ペダル装置及びそれを備えた自動車
【課題】運転者の意図した通りにペダル操作及び車両運転操作を行うことが出来ると共に、ペダルの踏み込みを一定で保っている場合におけるペダルの特性や車両運動の特性が好適に制御され、操作がし易かったり疲れにくかったり運転フィーリングが良かったりするペダル装置を提供する。
【解決手段】ペダル位置、ペダル反力、車両の駆動力、車両の制動力に関し、ペダル踏力とあらかじめ定められたペダル反力特性に基づいて、踏み動作と放し動作と保持動作に相応した異なる特性を決定すると共に、保持動作における特性を、車両情報や環境情報に応じて変更する。
【解決手段】ペダル位置、ペダル反力、車両の駆動力、車両の制動力に関し、ペダル踏力とあらかじめ定められたペダル反力特性に基づいて、踏み動作と放し動作と保持動作に相応した異なる特性を決定すると共に、保持動作における特性を、車両情報や環境情報に応じて変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル位置あるいはペダル反力あるいは車両出力を電気的に制御可能なペダル装置及びそれを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の駆動力や制動力はペダルによって運転操作されている。ペダルの踏み込みにより、運転者はペダルの反力と共に車両の加速度や減速度によって発生した慣性力を体感している。そのため、ペダル位置、ペダル反力、車両の駆動力、車両の制動力などの特性は、運転フィーリングや操作のしやすさ、疲れやすさなどを決定づける要因であった。
【0003】
一方、従来のペダルはアクセルワイヤやマスタシリンダに機械的に連結されているため、ペダルの特性はその機構によって一意に決定されていた。
【0004】
しかし、近年、いわゆるバイワイヤと呼ばれる技術により、ペダル位置あるいは反力あるいは車両の駆動力や制動力の関係を任意に設定できるようになっており、そのペダル位置あるいは反力あるいは車両の駆動力や制動力の関係をどのように制御するかについて検討が重ねられている。
【0005】
例えば、ブレーキ力の作動方向やブレーキペダルの作動方向により、ペダルストローク特性やブレーキ力特性やペダル踏力特性を異ならせる技術が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−291894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ペダル位置とペダル反力を任意に設定出来るペダル装置においては、ペダルの作動方向は運転者の踏み込みとペダル装置が発生した力の釣り合いに基づいて決定される。すなわち、ペダルの作動方向はペダル装置の制御の結果であるため、ペダルの作動方向に基づいてペダル装置の制御を行うと運転者のペダル操作に対してペダルの反応に遅れが生じたり、運転者の意図する踏み動作や放し動作と実際の作動方向が必ずしも一致せず、違和感を与えたりする場合があるという課題がある。
【0008】
また、上記従来技術では運転者が踏み動作を行っている場合と放し動作を行っている場合の作動方向については言及が為されている。しかし、車両運転の操作しやすさや疲れやすさあるいは運転フィーリングに大きな影響を与える、ペダルの踏み込みを一定で保っている場合の保持動作については十分に考慮されていないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、ペダル位置、ペダル反力、車両の駆動力、車両の制動力に関し、ペダル踏力とあらかじめ定められた反力曲線に基づいて、踏み動作と放し動作と保持動作に対応した異なる特性を決定する。また、保持動作における特性を、車両情報や環境情報に応じて変更する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ペダルや車両運動の特性を踏み動作、放し動作、保持動作に応じて運転者が意図したとおりに変化させることが出来ると共に、車両状態や車両外の環境情報に応じた特性の変化を行うことが出来るため、運転者に違和感を与えず、操作しやすく疲れにくい、運転フィーリングの良いペダル装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による車両操作制御装置は、ペダル位置及びペダル踏力を検出する事が可能であると共に、アクチュエータを電気的に制御することが可能である、機械的及び電気的な構成を持ち、ペダル踏力に応じたペダル位置を実現したり、ペダル位置に応じたペダル反力を発生させたり、ペダル位置やペダル踏力に基づいて制動力や駆動力を発生させる。
【実施例1】
【0012】
本発明を適用した実施例の主な構成について、以下図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明を構成するシステムの模式図である。また、図2は本発明を構成するシステムのブロック図である。
【0014】
1は運転者が車両を運転するために操作するペダル装置である。ペダル装置1は例えば、運転者の踏み込みによるペダル踏力によって、一定の範囲内でペダル位置やペダル速度が変化する。また、ペダル装置1はペダル踏力に対して一定の範囲に拘束された曲線あるいは直線運動を行う。
【0015】
ここで、運転者がペダル装置に対して行った全ての入力を操作入力と定義する。操作入力にはペダル踏力、ペダル位置、ペダル速度、あるいはペダルが踏まれているかどうかの情報が含まれる。
【0016】
ペダル装置1は、ペダル踏力に応じてペダル位置が変化する。また、ペダル位置に応じてペダル反力が発生する。あるいは、ペダル踏力に対してペダル反力を発生させ、運転者にペダルの操作フィーリングを与える。ペダルの操作フィーリングは一般的に車両の運転フィーリングに大いに影響を与える。
【0017】
ペダル装置1において、ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。ここで、ペダル位置はペダルの踏み込まれた量あるいは操作量に相当する。ペダル位置はペダルストロークあるいは単にストロークと言い換えても良い。ペダル速度は、ペダルを踏み込むときあるいは放すときの速さあるいは操作速度に相当する。ペダル速度は、ペダルストローク速度あるいは単にストローク速度と言い換えても良い。ペダル速度はペダル位置の時間単位の変位量あるいはペダル位置を時間微分した値であり、ペダル位置から演算で求めることが可能である。ペダル踏力は運転者がペダル装置を動かすために加えられた力であり、一般的に足による踏み込みの力あるいは操作力に相当する。また、ペダル反力は運転者がペダルを操作しているときにペダル装置から運転者に加えられる力であり、操作反力に相当する。ペダル反力は単に反力と言い換えても良い。ペダル反力はペダル踏力と対になる力であり、一般的にペダル踏力と反対向きの力である。特に、ペダルが踏み込まれた状態で動いていないかあるいは、ペダルの運動が加速していないときは、ペダル踏力とペダル反力は釣り合っており、ほぼ等価の力となる。従って、ペダル反力がある値にあるときはペダル踏力も同じ値であると言うことが出来、その逆も言うことが出来る。
【0018】
また、30,40,50,60,70,80は、車両の運動を変化させる車両出力装置である。図1,2による車両は、バイワイヤ技術による応用である。特に、車両出力装置30,40,50,60とペダル装置1の組み合わせはブレーキバイワイヤ技術による応用であり、ブレーキバイワイヤ技術におけるペダル装置1はブレーキペダルである。また、車両出力装置70,80の内少なくとも一方とペダル装置1を組み合わせた場合のペダル装置1はアクセルペダルである。
【0019】
ペダル装置と車両出力装置の間は機械的接続が無く、電気的な信号のやりとりにより接続されている。また、ペダル装置と車両出力装置の間は通信経路111を介して通信により情報が伝達される。ペダル装置への操作入力は電気的な信号として車両出力装置に伝えられ、車両出力装置は伝えられた信号情報に基づいて車両出力を行う。ペダル装置と車両出力装置は機械的接続を持たないため、ペダル装置のペダル位置、ペダル反力の制御は、車両出力装置の車両出力の制御と独立して行うことが出来る。
【0020】
ここで、ペダル装置1の詳細について説明する。
【0021】
ペダル装置1はアクチュエータ4を備えており、アクチュエータ4は電気的に制御可能である。アクチュエータ4は例えば電動機、あるいはモータであり、アクチュエータ4に電力を供給するかあるいは電流を流すと、回転軸9周りに部材2が回転するかあるいは回転方向の力が発生する。アクチュエータ4は操作入力演算装置8によって制御され、アクチュエータ4を制御することによってペダル位置、ペダル速度、ペダル反力を任意に変更することが出来る。また、操作入力演算装置8は車両出力装置30,40,50,60,70,80に車両出力指令を伝達し、操作入力に応じた車両出力を行うようにする。ペダル装置1は、足で踏み込む作用点となる操作入力部3を備えている。
【0022】
ペダル装置1は操作情報検出手段11を備えている。操作情報検出手段11は操作量検出手段12と操作力検出手段6を含んでいる。操作量検出手段12は例えば5の様な形態を取り、操作量あるいはペダル位置を検出する。操作量検出手段12が検出する操作量あるいはペダル位置は、回転軸9周りに部材2が回転した量であっても良いし、操作入力部3が移動あるいはストロークした量であっても良い。また、場合によって操作速度あるいはペダル速度を検出しても良いし、操作量あるいはペダル位置に基づいて演算を行うことにより操作速度あるいはペダル速度の検出を行っても良い。
【0023】
操作力検出手段6は操作力あるいはペダル踏力を検出し、同時に操作反力あるいはペダル反力を検出する。ここで、操作力検出手段6は力を検出する手段であるため、操作力と操作反力を同じものとして検出する。操作力検出手段6が検出する力は、回転軸9周りに部材2を回転させるために加えられた力であっても良いし、操作入力部3を移動あるいはストロークさせるために加えられた力で合っても良い。
【0024】
操作入力演算装置8は、操作情報検出手段11によって検出された操作情報に基づいてアクチュエータ4を制御し、操作情報検出手段11によって検出された操作情報に基づいて、ペダル位置、ペダル速度あるいはペダル反力を変更する。また、操作入力演算装置8は、操作情報検出手段11によって検出された操作情報に基づいて、車両出力指令を決定し、決定した車両出力指令を通信経路111を介して車両出力装置に伝達する。
【0025】
車両出力装置30,40,50,60は、電気的に制御可能な制動出力装置である。制動出力装置による車両出力は車両の減速度あるいは制動力であり、制動出力装置は伝達された車両出力指令に基づいて車両に制動力を発生させ、車両を減速させる。従って、制動出力装置へ伝達される車両出力指令は車両の減速度あるいは制動力であっても良い。
【0026】
ここで、制動出力装置は例えばキャリパであり、ロータを押しつけるピストンの推力を電気的に制御可能な電動ブレーキであっても良い。制動出力装置が電動ブレーキである場合、電気的な力を発生させるアクチュエータを備えており、アクチュエータによって発生する力が減速器など機械的な構成を介してピストンの推力に変換される機構であり、ピストン推力を制御することによって車両の制動力を制御することが出来る機構であっても良い。
【0027】
また、制動出力装置は例えばキャリパであり、ロータを押しつけるピストンの推力を油圧によって発生させ、油圧を電気的に制御可能な電動油圧ブレーキであっても良い。制動出力装置が電動油圧ブレーキである場合、電気的な力を発生させるアクチュエータを備えており、アクチュエータによって油圧を変化させることが出来る機構であり、油圧を制御することによって車両の制動力を制御することが出来る機構であっても良い。
【0028】
従って、制動出力装置へ伝達される車両出力指令は電動ブレーキの推力で合っても良いし、あるいは電動油圧ブレーキの油圧であっても良い。
【0029】
ここで、制動出力装置30の詳細について説明する。制動出力装置40,50,60は制動出力装置30に相似した構造となっている。例えば、制動出力装置30はキャリパ31の発生する制動力をアクチュエータ33で制御する。アクチュエータ33は車両出力演算装置32で制御される。制御出力装置の状態は制動出力装置状態センサ35で検出することが出来る。車両出力装置演算装置32は制御出力装置の状態に応じてアクチュエータ33を制御する。車両出力装置演算装置32は必要に応じて制御出力装置の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。制御出力装置の状態には、電動ブレーキで発生している推力あるいは電動油圧ブレーキで発生している油圧が含まれていても良い。
【0030】
車両出力装置70,80は電気的に制御可能な駆動出力装置である。駆動出力装置による車両出力は車両の速度あるいは加速度あるいは駆動力である。駆動出力装置は伝達された車両出力指令に基づいて車両に駆動力を発生させ、車両を加速させる。従って、駆動出力装置へ伝達される車両出力指令は車両の速度あるいは加速度あるいは駆動力であっても良い。
【0031】
車両の駆動出力装置としては一般的に70のようなエンジンの構成を取る事が多い。しかし、ハイブリッド車や電気自動車あるいは電動四駆車などでは駆動出力装置に80のような電動機の構成を用いたりエンジンと電動機を組み合わせた構成を用いたりする。
【0032】
ここで、駆動出力装置70の詳細について説明する。駆動出力装置70はエンジンであり、例えば、ガソリンあるいは軽油を燃料として車両を駆動する機構である。駆動出力装置70は伝達された車両出力指令及び、駆動出力装置の状態に応じてアクチュエータ72あるいは点火プラグ73を制御しエンジン71に車両出力を生成させる。駆動出力装置の状態は駆動出力装置状態センサ75によって検出される。アクチュエータ72は車両出力演算装置74によって制御される。車両出力演算装置74は必要に応じて駆動出力装置の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。駆動出力装置の状態にはエンジン71の駆動力あるいは回転数が含まれていても良い。
【0033】
ここで、駆動出力装置80の詳細について説明する。駆動出力装置80は例えば電動機であり、電力を供給したり電流を流したりする事によって車両出力を生成する。例えば、駆動出力装置80はアクチュエータ83とアクチュエータを制御するためのセンサ85を備えており、車両出力演算装置84によって制御される。車両出力演算装置84は必要に応じて駆動出力装置80の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。
【0034】
ここで、実際には車両出力指令と車両出力は必ずしも完全には一致しない場合がある。しかし、車両出力装置がどの程度忠実に車両出力指令通りの車両出力を出力することが出来るかは本発明における本質的な要因とならない。そのため、以下の説明では車両出力は車両出力指令と等しくなることを前提とする。すなわち、本発明において車両出力は、車両出力指令と置き換えても良く、踏力によって車両出力を出力することはすなわち踏力によって車両出力指令を出力すると同義である。さらに、図面による説明においても車両出力の軸は本質的に車両出力指令の軸と等価であり、車両出力の代わりに車両出力指令を用いても良い。
【0035】
通信経路111は、ペダル装置と車両出力装置の間を接続している電気信号による情報経路であり、物理的には電線で構成されている。ペダル装置と車両出力装置は空間的に離れた場所に設置されている場合が多く、その間の情報は一般的に時分割多重通信方式の電気信号を用い、通信経路111を介してやりとりされる。通信経路111に用いられる電気信号の形式はシリアル通信でも良いし、CANやFlaxRay、LAN等の多重通信でも良い。
【0036】
図3は、操作入力演算装置と車両出力演算装置と通信経路の構成を示している。図3(a)は通信経路が1つであり、車両出力装置151〜154を一つの車両出力演算装置150で制御している。例えば、ABS装置や横滑り防止装置のように油圧を制御する装置が一つだけであり各キャリパには油圧を伝達し、操作入力演算装置8との電気的な通信は一つの通信経路を介して行うような構成であっても良い。
【0037】
図3(b)は通信経路が2つであり、車両出力装置156〜160を複数の車両出力演算装置155,158で制御している。例えば、車両の前輪と後輪で別系統の油圧システムとなっている場合、油圧を制御する装置は二つとなり、ペダル装置との電気的な通信を行う経路も二つ必要となる。系統が二つになることにより、信頼性の向上を図ることが出来ると共に、系統別の車両出力を行うことで車両運動性能の向上を図ることが出来る。
【0038】
図3(c)の通信経路は1つであるが、車両出力装置165〜168をそれぞれ別の車両出力演算装置161〜164で制御している。例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着している場合、各輪に車両出力を制御する装置が備えられ、ペダル装置と通信を行っている場合が考えられる。車両の四輪全てが独立に車両出力を制御する事により、より高いレベルで車両運動性能の向上を図ることが出来る。
【0039】
図3(d)は通信経路が2つであり、車両出力装置173〜176をそれぞれ別の車両出力装置169〜172で制御している。例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着している場合、各輪に車両出力を制御する装置が備えられている場合に、前右輪と後左輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行い、前左輪と後右輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行う構成であっても良い。また、例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着している場合、各輪に車両出力を制御する装置が備えられている場合に、前二輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行い、後二輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行う構成であっても良い。通信経路が二重になることにより、片側の通信経路に障害や故障が発生した場合においても、もう片側の通信経路に属する車両出力装置が作動するため、車両全体としての信頼性の向上を図ることが出来る。
【0040】
図4は、ペダル装置の一例を示している。図4(a)はペダル装置を車両に取り付けた時に運転席から見た場合を正面とした時の正面から見た図であり、図4(b)はペダル装置を側面から見た図である。
【0041】
図4のペダル装置は、アクチュエータ201を備えている。アクチュエータ201は電動機あるいはモータであり、電力を供給したり電流を流したりすることによって回転したり、回転方向の力を発生させたりする。アクチュエータ201はDCモータであっても良いし、DCブラシレスモータであっても良いし、AC誘導モータであっても良いし、AC同期モータであっても良い。
【0042】
また、図4のペダル装置は減速器202を備えている。減速器202は歯車によるものであっても良いし、遊星ギアによるものであっても良いし、差動減速器によるものであっても良い。
【0043】
また、図4のペダル装置はペダルスイッチ203を備えている。ペダルスイッチ203は、ペダルが踏まれている時と踏まれていない時を判別することが出来るスイッチである。
【0044】
また、図4のペダル装置はペダルストロークセンサ204,205を備えている。ペダルストロークセンサ204,205は、操作量としてペダル位置あるいはペダルストロークを検出することが出来る。ペダルストロークセンサを二つ備えていることにより、操作量検出の精度を上げることが出来、一方の故障に対する耐性を得ることによる信頼性の向上が可能になる。
【0045】
図4のペダル装置は、原点位置ストッパ206を備えている。原点位置とは運転者がペダルを踏んでいない時のペダル位置、あるいはペダル装置に操作力あるいはペダル踏力がかかっていないかほとんどかかっていない時のペダル位置である。ここで、原点位置にペダルがある時、ペダル位置は0であると言うことが出来る。原点位置にペダルがあるかどうかは、ペダルスイッチ203で判断しても良い。また、逆に原点位置にペダルがある場合、ペダルは踏み込まれていないと判断しても良い。
【0046】
部材207は、図4(b)において、原点位置ストッパ206に当たる所まで左側へ移動することが可能である。図4(b)で見て左側への移動、すなわち原点位置へ移動する方向を、運転席方向あるいは手前方向あるいは戻し方向あるいは放し方向と定義する。また、図4(b)で見て右側への移動、すなわちペダルを踏み込んだ時に移動する方向を、奥方向あるいは踏み方向と定義する。
【0047】
図4のペダル装置は、ペダル端208を備えている。ペダル端208は運転者が踏み込む部分であり、ペダル装置1の入力部3に相当する。ペダル端208にペダル踏力がかかるとペダルがストロークし、例えば209のようにペダル位置が移動する。ペダル位置は奥方向へ行くほど大きな値を取り、手前方向へ行くほど小さな値を取ると定義し、ペダルを手前側から奥側に移動させる時、ペダルを踏むあるいは踏み込むと定義する。また、ペダルを奥側から手前側に移動させる時、ペダルを放すあるいは戻すと定義する。さらに、ペダル位置を変更しないようにペダルを維持している時、ペダルを保持すると定義する。一般的なペダル装置において、最大限にストロークさせた時のペダル位置は0.03〜0.1m程度である。
【0048】
図5は、ペダル装置の一例を模式的に示したものであり、図6は図5のペダル装置及び関連する手段について模式的に示したブロック図である。図5,6のペダル装置は、パッシブ反力手段221を備えている。パッシブ反力手段221はバネによる機構であったりストロークシミュレータのような粘性をもった油圧機構であったりしても良い。
【0049】
ここで、アクチュエータ4によって生成されるペダル反力をアクティブ反力と呼び、パッシブ反力手段221によって生成されるペダル反力をパッシブ反力と呼ぶ。ペダル装置1はアクティブ反力とパッシブ反力を合わせたペダル反力を生成することが出来る。パッシブ反力手段221によって生成されるパッシブ反力は、パッシブ反力手段221の機械的特性によって定まり、電気的に制御することが出来ないため、アクティブ反力がパッシブ反力に加えられるか減じられることにより、ペダル反力を生成する。
【0050】
図7は、パッシブ反力及びアクティブ反力及びペダル反力の関係を表した一例である。301はパッシブ反力を示しており、電気的な要素によって変化しない。アクティブ反力は電気的に任意に変化することが出来るため、ペダル反力を例えば302から303の範囲で変化させることが出来る。パッシブ反力301はペダル位置が大きくなればなるほど大きくなるが、アクティブ反力で変化させることの出来るペダル反力の幅はペダル位置に関わらず一定である。パッシブ反力301を中心としてアクティブ反力を加えたペダル反力は302から303の間の任意の値を取れる。そのため、例えば304のようなペダル反力を実現することが出来る。パッシブ反力手段を用いることによってアクチュエータ4の容量あるいは大きさあるいは消費電力を小さくすることが出来る。また、アクチュエータ4が十分なペダル反力を生成出来る場合は、パッシブ反力手段221を用いず、アクティブ反力だけでペダル装置を構成しても良い。
【0051】
図5,6のペダル装置は、アクチュエータ4の回転角度あるいは回転位相を検出する事の出来るアクチュエータ制御用センサ222を備えている。センサ222は光あるいは磁気を用いたエンコーダであっても良いし、レゾルバであっても良い。
【0052】
また、図5,6のペダル装置は、回転軸9に対して部材2が回転した角度を検出することが出来るペダル回転角センサ223を備えている。センサ223は可変抵抗を用いたポテンショメータあるいはロータリエンコーダであっても良いし、回転スリットを用いて光ピックアップで検知する方式であっても良いし、磁気素子を用いて、磁気の変化を検知する方式であっても良い。
【0053】
また、図5,6のペダル装置は、部材2あるいはペダル端208がストロークした量あるいはペダル位置を検出することが出来るペダルストロークセンサ224を備えている。センサ224は可変抵抗を用いたポテンショメータであっても良いし、磁気回路を用いて磁気抵抗の変化として変位幅を検出する方法であっても良い。
【0054】
ここで、センサ222,223,224の内、少なくとも一つを用いてペダル位置あるいはペダル速度を検出することが出来、操作量検出手段12にはセンサ222,223,224の内少なくとも一つが含まれる。
【0055】
図5,6のペダル装置は、ペダル踏力センサ227を備えている。センサ227は、運転者がペダルを踏み込むペダル踏力あるいはペダルが運転者の足を押し返すペダル反力を検出することが出来る。また、図5,6のペダル装置は、ロッド力センサ228を備えている。センサ228は、部材2とパッシブ反力手段221の間に働く力を検出することが出来る。センサ227,228は例えば歪みゲージの抵抗変化を用いて力を検出する構成であっても良い。ここで、センサ227,228の内少なくとも一つを用いて操作力あるいはペダル踏力を検出することが出来、操作力検出手段6にはセンサ227,228の内少なくとも一つが含まれる。
【0056】
また、 図5,6のペダル装置はペダルスイッチ203を備えている。ここで、ペダル装置1がブレーキペダルである場合、ペダルスイッチ203はブレーキスイッチでも良いし、ペダル装置1がアクセルペダルである場合、ペダルスイッチ203はアクセルスイッチでも良い。
【0057】
ここで、ペダル装置1は、車両情報検出手段241を用いて車両情報を検出する。車両情報には、車輪速、車速、加速度、シフトポジション、パーキングブレーキの状態などが含まれる。車両情報検出手段241には、車輪速センサ251や車速センサ252や加速度センサ253やシフトポジションスイッチ256やパーキングブレーキスイッチ257を含んでいる。シフトポジションスイッチは、シフトポジションセンサでも良い。
【0058】
ここで、車輪速センサ251は、車軸に取り付けた磁気回路を用いて車輪の回転数を検出する方式であったり、スリットを入れた円盤を車軸に取り付け光によって車輪の回転数を検出する方式であったりしても良い。また、車速センサ252は直接車両の速度を検出する方式でも良いし、車輪速センサ251で得られた車輪速を元に車速を求めて検出する方式でも良い。加速度センサ253は、歪みゲージを使用して車両にかかる加速度やヨーレートを検出する方式でも良い。シフトポジションスイッチ256は、シフトポジションがどこであるかを検出する。シフトポジションは例えば、Rレンジ、Dレンジ、Nレンジ、Pレンジを示すものとしても良い。パーキングブレーキスイッチはパーキングブレーキの状態を検出するためのスイッチで、パーキングブレーキが作動しているかどうかを識別することが出来る。
【0059】
ペダル装置1は、環境情報検出手段242を用いて環境情報を検出する。環境情報には、他車両や歩行者や障害物との相対関係や、走行路の傾斜が含まれる。ここで、他車両や歩行者や障害物との相対関係には、相対距離、相対速度、衝突時間が含まれる。衝突時間は他車両や歩行者や障害物との衝突までの予想される時間であり、衝突時間=相対距離/相対速度で表される。
【0060】
環境情報検出手段242には外界認識センサ260や傾斜センサ263が含まれる。外界認識センサ260は、赤外線レーザーあるいはミリ波を用いて他車両や障害物との相対距離あるいは相対速度を検出するレーダであっても良い。また、外界認識センサ260は、超音波や光学式カメラを用いて他車両や障害物との相対距離あるいは相対速度を検出する方式であっても良い。
【0061】
傾斜センサ263は、車両が走行している走行路の傾斜を検出する。ここで、走行路が平坦なときの傾斜は0度とし、下り坂での傾斜を負、上り坂での傾斜を正とする。傾斜センサは、例えば加速度センサを用いたり重力を利用して走行路の傾斜を求めたりするものであっても良い。また、走行中に発生している駆動力あるいは制動力と走行している車両の運動状態から演算によって走行路の傾斜を求めるものであっても良い。
【0062】
操作入力演算装置8は、操作情報あるいは車両情報あるいは環境情報を用いて、操作入力制御手段10を制御して操作入力部208に発生するペダル反力を変化させたり、ペダル位置やペダル速度を変化させたりすると共に、操作情報あるいは車両情報あるいは環境情報を用いて、車両出力指令を車両出力装置121に伝達し車両出力を発生させる。
【0063】
図8はペダル装置の応用を示す模式図である。図8(a)は回転軸401に対して操作入力部402が下になっている場合のペダル装置であり、図8(b)は回転軸404に対して操作入力部403が上になっている場合のペダル装置である。また、図8(c)は回転軸を持っておらず、操作入力部405への操作入力に対してペダル装置が直動する場合であり、図8(d)は回転軸406とアクチュエータ407が別になっているペダル装置である。アクチュエータ407の回転出力は、回転直動変換機構408により直動方向の出力に変換され部材409に作用する事によって、ペダル端410を移動させたり操作反力を発生させたりする。ここで、回転直動変換手段としては例えばウォームギアを用いてもよいし、ボールねじを用いてもよい。
【0064】
また、図8(e)はアクチュエータ411が回転電動機ではなく、直動方向に変位したり力を出したりする場合のペダル装置である。アクチュエータ411の出力が部材412に作用することによって、ペダル位置を移動させたり操作反力を発生させたりする。アクチュエータ411は例えばソレノイドであっても良い。さらに、図8(f)はパッシブ反力手段414が回転軸413に取り付けられている場合のペダル装置であり、図8(g)はパッシブ反力手段415が回転軸付近に取り付けられている場合のペダル装置である。
【0065】
図9はペダル反力の例を示した図である。図9(a)の451は剛性反力と呼び、ペダル位置に応じて大きさの代わる反力であり、ペダル位置が大きくなればなるほど大きな値となる。ここで、同じペダル位置に対して比較的剛性反力が大きいペダルは堅いペダルであると言うことが出来、比較的剛性反力が小さいペダルは柔らかいペダルであると言うことが出来る。
【0066】
図9(b)の453は粘性反力と呼び、ペダル速度に応じて大きさの代わる反力であり、ペダル速度が大きくなればなるほど大きな値となる。ここで、例えばペダルを踏み込んだ時のペダル速度が図9(c)454のようであった場合、粘性反力は図9(d)455のようになる。ペダル反力は剛性反力と粘性反力を合計したものであり、図9(a)の452のように示される。
【0067】
ここで、ペダル反力をF、ペダル位置をxとすると、ペダル速度はdx/dtで示され、また、ペダル位置に依存する剛性反力をFk(x)、ペダル速度に依存する粘性反力をFd(dx/dt)とすると式(1)あるいは式(2)のようになる。
【0068】
F=Fk(x)+Fd(dx/dt) (1)
F=Fk(x)+ Kd×dx/dt (2)
従って、Fd(dx/dt)は式(3)のようになり、Kdはあらかじめ定められた定数である。
Fd(dx/dt)=Kd×dx/dt (3)
【0069】
ここで、車両出力は例えば図10のように設定することが出来る。車両出力は操作入力と相関を持っていなければならず、ペダル位置に応じて車両出力を発生させても良いし、ペダル踏力あるいはペダル反力に応じて車両出力を発生させても良い。ペダル位置に基づいて車両出力を設定する場合、図10(a)のように下に凸になるように車両出力を設定する。また、ペダル踏力に基づいて車両出力を設定する場合、図10(b)のように上に凸になるように車両出力を設定する。
【0070】
運転者は操作量と操作反力を感じながら車両を操作しているため、操作量と操作反力と車両出力の関係によって、運転しやすさ(操作性)や疲労しにくさや運転の楽しさ(快適性)が変化する。そのため、ペダル装置は操作入力制御手段10を用いて好適な関係を持つペダル位置、ペダル反力、車両出力を実現する。
【0071】
ここで、運転者がペダルを踏み込もうとしている場合を踏み動作、運転者がペダルを放そうとしている場合を放し動作とすると、ペダル装置は踏み動作及び放し動作に応じて二種類の反力を実現する。また、ペダル装置を操作する際にはペダルを踏み込んだままほとんど同じ踏み込み量を維持し、一定の駆動力あるいは制動力を継続しようとする動作が行われることがある。これを保持動作とすると、踏み動作あるいは放し動作の他にペダル装置は、保持動作における反力の実現も行う。
【0072】
ペダル反力の制御目標としてペダル装置は図11のように二種類の反力曲線を用いる。増加反力曲線501は主に運転者がペダルを踏み込もうとしている時に発生するペダル反力とペダル位置の関係を示した曲線である。減少反力曲線502は主に運転者がペダルを放そうとしているときに発生するペダル反力とペダル位置の関係を示した曲線である。増加反力曲線501は運転者が踏み動作を行おうとしているときの剛性反力と等価であるとしても良いし、減少反力曲線502は運転者が放し動作を行おうとしているときの剛性反力と等価であるとしても良い。
【0073】
運転者のペダル踏力はペダル反力とほぼ等価であるが、アクチュエータの応答性や動力が必要なペダル反力を実現し切れていなかったり、ペダル装置の機構的な摩擦などによったりして、結果的に制御目標とするペダル位置とペダル反力の関係を実現することが出来ず、制御目標とするペダル反力と実際のペダル反力は必ずしも一致していない。ペダル踏力は実際のペダル反力とほぼ等価となるため、制御目標とするペダル反力と実際のペダル反力が一致していない場合、想定通りの力の釣り合いが保たれなくなり、ペダルが運転者の意図通りでない動きをする可能性がある。例えば、減少反力曲線以下のペダル踏力でありながら、実際のペダル反力がそれよりも小さい場合ペダル位置は踏み方向へ変動する。しかし、減少反力曲線以下のペダル踏力であるならば運転者は放し動作を意図していると判断するべきであり、ペダル位置の変動方向にかかわらず、ペダル装置は放し方向に則したペダル反力あるいは減少反力曲線502に従った反力を実現しなければならない。
【0074】
そのため、踏み動作、放し動作及び保持動作の判定はペダル踏力と増加反力曲線と減少反力曲線を用いて行う。
【0075】
図12に踏み動作、放し動作及び保持動作の判定を行う論理フローの例を示す。例えばS511で、ペダル踏力が増加反力曲線以上であれば踏み動作であると判定し、S512でペダル踏力が減少反力曲線以下であれば放し動作であると判定する。また、ペダル踏力が増加反力曲線より小さく減少反力曲線よりも大きい場合は保持動作であると判定する。
【0076】
ここで、ペダル踏力と増加反力曲線あるいは減少反力曲線の大小を比較するためには例えば、その時点でのペダルの踏み込み量あるいはペダル位置が図11の505にある場合、例えばペダル踏力が閾値503以上であれば踏み動作であり、ペダル踏力が閾値504以下であれば放し動作中であり、ペダル踏力が閾値503と504の間にあれば保持動作中であるとしても良い。
【0077】
ペダル装置は、踏み動作か放し動作かによって発生する反力を変更する。例えば踏み動作であれば、図13(a)の531のような反力を発生し、放し動作であれば532のような反力を発生しても良い。ここで、531には踏み動作を判定するための閾値である501と同じものを用いても良いし、501よりも大きな反力である533を用いても良い。501よりも533が大きくなる要因としては粘性反力などがあげられる。また、532には放し動作を判定するための閾値である502と同じ値を用いても良いし、502よりも小さな反力である534を用いても良い。502よりも534が小さくなる要因としては粘性反力などがあげられる。
【0078】
さらに、車両の運動特性も、踏み動作か放し動作かによって変更する。例えば、車両出力を図13(b)(c)のように設定しても良い。踏み動作では、車両出力を535あるいは537のように発生させ、放し動作では、車両出力を536あるいは538のように発生させても良い。車両出力を踏み動作か放し動作かによって変更することにより、踏み動作に対しては車両出力の立ち上がりの応答がよくなり、放し動作に対しては車両出力の立ち下がりの応答が良くなるので、運転者が車両を操作しやすい運転特性を実現することが出来る。
【0079】
また、ペダル反力を踏み動作か放し動作かによって変更することにより、踏み動作に対してはしっかりとした踏み応えを実現すると共に、保持動作あるいは放し動作においてはある程度小さいペダル踏力での操作を可能とし、操作しやすく疲れにくいペダル装置を実現することが出来る。例えば、踏み込みに対しては堅い感触を実現しながら、ゆっくり放すような動作に対して大きなペダル踏力を出し続ける必要のないペダル装置を実現することが出来る。
【0080】
さらに、運転者がペダル装置を操作する際にはペダル踏力を増減させながらペダル位置を変化させるが、一般的にペダル踏力を一定に保ったままペダルを踏み続けることは容易でなく、特に増加反力曲線と減少反力曲線の差がほとんど無い場合、ペダルを踏み続けたり、なめらかな踏み動作や放し動作を行ったりすることが難しくなる。そのため、増加反力曲線と減少反力曲線あるいは、踏み動作のペダル反力と放し動作のペダル反力の間の保持動作におけるペダル位置とペダル反力の関係が重要になる。
【0081】
ここで、一般的に、保持動作は運転者がペダルを踏み続けようとしている場合である。従って、保持動作の場合は例えば図14(a)(b)のように、ペダル踏力に関わらずペダル位置を変更しないとしても良い。
【0082】
ここで556は、ペダル反力551の曲線に沿ってペダル位置555まで踏み込んだ後、ペダル踏力を減じた場合である。ペダル反力が556になった後、ペダル踏力が553を超えた場合は再び551の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークし、ペダル踏力が554を下回った場合552の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークする。566は、ペダル反力562の曲線に沿ってペダル位置565までペダルを放した後、ペダル踏力を増加させた場合である。ペダル反力が566になった後、ペダル踏力が563を下回った場合は再び561の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークし、ペダル踏力が564を超えた場合562の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークする。
【0083】
ペダル踏力が553と554あるいは563と564の間にある場合、ペダル位置は555あるいは565で変化しないので、運転者はある程度ペダル踏力を変動させても同じペダル位置を維持したままペダルを踏み続けることが出来る。
【0084】
また、保持動作は運転者が踏み動作と放し動作を切り替えている状態でもある。そのため、踏み動作と放し動作におけるペダル反力の設定によっては、保持動作におけるペダル位置が全く変化しないとペダル位置の微妙な調整が難しかったり、踏み動作と放し動作を素早く切り替えられなかったりする場合がある。
【0085】
そこで、例えば図14(c)(d)のように、保持動作においてはペダル位置とペダル反力の関係を斜めにし、ペダル踏力に応じてペダル位置をある程度ストロークさせても良い。
【0086】
ここで、576は、ペダル反力571の曲線に沿ってペダル位置575まで踏み込んだ後、ペダル踏力を減じた場合である。ペダル反力が576になった後、ペダル踏力が573を超えた場合は再び571の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークし、ペダル踏力が574を下回った場合572の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークする。586は、ペダル反力582の曲線に沿ってペダル位置585までペダルを放した後、ペダル踏力を増加させた場合である。ペダル反力が586になった後、ペダル踏力が583を下回った場合は再び581の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークし、ペダル踏力が584を超えた場合582の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークする。
【0087】
ペダル踏力が573と574あるいは583と584の間にある場合、ペダル位置は575と577あるいは585と587の間で僅かに変化するので、運転者はほとんど同じペダル位置を維持したまま、ペダル踏力を変動させることにより微妙なペダル位置を変化させることが出来る。
【0088】
図14の保持動作におけるペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、車両全体の特性や主とする運転者、あるいはペダル反力や車両出力の特性によって様々に設定することが可能である。ここで、556,566のようにペダル踏力が変化してもペダル位置が変わらないときの傾きは無限大であると言うことが出来る。
【0089】
傾きは一定である必要はなく、例えば図15のようにペダル位置やペダル踏力に応じて変化しても良い。例えば601は、ペダル位置に対して常に一定の傾きを持つ場合を示している。ここで、一定の傾きとは556,566のように無限大であっても良い。また、576, 586のような傾きを持つ場合、保持中のペダルの操作しやすさやフィーリングを確保するためには、傾きは6000N/m以上であることが望ましい。
【0090】
また、602のようにペダル位置に応じて傾きを変化させても良い。ここで、運転者のペダル操作は一般的に手前側での方が頻繁であるため、手前側での踏み動作と放し動作の切り替えがはっきりするような傾きを設定することが望ましい。そのため、ペダル位置に応じて傾きを変化させる場合、手前側の傾きの方が奥側の傾きよりも大きいことが望ましい。
【0091】
また、例えば603のように一番手前の傾きは無限大であり奥に行くほど傾きが小さくなるように設定しても良い。
【0092】
ここで、踏み動作、保持動作、放し動作をなめらかに行うためには、保持動作における傾きは、踏み動作あるいは放し動作におけるペダル位置に対するペダル反力の傾きよりも必ず大きくなければならない。そのため、図15(a)において、設定出来る傾きの下限604が存在し、ストローク可能なペダル位置の範囲において保持動作における傾きは下限604を超えていなければならない。
【0093】
また、図15(b)はペダル踏力に対する傾きの例を示している。ここで、621はペダル踏力に対して常に一定の傾きを持つ場合を示している。ここで、一定の傾きとは556,566のように無限大であっても良い。また、576,586のような傾きを持つ場合、保持中のペダルの操作しやすさやフィーリングを確保するためには、傾きは6000N/m以上であることが望ましい。
【0094】
また、622のようにペダル踏力に応じて傾きを変化させても良い。ここで、放し動作、保持動作、放し動作を運転者が違和感なく切り替えるためには、ペダル踏力が大きいときの傾きの方がペダル踏力が小さいときの傾きよりも大きいことが望ましい。
【0095】
また、例えば623のように、閾値627での傾きは無限大であり、ペダル踏力が小さいほど傾きが小さくなるように設定しても良い。ここで、閾値627は踏み動作との境界になるペダル踏力であり、503,553,563,573,583に相当する。また、閾値626は放し動作との境界になるペダル踏力であり、504,554,564,574,584に相当する。
【0096】
また、閾値624を放し動作におけるペダル位置に対するペダル反力の傾き、625を踏み動作におけるペダル位置に対するペダル反力の傾きとする。
【0097】
ここで、踏み動作、保持動作、放し動作をなめらかに行うためには、保持動作における傾きは、閾値626上では閾値624よりも必ず大きくなければならず、閾値627上では閾値625よりも必ず大きくならなければならない。
【0098】
アクチュエータを持つペダル装置によれば、ペダル位置とペダル反力の関係を電気的に制御することにより、走行中に車両情報や環境情報に応じてペダル位置とペダル反力の関係を変化させることが出来る。また、バイワイヤシステムであればペダル位置あるいはペダル反力と車両出力の関係も走行中の車両情報や環境情報に応じて変化させることが出来る。
【0099】
例えば、車両が高速で走行している場合は早い応答性とある程度しっかりした踏み応えを持ったペダル装置が好まれる傾向があり、スポーツカーなどの一部には常時踏み込みに対して堅いペダルとなっており、車両出力も常時比較的大きくなっているものがある。また、低速で走行している場合ではペダル装置には楽に操作出来、少ないペダル踏力でも安定した車両運転が可能になるように柔らかいペダルが好まれる傾向があり、ファミリーカーなどの一部には常時踏み込みに対して柔らかいペダルとなっており、車両出力もスポーツカーの一部に比べると小さくなっているものがある。
【0100】
すなわち、従来の車両では主に対象とする運転者や使用状況に狙いを絞り、ペダル位置、ペダル反力、車両出力を設定する必要があったが、アクチュエータを持つペダル装置とバイワイヤシステムによれば、リアルタイムで特性を変えることにより、その時点での状況に則した好適なペダル装置を実現することが可能である。
【0101】
ここで、例えば減少反力曲線が小さい場合、保持動作を行うペダル反力あるいはペダル踏力の範囲が大きくなり、ペダルを踏み込んだままペダル位置を維持しておくためのペダル踏力やゆっくりペダルを放してペダル位置を調整するためのペダル踏力が小さくなるため、ペダル位置や車両出力の細かい操作が容易になる。また、減少反力曲線が大きい場合、保持動作を行うペダル反力あるいはペダル踏力の範囲が小さくなり、ペダル踏力の減少に対してペダル位置が戻ってくる応答性が向上する。
【0102】
そのため、細かいペダル位置や車両出力の操作が必要な状況や、長時間ペダルを踏み続ける必要がある状況においては減少反力曲線を小さくし、放し動作におけるペダル反力を小さくして、保持動作を行うペダル踏力の範囲を大きくすることが望ましい。また、ペダル踏力の変化に対してペダル位置や車両出力の高い応答性が必要な状況においては、減少反力曲線を大きくし、放し動作におけるペダル反力を大きくして、保持動作を行うペダル踏力の範囲を小さくすることが望ましい。
【0103】
減少反力曲線あるいは放し動作におけるペダル反力を変更することによって、踏み込みに対するペダルの堅さを変化させず、運転者に違和感を与えなかったり、急制動時の車両の運動特性に影響を与えずペダル特性や運転フィーリングを変化させたりすることが出来る。また、反力曲線あるいはペダル反力の変更に伴って、放し動作における車両出力を変更することも可能である。
【0104】
ここで、保持動作中はペダル位置がほとんど変わらないが、踏み動作における車両出力と放し動作における車両出力の間の範囲では車両出力を操作することが出来る。従って、踏み動作における車両出力と放し動作における車両出力の差が大きい場合、保持動作中であっても、運転者のペダル操作に対してある程度高い車両出力の応答を得ることが出来る反面、保持動作中においても車両出力が安定しづらくなる可能性がある。特に、放し動作における車両出力を非常に小さくすると、踏み動作から放し動作を連続して行った場合のペダル操作に対する車両出力の減少を高速に応答させることが出来るが、踏み動作から保持動作を行った場合に一定の車両出力の維持が難しくなる可能性がある。
【0105】
従って、車両情報や環境情報によるパラメータに応じて車両出力を変化させることにより、状況に応じた車両の運動特性や運転フィーリングを実現することが望ましい。例えば、図16(a)に示すように、パラメータによって減少反力曲線652を小さくし、653,654,655などとすることが出来る。反力曲線を小さくする割合は、パラメータに応じて連続的あるいは段階的に変化するとしても良い。減少反力曲線652を小さくした場合、図16(b)に示すように、放し動作におけるペダル反力662も、減少反力曲線に対応して、例えば663,664,665のように変化させることが望ましい。さらに、車両出力672,682についても、例えば図16(c)に示す673,674,675、あるいは図16(d)に示す683,684,685のように変化させることが考えられる。ここで、ペダル反力あるいは車両出力はパラメータに応じて連続的あるいは段階的に変化するとしても良い。
【0106】
ここで、パラメータと減少反力曲線の変化率を図17に示す。変化率はパラメータに依存して変化し、減少反力曲線、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力は変化率をかけたものを用いる。そのため、パラメータに依存しないペダル装置では常に変化率が1であると言うことが出来る。また、一般的に減少反力曲線を小さくしすぎるとペダル操作しづらくなったり、運転フィーリングが悪くなったりするため、ある程度以下の変化率にはならないようにすることが望ましい。さらに、変化率は減少反力曲線が増加反力曲線以上にならず、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力が踏み動作におけるペダル反力あるいは車両出力以上にならない範囲にする必要がある。
【0107】
ここで、パラメータとして、例えば、車両の速度あるいは加速度を用いても良い。車両の速度あるいは加速度が大きいときは車両操作の応答性を高めるため変化率を大きくし、車両の速度あるいは加速度が小さいときは車両操作の安定性と操作性を高めるため変化率を小さくする。例えば、図17(a)に示す701,702では、パラメータが0の時、変化率が一番小さい。パラメータが0のときの変化率は、元々のペダルの反力の設定によって異なり、0〜1の間の任意の値を取る。ここで、閾値703は、低速走行と高速走行との境目であり、車両の種類や用途によって異なるが、20km/h〜100km/h程度であるとしてもよい。また、変化率は例えば702のように連続で変化しても良い。変化率が連続で変化することで運転者に違和感を与えにくくなる。
【0108】
また、車両の速度を用いない場合においても、例えば車両が走行しているかどうかによって変化率を変更しても良い。例えば車両が走行しているときは変化率を1として、車両が走行していないときは変化率を小さくしてもよく、たとえば、0.2〜0.7程度にしても良い。車両が停止しているときに減少反力曲線や、放し動作におけるペダル反力を小さくすることにより、停車状態を維持しておくためにペダルを踏み続けるのに必要なペダル踏力が小さくてすむため、下肢疲労軽減を図ることが出来る。
【0109】
車両が走行しているかどうかは、例えば車両の速度が0km/hである時に車両が走行していないとしても良いし、例えば、シフトポジションがPレンジであるときに車両が走行していないとしても良いし、パーキングブレーキが作動しているときは車両が走行していないとしても良い。また、駆動出力装置が駆動力を出していなかったり駆動部が回転していなかったりした場合に車両が走行していないとしても良い。
【0110】
また、パラメータとして、車両の走行路の傾斜を用いても良い。例えば走行路の傾斜に対して、図17(b)のような変化率を設定しても良い。
【0111】
ここで、閾値713よりも急な下り坂では、例えば、ブレーキをかけ続けたり、ブレーキを踏み込んだまま、ゆっくりペダルの踏み動作や放し動作をしたりする場合がある。そのため、711のように閾値713よりも走行路の傾斜が小さいときは、変化率を小さくして、ペダルの踏み込みを保持したり、小さい力で放し動作を行ったりすることが容易になるようにする事が望ましい。また、閾値718よりも急な登り坂では、アクセルを踏み続ける必要がある場合がある。そのため、716のように閾値718よりも傾斜が大きいときは、変化率を小さくして、ペダルの踏み込みを保持することが容易になるようにすることが望ましい。
【0112】
ここで、閾値713は例えば−5度程度としても良いし、例えばアクセルを踏まない状態でも重力により加速してしまう傾斜であるとしても良い。また、閾値718は+5度程度としても良いし、重力によってクリープ現象による駆動力が相殺されてしまう傾斜であるとしても良い。
【0113】
また、変化率の最小値は、ブレーキペダルの場合、運転者が傾斜によるペダルの変化を認識できる程度の値に設定する。例えば0.2〜0.7程度に設定してもよい。また、変化率の最大値はアクセルペダルの場合は、減少反力曲線が増加反力曲線以上にならず、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力が踏み動作におけるペダル反力あるいは車両出力以上にならない範囲で変化率を1より大きくする。元々のペダル反力の設定によって異なるが、例えば、変化率は1.0〜3.0程度に設定してもよい。変化率は、712あるいは715のようにパラメータに対して連続で変化しても良い。
【0114】
また、パラメータとして、先行車あるいは前方の障害物との相対関係を用いても良い。ここで、例えば相対関係には先行車あるいは前方の障害物との相対距離あるいは衝突時間を用いて、図17(c)の様に変化率設定しても良い。
【0115】
ここで、例えば、先行車あるいは前方の障害物との距離が近かったり、衝突までの時間が短かったりする場合は、強いブレーキをかける必要があったり、場合によってはその状態を維持しなければならなかったりする場合がある。そのため、721のように閾値723よりもパラメータが小さいときは、変化率を小さくして深い踏み込みでも保持動作を容易にすることが望ましい。また、先行車あるいは前方の障害物との距離が近かったり、衝突までの時間が短かったりする場合は、速やかにアクセルを放す必要があり、そのため、726のように閾値723よりもパラメータが大きいときは、変化率を大きくすることにより、ペダルが戻り易くすることが望ましい。ここで、閾値723は、走行している車両や周囲の環境によって異なるが、例えば、相対距離が10m〜100mであっても良いし、例えば衝突時間が0.1秒〜1.5秒であることであっても良い。
【0116】
また、図17(c)においてパラメータが0の時の変化率はブレーキペダルの場合、運転者が先行車あるいは前方の障害物との相対関係によるペダルの変化を認識できる程度の値に設定する。元々のペダル反力の設定によって異なるが、例えばパラメータが0の時の変化率を0.2〜0.7程度に設定してもよい。また、アクセルペダルの場合は、変化率を727のように1より大きく設定しても良い。変化率を1より大きくする場合、減少反力曲線が増加反力曲線以上にならず、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力が踏み動作におけるペダル反力あるいは車両出力以上にならない範囲とする必要がある。例えば閾値727は、元々のペダル反力の設定によって異なるが、例えば、1.0〜3.0程度に設定してもよい。変化率は722あるいは725のようにパラメータに対して連続で変化しても良い。
【実施例2】
【0117】
図18は実施例2を構成するシステムの模式図である。また、図19は本発明を構成するシステムのブロック図である。実施例1において説明された本発明の内、ペダル反力に関するものについては、図18に示される構成においても同様に適用することが出来る。
【0118】
1は運転者が車両を運転するために操作するペダル装置であり、アクチュエータ4を備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能である。また、ペダル装置1は操作入力部3に加えられた操作力あるいはペダル踏力に応じてペダル位置をストロークし、ペダル位置に応じたペダル反力を生成する。ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。
【0119】
また、805〜808は、車両に制動をかけ減速するための制動出力装置である。805〜808は油圧によってピストンをロータに押しつけ摩擦材によって車両に制動をかけ減速するための油圧キャリパである。ここで、ペダル装置と制動出力装置の間は機械的接続あるいは油圧配管を介して接続されており、ペダル装置と制動出力装置の間には電気的な信号のやりとりがない。ペダル装置への操作入力はプッシュロッド801を介して負圧ブースタ802で倍力され、マスタシリンダ803で油圧に変換される。マスタシリンダ803で生成された油圧は配管を介して油圧モジュール804に達し、油圧モジュール804で分配され油圧キャリパ805〜808に伝達される。
【0120】
実施例2においては、ペダル位置と制動力の関係は機械的な条件により決定されてしまうが、ペダル位置と反力及びペダル踏力と制動力の関係は、ペダル装置を電気的に制御することにより可変とすることが出来る。実施例1において説明された本発明の基本的な方式は、ペダル位置に対する制動力の関係が可変であることを必須としない。そのため、本発明の基本的な方式は実施例2に適用することが可能である。従って、バイワイヤ技術によらない従来の車両であっても、ペダル装置1を用いるだけで本発明の基本的な方式を適用しその主たる効果を享受することが可能である。
【実施例3】
【0121】
図20は実施例3を構成するシステムの模式図である。また、図21は本発明を構成するシステムのブロック図である。実施例1において説明された本発明の内、ペダル反力に関するものについては、図20に示される構成においても同様に適用することが出来る。
【0122】
1は運転者が車両を運転するために操作するペダル装置であり、アクチュエータ4を備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能である。また、ペダル装置1は操作入力部3に加えられた操作力あるいはペダル踏力に応じてペダル位置をストロークし、ペダル位置に応じたペダル反力を生成する。ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。
【0123】
また、911は車両に駆動をかけ加速するための駆動出力装置である。911はガソリンや軽油を燃料として車両を駆動し加速するためのエンジンである。ここで、ペダル装置と駆動出力装置の間は機械的接続あるいはアクセルワイヤを介して接続されており、ペダル装置と駆動出力装置の間には電気的な信号のやりとりがない。ペダル装置への操作入力は部材901に接続されたアクセルワイヤ902を介してスロットル912のスロットル開度を操作し、エンジン911はスロットル912のスロットル開度に応じて車両を駆動する。
【0124】
実施例3においては、ペダル位置と駆動力の関係は機械的な条件により決定されてしまうが、ペダル位置と反力及びペダル踏力と駆動力の関係は、ペダル装置を電気的に制御することにより可変とすることが出来る。実施例1において説明された本発明の基本的な方式はペダル位置に対する駆動力の関係が可変であることを必須としない。そのため、本発明の基本的な方式は実施例3に適用することが可能である。従って、バイワイヤ技術によらない従来の車両であっても、ペダル装置1を用いるだけで本発明の基本的な方式を適用しその主たる効果を享受することが可能である。
【0125】
以上説明したように、本発明によると、運転者に違和感を与えずに、車両情報や環境情報に応じたペダルや車両運動の特性を実現することにより、操作しやすく疲れにくい、運転フィーリングの良いペダル装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】実施例1の構成の一例を示すシステムの模式図である。
【図2】実施例1の構成の一例を示すシステムのブロック図である。
【図3】操作入力演算装置と車両出力演算装置と通信経路の構成の一例を示す模式図である。
【図4】ペダル装置の一例を示す模式図である。
【図5】ペダル装置の一例を示す模式図である。
【図6】ペダル装置の一例を示すブロック図である。
【図7】ペダル反力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図8】ペダル装置の応用を示す模式図である。
【図9】ペダル反力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図10】車両出力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図11】増加反力曲線と減少反力曲線の一例を示すグラフ図である。
【図12】踏み動作と放し動作と保持動作の判定方法の一例を示すフロー図である。
【図13】ペダル位置とペダル反力と車両出力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図14】保持動作におけるペダル位置とペダル反力(ペダル踏力)の関係の一例を示すグラフ図である。
【図15】ペダル位置に対するペダル反力(ペダル踏力)の傾きの特性の一例を示すグラフ図である。
【図16】ペダル位置とペダル反力と車両出力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図17】パラメータと変化率の関係の一例を示すグラフ図である。
【図18】実施例2の構成の一例を示すシステムの模式図である。
【図19】実施例2の構成の一例を示すシステムのブロック図である。
【図20】実施例3の構成の一例を示すシステムの模式図である。
【図21】実施例3の構成の一例を示すシステムのブロック図である。
【符号の説明】
【0127】
1 ペダル装置
3 操作入力部
4 アクチュエータ
6 操作力検出手段
8 操作入力演算装置
12 操作量検出手段
30 制動出力装置
40 制動出力装置
50 制動出力装置
60 制動出力装置
70 駆動出力装置
80 駆動出力装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル位置あるいはペダル反力あるいは車両出力を電気的に制御可能なペダル装置及びそれを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の駆動力や制動力はペダルによって運転操作されている。ペダルの踏み込みにより、運転者はペダルの反力と共に車両の加速度や減速度によって発生した慣性力を体感している。そのため、ペダル位置、ペダル反力、車両の駆動力、車両の制動力などの特性は、運転フィーリングや操作のしやすさ、疲れやすさなどを決定づける要因であった。
【0003】
一方、従来のペダルはアクセルワイヤやマスタシリンダに機械的に連結されているため、ペダルの特性はその機構によって一意に決定されていた。
【0004】
しかし、近年、いわゆるバイワイヤと呼ばれる技術により、ペダル位置あるいは反力あるいは車両の駆動力や制動力の関係を任意に設定できるようになっており、そのペダル位置あるいは反力あるいは車両の駆動力や制動力の関係をどのように制御するかについて検討が重ねられている。
【0005】
例えば、ブレーキ力の作動方向やブレーキペダルの作動方向により、ペダルストローク特性やブレーキ力特性やペダル踏力特性を異ならせる技術が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−291894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ペダル位置とペダル反力を任意に設定出来るペダル装置においては、ペダルの作動方向は運転者の踏み込みとペダル装置が発生した力の釣り合いに基づいて決定される。すなわち、ペダルの作動方向はペダル装置の制御の結果であるため、ペダルの作動方向に基づいてペダル装置の制御を行うと運転者のペダル操作に対してペダルの反応に遅れが生じたり、運転者の意図する踏み動作や放し動作と実際の作動方向が必ずしも一致せず、違和感を与えたりする場合があるという課題がある。
【0008】
また、上記従来技術では運転者が踏み動作を行っている場合と放し動作を行っている場合の作動方向については言及が為されている。しかし、車両運転の操作しやすさや疲れやすさあるいは運転フィーリングに大きな影響を与える、ペダルの踏み込みを一定で保っている場合の保持動作については十分に考慮されていないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、ペダル位置、ペダル反力、車両の駆動力、車両の制動力に関し、ペダル踏力とあらかじめ定められた反力曲線に基づいて、踏み動作と放し動作と保持動作に対応した異なる特性を決定する。また、保持動作における特性を、車両情報や環境情報に応じて変更する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ペダルや車両運動の特性を踏み動作、放し動作、保持動作に応じて運転者が意図したとおりに変化させることが出来ると共に、車両状態や車両外の環境情報に応じた特性の変化を行うことが出来るため、運転者に違和感を与えず、操作しやすく疲れにくい、運転フィーリングの良いペダル装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による車両操作制御装置は、ペダル位置及びペダル踏力を検出する事が可能であると共に、アクチュエータを電気的に制御することが可能である、機械的及び電気的な構成を持ち、ペダル踏力に応じたペダル位置を実現したり、ペダル位置に応じたペダル反力を発生させたり、ペダル位置やペダル踏力に基づいて制動力や駆動力を発生させる。
【実施例1】
【0012】
本発明を適用した実施例の主な構成について、以下図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明を構成するシステムの模式図である。また、図2は本発明を構成するシステムのブロック図である。
【0014】
1は運転者が車両を運転するために操作するペダル装置である。ペダル装置1は例えば、運転者の踏み込みによるペダル踏力によって、一定の範囲内でペダル位置やペダル速度が変化する。また、ペダル装置1はペダル踏力に対して一定の範囲に拘束された曲線あるいは直線運動を行う。
【0015】
ここで、運転者がペダル装置に対して行った全ての入力を操作入力と定義する。操作入力にはペダル踏力、ペダル位置、ペダル速度、あるいはペダルが踏まれているかどうかの情報が含まれる。
【0016】
ペダル装置1は、ペダル踏力に応じてペダル位置が変化する。また、ペダル位置に応じてペダル反力が発生する。あるいは、ペダル踏力に対してペダル反力を発生させ、運転者にペダルの操作フィーリングを与える。ペダルの操作フィーリングは一般的に車両の運転フィーリングに大いに影響を与える。
【0017】
ペダル装置1において、ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。ここで、ペダル位置はペダルの踏み込まれた量あるいは操作量に相当する。ペダル位置はペダルストロークあるいは単にストロークと言い換えても良い。ペダル速度は、ペダルを踏み込むときあるいは放すときの速さあるいは操作速度に相当する。ペダル速度は、ペダルストローク速度あるいは単にストローク速度と言い換えても良い。ペダル速度はペダル位置の時間単位の変位量あるいはペダル位置を時間微分した値であり、ペダル位置から演算で求めることが可能である。ペダル踏力は運転者がペダル装置を動かすために加えられた力であり、一般的に足による踏み込みの力あるいは操作力に相当する。また、ペダル反力は運転者がペダルを操作しているときにペダル装置から運転者に加えられる力であり、操作反力に相当する。ペダル反力は単に反力と言い換えても良い。ペダル反力はペダル踏力と対になる力であり、一般的にペダル踏力と反対向きの力である。特に、ペダルが踏み込まれた状態で動いていないかあるいは、ペダルの運動が加速していないときは、ペダル踏力とペダル反力は釣り合っており、ほぼ等価の力となる。従って、ペダル反力がある値にあるときはペダル踏力も同じ値であると言うことが出来、その逆も言うことが出来る。
【0018】
また、30,40,50,60,70,80は、車両の運動を変化させる車両出力装置である。図1,2による車両は、バイワイヤ技術による応用である。特に、車両出力装置30,40,50,60とペダル装置1の組み合わせはブレーキバイワイヤ技術による応用であり、ブレーキバイワイヤ技術におけるペダル装置1はブレーキペダルである。また、車両出力装置70,80の内少なくとも一方とペダル装置1を組み合わせた場合のペダル装置1はアクセルペダルである。
【0019】
ペダル装置と車両出力装置の間は機械的接続が無く、電気的な信号のやりとりにより接続されている。また、ペダル装置と車両出力装置の間は通信経路111を介して通信により情報が伝達される。ペダル装置への操作入力は電気的な信号として車両出力装置に伝えられ、車両出力装置は伝えられた信号情報に基づいて車両出力を行う。ペダル装置と車両出力装置は機械的接続を持たないため、ペダル装置のペダル位置、ペダル反力の制御は、車両出力装置の車両出力の制御と独立して行うことが出来る。
【0020】
ここで、ペダル装置1の詳細について説明する。
【0021】
ペダル装置1はアクチュエータ4を備えており、アクチュエータ4は電気的に制御可能である。アクチュエータ4は例えば電動機、あるいはモータであり、アクチュエータ4に電力を供給するかあるいは電流を流すと、回転軸9周りに部材2が回転するかあるいは回転方向の力が発生する。アクチュエータ4は操作入力演算装置8によって制御され、アクチュエータ4を制御することによってペダル位置、ペダル速度、ペダル反力を任意に変更することが出来る。また、操作入力演算装置8は車両出力装置30,40,50,60,70,80に車両出力指令を伝達し、操作入力に応じた車両出力を行うようにする。ペダル装置1は、足で踏み込む作用点となる操作入力部3を備えている。
【0022】
ペダル装置1は操作情報検出手段11を備えている。操作情報検出手段11は操作量検出手段12と操作力検出手段6を含んでいる。操作量検出手段12は例えば5の様な形態を取り、操作量あるいはペダル位置を検出する。操作量検出手段12が検出する操作量あるいはペダル位置は、回転軸9周りに部材2が回転した量であっても良いし、操作入力部3が移動あるいはストロークした量であっても良い。また、場合によって操作速度あるいはペダル速度を検出しても良いし、操作量あるいはペダル位置に基づいて演算を行うことにより操作速度あるいはペダル速度の検出を行っても良い。
【0023】
操作力検出手段6は操作力あるいはペダル踏力を検出し、同時に操作反力あるいはペダル反力を検出する。ここで、操作力検出手段6は力を検出する手段であるため、操作力と操作反力を同じものとして検出する。操作力検出手段6が検出する力は、回転軸9周りに部材2を回転させるために加えられた力であっても良いし、操作入力部3を移動あるいはストロークさせるために加えられた力で合っても良い。
【0024】
操作入力演算装置8は、操作情報検出手段11によって検出された操作情報に基づいてアクチュエータ4を制御し、操作情報検出手段11によって検出された操作情報に基づいて、ペダル位置、ペダル速度あるいはペダル反力を変更する。また、操作入力演算装置8は、操作情報検出手段11によって検出された操作情報に基づいて、車両出力指令を決定し、決定した車両出力指令を通信経路111を介して車両出力装置に伝達する。
【0025】
車両出力装置30,40,50,60は、電気的に制御可能な制動出力装置である。制動出力装置による車両出力は車両の減速度あるいは制動力であり、制動出力装置は伝達された車両出力指令に基づいて車両に制動力を発生させ、車両を減速させる。従って、制動出力装置へ伝達される車両出力指令は車両の減速度あるいは制動力であっても良い。
【0026】
ここで、制動出力装置は例えばキャリパであり、ロータを押しつけるピストンの推力を電気的に制御可能な電動ブレーキであっても良い。制動出力装置が電動ブレーキである場合、電気的な力を発生させるアクチュエータを備えており、アクチュエータによって発生する力が減速器など機械的な構成を介してピストンの推力に変換される機構であり、ピストン推力を制御することによって車両の制動力を制御することが出来る機構であっても良い。
【0027】
また、制動出力装置は例えばキャリパであり、ロータを押しつけるピストンの推力を油圧によって発生させ、油圧を電気的に制御可能な電動油圧ブレーキであっても良い。制動出力装置が電動油圧ブレーキである場合、電気的な力を発生させるアクチュエータを備えており、アクチュエータによって油圧を変化させることが出来る機構であり、油圧を制御することによって車両の制動力を制御することが出来る機構であっても良い。
【0028】
従って、制動出力装置へ伝達される車両出力指令は電動ブレーキの推力で合っても良いし、あるいは電動油圧ブレーキの油圧であっても良い。
【0029】
ここで、制動出力装置30の詳細について説明する。制動出力装置40,50,60は制動出力装置30に相似した構造となっている。例えば、制動出力装置30はキャリパ31の発生する制動力をアクチュエータ33で制御する。アクチュエータ33は車両出力演算装置32で制御される。制御出力装置の状態は制動出力装置状態センサ35で検出することが出来る。車両出力装置演算装置32は制御出力装置の状態に応じてアクチュエータ33を制御する。車両出力装置演算装置32は必要に応じて制御出力装置の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。制御出力装置の状態には、電動ブレーキで発生している推力あるいは電動油圧ブレーキで発生している油圧が含まれていても良い。
【0030】
車両出力装置70,80は電気的に制御可能な駆動出力装置である。駆動出力装置による車両出力は車両の速度あるいは加速度あるいは駆動力である。駆動出力装置は伝達された車両出力指令に基づいて車両に駆動力を発生させ、車両を加速させる。従って、駆動出力装置へ伝達される車両出力指令は車両の速度あるいは加速度あるいは駆動力であっても良い。
【0031】
車両の駆動出力装置としては一般的に70のようなエンジンの構成を取る事が多い。しかし、ハイブリッド車や電気自動車あるいは電動四駆車などでは駆動出力装置に80のような電動機の構成を用いたりエンジンと電動機を組み合わせた構成を用いたりする。
【0032】
ここで、駆動出力装置70の詳細について説明する。駆動出力装置70はエンジンであり、例えば、ガソリンあるいは軽油を燃料として車両を駆動する機構である。駆動出力装置70は伝達された車両出力指令及び、駆動出力装置の状態に応じてアクチュエータ72あるいは点火プラグ73を制御しエンジン71に車両出力を生成させる。駆動出力装置の状態は駆動出力装置状態センサ75によって検出される。アクチュエータ72は車両出力演算装置74によって制御される。車両出力演算装置74は必要に応じて駆動出力装置の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。駆動出力装置の状態にはエンジン71の駆動力あるいは回転数が含まれていても良い。
【0033】
ここで、駆動出力装置80の詳細について説明する。駆動出力装置80は例えば電動機であり、電力を供給したり電流を流したりする事によって車両出力を生成する。例えば、駆動出力装置80はアクチュエータ83とアクチュエータを制御するためのセンサ85を備えており、車両出力演算装置84によって制御される。車両出力演算装置84は必要に応じて駆動出力装置80の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。
【0034】
ここで、実際には車両出力指令と車両出力は必ずしも完全には一致しない場合がある。しかし、車両出力装置がどの程度忠実に車両出力指令通りの車両出力を出力することが出来るかは本発明における本質的な要因とならない。そのため、以下の説明では車両出力は車両出力指令と等しくなることを前提とする。すなわち、本発明において車両出力は、車両出力指令と置き換えても良く、踏力によって車両出力を出力することはすなわち踏力によって車両出力指令を出力すると同義である。さらに、図面による説明においても車両出力の軸は本質的に車両出力指令の軸と等価であり、車両出力の代わりに車両出力指令を用いても良い。
【0035】
通信経路111は、ペダル装置と車両出力装置の間を接続している電気信号による情報経路であり、物理的には電線で構成されている。ペダル装置と車両出力装置は空間的に離れた場所に設置されている場合が多く、その間の情報は一般的に時分割多重通信方式の電気信号を用い、通信経路111を介してやりとりされる。通信経路111に用いられる電気信号の形式はシリアル通信でも良いし、CANやFlaxRay、LAN等の多重通信でも良い。
【0036】
図3は、操作入力演算装置と車両出力演算装置と通信経路の構成を示している。図3(a)は通信経路が1つであり、車両出力装置151〜154を一つの車両出力演算装置150で制御している。例えば、ABS装置や横滑り防止装置のように油圧を制御する装置が一つだけであり各キャリパには油圧を伝達し、操作入力演算装置8との電気的な通信は一つの通信経路を介して行うような構成であっても良い。
【0037】
図3(b)は通信経路が2つであり、車両出力装置156〜160を複数の車両出力演算装置155,158で制御している。例えば、車両の前輪と後輪で別系統の油圧システムとなっている場合、油圧を制御する装置は二つとなり、ペダル装置との電気的な通信を行う経路も二つ必要となる。系統が二つになることにより、信頼性の向上を図ることが出来ると共に、系統別の車両出力を行うことで車両運動性能の向上を図ることが出来る。
【0038】
図3(c)の通信経路は1つであるが、車両出力装置165〜168をそれぞれ別の車両出力演算装置161〜164で制御している。例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着している場合、各輪に車両出力を制御する装置が備えられ、ペダル装置と通信を行っている場合が考えられる。車両の四輪全てが独立に車両出力を制御する事により、より高いレベルで車両運動性能の向上を図ることが出来る。
【0039】
図3(d)は通信経路が2つであり、車両出力装置173〜176をそれぞれ別の車両出力装置169〜172で制御している。例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着している場合、各輪に車両出力を制御する装置が備えられている場合に、前右輪と後左輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行い、前左輪と後右輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行う構成であっても良い。また、例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着している場合、各輪に車両出力を制御する装置が備えられている場合に、前二輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行い、後二輪が同じ通信経路を介してペダル装置と通信を行う構成であっても良い。通信経路が二重になることにより、片側の通信経路に障害や故障が発生した場合においても、もう片側の通信経路に属する車両出力装置が作動するため、車両全体としての信頼性の向上を図ることが出来る。
【0040】
図4は、ペダル装置の一例を示している。図4(a)はペダル装置を車両に取り付けた時に運転席から見た場合を正面とした時の正面から見た図であり、図4(b)はペダル装置を側面から見た図である。
【0041】
図4のペダル装置は、アクチュエータ201を備えている。アクチュエータ201は電動機あるいはモータであり、電力を供給したり電流を流したりすることによって回転したり、回転方向の力を発生させたりする。アクチュエータ201はDCモータであっても良いし、DCブラシレスモータであっても良いし、AC誘導モータであっても良いし、AC同期モータであっても良い。
【0042】
また、図4のペダル装置は減速器202を備えている。減速器202は歯車によるものであっても良いし、遊星ギアによるものであっても良いし、差動減速器によるものであっても良い。
【0043】
また、図4のペダル装置はペダルスイッチ203を備えている。ペダルスイッチ203は、ペダルが踏まれている時と踏まれていない時を判別することが出来るスイッチである。
【0044】
また、図4のペダル装置はペダルストロークセンサ204,205を備えている。ペダルストロークセンサ204,205は、操作量としてペダル位置あるいはペダルストロークを検出することが出来る。ペダルストロークセンサを二つ備えていることにより、操作量検出の精度を上げることが出来、一方の故障に対する耐性を得ることによる信頼性の向上が可能になる。
【0045】
図4のペダル装置は、原点位置ストッパ206を備えている。原点位置とは運転者がペダルを踏んでいない時のペダル位置、あるいはペダル装置に操作力あるいはペダル踏力がかかっていないかほとんどかかっていない時のペダル位置である。ここで、原点位置にペダルがある時、ペダル位置は0であると言うことが出来る。原点位置にペダルがあるかどうかは、ペダルスイッチ203で判断しても良い。また、逆に原点位置にペダルがある場合、ペダルは踏み込まれていないと判断しても良い。
【0046】
部材207は、図4(b)において、原点位置ストッパ206に当たる所まで左側へ移動することが可能である。図4(b)で見て左側への移動、すなわち原点位置へ移動する方向を、運転席方向あるいは手前方向あるいは戻し方向あるいは放し方向と定義する。また、図4(b)で見て右側への移動、すなわちペダルを踏み込んだ時に移動する方向を、奥方向あるいは踏み方向と定義する。
【0047】
図4のペダル装置は、ペダル端208を備えている。ペダル端208は運転者が踏み込む部分であり、ペダル装置1の入力部3に相当する。ペダル端208にペダル踏力がかかるとペダルがストロークし、例えば209のようにペダル位置が移動する。ペダル位置は奥方向へ行くほど大きな値を取り、手前方向へ行くほど小さな値を取ると定義し、ペダルを手前側から奥側に移動させる時、ペダルを踏むあるいは踏み込むと定義する。また、ペダルを奥側から手前側に移動させる時、ペダルを放すあるいは戻すと定義する。さらに、ペダル位置を変更しないようにペダルを維持している時、ペダルを保持すると定義する。一般的なペダル装置において、最大限にストロークさせた時のペダル位置は0.03〜0.1m程度である。
【0048】
図5は、ペダル装置の一例を模式的に示したものであり、図6は図5のペダル装置及び関連する手段について模式的に示したブロック図である。図5,6のペダル装置は、パッシブ反力手段221を備えている。パッシブ反力手段221はバネによる機構であったりストロークシミュレータのような粘性をもった油圧機構であったりしても良い。
【0049】
ここで、アクチュエータ4によって生成されるペダル反力をアクティブ反力と呼び、パッシブ反力手段221によって生成されるペダル反力をパッシブ反力と呼ぶ。ペダル装置1はアクティブ反力とパッシブ反力を合わせたペダル反力を生成することが出来る。パッシブ反力手段221によって生成されるパッシブ反力は、パッシブ反力手段221の機械的特性によって定まり、電気的に制御することが出来ないため、アクティブ反力がパッシブ反力に加えられるか減じられることにより、ペダル反力を生成する。
【0050】
図7は、パッシブ反力及びアクティブ反力及びペダル反力の関係を表した一例である。301はパッシブ反力を示しており、電気的な要素によって変化しない。アクティブ反力は電気的に任意に変化することが出来るため、ペダル反力を例えば302から303の範囲で変化させることが出来る。パッシブ反力301はペダル位置が大きくなればなるほど大きくなるが、アクティブ反力で変化させることの出来るペダル反力の幅はペダル位置に関わらず一定である。パッシブ反力301を中心としてアクティブ反力を加えたペダル反力は302から303の間の任意の値を取れる。そのため、例えば304のようなペダル反力を実現することが出来る。パッシブ反力手段を用いることによってアクチュエータ4の容量あるいは大きさあるいは消費電力を小さくすることが出来る。また、アクチュエータ4が十分なペダル反力を生成出来る場合は、パッシブ反力手段221を用いず、アクティブ反力だけでペダル装置を構成しても良い。
【0051】
図5,6のペダル装置は、アクチュエータ4の回転角度あるいは回転位相を検出する事の出来るアクチュエータ制御用センサ222を備えている。センサ222は光あるいは磁気を用いたエンコーダであっても良いし、レゾルバであっても良い。
【0052】
また、図5,6のペダル装置は、回転軸9に対して部材2が回転した角度を検出することが出来るペダル回転角センサ223を備えている。センサ223は可変抵抗を用いたポテンショメータあるいはロータリエンコーダであっても良いし、回転スリットを用いて光ピックアップで検知する方式であっても良いし、磁気素子を用いて、磁気の変化を検知する方式であっても良い。
【0053】
また、図5,6のペダル装置は、部材2あるいはペダル端208がストロークした量あるいはペダル位置を検出することが出来るペダルストロークセンサ224を備えている。センサ224は可変抵抗を用いたポテンショメータであっても良いし、磁気回路を用いて磁気抵抗の変化として変位幅を検出する方法であっても良い。
【0054】
ここで、センサ222,223,224の内、少なくとも一つを用いてペダル位置あるいはペダル速度を検出することが出来、操作量検出手段12にはセンサ222,223,224の内少なくとも一つが含まれる。
【0055】
図5,6のペダル装置は、ペダル踏力センサ227を備えている。センサ227は、運転者がペダルを踏み込むペダル踏力あるいはペダルが運転者の足を押し返すペダル反力を検出することが出来る。また、図5,6のペダル装置は、ロッド力センサ228を備えている。センサ228は、部材2とパッシブ反力手段221の間に働く力を検出することが出来る。センサ227,228は例えば歪みゲージの抵抗変化を用いて力を検出する構成であっても良い。ここで、センサ227,228の内少なくとも一つを用いて操作力あるいはペダル踏力を検出することが出来、操作力検出手段6にはセンサ227,228の内少なくとも一つが含まれる。
【0056】
また、 図5,6のペダル装置はペダルスイッチ203を備えている。ここで、ペダル装置1がブレーキペダルである場合、ペダルスイッチ203はブレーキスイッチでも良いし、ペダル装置1がアクセルペダルである場合、ペダルスイッチ203はアクセルスイッチでも良い。
【0057】
ここで、ペダル装置1は、車両情報検出手段241を用いて車両情報を検出する。車両情報には、車輪速、車速、加速度、シフトポジション、パーキングブレーキの状態などが含まれる。車両情報検出手段241には、車輪速センサ251や車速センサ252や加速度センサ253やシフトポジションスイッチ256やパーキングブレーキスイッチ257を含んでいる。シフトポジションスイッチは、シフトポジションセンサでも良い。
【0058】
ここで、車輪速センサ251は、車軸に取り付けた磁気回路を用いて車輪の回転数を検出する方式であったり、スリットを入れた円盤を車軸に取り付け光によって車輪の回転数を検出する方式であったりしても良い。また、車速センサ252は直接車両の速度を検出する方式でも良いし、車輪速センサ251で得られた車輪速を元に車速を求めて検出する方式でも良い。加速度センサ253は、歪みゲージを使用して車両にかかる加速度やヨーレートを検出する方式でも良い。シフトポジションスイッチ256は、シフトポジションがどこであるかを検出する。シフトポジションは例えば、Rレンジ、Dレンジ、Nレンジ、Pレンジを示すものとしても良い。パーキングブレーキスイッチはパーキングブレーキの状態を検出するためのスイッチで、パーキングブレーキが作動しているかどうかを識別することが出来る。
【0059】
ペダル装置1は、環境情報検出手段242を用いて環境情報を検出する。環境情報には、他車両や歩行者や障害物との相対関係や、走行路の傾斜が含まれる。ここで、他車両や歩行者や障害物との相対関係には、相対距離、相対速度、衝突時間が含まれる。衝突時間は他車両や歩行者や障害物との衝突までの予想される時間であり、衝突時間=相対距離/相対速度で表される。
【0060】
環境情報検出手段242には外界認識センサ260や傾斜センサ263が含まれる。外界認識センサ260は、赤外線レーザーあるいはミリ波を用いて他車両や障害物との相対距離あるいは相対速度を検出するレーダであっても良い。また、外界認識センサ260は、超音波や光学式カメラを用いて他車両や障害物との相対距離あるいは相対速度を検出する方式であっても良い。
【0061】
傾斜センサ263は、車両が走行している走行路の傾斜を検出する。ここで、走行路が平坦なときの傾斜は0度とし、下り坂での傾斜を負、上り坂での傾斜を正とする。傾斜センサは、例えば加速度センサを用いたり重力を利用して走行路の傾斜を求めたりするものであっても良い。また、走行中に発生している駆動力あるいは制動力と走行している車両の運動状態から演算によって走行路の傾斜を求めるものであっても良い。
【0062】
操作入力演算装置8は、操作情報あるいは車両情報あるいは環境情報を用いて、操作入力制御手段10を制御して操作入力部208に発生するペダル反力を変化させたり、ペダル位置やペダル速度を変化させたりすると共に、操作情報あるいは車両情報あるいは環境情報を用いて、車両出力指令を車両出力装置121に伝達し車両出力を発生させる。
【0063】
図8はペダル装置の応用を示す模式図である。図8(a)は回転軸401に対して操作入力部402が下になっている場合のペダル装置であり、図8(b)は回転軸404に対して操作入力部403が上になっている場合のペダル装置である。また、図8(c)は回転軸を持っておらず、操作入力部405への操作入力に対してペダル装置が直動する場合であり、図8(d)は回転軸406とアクチュエータ407が別になっているペダル装置である。アクチュエータ407の回転出力は、回転直動変換機構408により直動方向の出力に変換され部材409に作用する事によって、ペダル端410を移動させたり操作反力を発生させたりする。ここで、回転直動変換手段としては例えばウォームギアを用いてもよいし、ボールねじを用いてもよい。
【0064】
また、図8(e)はアクチュエータ411が回転電動機ではなく、直動方向に変位したり力を出したりする場合のペダル装置である。アクチュエータ411の出力が部材412に作用することによって、ペダル位置を移動させたり操作反力を発生させたりする。アクチュエータ411は例えばソレノイドであっても良い。さらに、図8(f)はパッシブ反力手段414が回転軸413に取り付けられている場合のペダル装置であり、図8(g)はパッシブ反力手段415が回転軸付近に取り付けられている場合のペダル装置である。
【0065】
図9はペダル反力の例を示した図である。図9(a)の451は剛性反力と呼び、ペダル位置に応じて大きさの代わる反力であり、ペダル位置が大きくなればなるほど大きな値となる。ここで、同じペダル位置に対して比較的剛性反力が大きいペダルは堅いペダルであると言うことが出来、比較的剛性反力が小さいペダルは柔らかいペダルであると言うことが出来る。
【0066】
図9(b)の453は粘性反力と呼び、ペダル速度に応じて大きさの代わる反力であり、ペダル速度が大きくなればなるほど大きな値となる。ここで、例えばペダルを踏み込んだ時のペダル速度が図9(c)454のようであった場合、粘性反力は図9(d)455のようになる。ペダル反力は剛性反力と粘性反力を合計したものであり、図9(a)の452のように示される。
【0067】
ここで、ペダル反力をF、ペダル位置をxとすると、ペダル速度はdx/dtで示され、また、ペダル位置に依存する剛性反力をFk(x)、ペダル速度に依存する粘性反力をFd(dx/dt)とすると式(1)あるいは式(2)のようになる。
【0068】
F=Fk(x)+Fd(dx/dt) (1)
F=Fk(x)+ Kd×dx/dt (2)
従って、Fd(dx/dt)は式(3)のようになり、Kdはあらかじめ定められた定数である。
Fd(dx/dt)=Kd×dx/dt (3)
【0069】
ここで、車両出力は例えば図10のように設定することが出来る。車両出力は操作入力と相関を持っていなければならず、ペダル位置に応じて車両出力を発生させても良いし、ペダル踏力あるいはペダル反力に応じて車両出力を発生させても良い。ペダル位置に基づいて車両出力を設定する場合、図10(a)のように下に凸になるように車両出力を設定する。また、ペダル踏力に基づいて車両出力を設定する場合、図10(b)のように上に凸になるように車両出力を設定する。
【0070】
運転者は操作量と操作反力を感じながら車両を操作しているため、操作量と操作反力と車両出力の関係によって、運転しやすさ(操作性)や疲労しにくさや運転の楽しさ(快適性)が変化する。そのため、ペダル装置は操作入力制御手段10を用いて好適な関係を持つペダル位置、ペダル反力、車両出力を実現する。
【0071】
ここで、運転者がペダルを踏み込もうとしている場合を踏み動作、運転者がペダルを放そうとしている場合を放し動作とすると、ペダル装置は踏み動作及び放し動作に応じて二種類の反力を実現する。また、ペダル装置を操作する際にはペダルを踏み込んだままほとんど同じ踏み込み量を維持し、一定の駆動力あるいは制動力を継続しようとする動作が行われることがある。これを保持動作とすると、踏み動作あるいは放し動作の他にペダル装置は、保持動作における反力の実現も行う。
【0072】
ペダル反力の制御目標としてペダル装置は図11のように二種類の反力曲線を用いる。増加反力曲線501は主に運転者がペダルを踏み込もうとしている時に発生するペダル反力とペダル位置の関係を示した曲線である。減少反力曲線502は主に運転者がペダルを放そうとしているときに発生するペダル反力とペダル位置の関係を示した曲線である。増加反力曲線501は運転者が踏み動作を行おうとしているときの剛性反力と等価であるとしても良いし、減少反力曲線502は運転者が放し動作を行おうとしているときの剛性反力と等価であるとしても良い。
【0073】
運転者のペダル踏力はペダル反力とほぼ等価であるが、アクチュエータの応答性や動力が必要なペダル反力を実現し切れていなかったり、ペダル装置の機構的な摩擦などによったりして、結果的に制御目標とするペダル位置とペダル反力の関係を実現することが出来ず、制御目標とするペダル反力と実際のペダル反力は必ずしも一致していない。ペダル踏力は実際のペダル反力とほぼ等価となるため、制御目標とするペダル反力と実際のペダル反力が一致していない場合、想定通りの力の釣り合いが保たれなくなり、ペダルが運転者の意図通りでない動きをする可能性がある。例えば、減少反力曲線以下のペダル踏力でありながら、実際のペダル反力がそれよりも小さい場合ペダル位置は踏み方向へ変動する。しかし、減少反力曲線以下のペダル踏力であるならば運転者は放し動作を意図していると判断するべきであり、ペダル位置の変動方向にかかわらず、ペダル装置は放し方向に則したペダル反力あるいは減少反力曲線502に従った反力を実現しなければならない。
【0074】
そのため、踏み動作、放し動作及び保持動作の判定はペダル踏力と増加反力曲線と減少反力曲線を用いて行う。
【0075】
図12に踏み動作、放し動作及び保持動作の判定を行う論理フローの例を示す。例えばS511で、ペダル踏力が増加反力曲線以上であれば踏み動作であると判定し、S512でペダル踏力が減少反力曲線以下であれば放し動作であると判定する。また、ペダル踏力が増加反力曲線より小さく減少反力曲線よりも大きい場合は保持動作であると判定する。
【0076】
ここで、ペダル踏力と増加反力曲線あるいは減少反力曲線の大小を比較するためには例えば、その時点でのペダルの踏み込み量あるいはペダル位置が図11の505にある場合、例えばペダル踏力が閾値503以上であれば踏み動作であり、ペダル踏力が閾値504以下であれば放し動作中であり、ペダル踏力が閾値503と504の間にあれば保持動作中であるとしても良い。
【0077】
ペダル装置は、踏み動作か放し動作かによって発生する反力を変更する。例えば踏み動作であれば、図13(a)の531のような反力を発生し、放し動作であれば532のような反力を発生しても良い。ここで、531には踏み動作を判定するための閾値である501と同じものを用いても良いし、501よりも大きな反力である533を用いても良い。501よりも533が大きくなる要因としては粘性反力などがあげられる。また、532には放し動作を判定するための閾値である502と同じ値を用いても良いし、502よりも小さな反力である534を用いても良い。502よりも534が小さくなる要因としては粘性反力などがあげられる。
【0078】
さらに、車両の運動特性も、踏み動作か放し動作かによって変更する。例えば、車両出力を図13(b)(c)のように設定しても良い。踏み動作では、車両出力を535あるいは537のように発生させ、放し動作では、車両出力を536あるいは538のように発生させても良い。車両出力を踏み動作か放し動作かによって変更することにより、踏み動作に対しては車両出力の立ち上がりの応答がよくなり、放し動作に対しては車両出力の立ち下がりの応答が良くなるので、運転者が車両を操作しやすい運転特性を実現することが出来る。
【0079】
また、ペダル反力を踏み動作か放し動作かによって変更することにより、踏み動作に対してはしっかりとした踏み応えを実現すると共に、保持動作あるいは放し動作においてはある程度小さいペダル踏力での操作を可能とし、操作しやすく疲れにくいペダル装置を実現することが出来る。例えば、踏み込みに対しては堅い感触を実現しながら、ゆっくり放すような動作に対して大きなペダル踏力を出し続ける必要のないペダル装置を実現することが出来る。
【0080】
さらに、運転者がペダル装置を操作する際にはペダル踏力を増減させながらペダル位置を変化させるが、一般的にペダル踏力を一定に保ったままペダルを踏み続けることは容易でなく、特に増加反力曲線と減少反力曲線の差がほとんど無い場合、ペダルを踏み続けたり、なめらかな踏み動作や放し動作を行ったりすることが難しくなる。そのため、増加反力曲線と減少反力曲線あるいは、踏み動作のペダル反力と放し動作のペダル反力の間の保持動作におけるペダル位置とペダル反力の関係が重要になる。
【0081】
ここで、一般的に、保持動作は運転者がペダルを踏み続けようとしている場合である。従って、保持動作の場合は例えば図14(a)(b)のように、ペダル踏力に関わらずペダル位置を変更しないとしても良い。
【0082】
ここで556は、ペダル反力551の曲線に沿ってペダル位置555まで踏み込んだ後、ペダル踏力を減じた場合である。ペダル反力が556になった後、ペダル踏力が553を超えた場合は再び551の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークし、ペダル踏力が554を下回った場合552の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークする。566は、ペダル反力562の曲線に沿ってペダル位置565までペダルを放した後、ペダル踏力を増加させた場合である。ペダル反力が566になった後、ペダル踏力が563を下回った場合は再び561の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークし、ペダル踏力が564を超えた場合562の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークする。
【0083】
ペダル踏力が553と554あるいは563と564の間にある場合、ペダル位置は555あるいは565で変化しないので、運転者はある程度ペダル踏力を変動させても同じペダル位置を維持したままペダルを踏み続けることが出来る。
【0084】
また、保持動作は運転者が踏み動作と放し動作を切り替えている状態でもある。そのため、踏み動作と放し動作におけるペダル反力の設定によっては、保持動作におけるペダル位置が全く変化しないとペダル位置の微妙な調整が難しかったり、踏み動作と放し動作を素早く切り替えられなかったりする場合がある。
【0085】
そこで、例えば図14(c)(d)のように、保持動作においてはペダル位置とペダル反力の関係を斜めにし、ペダル踏力に応じてペダル位置をある程度ストロークさせても良い。
【0086】
ここで、576は、ペダル反力571の曲線に沿ってペダル位置575まで踏み込んだ後、ペダル踏力を減じた場合である。ペダル反力が576になった後、ペダル踏力が573を超えた場合は再び571の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークし、ペダル踏力が574を下回った場合572の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークする。586は、ペダル反力582の曲線に沿ってペダル位置585までペダルを放した後、ペダル踏力を増加させた場合である。ペダル反力が586になった後、ペダル踏力が583を下回った場合は再び581の曲線に沿ってペダル位置が手前側にストロークし、ペダル踏力が584を超えた場合582の曲線に沿ってペダル位置が奥側にストロークする。
【0087】
ペダル踏力が573と574あるいは583と584の間にある場合、ペダル位置は575と577あるいは585と587の間で僅かに変化するので、運転者はほとんど同じペダル位置を維持したまま、ペダル踏力を変動させることにより微妙なペダル位置を変化させることが出来る。
【0088】
図14の保持動作におけるペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、車両全体の特性や主とする運転者、あるいはペダル反力や車両出力の特性によって様々に設定することが可能である。ここで、556,566のようにペダル踏力が変化してもペダル位置が変わらないときの傾きは無限大であると言うことが出来る。
【0089】
傾きは一定である必要はなく、例えば図15のようにペダル位置やペダル踏力に応じて変化しても良い。例えば601は、ペダル位置に対して常に一定の傾きを持つ場合を示している。ここで、一定の傾きとは556,566のように無限大であっても良い。また、576, 586のような傾きを持つ場合、保持中のペダルの操作しやすさやフィーリングを確保するためには、傾きは6000N/m以上であることが望ましい。
【0090】
また、602のようにペダル位置に応じて傾きを変化させても良い。ここで、運転者のペダル操作は一般的に手前側での方が頻繁であるため、手前側での踏み動作と放し動作の切り替えがはっきりするような傾きを設定することが望ましい。そのため、ペダル位置に応じて傾きを変化させる場合、手前側の傾きの方が奥側の傾きよりも大きいことが望ましい。
【0091】
また、例えば603のように一番手前の傾きは無限大であり奥に行くほど傾きが小さくなるように設定しても良い。
【0092】
ここで、踏み動作、保持動作、放し動作をなめらかに行うためには、保持動作における傾きは、踏み動作あるいは放し動作におけるペダル位置に対するペダル反力の傾きよりも必ず大きくなければならない。そのため、図15(a)において、設定出来る傾きの下限604が存在し、ストローク可能なペダル位置の範囲において保持動作における傾きは下限604を超えていなければならない。
【0093】
また、図15(b)はペダル踏力に対する傾きの例を示している。ここで、621はペダル踏力に対して常に一定の傾きを持つ場合を示している。ここで、一定の傾きとは556,566のように無限大であっても良い。また、576,586のような傾きを持つ場合、保持中のペダルの操作しやすさやフィーリングを確保するためには、傾きは6000N/m以上であることが望ましい。
【0094】
また、622のようにペダル踏力に応じて傾きを変化させても良い。ここで、放し動作、保持動作、放し動作を運転者が違和感なく切り替えるためには、ペダル踏力が大きいときの傾きの方がペダル踏力が小さいときの傾きよりも大きいことが望ましい。
【0095】
また、例えば623のように、閾値627での傾きは無限大であり、ペダル踏力が小さいほど傾きが小さくなるように設定しても良い。ここで、閾値627は踏み動作との境界になるペダル踏力であり、503,553,563,573,583に相当する。また、閾値626は放し動作との境界になるペダル踏力であり、504,554,564,574,584に相当する。
【0096】
また、閾値624を放し動作におけるペダル位置に対するペダル反力の傾き、625を踏み動作におけるペダル位置に対するペダル反力の傾きとする。
【0097】
ここで、踏み動作、保持動作、放し動作をなめらかに行うためには、保持動作における傾きは、閾値626上では閾値624よりも必ず大きくなければならず、閾値627上では閾値625よりも必ず大きくならなければならない。
【0098】
アクチュエータを持つペダル装置によれば、ペダル位置とペダル反力の関係を電気的に制御することにより、走行中に車両情報や環境情報に応じてペダル位置とペダル反力の関係を変化させることが出来る。また、バイワイヤシステムであればペダル位置あるいはペダル反力と車両出力の関係も走行中の車両情報や環境情報に応じて変化させることが出来る。
【0099】
例えば、車両が高速で走行している場合は早い応答性とある程度しっかりした踏み応えを持ったペダル装置が好まれる傾向があり、スポーツカーなどの一部には常時踏み込みに対して堅いペダルとなっており、車両出力も常時比較的大きくなっているものがある。また、低速で走行している場合ではペダル装置には楽に操作出来、少ないペダル踏力でも安定した車両運転が可能になるように柔らかいペダルが好まれる傾向があり、ファミリーカーなどの一部には常時踏み込みに対して柔らかいペダルとなっており、車両出力もスポーツカーの一部に比べると小さくなっているものがある。
【0100】
すなわち、従来の車両では主に対象とする運転者や使用状況に狙いを絞り、ペダル位置、ペダル反力、車両出力を設定する必要があったが、アクチュエータを持つペダル装置とバイワイヤシステムによれば、リアルタイムで特性を変えることにより、その時点での状況に則した好適なペダル装置を実現することが可能である。
【0101】
ここで、例えば減少反力曲線が小さい場合、保持動作を行うペダル反力あるいはペダル踏力の範囲が大きくなり、ペダルを踏み込んだままペダル位置を維持しておくためのペダル踏力やゆっくりペダルを放してペダル位置を調整するためのペダル踏力が小さくなるため、ペダル位置や車両出力の細かい操作が容易になる。また、減少反力曲線が大きい場合、保持動作を行うペダル反力あるいはペダル踏力の範囲が小さくなり、ペダル踏力の減少に対してペダル位置が戻ってくる応答性が向上する。
【0102】
そのため、細かいペダル位置や車両出力の操作が必要な状況や、長時間ペダルを踏み続ける必要がある状況においては減少反力曲線を小さくし、放し動作におけるペダル反力を小さくして、保持動作を行うペダル踏力の範囲を大きくすることが望ましい。また、ペダル踏力の変化に対してペダル位置や車両出力の高い応答性が必要な状況においては、減少反力曲線を大きくし、放し動作におけるペダル反力を大きくして、保持動作を行うペダル踏力の範囲を小さくすることが望ましい。
【0103】
減少反力曲線あるいは放し動作におけるペダル反力を変更することによって、踏み込みに対するペダルの堅さを変化させず、運転者に違和感を与えなかったり、急制動時の車両の運動特性に影響を与えずペダル特性や運転フィーリングを変化させたりすることが出来る。また、反力曲線あるいはペダル反力の変更に伴って、放し動作における車両出力を変更することも可能である。
【0104】
ここで、保持動作中はペダル位置がほとんど変わらないが、踏み動作における車両出力と放し動作における車両出力の間の範囲では車両出力を操作することが出来る。従って、踏み動作における車両出力と放し動作における車両出力の差が大きい場合、保持動作中であっても、運転者のペダル操作に対してある程度高い車両出力の応答を得ることが出来る反面、保持動作中においても車両出力が安定しづらくなる可能性がある。特に、放し動作における車両出力を非常に小さくすると、踏み動作から放し動作を連続して行った場合のペダル操作に対する車両出力の減少を高速に応答させることが出来るが、踏み動作から保持動作を行った場合に一定の車両出力の維持が難しくなる可能性がある。
【0105】
従って、車両情報や環境情報によるパラメータに応じて車両出力を変化させることにより、状況に応じた車両の運動特性や運転フィーリングを実現することが望ましい。例えば、図16(a)に示すように、パラメータによって減少反力曲線652を小さくし、653,654,655などとすることが出来る。反力曲線を小さくする割合は、パラメータに応じて連続的あるいは段階的に変化するとしても良い。減少反力曲線652を小さくした場合、図16(b)に示すように、放し動作におけるペダル反力662も、減少反力曲線に対応して、例えば663,664,665のように変化させることが望ましい。さらに、車両出力672,682についても、例えば図16(c)に示す673,674,675、あるいは図16(d)に示す683,684,685のように変化させることが考えられる。ここで、ペダル反力あるいは車両出力はパラメータに応じて連続的あるいは段階的に変化するとしても良い。
【0106】
ここで、パラメータと減少反力曲線の変化率を図17に示す。変化率はパラメータに依存して変化し、減少反力曲線、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力は変化率をかけたものを用いる。そのため、パラメータに依存しないペダル装置では常に変化率が1であると言うことが出来る。また、一般的に減少反力曲線を小さくしすぎるとペダル操作しづらくなったり、運転フィーリングが悪くなったりするため、ある程度以下の変化率にはならないようにすることが望ましい。さらに、変化率は減少反力曲線が増加反力曲線以上にならず、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力が踏み動作におけるペダル反力あるいは車両出力以上にならない範囲にする必要がある。
【0107】
ここで、パラメータとして、例えば、車両の速度あるいは加速度を用いても良い。車両の速度あるいは加速度が大きいときは車両操作の応答性を高めるため変化率を大きくし、車両の速度あるいは加速度が小さいときは車両操作の安定性と操作性を高めるため変化率を小さくする。例えば、図17(a)に示す701,702では、パラメータが0の時、変化率が一番小さい。パラメータが0のときの変化率は、元々のペダルの反力の設定によって異なり、0〜1の間の任意の値を取る。ここで、閾値703は、低速走行と高速走行との境目であり、車両の種類や用途によって異なるが、20km/h〜100km/h程度であるとしてもよい。また、変化率は例えば702のように連続で変化しても良い。変化率が連続で変化することで運転者に違和感を与えにくくなる。
【0108】
また、車両の速度を用いない場合においても、例えば車両が走行しているかどうかによって変化率を変更しても良い。例えば車両が走行しているときは変化率を1として、車両が走行していないときは変化率を小さくしてもよく、たとえば、0.2〜0.7程度にしても良い。車両が停止しているときに減少反力曲線や、放し動作におけるペダル反力を小さくすることにより、停車状態を維持しておくためにペダルを踏み続けるのに必要なペダル踏力が小さくてすむため、下肢疲労軽減を図ることが出来る。
【0109】
車両が走行しているかどうかは、例えば車両の速度が0km/hである時に車両が走行していないとしても良いし、例えば、シフトポジションがPレンジであるときに車両が走行していないとしても良いし、パーキングブレーキが作動しているときは車両が走行していないとしても良い。また、駆動出力装置が駆動力を出していなかったり駆動部が回転していなかったりした場合に車両が走行していないとしても良い。
【0110】
また、パラメータとして、車両の走行路の傾斜を用いても良い。例えば走行路の傾斜に対して、図17(b)のような変化率を設定しても良い。
【0111】
ここで、閾値713よりも急な下り坂では、例えば、ブレーキをかけ続けたり、ブレーキを踏み込んだまま、ゆっくりペダルの踏み動作や放し動作をしたりする場合がある。そのため、711のように閾値713よりも走行路の傾斜が小さいときは、変化率を小さくして、ペダルの踏み込みを保持したり、小さい力で放し動作を行ったりすることが容易になるようにする事が望ましい。また、閾値718よりも急な登り坂では、アクセルを踏み続ける必要がある場合がある。そのため、716のように閾値718よりも傾斜が大きいときは、変化率を小さくして、ペダルの踏み込みを保持することが容易になるようにすることが望ましい。
【0112】
ここで、閾値713は例えば−5度程度としても良いし、例えばアクセルを踏まない状態でも重力により加速してしまう傾斜であるとしても良い。また、閾値718は+5度程度としても良いし、重力によってクリープ現象による駆動力が相殺されてしまう傾斜であるとしても良い。
【0113】
また、変化率の最小値は、ブレーキペダルの場合、運転者が傾斜によるペダルの変化を認識できる程度の値に設定する。例えば0.2〜0.7程度に設定してもよい。また、変化率の最大値はアクセルペダルの場合は、減少反力曲線が増加反力曲線以上にならず、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力が踏み動作におけるペダル反力あるいは車両出力以上にならない範囲で変化率を1より大きくする。元々のペダル反力の設定によって異なるが、例えば、変化率は1.0〜3.0程度に設定してもよい。変化率は、712あるいは715のようにパラメータに対して連続で変化しても良い。
【0114】
また、パラメータとして、先行車あるいは前方の障害物との相対関係を用いても良い。ここで、例えば相対関係には先行車あるいは前方の障害物との相対距離あるいは衝突時間を用いて、図17(c)の様に変化率設定しても良い。
【0115】
ここで、例えば、先行車あるいは前方の障害物との距離が近かったり、衝突までの時間が短かったりする場合は、強いブレーキをかける必要があったり、場合によってはその状態を維持しなければならなかったりする場合がある。そのため、721のように閾値723よりもパラメータが小さいときは、変化率を小さくして深い踏み込みでも保持動作を容易にすることが望ましい。また、先行車あるいは前方の障害物との距離が近かったり、衝突までの時間が短かったりする場合は、速やかにアクセルを放す必要があり、そのため、726のように閾値723よりもパラメータが大きいときは、変化率を大きくすることにより、ペダルが戻り易くすることが望ましい。ここで、閾値723は、走行している車両や周囲の環境によって異なるが、例えば、相対距離が10m〜100mであっても良いし、例えば衝突時間が0.1秒〜1.5秒であることであっても良い。
【0116】
また、図17(c)においてパラメータが0の時の変化率はブレーキペダルの場合、運転者が先行車あるいは前方の障害物との相対関係によるペダルの変化を認識できる程度の値に設定する。元々のペダル反力の設定によって異なるが、例えばパラメータが0の時の変化率を0.2〜0.7程度に設定してもよい。また、アクセルペダルの場合は、変化率を727のように1より大きく設定しても良い。変化率を1より大きくする場合、減少反力曲線が増加反力曲線以上にならず、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力が踏み動作におけるペダル反力あるいは車両出力以上にならない範囲とする必要がある。例えば閾値727は、元々のペダル反力の設定によって異なるが、例えば、1.0〜3.0程度に設定してもよい。変化率は722あるいは725のようにパラメータに対して連続で変化しても良い。
【実施例2】
【0117】
図18は実施例2を構成するシステムの模式図である。また、図19は本発明を構成するシステムのブロック図である。実施例1において説明された本発明の内、ペダル反力に関するものについては、図18に示される構成においても同様に適用することが出来る。
【0118】
1は運転者が車両を運転するために操作するペダル装置であり、アクチュエータ4を備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能である。また、ペダル装置1は操作入力部3に加えられた操作力あるいはペダル踏力に応じてペダル位置をストロークし、ペダル位置に応じたペダル反力を生成する。ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。
【0119】
また、805〜808は、車両に制動をかけ減速するための制動出力装置である。805〜808は油圧によってピストンをロータに押しつけ摩擦材によって車両に制動をかけ減速するための油圧キャリパである。ここで、ペダル装置と制動出力装置の間は機械的接続あるいは油圧配管を介して接続されており、ペダル装置と制動出力装置の間には電気的な信号のやりとりがない。ペダル装置への操作入力はプッシュロッド801を介して負圧ブースタ802で倍力され、マスタシリンダ803で油圧に変換される。マスタシリンダ803で生成された油圧は配管を介して油圧モジュール804に達し、油圧モジュール804で分配され油圧キャリパ805〜808に伝達される。
【0120】
実施例2においては、ペダル位置と制動力の関係は機械的な条件により決定されてしまうが、ペダル位置と反力及びペダル踏力と制動力の関係は、ペダル装置を電気的に制御することにより可変とすることが出来る。実施例1において説明された本発明の基本的な方式は、ペダル位置に対する制動力の関係が可変であることを必須としない。そのため、本発明の基本的な方式は実施例2に適用することが可能である。従って、バイワイヤ技術によらない従来の車両であっても、ペダル装置1を用いるだけで本発明の基本的な方式を適用しその主たる効果を享受することが可能である。
【実施例3】
【0121】
図20は実施例3を構成するシステムの模式図である。また、図21は本発明を構成するシステムのブロック図である。実施例1において説明された本発明の内、ペダル反力に関するものについては、図20に示される構成においても同様に適用することが出来る。
【0122】
1は運転者が車両を運転するために操作するペダル装置であり、アクチュエータ4を備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能である。また、ペダル装置1は操作入力部3に加えられた操作力あるいはペダル踏力に応じてペダル位置をストロークし、ペダル位置に応じたペダル反力を生成する。ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。
【0123】
また、911は車両に駆動をかけ加速するための駆動出力装置である。911はガソリンや軽油を燃料として車両を駆動し加速するためのエンジンである。ここで、ペダル装置と駆動出力装置の間は機械的接続あるいはアクセルワイヤを介して接続されており、ペダル装置と駆動出力装置の間には電気的な信号のやりとりがない。ペダル装置への操作入力は部材901に接続されたアクセルワイヤ902を介してスロットル912のスロットル開度を操作し、エンジン911はスロットル912のスロットル開度に応じて車両を駆動する。
【0124】
実施例3においては、ペダル位置と駆動力の関係は機械的な条件により決定されてしまうが、ペダル位置と反力及びペダル踏力と駆動力の関係は、ペダル装置を電気的に制御することにより可変とすることが出来る。実施例1において説明された本発明の基本的な方式はペダル位置に対する駆動力の関係が可変であることを必須としない。そのため、本発明の基本的な方式は実施例3に適用することが可能である。従って、バイワイヤ技術によらない従来の車両であっても、ペダル装置1を用いるだけで本発明の基本的な方式を適用しその主たる効果を享受することが可能である。
【0125】
以上説明したように、本発明によると、運転者に違和感を与えずに、車両情報や環境情報に応じたペダルや車両運動の特性を実現することにより、操作しやすく疲れにくい、運転フィーリングの良いペダル装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】実施例1の構成の一例を示すシステムの模式図である。
【図2】実施例1の構成の一例を示すシステムのブロック図である。
【図3】操作入力演算装置と車両出力演算装置と通信経路の構成の一例を示す模式図である。
【図4】ペダル装置の一例を示す模式図である。
【図5】ペダル装置の一例を示す模式図である。
【図6】ペダル装置の一例を示すブロック図である。
【図7】ペダル反力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図8】ペダル装置の応用を示す模式図である。
【図9】ペダル反力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図10】車両出力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図11】増加反力曲線と減少反力曲線の一例を示すグラフ図である。
【図12】踏み動作と放し動作と保持動作の判定方法の一例を示すフロー図である。
【図13】ペダル位置とペダル反力と車両出力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図14】保持動作におけるペダル位置とペダル反力(ペダル踏力)の関係の一例を示すグラフ図である。
【図15】ペダル位置に対するペダル反力(ペダル踏力)の傾きの特性の一例を示すグラフ図である。
【図16】ペダル位置とペダル反力と車両出力の特性の一例を示すグラフ図である。
【図17】パラメータと変化率の関係の一例を示すグラフ図である。
【図18】実施例2の構成の一例を示すシステムの模式図である。
【図19】実施例2の構成の一例を示すシステムのブロック図である。
【図20】実施例3の構成の一例を示すシステムの模式図である。
【図21】実施例3の構成の一例を示すシステムのブロック図である。
【符号の説明】
【0127】
1 ペダル装置
3 操作入力部
4 アクチュエータ
6 操作力検出手段
8 操作入力演算装置
12 操作量検出手段
30 制動出力装置
40 制動出力装置
50 制動出力装置
60 制動出力装置
70 駆動出力装置
80 駆動出力装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、ペダル反力の特性を変えることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、車両出力の特性を変えることを特徴とするペダル装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値Aよりも大きい時は前記閾値Aをペダル反力とし、ペダル踏力が前記閾値Bよりも小さい時は前記閾値Bをペダル反力とすることを特徴とするペダル装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に関わらずペダル位置を変化させないようにすることを特徴とするペダル装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に応じてわずかにペダル位置を変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Aとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Aの傾きより大きいことを特徴とするペダル装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Bとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Bの傾きより大きいことを特徴とするペダル装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の速度あるいは加速度に応じて変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項9】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両が走行しているかどうかによって変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項10】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の走行路の傾斜に応じて変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項11】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を先行車あるいは前方の障害物との相対関係に応じて変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のペダル装置において、 前記ペダルはブレーキペダル又はアクセルペダルであることを特徴とするペダル装置。
【請求項13】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、ペダル反力の特性を変えることを特徴とする自動車。
【請求項14】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、車両出力の特性を変えることを特徴とする自動車。
【請求項15】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値Aよりも大きい時は前記閾値Aをペダル反力とし、ペダル踏力が前記閾値Bよりも小さい時は前記閾値Bをペダル反力とすることを特徴とする自動車。
【請求項16】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に関わらずペダル位置を変化させないようにすることを特徴とする自動車。
【請求項17】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に応じてわずかにペダル位置を変化させることを特徴とする自動車。
【請求項18】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Aとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Aの傾きより大きいことを特徴とする自動車。
【請求項19】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Bとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Bの傾きより大きいことを特徴とする自動車。
【請求項20】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の速度あるいは加速度に応じて変化させることを特徴とする自動車。
【請求項21】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両が走行しているかどうかによって変化させることを特徴とする自動車。
【請求項22】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の走行路の傾斜に応じて変化させることを特徴とする自動車。
【請求項23】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を先行車あるいは前方の障害物との相対関係に応じて変化させることを特徴とする自動車。
【請求項24】
請求項13〜23のいずれか1項記載の自動車において、 前記ペダルはブレーキペダル又はアクセルペダルであることを特徴とする自動車。
【請求項1】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、ペダル反力の特性を変えることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、車両出力の特性を変えることを特徴とするペダル装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値Aよりも大きい時は前記閾値Aをペダル反力とし、ペダル踏力が前記閾値Bよりも小さい時は前記閾値Bをペダル反力とすることを特徴とするペダル装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に関わらずペダル位置を変化させないようにすることを特徴とするペダル装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に応じてわずかにペダル位置を変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Aとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Aの傾きより大きいことを特徴とするペダル装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載のペダル装置において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Bとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Bの傾きより大きいことを特徴とするペダル装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の速度あるいは加速度に応じて変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項9】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両が走行しているかどうかによって変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項10】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の走行路の傾斜に応じて変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項11】
請求項1又は2記載のペダル装置において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を先行車あるいは前方の障害物との相対関係に応じて変化させることを特徴とするペダル装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のペダル装置において、 前記ペダルはブレーキペダル又はアクセルペダルであることを特徴とするペダル装置。
【請求項13】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、ペダル反力の特性を変えることを特徴とする自動車。
【請求項14】
ペダルと、アクチュエータと、ペダル踏力を検出するペダル踏力検出手段とを備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車において、
前記ペダルの踏み込みに応じて変化する少なくとも二種の閾値を備えており、前記閾値の内大きい方の閾値(閾値A)よりもペダル踏力が大きい時(踏み動作)と、前記閾値の内小さい方の閾値(閾値B)よりもペダル踏力が小さい時(放し動作)と、ペダル踏力が前記閾値Aと閾値Bの間である時(保持動作)とで、車両出力の特性を変えることを特徴とする自動車。
【請求項15】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値Aよりも大きい時は前記閾値Aをペダル反力とし、ペダル踏力が前記閾値Bよりも小さい時は前記閾値Bをペダル反力とすることを特徴とする自動車。
【請求項16】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に関わらずペダル位置を変化させないようにすることを特徴とする自動車。
【請求項17】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時はペダル踏力に応じてわずかにペダル位置を変化させることを特徴とする自動車。
【請求項18】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Aとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Aの傾きより大きいことを特徴とする自動車。
【請求項19】
請求項13又は14記載の自動車において、ペダル踏力が前記閾値AとBの間である時のペダル位置に対するペダル反力あるいはペダル踏力の傾きは、前記閾値Bとなるペダル反力あるいはペダル踏力において、前記閾値Bの傾きより大きいことを特徴とする自動車。
【請求項20】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の速度あるいは加速度に応じて変化させることを特徴とする自動車。
【請求項21】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両が走行しているかどうかによって変化させることを特徴とする自動車。
【請求項22】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を車両の走行路の傾斜に応じて変化させることを特徴とする自動車。
【請求項23】
請求項13又は14記載の自動車において、放し動作におけるペダル反力あるいは車両出力の特性を先行車あるいは前方の障害物との相対関係に応じて変化させることを特徴とする自動車。
【請求項24】
請求項13〜23のいずれか1項記載の自動車において、 前記ペダルはブレーキペダル又はアクセルペダルであることを特徴とする自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−281798(P2006−281798A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100360(P2005−100360)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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