説明

マイクロチャネルまたは他のマイクロ容器中でパケットを操作するためのデバイス

【課題】少なくとも1つのパケットに対して汚染なしに化学的または物理的処理を行うためのマイクロ流体デバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】マイクロ流体デバイス1において、該デバイスが、軸Xを有するマイクロチャネル2、および下記の少なくとも1つを含むパケット操作手段を含むところのデバイス、発電ユニット9、および上記発電ユニット9に連結されかつ、上記マイクロチャネルの少なくとも一部分の内部に、上記マイクロチャネルの軸Xと実質的に共線的である電場を作るように構成された電極アッセンブリ3、ここで、上記発電ユニット9は、マイクロチャネルにおいて少なくとも1つのパケットを変形させるまたは少なくとも2つのパケットを互いの方に移動させるような振幅および周波数を有する電場を発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ容器、特にマイクロチャネル中でパケットを操作するためのデバイスに関する。
【0002】
本明細書で使用されるとき、「パケット」は、区画された物質を意味し、また、流体パケット、カプセル化されたパケットおよび/または固体パケットを意味し得る。
【0003】
流体パケットは、液体または気体の1以上のパケットを意味する。流体パケットは、1滴または1気泡の液体または気体を意味し得る。流体パケットは、1滴の水、1滴の試薬またはサンプル、1滴の溶媒、1滴の溶液、1つの粒子懸濁物または細胞懸濁物、1滴の中間生成物、1滴の最終反応生成物あるいは1滴の任意の物質を意味し得る。流体パケットの例は、油中に懸濁された1滴の水性溶液である。好ましい実施態様では、流体パケットは、1滴の水または1滴の溶液を意味する。
【0004】
カプセル化されたパケットは、物質の層で包囲されたパケットを意味する。カプセル化されたパケットの表面は、試薬、サンプル、粒子または細胞、中間生成物、最終反応生成物または任意の物質で被覆され得る。カプセル化されたパケットの例は、水中に懸濁された試薬の水性溶液を含む脂質小胞である。
【0005】
パケットは例えば、試薬、サンプル、粒子、死細胞または生きている細胞、中間生成物、最終反応生成物または任意の物質を含み得る液体または気体の小胞または他のマイクロカプセルを含み得る。
【0006】
固体パケットは、試薬、サンプル、粒子または細胞、中間生成物、最終反応生成物または任意の物質を含み得るまたはそれらで被覆され得る固体物質、例えば生物学的物質、を意味する。固体パケットの例は、水性溶液中に懸濁された、その表面に試薬が結合されたラテックス微小球である。パケットは、結晶、多結晶性物質、またはガラス質の物質を含み得る。
【0007】
パケットは、種々の大きさ及び形状で作られ得、約100nm〜約1cmの最大寸法を有し得る。
【背景技術】
【0008】
小滴系は、オイルまたはフッ素化溶媒中の水系小滴からなり、または水性溶媒中の「油性」(水と混和しない)小滴からなり得る。本発明の小滴系に含まれる流体は、任意の種類の流体、水性の、有機の、鉱物の、親水性のまたは疎水性のものであり得、例えば、水系バッファー、生物学的流体、ハイドロ有機溶媒、炭素−炭素骨格、Si−Si骨格(シリコーン)またはヘテロ原子骨格を有する分子で作られた液体、例えばポリエチレングリコール、あるいはイオン性液体を包含する。小滴系は、正確なエマルジョンを作るための方法として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための、速い動力学の測定のためのおよびサンプルアリコートの分散のない輸送および操作のための分離したマイクロリアクターとして、大いに注目されている。従って、長年にわたって、微小滴を作るおよび/または操作するための多大な努力がなされてきた。いくつかのデバイスは、何らかの親水性部分と何らかの疎水性部分を結合するマイクロチャネル中でそのような小滴を移動させることによる、疎水力を使用するものである。例えば、米国特許第6130098号は、
1以上の疎水性領域を有し、気体源と通じる微小滴輸送チャネルを提供すること、
疎水性領域の1つで液体が停止するような条件下で液体を上記チャネルに導入すること、および
小滴を上記疎水性領域上で移動させるように上記気体源によって付与される圧力を増加させることにより小滴を分離すること
を含む、微小滴を移動させるための方法を開示している。
【0009】
この方法は、種々の小滴が同じ固体表面と接触するものであり、従って汚染する傾向がある。
【0010】
エレクトロウェッティング(electrowetting)による、電極の平らな配列上での小滴の操作も非常に一般的になっている。なぜならば、小滴を種々の場所へ、および複雑かつプログラム可能な経路に沿って向けることが可能であるからである。例えば、米国特許第6294063号は、複数のパケットをプログラム可能に操作するための装置を開示しており、上記パケットは所望により小滴であり、上記装置は、上記パケットのための相互作用サイトを提供するように構成された反応表面、入り口、上記パケット上に操作力を生じるための手段、ここで、上記力は、上記パケットを上記反応表面の回りで任意に選択された経路に沿ってプログラム可能に移動させることができる、および位置センサーを含む。
【0011】
米国特許第6565727号も、極性液体の小滴を操作するためのデバイスを開示しており、その間にギャップを規定する上側および下側表面を含み、上側表面は複数の相互にかみ合う電極を含み、下側表面は共通の向流電極を含む。上記デバイスはさらに、上記電極と上記ギャップとの間の絶縁層および上記ギャップ中に位置された非極性液体を含む。このデバイスでは、小滴が、上側表面上の第一電極の上部で、該電極と下側表面上の向流電極との間に電位をかけ、第一電極の周囲の小滴のために上側表面を濡らすことにより、操作され得る。ついで、小滴は、第一電極と向流電極との間の電位差を抑え、第二電極と向流電極との間に電位差を付与して第二電極を上記流体に対して湿らせることにより、上記第一電極と相互にかみ合う、上側表面上の第二電極へ移動され得る。
【0012】
エレクトロウェッティングはまた、例えばM. Washizu, IEEE Trans. Ind. Appl., 34, 732-737(1998)に記載されているように、2つの異なる小滴を混合するために使用され得る。例えば2つの試薬または1つのサンプルと1つの試薬を含む小滴の混合は、マイクロ流体統合系または「ラブ−オン−チップ(lab-on-chips)」の開発のための重要な技術的段階である。
【0013】
しかし、エレクトロウェッティングによって要求される電極の平らな配列の様式は、重大な欠点を有する。電極の上記配列を作ることは複雑であり、きわめて高価になり、技術上、数cm平方を超える表面を要求することになる。従って、大きい距離、例えば10cmを越える距離での小滴の輸送は実際的でない。また、液状の小滴の場合、上記表面は、重力または音波の作用下での小滴の望ましくない動きを避けるために、水平にかつ比較的振動がないように維持されるべきである。平らな様式での小滴の操作はまた、小滴の蒸発による制限を受け得る。これは、定量的生化学用途において重大な障害である。なぜならば、反応収率は濃度に非常に敏感であるからである。エレクトロウェッティングはさらに、表面の汚染を招き得る。別の制限は、エレクトロウェッティングが液体にのみ作用し得、その結果、固体物体の輸送には使用され得ないことである。
【0014】
誘電泳動は、小滴または固体物体、例えば細胞またはラテックス粒子、を輸送および混合する別の方法である。例えば、Schwartzら、Lab Chip, 4,11-17(2004)は、プログラム可能な流体プロセッサーを開示している。そこでは、上記配列における電極に継続的にエネルギーを付与することにより、小滴が電極の配列の頂部で移動および混合される。しかし、この方法も、平らな表面での電極の複雑な配列を要求し、したがって、エレクトロウェッティングの上記欠点の多くを有する。別の例では、Velevら、Nature,426, 515-516(2003)が、フッ素化されたオイルの層上に浮遊する小滴を移動および混合させるための方法を記載している。上記方法では、オイルが電極のパターンと接触する。これは、エレクトロウェッティングに固有の汚染の問題を除去するが、電極の複雑な配列を作ることをなおも要求する。
【0015】
細長いマイクロチャネルでの、または連結したマイクロチャネルのネットワークでの小滴の輸送および混合は、上記問題に対しては比較的大丈夫である。例えば、それは、蒸発を回避し、小滴を取り巻く担体流体の簡単な流体力学的流動により長い距離での輸送を可能にする。従って、例えばCurcioおよびRoeraade, Anal. Chem., 75, 1-7(2003)に開示されているように、小滴は、長さ数メーターの毛細管において輸送され得、そしてマイクロリアクターとして使用され得る。壁との相互作用が十分制御されるとき、全ての小滴は同じ速度で移動し、そして非常に安定な列が達成される。しかし、この種の系は、流れにおける付随する小滴の形成に起因するとされている、小滴間の汚染の問題を有する。Parkら、Anal. Chem. 2003, 75, 6029-6033は、多数の水性サンプルプラグが空気のプラグによって分離されている系を提案している。しかし、壁の処理が、汚染を完全に除去するには十分でなく、そのため、サンプル間に「洗浄」小滴を含めることが必要である場合がある。さらに、流れの中の泡が、小滴の熱的履歴に異常を招き得るので、定量的用途に関して、この技術の魅力を小さくしている。
【0016】
また、誘電泳動によりマイクロチャネル中で固体粒子または細胞を操作することが提案された。誘電泳動は、ある勾配の電場において、周囲の媒体と異なる誘電率を有する粒子に及ぼされる力を使用する。マイクロチャネルでの誘電泳動の適用のために、今日まで、種々の型の配列が使用された。第一の配列では、間隔を密にしておかれた相互にかみ合う電極の配列が、粒子が引き付けられる高い電場勾配のラインを局所的に作る。所望により、これらのラインは、異なる一連の電極に交互にエネルギーを与えることによりやがてシフトされ得る。上記方法は、「進行波誘電泳動(travelling wave dielectrophoresis)」と呼ばれる。例えば、Schnelleら、Electrophoresis, 21, 66-73(2000)は、粒子を分類するための方法を開示している。上記方法では、粒子が、相互にかみ合う配列における多数の電極間での進行波誘電泳動により偏向され、4相交互電気信号によって継続的にエネルギーを与えられる。例えばDurrら、Electrophoresis, 24, 722-731(2003)に記載されているように、マイクロチャネルを横切って互いに向かい合う異なる形状の電極の対を使用し、それらの間に電位差を付与することにより、種々の誘電泳動トラップ、ケージまたは偏向電極を作ることも可能である。
【0017】
これらの誘電泳動デバイスは、平らな系に対していくつかの利点を示す。特に、傾きや振動に対して比較的大丈夫である。しかし、それらは、複雑なミクロ製作をなおも必要とし、製作は高価である。
【0018】
マイクロチャネル小滴系、特にマイクロリアクター用途のための開発における別の重要なハードルは、種々の源からのサンプルまたは試薬の混合である。これに関しては、2滴を合体する必要があるが、ラプラス(Laplace)および流体力学力がこの合体を困難にする傾向がある。同時にT交差に到達すると、1つの小滴が第二の小滴に単純に従い、合体することなくTになる。合体は、小滴を接触帯電させることにより強制され得るが、これは、PCRおよび他の生物学的系における汚染の主な源となり得る。より小さい小滴がいったんチャネルに導かれると、より大きい小滴を引きずり、ついにはそれと合体し得る。なぜならば、より小さい小滴はより高い平均速度で移動するからである。しかし、これは、マイクロ流体素子工学における合理的方法ではない。なぜならば、小滴間の膜の排出が非常に遅く、チューブ直径の30〜100倍の合体距離をもたらすからである(Olbricht and Kung, J. Colloid Interface Sci., 120, 229-244(1987)。さらに、いくつかの条件(相対的な小滴サイズ、粘度など)下では、合体が達成されず、合体の時間または位置があまり再現できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、マイクロチャネルまたは閉じたマイクロ流体系において再現性のある、汚染の無い小滴操作、特に合体、を提供するデバイスおよび方法が強く要求されている。
【0020】
本発明の目的は特に、そのようなデバイスおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、その局面の1つによれば、少なくとも1のパケットを変形する、特に分裂させるための、または少なくとも2のパケットを、特に崩壊させるために、互いの方に移動させるためのマイクロ流体デバイスに関し、上記デバイスは、軸を有するマイクロチャネルおよび下記の少なくとも1を含むパケット操作手段を含む:
発電ユニットおよび上記発電ユニットに連結しかつ上記マイクロチャネルの少なくとも一部分の内部にマイクロチャネルの軸(X)と実質的に共線的である電場を作るように構成された電極アッセンブリ、ここで、上記発電ユニットは、電場が、マイクロチャネルにおいて、少なくとも1のパケットを変形させるまたは少なくとも2のパケットを互いの方に移動させるような振幅および周波数を有する電場を発生させることができる、および
上記マイクロチャネルの一部と連結した第一端および溶液を運ぶために適したデリバリー系と連結した第二端を有する少なくとも1のサイドチャネル、ここで、上記溶液は特に界面活性剤を有し、上記界面活性剤は、上記少なくとも2のパケットの間または上記少なくとも1のパケットとその周囲との間の界面張力を変えることができ、上記デリバリー系は、少なくとも上記パケットがマイクロチャネルの上記部分を通過する間、上記溶液を上記マイクロチャネルに運ぶように構成されている。
【0022】
言い換えると、本発明に従うデバイスを用いるパケットの操作は、適切な電場を発生させることにより、または液体パケットの表面張力を調節することにより、または両方の技術を組み合わせることにより行なわれ得る。
【0023】
界面張力は、少なくとも20%、より好ましくは50%だけ調節され、好ましくは低下され得る。
【0024】
2つのパケットを崩壊させるように電場がかけられるマイクロチャネルの上記部分に2つのパケットが導入されると、上記電場によって双極子がパケット中に作られ、上記双極子は、2つのパケットが互いに引き合いそして崩壊するようにマイクロチャネルの軸に実質的に沿って配向される。
【0025】
表現「実質的に共線的」は、電場の方向の平均が、マイクロチャネルの軸と45°より小さい角度、例えば30°より小さい、好ましくは20°より小さい、より好ましくは10°または5°より小さい角度を作ることを意味する。
【0026】
本発明は、2つのパケットの崩壊(collapse)、例えば2つの小滴のマイクロチャネル内での合体、を誘発するために使用され得る。
【0027】
「電気合体(electrocoalescence)」と呼ばれる一般的な物理現象は、P. Atten, J. Electrostat. 30, 259(1993)に開示されている。電気泳動力のように、また誘電泳動とは対照的に、電気合体は場の勾配を必要としない。
【0028】
パケットが細胞である、またはいくつかの細胞を含むとき、本発明は、そのような細胞または多数の細胞のエレクトロポレーションを誘発するために使用され得る。
【0029】
本発明はまた、1つのパケットをより小さい大きさのいくつかのパケットに分裂させる、例えば1つの小滴からより小さい大きさの1つまたはいくつかの小滴を抜き取る、ために使用され得る。
【0030】
本発明に従うマイクロ容器は、任意の大きさを有し得る。好ましくは、1ミリメートルより小さい少なくとも1の寸法を有する。1実施態様では、上記マイクロ容器が、1mmより小さい直径を有するマイクロ毛細管である。例えば、上記毛細管の断面における少なくとも1の寸法が好ましくは100μm〜1mmである。1実施態様では、上記毛細管の少なくとも1の寸法が、約10nm〜100μm、好ましくは1μm〜100μmである。別の実施態様では、上記マイクロ容器が、1mmより小さい厚さを有するミクロ製作されたマイクロチャネルである。いくつかの実施態様では、上記マイクロチャネルの厚さが好ましくは約100μm〜1mmである。上記マイクロチャネルの厚さは、約10nm〜100μm、好ましくは1μm〜100μmである。
【0031】
本発明において、「マイクロ容器」、特に「マイクロチャネル」は、固体表面によって少なくとも部分的に包囲された容積を意味し、上記容積は小さい。好ましくは、本発明におけるマイクロ容器、特にマイクロチャネルは、1mm−1より実質的に大きい、好ましくは4mm−1より大きい、例えば10mm−1より大きい、恐らく1μm−1より大きい表面/容積比を有する。マイクロチャネルは、ナノチャネルをも包含する。
【0032】
1実施態様において、マイクロチャネルは好ましくは細長い、すなわち、その軸に沿った寸法が上記軸に垂直な任意の他の方向に沿った寸法よりも3倍、好ましくは10倍、例えば100倍または1000倍大きい。
【0033】
マイクロチャネルの軸は、直線であってもなくてもよい。
【0034】
マイクロチャネルは、断面が一定であってもなくても良い。断面は、例えば円形、楕円形、矩形、正方形であり得、またはお椀形状を有し得る。
【0035】
本発明において、「厚さ」は、マイクロチャネルの2つの向かい合う面の間の断面の最も小さい内側距離を意味する。例えば、円形の断面を有する円筒形のマイクロチャネルの場合、厚さは直径である。矩形の断面を有するスリット様マイクロチャネルの場合、厚さは矩形の小さい辺の長さである。
【0036】
マイクロチャネルの暑さは、数nm〜数mmの任意の値を取り得る。好ましくは、厚さが1μm〜1mmである。さらに好ましくは、マイクロチャネルの軸に沿った長さが厚さよりも少なくとも10倍大きいように選択され得る。マイクロチャネルは、10mm〜数mの長さ、例えば1cm〜50cmの長さを有し得る。
【0037】
好ましくは、電場がマイクロチャネルの軸と実質的に共線的であるところのマイクロチャネルの部分の軸に沿った長さが、マイクロチャネルの厚さと少なくとも同じ大きさでありかつマイクロチャネルの全長よりも小さい。本発明の好ましい実施態様では、マイクロチャネルの上記部分の長さが、上記部分の厚さの約1〜約100倍であり、好ましくは、上記部分の厚さの約1〜約10倍である。
【0038】
マイクロチャネルは、硬質であっても可撓性であってもよく、たとえば、可撓性の非導電性物質でできたチューブを含む。
【0039】
マイクロ容器、特にマイクロチャネルは、溶融シリカガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、任意の種類のエラストマーまたはプラスチック、例えばポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン(Parylene、商品名)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、非導電性酸化物、例えばガラス、二酸化ケイ素、ダイアモンド、非導電性セラミック、シリコーン、エラストマー、ガラス状物質、鉱物物質、セラミック、ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、コポリマーから選択される少なくとも1の物質から成り得る。
【0040】
本発明の例示的実施態様では、マイクロチャネルが少なくとも1の入り口および/または少なくとも1の出口を有する。所望により、上記口の少なくとも1が1またはいくつかの貯蔵器、1またはいくつかのポンプ、1またはいくつかの検出器もしくはセンサーあるいは1またはいくつかのサンプリングデバイスに連結され得る。
【0041】
マイクロチャネルは、連結したマイクロチャネルのネットワークの一部であり得る。
【0042】
本発明の好ましい実施態様では、上記電極アッセンブリが、マイクロチャネルの内部表面から、例えば絶縁物質によって、電気的に絶縁されている。絶縁物質は、少なくとも1nm、例えば少なくとも10nm、好ましくは少なくとも100nm、最も好ましくは少なくとも1μm、例えば数十μm乃至数百μmまでの厚さを有し得る。典型的には、より大きいマイクロチャネルのために、より厚い絶縁層が好ましくあり得る。この絶縁物質は、例えばポリマー状物質、例えばポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン、PMMA、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、PDMS、非導電性酸化物、例えばガラス、二酸化ケイ素、ダイアモンド、非導電性セラミックから成り得る。
【0043】
好ましくは、電極アッセンブリが、電極間の電場がマイクロチャネルの軸と実質的に共線的であるのに十分な距離だけ、マイクロチャネルの軸に沿って軸方向に間隔を置かれた少なくとも2の電極を含む。各電極は、マイクロチャネルの軸に関して対称であり得る。有利には、上記電極の少なくとも1が、マイクロチャネルを横切って互いに向かい合う少なくとも2の等電位部分を含む。上記電極の少なくとも1は、例えばマイクロチャネルを取り囲む円筒状の表面を有するモノリシック(monolithic)であり得る。1変形では、上記電極の少なくとも1が複合体である、すなわち、例えばマイクロチャネルを挟む少なくとも2の実質的に平行な等電位プレートを含む、複数の片から成る。電極はまた、上記した以外の形状を有し得る。
【0044】
これは、特許出願FR2794039またはPaikら、Lab Chip, 3, 28-33(2003)に開示された従来技術とは異なる。上記従来技術では、小滴の操作が、異なる構成により、すなわち、操作されるべき小滴が含まれるところのチャンバを横切って互いに向かい合う2の平らな電極の間に電位差を付与することにより得られる。
【0045】
好ましくは、電極が、マイクロチャネルの厚さよりも大きい、好ましくは厚さの2倍より大きい長さを有するギャップだけ間隔をあけて置かれる。
【0046】
発電ユニットは有利には、上記2の電極の間に電位差、好ましくは交差電位、を生じるように構成された電流および電圧発生器の少なくとも1を含む。
【0047】
有利には、電極アッセンブリが、マイクロチャネルの少なくとも1の断面において電場の振幅が10倍未満だけ、好ましくは5倍未満だけ、より好ましくは2倍未満だけ変化し、好ましくは実質的に同じであり、特に電極間のギャップにおいて実質的に同じであるように構成されている。
【0048】
電極アッセンブリを介して発電ユニットによって生じた電場は、任意の一時的なプロファイル、例えば連続の、可変のまたは交流(AC)のプロファイル、またはそのような一時的プロファイルの組み合わせを有し得る。たとえば、電場は可変周波数または二乗平均平方根(RMS)振幅を有するAC電場、あるいは連続およびAC成分の重ね合わせであり得る。
【0049】
「AC電場」は、時間的に周期的でありかつゼロ時間平均(zero time average)を有する任意の電場を意味する。本発明に従うAC電場の非制限的例は、正弦波、矩形波またはのこぎり波のAC電場である。
【0050】
発電ユニットは好ましくは、約0.01Hz〜約1GHz、好ましくは約1Hz〜約10MHzの範囲の周波数を有するAC電場を発生することができる。
【0051】
小滴の合体は、例えば100Hz〜10KHzの周波数によって効率的に達成される。少なくとも1の小滴の等分は、好ましくは、50Hz未満の周波数で達成される。
【0052】
発電ユニットは、パケットの、パケットを取り囲む流体の、およびマイクロチャネルの性質、ならびにデバイスのサイズに依存して、1V〜30kV、好ましくは60V〜2kVの範囲のRMS電圧をデリバリーするように構成され得る。電圧は、デバイスのサイズが増加するにつれて増加し得る。電極間のギャップにおけるマイクロチャネル内のRMS電場は、例えば、100V/cm〜100kV/cm、好ましくは500V/cm〜20kV/cmの範囲であり得る。
【0053】
発電ユニットは、振幅および周波数の少なくとも1が時間と関連して可変である電圧をデリバリーするように構成され得る。例えば、電場の振幅および/または周波数は、2つのパケットが接近接触するとき、変えられ得る。
【0054】
有利には、電極アッセンブリが支持体中に収容されており、支持体は、固定要素によって一緒に組み立てられた2つの分離した支持部材を有し、各支持部材は、電極アッセンブリの1つの電極を有する。支持体は、マイクロチャネルを受け入れるための少なくとも1のオリフィスを含み得る。
【0055】
マイクロチャネルがサイドチャネルに連結されるとき、サイドチャネルは、マイクロチャネルの寸法に匹敵する寸法を有する断面を有する。好ましくは、サイドチャネルの断面がマイクロチャネルのものより小さい。1変形では、サイドチャネルの断面がマイクロチャネルのものより大きい。
【0056】
上記サイドチャネルを伴うデリバリー系は、圧力制御手段または流動制御手段を含み得る。
【0057】
好ましくは、上記サイドチャネルおよび上記デリバリー系は、界面活性剤を含む溶液をマイクロチャネル中でデリバリーするように構成される。
【0058】
用語「界面活性剤」は、2つの流体間の界面張力を変えることができる任意の種、分子または分子の組み合わせを意味する。界面活性剤は、例えば、張力活性のまたは両親媒性の種であり得る。
【0059】
界面活性剤は、水中油系エマルジョンの形成を好むように選択され得る。
【0060】
パケットが非水性液体中に懸濁された水性小滴であるならば、上記界面活性剤は、典型的には、高HLB(親水性/親油性バランス)を有する界面活性剤、例えば15より大きいHLB値を有する界面活性剤である。そのような界面活性剤の非制限的例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、オレイン酸およびCTABである。
【0061】
パケットが周囲の水性流体中の油性小滴であるならば、上記溶液は、好ましくは、低いHLB、例えば15より低いHLB、好ましくは10より低いHLBを有する少なくとも1の界面活性剤を含む。
【0062】
油性相と水相との間の界面張力を減少させることができる、または小滴の合体を選好することができる多数の界面活性剤が、例えばEmulsions, afundamental and practical approach, J. S. Sjoblom Ed, Klumer, Dordrecht(1992)またはP. Becher, Emulsions, Theory and Practice, 第2版、R.E. Krieger Pub. Co, Malabar, Fl (1985)に列挙されている。
【0063】
デバイスが、デリバリー系に連結した第一のサイドチャネルを含む、2つの小滴を合体または分裂させるための本発明の例示的実施態様では、マイクロチャネルが、第二のサイドチャネルに連結され、第二のサイドチャネルは好ましくは第一のサイドチャネルに関してまたはその近くで連結されかつ最初のパケットの合体または分裂によって形成されたパケットを集めるように構成される。
【0064】
マイクロチャネルは、広範囲の均一のまたは複合の物質から成り得る。パケットが、上記パケットのための相互作用部位を提供するように構成された反応表面上で操作されるところの、米国特許第6294063号に開示された従来技術と反対に、本発明に従うマイクロチャネルの壁は、埋め込み用流体の存在下でのパケットとマイクロチャネルの壁との相互作用の危険を減少させる物質で作られ、または上記物質で処理され得る。パケットとマイクロチャネルとの間に化学的相互作用は全くないと考えられる。
【0065】
パケットが水系小滴である、例示的実施態様では、マイクロチャネル壁を処理することにより、および/または小滴中におよび/または流体添加物中に含めることにより、小滴とマイクロチャネルの壁との間の界面張力が、小滴と周囲の流体との間の界面張力より大きくされている。
【0066】
水系液体と表面との間の表面張力を高めるために多くの方法が使用され得る。例えば、本来疎水性の表面、例えばフルオロカーボンまたはポリエチレン、を選択することができる。また、表面を疎水性物質、例えばテフロン(登録商標)AF、シランまたはフルオロシラン、で処理することもできる。
【0067】
水と水素化油系流体との間の表面張力は、表面活性分子の存在によって低下され得る。多くのそのような表面活性分子が従来公知であり、例としてここにほんのいくつか挙げると、Pluronics(商品名)、Symperionics(商品名)、Triton(商品名)、Span(商品名)80、Tergitol(商品名)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、オレイン酸、メチルセルロース、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルセルロース、またはCoatex(商品名)などの表面活性剤が挙げられる。流体がフッ素化されているならば、フッ素化された界面活性剤、例えば1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール、または1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクタン−1−オールが特に適する。
【0068】
フッ素化された、水と混和しない流体は、下記要素の少なくとも1を含み得る。部分的にまたは完全にフッ素化されたアルカン、アルセンまたはアルシン、例えばパーフルオロアルカン、例えばパーフルオロデカリンである。本発明の1実施態様では、水と混和しない流体が、フッ素化された分子の混合物、例えば、「フレオン(Freon)」ファミリーのフッ素化された溶媒、またはFCフルオロ界面活性剤、例えばFC40またはFC75(3M製)である。好ましくは、上記混合物における所与の分子量の化合物はいずれも、混合物の75重量%以下である。
【0069】
本発明の例示的実施態様では、マイクロチャネルが少なくとも1のパケットを取り囲む流体で満たされており、上記流体は、任意の液体または気体状流体であり得る。ただし、それは、パケット中でまたはマイクロチャネルの壁と混和しない。
【0070】
パケットを取り囲む流体は、液体、例えば水と混和しない有機または無機の液体であり得る。
【0071】
流体はフッ素化された液体または気体であり得、小滴は有機またはヒドロ有機液体であり得、所望により種(species)を含む。
【0072】
本発明の例示的実施態様では、パケットおよび周囲の流体が異なる導電性および/または異なる誘電率を有する。例えば、パケットは、取り囲む流体の導電性より高い導電性を有し得る。
【0073】
本発明の例示的実施態様では、パケットが、非混和性の第二液体中に懸濁された第一液体の小滴であり、上記第一液体が第一よりも電気導電性が大きい。
【0074】
小滴は、水系小滴であり得る。上記水系小滴歯、任意の種類の天然の、人工の、有機のまたは無機の種、例えば生物学的分子、たんぱく質、たんぱく質複合体、酵素、ハプテン、抗原、抗体、アプタマー、エピトープ、核酸、ペプチド、ポリサッカライド、グリコペプチド、細胞、細胞の集合体、薬物、化学物質、ラテックス、生きたまたは死んだ生物、ウイルス、細胞小器官、リポゾーム、小胞、ミセル、合成または天然ポリマー、ナノ粒子、蛍光分子、量子ドット、化学試薬、バッファー、界面活性剤およびそのような種の任意の組み合わせを含み得る。
【0075】
本発明の別の例示的実施態様では、パケットが、水と混和しない液体の小滴であり、周囲の流体が水系溶液である。
【0076】
本発明は、マイクロチャネルの断面に匹敵する大きさを有するパケットの操作を可能にし得る。
【0077】
例示的実施態様として、上記パケットの最も小さい断面の面積が、どちらが小さいにしても、第一電極の位置または第二電極の位置でのマイクロチャネルの断面の面積の半分に少なくとも等しい。
【0078】
パケットは、マイクロチャネルの直径に匹敵し得る直径を有する球状の小滴、またはマイクロチャネルの断面全体に広がる細長い小滴であり得る。
【0079】
本発明に従うデバイスは、コロイドを融合して例えば鎖を形成するために使用され得る。
【0080】
デバイスはまた、スクリーニング処理のために使用され得る。
【0081】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも2のパケットをマイクロチャネル中で互いの方へ移動させるための方法に関し、これは特に、上記少なくとも2のパケットを崩壊させるためであり、上記マイクロチャネルは縦軸を有し、上記方法は、
上記少なくとも2のパケットをマイクロチャネルに導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分内に電場を発生させること
を含み、ここで、上記パケットが上記マイクロチャネル部分内に位置されるとき、上記電場が好ましくは、上記部分におけるマイクロチャネルの軸と実質的に共線的でありかつ上記2つのパケットを互いの方に移動させるように選択される振幅および周波数を有する。
【0082】
電場が、マイクロチャネルの軸に沿って軸方向に間隔をおいて置かれた少なくとも2の電極によって発生され、上記電極がギャップによって分離されているとき、上記方法は、
上記電場を発生させる前に、2つの電極間の上記ギャップ中に2つのパケットを位置させること、ここで上記パケットは静的平衡にある、および
上記電場を発生させること
を含み得る。
【0083】
1変形では、崩壊のためのパケットが、崩壊のインフライト(in-flight)操作を行なうように、流動する流れの中に最初に置かれ得る。上記方法は、したがって、
2つのパケットをマイクロチャネル中に置くこと、ここでパケットの少なくとも1は電極間のギャップの外にある、
上記パケットを、例えばマイクロチャネル中の流動する流れによって、ギャップの方に移動させること、および
少なくとも上記パケットがギャップ中に位置されるとき、上記電場を発生させること
を含み得る。
【0084】
本発明の例示的実施態様では、上記パケットの少なくとも1が生物学的物質、例えば細胞または細胞質核を含む。少なくとも2のパケットを崩壊させるための方法は、パケットが生物学的膜を含むときに特に有利である。
【0085】
上記方法は、ハイブリドーマを形成するために、または胚発生細胞を操作するために行なわれ得る。
【0086】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも2のパケットをマイクロチャネル中で互いの方に移動させるための方法に関し、この方法は特に、それらを崩壊させるため、または少なくとも1のパケットを分裂させるためであり、上記マイクロチャネルは軸を有し、上記方法は、
少なくとも2のパケットまたは少なくとも1のパケットをマイクロチャネルの1つの部分におくこと、および
上記少なくとも2のパケットの間または上記少なくとも1のパケットとその周囲との間の界面張力を変えることができる界面活性剤の溶液をマイクロチャネルの上記部分にデリバリーすること
を含む。
【0087】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも1のパケットを、縦軸を有するマイクロチャネル中で分裂させるための方法に関し、上記方法は
少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中に導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分に電場を発生させること、ここで、少なくとも上記少なくとも1のパケットが上記少なくとも一部分内に置かれるとき、上記電場が好ましくは上記部分におけるマイクロチャネルの軸と実質的に共線的でありかつパケットを分裂させるように選択される振幅および周波数を有する。
【0088】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも2のパケットの崩壊または少なくとも1のパケットの分裂をモニターする方法に関し、上記方法は、
上記で定義されたマイクロ流体デバイスを使用してマイクロチャネル中での崩壊または分裂を引き起こすこと、および
崩壊または分裂を、例えばビデオデバイスを使用することにより、または電気パラメータ、例えば、マイクロチャネルに含まれる少なくとも1の物質と例えば関連する電気抵抗を測定することにより、検出すること
を含む。
【0089】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも1のパケットを、軸を有するマイクロチャネル中で移動させる方法に関し、上記方法は、
少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中に導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分に電場を発生させること、ここで、少なくとも上記少なくとも1のパケットが上記部分内に置かれるとき、マイクロチャネルに沿ってパケットを移動させるように、上記電場が好ましくはマイクロチャネルの軸と共線的である。
【0090】
上記電場は連続であり得る。
【0091】
少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中で移動させる操作は、崩壊または分裂の操作とは独立して行なわれ得る。
【0092】
1変形では、少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中で移動させる上記操作が、崩壊または分裂の操作を行なう前に上記少なくとも1のパケットをマイクロチャネル中に適切に位置させるために行なわれ得る。
【0093】
本発明は、別の局面によれば、マイクロ容器中、特にマイクロチャネル中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法に関し、上記マイクロ容器は、マイクロ容器の内部空間を規定する少なくとも1の管状部分を有し、ここで、
上記管状部分が、内部がコーティングされていない、フッ素化されたバルク物質から成り、または
上記管状部分が、フッ素化されていないバルク物質から成りかつ管状部分の内部表面の周囲全ての上を永久の層でコーティングされている、または
マイクロ容器が、少なくとも2の管状部分の連続を含み、第一管状部分がフッ素化されたバルク物質で作られ、第二管状部分が、フッ素化されていないバルク物質で作られかつ内部周囲の全ての上を永久の層でコーティングされており、
上記永久の層が好ましくは疎水性であり、そして
上記マイクロ容器が少なくとも部分的に、上記パケットと混和しない担体流体で満たされ、上記担体流体は、上記パケットと上記担体流体との間の表面張力を減少させるのに十分大きい濃度の少なくとも1の界面活性剤を含む。
【0094】
表現「バルク(bulk)物質」は、モノリシックな(monolithic)物質を意味する。
【0095】
例えば、本発明に従うバルク物質は、同じ物質、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)で作られた2つの部分のアッセンブリとは異なる。
【0096】
バルク物質はまた、異なる物質で作られた2つの部分のアッセンブリ、例えばPDMSで作られた部分がガラスで作られた部分に結合したアッセンブリまたはボロシリケートで作られた部分がシリコーンで作られた部分に結合したアッセンブリとは異なる。
【0097】
そのような公知の系では、マイクロ容器またはマイクロチャネルの周囲の異なる部分間の化学的性質の相違が、パケットのまたは担体流体の、そのような部分との相互作用を異なるものにする傾向にあり、したがって、上記パケットに行なわれる操作にわたって不十分な制御を与える傾向にある。
【0098】
「永久の層」は、担体流体によってマイクロ容器の内部表面へ運ばれない、または上記表面から除去されない層を意味し、典型的には、上記流体中に添加された表面活性成分、特に、SPAN、SDS、Pluronics(商品名)などの界面活性剤、に関するケースがそうであろう。永久の層の使用は、それが比較的丈夫であり、そして上記担体流体の組成に関してより多くの自由度を与えるので、有利である。
【0099】
本発明に従う方法では、いくつかの適用のために、上記担体流体にそのような界面活性剤を添加することができる。
【0100】
管状部分は、円形のまたは円形以外の断面を有する。例えば、断面が矩形であり得る。
【0101】
管状部分の断面は、マイクロ容器の長さに沿って変わっても変わらなくてもよい。
【0102】
永久の層は、以下から選択される物質を含み得る。すなわち、溶融シリカガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、任意の種類のエラストマーまたはプラスチック、例えばポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン(商品名)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、非導電性酸化物、例えばガラス、二酸化ケイ素、ダイアモンド、非導電性セラミック、シリコーン、エラストマー、ガラス状物質、鉱物物質、セラミック、ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、コポリマー、シラン、フルオロシラン、フルオロポリマーである。
【0103】
本発明はまた、別の局面によれば、パケットと混和しない担体流体中に包埋された少なくとも1のパケットに少なくとも1の化学的、物理的または生物学的操作を行なうためのデバイスに関し、上記デバイスは、上記パケットを含む上記担体流体を取り囲む少なくとも1のマイクロ容器を含み、上記マイクロ容器の内部表面はフッ素化されており、上記担体流体は、少なくとも0.1cmc(臨界ミセル濃度)の比濃度の界面活性剤を含む。
【0104】
本発明に従うマイクロ容器は、任意の形状であり得る。例えば矩形断面のマイクロチャネル、円筒状のマイクロ毛細管、薄いスラブ様容器、または円筒状、ピラミッド状もしくは矩形のマイクロバイアルであり得る。
【0105】
いくつかの用途のために、本発明に従うデバイスは、1より多くの、好ましくは10より多くまたは100より多くの、そして数十万までのそのようなマイクロ容器を集めることができる。
【0106】
1実施態様では、マイクロ容器が少なくとも1の入り口を有する。マイクロ容器は、少なくとも1の出口を有し得る。所望により、上記口は1またはいくつかの貯蔵器に、1またはいくつかのポンプに、または1またはいくつかのサンプリングデバイスに連結され得る。
【0107】
所望により、マイクロ容器はまた、連結したマイクロチャネルおよび貯蔵器のネットワークの一部であり得る。
【0108】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロ容器、特にマイクロチャネル中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法に関し、上記マイクロ容器は内部の管状疎水性表面を有し、上記マイクロ容器は、少なくとも部分的に、上記パケットと混和しない担体流体で満たされ、上記流体は、上記パケットと上記担体流体との間の表面張力を減少させるのに十分大きい濃度の少なくとも1の表面活性剤を含む。
【0109】
上記操作は、少なくとも1のパケットを移動させること、少なくとも1のパケットを分裂させること、少なくとも1のパケットを少なくとも1の別のパケットと合体させること、および少なくとも1のパケットを反応させることの少なくとも1であり得る。
【0110】
移動させることは、担体流体をマイクロ容器中で循環させることを含み得る。
【0111】
操作は、電場の不存在下で行なわれ得る。
【0112】
操作は、少なくとも1のパケットをマイクロ容器の入り口からマイクロ容器の出口の方へ移動させることを含み得る。
【0113】
操作は、少なくとも1のパケットを少なくとも2の異なる物理的および/または化学的条件に、特に少なくとも2の異なる温度に順次暴露することを含み得る。
【0114】
本発明はまた、別の局面によれば、内部管状表面を有するマイクロ容器、特にマイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイスに関し、上記デバイスは、マイクロ容器の内部空間を形成する管状バルク疎水性部分をさらに含み、ここで、上記バルク部分は、疎水性の層でコーティングされている。
【0115】
1実施態様では、バルク部分が、フッ素化された物質で作られている。1変形では、バルク部分が、フッ素化されていない物質で作られ、かつフッ素された層でコーティングされている。
【0116】
マイクロ流体デバイスは、連続した少なくとも第一および第二のバルク部分を含み得、第一部分は、フッ素化された物質で作られかつコーティングされた層を有せず、第二部分はフッ素化されていない物質で作られかつフッ素化された層でコーティングされている。
【0117】
1変形では、マイクロ流体デバイスが、マイクロ容器の周囲を形成するための一緒に組み立てられた、テフロン(登録商標)で作られた2つの部分を含み得る。
【0118】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロ容器中、特にマイクロチャネル中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法に関し、上記マイクロ容器は内部表面を有し、上記マイクロ容器は、上記パケットと混和せずかつ少なくとも1の界面活性剤を含む担体流体を入れられており、パケットとマイクロ容器の内壁との間の界面張力と、パケットと担体流体との間の界面張力との間の相違が少なくとも26mN/m、好ましくは少なくとも35mN/mである。上記相違は、約35mN/m〜約45mN/mに含まれ得る。
【0119】
Ticeら、Langmuir 2003, 19, 9127-9133では、マイクロチャネル中の担体流体による小滴の輸送が、小滴と担体流体との間の界面張力が小滴とマイクロチャネルとの間の界面張力より小さいならば、マイクロチャネル壁との相互作用なしに行なわれることが提案されている。特に、上記著者らは、PDMSマイクロチャネル(界面張力38mN/m)中で、フルオロ界面活性剤(界面張力12〜14mN/m)を含むフルオロカーボン中に溶解された水小滴を使用した。
【0120】
この場合、小滴/マイクロチャネルと小滴/流体との間の相違が24〜26mN/mである。驚いたことに、同様の条件(シリコーン毛細管中での、FC40+1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール中の水小滴(流体と水との間の界面張力は12〜20mN/m(実施例11および図14を参照)であり、水の毛細管に対する界面張力は38mN/mである))で、この条件(表面張力の差が明確であり、18〜26mN/mを含む)が満たされたが、小滴の不完全な挙動および小滴間の汚染(実施例14を参照)がなおも認められることが見出された。
【0121】
これに対して、シリコーンがフルオロシラン(水との界面張力:55mN/m)でさらに処理される、すなわち、マイクロチャネルの表面に関してのパケットの界面張力とパケットと流体との間の界面張力との相違が35〜45mN/mの値に増加されるならば、汚染は観察されない。
【0122】
また、水小滴が、テフロン(登録商標)の毛細管(界面張力55nN/m)中の純粋なFC40(水/FC40界面張力:51.8mN/m)中で輸送されるとき、Ticeらの文献に述べられた条件が満たされ、それにもかかわらず、満足のいかない小滴輸送が観察され、小滴が破壊する。これに対して、小滴/流体の界面張力が、0.5〜3%の1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オールの添加によって10〜20mN/mの値に低下されるとき(マイクロチャネルの表面に関してのパケットの界面張力とパケットと流体との間の界面張力との相違が35〜45mN/mの値になる)、不規則な小滴運動および汚染は抑制され得る。
【0123】
好ましい実施態様では、担体流体中の界面活性剤の比濃度が少なくとも0.1cmc(臨界ミセル濃度)であり、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは1cmcである。
【0124】
有利には、担体流体中の界面活性剤の濃度が約0.01%〜約10%(重量/重量)、好ましくは約0.1%〜約3%である。
【0125】
好ましい実施態様では、上記界面活性剤がフルオロ界面活性剤、特にフルオロアルコールである。特に好ましい実施態様では、フルオロ界面活性剤が1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オールである。
【0126】
特に好ましい実施態様では、バルク部分がシリコーンで作られている。例えば、マイクロチャネルがシリコーン毛細管で形成されている。
【0127】
特に好ましい実施態様では、バルク部分がシラン化されている。例えば、バルク部分の内部表面がシランで処理されている。
【0128】
1実施態様では、上記シランが、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシランなどから選択される。好ましい実施態様では、上記シランが、モノメチルフルオロシラン、ジメチルフルオロシラン、トリメチルフルオロシラン、モノクロロフルオロシラン、ジクロロフルオロシラン、トリクロロフルオロシランなどから選択される。さらに好ましい実施態様では、上記フルオロシランがパーフルオロシランである。1実施態様では、上記シランが少なくとも2の炭素原子、好ましくは4の炭素原子、さらに好ましくは8の炭素原子さらに好ましくは12、16またはそれ以上の炭素原子を含む骨格を有する尾部を有する。1実施態様では、上記フルオロシランが、1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリメチルシランおよび1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシルトリエトキシシラン(Fluorochem)から選択される。上記シランは好ましくは、水を含まない溶媒、例えばエタノール、メタノール、オクタン、DMFなどに溶解される。別の実施態様では、水を含まない担体ガスをシランの表面上に吹きかけることにより、上記シランが気相から直接、表面上に、そしてマイクロチャネル中に沈着される。
【0129】
1実施態様では、上記シラン化が、アルゴン雰囲気下で行なわれる。別の実施態様では、上記シラン化が、空気雰囲気下で行なわれる。好ましくは、上記雰囲気が水を含まない。なぜならば、水はシランを加水分解し、そのグラフト化を妨げるからである。
【0130】
別の実施態様では、マイクロチャネルの内部表面が、シラン化の前に、当業者に公知のいくつかの方法の1つによって活性化され得る。1実施態様では、上記活性化が、プラズマ活性化である。好ましい実施態様では、上記活性化が、マイクロチャネル中で酸性溶液を流動させることにより行なわれる。1実施態様では、上記溶液が、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、フッ化水素酸から選択される。
【0131】
本発明はまた、別の局面によれば、少なくとも1のパケットを少なくとも1のマイクロチャネルから別のマイクロチャネルの方へ汚染なしに輸送することを可能にするコネクターに関し、上記コネクターはバルク物質によって構成され、その内部表面全体に疎水性の層を有し、上記層はフッ素化された物質およびシラン化された物質の1を含む。
【0132】
好ましい実施態様では、上記バルク物質がエラストマーである。
【0133】
さらに好ましい実施態様では、このコネクターがその入り口または出口の少なくとも1に関連し、異なる物質、好ましくは非エラストマー性物質で作られた別のマイクロチャネルに関連する。
【0134】
別の実施態様では、上記コネクターが、マイクロチャネルによって関連される少なくとも3のオリフィスを有する。興味深いことに、このコネクターはまた、上記コネクター内部の流体の流れを制御するために、その種々のオリフィスの間のピンチパルブまたはペリスタルティックポンプの中に挿入され得る部分を含む。
【0135】
上記コネクターは、所望により、成形された断片をまず作製し、次いでそのオリフィスの少なくとも1にエラストマー性チューブを連結することにより作製され得る。また、上記エラストマー性チューブは、その内部表面上に疎水性の層を有する。
【0136】
好ましくは、そしてマイクロ流体系においてパケットを操作するために従来使用されているほとんどのマイクロチャネルと対照的に、本発明では、マイクロチャネルの断面が円筒状である。これは、流体または固体物質を保持し、接触角を押さえ、従ってパケット間の汚染の危険を増加させる傾向にある鋭角を回避する。
【0137】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロ容器が、
フッ素化されたバルク物質で作られたマイクロ容器、
フッ素化されていないバルク物質で作られ、その周囲全体が永久の絶縁層で被覆された表面を有するマイクロ容器、および
フッ素化されたバルク物質で作られた少なくとも一部分およびフッ素化されていないバルク物質で作られた少なくとも一部分を含み、フッ素化されていないバルク物質で作られた部分がその全周囲を永久の絶縁層で被覆されたマイクロチャネル
から選択されるところのマイクロ容器に関し、上記マイクロ容器が、少なくとも部分的に、パケットと混和しない担体流体で満たされ、上記流体が、上記パケットと上記担体流体との間の表面張力を減少させるのに十分な大きさの濃度の少なくとも1の界面活性剤を含む。
【0138】
本発明は、別の局面によれば、少なくとも1のマイクロ容器、特に少なくとも1のマイクロチャネル、およびマイクロ容器と連絡するコネクターを含むマイクロ流体デバイスに関し、上記コネクターが、上記マイクロ容器を別のマイクロ容器の少なくとも1、特にマイクロチャネル、およびデバイスの入口または出口に連結するように構成され、上記コネクターが、少なくとも1の疎水性の層を含む内部表面を有する。
【0139】
本発明はまた、別の局面によれば、マイクロチャネルを形成する毛細管の一端に取り付けられるように構成されたコネクターに関し、上記コネクターが、少なくとも1の疎水性の層を含む内部表面を有する。
【0140】
本発明はまた、別の局面によれば、
マイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイス、および
上記マイクロ流体デバイスに取り付けられる、上記に開示したコネクター
を含むキットに関する。
【0141】
本発明はまた、別の局面によれば、パケットに少なくとも1の操作を行なうためのキットに関し、上記キットが、
少なくとも1の疎水性物質を含む内部表面を有するマイクロ容器、特にマイクロチャネル、および
上記パケットと混和しない担体流体、ここで、上記担体流体が、上記パケットと、水と混和しない流体との間の表面張力を減少させるのに十分な大きさの濃度の少なくとも1の界面活性剤を含む
を含む。
【0142】
本発明はまた、
上記に開示したコネクター、および
上記コネクターに連結された少なくとも1の毛細管
を含むアッセンブリに関する。
【0143】
上記コネクターはT−コネクターであり得る。
【0144】
好ましくは、毛細管が、フッ素化されたまたはシラン化された内部表面を有する。
【0145】
本発明はまた、別の局面によれば、PCRを行なうためのデバイスに関し、上記デバイスは、界面活性剤を含むフルオロ溶媒で少なくとも部分的に満たされた毛細管で作られたコイルを含むマイクロチャネルを含み、上記コイルは、種々の温度に暴露される変性領域、アニーリング領域および伸長領域を含む。
【0146】
本発明は、非制限的実施態様の下記詳細な説明を読み、添付する図面を見ることにより一層理解され得る。
【0147】
図1は、本発明に従うマイクロ流体デバイスの概略部分図である。
図2は、図1のデバイスの断面の概略図である。
図3は、図2のデバイスの支持部材の概略透視図である。
図4A〜4Cおよび5A〜5Cは、本発明に従う2つの合体操作の3工程をそれぞれ概略的に示す。
図6A〜6Cは、本発明に従う、小滴を等分する3工程を概略的にかつ部分的に示す。
図7は、マイクロチャネルの一部における電場分布の概略図である。
図8は、本発明の1変形に従うデバイスの概略的部分図である。
図9および13は、本発明の他の変形を概略的にかつ部分的に示す。
図14は、実施例11で測定された、フルオロ界面活性剤1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オールとフッ素化オイルFC−40との間の界面張力をプロットしたものである。
図15は、本発明に従うセグメント化された流れの中でDNAを増幅するために実施例12および13で使用されたサイクルPCRシステムを概略的にかつ部分的に示す。
図16は、実施例12に記載された、小滴の列における増幅の生成物のゲル電気泳動である。
図17は、実施例13に記載された、近隣の小滴間に汚染が無いことの証明である。
図18は、未処理、未洗浄のシリコーン毛細管における小滴の形状を示す。(a)および(b)は担体流体としてFC40を用い、(a)は初期の小滴であり、(b)はそれより後の小滴(上記列の60個目より後の小滴)である。(c)〜(e)は種々の濃度のフルオロ界面活性剤溶液を使用し、(c)は0.15重量%のフルオロ界面活性剤、(d)は0.5重量%のフルオロ界面活性剤、(e)は3.0重量%のフルオロ界面活性剤である(実施例14Aおよび14B)。
図19は、アルゴン雰囲気中でシラン化されたシリコーンチューブにおける小滴の形状を示す。(a)は7.5体積%のシラン、(b)は5体積%のシラン、初期の小滴、(c)は5体積%のシラン、後の小滴(100個目より後)、(d)は1体積%のシラン、(e)は0.25体積%のシランである(実施例14C)。
図20は、空気中でシラン化されたチューブにおける小滴の形状を示す。(a)は10体積%のシラン、5分反応、(b)は7.5体積%のシラン、5分反応、後の小滴の形状(列の110個目より後の小滴)、(c)は5体積%のシラン、30分反応、HCl活性化、(d)は5体積%のシラン、30分反応、プラズマ活性化、(e)は2.5体積%のシラン、30分反応である(実施例14D)。
図21は、0.5重量%のフルオロ界面活性剤でシラン化されたシリコーン管中での小滴の形状を示す。(a)は2.5体積%のシラン、30分反応、200個目の小滴、(b)は5体積%のシラン、30分反応、200個目の小滴である(実施例14E)。
図22〜24は、本発明に従う、汚染のないコネクターを概略的にかつ部分的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、本発明に従うマイクロ流体デバイスの概略部分図である。
【図2】図2は、図1のデバイスの断面の概略図である。
【図3】図3は、図2のデバイスの支持部材の概略透視図である。
【図4】図4のA〜Cは、本発明に従う合体操作の3工程を概略的に示す。
【図5】図5のA〜Cは、本発明に従う合体操作の3工程を概略的に示す。
【図6】図6のA〜Cは、本発明に従う、小滴を等分する3工程を概略的にかつ部分的に示す。
【図7】図7は、マイクロチャネルの一部における電場分布の概略図である。
【図8】図8は、本発明の1変形に従うデバイスの概略的部分図である。
【図9】図9は、本発明の他の変形を概略的にかつ部分的に示す。
【図10】図10は、図9における小滴が合体する図を概略的に示す。
【図11】図11は、本発明の他の変形を概略的にかつ部分的に示す。
【図12】図12は、図11における小滴が分裂する図を概略的に示す。
【図13】図13は、本発明の他の変形を概略的にかつ部分的に示す。
【図14】図14は、実施例11で測定された、フルオロ界面活性剤とフッ素化オイルとの間の界面張力をプロットしたものである。
【図15】図15は、実施例12および13で使用されたサイクルPCRシステムを概略的にかつ部分的に示す。
【図16】図16は、実施例12におけるゲル電気泳動の結果を示す。
【図17】図17は、実施例13におけるゲル電気泳動の結果を示す。
【図18】図18は、実施例14Aおよび14Bにおける小滴の形状を示す。
【図19】図19は、実施例14Cにおける小滴の形状を示す。
【図20】図20は、実施例14Dにおける小滴の形状を示す。
【図21】図21は、実施例14Eにおける小滴の形状を示す。
【図22】図22は、本発明に従うコネクターを概略的にかつ部分的に示す。
【図23】図23は、本発明に従うコネクターを概略的にかつ部分的に示す。
【図24】図24は、本発明に従うコネクターを概略的にかつ部分的に示す。
【実施例】
【0149】
1:本発明の第一の実施態様
図1は、本発明に従うマイクロ流体デバイス1を示し、上記デバイスは、マイクロチャネル2および電極アッセンブリ3を含む。マイクロチャネル2は縦軸Xおよび円形である内部断面を有する。
【0150】
電極アッセンブリ3は1対の電極4を含み、各電極4は金属の円柱、例えばアルミニウムを含む。各電極4の長さは例えば4mmであり、内径1.5mmおよび外径1.9mmである。
【0151】
電極4は、マイクロチャネル2の周りに置かれ、軸Xに沿ってギャップ6だけ間隔をあけて置かれている。電極4は、電気ワイヤを含む連結要素8によって発電ユニット9に連結されている。
【0152】
電極4は、2つの支持部材11を含む支持体10に収容されており、各支持部材は、Plexiglas(商品名)で作られた実質的に直方体であり、例えば幅24mm、高さ20mmおよび深さ20mmを有する。
【0153】
第一の円筒形の穴12(例えば直径1.9mm)が、電極4を保持するために、支持部材11の中央でX軸に沿って各支持部材11中に通されている。上記第一の穴12は、支持部材11の前方面13から、前方面13と向かい合う後方面14の方へ延びている。
【0154】
第二の穴17は、対応する電極4を発電ユニット9に連結する連結要素8を受け入れるために、第一の穴12に垂直に通されている。
【0155】
各支持部材11は、それらの軸が穴12の軸に平行であり、それぞれテフロン(登録商標)スクリュ22および金属ロッド23を受け入れるように構成されている2つの穴20および21をさらに含んで、穴12と共に組み立てられた支持部材11を共線的であるように維持している。
【0156】
各電極4は、図2に示されるように、電極4が前方面13と面一であるように対応する支持部材11に取り付けられている。
【0157】
支持部材1の前方面13は、例えば2mm長さだけ間隔をあけて置かれて、電極4の間に2mmのギャップ6を規定している。
【0158】
発電ユニット9は、例えば、1kHzまでの周波数を有する2kVまでの正弦波電圧をデリバリーするように増幅器に連結されたファンクションジェネレータを含む。発電ユニット9は、中央処理ユニット、例えば電極4にデリバリーされる電圧をプログラムによって制御するためのコンピュータをも含み得る。
【0159】
図3は、等電位線と共に矢印によって示される電場の方向を図式的に示す。
【0160】
分かるように、電場はマイクロチャネル2の軸Xと実質的に共線的であり、従って電気合体に有利であり、誘電泳動の影響を最小にする。
【0161】
デバイス1は、図1に示されるように、CCDカメラ31およびビデオレコーダー32に連結された双眼顕微鏡30の観察台上に取り付けることができ、従って、マイクロチャネルでの2つのパケットの崩壊または1つのパケットの分裂のモニターを可能にする。
【0162】
デバイスは、崩壊または分裂後にパケットが排出されるように構成され得る。
【0163】
2.本発明の第二の実施態様
図8は、2つの複合電極35を含む電極アッセンブリ3’を示す。各複合電極は、互いに向かい合いかつマイクロチャネル2’を挟む1対の実質的に平行な等電位プレート36を有し、上記マイクロチャネル2’は矩形断面を有する。各対のプレート36は、発電ユニット9の各極に連結している。
【0164】
3.振動法の例
1実施態様では、小滴流体が、マイクロチャネル2の壁との相互作用を防ぐために0.5重量%の1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール(Fluorochem(商品名))が添加されたフッ素化オイル(FC-40、3M)の担体流体中での観察のために0.25重量%のブロモフェノールブルーで染色されたTBE5xバッファー(0.45MのTrisbase(商品名)、0.45Mのホウ酸および0.01MのEDTA;Sigma(商品名))である。小滴の導電性は3mS/cmであり、担体流体の導電性は2.5x10−13mS/cmである。小滴形成のために、2つの流体が、1.5mlエッペンドルフ管中で、下層が約0.6mlの担体流体(FC-40/1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール)から成り、上層が約0.6mlの小滴流体(TBE5x/ブロモフェノールブルー)から成るように層にされる。
【0165】
マイクロチャネル2は、例えば、担体流体で満たされたHamilton Gas-Tight250μlシリンジを使用して、シリンジポンプ(KD Sientificによる市販)から満たされる。マイクロチャネルにポンプ供給された過剰の流体は、排出物用貯蔵器に集められ得る。毛細管を完全に満たした後、マイクロチャネル2は、層を形成したエッペンドルフ管の担体流体相中に置かれる。ついで、ポンプが1ml/時の速度で吸引される。担体相と小滴相との間のマイクロチャネルを手動によりまたはマイクロチャネルを機械式発振器に取り付けることにより、例えば約2Hzで振動させることにより小滴が形成される。この方法で形成された小滴はチャネルとほぼ同じ直径を有する。
【0166】
4.マイクロチャネル中の小滴を移動させる方法の例
この方法は、上記で定義された任意のデバイスを用いて行なわれ得る。
1つの小滴が、上記した振動法によって形成される。シリンジポンプを使用して、小滴が電極4間のギャップ6中に吸引される。小滴が、上流電極の直前のギャップ部分に到達すると、流れが停止され、系が平衡に落ち着くようにされる。次いで連続電圧がかけられて、小滴に最も近い電極4に正の電圧がかけられ、最も遠い電極が接地される。接地された電極の方への小滴の動きがビデオに記録され得、所与の移動のための時間が測定される。小滴は、電極4間にあるときにのみ移動し、接地された電極下にあるときに停止する。
【0167】
5.静的合体の例
静的合体は、上記で定義された任意のデバイスによって行なわれ得る。
小滴は、2つの小滴間の空間が電極4間のギャップ6より大きくなるように上記した振動法によって形成される。最初に、第一の小滴がシリンジポンプを使用して電極4間のギャップ6中に導かれる。小滴が上流電極に到達すると、流れが停止する。上記小滴は、下流電極に達するまで、上記の電場の作動を使用して、先に適用された流れの方向と反対に移動される。流れは、第一の小滴が上流電極に戻るまで再開始する。第二の小滴が電極4間に現れるまで、この手順が繰り返される。電極中におけるマイクロチャネルの位置は次いで、第二の小滴が電極間のギャップ6の外になるように調整される。第一の小滴は、2つの小滴間のギャップが例えば0.5mmになるまで、先に適用された流れの方向と反対に移動される。次いで、マイクロチャネルは、小滴の2つの最も接近した端の間の中点が2つの電極間の中心に置かれ、系が平衡に落ち着くようにされるように再配置される。
【0168】
図4A〜4Cに示される例では、第一の小滴40が約540μmの直径を有し、第二の小滴41が約560μmの直径を有する。2kV、1kHzの正弦波電圧を電極4にかけると、最初の小滴の移動は一様であり、小さい方の小滴40がわずかに速い速度で移動する(図4Aおよび図4B)。小滴40および41が接近すると、それらは急速に加速し、介在する膜を排出する(図4C)。これは、デバイス1が、最初に互いに接近する小滴の本質的に瞬間の合体を提供することを示し、例えば2つの小滴が同時にT-交差点に到達した後に生じる。
【0169】
6.インフライト合体の例
インフライト合体は、上記で定義された任意のデバイスによって行なわれ得る。
第一の小滴43は約580μmの直径を有し得、第二の小滴は約560μmの直径を有し得る。
【0170】
小滴が位置された後、両方の小滴が電極4間のギャップ6の外になるようにマイクロチャネルが移動される。次いで、2kV、1kHzの正弦波電圧が2mmの間隔で置かれた電極にかけられ、実験の間ずっと保たれる。電場がかけられた後、50μL/時のシリンジポンプによる吸引によって流動が開示される。
【0171】
小滴42が電極4間のギャップ6に入り、小滴43の不存在下で一定速度で移動する(図5A)。13秒後に小滴43の先導界面が現れるが、小滴42には影響を及ぼさない。追跡する小滴が電極間のギャップ6の中に十分入ったときにのみ、誘電力が現れる。その後、合体時間は、このような広く分離した小滴の場合には、静的合体の場合と本質的に同じである(約8秒)が、動力学は、流動故にわずかに異なる。誘電力は、小滴42を停止するのに十分強く(図5B)、その後、小滴43が一定速度で小滴42の方に移動し、静的合体の場合と本質的に同じ速度でその距離を詰める。小滴が互いに接近すると、強い誘電力が介在する流体を排出し、合体が達成される(図5C)。
【0172】
7.小滴分裂の例
単一の大きい小滴46が、上記したように、しかしより低い振動数で界面を振動させることにより形成される。小滴46が、シリンジポンプによる吸引によって電極間のギャップ6に導入される。(図6A)。本実施態様で描かれた小滴は、2.5mmの長軸を有する楕円体である。2kV、0.1Hzの矩形波電圧をかけると、小滴46が2つのより小さく安定な小滴47に分裂し(図6Bおよび6C)、それらはギャップ6から放出される。
【0173】
汚染のない小滴分裂、すなわち、1つの大きい小滴を付随小滴を何ら形成することなく2つのより小さく安定な小滴に分裂すること、を達成するための典型的な操作条件は、0.1〜1Hzの周波数および1kV〜2kVの振幅を有する矩形波電圧にあり得る。そのような条件下では、小滴が1分未満で分裂し得る。最も低い電圧がかけられると「最もきれいな」分裂が得られるが、より時間がかかり得る。小滴の長さは、ギャップ6の長さ程であり得る。
【0174】
8.本発明の他の実施態様
図9および10に示されるように、電極4間のマイクロチャネル部分50は、横断チャネル51とT交差を形成し得る。電極4間の電場によって引き起こされる小滴の合体後、得られる小滴52は、横断チャネル51中で、例えば横断チャネル51に連結されたシリンジポンプを使用することによって駆動され得る。
【0175】
図11および12に示されるように、小滴分裂は、2つの電極4間に電場をかけることにより比較的大きい塊の流体54から小滴53を引き抜くことにより行なわれ得る。
【0176】
従って、小滴53は、例えば電極4をプログラムによって制御することにより、所望のときに形成され得る。
【0177】
9.本発明の別の実施態様
図13は、本発明に従うデバイス60を示し、上記デバイス60は、部分62において第一および第二のサイドチャネル63および64に連結したマイクロチャネル61を含む。
【0178】
部分62は例えば、マイクロチャネルの実質的に中央に位置され得る。
【0179】
この実施態様では、マイクロチャネル61が約100μmの厚さおよび約300μmの幅を有し得、サイドチャネル63は約100μmの厚さおよび約50μmの幅を有し得る。
【0180】
サイドチャネル63は、ヘキサデカン中のオレイン酸およびSDSの界面活性剤の溶液を臨界ミセル濃度より上の濃度で含む貯蔵器67を有するシリンジポンプを含むデリバリー系66に連結されている。
【0181】
マイクロチャネル61は、水性小滴のマイクロチャネル壁との相互作用を回避するように調整された濃度のSPAN(商品名)80を含むヘキサデカンを含む溶液で満たされている。
【0182】
サイドチャネル64は、溶液をマイクロチャネル61から吸引するように構成された吸引モードのシリンジポンプ68に連結されている。
【0183】
5XTBEバッファーの2つの小滴70が、マイクロチャネル61中にその両端によって導入され、そして移動される。両端による小滴70の吸引は、小滴70が両側から同時に部分62に到達するように同時に進行される。小滴70が部分62にあるとき、貯蔵器67中に含まれる界面活性剤の溶液が、小滴70が合体するような所定の流速で、デリバリー系66によってマイクロチャネルの部分62に運ばれる。最適流速は、小滴が各衝突で合体するまで流速を徐々に増加させることにより決定され得、それが最適流速を定める。
【0184】
別の実施態様では、界面活性剤の溶液が、連結部分62への小滴の対の到着と同期したパルスでデリバリーされ得る。
【0185】
得られる小滴71は、更なる使用のためにシリンジポンプ68に集められ、または例えば検出のために別のマイクロチャネルに運ばれる。
【0186】
10.フルオロポリマー毛細管中に含まれるフッ素化オイル中での規則的な配列の水滴の形成および輸送の例
小滴の列は、電気ピンチバルブ(NResearch、Caldwell NJ)に連結されたY−コネクター(Upchurch Scientific)を使用して作られる。Y−コネクターへの1つの入り口は、観察を容易にするために0.25重量%のブロモフェノールブルーで染色されたTBE5Xバッファー(0.45MのTrisbase、0.45Mのホウ酸および0.01MのEDTA、Sigma)で満たされた。Y−コネクターの他の側および試験毛細管(PFA、内径800μm、Upchurch Scientific)は、バルク(bulk)フッ素化オイルFC−40(3M)または種々の量のフルオロアルコール界面活性剤(1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール、Fluorochem)を含むFC−40で満たされた。小滴の列は、コンピュータで制御されるHarvardミリリットルモジュールシリンジポンプによって吸引しながらLabViewプログラムによるエレクトロバルブの反復(サイクル)を行うことにより作られた。典型的なサイクルは、TBEラインからの吸引を6秒およびFC−40ラインからの吸引を8秒行なうことから成る。小滴は、双眼顕微鏡(オリンパス)によって観察され、CCDカメラ(日立)およびWinTVを使用して記録された。
【0187】
流体系における小滴列の安定性が最初に試験される。セグメント化流PCR(segmented flow PCR)に関する先の研究では、小滴間のクロス汚染が、小滴の不安定性および小さい付随小滴の形成に起因された。個々の小滴における小滴破損を捜すだけでなく、数百の小滴を含む小滴列の全体の安定性を観察することが望まれた。そのような列の安定性は、本発明者らの技術の高処理量用途のために必須である。
【0188】
小滴が純粋なFC−40に引きずられるとき、それらが壁に固着することが時折あることが観察された。これは予期しなかったことである。なぜならば、壁と担体流体の両方がフッ素化されており、壁はFC−40によって強く濡らされるであろうことが予期されたからである。固着は、押出し工程によって製造されるバルク毛細管において予期されるであろう、毛細管壁における欠陥(粗さまたは化学的不均一性)に帰された。小滴と毛細管壁の間のFC−40の層は非常に薄く、壁表面への小さい混乱(perturbation)は、潤滑性を乱し得た。いずれにしても、1つの小滴が壁上に引きずられると、たとえ一時的であっても、列は全体としてその安定性を失う。追跡する小滴は引きずられた小滴と衝突し、流体を交換し、引きずられた小滴は壁から放出され、追跡する小滴は引きずられるようになる。このプロセスは永久に進行し、任意のPCR用途において破滅的であろう。
【0189】
そのとき、フルオロアルコール界面活性剤が0.5〜3.0重量%の範囲でFC−40に添加される。200個を超える小滴を含む列を作った後、壁への一時的な付着、付随する小滴の形成および小滴列における不安定性のいずれも観察されない。
【0190】
11.水滴とフルオロ界面活性剤を含む溶媒との間の界面張力の測定
界面張力の測定を、自家製の小滴−体積張力計を使用して行なった。FC−40/界面活性剤滴が、0.8mmIDテフロン(登録商標)毛細管からTBE5xバッファーの貯蔵器中へ分配される。50μLのHamilton気密シリンジおよびHamiltonPSD/2シリンジポンプを最大分解能で使用して、小滴体積を、工程間の一時的な待ち時間を伴って25nLの増加量で増加することができた。界面活性剤の平衡を可能にするために、典型的には工程間で30秒待った。張力測定は、少なくとも15個の異なる小滴の平均であり、テフロン(登録商標)先端の濡れに関して補正される。
【0191】
12.バルクフルオロポリマーで作られたチャネルを含む、本発明に従うデバイスでのDNAのPCR増幅の例
PCRデバイス80を図15に示す。上記デバイス80は、変性82、アニーリング83および伸長84領域に対応する3ピースに機械加工された直径4cmの銅シリンダ81を含む。伸長領域84は、他の2つの領域の大きさの2倍であり、従って、シリンダ81の半分を占める。3つの領域は、ポリカーボネートシート85によって互いに分離されており、シートは銅シリンダのピース間に添えられている。ヒーターの2つの端はポリカーボネートシリンダによってキャップされて構造的安定性を付与し、一方、2つのゾーンの間の分離を保持している。1/4シリンダにつき3つの小さい穴88が、デバイス全体を通って開けられて空気冷却のためのベントを付与する。2つの小さい穴89(熱電対用)および1つの大きい中央の穴90(ヒーター用)が各温度領域においてシリンダを通って部分的に開けられている。ヒーターおよび熱電対は、ヒーターの空気冷却側には通じていない。各領域は、銅シリンダのそれぞれの領域と接触するアルミニウムホイルの薄い層で被覆されて上からの加熱を付与する。ホイル層は、ポリカーボネートのシェルおよび木綿の層によって被覆され、それによってシリンダを絶縁し、毛細管を横切る均一な温度を付与する。小さいタービンが、1/4シリンダにつき3つの換気孔を通って環境空気を送り、より良好な温度制御および均一性を可能にする。
【0192】
各領域は、抵抗ヒーターおよび2つのPt−100熱電対を含む。抵抗ヒーターは、それぞれのゾーンの中央に位置され、一方、熱電対はゾーン間の界面近くに位置される。加熱要素および熱電対は慣用のエレクトロニクスに連結される。熱電対は、Keithley2701マルチメーターを介して、LabViewに書かれた慣用のPIDプログラム制御と連絡する。各ゾーンの温度は一時的に設定され得る。ここで検討される実験に関して、94℃の変性温度、55.5℃のアニーリング温度よび72℃の伸長温度が使用された。本発明者らの設計により、各ゾーンを横切る±0.2℃の温度差が達成される。
【0193】
4.5m長さの透明なPFA毛細管92(内径800μm、Upchurch Scientific)が変性領域中の溝を通ってシリンダに入り、約1分の最初の変性工程を付与する。次いで、毛細管がシリンダの周りに35回巻きつけられ、これは35PCRサイクルに対応する。毛細管は延長セグメント中の穴を通ってヒーターを出て行き、35回目のサイクル上で約30秒の更なる延長を付与する。
【0194】
PCR増幅:鋳型はLitmus 28i (New England Biolabs)の2823塩基対のDNA断片である。この断片が、Eurogentecプライマー(下流プライマー5’−CGC−ATT−GCG−GTA−TCT−AGA−ACC−GGT−GAC−GTC−3’、上流プライマー5’−AGC−TTG−GAG−CGA−ACG−ACC−3’、Eurogentech Oligold)を使用して塩基2008から塩基2580までの572塩基対に関して増幅される。50μLのPCRミックスが、Ready Mix Taq 反応混合物(Sigma)を使用して製造者の取り扱い説明書に従って最大濃度の鋳型およびプライマーを用いて調製される。
【0195】
担体流体は、0.5〜1.0重量%のフルオロアルコール界面活性剤(1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オール、Fluorochem)を含むバルクフッ素化オイルFC−40(3M)である。界面活性剤は、毛細管壁への小滴の一時的吸着を防ぐ。2μLの水性小滴が、HamiltonPSD/2ポンプおよび100μLのHamilton気密シリンジを使用して毛細管の出口からの吸引により入り口に注入される。小滴は、5μLのFC−40スペーサーによって互いに分離される。所望の数の小滴を注入した後、出口がHamiltonポンプから外され、次いで入り口が、5mlのHamilton気密シリンジを有するコンピュータ制御されるHarvardミリリットルモジュールポンプに連結される。小滴は、0.1cm/秒で循環される。
【0196】
小滴が出口で集められ、0.5xTAEバッファー中の1重量%アガロースゲル上でゲル電気泳動により分析される。対照の増幅サンプルが、94℃で1分の1サイクル、次いで94℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で1分の35サイクルを有する古典的なPCRサーマルサイクラー(Perkin Elmer)中で50μLのPCRミックスの残りの体積を増幅することにより作られる。これは、本発明者らの連続流PCRにおける循環に似ているが、加熱および冷却に関する時間のずれがあり、上記古典サイクラーは、全増幅が本発明らの流体デバイスの約2倍時間がかかることを意味する。増幅された対照系の2μLアリコートがゲル電気泳動のために使用される。
【0197】
5小滴の列が作られ、各々がPCRミックスおよび鋳型を含む。全小滴におけるこの成功した増幅の結果を図16に示す。レーン1:1kbpのDNAはしご(New England Biolabs)、レーン2:DNAを有するミックスの2μL対照サンプル、レーン3:小滴1、レーン4:小滴2、レーン5:小滴3、レーン6:小滴4、レーン7:小滴5。
本発明に従うデバイスにおける増幅(レーン3〜7)の程度は、慣用のサーマルサイクラーにおいて得られたもの(レーン2)に匹敵し得る。
【0198】
実施例13:バルクフルオロポリマーで作られたチャネルにおける小滴間の汚染の研究
系が、小滴間の交差汚染に関して試験された。全条件は実施例12と同じであるが、2つの別個のPCRミックスが作られる。第一のミックスは鋳型、プライマーおよびReady Mix反応混合物を含み、第二のミックスは、何ら鋳型を有しないことを除いて同じである。5つの小滴が吸引され、第3の小滴のみが鋳型を含む。先端からの汚染を回避するために、先端が、各小滴の注入間に蒸留水で洗浄された。図17は、この実験からのゲル電気泳動結果を示す。レーン1:1kbpのDNAはしご(New England Biolabs)、レーン2;DNAを有しないミックスの5μL対照サンプル、レーン3:DNAを有するミックスの2μL対照サンプル、レーン4;小滴1(鋳型なし)、レーン5:小滴2(鋳型なし)、レーン6:小滴3(鋳型あり)、レーン7:小滴4(鋳型なし)、レーン8:小滴5(鋳型なし)。種々の小滴間に認められ得る汚染はない。何らかのDNA増幅を示す唯一の小滴は、DNAを含む第3小滴である。
【0199】
実施例14:フッ素化物質の層を有するコーティングを有するおよび有しない、非フッ素化物質で作られたチャネルでの小滴輸送の例
この一連の実施例では、マイクロチャネルが、Cole Parmerによって市販されているシリコーンチューブ(内径0.8mm)で作られる。担体流体はFC−40(3M)であり、小滴は、水性バッファーTBE5xで作られる。全ての場合において、小滴の列は、実施例13に記載されたものと同じプロトコルに従って作られ、チューブにおける小滴の形状および移動が、双眼鏡およびCCDカメラを用いて直接観察され写真に撮られた。
【0200】
14A:未処理シリコーンチューブでの純粋なFC40中のTBEの小滴
いくつかの場合において、長球形状を有する小滴が現れた(図18a)。これは、壁が濡れていなかったことを示す。しかし、数百の小滴を有する小滴列を形成した後、壁が、列の間の何らかの点において濡れてきた(図18b)。いくつかの場合には、第一の小滴が図1bのように見えた。いくつかの場合に観察された最初の濡れていない挙動は、製造プロセスからの残留生成物によると推定された。多くの小滴が系を移動されると、この未知の生成物が壁から除去される。この仮説をテストするために、チューブが5体積の蒸留精製水で洗浄される。その後、最初の小滴は常に図18bのような挙動を有する。その後の全ての実験のために、チューブはいつも5体積の蒸留精製水で洗浄されて初期条件における変動を除去する。
【0201】
14B.未処理のシリコーンチューブにおける、フルオロ界面活性剤が添加されたFC40中のTBEの小滴
小滴の挙動を、種々の重量%のフルオロ界面活性剤、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカン−1−オール(Fluorochem)、の添加を用いて試験する。上記界面活性剤は小滴とFC−40との間の界面張力を低下させるが、固体−液体張力には影響を与えない。その結果、小滴は不安定にされ、多くの小さい小滴に壊れる(図18c、d、e)。崩壊の性質は、界面活性剤濃度に依存するが、フルオロ界面活性剤の極めて低いレベルでさえ、小滴はなおも不安定である。
【0202】
14C.アルゴン雰囲気中でのシラン化によって処理されたシリコーンチューブにおける、フルオロ界面活性剤が添加されていないFC40中のTBEの小滴
チューブが、アルゴン雰囲気中で分離されながらシラン化された。少量の1NのHCl(Sigma)がホットプレート上で約60℃に加熱された。きれいなシリコーンチューブの一端が、チューブの少なくとも2倍の体積のシリンジに連結され、他端が温かいHCl溶液中に置かれた。HClが、シリンジが部分的に満たされるまでチューブ中に吸引された。HClが5分間チューブ中に放置され、その間、シリンジポンプを時折振動させて局部的混合を付与した。次いでHClがチューブから排出され、チューブが、アルゴン流によって乾燥された。次いで、新しいシリンジをチューブの一端に連結し、チューブの他端をフルオロシランおよび顕微鏡用メタノール(Sigma)の溶液中に入れた。フルオロシランは通常、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメチルシラン(Fluorochem)である。1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン(Fluorochem)も試験され、本質的に同じ結果が達成される。ここに示される全ての結果は、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメチルシラン(Fluorochem)に関するものであり、その使用の選択は、それがあまり高価でないからである。シラン溶液がチューブ中に吸引され、5分間放置される。その間、シリンジポンプを時折振動させて局部的混合を付与する。シラン溶液がチューブから排出され、チューブがアルゴン流によって乾燥された。乾燥されたチューブは次いで、110℃のオーブン中に約20分間置かれて、シランを固定した。次いで、チューブを数体積のメタノールおよびFC−40で洗浄した後、小滴の試験を行なった。
【0203】
アルゴン中でシラン化されたチューブ中での小滴の結果を図19に示す。7.5より大きい体積%の場合には、少なくとも200の小滴を含む列に関して付着は認められなかった。5体積%では、小滴は最初、濡らさないように見えたが、ついには壁に付着した。より低い体積%では、小滴はいつも壁を濡らした。結論として、反応がアルゴン下で行なわれるとき、安定で濡らさない表面を形成するために、7.5体積%のフルオロシランが必要である。
【0204】
14D.空気雰囲気中でのシラン化によって処理されたシリコーンチューブにおける、フルオロ界面活性剤が添加されていないFC40中のTBEの小滴
シラン化手順を簡単にするために、チューブを空気中でシラン化する。純粋なシランをより良好に保つために、シラン/メタノール混合が最初にアルゴン中で行なわれるが、反応の残りはその後、本質的に上記と同じプロトコルを使用してフード中で行なわれる。シランの体積%およびシランをチューブと反応させた時間(反応時間)が変えられる。一例では、HCl活性化工程がプラズマ活性化で置き換えられる。
【0205】
10体積%のシランおよび5分の反応時間の場合には、空気中でのシラン化は、アルゴン中での場合と区別できなかった(図20a)。7.5体積%のシランおよび5分の反応では、小滴が最初、濡らさないように見えたが、ついには壁を濡らした(図20b)。5体積%のシランでは、小滴がなおも壁を濡らすが、反応時間が30分に延ばされると、小滴が列全体にわたって濡らさないことがわかった(>200の小滴、図20c)。同じパラメータ(5体積%のシラン、30分の反応)が試験されるが、チューブは、それをHClで満たすよりもむしろ、1分間プラズマ中に置かれる。図20dに見られるように、プラズマ活性化は、濡れない表面を生じなかった。プラズマは活性化のためにチューブ全体にわたって拡散しなければならないので、チューブを通ってポンプ供給され得るHClによる液体活性化よりも効率が小さい。30分の反応時間を保持しながら、シラン濃度を2.5体積%にさらに低下させて試験した。図20eに見られるように、壁はわずかに濡れている。
【0206】
空気中でのシラン化は、アルゴン中におけるよりも均一でないコーティングを表面上に生じる。なぜならば、空気中の水が、活性化された表面部位のためのシランと競合するからである。本質的に、空気中でのシラン化は、アルゴン中でのシラン化ほどには水−固体張力を低下させない。しかし、空気によるプロトコルは、行なうのがより簡単であり、自動化に従い易い。
【0207】
14E.空気雰囲気中でのシラン化によって処理されたシリコーンチューブにおける、フルオロ界面活性剤が添加されたFC40中のTBEの小滴
FC40/水張力を強く低下させるフルオロ界面活性剤が、空気中でシラン化された表面から生じる不均一性を克服するために(および付随して水−固体張力を低下させるために)十分であるかどうかを検討した。図21に示されるように、小さい濃度の界面活性剤(0.5重量%)が、200の小滴の列を形成した後でさえ、2.5体積%のシランおよび5体積%のシランの両方において濡らすことを防ぐのに十分である。
【0208】
実施例15.実施例14で調製された本発明に従うデバイスにおいて輸送された小滴間におけるDNAによる汚染の定量的PCRによる検証
付着されない小滴の形状が汚染をもたらさないかどうかを試験するために、種々の小滴におけるDNA濃度の感覚的試験をするための定量的PCRを使用して1組の実験を行なった。
【0209】
チューブをこれらのプロトコルの1つに従って作製した。
1.シランなし:チューブを単に数倍体積の蒸留水で洗浄した。担体流体は、実施例14Aに従って調製されたFC−40(3M)である。
2.シラン:チューブを洗浄し、次いで、実施例14Dにおけるプロトコルに従って5体積%のシランおよび30分の反応時間を用いて空気中でシラン化した。担体流体はFC−40である。
3.シラン+界面活性剤:チューブを洗浄し、次いで実施例14Eにおけるプロトコルに従って空気中でシラン化した。担体流体は、0.5重量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカン−1−オールを有するFC−40である。
4.バルクフルオロポリマー+界面活性剤:小滴列が、実施例13に従って調製される。テフロン(登録商標)毛細管が、製造者によって供給されたように使用された。担体流体は、0.5重量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカン−1−オールを有するFC−40である。
【0210】
チューブの一端がY−コネクターに連結され、Y−コネクターの出口が電気ピンチバルブを使用して選択された。1つの出口はHarvardミリリットルモジュールシリンジポンプおよび5mlのHamilton気密シリンジに通じ、第二の出口は100μLのHamilton気密シリンジを有するHamiltonPSD/2シリンジポンプに通じる。Hamilton PSD/2は、小滴の全てを(吸引によって)作るためまたは小滴をチューブから(ポンプにより)分配するために使用された。Hamiltonミリリットルモジュールは、チューブ内での小滴振動のために使用された。各実験の前に、毛細管が担体流体によって完全に満たされ、開いた端が担体流体の貯蔵器中に置かれた。
【0211】
小滴は、Gold Taqポリメラーゼ酵素(Applied Biosystems)、qPCRコア試薬キット(Eurogentec)、特異的プライマーおよび蛍光プローブ(3’−ATCTGCTGCATCTGCTTGGAGCCCA−5’、Applied Biosystems)を含む定量的PCRのためのTaqman PCRミックスの混合物である。「ミックス」サンプルは、鋳型を除いてPCRのための成分の全てを含む。「DNA」サンプルは、細胞系A549から単離されたcDNAを6.25ng/μlの濃度で含む。断片が、Proligoプライマー(上流プライマー:3’−GGCGACCTGGAAGTCCAACT−5’、下流プライマー:3’−CCATCAGCACCACAGCCTTC−5’)を使用してRPLPO遺伝子に対応する149bp上で増幅される。各実験のために2つの貯蔵器を作った。一方は各対照小滴のために十分なミックスを有し(典型的には30μl)、他方はcDNA小滴のために十分なミックスおよび鋳型を有する(典型的には22μl)。
【0212】
下記手順によって注入の間の汚染が試験された。DNA貯蔵器から2μlが吸引され、次いで担体流体貯蔵器から4μlが吸引された。次いで先端が、それを蒸留水の貯蔵器に浸漬し、そしてChemWipeによって乾燥することにより洗浄された。続いて、ミックス貯蔵器から2μlを、担体流体貯蔵器から4μlを吸引することにより5つの小滴が形成された。全ての小滴が形成された後、手順を逆にし、各小滴を別個のエッペンドルフ管に集めた。エッペンドルフ管は定量的PCRの前に−80℃で保管された。
【0213】
各小滴の中身をTaqman7700qPCR機(Applied Biosystems)上で定量的PCRによって分析した。これらの実験において、35の値は、小滴中に検出できる量のcDNAがなかったことを示し(すなわち、増幅の35サイクルが、ノイズ閾値より上の蛍光信号を有しない)、各整数増加は、cDNA量における半減に対応する。
【0214】
表1は、入り口汚染実験の結果を示す。未処理毛細管には、小滴の形状から予期されるように、有意な汚染があった。シラン化された毛細管にも汚染があった。しかし、ミックス貯蔵器では汚染はなかったので、汚染は、毛細管内部での小滴輸送から生じると結論できる。フルオロ界面活性剤を有するシラン化された毛細管では、最初の洗浄小滴に何らかの汚染が観察され、ミックス貯蔵器に同等の汚染が観察された。このことから、汚染は輸送中に先端で生じ、また、DNA小滴の吸引後の先端のより激しい洗浄が、シラン化された毛細管およびフルオロ界面活性剤を使用する入り口での汚染の除去に十分であると考えられる。
【0215】
次いで、小滴が輸送されている間の汚染を防ぐための、フルオロ界面活性剤およびシラン化された毛細管の能力を試験した。フルオロ界面活性剤およびシラン化された毛細管を使用する上記と本質的に同じ吸引手順を使用して、最初に2つのミックス小滴を作り、次いで1つのcDNA滴を、次いで2つのミックス小滴を作った。ここでの注入プロトコルと上記プロトコルとの違いは、ここでは、先端での汚染を減少させる目的で、DNA滴を注入した後に2つの別個の蒸留水貯蔵器中で先端を洗浄したことである。手順の終わりに、2μlのcDNA滴がその両側に2つの2μlミックス小滴を有し(対照1および2:先導、対照3および4:追跡)、ここで、各小滴は4μlの担体流体だけ間隔をあけて置かれた。
【0216】
次いで、Olympus双眼顕微鏡の下に置かれた毛細管のまっすぐな部分に小滴があるように、Harvardミリリットルモジュールを使用して吸引した。コンピュ−ター制御を使用して、小滴が毛細管中で1mm/秒の平均速度で5cm引っ張られ、次いで1mm/秒の平均速度で5cm押されるようにHarvardミリリットルモジュールを振動させ、その結果、1回のサイクルは小滴のネット移動を生じなかった。そのようなサイクルを50回行った。その結果、小滴が運ばれる合計距離(5m)は本発明者らの連続流PCR機で必要とされる距離に匹敵し得る。5mの毛細管の中で小滴を一定速度で押すことよりも、小滴を振動させることにより、高処理量操作での条件をシミュレートする。小滴を顕微鏡で時折観察して、小滴が壁を濡らしていないことを確認した。
【0217】
50サイクルを完了した後、小滴を個々のエッペンドルフ毛細管に集めた。各小滴を排出した後、蒸留水の2μl洗浄小滴を吸引して先端をきれいにした。洗浄小滴も集められた。全ての小滴およびミックス貯蔵器が、上記定量的PCRによって分析された。
【0218】
表2は、定量的PCRの結果を示す。対照滴のいずれにも検出できる汚染はなかった。さらに、洗浄小滴において検出できる汚染はなかった。ミックス貯蔵器には何らかの汚染があったが、これは、対照小滴のいずれにも汚染をもたらさなかった。フルオロ界面活性剤およびシラン化された毛細管の組み合わせは、高処理量用途において汚染を防ぐために十分であると結論される。
【0219】
テフロン(登録商標)毛細管およびフルオロ界面活性剤を使用して本質的に同じ振動実験を行なった。唯一の違いは、この実験では、小滴を集めるときに先端を洗浄しなかったし、余分の洗浄小滴を使用しなかったことである。
【0220】
テフロン(登録商標)チューブおよびフルオロ界面活性剤を用いた結果を表3に示す。入り口汚染試験に見られるように、ミックスでの汚染はない。これは、洗浄が先端からのDNAの除去に十分であることを示す。小滴2にはなんらかの汚染がある。この汚染は、小滴を集めるときに先端を洗浄しなかったことによると考えられる。小滴2は、cDNA滴の直後に系を出る。cDNA滴の小さい部分が先端表面における不完全性の上にひきずられていき、それが次いで小滴2に運ばれた可能性が考えられる。自動化された小滴収集またはインライン検出手順はこの汚染源を除去するべきである。
【0221】
【表1】

【0222】
【表2】

【0223】
【表3】

【0224】
実施例16.汚染のないT−コネクターの設計および組み立て
この実施例は、ピンチバルブの使用に匹敵し得る3つの異なる入り口を汚染なしに連結することを可能にする非常にデッド体積の低いPDMS T−コネクター100の概念を説明する。
【0225】
コネクター100は、1:10の割合の硬化剤を用いてPDMS(KODAK SYLGARD 184)で作られる。コネクター100を製造するために使用された型101はPMMA平行六面体(内部長さおよび幅9mm、内部高さ8mm)である。内径800μmの穴102が平行六面体の3つの面103の中央に開けられる。テフロン(登録商標)毛細管105(外径800μm)の第一の5mmピースが3cm長さの第二テフロン(登録商標)毛細管(外径1.5mm、内径800μm)の端の内部に導入され、1.5mm上に突き出る。3つのピースがこのようにして作られ、導入され、そして互いに向き合う小さい方の管によってT字を形成するように平行六面体の内部に保持される(図22を参照)。次いで、PDMS106が20分間脱ガスされ、そのように構成された型に注がれ、65℃のオーブンに3時間置かれた。
【0226】
3時間後、テフロン(登録商標)ピース104および105がそれらを静かに引っ張ることにより外され、得られたT−コネクターが型101から取り出される。T−コネクター100は、3つの部分108を有する。各部分は互いに従う同軸円筒状中空部分を含み、外側部分110は3mmの長さおよび1.5mmの直径を有し、内側部分111は1.5mmの長さおよび800μmの直径を有する。次いで、シリコンゴム(Dow Corning)でコーティングされた5cmシリコーン毛細管109(Cole-Parmer;外径1.8mm、内径800μm)がT−コネクターの各穴の3mm上(外側の円筒形に対応する)に導入され、コネクターは、PDMS Tの入り口近くの管の周囲にさらにゴムを添加することにより強化される。シリコンおよびPDMSの弾性故に、1.8mm外径のシリコーン管をTの1.5mm直径の穴に押し込むことが可能であり、したがって、接合を良好に固定する。得られたコネクターは上記オーブンに2時間入れられる。
【0227】
シリコーン毛細管を有するT−コネクター100は、実施例14に記載された方法によってさらにシラン化される。この方法により、非常に小さいデッド体積を有しかつ高圧下ですら漏出のない固体コネクターが得られる。さらに、シリコーン管の使用は、デッド体積のないピンチバルブの使用を可能にする。
【0228】
適用例
本発明に従って作られるデバイスは、例えば以下を行なうために使用され得る。
混合、
核酸のスクリーニング、
核酸の増幅、例えばPCR、NASBA、ローリングサークル型増幅による核酸の増幅、
RNA逆転写、
遺伝子型の決定、
プロテオミクス分析、
トランスクリプトーム分析、
結晶化および特にたんぱく質の結晶化、
医薬標的、薬学的ヒットまたは糸口、または薬物の探索および評価、
酵素−たんぱく質反応、
抗原−抗体反応、
化学的または生物学的生成物のライブラリーのスクリーニング、
高処理量スクリーニング、
薬物デリバリー、
診断、
少なくとも1の生きた細胞または死んだ細胞の分析または溶解、
微生物の分析、
化学反応、
反応性触媒反応、
重合反応、
鎖を形成するために粒子、例えばコロイド、を融合すること、
コロイド、エマルジョン、小胞、特に単分散コロイド状物体の調製、
ナノ粒子またはミクロ粒子の調製、
環境制御、
汚染物の検出、および
工業的プロセスの制御。
【符号の説明】
【0229】
1 マイクロ流体デバイス
2、2’ マイクロチャネル
3、3’ 電極アッセンブリ
4 電極
6 ギャップ
8 連結要素
9 発電ユニット
10 支持体
11 支持部材
30 双眼顕微鏡
31 カメラ
32 ビデオレコーダー
35 電極
36 プレート
61 マイクロチャネル
63、64 サイドチャネル
66 デリバリー系
68 シリンジポンプ
80 PCRデバイス
82 変性領域
83 アニーリング領域
84 伸長領域
92 毛細管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のパケットの分裂を行うまたは他の変形を行なうための、あるいは少なくとも2のパケットを、特に合体させるために、互いの方に移動させるためのマイクロ流体デバイス(1)において、該デバイスが、軸(X)を有するマイクロチャネル(2)、および下記の少なくとも1を含むパケット操作手段を含むところのデバイス、
発電ユニット(9)、および上記発電ユニット(9)に連結されかつ、上記マイクロチャネルの少なくとも一部分の内部に、上記マイクロチャネルの軸(X)と実質的に共線的である電場を作るように構成された電極アッセンブリ(3)、ここで、上記発電ユニット(9)は、マイクロチャネルにおいて少なくとも1のパケットを変形させるまたは少なくとも2のパケットを互いの方に移動させるような振幅および周波数を有する電場を発生させることができる、および
上記マイクロチャネルの一部と連結した第一端および、上記少なくとも2のパケットの間のまたは上記少なくとも1のパケットとその周囲との間の界面張力を変えることができる溶液を運ぶために適したデリバリー系と連結した第二端を有する少なくとも1のサイドチャネル、ここで、上記デリバリー系は、少なくとも上記パケットがマイクロチャネルの上記部分を通過する間、マイクロチャネルの上記部分に上記溶液を運ぶように構成されている。
【請求項2】
電場がマイクロチャネルの軸(X)と実質的に共線的であるところの上記マイクロチャネルの少なくとも一部分が、該部分の厚さの約1〜約100倍の長さ、好ましくは該部分の厚さの約1〜約10倍の長さを有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
電極アッセンブリ(3)が、マイクロチャネル(2)の内部表面から電気的に絶縁されている、請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
電極アッセンブリ(3)が、電極間の電場がマイクロチャネルの軸(X)と実質的に共線的であるのに十分な距離だけマイクロチャネルの軸に沿って軸方向に間隔をあけて置かれた少なくとも2の電極(4;35)を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項5】
該電極(4;35)の少なくとも1が、マイクロチャネル(2)を横切って互いに向かい合う少なくとも2の等電位部分を含む、請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
該電極(4)の少なくとも1がモノリシックである、請求項4または5記載のデバイス。
【請求項7】
該電極(4)の少なくとも1がマイクロチャネルを取り囲む円筒状表面を有する、請求項4〜6のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項8】
該電極(35)の少なくとも1が複合体である、請求項4〜6のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項9】
該電極(35)の少なくとも1が、マイクロチャネル(2)を挟む少なくとも2の実質的に平行な等電位プレート(36)を含む、請求項8記載のデバイス。
【請求項10】
該電極(4;35)が、マイクロチャネルの厚さより大きい、好ましくはマイクロチャネルの厚さの2倍より大きい長さを有するギャップ(6)だけ間隔をあけて置かれている、請求項4〜9のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項11】
該電極アッセンブリ(3;3’)が、マイクロチャネルの少なくとも1の断面において電場の振幅が10倍未満、好ましくは2倍未満で変化し、より好ましくは実質的に均一であるように構成されている、請求項1〜10のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項12】
発電ユニットが連続電場を発生させることができる、請求項1〜11のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項13】
発電ユニットが可変電場を発生させることができる、請求項1〜11のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項14】
発電ユニットがAC電場を発生させることができる、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
発電ユニット(9)が、約0.01Hz〜約1GHz、好ましくは約1Hz〜約10MHzの範囲の周波数を有するAC電場を発生することができる、請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
発電ユニット(9)が、100Hz〜10kHzの周波数を有するAC電場を発生させることができる、小滴を合体するための、請求項15記載のデバイス。
【請求項17】
発電ユニット(9)が、50Hzより低い周波数を有するAC電場を発生させることができる、少なくとも1の小滴を等分するための、請求項15記載のデバイス。
【請求項18】
該溶液が界面活性剤を含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項19】
軸を有するマイクロチャネル中で少なくとも1のパケットを移動させるための方法において、
少なくとも1のパケットをマイクロチャネル内に導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分内に電場を発生させること、ここで、少なくとも上記少なくとも1のパケットが上記部分内に位置されているときに、パケットをマイクロチャネルに沿って移動させるように上記電場が好ましくはマイクロチャネルの軸と共線的である、
を含むところの方法。
【請求項20】
マイクロチャネル(2)中で少なくとも2のパケットを合体させるための方法において、上記マイクロチャネルが縦軸(X)を有し、上記方法が、
上記少なくとも2のパケットをマイクロチャネル内に導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分内に電場を発生させること、ここで、少なくとも上記パケットがマイクロチャネルの上記部分内に位置されているときに、上記電場が、上記部分においてマイクロチャネルの軸と好ましくは実質的に共線的であり、かつ2つのパケットを互いの方に移動させるように選択された振幅および周波数を有する、
を含むところの方法。
【請求項21】
上記電場が、マイクロチャネルの軸(X)に沿って軸方向に間隔をあけて置かれた少なくとも2の電極(4;35)によって発生され、上記複数の電極がギャップ(6)によって分離されており、上記方法が、
上記電場を発生させる前に、2つのパケットを電極間の上記ギャップ中に位置させること、ここで、上記パケットは静的平衡にある、および
上記電場を発生させること、
を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
上記電場が、マイクロチャネルの軸に沿って軸方向に間隔をあけて置かれた少なくとも2の電極(4;35)によって発生され、上記電極がギャップによって分離されており、上記方法が、
2つのパケットをマイクロチャネル中に位置させること、ここで、上記パケットの少なくとも1が電極間の上記ギャップの外にある、
上記2つのパケットを上記ギャップの方へ、例えばマイクロチャネル中の流動する流れによって、移動させること、および
上記2つのパケットが上記ギャップ中に位置しているときに少なくとも、上記電場を発生させること、
を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
上記パケットの少なくとも1が生物学的物質を含む、請求項20〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
少なくとも2のパケットをマイクロチャネル中で合体させるための、または少なくとも1のパケットを分裂させるための方法において、上記マイクロチャネルが軸を有し、上記方法が、
少なくとも2のパケットまたは少なくとも1のパケットをマイクロチャネルの一部分に位置させること、および
上記少なくとも2のパケットの間、または上記少なくとも1のパケットとその周囲との間の界面張力を変えることができる界面活性剤の溶液をマイクロチャネルの上記部分に運ぶこと、
を含むところの方法。
【請求項25】
縦軸を有するマイクロチャネル中で少なくとも1のパケットを分裂させるための方法において、
上記少なくとも1のパケットをマイクロチャネル内に導入すること、および
マイクロチャネルの少なくとも一部分内に電場を発生させること、ここで、少なくとも上記少なくとも一部分内に上記少なくとも1のパケットが位置されるときに、上記電場が、好ましくは上記部分内でマイクロチャネルの軸と実質的に共線的であり、かつパケットを分裂させるように選択される振幅および周波数を有する、
を含むところの方法。
【請求項26】
マイクロチャネルまたは他のマイクロ容器中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法において、上記マイクロ容器がマイクロ容器の内部空間を規定する少なくとも1の管状部分を有し、
上記管状部分が、内部コーティングされていない、フッ素化されたバルク物質で作られ、または、
上記管状部分が、フッ素化されていないバルク物質で作られ、管状部分の内部表面の周囲全体上を永久の層で被覆されており、上記永久の層が好ましくは疎水性であり、
ここで、上記マイクロ容器が、上記パケットと混和しない担体流体で少なくとも部分的に満たされており、上記担体流体は、上記パケットと上記担体流体との間の界面張力を低下させるのに十分な濃度の少なくとも1の界面活性剤を含むところの方法。
【請求項27】
マイクロ容器が、一連の少なくとも2の管状部分を含み、第一の管状部分が、フッ素化されたバルク物質で作られ、第二の管状部分が、フッ素化されていないバルク物質で作られかつ内部の周囲全体上を永久の層で被覆されている、請求項26記載の方法。
【請求項28】
永久の層が溶融シリカガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート);ポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン(登録商標)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、環状オレフィンコポリマーおよび他のエラストマーまたはプラスチック;ガラス、二酸化ケイ素および他の非導電性酸化物;ダイアモンド、非導電性セラミック、シリコーン、エラストマー、ガラス状物質、鉱物物質、セラミック、ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、コポリマー、シラン、フルオロシランならびにフルオロポリマーから選択される物質を含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
バルク物質が、溶融シリカガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート);ポリエチレン、ポリイミド、エポキシ、テフロン(登録商標)、パリレン(登録商標)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロポリマー、ポリエステル、環状オレフィンコポリマーおよび他のエラストマーまたはプラスチック;ガラス、二酸化ケイ素および他の非導電性酸化物;ダイアモンド、非導電性セラミック、シリコーン、エラストマー、ガラス状物質、鉱物物質、セラミック、ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂ならびにコポリマーから選択される、請求項26〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
マイクロチャネルまたは他のマイクロ容器中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法において、上記マイクロ容器が内部の管状疎水性表面を有し、上記マイクロ容器が、上記パケットと混和しない担体流体で少なくとも部分的に満たされており、上記担体流体は、上記パケットと上記担体流体との間の表面張力を低下させるのに十分な濃度の少なくとも1の界面活性剤を含むところの方法。
【請求項31】
操作が、上記少なくとも1のパケットを移動させること、上記少なくとも1のパケットを分裂させること、上記少なくとも1のパケットを少なくとも1の別のパケットと合体させること、および上記少なくとも1のパケットを反応させることの少なくとも1である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
移動させることが、担体流体をマイクロ容器中で循環させることを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
操作が、電場の不存在下で行なわれる、請求項30〜32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
操作が、上記少なくとも1のパケットをマイクロ容器の入り口からマイクロ容器の出口の方に移動させることを含む、請求項30〜33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
操作が、上記少なくとも1のパケットを少なくとも2の異なる温度または他の物理的および/または化学的条件に順次暴露させることを含む、請求項30〜34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
マイクロチャネルまたは他のマイクロ容器中の少なくとも1のパケットに少なくとも1の操作を行なうための方法において、上記マイクロ容器が内部表面を有し、上記マイクロ容器が、上記パケットと混和せずかつ少なくとも1の界面活性剤を含む担体流体を入れられており、上記パケットと上記マイクロ容器の内壁との間の界面張力と、上記パケットと上記担体流体との間の界面張力との相違が、少なくとも26mN/m、好ましくは少なくとも35mN/mであり、例えば約35mN/m〜約45mN/mであるところの方法。
【請求項37】
担体流体中の界面活性剤の濃度が、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約3重量%である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
上記界面活性剤がフルオロアルコールまたは他のフルオロ界面活性剤である、請求項36または37記載の方法。
【請求項39】
フルオロ界面活性剤が1H,1H,2H,2Hパーフルオロデカン−1−オールである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
バルク部分がシラン化されている、請求項36〜39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
パケットと混和しない担体流体中に入れられた少なくとも1のパケットに少なくとも1の化学的、物理的または生物学的操作を行なうためのデバイスにおいて、上記デバイスが上記パケットを含む上記担体流体を取り囲む少なくとも1のマイクロ容器を含み、上記マイクロ容器の内部表面がフッ素化されており、上記担体流体が少なくとも0.1cmc(臨界ミセル濃度)の比濃度の界面活性剤を含むところのデバイス。
【請求項42】
マイクロチャネルまたは他のマイクロ容器を含むマイクロ流体デバイスにおいて、上記デバイスが、マイクロ容器の内部空間を形成する管状の疎水性バルク部分をさらに含み、上記バルク部分が疎水性層で被覆されているところのデバイス。
【請求項43】
少なくとも1のパケットを少なくとも1のマイクロチャネルから別のマイクロチャネルの方へ汚染なしで輸送させることができるコネクターにおいて、上記コネクターが、バルク物質を含み、好ましくは上記物質で構成され、その内部表面全体の上に疎水性層を有し、上記層がフッ素化物質およびシラン化物質の1を含むところのコネクター。
【請求項44】
上記バルク物質がエラストマーである、請求項43記載のコネクター。
【請求項45】
少なくとも1のマイクロチャネルまたは他のマイクロ容器および上記マイクロ容器と連絡するコネクターを含むマイクロ流体デバイスにおいて、上記コネクターが上記マイクロ容器を少なくとも1の別のマイクロチャネルまたは他のマイクロ容器および上記デバイスの入り口または出口に連結するように構成されており、上記コネクターが、少なくとも1の疎水性層を含む内部表面を有するところのデバイス。
【請求項46】
マイクロチャネルを形成する毛細管の一端に取り付けられるように構成されたコネクターにおいて、上記コネクターが、少なくとも1の疎水性層を含む内部表面を有するところのコネクター。
【請求項47】
マイクロチャネルを含むマイクロ流体デバイス、および
上記マイクロ流体デバイス上に取り付けられるための、上記したコネクター、
を含むキット。
【請求項48】
パケットに少なくとも1の操作を行なうためのキットにおいて、
少なくとも1の疎水性物質を含む内部表面を有するマイクロチャネルまたは他のマイクロ容器、および
上記パケットと混和しない担体流体、ここで、上記担体流体は、上記パケットと上記水と混和しない流体との間の表面張力を低下させるのに十分な濃度の少なくとも1の界面活性剤を含む、
を含むところのキット。
【請求項49】
請求項43記載のコネクター、および
上記コネクタ−に連結した少なくとも1の毛細管
を含むアッセンブリ。
【請求項50】
コネクターがT−コネクターである、請求項49記載のアッセンブリ。
【請求項51】
毛細管が、フッ素化された内部表面を有する、請求項49または50記載のアッセンブリ。
【請求項52】
PCRを行なうためのデバイスにおいて、上記デバイスが、
界面活性剤を含むフルオロ溶媒で少なくとも部分的に満たされた毛細管で作られたコイルを含むマイクロチャネル
を含み、ここで、上記コイルは、種々の温度に暴露される変性領域、アニーリング領域および伸長領域を含むところのデバイス。
【請求項53】
下記の少なくとも1を行なうための、請求項1記載の方法、
混合、
核酸のスクリーニング、
核酸の増幅、例えばPCR、NASBA、ローリングサークル型増幅による核酸の増幅、
RNA逆転写、
遺伝子型の決定、
プロテオミクス分析、
トランスクリプトーム分析、
結晶化および特にたんぱく質の結晶化、
医薬標的、薬学的ヒットまたは糸口、または薬物の探索および評価、
酵素−たんぱく質反応、
抗原−抗体反応、
化学的または生物学的生成物のライブラリーのスクリーニング、
高処理量スクリーニング、
薬物デリバリー、
診断、
少なくとも1の生きた細胞または死んだ細胞の分析または溶解、
微生物の分析、
化学反応、
反応性触媒反応、
重合反応、
鎖を形成するためにコロイドまたは他の粒子を融合すること、
コロイド、エマルジョン、小胞、特に単分散コロイド状物体の調製、
ナノ粒子またはミクロ粒子の調製、
環境制御、
汚染物の検出、および
工業的プロセスの制御。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−91060(P2013−91060A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237242(P2012−237242)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2007−530836(P2007−530836)の分割
【原出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506413937)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】