説明

プリプレグおよびこれを用いた積層板とプリント配線板

【課題】ハロゲンフリーでかつ耐熱性、難燃性、打ち抜き加工性、絶縁性に優れるプリプレグおよびこれを用いた積層板とプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を含む組成物により予め含浸処理された紙基材に、フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸、加熱乾燥して得られるプリプレグおよびこれを用いた積層板とプリント配線板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグおよびこれを用いた積層板とプリント配線板に関し、特に、耐熱性、難燃性、打ち抜き加工性、絶縁性に優れるフェノール樹脂含浸プリプレグおよびこれを用いたフェノール樹脂積層板とプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、多機能化に伴い、プリント配線板の高密度化、小型化が進む中、紙基材フェノール樹脂銅張積層板は、打抜加工性、ドリル加工性に優れ、かつ安価であることから民生用電子機器のプリント配線板用基板として広く用いられている。
【0003】
紙基材フェノール樹脂積層板は、フェノール樹脂ワニスを紙基材に含浸乾燥して得られるプリプレグを所定枚数重ね合わせて加熱加圧して製造されるが、通常は、前記プリプレグを所定枚数重ね合わせた後、その片面または両面に銅箔を配し、加熱加圧して銅張積層板とする。また、当該銅箔積層板の銅箔をエッチングすることにより回路を形成して、プリント配線板とすることができる。
【0004】
しかし、紙基材フェノール樹脂銅張積層板は、ガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板と比較して耐熱性が低いため、リフロー工程時に膨れ等の不具合が発生しないように、その温度を低く設定する必要がある。
【0005】
一方、近年の環境保護意識の高まりから、難燃剤にハロゲン系難燃剤を使用しないハロゲンフリー材料や有害物質である鉛を用いない鉛フリーはんだの採用が増加しているが、ハロゲンフリー材料は、ハロゲン系難燃剤の代わりにリン系、窒素系、無機系難燃剤を多量に、かつバランス良く使用する必要があるため、これら難燃剤の耐熱性に大きく影響される樹脂基材の耐熱性を向上させることは非常に困難である。さらに、鉛フリーはんだは、従来の鉛含含有はんだ(Sn−Pb)と比較して溶融温度が高いために、リフロー工程時の設定温度を高くする必要があり、基材に対して従来以上の耐熱性が要求される。
【0006】
そこで、ハロゲンフリーで難燃性および耐熱性にも優れる紙基材フェノール樹脂銅張積層板の開発が強く要求されている。さらに、当該積層板を用いた両面プリント配線板においては、両面回路間の電気接続に銀スルーホールが多用されていることから、当該スルーホール間の絶縁信頼性を確保することも重要である。
【0007】
フェノール樹脂積層板の難燃性および耐湿性を向上させる方法としては、繊維基材に水溶性メラミン樹脂または水溶性フェノール樹脂を含浸させた後、乾性油変性フェノール樹脂を含浸させる方法が開示されている(特許文献1参照)。また、フェノール樹脂積層板の耐トラッキング性を向上させる方法として、水酸化アルミニウム等を添加する方法等が用いられてきた(例えば、特許文献2参照)。さらに、フェノール樹脂積層板の打抜加工性を向上させる方法として、リン酸エステル等の外部可塑剤の添加も検討されてきた(例えば、特許文献3参照)。しかし、これらの方法は、フェノール樹脂積層板に要求される個々の特性値を満たすことはできるものの、すべての特性を総合的に満たすことはできない。
【0008】
また、特許文献4には、フェノール樹脂にエポキシ樹脂を配合することで樹脂の硬化性および耐熱性を向上させうることが開示されているが、この場合には、樹脂の難燃性が低下し、また、使用するエポキシ樹脂によっては、ワニスおよびプリプレグの保存安定性が著しく低下してしまう。
【特許文献1】特公昭38−13781号公報
【特許文献2】特公昭55−49640号公報
【特許文献3】特公昭57−19127号公報
【特許文献4】特開2004−356277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記を鑑みて、本発明は、ハロゲンフリーでかつ耐熱性、難燃性、打ち抜き加工性、絶縁性に優れるプリプレグおよびこれを用いた積層板とプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(14)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0011】
(1)アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を含む組成物により予め含浸処理された紙基材に、フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸、加熱乾燥して得られるプリプレグ。
【0012】
(2)前記アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物が、少なくとも1つのエポキシ基を有する、上記(1)に記載のプリプレグ。
【0013】
(3)前記アルコキシシラン誘導体が、下記一般式
【化1】

(R〜Rは、各々独立に水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは2価の有機基を示す。)
で示される構造を有する、上記(1)または(2)に記載のプリプレグ。
【0014】
(4)前記アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を含む組成物が、水溶性フェノール樹脂をさらに含み、かつ前記アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を0.5〜10重量%含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプリプレグ。
【0015】
(5)前記熱硬化性樹脂組成物が、さらにエポキシ樹脂を、前記フェノール樹脂100重量部に対して2〜30重量部含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプリプレグ。
【0016】
(6)前記フェノール樹脂が植物油変性フェノール樹脂である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプリプレグ。
【0017】
(7)前記熱硬化性樹脂組成物がハロゲンフリーの窒素系難燃剤および/またはリン系難燃剤をさらに含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のプリプレグ。
【0018】
(8)前記フェノール樹脂が植物油変性レゾール型フェノール樹脂であり、前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂およびリン酸エステルをさらに含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプリプレグ。
【0019】
(9)前記フェノール樹脂が植物油変性レゾール型フェノール樹脂であり、前記熱硬化性樹脂組成物が、該植物油変性レゾール型フェノール樹脂100重量部に対してエポキシ樹脂5〜40重量部、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂70〜150重量部およびリン酸エステル30〜80重量部をさらに含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプリプレグ。
【0020】
(10)前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、400〜1000g/eqである、上記(8)または(9)に記載のプリプレグ。
【0021】
(11)前記エポキシ樹脂が、ハロゲンを含まないビスフェノールA型エポキシ樹脂である、上記(5)〜(10)のいずれかに記載のプリプレグ。
【0022】
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のプリプレグを所定枚数重ね、加熱加圧してなる、積層板。
【0023】
(13)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のプリプレグを所定枚数重ね、その片面または両面に金属箔を配し、加熱加圧してなる、金属張積層板。
【0024】
(14)上記(13)に記載の金属張積層板における金属層をエッチングしてなる、プリント配線板。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ハロゲンフリーでかつ耐熱性、難燃性、打ち抜き加工性、絶縁性に優れ、温度設定が250℃程度のリフロー工程時においてもふくれ等の不具合が発生しないプリプレグ、およびこれを用いた積層板とプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のプリプレグは、アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を含む組成物(以下、アルコキシシラン誘導体含有組成物と略すことがある)により予め含浸処理された紙基材に、フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸、加熱乾燥して製造されるものであることをその特徴とする。
【0027】
上記アルコキシシラン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、4官能性シラン化合物、3官能性シラン化合物、2官能性シラン化合物等の化合物が挙げられ、これらアルコキシシラン誘導体は、単独あるいは数種組合せて用いることができる(以下、シラン化合物における官能性とは、縮合反応性の官能基を有することを意味する)。
【0028】
テトラアルコキシシラン等の4官能性シラン化合物としては、例えば、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OCなどが挙げられる。
【0029】
トリアルコキシシランなどの3官能性シラン化合物としては、例えば、HCSi(OCH、HSi(OCH、HSi(OCH、HSi(OCH、HCSi(OC、HSi(OC、HSi(OC、HSi(OC、HCSi(OC、HSi(OC、HSi(OC、HSi(OC、HCSi(OC、HSi(OC、HSi(OC、HSi(OC、グリシジル基(CHOCH−)を有する(CHOCH)CHSi(OCH、(CHOCH)CHSi(OC、(CHOCH)CHSi(OC、更にCH=CHSi(OCH、HSCSi(OCH、HNCSi(OCH、CH=CHSi(OC、HSCSi(OC、HNCSi(OC、CH=CHSi(OC、HSCSi(OC、HNCSi(OC、PhSi(OCH、PhSi(OC、PhSi(OC、PhSi(OC(ただし、Phはフェニル基を示す。以下同様)などが挙げられる。
【0030】
ジアルコキシシランなどの2官能性シラン化合物としては、例えば、((CHOCH)CHSi(OCH、(CH=CH)Si(OCH、(HSCSi(OCH、(HNCSi(OCH、((CHOCH)CHSi(OC、(CH=CH)Si(OC、(HSCSi(OC、(HNCSi(OC、((CHOCH)CHSi(OC、(CH=CH)Si(OC、(HSCSi(OC、(HNCSi(OC、(HC)Si(OCH、(HSi(OCH、(HSi(OCH、(HSi(OCH、(HC)Si(OC、(HSi(OC、(HSi(OC、(HSi(OC、(HC)Si(OC、(HSi(OC、(HSi(OC、(HSi(OC、(HC)Si(OC、(HSi(OC、(HSi(OC、(HSi(OC、PhSi(OCH、PhSi(OCなどが挙げられる。
【0031】
上記アルコキシシラン誘導体の縮合物は、上記アルコキシシラン誘導体を縮合させることで得ることができ、単独あるいは数種のアルコキシシラン誘導体の縮合物を組合せて用いてもよく、アルコキシシラン誘導体と併用してもよい。縮合の際には、触媒として塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、フッ酸等の無機酸、マレイン酸、スルホン酸、シュウ酸、ギ酸等の有機酸、あるいはアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの塩基触媒を、縮合させるアルコキシシラン誘導体の種類によって適宜選択し、用いることが好ましい。これら触媒の配合量は、特に限定されないが、アルコキシシラン誘導体1モルに対して0.001〜0.5モルの範囲で用いることが好ましい。また、縮合は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メタノール、エタノールなどの溶媒中で行うことが好ましい。また、この縮合に際しては、水が適量必要であり、アルコキシシラン誘導体1モルに対して、水0.1〜5モルであることが好ましく、0.3〜4モルであることがより好ましい。水が5モルを超えると縮合の進行が早すぎてゲル化する可能性があり、0.1モル未満では十分に縮合が進行しない可能性があるためである。
【0032】
上記アルコキシシラン誘導体またはアルコキシシラン誘導体の縮合物は、少なくとも1つのエポキシ基(グリシジル基)を有することが好ましく、当該アルコキシシラン誘導体は、下記一般式
【化2】

(R〜Rは、各々独立に水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは2価の有機基を示す。)
で示される構造を有することがより好ましい。すなわち、エポキシ基(グリシジル基)等の反応基を持つアルコキシシラン誘導体は、上記熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂と反応し、紙基材と熱硬化性樹脂との界面の接着性を向上させることができる。中でも、上記一般式で示される構造を有するトリメトキシ(グリシジルメチル)シラン(CHOCH)CHSi(OCHは、反応性が高く、紙基材に含浸する際の親和性が良く、特に好ましい。
【0033】
上記アルコキシシラン誘導体含有組成物は、アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を0.5〜10重量%含むことが好ましく、5〜10重量%含むことがより好ましい。当該組成物中、アルコキシシラン誘導体またはアルコキシシラン誘導体の縮合物が0.5重量%未満では、耐熱性向上の効果が少なく、10重量%を超えると、吸湿処理後の絶縁抵抗劣化が大きく、スルーホール信頼性が低下する傾向にある。
【0034】
また、アルコキシシラン誘導体含有組成物中の水が少なすぎるとアルコキシシラン誘導体の縮合が十分に進まず、耐熱性向上の効果が低減する恐れがあり、多すぎると保存安定性が悪くなる傾向がある。そこで、当該組成物中には水とアルコールをバランスよく配合する必要があり、それらの比率は、重量比で1〜7:1〜7であることが好ましく、4〜6:4〜6であることがより好ましい。ここで用いるアルコールの種類については、特に限定はしないが、沸点が低いメタノールを用いると、加熱乾燥が容易になるため、好ましい。
【0035】
また、アルコキシシラン誘導体含有組成物は、水溶性フェノール樹脂を含み、かつアルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を0.5〜10重量%含むことがより好ましい。当該組成物に水溶性フェノール樹脂を配合することで、当該組成物により含浸処理した紙基材とフェノール樹脂含有熱硬化性樹脂組成物の界面における接着性を向上させることができる。さらに、アルコキシシラン誘導体含有組成物は、アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を0.5〜10重量%、水溶性フェノール樹脂(固形分)を1〜50重量%含むことが特に好ましい。ここで用いる水溶性フェノール樹脂の種類は、公知のものでよく、特に限定されないが、例えば、フェノールとホルマリンを、トリエチルアミン水溶液中、50〜80℃で2〜10時間反応させて得ることができる。
【0036】
また、本発明で用いる紙基材は、上記アルコキシシラン誘導体含有組成物により含浸、加熱乾燥処理したものであり、これにより、アルコキシシラン誘導体の縮合が進み、紙基材の疎水性を向上させることができる。上記組成物により含浸処理する前の紙基材としては、特に限定されないが、打抜加工性の点から、例えば、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙、ガラス繊維と紙繊維の混抄紙等が挙げられる。
【0037】
上記熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂としては、特に限定されないが、植物油変性フェノール樹脂であることが好ましく、植物油変性レゾール型フェノール樹脂であることがより好ましい。植物油変性フェノール樹脂は、例えば、フェノール類と植物油とをパラトルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下に反応させ、ついで、アルデヒド類をアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン系触媒などの塩基触媒下で反応させることにより得ることができる。上記フェノール類としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソクレゾール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールA等を挙げることができ、上記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等を挙げることができる。また、上記植物油としては、特に限定されないが、例えば、桐油、アマニ油、脱水ヒマシ油、オイチシカ油等の乾性油であることが好ましい。また、植物油による変性率は、打抜加工性や難燃性の観点から、5〜35重量%とすることが好ましい。
【0038】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、フェノール樹脂の他に、エポキシ樹脂を含有することが好ましく、該フェノール樹脂100重量部に対して、エポキシ樹脂を2〜30重量部含有することがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量が30重量部を超えると、未反応フェノール樹脂との反応が進み、保存安定性が悪くなる傾向にある。一方、エポキシ樹脂の含有量が2重量部未満では、エポキシ樹脂添加による耐熱性向上の効果が低くなる傾向にある。なお、上記熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂として、上記植物油変性レゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、打抜加工性、難燃性、耐熱性の観点から、該フェノール樹脂100重量部に対して、エポキシ樹脂を5〜40重量部配合することが好ましい。
【0039】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、液状で、ハロゲンを含まないビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、170〜700g/epであることが好ましい。なお、熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂として、植物油変性レゾール型フェノール樹脂を用いる場合におけるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、400〜1000g/epであることが特に好ましい。エポキシ当量が170g/eq未満であると、保管中にフェノール樹脂との反応が進み、ワニスやプリプレグ特性が劣化する傾向にあり、1000g/eqを超えると、フェノール樹脂との反応性が低下し、十分な耐熱性が得られない傾向にある。
【0040】
また、上記熱硬化性樹脂組成物には、積層板に可塑性、難燃性を付与するために各種の可塑剤、難燃剤を添加してもよいが、基本的にはハロゲンフリーのものであることが好ましい。従って、上記難燃剤は、ハロゲン系難燃剤ではなく、例えば、市販の窒素系難燃剤やリン系難燃剤を使用することが好ましい。
【0041】
上記窒素系難燃剤としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等を挙げることができ、特に限定されないが、メラミン変性フェノール樹脂を用いることが好ましく、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂を用いることがより好ましい。メラミン変性フェノール樹脂は、窒素含有率が3〜20重量%のものであることが好ましく、3〜15重量%のものであることがより好ましい。この窒素含有率が3重量%未満では、難燃性に劣る傾向があり、20重量%を超えると打抜加工性や耐熱性に劣る傾向がある。また、メラミン変性フェノール樹脂は、熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂(メラミン変性フェノール樹脂は除く。本発明において、「熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂」という場合には全て同様。)100重量部に対し、5〜30重量部の範囲で配合することが好ましく、10〜20重量部の範囲で配合することがより好ましい。このメラミン変性フェノール樹脂の配合量が5重量部未満であると難燃性や耐熱性付与の効果が不十分となる恐れがあり、30重量部を超えると打抜加工性や作業性が悪くなる傾向にある。ただし、窒素系難燃剤としてメラミン変性ノボラック型フェノール樹脂を用い、熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂として植物油変性レゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、植物油変性レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂を70〜150重量部配合することが特に好ましい。さらにこの場合には、上記エポキシ樹脂を、上記植物油変性レゾール型フェノール樹脂とメラミン変性ノボラック型フェノール樹脂の合計量に対して、2〜20重量%の範囲で配合することが特に好ましく、これにより打抜加工性と耐熱性を向上させることが可能となる。
【0042】
上記リン系難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルホスフェイト、トリブチルホスフェイト、トリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェイト、クレジルジフェニルホスフェイト、レゾルシルジフェニルホスフェイト、トリイソプロピルフェニルホスフェイト等のリン酸エステルであることが好ましく、中でもトリフェニルホスフェイトは安価であるためより好ましい。これらは、1種または2種以上の混合系として用いることができる。リン系難燃剤は、熱硬化性樹脂組成物に含まれるフェノール樹脂100重量部に対し、10〜100重量部の範囲で配合することが好ましい。このリン系難燃剤の配合量が10重量部未満であると、配合する効果が小さく、100重量部を超えると打抜加工性が悪くなる傾向にあり、吸水率等の他の特性も低下する傾向を示す。なお、フェノール樹脂として植物油変性レゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、当該フェノール樹脂100重量部に対して、上記リン系難燃剤を30〜80重量部配合することが特に好ましい。
【0043】
また、上記窒素系やリン系難燃剤以外に、例えば、水酸化アルミニウムような無機充填剤系難燃剤を、全難燃剤100重量部のうち、50重量部までの範囲で配合することが好ましい。窒素系やリン系難燃剤以外の難燃剤を配合すると、相乗作用により少量の配合で難燃性をより高めることができ、難燃剤の総配合量を少なくすることができる。ただし、窒素系やリン系難燃剤以外の難燃剤の配合量が50重量部を超えると、打抜加工性、耐熱性が悪くなる傾向を示す。
【0044】
上記熱硬化性樹脂組成物は、メタノール、トルエン、アセトン等の溶剤にて調整し、溶解ないし分散させ、熱硬化性樹脂ワニスとして紙基材に含浸されることが好ましい。また、本発明のプリプレグは、特に限定されないが、該プリプレグ中に、上記アルコキシシラン誘導体含有組成物を15〜25重量%含むことが好ましく、また、上記熱硬化性樹脂組成物を45〜60重量%含むことが好ましい。
【0045】
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを所定枚数重ねて、加熱加圧することで製造することができる。また、本発明の金属張積層板は、本発明のプリプレグを所定枚数重ねた後、その片面または両面に銅箔などの金属箔を配し、上記と同様にして加熱加圧することで製造することができる。上記金属箔の厚みは特に限定されないが、通常3〜200μmである。さらに、上記加熱加圧は、好ましくは温度150〜180℃、圧力9〜20MPa程度で行うが、プリプレグ特性や樹脂組成物の反応性、プレス機の能力、目的の積層板の厚み等を考慮して適宜決定することができ、特に限定されない。
【0046】
本発明のプリント配線板は、例えば、本発明の金属張積層板の金属層をエッチングし、回路を形成することで製造することができ、必要に応じスルーホール等を形成してもよい。また、本発明の多層プリント配線板は、例えば、目的とする絶縁層の厚みに合わせて、内層基材や金属箔等の構成材の間に本発明のプリプレグを所定枚数配し、加熱加圧成形して製造することができる。なお、この時の加熱加圧条件は、上記金属張積層板製造時の条件と同様にして適宜決定することができる。また、内層基材としては、電機絶縁材料として使用される積層板、金属張積層板または多層プリント配線板などが挙げられ、これらを2種類以上併用することもできる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<水溶性フェノール樹脂の合成>
フェノール1モル、37重量%ホルマリンをホルムアルデヒド換算で1.2モル、およびトリエチルアミン換算で0.4モル量のトリエチルアミン水溶液(濃度:30重量%)を70℃で、6時間反応させた後、水とメタノールの等重量混合溶媒を加えて、樹脂固形分12重量%および20重量%の水溶性フェノール樹脂AおよびBの溶液を作製した。
【0049】
<アルコキシシラン誘導体含有組成物の調製>
(組成物1)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Aの溶液に、トリメトキシ(グリシジルメチル)シランを、該溶液に対して0.5重量%配合し、攪拌し、アルコキシシラン誘導体含有組成物1を作製した。
【0050】
(組成物2)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Aの溶液に、トリメトキシ(グリシジルメチル)シランを、該溶液に対して5重量%配合し、攪拌し、アルコキシシラン誘導体含有組成物2を作製した。
【0051】
(組成物3)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Aの溶液に、トリメトキシ(グリシジルメチル)シランを、該溶液に対して10重量%配合し、攪拌し、アルコキシシラン誘導体含有組成物3を作製した。
【0052】
(組成物4)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Bの溶液に、トリメトキシ(グリシジルメチル)シランを、該溶液に対して0.5重量%配合し、攪拌し、アルコキシシラン誘導体含有組成物4を作製した。
【0053】
(組成物5)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Bの溶液に、トリメトキシ(グリシジルメチル)シランを、該溶液に対して10重量%配合し、攪拌し、アルコキシシラン誘導体含有組成物5を作製した。
【0054】
(組成物6)
水とメタノールの等重量混合溶媒に対し、トリメトキシ(グリシジルメチル)シランを10重量%配合して、攪拌し、アルコキシシラン誘導体含有組成物6を作製した。
【0055】
<フェノール樹脂含有熱硬化性樹脂組成物の調製>
(熱硬化性樹脂組成物1)
桐油150重量部とフェノール280重量部、p−トルエンスルホン酸0.2重量を反
応釜に仕込み、90℃で1時間反応させ、次いでパラホルムアルデヒド200重量部、28重量%アンモニア水30重量部を加えて75℃で2時間反応させた。その後、反応釜内部を80kPa(600Torr)以下に減圧して2時間縮合水の除去を行い、桐油変性率35重量%の桐油変性レゾール型フェノール樹脂を得た。
【0056】
次いで上記で得た桐油変性レゾール型フェノール樹脂100重量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製、商品名エピクロン840S、エポキシ当量186〜190g/eq)15重量部、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂(窒素含有率7.0%)15重量部、およびトリフェニルホスフェイト40重量部を添加し、メタノールで溶解して、樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物1のワニスを作製した。
【0057】
(熱硬化性樹脂組成物2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂を20重量部添加した以外は、上記熱硬化性樹脂組成物1と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物2のワニスを作製した。
【0058】
(熱硬化性樹脂組成物3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂を30重量部添加した以外は、上記熱硬化性樹脂組成物1と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物3のワニスを作製した。
【0059】
(熱硬化性樹脂組成物4)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂を添加しなかった以外は、上記熱硬化性樹脂組成物1と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物4のワニスを作製した。
【0060】
(熱硬化性樹脂組成物5)
桐油160重量部とメタクレゾール400重量部、p−トルエンスルホン酸0.2重量部を反応釜に仕込み、90℃で1時間反応させ、次いでパラホルムアルデヒド200重量部、28重量%アンモニア水30重量部を配合して75℃で2時間反応させた。その後、反応釜内部を80kPa(600Torr)以下に減圧して2時間縮合水の除去を行い、桐油変性率35重量%の桐油変性レゾール型フェノール樹脂を得た。
【0061】
次いで上記で得た桐油変性レゾール型フェノール樹脂100重量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名D.E.R.661、エポキシ当量500〜560g/eq)15重量部、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂(商品名フェノライトLA−7052、大日本インキ化学工業株式会社製)70重量部、およびトリフェニルホスフェイト30重量部を添加し、メタノールで溶解して、樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物5のワニスを作製した。
【0062】
(熱硬化性樹脂組成物6)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名D.E.R.664、エポキシ当量875〜955g/eq)を用いた以外は、上記熱硬化性樹脂組成物5と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物6のワニスを作製した。
【0063】
(熱硬化性樹脂組成物7)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名エピコート4004P、エポキシ当量880g/eq)を用いた以外は、上記熱硬化性樹脂組成物5と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物7のワニスを作製した。
【0064】
(熱硬化性樹脂組成物8)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名D.E.R.331、エポキシ当量186〜190g/eq)を用いた以外は、上記熱硬化性樹脂組成物5と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物8のワニスを作製した。
【0065】
(熱硬化性樹脂組成物9)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名D.E.R.667、エポキシ当量1600〜1950g/eq)を用いた以外は、上記熱硬化性樹脂組成物5と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物9のワニスを作製した。
【0066】
(熱硬化性樹脂組成物10)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂を添加しなかった以外は、上記熱硬化性樹脂組成物5と同様にして樹脂分50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物10のワニスを作製した。
【0067】
<プリプレグの作製>
(実施例1)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物1を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が18重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物1のワニスを、乾燥後の含浸量が50重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0068】
(実施例2)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物3を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が18重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物1のワニスを、乾燥後の含浸量が50重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0069】
(実施例3)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物2を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が18重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物3のワニスを、乾燥後の含浸量が50重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0070】
(実施例4)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物3を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が18重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物3のワニスを、乾燥後の含浸量が50重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0071】
(実施例5)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物6を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が10重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物2のワニスを、乾燥後の含浸量が50重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0072】
(実施例6)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物4を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が15〜20重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物5のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0073】
(実施例7)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物5を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が15〜20重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物5のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0074】
(実施例8)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物5を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が15〜20重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物6のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0075】
(実施例9)
上記で得たアルコキシシラン誘導体含有組成物5を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が15〜20重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物7のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0076】
(比較例1)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Aの溶液を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が15重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物4のワニスを、乾燥後の含浸量が50重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0077】
(比較例2)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Aの溶液を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が15重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物3のワニスを、乾燥後の含浸量が50重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0078】
(比較例3)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Bの溶液を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が17〜25重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物10のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0079】
(比較例4)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Bの溶液を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が17〜25重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物8のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0080】
(比較例5)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Bの溶液を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が17〜25重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物9のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0081】
(比較例6)
上記で得た水溶性フェノール樹脂Bの溶液を、厚さ0.2mm、坪量125g/mの紙基材(クラフト紙)に、乾燥後の含浸量が15〜20重量%となるように含浸、乾燥した後、さらに上記で得た熱硬化性樹脂組成物5のワニスを、乾燥後の含浸量が50〜55重量%になるように含浸、乾燥してプリプレグを得た。
【0082】
<両面銅張積層板の作製>
実施例1〜9および比較例1〜6のプリプレグをそれぞれ8枚重ね、その両側に銅箔の厚さが35μmの接着剤付銅箔を接着剤層がプリプレグ側となるようにして重ね、温度170℃、圧力15MPaで90分加熱加圧して、厚さ1.6mmの両面銅張積層板を得た。
【0083】
<評価>
上記実施例1〜9および比較例1〜6のプリプレグまたは両面銅張積層板について、はんだ耐熱性、リフロー耐熱性、難燃性、打抜加工性、ワニスゲルタイム、プリプレグ樹脂流れ、絶縁抵抗を下記の方法により評価した。結果を表1および2に示す。
【0084】
(はんだ耐熱性)
260℃のはんだ槽に、銅箔面が接するように各両面銅張積層板を浮かべ、ふくれが発生するまでに要した時間(秒)を測定した。
【0085】
(リフロー耐熱性)
各両面銅張積層板に印刷法により回路を形成し、銅箔をエッチングして作製した残銅率70%のプリント配線板をリフロー装置に流した後、ふくれ発生の有無を目視により観察した。試験数は各サンプルとも2個で、ふくれ無しを○、有りを×とした。また、リフロー装置の温度設定は、プリント配線板の基材表面の最高温度を測定して行った。
【0086】
(難燃性)
各両面銅張積層板から銅箔を全面エッチングして、127×13mmの試験片を切り出し、UL法に準じ、この試験片を長辺が垂直になるように保持し、バーナーにより下から10秒間接炎を2回繰り返し、消炎するまでの時間を測定し、評価した。
【0087】
(打抜加工性)
銅箔を全面エッチングした各両面銅張積層板を、その表面温度を変えて(60、80、100℃)ポンチ径1.0〜1.2mm、穴間ピッチ2.54mm、24穴の試験用金型を用いて、打抜加工した。打抜加工した各両面銅張積層板の穴周辺を目視観察し、その状態を記号で示した。○:はくり、目白なし、△:はくり、目白、若干あり、×:はくり、目白あり。
【0088】
(ワニスゲルタイム)
各プリプレグに用いられている熱硬化性樹脂組成物のワニスについて、配合から0、7、14、21日経過した後の160℃におけるゲルタイムを測定した。
【0089】
(プリプレグ樹脂流れ)
0、7、14、21日経過後の各プリプレグをそれぞれ5枚重ねて、130℃、10MPaで7分間加熱加圧して、加熱加圧前後の重量より樹脂の損失量(樹脂流れ)を算出した。
【0090】
(絶縁抵抗)
JIS C 6481に準拠して測定した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
以上より、アルコキシシラン誘導体含有組成物により予め含浸処理された紙基材に、フェノール樹脂含有熱硬化性樹脂組成物を含浸した実施例のプリプレグおよびこれを用いた両面銅張積層板は、耐熱性、難燃性、打ち抜き加工性、絶縁性の全てに優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を含む組成物により予め含浸処理された紙基材に、フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸、加熱乾燥して得られるプリプレグ。
【請求項2】
前記アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物が、少なくとも1つのエポキシ基を有する、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記アルコキシシラン誘導体が、下記一般式
【化1】

(R〜Rは、各々独立に水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは2価の有機基を示す。)
で示される構造を有する、請求項1または2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を含む組成物が、水溶性フェノール樹脂をさらに含み、かつ前記アルコキシシラン誘導体および/またはアルコキシシラン誘導体の縮合物を0.5〜10重量%含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらにエポキシ樹脂を、前記フェノール樹脂100重量部に対して2〜30重量部含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記フェノール樹脂が植物油変性フェノール樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物がハロゲンフリーの窒素系難燃剤および/またはリン系難燃剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
前記フェノール樹脂が植物油変性レゾール型フェノール樹脂であり、前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂およびリン酸エステルをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項9】
前記フェノール樹脂が植物油変性レゾール型フェノール樹脂であり、前記熱硬化性樹脂組成物が、該植物油変性レゾール型フェノール樹脂100重量部に対してエポキシ樹脂5〜40重量部、メラミン変性ノボラック型フェノール樹脂70〜150重量部およびリン酸エステル30〜80重量部をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、400〜1000g/eqである、請求項8または9に記載のプリプレグ。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂が、ハロゲンを含まないビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項5〜10のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のプリプレグを所定枚数重ね、加熱加圧してなる、積層板。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のプリプレグを所定枚数重ね、その片面または両面に金属箔を配し、加熱加圧してなる、金属張積層板。
【請求項14】
請求項13に記載の金属張積層板における金属層をエッチングしてなる、プリント配線板。

【公開番号】特開2007−9169(P2007−9169A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318772(P2005−318772)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】