説明

ベンゾオキサゾール前駆体、樹脂組成物およびそれを用いたコーティングワニス、樹脂膜並びに半導体装置

【課題】 ワニスとした場合に保存性が良く、樹脂膜とした場合に誘電率が低減され、半導体装置の樹脂膜として適用する際の種々のプロセス適合性を両立するベンゾキサゾール前駆体及びそれを含む樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)より構成されるベンゾオキサゾール前駆体。前記ベンゾオキサゾール前駆体は、分岐構造と立体構造を有するとより好ましい。前記ベンゾオキサゾール前駆体は、好ましくは、架橋基を有するものである。前記ベンゾオキサゾール前駆体を含む樹脂組成物。前記ベンゾオキサゾール前駆体又は前記樹脂組成物を有機溶媒に溶解させたコーティングワニス。前記ベンゾオキサゾール前駆体、前記樹脂組成物、又は前記コーティングワニスより構成される樹脂膜。前記樹脂膜を有する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾオキサゾール前駆体、樹脂組成物およびそれを用いたコーティングワニス、樹脂膜並びに半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の層間絶縁膜として、各種CVD膜や、塗布系材料が適用されているが、より一層の低誘電率化をはかるために、主にこれらの材料を多孔質化するという検討が行われている。多孔質化する方法としては、熱分解性成分(ポロジェン)を混合あるいは結合により導入し、絶縁膜形成の際の加熱焼成工程においてポロジェンを分解させ、空孔形成させる等がある。しかしながら、このような方法による多孔質化においては、膜中に存在する空孔は数ナノメーターから数10ナノメーターのサイズであり、また、これら空孔は独立ではなく連結して存在していることから、必然的に材料の強度が低下し、半導体プロセスにおいても空孔に起因した様々な問題が指摘されている。具体例としては、CMPやパッケージプロセスにおいて剥離や破壊が起こるといったこと、またダマシンプロセスにおいて、絶縁膜をエッチングした後のメタライゼーションの際に金属が絶縁膜の空孔に侵入しデバイスの信頼性が低下するといったこと、またアッシングやウエット洗浄のプロセスにおいて、ガスや洗浄液が空孔に侵入し、不具合の要因になるといったこと等である。これらの不具合を解決する方法として、ポアシール等のプロセスを導入するといった検討も行われているが、工程が増えコスト増大につながることが懸念されている。
一方、枝分かれした構造を取ることで、ポリマー鎖がお互い近づけなくなるために、バルクポリマーの中でポリマー鎖の占める体積分率が低下することにより、低誘電率化されることが提唱されている(例えば、特許文献1参照。)が、合成時にゲル化が起こり易いこと、合成時の溶解性、ワニス時の保存性などが悪く、非常に扱いにくいものであった。
【特許文献1】特開2001−332543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような背景に鑑み、ワニスとした場合に溶解性及び保存性が良く、樹脂膜とした場合に多孔質にすることなく誘電率が低減されるベンゾキサゾール前駆体及びそれを含む樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、保存性が良好で、樹脂膜とした場合に誘電率が低減されるコーティングワニスを提供することにある。
本発明は、低誘電率の樹脂膜を提供でき、これを用いることにより、信頼性に優れた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は下記第(1)項〜第(23)項により達成されることが見出された。
(1) 少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるベンゾオキサゾール前駆体であって、前記化合物(A)におけるo−アミノフェノール基の数と、前記化合物(B)におけるカルボン酸基の数との合計が5つ以上であることを特徴とするベンゾオキサゾール前駆体。
(2) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、分岐構造を有するものである第(1)項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(3) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、一般式(1)で表わされる構造を含むものである第(1)項又は第(2)項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【0005】
【化1】

(式(1)中のY及びZは、それぞれ、芳香族基、脂環式構造より構成される基又は脂環式構造より構成される基を有する芳香族基を示し、互いに同一であっても異なっていても良い。Aは、Y上の置換基であり、式(2)で表される基を示し、Bは、Z上の置換基であり、式(3)で表される基を示す。m及びnは、1以上の整数であり、m+nは3以上の整数である。)
【0006】
(4) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるものである第(1)項乃至第(3)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(5) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、立体構造を有するものである第(1)項乃至第(4)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(6) 前記立体構造は、前記o−アミノフェノール基におけるベンゼン環上に有するものである、第(5)項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(7) 前記立体構造は、脂環式構造より構成される基を含むものである第(5)項又は第6)項に記載のベンゾキサゾール前駆体。
(8) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、架橋基を有するものである第(1)項乃至第(7)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(9) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、末端封止剤(C)を含んで構成されるものである第(1)項乃至第(8)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(10)
前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、前記o−アミノフェノール基を立体構造に有するものである第(1)項乃至第(9)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(11) 前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、前記カルボン酸基を立体構造に有するものである第(1)項乃至第(10)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(12) 前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、2つのo−アミノフェノール基を有するものである第(1)項乃至第(11)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(13) 前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、3つのo−アミノフェノール基を有するものである第(1)項乃至第(11)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(14) 前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、4つのo−アミノフェノール基を有するものである第(1)項乃至第(11)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(15) 前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、2つのカルボン酸基を有するものである第(1)項乃至第(11)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(16) 前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、3つのカルボン酸基を有するものである第(1)項乃至第(11)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(17) 前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、4つのカルボン酸基を有するものである第(1)項乃至第(11)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(18) 第(1)項乃至第(17)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体を含む樹脂組成物。
(19) 第(1)項乃至第(17)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体又は第(18)項に記載の樹脂組成物を有機溶媒に溶解させたコーティングワニス。
(20) 第(1)項乃至第(17)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体、第(18)項に記載の樹脂組成物、又は第(19)項に記載のコーティングワニスより構成される樹脂膜。
(21) 第(20)項に記載の樹脂膜を有する半導体装置。
(22) 前記樹脂膜を、層間絶縁膜及び/又は保護膜として有するものである第(21)項に記載の半導体装置。
(23) 前記樹脂膜は、半導体基板の所定の位置に、第(19)項に記載のコーティングワニスを塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を、加熱及び/又は活性放射線の照射することにより硬化して得られたものである第(21)項又は第(22)項に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワニスとした場合に溶解性及び保存性が良く、樹脂膜とした場合に多孔質にすることなく誘電率が低減され、半導体装置の樹脂膜として適用する際の種々のプロセス適合性を両立するベンゾキサゾール前駆体及びそれを含む樹脂組成物を提供することができる。
本発明によれば、保存性が良好で、樹脂膜とした場合に誘電率が低減され、半導体装置の樹脂膜として適用する際の種々のプロセス適合性を両立するコーティングワニスを提供できる。
本発明によれば、低誘電率で密着性が良好な樹脂膜を提供でき、これを用いた半導体装置は、接続信頼性に優れ、信号損失及び配線遅延が低いものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のベンゾオキサゾール前駆体、樹脂組成物、コーティングワニス、樹脂膜、及び半導体装置について説明する。
本発明は、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるベンゾオキサゾール前駆体であって、前記化合物(A)におけるo−アミノフェノール基の数と、前記化合物(B)におけるカルボン酸基の数との合計が5つ以上であることを特徴とするベンゾオキサゾール前駆体である。これにより、ワニスとした場合に溶解性及び保存性が良く、樹脂膜とした場合に多孔質にすることなく誘電率が低減されるものである。
【0009】
本発明においては、上記に加えて、分岐構造を形成することを特徴とし、前記分岐構造形成においては、芳香族基、脂環式構造より構成される基又は脂環式構造より構成される基を有する芳香族基より形成されることが好ましく、これらの基により分岐構造を形成することで、ベンゾキサゾール前駆体が立体構造を形成することが、好ましい。
【0010】
さらに、前記ベンゾキサゾール前駆体は、その構造が立体構造である他の立体構造として、立体構造を有する基を含むことが好ましく、そのような立体構造を有する基としては、脂環式構造をより構成される基が挙げられ、脂環式構造をより構成される基は、芳香族基などの基と結合していても良い。前記脂環式構造より構成される基としては、架橋炭素環系、非縮合架橋環系及び架橋縮合環系などの基が挙げられるが、これらの中でも、アダマンタン構造より構成される基が好ましく、アダマンタン構造より構成される基を有することで、樹脂内に嵩高い脂環式構造を導入することができ、これらにより、樹脂膜とした場合に、誘電率をより低減できる。前記立体構造を有する基は、o−アミノフェノール基におけるベンゼン環上に有していても良く、前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)においては、o−アミノフェノール基を、前記立体構造を有する基に有することがより好ましく、また、前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)においては、前記立体構造を有する基に有することがより好ましい。
【0011】
前記アダマンタン構造より構成される基としては、例えば、アダマンチル基、ビアダマンチル基、ジアマンチル基、トリアダマンチル基、トリアマンチル基、テトラアダマンチル基及びテトラマンチル基などが挙げられる。前記アダマンタン構造には、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基などのアルキル基やフルオロアルキル基などが結合していても良く、特にメチル基及びトリフルオロメチル基が好ましい。立体構造を有するものを用いることにより、ベンゾオキサゾール前駆体の合成時にゲル化することなく、溶解性をより向上し、多孔質化させること無しに誘電率をより低下させることができる。
前記芳香族基としては、フェニル基及びフェニルエーテル基などを挙げることができる。これらの芳香族基上には、前記アダマンタン構造より構成される基が置換されていても良い。
前記アダマンタン構造より構成される基と芳香族基とを含む基としては、前記アダマンタン構造より構成される基と前記芳香族基とが結合された基が挙げられる。
【0012】
本発明に用いる少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)としては、例えば、2つのo−アミノフェノール基を有するビスアミノフェノール化合物としては、ジアミノ−ジヒドロキシベンゼン、ジアミノ−ジヒドロキシ−ビフェニル、ジアミノ−ジヒドロキシ−ジフェニルエーテル及び9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−フルオレンなどの一般的な芳香族ビスアミノフェノール化合物、3,3’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ビス(1−アダマンチル)−ビフェニル、3,3’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ビフェニル、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−5,5’−ビス(1−アダマンチル)−ビフェニル、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−5,5’−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ビフェニル、2,2’−ビス(6−(1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−5,5’−ビス(1−アダマンチル)−ビフェニル、2,2’−ビス(6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−5,5’−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ビフェニル、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(1−アダマンチル)−ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼン及び1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(5,5’,7,7’−テトラメチル−3,3’−1−ビアダマンチル)−ベンゼン、1,3−ビス(6−(1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(1−アダマンチル)−ベンゼン、1,3−ビス(6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼン、9,9−ビス(4−(6−(1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)−フルオレン、9,9−ビス(4−(6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)−フルオレンなどの上記一般的な芳香族ビスアミノフェノール化合物に、アダマンタン構造を有する化合物などが挙げられる。
上記アダマンタン構造やフェニル或いはフェニルエーテル構造には、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基などのアルキル基やフルオロアルキル基が結合していても良い。
【0013】
さらに、3つ以上のo−アミノフェノール基を有する化合物(A)としては、例えば、トリス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アミン、トリス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)シラン及びテトラキス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)シランなど、3つ以上のo−アミノフェノール基が元素群に直接結合した化合物、トリス−[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]アミン、トリス−[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]メタン、テトラキス−[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]メタン、トリス−[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]シラン及びテトラキス−[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]シランなど、3つ以上のo−アミノフェノール基がフェニルエーテル基を介して結合した化合物、1,3,5−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン及び3,3’,5,5’−テトラキス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタンなど、3つ以上のo−アミノフェノール基がアダマンタン構造に直接結合した化合物、1,3,5−トリス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]−アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]アダマンタン及び3,3’,5,5’−テトラキス−[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]−1,1’−ビアダマンタン、1,3,5,7−テトラキス[4−(6−(1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−フェニル]アダマンタンなど、3つ以上のo−アミノフェノール基がフェニルエーテル構造を介してアダマンタン構造に結合した化合物などが挙げられる。
上記アダマンタン構造や、フェニル又はフェニルエーテル構造には、アルキル基やフルオロアルキル基などが結合していても良い。
上記元素群としては、窒素、炭素及びケイ素などの元素や、芳香族基及び脂肪族基などの前記元素より構成される基が挙げられる。
また本発明においては、上記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物を、1つ又は2つ以上用いることができる。
【0014】
本発明に用いる少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)としては、まず2つのカルボン酸基を有する化合物(B)として、例えば、アダマンチル−1,3−ジカルボン酸、1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸及び5,5’,7,7’−テトラメチル−(1,1’−ビアダマンチル)−3,3’−ジカルボン酸などのカルボン酸基が直接アダマンタン構造に結合したカルボン酸や、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ビフェニル−ジカルボン酸及びビフェニルエーテル−ジカルボン酸などの芳香カルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼン等の一般的な芳香族カルボン酸化合物にアダマンタン構造を有する化合物、アジピン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
【0015】
さらに、少なくとも3つのカルボン酸基を有する化合物(B)として、例えば、アダマンチル−1,3,5−トリカルボン酸、1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5−トリカルボン酸、アダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸及び1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸などが挙げられる。
上記アダマンタン構造には、アルキル基やフルオロアルキル基が結合していても良い。
また、前記カルボン酸基としては、カルボキシル基、カルボン酸エステル基及びカルボン酸クロリド基などが挙げられる。上記例示のカルボン酸において、カルボキシル基を、前記カルボン酸エステル基に変換したエステル化合物、及び、カルボキシル基を、前記カルボン酸クロリド基に変換したクロリド化合物などのカルボン酸誘導体として、用いることができる。また、前記エステル化合物としては、例えば、前記カルボン酸におけるカルボキシル基を、フェニルエステル基、2−ピリジルエステル基、スクシンイミドエステル基及びN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールエステル基などカルボン酸活性エステル基に変換した活性エステル化合物を用いることができる。前記活性エステル化合物の中で、カルボン酸活性エステル基として、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールエステル基に変換する例を挙げると、例えば、前記カルボン酸におけるカルボキシル基とN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールとを反応させて、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールエステル化合物を得ることができる。
また本発明においては、上記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物を、1つ又は2つ以上を用いることができる。
【0016】
本発明においては、ベンゾオキサゾール前駆体を構成する、前記2つ以上のo−アミノフェノール基を有する化合物(A)や前記2つ以上のカルボン酸基を有する化合物(B)の化学構造により、得られる分岐構造が異なり、分岐度を調整することができる。ベンゾオキサゾール前駆体の合成において、ゲル化することなく合成する上で、前記2つ以上のo−アミノフェノール基を有する化合物(A)及び前記2つ以上のカルボン酸基を有する化合物(B)における、o−アミノフェノール基とカルボン酸基との数は、合計で5つ以上であり、それぞれ10以下が好ましい。より好ましくは、それぞれの数は4以下である。
【0017】
本発明において架橋基としては、三重結合及び二重結合などを有する基を意味し、例えば、エチニル基、芳香族置換エチニル基、ブタジイニル基、芳香族置換ブタジイニル基、プロパルギル基、芳香族置換プロパルギル基、ビニル基及びアリル基などを示す。上記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)や少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、これらの架橋基を結合させたものを用いることができる。これにより、ベンゾオキサゾール前駆体の耐熱性、半導体装置を作製する際のプロセス適合性を、より向上させることができる。
【0018】
前記架橋基を有する化合物の例としては、上記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)の場合、前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物に、前記架橋基を有するものであれば良いが、具体例としては、エチニルイソフタル酸、フェニルエチニルイソフタル酸、4−フェニルエチニル−フェノキシ−イソフタル酸、フェニル−ブタジイニル−イソフタル酸、プロパルギルイソフタル酸、フェニルプロパルギルイソフタル酸、ビニルイソフタル酸、アリルイソフタル酸及び4−(1−アダマンチル)−フェニルエチニルイソフタル酸、などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、上記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)においても、同様に、前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物に、前記架橋基を有するものであれば良いが、具体的には、1,3−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−5−フェニルエチニル−ベンゼン、9,9−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2,7−ジエチニル−フルオレン、9,9−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2,7−ビス−フェニルエチニル−フルオレン、9,9−ビス−(4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル)−2,7−ビス−フェニルエチニル−フルオレン、2,2’−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−6,6−ビス−フェニルエチニル−1,1’−ビナフタレン及び2,2’−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−6,6−ジエチニル−1,1’−ビナフタレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明のベンゾオキサゾール前駆体の合成方法としては、上記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と、上記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)及びその誘導体との一般的な反応方法を用いることができる。例えば、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物のクロリド化合物又はその活性エステル化合物(例えば、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールエステル)との重縮合反応による方法、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)をシリル化して、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物のクロリド化合物又はその活性エステル化合物とを反応させるシリル化法、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物とを、亜燐酸トリフェニルなどの重縮合剤或いは触媒を用いた直接重縮合法などを用いることができ、このようにして得られたベンゾキサゾール前駆体は、重量平均分子量が、1,000〜1000,000のものが好ましい。より好ましくは、3,000〜150,000のものである。前記範囲外でも使用することができるが、重量平均分子量が低いと、耐熱性が低下する恐れがあり、高いとワニス安定性が低下する恐れがあり。
【0020】
このようなベンゾオキサゾール前駆体の合成において、上記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と、上記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)との組み合わせとしては、o−アミノフェノール基とカルボン酸基との合計数が5つ以上であればよく、その具体例としては、前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)が、2つのo−アミノフェノール基を有する化合物である場合、前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、3つのカルボン酸基を有する化合物、又は4つのカルボン酸基を有する化合物を用いて合成することができ、また、前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)が、3つのo−アミノフェノール基を有する化合物である場合、前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、2つのカルボン酸基を有する化合物、3つのカルボン酸基を有する化合物又は4つのカルボン酸基を有する化合物を用いて合成することができ、前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)が、4つのo−アミノフェノール基を有する化合物である場合、前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、2つのカルボン酸基を有する化合物、3つのカルボン酸基を有する化合物又は4つのカルボン酸基を有する化合物を用いて合成することができる。上記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と、上記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)との組み合わせにおいて、ベンゾオキサゾール前駆体が立体構造を形成する上で、o−アミノフェノール基とカルボン酸基のいずれか一方が3つ以上有することが好ましい。
このようにして得られるベンゾオキサゾール前駆体としては、ベンゾオキサゾール構造と分岐構造を有するものが挙げられ、具体例として一般式(1)で表される構造を含むものが挙げられる。
【0021】
【化1】

式(1)中のY及びZは、それぞれ、芳香族基、脂環式構造より構成される基又は脂環式構造より構成される基を有する芳香族基を示し、互いに同一であっても異なっていても良い。Aは、Y上の置換基であり、式(2)で表される基を示し、Bは、Z上の置換基であり、式(3)で表される基を示す。m及びnは、1以上の整数であり、m+nは3以上の整数である。
前記芳香族基、脂環式構造より構成される基及び脂環式構造より構成される基を有する芳香族基の具体例としては、前記芳香族基、脂環式構造より構成される基又は脂環式構造より構成される基を有する芳香族基と同様のものを挙げることができ、前記少なくとも2つ以上のo−アミノフェノール基を有する化合物(A)及び前記少なくとも2つ以上のカルボン酸基を有する化合物(B)におけるそれらと同様である。
【0022】
上記一般式(1)で表わされる構造を有するベンゾオキサゾール前駆体の具体例としては、3つのo−アミノフェノール基(m=2)を有する化合物と4つのカルボン酸基(n=3)を有する化合物とより合成されるベンゾキサゾール前駆体の場合、式(4)で表される構造を有するものが挙げられ、また、4つのo−アミノフェノール基(m=3)を有する化合物と3つのカルボン酸基(n=2)を有する化合物とより合成されるベンゾオキサゾール前駆体の場合、式(5)で表される構造を有するものが挙げられる。他の組み合わせについても、同様にして、o−アミノフェノール基の数に応じた分岐構造がY上に形成され、カルボン酸基の数に応じた分岐構造がZ上に形成される構造が挙げられる。
また、o−アミノフェノール基におけるベンゼン環には、前記脂環式構造より構成される基を有していても良い。
【0023】
【化2】

【0024】
上記の合成方法において、ベンゾオキサゾール前駆体の末端は、1つのo−アミノフェノール基及び1つのカルボン酸基を有する化合物などの封止剤(C)で封止することができる。これらの封止剤は、上記立体構造や架橋基を有していてもよい。
上記1つのo−アミノフェノール基を有する化合物としては、例えば、2−アミノ−フェノール、2−アミノ−4−(1−アダマンチル)フェノール、2−アミノ−4−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノール、2−アミノ−4−[3−(1,1’−ビアダマンチル)]−フェノール及び4−(5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンチル)−2−アミノ−フェノールなどが挙げられ、また、架橋基を有するものとしては、フェニルエチニル−2−アミノ−フェノール及びフェニル−ブタジイニル−2−アミノ−フェノールなどが挙げられる。
【0025】
上記1つのカルボン酸基を有する化合物としては、例えば、酢酸、安息香酸、アダマンチル−安息香酸、アダマンチル−1−カルボン酸、3,5−ジメチル−アダマンチル−1−カルボン酸、ビアダマンチル−1−カルボン酸及び5,5’,7,7’−テトラメチル−3,3’−ビアダマンチル−1−カルボン酸などが挙げられ、また、架橋基を有するものとしては、エチニル安息香酸、フェニルエチニル安息香酸、(1−アダマンチル)フェニルエチニル−安息香酸及びフェニル−ブタジイニル安息香酸などが挙げられる。これらの末端基は、必要なレベルの耐熱性、誘電率、溶解性を考慮して選択できる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、上記ベンゾオキサゾール前駆体を含むものであり、さらには、必要に応じて、界面活性剤、シラン系に代表されるカップリング剤、加熱により酸素ラジカルや硫黄ラジカルを発生するラジカル開始剤、ジスルフィド類などの触媒類などの添加剤、加熱、並びに、マイクロ波、可視光、UV光及びX線などの活性エネルギー線や電子線などの活性放射線照射などにより、架橋反応を生じる架橋基を有する架橋剤を用いることができる。
また、前記樹脂組成物に、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物等を添加することにより、感光性樹脂組成物として用いることもできる。ベンゾオキサゾール前駆体に、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物を一緒に用いることで、ポジ型の感光性樹脂組成物として使用することができる。また、ベンゾオキサゾール前駆体にメタクリロイル基のような光架橋性基を含む基を有する場合は、光開始剤を用いることでネガ型感光性樹脂組成物として用いることが可能である。
本発明の樹脂組成物は、上記成分を適宜配合し、これを混合することにより得ることができる。
【0027】
本発明のベンゾオキサゾール前駆体及び樹脂組成物は、有機溶媒に可溶であり、均一な樹脂溶液を与えコーティングワニスとすることができる。有機溶媒としては特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アニソール、メシチレン等を用いることができ、これら以外であっても、溶解若しくは分散させることが可能な有機溶媒であれば、使用することができる。これらの有機溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてよい。
【0028】
次に、本発明の樹脂膜について説明する。
本発明の樹脂膜は、半導体用途において、配線層あるいはビア層の層間絶縁膜として好適であり、層間絶縁膜以外にも、半導体の多層配線構造を構成する材料として、例えば、多層配線の最上部表面を外部から保護する保護膜、層間絶縁膜のエッチングを停止させるエッチングストッパ膜、配線層を構成するCu拡散防止のためのキャップ膜及びバリア膜、層間絶縁膜と下地の密着性を高める密着付与膜等に好適であるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の樹脂膜は、前述したようなベンゾキサゾール前駆体、これを含む樹脂組成物又はコーティングワニスを用いて得られ、各種基材に対する密着性、電気特性及び機械特性に優れている。層間絶縁膜における厚さは、特に限定されないが、適用目的に合わせ任意に調整することが可能であるが、一般的には0.001〜20μmの範囲で形成される。
また、本発明の樹脂膜としては、上記用途以外にも、例えば、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜、接着剤層等が挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂膜の製造方法としては、例えば、前記ベンゾキサゾール前駆体又は樹脂組成物を、シクロヘキサノン等の有機溶媒に溶解することでワニスを作製し、このワニスを、適当な支持体、例えば、ポリエステルフィルムなどの有機基材、銅箔などの金属板、シリコンウエハやセラミック基板などの半導体基板等に、塗布して、塗膜を形成する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等による方法が挙げられる。その後、塗膜を乾燥し、加熱処理をして、溶媒除去することにより、樹脂膜とすることができる。ベンゾオキサゾール前駆体は、前記溶媒除去に続いて、加熱することにより、縮合反応させて硬化し、更にベンゾオキサゾール前駆体が架橋基を有する場合、架橋反応させ、ベンゾオキサゾール樹脂として、ベンゾオキサゾール樹脂又はそれを含む樹脂組成物で構成される樹脂膜とすることができる。
また、前記ベンゾオキサゾール前駆体から樹脂に変換したものが、有機溶媒に溶解するものであれば、予め、ベンゾオキサゾール前駆体をベンゾオキサゾール樹脂に変換して、有機溶媒に溶解しワニスを作製し、同様の方法により、樹脂膜を得ることができる。その際、塗膜の加熱処理において、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を樹脂に変換する工程を必要としないので、加熱処理時間の短縮をすることができる。
上記工程における縮合反応及び架橋反応において、加熱による方法以外にも、活性放射線を照射することができ、両者を併用すると、より好ましい。前記活性放射線としては、マイクロ波、可視光、UV光及びX線などの活性エネルギー線ならびに電子線などが挙げられる。
また、本発明の樹脂膜は、上記方法により基板に直接塗布して形成しても良いし、支持体に形成した樹脂膜を、該支持体より剥離することにより、ドライフィルムとして使用することもできる。
【0031】
次に、本発明の半導体装置について、好適な実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
半導体装置100は、素子が形成された半導体基板1と、半導体基板1の上側(図1上側)に設けられた窒化珪素膜2と、窒化珪素膜2の上に設けられた層間絶縁膜3及びバリア層6で覆われた銅配線層4を有している。
層間絶縁膜3には、配線すべきパターンに対応した凹部が形成されており、その凹部内には銅配線層4が設けられている。
また、層間絶縁膜3と、銅配線層4との間には、改質処理層5が設けられている。
また、層間絶縁膜3の上側(窒化珪素膜2と反対側面)には、ハードマスク層7が形成されている。
層間絶縁膜3の形成方法としては、上記半導体基板1の窒化珪素膜2の上に、ワニスを直接塗布して形成することができるが、予め樹脂膜のドライフィルムを用意し、これは半導体基板1の窒化珪素膜2の上に積層するように形成することもできる。より具体的には、上記半導体基板1の窒化珪素膜2の上に、上記で得たベンゾオキサゾール前駆体又は樹脂組成物を含むコーティングワニスを直接塗布して塗膜を形成し、加熱及び/又は活性放射線を照射して硬化して形成することができる。ドライフィルムを用いる場合は、予め、上記で得たベンゾオキサゾール前駆体又は樹脂組成物を含むコーティングワニスを用いて、基材上に樹脂層を形成して乾燥して、ドライフィルムを形成し、これを、上記半導体基板1の窒化珪素膜2の上に、積層して、加熱及び/又は活性放射線を照射して硬化して形成することができる。
上記説明においては、窒化珪素膜2の上に形成する例を説明したが、樹脂膜を形成する位置はこれに限定されない。
【0032】
また、本実施の形態では、層間絶縁膜3を用いた半導体装置100について説明したが、本発明はこれに限定されない
本発明の半導体装置は、上述したような層間絶縁膜を用いているので寸法精度に優れ、絶縁性を十分に発揮できるので、それにより接続信頼性が優れている。
また、上述したような層間絶縁膜は、配線層との密着性に優れるので、半導体装置の接続信頼性をさらに向上できる。
また、上述したような層間絶縁膜は、誘電特性に優れているので、半導体装置の信号損失を低下することができる。
また、上述したような層間絶縁膜は、誘電特性に優れているので、配線遅延を低下することができる。
【0033】
(実施例)
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
(1)1,3,5−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの合成
1,3,5−トリブロモアダマンタンとフェノールからFeCl3によるフリーデルクラツ反応(参考:Yaw-Terng Chern and Hann-Chyan Shiue, Macromolecules 1997, 30, 646-4651)、引き続き、硝酸によるニトロ化反応、Pd−C触媒と水素による還元反応により、1,3,5−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンを合成した。
【0035】
(2)5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸ジクロリドの合成
1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタンより、ジエチルエーテル中、マグネシウムを用いたカップリング反応、それに続く、臭素化反応により、3,3’−ジブロモ−5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンタンを合成した(参考:IIPe051, Polymer Preprints, Japan Vol. 50, No.2 (2001) p277)。次に、このジブロモ化物を、Koch−Haafのカルボキシル化(濃硫酸中ギ酸との反応)により、5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸を得た(Ludek Vodicka, Josef Janku and Jiri Burkhard, Collection Czechoslovak Chem. Commun. Vol. 48 (1983), p1162-1172)。次に、塩化チオニルを用いた酸クロリド化により、目的物である5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸ジクロリドを得た(参考:Kenneth A Burdett, Synthesis, June 1991, p441-442)。
【0036】
(3)ベンゾオキサゾール前駆体の合成
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た1,3,5−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン30.2g(0.066mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、上記(2)で得た5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸ジクロリド42.9g(0.095mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、安息香酸クロリド1.69g(0.012mol)を添加し、更に室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めたところ、40,000であった。
【0037】
(4)樹脂膜の製造
上記ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を、N−メチル−2−ピロリドンに溶解し、テフロン(登録商標)フィルターで濾過して、コーティング用のワニスを得た。このワニスを、シリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した。その後、窒素雰囲気のオーブン中で、90℃/1分間、250℃/1時間、350℃/1時間の順で加熱し、樹脂膜を得た。
【実施例2】
【0038】
(1)5−フェニルエチニル−イソフタル酸ジクロリドの合成
5−アミノ−イソフタル酸を原料として、特開2002−201158に従って合成した。
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の製造
窒素ガスフロー下で、実施例1の(1)で得た1,3,5−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン27.5g(0.060mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、実施例1の(2)で得た5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸ジクロリド31.6g(0.070mol)及び上記(1)で得た5−フェニルエチニル−イソフタル酸ジクロリド9.09g(0.03mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、2−アミノ−フェノール3.27g(0.03mol)を添加し、更に室温で2時間攪拌した。反応液を蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、38,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例3】
【0039】
(1)3,3’,5,5’−テトラキス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタンの合成
1−ブロモ−アダマンタンより、ジエチルエーテル中、マグネシウムを用いたカップリング反応、それに続く、臭素化反応により、3,3’−5,5’−テトラブロモ−1,1’−ビアダマンタンを合成した(参考:IIPe051, Polymer Preprints, Japan Vol. 50, No.2 (2001) p277)。次に、このテトラブロモ体とフェノールとのFeCl3によるフリーデルクラフツ反応(参考:Yaw-Terng Chern and Hann-Chyan Shiue, Macromolecules 1997, 30, 4646-4651)、引き続き、硝酸によるニトロ化反応、Pd−C触媒と水素による還元反応により、3,3’,5,5’−テトラキス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタンを合成した。
【0040】
(2)アダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸テトラクロリドの合成
アダマンタンの臭素化からテトラブロモ化物を得て、次に、このテトラブロモ化物をKoch−Haafのカルボキシル化(濃硫酸中ギ酸との反応)により、アダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸を得た(Ludek Vodicka, Josef Janku and Jiri Burkhard, Collection Czechoslovak Chem. Commun. Vol. 48 (1983), p1162-1172)。次に、塩化チオニルを用いた酸クロリド化により、目的物であるアダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸テトラクロリドを得た(参考:Kenneth A Burdett, Synthesis, June 1991, p441-442)。
【0041】
(3)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の製造
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た3,3’,5,5’−テトラキス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタン17.5g(0.025mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、上記(2)で得たアダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸テトラクロリド8.88g(0.023mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、3,5−ジメチル−アダマンチル−1−カルボン酸クロリド2.27g(0.012mol)を添加し、更に室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、42,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例4】
【0042】
(1)1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼンの合成
レゾルシノールと1−ブロモ−3,5−ジメチル−アダマンタンとの反応により、4,6−ビス(3,5−ジメチル−アダマンチル)−レゾルシノールを合成し、2−ベンジルオキシ−4−フルオロニトロベンゼンとのエーテル化反応、Pd−C触媒と水素によるヒドロキシル基の脱保護及びニトロ基の還元反応により、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼンを合成した(参考:Yoshio Imai, Yasumasa Maeda, Hisashi Takeuchi, Ki-Hong Park, Masa-aki Kakimoto, Toshikazu Kurosaki, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 2656-2662 (2002)。
【0043】
(2)1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸テトラクロリドの合成
1−ブロモ−アダマンタンより、ジエチルエーテル中、マグネシウムを用いたカップリング反応、それに続く、臭素化反応により、3,3’,5,5’−テトラブロモ−1,1−ビアダマンタンを合成した(参考:IIPe051, Polymer Preprints, Japan Vol. 50, No.2 (2001) p277)。
次に、このテトラブロモ化物を、Koch−Haafのカルボキシル化(濃硫酸中ギ酸との反応)により、1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸を得た(参考:Ludek Vodicka, Josef Janku and Jiri Burkhard, Collection Czechoslovak Chem. Commun. Vol. 48 (1983), p1162-1172)。次に、塩化チオニルを用いた酸クロリド化により、目的物である1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸テトラクロリドを得た(参考:Kenneth A Burdett, Synthesis, June 1991, p441-442)。
【0044】
(3)3−フェニルエチニル−安息香酸クロリドの合成
3−ブロモ安息香酸を原料として、メチルエステル化反応、フェニルアセチレンとのカップリング反応、メチルエステルのアルカリ加水分解、塩化チオニルを用いた酸クロ化反応により、3−フェニルエチニル−安息香酸クロリドを合成した(参考:特開2002−201158)。
【0045】
(4)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の製造
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼン64.9g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、上記(2)で得た1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸テトラクロリド25.0g(0.048mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、上記(3)で得た3−フェニルエチニル−安息香酸クロリド2.89g(0.012mol)を添加し、更に、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、39,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例5】
【0046】
窒素ガスフロー下で、実施例3(1)で得た3,3’,5,5’−テトラキス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタン17.5g(0.025mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、実施例4の(1)で得た1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸テトラクロリド12.0g(0.023mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、3,5−ジメチル−アダマンチル−1−カルボン酸クロリド2.27g(0.012mol)を添加し、更に室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、76,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例6】
【0047】
(1)1,3−ビス(6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼンの合成
3−フルオロフェノールと1−ブロモ−3,5−ジメチル−アダマンタンとの反応、続いて、ニトロ化反応、ベンジルブロマイドとのエーテル化反応により、2−ベンジルオキシ−4−フルオロ−5−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ニトロベンゼンを得た。得られた2−ベンジルオキシ−4−フルオロ−5−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ニトロベンゼンと実施例4(1)で得られた4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−レゾルシノールとのエーテル化反応、Pd−C触媒と水素によるヒドロキシル基の脱保護及びニトロ基の還元反応により、1,3−ビス(6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼンを合成した。
【0048】
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の製造
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た1,3−ビス(6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼン97.3g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、実施例4(2)で得た1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸テトラクロリド25.0g(0.048mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、実施例4(3)で得た3−フェニルエチニル−安息香酸クロリド2.89g(0.012mol)を添加し、更に、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、28,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0049】
(比較例1)
(1)1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンの合成
3−ジブロモ−アダマンタンとフェノールとのFeCl3によるフリーデル・クラフツ反応(参考:Yaw-Terng Chern and Hann-Chyan Shiue, Macromolecules 1997, 30, 4646-4651)、引き続き、硝酸によるニトロ化反応、Pd−C触媒と水素による還元反応より、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンを合成した。
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の製造
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン35.0g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、実施例1の(2)で得た5,5’,7,7’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸ジクロリド42.9g(0.095mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、安息香酸クロリド2.11g(0.015mol)を添加し、更に室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、21,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0050】
(比較例2)
窒素ガスフロー下で、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシ−ビフェニル21.6g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、実施例3の(2)で得たアダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸テトラクロリド18.5g(0.048mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、安息香酸クロリド2.11g(0.015mol)を添加し、更に室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、32,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0051】
フィルム特性
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた樹脂膜について、以下の評価を行った。評価項目を方法と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1. ワニス保存性溶解性
ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体1gと、N−メチル−2−ピロリドン3gを、ふた付きのガラス製サンプル容器に精秤し、撹拌子で1時間撹拌後、室温で1週間後の外観を調べた。外観において、析出物などの変化がなければ、○とした。
【0052】
2. 耐熱性
耐熱性は、ガラス転移温度及び熱分解温度で評価した。ガラス転移温度は、得られた樹脂膜を動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製DMS6100)で窒素ガス300mL/min.フロー下、昇温速度3℃/min.、周波数1Hzの条件により測定し、tanδのピークトップ温度をガラス転移温度とした。
また、熱分解温度は、得られた樹脂膜をTG/DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製TG/DTA220)を用いて、窒素ガス200mL/min.フロー下、昇温速度10℃/min.の条件により測定し、重量の減少が5%に到達した温度を熱分解温度とした。
【0053】
3. 比誘電率
JIS−K6911に準拠し、周波数100kHzで、ヒューレットパッカード社製HP−4284A Precision LCRメーターを用いて半導体用接着フィルムの容量測定を行い下記計算式により比誘電率を算出した。
比誘電率=(容量測定値×フィルムの厚み)/(真空の誘電率×測定面積)
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように実施例1〜6はワニス保存性が優れかつ誘電率が低く、耐熱性にも優れていた。
また、比較例1は、ワニス保存性が悪く、耐熱性が悪く、誘電率も高めであった。比較例2は誘電率が高めであった。
【0056】
次に、層間絶縁膜及び半導体装置について説明する。
(実施例7及び8)
半導体基板の上に窒化珪素層を形成し、該窒化珪素層上に、実施例1と3の樹脂膜の製造で得られたコーティング用ワニスを塗布して、250℃で1時間及び420℃で1時間加熱処理して、厚さ0.3μmの層間絶縁膜を形成した。
次に、前記層間絶縁膜に所定のパターンを形成するように金属配線を形成して、半導体装置を得た。
【0057】
次に、得られた半導体装置について配線遅延速度を評価した。
実施例1の樹脂膜を用いて得られた実施例7の半導体装置と、実施例3の樹脂膜を用いて得られた実施例8の半導体装置と、この半導体装置と同様な構成でSiO2絶縁膜を有する半導体装置との配線遅延の程度を比較した。評価の基準には、リングオシュレータの発信周波数から換算して求めた信号遅延時間を採用した。両者を比較した結果、本発明で得られた半導体装置では、配線遅延が少なく、実施例7では約14%の速度が向上し、また、実施例8では約20%の速度の向上があることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 半導体基板
2 窒化珪素膜
3 層間絶縁膜
4 銅配線層
5 改質処理層
6 バリア層
7 ハードマスク層
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるベンゾオキサゾール前駆体であって、前記化合物(A)におけるo−アミノフェノール基の数と、前記化合物(B)におけるカルボン酸基の数との合計が5つ以上であることを特徴とするベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項2】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、分岐構造を有するものである請求項1記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項3】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、一般式(1)で表わされる構造を含むものである請求項1又は2に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【化1】

(式(1)中のY及びZは、それぞれ、芳香族基、脂環式構造より構成される基又は脂環式構造より構成される基を有する芳香族基を示し、互いに同一であっても異なっていても良い。Aは、Y上の置換基であり、式(2)で表される基を示し、Bは、Z上の置換基であり、式(3)で表される基を示す。m及びnは、1以上の整数であり、m+nは3以上の整数である。)
【請求項4】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)と少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項5】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、立体構造を有するものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項6】
前記立体構造は、前記o−アミノフェノール基におけるベンゼン環上に有するものである、請求項5に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項7】
前記立体構造は、脂環式構造より構成される基を含むものである請求項5又は6に記載のベンゾキサゾール前駆体。
【請求項8】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、架橋基を有するものである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項9】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、末端封止剤(C)を含んで構成されるものである請求項1乃至8のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項10】
前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、前記o−アミノフェノール基を立体構造に有するものである請求項1乃至9のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項11】
前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、前記カルボン酸基を立体構造に有するものである請求項1乃至10のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項12】
前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、2つのo−アミノフェノール基を有するものである請求項1乃至11のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項13】
前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、3つのo−アミノフェノール基を有するものである請求項1乃至11のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項14】
前記少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)は、4つのo−アミノフェノール基を有するものである請求項1乃至11のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項15】
前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、2つのカルボン酸基を有するものである請求項1乃至11のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項16】
前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、3つのカルボン酸基を有するものである請求項1乃至11のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項17】
前記少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、4つのカルボン酸基を有するものである請求項1乃至11のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体を含む樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体又は請求項18に記載の樹脂組成物を有機溶媒に溶解させたコーティングワニス。
【請求項20】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体、請求項18に記載の樹脂組成物、又は請求項19に記載のコーティングワニスより構成される樹脂膜。
【請求項21】
請求項20に記載の樹脂膜を有する半導体装置。
【請求項22】
前記樹脂膜を、層間絶縁膜及び/又は保護膜として有するものである請求項21に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記樹脂膜は、半導体基板の所定の位置に、請求項19に記載のコーティングワニスを塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を、加熱及び/又は活性放射線の照射することにより硬化して得られたものである請求項21又は22に記載の半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−16223(P2007−16223A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159016(P2006−159016)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】