説明

ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いたバンプの製造方法

【課題】 10μm以上の厚膜でも均一性の高い感光性樹脂膜を形成でき、解像性、密着性、アルカリ現像液に対する充分な現像速度、メッキ液耐性に優れ、メッキ工程中の感光性樹脂膜のクラック発生や欠けも低減でき、剥離性に優れるバンプ形成用材料として好適な厚膜形成に適するポジ型感光性樹脂組成物及びこれらを用いたバンプの製造方法を提供する。
【解決手段】
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂、(C)光により酸を生成する化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の総量に対して5〜50質量%であるポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、及びそれを用いたバンプの製造方法に関する。より詳しくは,回路基板の製造および回路基板への電子部品の実装の際に行われるフォトファブリケーションに好適であり,アルカリ現像可能な厚膜用ポジ型感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜およびこれらを用いたバンプの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のダウンサイジングに伴い、LSIの高集積化およびASIC化が急激に進んでいる。そのため、LSIを電子機器に搭載するための多ピン薄膜実装が必要とされており、TAB方式やフリップチップ方式によるベアチップ実装などが採用されている。このような多ピン実装では、接続用端子としてバンプと呼ばれる突起電極が基板上に高精度に配置されていることが必要であり、さらなるLSIの小型化に対応してバンプの高精度化および狭ピッチ化がより一層必要となってきている。
バンプを形成する際に用いられる感光性樹脂組成物には、膜厚10μm以上の均一な感光性樹脂膜を形成できること、パターニングされた膜が基板に対する密着性を有すること、解像性に優れること、バンプを形成するためのメッキを行う際に耐メッキ性を有すること、メッキ形状はパターニング形状を再現すること、かつメッキ後は剥離液により容易に剥離されることが求められている。
また、メッキ中またはメッキ後の水洗もしくは乾燥処理において、感光性樹脂膜にクラックが発生しないことがもとめられる。メッキ中にクラックが発生すると、メッキもぐりなど希望しない箇所にメッキが析出し、ショートの原因となる。メッキ後にクラックが発生すると、メッキの厚みが足りずに再度メッキを行った場合などにおいて、クラック部にメッキが析出しやすく、正しい形状のメッキが得られないことがある。従って、メッキ形成用感光性樹脂組成物には、メッキ時もしくはメッキ後のクラック発生を抑えることが特に要求されている。
しかしながら,バンプ形成用材料として従来から用いられているノボラック樹脂、ナフトキノンジアジド基含有化合物および他の添加剤からなる感光性樹脂組成物は、クラック発生において満足できるものではなかった。すなわち、形成される感光性樹脂膜がもろいためクラックが入りやすいという問題があった。
例えば特許文献1及び2にはポリ−p−ヒドロキシスチレン系レジストを用いてドライフィルムとして用いても現像時にクラックを発生しない感光性樹脂組成物が開示されているが、感光性樹脂組成物としてのコントラストが低下する問題があった。
特許文献3にはカルボキシル基やフェノール性水酸基を含有するアルカリ可溶性を有する共重合体を含み、ドライフィルムとして用いることのできるバンプ形成用感光性樹脂組成物が開示されているが、メッキ処理により得られる金属層が膨らみ良好なパターンが得られない、またメッキ工程中にクラックを発生する問題があった。
特許文献4には、不飽和カルボン酸及び/不飽和カルボン酸無水物を含有する感光性樹脂膜が開示されているが、特許文献3と同様にメッキ処理により得られる金属層が膨らみ良好なパターンが得られない、また、メッキ工程中にクラックを発生する問題があった。
特許文献5にはノボラック樹脂とアルコール性水酸基、カルボキシル基、および/またはフェノール性水酸基を含むバンプ形成用感光性樹脂組成物が開示されているが、感光性樹脂組成物としてのコントラストが低下する問題があった。
特許文献6には、メッキ耐性を向上させる目的でポリ(ビニル低級アルキルエーテル)を添加したポジ型フォトレジスト組成物が開示されている。しかしながら、ビニル低級アルキルエーテルのアルカリ性現像液に対する溶解性が低いため、多核フェノール化合物を添加する必要があり、メッキに対する耐性が低下する傾向にあった。
【0003】
【特許文献1】特開平5−107756号公報
【特許文献2】特開平5−107757号公報
【特許文献3】特許第3832099号公報
【特許文献4】特許第3633179号公報
【特許文献5】特開2000−250208号公報
【特許文献6】特開2000−250210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は10μm以上の厚膜でも均一性の高い感光性樹脂膜を形成でき、解像性、耐メッキ液性及び剥離性に優れるポジ型感光性樹脂組成物及びこれを用いたバンプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、[1](A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂、(C)光により酸を生成する化合物、を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の総量に対して5〜50質量%であるポジ型感光性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明は、[2]前記(C)成分がo−キノンジアジド化合物である上記[1]記載のポジ型感光性樹脂組成物に関する。レジストパターンを形成する際の感度が更に向上することから、o−キノンジアジド化合物であることが好ましい。
また、本発明は、[3](C)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、3〜100質量部含有する上記[1]又は[2]に記載のポジ型感光性樹脂組成物に関する。
これによりレジストパターンを形成する際の解像性が更に向上する。
かかるポジ型感光性樹脂組成物によれば、膜厚10μm以上の均一な塗膜を形成でき、十分に高い感度及び解像度で、密着性に優れ、良好な耐メッキ液性を有するレジストパターンを形成することが可能である。
また、[4]本発明のバンプの製造方法は、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を、基板上に10〜100μmの膜厚で感光性樹脂膜を形成する工程、前記感光性樹脂膜を紫外線により露光する工程、前記露光後に、アルカリ水溶液により現像してパターン化する工程、前記パターン化後に、メッキ処理する工程、前記メッキ処理後にレジストパターンを剥離する工程、とを含む。このような製造方法によれば、上述のポジ型感光性樹脂組成物を用いているため、十分に高い感度及び解像度で、良好なメッキパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、10μm以上の厚膜でも均一性の高い感光性樹脂膜を形成でき、解像性、耐メッキ液性及び剥離性に優れるポジ型感光性樹脂組成物、及びこれらを用いたバンプの製造方法(形成方法)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂、(C)光により酸を生成する化合物を含有する。以下、ポジ型感光性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
【0008】
<(A)成分>
(A)成分であるアルカリ可溶性ノボラック樹脂は、例えばフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得ることができる。
この際使用されるフェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
またアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
付加縮合反応時の触媒として、特に限定されるものではないが例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、酢酸等が使用される。
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂の重量平均分子量はとくに制限されないが、10000〜50000が好ましい。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(標準ポリスチレンによる換算)。
【0009】
<(B)成分>
(B)成分である炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂は、フェノール誘導体と炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物(以下場合により単に「不飽和炭化水素基含有化合物」という。)との反応生成物(以下「不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体」という。)と、アルデヒド類とを縮重合反応させることにより得ることができる。
フェノール誘導体としては、例えば、フェノール;o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のアルキルフェノール;メトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール等のアルコキシフェノール;ビニルフェノール、アリルフェノール等のアルケニルフェノール;ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール;メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール;ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール;クロロフェノール等のハロゲン化フェノール;カテコール、レゾルシノール、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール;α−又はβ−ナフトール等のナフトール誘導体;p−ヒドロキシフェニル−2−エタノール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール、p−ヒドロキシフェニル−4−ブタノール等のヒドロキシアルキルフェノール;ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルクレゾール;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物;ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等のアルコール性水酸基含有フェノール誘導体;p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニルブタン酸、p−ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸、ジフェノール酸等のカルボキシル基含有フェノール誘導体が挙げられる。また、ビスヒドロキシメチル−p−クレゾール等の上記フェノール誘導体のメチロール化物をフェノール誘導体として用いてもよい。フェノール誘導体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0010】
不飽和炭化水素基含有化合物の不飽和炭化水素基は、レジストパターンの密着性及び耐熱衝撃性の観点から、2以上の不飽和結合を含むことが好ましく、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性の観点から、不飽和結合は30以下であることが好ましい。また、樹脂組成物としたときの相溶性及び硬化膜の可とう性の観点からは、不飽和炭化水素基は好ましくは炭素数8〜80、より好ましくは炭素数10〜60である。
不飽和炭化水素基含有化合物としては、例えば、炭素数4〜100の不飽和炭化水素、カルボキシル基を有するポリブタジエン、エポキシ化ポリブダジエン、リノリルアルコール、オレイルアルコール、不飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸エステルである。好適な不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α−リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸及びドコサヘキサエン酸が挙げられる。これらの中でも特に、炭素数8〜30の不飽和脂肪酸と、炭素数1〜10の1価から3価のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数8〜30の不飽和脂肪酸と3価のアルコールであるグリセリンとのエステルが特に好ましい。
炭素数8〜30の不飽和脂肪酸とグリセリンとのエステルは、植物油として商業的に入手可能である。植物油は、ヨウ素価が100以下の不乾性油、100を超えて130未満の半乾性油又は130以上の乾性油がある。不乾性油として、例えば、オリーブ油、あさがお種子油、カシュウ実油、さざんか油、つばき油、ひまし油及び落花生油が挙げられる。半乾性油として、例えば、コーン油、綿実油及びごま油が挙げられる。乾性油としては、例えば、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油、サフラワー油、ひまわり油、荏の油及び芥子油が挙げられる。また、これらの植物油を加工して得られる加工植物油を用いてもよい。
レジストパターンの密着性、機械特性及び耐熱衝撃性が向上する観点では乾性油を用いることが好ましいく、桐油及び亜麻仁油がより好ましい。
これらの不飽和炭化水素基含有化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0011】
(B)成分を調製するにあたり、まず、上記フェノール誘導体と上記不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させ、不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を作製する。上記反応は、通常50〜130℃で行うことが好ましい。フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜の可とう性を向上させる観点から、フェノール誘導体100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向があり、100質量部を超えると、硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。上記反応は、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。
次いで、上記不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体と、アルデヒド類とを反応させ、炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂を作製する。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、アセトンおよびグリセルアルデヒドが挙げられる。また、アルデヒド類としては、例えば、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2−ホルミルプロピオン酸、2−ホルミルプロピオン酸メチル、ピルビン酸、レプリン酸、4−アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸及び3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸も挙げられる。また、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体を用いてもよい。これらのアルデヒド類は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0012】
上記アルデヒド類と、上記不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体との反応は、重縮合反応であり、従来公知のフェノール樹脂の合成条件を用いることができる。反応は酸又は塩基等の触媒の存在下で行うことが好ましく、酸触媒を用いることがより好ましい。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ぎ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸及びシュウ酸が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記反応は、通常反応温度100〜120℃で行うことが好ましい。また、反応時間は使用する触媒の種類や量により異なるが、通常1〜50時間である。反応終了後、反応生成物を200℃以下の温度で減圧脱水することで炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂が得られる。
なお、反応には、トルエン、キシレン、メタノール等の溶媒を用いることができる。
また、炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂は、上述のフェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる化合物と、m−キシレンのようなフェノール以外の化合物とを組み合わせて、アルデヒド類と重縮合することにより得ることもできる。この場合、フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる化合物に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であると好ましい。
【0013】
このようにして得られる炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂に、更に多塩基酸無水物を反応させて酸変性したフェノール樹脂を(B)成分として用いることができる。多塩基酸無水物で酸変性することにより、(B)成分のアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性がより一層向上する。
多塩基酸無水物は、複数のカルボン酸を有し、当該カルボン酸が脱水縮合した形態(酸無水物)を有していれば、特に限定されない。多塩基酸無水物としては、例えば無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族、芳香族四塩基酸二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、多塩基酸無水物は二塩基酸無水物であることが好ましく、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。この場合、良好な形状を有するレジストパターンを形成できるという利点がある。
上記反応は、50〜130℃で行うことができる。上記反応において、多塩基酸無水物をフェノール性水酸基1モルに対して、0.10〜0.80モルを反応させることが好ましく、0.15〜0.60モル反応させることがより好ましく、0.20〜0.40モル反応させることが更に好ましい。多塩基酸無水物が0.10モル未満では、現像性が低下する傾向にあり、0.80モルを超えると、未露光部の耐アルカリ性が低下する傾向にある。
なお、上記反応には、反応を迅速に行う観点から、必要に応じて、触媒を含有させてもよい。触媒としては、トリエチルアミン等の3級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物が挙げられる。
【0014】
また、(A)成分は、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得ることもできる。フェノール樹脂は、フェノール誘導体とアルデヒド類の重縮合反応生成物である。この場合、フェノール誘導体及びアルデヒド類としては、上述したフェノール誘導体及びアルデヒド類と同様のものを用いることができ、上述したような従来公知の条件でフェノール樹脂を合成することができる。
このようなフェノール誘導体とアルデヒド類から得られるフェノール樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシリレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂が挙げられる。
次に、上記フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて、炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂を作製する。
上記フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応は、通常50〜130℃で行うことが好ましい。また、フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜の可とう性を向上させる観点から、フェノール樹脂100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましく、10〜30質量部であることが特に好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向にあり、100質量部を超えると、硬化膜の耐熱性が低下する傾向にある。このとき、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。なお、反応にはトルエン、キシレン、メタノール、テトラヒドロフランなどの溶媒を用いることができる。
また、上記フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応生成物である炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂に、更に多塩基酸無水物を反応させて酸変性したフェノール樹脂を(B)成分として用いてもよい。多塩基酸無水物で酸変性することにより、(B)成分のアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性がより一層向上する。多塩基酸無水物との反応は、上述した反応条件と同様の条件を用いることができる。多塩基酸無水物としては、上述した多塩基酸無水物と同様のものを例示することができる。
【0015】
なお、(B)成分の分子量は、アルカリ水溶液に対する溶解性や、感光特性と硬化膜物性とのバランスを考慮すると、重量平均分子量で1000〜500000が好ましく、2000〜200000がより好ましく、2000〜100000であることが更に好ましく、5000〜50000であることが特に好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
(B)成分である炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂の含有量は、前記(A)成分と前記(B)成分の総量に対して5〜50質量%であるが、現像速度及び解像度の観点から、5〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。
【0016】
<(C)成分>
(C)成分である光により酸を生成する化合物は、感光剤として用いられる。このような(C)成分は、光照射により酸を生成させ、光照射した部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。(C)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(C)成分の具体例としては、o−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。これらの中で、感度が高いことから、o−キノンジアジド化合物が好ましい。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物やアミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られるものを用いることができる。
反応に用いられるo−キノンジアジドスルホニルクロリドとしては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドが挙げられる。
【0017】
反応に用いられるヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',3'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3',4',5'−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。
【0018】
反応に用いられるアミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0019】
反応に用いられる脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。また、反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等が用いられる。
o−キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とは、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基とのモル数の合計が0.5〜1になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい配合割合は、0.95/1モル当量〜1/0.95モル当量の範囲である。
なお、上述の反応の好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間である。
このような(C)成分の含有量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、(A)成分100質量部に対して3〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、5〜30質量部が特に好ましい
【0020】
<(D)成分>
(D)成分として溶剤を含有することもできる。本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することにより、より均一な塗布膜を作製することができ、また膜厚を調整しやくできる。溶剤の具体例としては、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオナート、3−メチルメトキシプロピオナート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、(D)成分の含有量は、特に限定されないが、ポジ型感光性樹脂組成物中の溶剤の割合が20〜90質量%となるように調整されることが好ましい。
【0021】
<その他の成分>
上述のポジ型感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分に加えて、エラストマー、溶解促進剤、溶解阻害剤、カップリング剤、及び、界面活性剤又はレベリング剤等の成分を更に含有してもよい。
【0022】
(エラストマー)
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化体に柔軟性を付与するために、(E)成分のエラストマーを更に含有することが好ましい。エラストマーとしては、従来公知のものを用いることができるが、エラストマーを構成する重合体のガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることが好ましい。
このようなエラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー及びシリコーン系エラストマーが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−メタクリレートブロックポリマー等が挙げられる。スチレン系エラストマーを構成する成分としては、スチレンのほかに、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。
【0023】
スチレン系エラストマーの具体例としては、タフプレン、ソルプレンT、アサプレンT、タフテック(以上、旭化成工業株式会社製)、エラストマーAR(アロン化成株式会社製)、クレイトンG、カリフレックス(以上、シェルジャパン株式会社製)、JSR−TR、TSR−SIS、ダイナロン(以上、JSR株式会社製)、デンカSTR(電気化学株式会社製)、クインタック(日本ゼオン株式会社製)、TPE−SBシリーズ(住友化学株式会社製)、ラバロン(三菱化学株式会社製)、セプトン、ハイブラー(以上、クラレ株式会社製)、スミフレックス(住友ベークライト株式会社製)、レオストマー、アクティマー(以上、理研ビニル工業株式会社製)、パラロイドEXLシリーズ(ロームアンドハース社製)が挙げられる。
【0024】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM))、炭素数2〜20のジエン類とα−オレフィンとの共重合体、エポキシ化ポリブタジエンブタジエン−アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBR、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム、プロピレン−α−オレフィン共重合体ゴム及びブテン−α−オレフィン共重合体ゴム等が挙げられる。炭素数2〜20のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、炭素数2〜20のジエン類の具体例としては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタンジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、ミラストマ(三井石油化学株式会社製)、EXACT(エクソン化学株式会社製)、ENGAGE(ダウケミカル株式会社製)、Nipolシリーズ(日本ゼオン株式会社製)、水添スチレン−ブタジエンラバーDYNABON HSBR(JSR株式会社製)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体NBRシリーズ(JSR株式会社製)、架橋点を有する両末端カルボキシル基変性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体のXERシリーズ(JSR株式会社製)、ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したエポキシ化ポリブダジエンのBF−1000(日本曹達株式会社製)、液状ブタジエン−アクリロニトリル共重合体HYCARシリーズ(宇部興産株式会社製)が挙げられる。
【0025】
ウレタン系エラストマーは、低分子(短鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるソフトセグメントと、の構造単位からなるものである。高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン−1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−へキシレン−ネオペンチレンアジペート)等が挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。低分子(短鎖)ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAが挙げられる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500であることが好ましい。
ウレタン系エラストマーの具体例としては、PANDEX T−2185、T−2983N(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、シラクトランE790、ヒタロイドシリーズ(日立化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0026】
ポリエステル系エラストマーは、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるものである。ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香環の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、並びに、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
ジオール化合物の具体例として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂肪族ジオール及び脂環式ジオール、ビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、レゾルシン等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を、ポリエステル系エラストマーとして用いることもできる。ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの種類、比率、並びに分子量の違い等により様々なグレードのものがある。
ポリエステル系エラストマーの具体例としては、ハイトレル(デュポン−東レ株式会社製)、ペルプレン(東洋紡績株式会社製)、エスペル(日立化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
ポリアミド系エラストマーは、ポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテル又はポリエステルからなるソフトセグメントと、から構成されるものであり、ポリエーテルブロックアミド型とポリエーテルエステルブロックアミド型との2種類に大別される。ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等が挙げられる。ポリエーテルとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリアミド系エラストマーの具体例としては、UBEポリアミドエラストマー(宇部興産株式会社製)、ダイアミド(ダイセルヒュルス株式会社製)、PEBAX(東レ株式会社製)、グリロンELY(エムスジャパン株式会社製)、ノバミッド(三菱化学株式会社製)、グリラックス(大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
アクリル系エラストマーは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する単量体及び/又はアクリロニトリルやエチレン等のビニル系単量体とを共重合して得られるものである。
このようなアクリル系エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0029】
シリコーン系エラストマーは、オルガノポリシロキサンを主成分としたものであり、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系に分類される。また、オルガノポリシロキサンの一部をビニル基、アルコキシ基等で変性したものを用いてもよい。
このようなシリコーン系エラストマーの具体例としては、KEシリーズ(信越化学株式会社製)、SEシリーズ、CYシリーズ、SHシリーズ(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
また、上述したエラストマー以外に、ゴム変性したエポキシ樹脂を用いることもできる。ゴム変性したエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の一部又は全部のエポキシ基を、両末端カルボン酸変性型ブタジエン−アクリルニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られるものである。
【0031】
また、エラストマーは微粒子状(以下、「エラストマー粒子」ともいう。)であってもよい。エラストマー微粒子とは、ポジ型感光性樹脂成物中において微粒子状態で分散するエラストマーを示し、非相溶系での相分離による海島構造における島となるエラストマーや、いわゆるミクロドメインとなるエラストマー等が含まれるものである。
エラストマー微粒子としては、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性モノマーと、エラストマー微粒子のTgが20℃以下となるように選択される1種以上のその他のモノマーを共重合したもの(いわゆる架橋微粒子)が好ましい。その他のモノマーとしては、重合性基以外の官能基、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基、水酸基等の官能基を有するモノマーを共重合したものを用いることが好ましい。
架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を複数有する化合物を挙げることができる。これらの中で、ジビニルベンゼンが好ましい。
エラストマー微粒子を製造する際に用いられる架橋性モノマーは、共重合に用いる全モノマーに対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%用いられる。
その他のモノマーとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン化合物;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール等の芳香族ビニル化合物;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、グリコールのジグリシジルエーテル等と、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル等の不飽和酸化合物;ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和化合物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物等が挙げられる。
これらの中で、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等が好ましく用いられる。
【0032】
(溶解促進剤)
溶解促進剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては従来公知のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸、スルホンアミド基を有する化合物が挙げられる。
このような溶解促進剤を配合させる場合の、その含有量は、アルカリ水溶液に対する溶解速度によって決めることができ、例えば、(A)成分100質量部に対して、0.01〜30質量部とすることができる。
【0033】
(溶解阻害剤)
溶解阻害剤は、(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物であり、残膜厚、現像時間やコントラストをコントロールするために用いられる。その具体例としては、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨージド等である。溶解阻害剤を配合する場合の、その含有量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(A)成分100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.01〜15質量部がより好ましく、0.05〜10質量部が特に好ましい。
【0034】
(カップリング剤)
カップリング剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、形成される硬化膜の基板との接着性を高めることができる。カップリング剤としては、例えば、有機シラン化合物、アルミキレート化合物が挙げられる。
有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチル−n−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼンが挙げられる。
カップリング剤を用いる場合、その含有量は(A)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0035】
(界面活性剤又はレベリング剤)
界面活性剤又はレベリング剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させたりすることができる。このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテルが挙げられる。市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社、商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製、商品名)がある。
界面活性剤又はレベリング剤を用いる場合、その合計の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0036】
上述したポジ型感光性樹脂組成物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液を用いて現像することが可能である。さらに、上述のポジ型感光性樹脂組成物を用いることにより、十分に高い感度及び解像度で、良好な密着性及び耐熱衝撃性を有するレジストパターンを形成することが可能となる。
【0037】
[バンプの製造方法]
次に、バンプの製造方法について説明する。本発明のバンプの製造方法は、上述のポジ型感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜を基板上に10〜100μmの膜厚で形成する工程、露光する工程と、露光後の感光性樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン化する工程と、パターン化された感光性樹脂膜をメッキする工程と、メッキ後に剥離する工程を備える。
以下、各工程について説明する。
【0038】
<塗布工程>
まず、上述のポジ型感光性樹脂組成物を半導体ウエハなどの支持基板上に塗布し乾燥して感光性樹脂膜を形成する。上述のポジ型感光性樹脂組成物を、スピンナー等を用いて回転塗布し、感光性樹脂膜を形成する。この感光性樹脂膜が形成された支持基板をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。これにより、支持基板上に感光性樹脂膜が形成される。膜厚は、10〜100μmとすることでメッキ処理で形成されるバンプ高さを十分にカバーできる厚みとすることができる。
<露光工程>
次に、露光工程では、支持基板上に形成された感光性樹脂膜に対して、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。上述のポジ型感光性樹脂組成物において、(A)成分はi線に対する透明性が高いので、i線の照射を好適に用いることができる。なお、露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB)を行うこともできる。露光後加熱の温度は70℃〜140℃、露光後加熱の時間は1〜5分が好ましい。
<現像工程>
現像工程では、露光工程後の感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去することにより、感光性樹脂膜がパターン化される。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10質量%とすることが好ましい。さらに、上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で配合することができる。
<メッキ工程>
メッキ方法は特に制限されず、従来からの公知の各種メッキ方法を採用することができる。例えばメッキ液としては金メッキ液、半田メッキ液、銅メッキ液、銀メッキ液などがある。無電解メッキ、電気メッキを単独で、又は組合わせて行うことができる。
【0039】
<剥離工程>
メッキ処理後、基板を室温(25℃)〜80℃にて攪拌中の剥離液に1〜10分間浸漬することによって,基板上に残存するレジストパターンを剥離することができる。これによりメッキパターンが得られる。
上記剥離液としては,例えば、
エチレングリコールアルキルエーテル類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等、
エチレングリコールジアルキルエーテル類:ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等、
エチレングリコールアルキルアセテート類:メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等、
プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン
芳香族単化水素類:トルエン、キシレン等、
ジオキサンのような環式エーテル類:
エステル類:2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等などが挙げられるが、これに限定されるものではない。またこれらは単独で用いてもよく,また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
以上のようなバンプの製造方法によれば、膜厚10μm以上の均一な塗膜を形成でき、十分に高い感度及び解像度で、密着性に優れ、良好な耐メッキ液性を有するレジストパターンを形成することができ、良好なメッキパターンを形成することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(A)成分として、次のA1を準備した。
フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名「EP4080G」
【0042】
(B)成分として、下記のB1〜B4を準備した。
((B1)の合成)
フェノール100質量部、亜麻仁油20質量部及びトリフロオロメタンスルホン酸0.1質量部を混合し、120℃で2時間撹拌し、乾性油変性フェノール誘導体である化合物aを得た。次いで、上記化合物a101g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌し反応を行った。そして、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌後、反応液を大気圧下で室温(25℃)まで冷却し、反応生成物である乾性油変性フェノール樹脂(B1)を得た。
【0043】
((B2)の合成)
フェノール100質量部、亜麻仁油10質量部及びトリフロオロメタンスルホン酸0.1質量部を混合し、120℃で2時間撹拌し、乾性油変性フェノール誘導体である化合物bを得た。次いで、上記化合物b130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌し反応を行った。そして、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌後、反応液を大気圧下で室温まで冷却し、反応生成物である乾性油変性フェノール樹脂(B2)を得た。
【0044】
((B3)の合成)
フェノール100質量部、亜麻仁油30質量部及びトリフロオロメタンスルホン酸0.1質量部を混合し、120℃で2時間撹拌し、乾性油変性フェノール誘導体である化合物cを得た。次いで、上記化合物c130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌し反応を行った。そして、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌後、反応液を大気圧下で室温まで冷却し、反応生成物である乾性油変性フェノール樹脂dを得た。上記化合物d130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌し反応を行った。次いで、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌した後、反応液に無水コハク酸29g及びトリエチルアミン0.3gを加え、大気圧下、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、反応生成物である乾性油変性フェノール樹脂(B3)を得た。
【0045】
((B4)の準備)
パラビニルフェノール樹脂(丸善石油化学株式会社製、商品名「マリルリンカーCHM」)
【0046】
(C)成分として、次のC1を準備した。
C1:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタンの1−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル(エステル化率約90%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「TPPA528」)
【0047】
(D)成分として、次のD1を準備した。
D1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0048】
(実施例1〜5、及び比較例1〜3)
(A)〜(D)成分を表1、表2に示した所定の割合で配合し、この溶液を5μmのミリポア社製のフィルターを用いてろ過し、実施例1〜5及び比較例1〜3のポジ型感光性樹脂組成物の溶液を調製した。
【0049】
【表1】

表中、数値は質量部を示す。
【0050】
【表2】

【0051】
<ポジ型感光性樹脂組成物の評価>
[相溶性]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたポジ型感光性樹脂組成物の溶液を攪拌し、攪拌直後、及び攪拌後1、2時間経過後の溶解状態を目視で観察し、相溶性として下記の評価基準で判定した。
○:1、2時間後に目視で溶解が均一であることが確認できる。
×:溶解直後、もしくは1、2時間後に目視で溶解が均一でないことが確認できる。
【0052】
[塗布性]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたポジ型感光性樹脂組成物の溶液を5インチの金スパッタシリコン基板上にスピンコートし、120℃で5分間加熱し、膜厚20μmの感光性樹脂膜を形成した。形成した塗布面を目視で観察し塗布性を下記の評価基準で判定した。
○: 感光性樹脂膜表面にムラが無い。
×: 感光性樹脂膜表面にムラが有る。
【0053】
[現像液耐性]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたポジ型感光性樹脂組成物の溶液を5インチのシリコン基板上にスピンコートし、120℃で5分間加熱し、膜厚20μmの感光性樹脂膜を形成した。得られた塗布膜を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.38質量%水溶液に5分浸漬し、浸漬後の膜厚を測定し、未露光部の現像液に対する残膜率を算出し、下記の評価基準で判定した。
○:残膜率80〜100%。
△:残膜率40〜80%。
×:残膜率0〜40%又は溶解しているが正確な値が測定できない。
【0054】
[現像速度]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたポジ型感光性樹脂組成物の溶液を5インチのシリコン基板上にスピンコートし、120℃で5分間加熱し、膜厚20μmの感光性樹脂膜を形成した。次いで、プロキシミティ露光機(ウシオ電機株式会社製,商品名「UX-1000SM-XJ01」)を用いて、i線(365nm)で1200mJ/cmになるよう露光を行った。露光後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.38質量%水溶液にて現像を行い、露光部が溶解するまでの時間を測定した。溶解するまでの時間が早いほど良好であることを表す。
【0055】
[解像性]
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたポジ型感光性樹脂組成物の溶液を5インチの金スパッタシリコン基板上にスピンコートし、120℃で5分間加熱し、膜厚20μmの感光性樹脂膜を形成した。次いで、プロキシミティ露光機(ウシオ電機株式会社製、商品名「UX-1000SM-XJ01」)を用いて、マスクを介してi線(365nm)で1200mJ/cmで露光を行った。露光後、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.38質量%水溶液にて、露光部が溶解するまでの時間で現像を行い、その後、水でリンスしパターニングされた基板を得た。最も細かいパターンの得られた値を記した。
【0056】
[耐メッキ液性]
前記「解像性」で得られたパターンを有するスパッタ金基板を試験体として、ノンシアン金メッキ液(N.E.Chemcat社製「ECF88K」)にて、60℃、40分間、電流密度36.8mA/dmで金めっき処理を行った。メッキした基板を流水洗浄、及び精製水で洗浄した。この試験体を目視で観察し、耐メッキ液性を下記の評価基準で判定した。
○:感光性樹脂膜部分にクラックは観察されなかった。
×:感光性樹脂膜部分にクラックがパターン全体に観察された。
【0057】
[剥離性]
前記「耐メッキ液性」で得られた基板を試験体として、室温にて攪拌中の剥離液(アセトン)に5分間浸漬した後、流水洗浄してパターン状硬化物を剥離し、目視で観察し下記の基準で評価した。
○:パターン状硬化物が認められない。
×:パターン状硬化物が認められる。
【0058】
表1から明らかなように、実施例1〜5のポジ型感光性樹脂組成物は相溶性、塗布性、現像液耐性、現像速度、解像性、耐メッキ液性、剥離性が良好であった。
それらに対し、乾性油変性樹脂の量が多い比較例1は塗布膜にムラがあり、現像に30分以上かかった。
また樹脂がノボラック樹脂だけである比較例2はメッキ工程中に感光性樹脂部分にクラックが発生し、金メッキもぐりが観察された。
さらにパラビニルフェノール樹脂を添加した比較例3ではノボラック樹脂との相溶性が悪いため塗布膜にもムラが見られ、また未露光部分の現像液耐性も低いことなどから金メッキ形状が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、
(B)炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂、
(C)光により酸を生成する化合物、
を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分の総量に対して5〜50質量%であるポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)成分が、o−キノンジアジド化合物である請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、3〜100質量部含有する請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を、基板上に10〜100μmの膜厚で感光性樹脂膜を形成する工程、
前記感光性樹脂膜を紫外線により露光する工程、
前記露光後に、アルカリ水溶液により現像してパターン化する工程、
前記パターン化後に、メッキ処理する工程、
前記メッキ処理後にレジストパターンを剥離する工程、とを含むバンプの製造方法。

【公開番号】特開2010−145604(P2010−145604A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320880(P2008−320880)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】