記負荷部は、N個の前記導体部と、(N−1)個の前記容量部を有し、
前記第1の端子および前記第2の端子にはそれぞれ前記導体部が接続され、
前記導体部のインダクタンスと、前記容量部の容量と、前記電力の周波数との関係が以下の(4)式乃至(6)式を満たしたことを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【数4】


ここで、Cは前記第1の端子側から見て1番目に設けられた前記容量部の容量、Lは前記第1の端子側から見て1番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、Lは前記第1の端子側から見て2番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【数5】


ここで、Cは前記第1の端子側から見てn番目に設けられた前記容量部の容量、Lは前記第1の端子側から見てn番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、Ln+1は前記第1の端子側から見て(n+1)番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【数6】


ここで、CN−1は前記第1の端子側から見て(N−1)番目に設けられた前記容量部の容量、Lは前記第1の端子側から見てN番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、LN−1は前記第1の端子側から見て(N−1)番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【請求項4】
前記第1の端子および前記第2の端子にはそれぞれ前記導体部が接続され、
前記容量部同士の間に設けられた前記導体部のインダクタンスは、前記第1の端子および前記第2の端子にそれぞれ接続された前記導体部のインダクタンスの2倍とされ、
前記容量部の容量が等しいものとされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記導体部のインダクタンス、前記容量部の容量、前記電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つを制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記容量部同士の間に設けられた前記導体部の電位を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記測定部による測定結果に基づいて制御を実行することを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生ずるように制御し、
クリーニング処理を行う場合には、前記導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じないように制御することを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記負荷部と前記窓部との間に設けられたファラデーシールドと、
前記負荷部と前記ファラデーシールドとの間に設けられた絶縁部と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記絶縁部は、フッ素系樹脂、石英、セラミックス、空気からなる群より選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項8記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
誘導結合型プラズマを用いたプラズマ処理方法であって、
導体部と容量部とが電気的に交互に接続された負荷部に電力を印加する工程と、
前記導体部のインダクタンス、前記容量部の容量、前記電力の周波数からなる群より選ばれた少なくとも1つの制御を行う工程と、
を備え、
被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記制御を行う工程において、前記負荷部の第1の端子と、第2の端子と、の間における電位差の虚数成分の値が電位差の実数成分の値以下となるように制御されることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記制御を行う工程において、前記負荷部の第1の端子と、第2の端子と、の間における電位差の虚数成分が0(ゼロ)となるように制御されることを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記負荷部は、N個の前記導体部と、(N−1)個の前記容量部を有し、
前記第1の端子および前記第2の端子にはそれぞれ前記導体部が接続され、
前記制御を行う工程において、前記導体部のインダクタンスと、前記容量部の容量と、前記電力の周波数との関係が以下の(7)式乃至(9)式を満たすように制御されることを特徴とする請求項10または11に記載のプラズマ処理方法。
【数7】


ここで、Cは前記第1の端子側から見て1番目に設けられた前記容量部の容量、Lは前記第1の端子側から見て1番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、Lは前記第1の端子側から見て2番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【数8】


ここで、Cは前記第1の端子側から見てn番目に設けられた前記容量部の容量、Lは前記第1の端子側から見てn番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、Ln+1は前記第1の端子側から見て(n+1)番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【数9】


ここで、CN−1は前記第1の端子側から見て(N−1)番目に設けられた前記容量部の容量、Lは前記第1の端子側から見てN番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、LN−1は前記第1の端子側から見て(N−1)番目に設けられた前記導体部のインダクタンス、fは前記電力の周波数である。
【請求項13】
前記第1の端子および前記第2の端子にはそれぞれ前記導体部が接続され、
前記制御を行う工程において、前記容量部同士の間に設けられた前記導体部のインダクタンスは、前記第1の端子および前記第2の端子にそれぞれ接続された前記導体部のインダクタンスの2倍となり、
前記容量部の容量が等しいものとなるように制御されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【請求項14】
前記容量部同士の間に設けられた前記導体部の電位を測定する工程を備え、
前記制御を行う工程において、前記測定を行う工程における測定結果に基づいて制御を実行することを特徴とする請求項10〜13のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【請求項15】
クリーニング処理を行う場合には、前記制御を行う工程において、前記導体部において電位差の虚数成分が0(ゼロ)となる位置が生じないように制御することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。
【請求項16】
前記負荷部と電磁波を透過させる窓部との間に設けられたファラデーシールドの電位を制御する工程を備え、
前記被処理物のプラズマ処理を行う場合には、前記ファラデーシールドの電位を接地電位とし、
クリーニング処理を行う場合には、前記ファラデーシールドにバイアス電圧を印加することを特徴とする請求項10〜15のいずれか1つに記載のプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185975(P2012−185975A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47543(P2011−47543)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】