説明

プリント配線基板

【課題】板金部材のビス締め部分のビス穴にリフローした半田が流入せず、しかも、パッドに付着した半田の盛り上がりが均等で偏りを生じることがないプリント配線基板を提供する。
【解決手段】ビス穴5の上端開口部の口縁部のパッド3表面にレジスト6が円環状に設けられ、半田7がメタルマスクにより複数に分割されてパッド3に付着したプリント配線基板1とする。又は、半田7がメタルマスクにより複数に分割されて、且つ、ビス穴5の上端開口部の口縁部を除いて、パッド3に付着したプリント配線基板とする。レジスト6でビス穴5への半田7の流入、付着を防止し、半田7を複数分割することで半田7の盛り上がりを均等にして偏りをなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線基板に関し、特に、板金部材の取付片を重ねてビス締め固定するパッドを改良したプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス穴の上端開口部の周囲にシールドケースやカードスロットなどの板金部材の取付片をビス締め固定するパッドを設けた従来のプリント配線基板は、パッドを錆止めする必要がある。錆止めの方法としては、パッドにメッキ処理を施したり、クリーム半田をリフローさせてパッドに付着させる方法があるが、コストダウンを図る観点から、通常、後者の半田リフローの方法でパッドの錆止めを行っている。
【0003】
一方、ビス挿入用の取付穴の周囲のグランドパターンに複数のスルーホールを設け、グランドパターンに盛ったクリーム半田をリフローさせてスルーホールに流入させるこによりビス止め部を平坦にし、ビス止め時にビスと半田を接触させてビスとグランドパターンを確実に導通させるようにした回路基板が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、チップ部品をリフロー法によりスルーホールに近接して半田付けするプリント配線板であって、スルーホールに近接してシルク印刷によるソルダレジスト線を形成し、スルーホールに半田が流入することを防止したプリント配線板も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2007−134407号公報
【特許文献2】特開昭63−133695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のプリント配線基板のように半田リフローの方法でパッドの錆止めを行う場合は、ビス締め部分のビス穴が、ビスで配線基板のグランド強化を図れるようにスルーホールとされているため、パッドの上でリフローした半田がビス穴に流れ込み、ビスが締まらなくなるという問題があった。
【0006】
また、リフロー時にプリント配線基板のパッド表面が少し傾くと、リフローした半田がパッド表面の低い部分に集中するため、偏った半田の盛り上がりが生じて各パッドの半田の盛り上がり高さにバラツキがでるという問題があり、このように半田の盛り上がり高さにバラツキが生じると、板金部材をビス締め固定したときに板金部材が少し傾斜した姿勢で取付けられることになるため、例えば、板金部材がカードスロットである場合には、カードの挿入がし辛くなるという不都合を生じることがあった。
【0007】
これに対し、前記特許文献1の回路基板は、ビス挿入用の取付穴の周囲のグランドパターンに設けた複数のスルーホールにリフローさせた半田を流入させて、ビス止め時にビスと半田を接触させることにより、ビスとグランドパターンを確実に導通させるものであるから、このような回路基板の技術を適用しても上記の問題を解決することは不可能である。
【0008】
また、前記特許文献2のプリント配線板は、チップ部品の半田付け部分とその近傍のスルーホールとの間にソルダレジスト線を形成して、スルーホールに半田が流入しないようにしたものであるから、このようなプリント配線板の技術を適用しても、やはり上記の問題を解決することはできない。
【0009】
本発明は上記の事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、板金部材のビス締め部分のビス穴にリフローした半田が流入せず、しかも、パッドに付着した半田の盛り上がりが均等で偏りを生じることがないプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る第一のプリント配線基板は、スルーホールとされたビス穴の上端開口部の周囲の基板表面にパッドを設けて半田を付着し、その上に板金部材の取付片を重ねてビス締め固定を行うプリント配線基板において、上記ビス穴の上端開口部の口縁部のパッド表面にレジストが円環状に設けられ、上記半田がメタルマスクにより複数に分割されて上記パッドに付着していることを特徴とするものである。
【0011】
そして、本発明に係る第二のプリント配線基板は、スルーホールとされたビス穴の上端開口部の周囲の基板表面にパッドを設けて半田を付着し、その上に板金部材の取付片を重ねてビス締め固定を行うプリント配線基板において、上記半田がメタルマスクにより複数に分割されて、且つ、ビス穴の上端開口部の口縁部を除いて、上記パッドに付着していることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のプリント配線基板においては、半田がビス穴の上端開口部を中心として周方向に4分割又は8分割されていることが好ましい。また、本発明のプリント配線基板は、板金部材としてカードスロットをネジ締め固定する場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一のプリント配線基板は、ビス穴の上端開口部の口縁部のパッド表面にレジストが円環状に設けられているため、パッド表面でリフローした半田が円環状のレジストで塞き止められてビス穴に流入しなくなる。従って、この半田が付着していないスルーホールのビス穴に通したビスで、板金部材の取付片を確実にビス締め固定できると共に、ビスを通じて配線基板のグランド強化を図ることができる。しかも、このプリント配線基板のように、半田がメタルマスクにより複数に分割されてパッドに付着したものは、リフロー時にパッドの表面が少し傾いても半田がパッドの低い部分に集中することがないので、分割されたそれぞれの半田の盛り上が実質的に均等であり、各パッド間で半田の盛り上がり高さに実質的なバラツキを生じることはない。従って、板金部材を水平な姿勢でプリント配線基板の各パッドにビス締め固定できるので、特に、板金部材が、傾いた姿勢で取付けられるとカードの挿入が困難なカードスロットである場合に、極めて有効である。
【0014】
また、本発明の第二のプリント配線基板のように、半田がメタルマスクにより複数に分割されて、且つ、ビス穴の上端開口部の口縁部を除いて、パッドに付着したものは、当然のことながら、スルーホールのビス穴にも半田が付着していないので、このビス穴に通したビスで板金部材の取付片のビス締め固定と、配線基板のグランド強化を図ることができ、しかも、第一のプリント配線基板と同様に、分割されたそれぞれの半田の盛り上が実質的に均等で、各パッド間の半田の盛り上がり高さに実質的なバラツキが生じないので、板金部材を水平な姿勢でプリント配線基板の各パッドにビス締め固定できる。
【0015】
ところで、第一のプリント配線基板のように、ビス穴の上端開口部の口縁部のパッド表面に円環状のレジストが形成されていると、パッドに重ねた板金部材の取付片をビス締め固定したとき、取付片が円環状のレジストで支持されてビスの緊締力により若干反り上がるように変形し、取付片とパッド表面の半田が接触不良を生じる恐れがある。けれども、第二のプリント配線基板のように、メタルマスクにより半田がビス穴の上端開口部の口縁部に付着しないようにして、円環状のレジストを省略したものは、上記のように取付片が変形しても半田との接触状態を維持するので、接触不良の恐れを解消できる利点がある。
【0016】
パッド表面の半田の分割数は特に制限されないが、分割されたそれぞれの半田の盛り上がりの均等性や、分割されたそれぞれの半田の面積などを考慮すると、ビス穴の上端開口部を中心として周方向に4分割又は8分割することが好ましい。特に、第二のプリント配線基板のように、メタルマスクでビス穴の上端開口部の口縁部にも半田が付着しないようにしたものは、後述するように、メタルマスクとして、ビス穴の開口部とその口縁部を覆う円形マスク部から8本の線形マスク部を放射状に形成して円形マスク部の形状を安定させたメタルマスクを用いて、半田を8分割することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0018】
図1は半田を付着したパッドにカードスロットの取付片を重ねてビス締め固定した本発明の一実施形態に係るプリント配線基板の概略部分平面図、図2はその概略側面図、図3は同プリント配線基板の部分拡大平面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は図3のB−B線断面図、図6は同プリント配線基板の半田を付着したパッドにカードスロットの取付片を重ねてビス締め固定した部分の断面図、図7は同プリント配線基板のパッド表面の半田の分割に用いるメタルマスクの部分平面図である。
【0019】
この実施形態のプリント配線基板1は、板金部材としてカードスロット2を取付けるようにしたもので、図1に示すように、プリント配線基板1に設けた4つのパッド3(表面に半田を付着したパッド)にカードスロット2の4つの取付片2aが重ねられ、図2に示すように、プリント配線基板1の裏面側からビス4でビス締め固定されている。尚、カードスロット2の取付片2aの個数やパッド3の個数は4つに限定されるものではなく、2つでも、3つでも、5つ以上でもよい。
【0020】
プリント配線基板1の各パッド3は、図3,図4,図5に示すように、スルーホールとされたビス穴5の上端開口部の周囲の基板表面に、銅箔によってカードスロット2の取付片2aより少し大きい面積の長方形に形成されている。そして、このビス穴5の上端開口部の口縁部のパッド表面には円環状のレジスト6が形成されており、このレジスト6によって、パッド3表面の半田がスルーホールのビス穴5に流入して付着するのを阻止している。尚、1aはパッド3の周囲のレジスト被膜である。
【0021】
このパッド3の表面には、メタルマスクにより、半田7がビス穴5の上端開口部を中心として周方向に4分割されて付着しており、図3に示すように、分割された半田7の相互間にはパッド3が十字形に露出している。この半田7の分割は、図7に示すような十字形マスク部8aを長方形の開口部8bの内側に設けたメタルマスク8をプリント配線基板1に載置し、開口部8bとパッド3の位置を合わせて十字形マスク部8aをパッド3に重ね、パッド3に印刷したクリーム半田をリフローさせた後、メタルマスク8を除去することによって行われたものである。このようにメタルマスク8で半田7が4分割されてパッド3の表面に付着したものは、リフロー時にプリント配線基板1が少し傾いても、リフローした半田がパッド3の低い部分に流れて集中することがないので、分割されたそれぞれの半田7の盛り上がりが実質的に均等で一定の高さになっている。従って、各パッド3ごとに半田7の盛り上がり高さに実質的なバラツキを生じることはない。
【0022】
図1,図2,図6に示すように、このプリント配線基板1の半田7が付着した各パッド3にはカードスロット2の各取付片2aが重ねられ、プリント配線基板1の裏面側からビス穴5を通してビス4が各取付片2aのネジ穴2bにねじ込まれてビス締め固定される。その場合、このプリント配線基板1は、円環状のレジスト6によってビス穴5への半田の流入、付着が阻止されているので、確実にビス締め固定を行うことができ、しかも、各パッド3の半田7がメタルマスク8で4分割されて盛り上がり高さが上述したように一定となっているため、カードスロット2を傾斜させることなく水平な姿勢で安定良く取付けることができる。従って、カードの挿入が困難になるといった不都合を生じる恐れはなくなる。
【0023】
ビス締め固定する場合、ビス4をあまり強く締め過ぎると、カードスロット2の取付片2aが、図6に仮想で示すように、円環状のレジスト6で支持されてビス4の緊締力により若干反り上がるように変形し、取付片2aとパッド3表面の半田7が接触不良を生じる可能性があるので、ビス4を強く締め過ぎないように注意するのがよい。尚、9はワッシャを示しているが、このワッシャ9は省略してもよい。
【0024】
図8は本発明の他の実施形態に係るプリント配線基板の部分拡大平面図、図9は同プリント配線基板のパッド表面の半田の分割に用いるメタルマスクの部分平面図である。
【0025】
このプリント配線基板10は、半田7がメタルマスクによりビス穴5の上端開口部を中心として周方向に8分割されると共に、ビス穴5の上端開口部の口縁部5aを除いてパッド3に付着しており、8分割された半田7の相互間にはパッド3が放射状に露出し、口縁部5aにもパッド3が円環状に露出している。
【0026】
この半田7の分割は、図9に示すようなメタルマスク80、即ち、円形マスク部8cと放射状の8本の線形マスク部8dを開口部8bの内側に形成したメタルマスク80をプリント配線基板1に載置し、開口部8bとパッド3の位置を合わせて、円形マスク部8cをビス穴5の上端開口部とその口縁部5bに重ねると共に、放射状の8本の線形マスク部8dをパッド3に重ね、パッド3に印刷したクリーム半田をリフローさせた後、メタルマスク8を除去することによって行われたものである。このようにメタルマスク80で半田7が8分割されてパッド3の表面に付着したものは、分割されたそれぞれの半田7の盛り上がりが実質的に均等で一定の高さとなっており、各パッド3ごとに半田7の盛り上がり高さに実質的なバラツキを生じることはない。
【0027】
また、この8分割用のメタルマスク80は、放射状の8本の線形マスク部8dによって中心の円形マスク部8cが周囲から均等に保持され、円形マスク部8cの形状が安定するので、ビス穴5の上端開口部の口縁部5aを一定の幅で正確にマスクできる利点もある。
【0028】
このようなプリント配線基板10も、前記のプリント配線基板1と同様に、半田7の付着した各パッド3にカードスロット2の各取付片2aが重ねられ、プリント配線基板1の裏面側からビス穴5を通してビス4が各取付片2aのネジ穴2bにねじ込まれてビス締め固定される。その場合、このプリント配線基板10のビス穴5にも半田が流入、付着していないので確実にビス締め固定を行うことができ、また、上記のように各パッド3の半田7がメタルマスク80で8分割されて盛り上がり高さが一定となっているため、カードスロット2を傾斜させることなく水平な姿勢で安定良く取付けることができる。また、このプリント配線基板10のようにメタルマスク80で半田7がビス穴5の上端開口部の口縁部5aに付着しないようにして、円環状のレジストを省略したものは、ビス4を強く締め過ぎてカードスロット2の取付片2aが若干反り上がるように変形しても、パッド3の半田7と接触状態を維持するので、接触不良の恐れを解消できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】半田を付着したパッドにカードスロットの取付片を重ねてビス締め固定した本発明の一実施形態に係るプリント配線基板の概略部分平面図である。
【図2】半田を付着したパッドにカードスロットの取付片を重ねてビス締め固定した同プリント配線基板の概略側面図である。
【図3】同プリント配線基板の部分拡大平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】同プリント配線基板の半田を付着したパッドにカードスロットの取付片を重ねてビス締め固定した部分の断面図である。
【図7】同プリント配線基板のパッド表面の半田の分割に用いるメタルマスクの部分平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るプリント配線基板の部分拡大平面図である。
【図9】同プリント配線基板のパッド表面の半田の分割に用いるメタルマスクの部分平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1,10 プリント配線基板
2 カードスロット(板金部材)
2a 取付片
2b 取付片のネジ穴
3 パッド
4 ビス
5 スルーホールに形成されたビス穴
6 円環状のレジスト
7 半田
8,80 メタルマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールとされたビス穴の上端開口部の周囲の基板表面にパッドを設けて半田を付着し、その上に板金部材の取付片を重ねてビス締め固定を行うプリント配線基板において、
上記ビス穴の上端開口部の口縁部のパッド表面にレジストが円環状に設けられると共に、上記半田がメタルマスクにより複数に分割されて上記パッドに付着していることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
スルーホールとされたビス穴の上端開口部の周囲の基板表面にパッドを設けて半田を付着し、その上に板金部材の取付片を重ねてビス締め固定を行うプリント配線基板において、
上記半田がメタルマスクにより複数に分割されて、且つ、ビス穴の上端開口部の口縁部を除いて、上記パッドに付着していることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項3】
上記半田がビス穴の上端開口部を中心として周方向に4分割又は8分割されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
板金部材がカードスロットであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−289846(P2009−289846A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138866(P2008−138866)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】