マイクロバルブおよびその製造方法、ならびにマイクロバルブの開閉検出方法
【課題】異物の侵入などによって弁体部に開閉不良が生じた場合、確実にこれを検出することが可能なマイクロバルブを提供する。
【解決手段】ダイアフラム12は、開閉検出手段26を構成する第1の電極(可動電極)を兼ねている。また、第2の基板20の溝部22において、ダイアフラム12と対面する位置に、開閉検出手段26を構成する第2の電極(固定電極)28が形成される。
【解決手段】ダイアフラム12は、開閉検出手段26を構成する第1の電極(可動電極)を兼ねている。また、第2の基板20の溝部22において、ダイアフラム12と対面する位置に、開閉検出手段26を構成する第2の電極(固定電極)28が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバルブ及びその製造方法、ならびにマイクロバルブの開閉検出方法に関し、詳しくは、流体の流入口及び流出口を開閉させる弁体部の開閉状態を確実に検出可能なマイクロバルブ及びその製造方法、ならびにマイクロバルブの開閉検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン等の半導体基板にマイクロマシニング技術を適用したダイアフラム構造を有するマイクロバルブが提案され実用に供されている。例えば、特許文献1には、弁体基板の弁体部における第1の基板への対向面に可動電極を形成するとともに、第1の基板の可動電極に対向する表面に固定電極を形成し、これら可動電極と固定電極との間に所定量のギャップを持たせたマイクロバルブが記載されている。こうした構成により、弁体部が可動電極及び固定電極に電圧を印加しない状態では、弁孔をその接触圧により塞ぐことができる。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、枠体となる半導体基板に熱絶縁領域を介して可撓領域の一端が連結されるとともに、可撓領域の他端は弁体となる可動エレメントが連設され、この可撓領域を互いに熱膨張係数の異なる薄肉部と薄膜から構成してマイクロバルブが記載されている。これにより、薄肉部の表面に形成された拡散抵抗が加熱されると、薄肉部と薄膜の熱膨張差により可撓領域が変位し、弁体である可動エレメントが弁孔を塞ぐことができる。
【特許文献1】特開2005−180530号公報
【特許文献2】特開2000−309000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示すマイクロバルブでは、例えば、可動電極と固定電極の間に絶縁物などの異物が挟まり、駆動電圧を印加した際に弁体が第1の基板に向かって十分に上昇できずに弁孔の開閉不良を引き起こしても、こうした不具合の発生を検出できないという課題があった。
【0005】
同様に、特許文献2に示すマイクロバルブも、例えば、可動エレメントと弁孔の形成されている台座の間に異物が挟まり、駆動電圧を印加した際に異物のため可動エレメントの動作が制限されるなとの開閉不良を引き起こしても、こうした不具合の発生を検出できないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、異物の侵入などによって弁体部に開閉不良が生じた場合、確実にこれを検出することが可能なマイクロバルブを提供することを目的とする。
【0007】
また、異物の侵入などによって生じた弁体部の開閉不良を検出可能なマイクロバルブの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
更に、異物の侵入などによって弁体部に開閉不良が生じた場合、確実にこれを検出することが可能なマイクロバルブの開閉検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は次のようなマイクロバルブを提供した。
すなわち、本発明のマイクロバルブは、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブであって、前記ダイアフラム部の変形を検出する開閉検出手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部の他方の面側に形成した第1の電極と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に形成した第2の電極とから形成されていればよい。また、前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部に形成されたピエゾ抵抗素子から形成されていればよい。前記ピエゾ抵抗素子は複数形成され、前記ダイアフラム部の変形時に、応力の印加される方向が互いに異なるように配置すればよい。前記溝部には、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動するための流体の開孔部がさらに形成されていればよい。
【0011】
本発明のマイクロバルブの製造方法は、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、前記ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成する工程と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成する工程とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のマイクロバルブの製造方法は、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成する工程を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明のマイクロバルブの開閉検出方法は、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を形成するとともに、該ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成した第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部を形成し、該溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成した第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの開閉検出方法であって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定することにより、前記弁体部の前記流入口及び流出口に対する開閉状態を検出することを特徴とする。
【0014】
前記溝部には流体を流出入させる開孔部が形成され、該開孔部を介して流体を流出入させることにより、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させればよい。また、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させる直流電流を印加するとともに、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記直流電流の電圧値よりも低い電圧の交流電流を印加して前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定すればよい。また、前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成し、前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値に応じて変化する電圧値を測定ればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイクロバルブによれば、ダイアフラム部に形成された弁体部の開閉状態を検出するための開閉検出手段を設けた。これにより、外部の流路に圧力センサや流量センサなどを付加することなく、弁体部の開閉状態を外部から確認することができる。よって、弁体部に異物などが侵入して、弁体部に開閉不良が生じても、確実にこれを検出することが可能なマイクロバルブを実現することができる。
【0016】
また、本発明のマイクロバルブの製造方法によれば、開閉検出手段を形成する工程を備えることにより、弁体部の開閉状態を外部から確実に確認可能なマイクロバルブを製造することができる。
【0017】
さらに、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法によれば、ダイアフラム部に形成された弁体部の開閉状態を検出するための開閉検出手段を設けたマイクロバルブを用いることによって、弁体部の開閉状態を外部から確認することが可能になる。これにより、弁体部に異物などが侵入して、弁体部に開閉不良が生じても、確実にこれを検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るマイクロバルブ及びその製造方法、ならびにマイクロバルブの開閉検出方法の最良の形態について、図面に基づき説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
[第一の実施形態(マイクロバルブ)]
図1は、本発明のマイクロバルブの一例を示す断面図である。本実施形態に係るマイクロバルブ1は、例えば、第1の基板10、第2の基板20、および第3の基板30を重ね合わせて接合一体化してなる。
【0020】
第1の基板10は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板11の一部がシリコン側からエッチング加工されてダイアフラム部19とされる。このダイアフラム部19の下面(一方の面)側に、酸化膜25を介して弁(弁体部)13及び固定部14が設けられている。また、ダイアフラム部19の上面(他方の面)はダイアフラム12が形成される。このダイアフラム部19は、開閉検出手段26を構成する第1の電極(可動電極)を兼ねている。さらに、ダイアフラム12の上面には、酸化膜27が設けられている。
【0021】
第2の基板20は、第1の基板10と同じ大きさであり、かつ陽極接合できる材質、例えばNa等の可動イオンを含むガラス基板21のダイアフラム12に相対する位置に下側からのエッチング加工により、ダイアフラム12が湾曲するために必要な空隙24を構成する溝部22が形成される。また、この溝部22の一端部に、弁13及びダイアフラム12を駆動するための流体の流入口及び流出口である開孔部23が形成されている。
溝部22においてダイアフラム12と対面する位置に、開閉検出手段26を構成する第2の電極(固定電極)28が形成される。さらに、第2の基板20の一端には、ダイアフラム(第1の電極)12の電位を外部に取り出すための貫通電極29が形成されている。
【0022】
第3の基板30は、ガラス基板31から形成され、弁13に対応する位置に、流体の流入口32及び流出口33が形成されている。
【0023】
なお、SOI基板からなる第1の基板10は、例えば、1〜100μm程度の厚さの単結晶Si(100)であるダイアフラム12と、100〜600μm程度の厚さの単結晶Si(100)からなる弁(弁体部)13及び固定部14と、これらダイアフラム12と弁13及び固定部14との間の厚さ0.1〜10μm程度の埋め込み酸化膜である酸化膜25から構成されていればよい。これら各層の厚みは、マイクロバルブ1が制御する流体の流量、圧力などによって適宜、最適化されればよい。また、第1の基板10のサイズも製造装置の仕様に応じて、4インチ基板、6インチ基板等、各種サイズから選択されればよい。
【0024】
第2の基板20や第3の基板30を構成するガラス基板は、例えば、Naなどの可動イオンを含み第1の基板10と陽極接合可能な硼珪酸ガラス、直接接合が可能な無アルカリガラスなどによって構成されればよい。
【0025】
このような構成のマイクロバルブ1は、第1の基板10のダイアフラム12と、第2の基板20の溝部22により構成される空隙24内の圧力が高い場合、弁13が第3の基板30に押しつけられ、弁13により流入口32及び流出口33が閉塞される。これにより、流入口32から流出口33に至る流路は遮断され、流体は流れることができない。すなわち、マイクロバルブ1は「閉」の状態となる。
【0026】
一方、空隙24内の圧力を低くすると、この圧力の低下に伴いダイアフラム12は上方、即ち溝部22に入り込むように湾曲する。ダイアフラム12が湾曲すると、流体の流入口32及び流出口33を閉鎖していた弁13は第3の基板30の表面から離れ、流入口32及び流出口33は開放される。これにより流入口32から流出口33に至る流路を流体が流れることが可能になる。すなわち、マイクロバルブ1は「開」の状態になる。
【0027】
このように、空隙24内の圧力を増減することで、ダイアフラム12の湾曲を制御し、マイクロバルブ1の開閉を制御することができる。空隙24内の圧力を増減するには、開孔部23から流体を空隙24に導入したり、あるいは空隙24から流体を排出することによって行うことができる。
【0028】
即ち、マイクロバルブ1では、開孔部23から空隙24内に流体を導入し、空隙24内を所定の圧力以上にすることで、マイクロバルブ1は「閉」状態となる。また、開孔部23から空隙24内の流体を排出し、空隙24内を所定の圧力以下にすることで、マイクロバルブ1は「開」状態となる。なお、こうした空隙24内の圧力の増減による弁13の開閉制御では、空隙24に圧力を印加しない状態で弁13が閉まっているノーマリクローズ型、空隙24に圧力を印加しない状態で弁13が開いているノーマリオープン型があり、必要に応じて適切なタイプが選択されれば良い。
【0029】
なお、この第一の実施形態のマイクロバルブ1では、開閉検出手段26をなす第1の電極と第2の電極のうち、第1の電極をダイアフラム12と兼用する構成、即ち、ダイアフラム12は、湾曲により弁13を開閉させる機能と、可動電極としての機能とを兼ね備えた構成としたが、ダイアフラム12とは別に、第2の電極と対面する位置に第1の電極を形成してもよい。
【0030】
また、上述した図1に示す実施形態では、弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口を両方とも形成しているが、これ以外にも、弁体部に相対する位置には、流入口または流出口のいずれか一方を形成した構成であってもよい。
例えば、図13に示すように、第3の基板430において、第1の基板410の弁(弁体部)413に相対する位置には、流体を流入させる流入口432だけを形成し、弁(弁体部)413にから外れた位置に流出口433を形成した構成であってもよい。この場合、流出口433は常に開放された状態となる。更に、流出口433の先に逆止弁などを設けるのも好ましい。
【0031】
[第一の実施形態(マイクロバルブの開閉検出方法)]
第一の実施形態に示すマイクロバルブの作用、即ち、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法について述べる。図1に示すマイクロバルブ1は、開閉検出手段26によって、弁13の開閉状態を検出する。即ち、開閉検出手段26を構成する、互いに対面したダイアフラム(第1の電極:可動電極)12と第2の電極(固定電極)28との隙間dに形成される静電容量Cの値を測定することで、弁13の開閉状態が検出できる。
【0032】
例えば、図1に示すマイクロバルブ1が「閉」状態の時、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間bは最大となる。この時の静電容量Cの値は最小値をとる。一方、マイクロバルブ1が「開」状態のとき、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間dは最小となる。この時の静電容量Cの値は最大値をとる。従って、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間dが形成する静電容量の値Cを測定した結果が最小値である時には、マイクロバルブ1が「閉」状態であり、最大値である時には、マイクロバルブ1が「開」状態であることを検出することが可能になる。
【0033】
こうした、ダイアフラム(第1の電極)と第2の電極28との隙間dが形成する静電容量の値を計測するためには、例えば、図2に示すような回路を用いればよい。即ち、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間dが形成する静電容量C1に対して直列に、固定の静電容量C2を接続し、これらの静電容量C1,C2に電圧Vを印加する。静電容量C1、静電容量C2の合成静電容量をC、静電容量C1、静電容量C2の両端電圧をそれぞれV1、V2、静電容量C1、静電容量C2に蓄積される電荷量をQとすると、下記のようになる。
V=V1+V2
V=Q/C
C=(C1×C2)/(C1+C2) : C1とC2の合成静電容量
V1=Q/C1
V2=Q/C2
【0034】
したがって、
V1={C2/(C1+C2)}×V
V2={C1/(C1+C2)}×V
ここで、マイクロバルブ1が「開」状態の時の静電容量C1をC1o、「閉」状態の時の静電容量C1をC1c、「開」状態の時に静電容量C1の両端に印加される電圧をV1o、「閉」状態の時に静電容量C1の両端に印加される電圧をV1cで表すと、
V1o={C2/(C1o+C2)}×V
V1c={C2/(C1c+C2)}×V
ここで、C1o>C1cなので、
V1o<V1c
となるため、マイクロバルブ1の開閉状態を電圧の変化として検出することができる。
【0035】
なお、ダイアフラム12と第2の電極28とが形成する静電容量C1の値と、マイクロバルブ1の開度、すなわちマイクロバルブ1を流れる液体の流量は相関関係があるため、静電容量Cを測定し、その値に従って空隙24内の圧力を制御することで、マイクロバルブ1を流れる流体の流量を制御することも可能である。
【0036】
即ち、ダイアフラム12と第2の電極28との間に形成される静電容量C1は、これら電極の面積をS、両電極間の間隔をd、誘電率をεとすると、
C1=ε×S/d
即ち
d=ε×S/C1
なので、静電容量C1を測定することによって、ダイアフラム12と第2の電極28との間隔が計算できる。弁13と第3の基板30の表面との間隔は、ダイアフラム12と第2の電極28との間隔から計算でき、かつマイクロバルブ1によって制御される流体の流量は、弁13と第3の基板30の表面との間隔に依存している。よって、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間によって形成される静電容量C1の値を用いることで、マイクロバルブ1の開度、すなわちマイクロバルブ1を流れる液体の流量を制御することが可能になる。
【0037】
[第一の実施形態(マイクロバルブの製造方法)]
第一の実施形態に示すマイクロバルブの製造方法について述べる。図1に示すマイクロバルブ1の製造にあたっては、まず、図3(a)に示すように、第1の基板となるSOI基板100を用意する。SOI基板100は、Si(100)単結晶からなる薄膜層101、支持基板103と、この薄膜層101、支持基板103の間に形成された埋め込み酸化膜102からなる。
【0038】
SOI基板100をRCA洗浄法などを用いて洗浄した後、表面(薄膜層側)と裏面(支持基板側)を熱酸化する等により、酸化膜111a、111bを形成する(図3(b)参照)。そして、裏面側にフォトレジスト121を塗布する(図3(c)参照)。これを露光、現像することによって、固定部のパターン121aと弁(弁体部)のパターン121bを形成する(図3(d)参照)。
【0039】
次に、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて、酸化膜111bをエッチングし、凹部112を形成する(図3(e)参照)。ウェットエッチング法ではエッチング液として希釈フッ酸、緩衝フッ酸などを用いればよい。また、界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。ドライエッチング法では、CF4などフッ素を含むガスのプラズマなどを用いる。なお、第1の基板の表面側の酸化膜111aは、特にウェットエッチングにおいては、除去されてしまわないように、治具ないしはフォトレジストなどを用いて保護するのが好ましい。
【0040】
次に、加熱した濃硫酸、あるいは濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト121a、121bを除去する(図3(f)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト121a、121bを灰化しても良く、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0041】
次に、酸化膜111bに形成された凹部112を通して、アルカリ性のエッチング液を用いて支持基板103を結晶異方性エッチングし、支持基板103に、例えば断面台形の凹部104を形成する(図3(g)参照)。これにより、弁106、およびダイアフラム(第1の電極)107が形成される(第1の電極を形成する工程)。アルカリ性のエッチング液としては、例えば、KOH、TMAH、ヒドラジンないしはEDP(エチレンジアミン+ピロカテコール)などを用いることができる。
【0042】
KOHをエッチング液として用いる場合は、KOHによるエッチング速度の遅いシリコン窒化膜を酸化膜111bの代わりに用いることが望ましい。この場合、シリコン窒化膜と第1の基板の間に酸化膜を形成した積層膜構造とし、シリコン窒化膜の応力を緩和することが望ましい。なお、この場合、凹部112を形成するためのシリコン窒化膜のエッチングには、CF4などのフッ素を含むガスを用いたドライエッチング法を利用するとよい。
【0043】
次に、酸化膜111aの表面にフォトレジスト122を塗布し、露光、現像することによって、フォトレジスト122にダイアフラムの電位を取り出すための開孔パターン122aを形成する(図3(h)参照)。
【0044】
次に、この開孔パターン122aを形成したフォトレジスト122をマスクとして、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて酸化膜111aをエッチングし、開孔部113を形成する(図4(a)参照)。ウェットエッチング法では、例えば、希釈フッ酸、緩衝フッ酸などをエッチング液として用いればよい。界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。また、ドライエッチング法では、CF4などのフッ素を含むガスなどを用いればよい。なお、この時、支持基板103に形成された開孔部104の底部に露出している埋め込み酸化膜102も同時にエッチングされ開孔部105が形成される。
【0045】
そして、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することにより、フォトレジスト122を除去する(図4(b)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト122を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。以上で、第1の基板100には、支持基板103に弁106、薄膜層101にダイアフラム107、ダイアフラム107の上に酸化膜111cが形成される。
【0046】
次に、第2の基板131として、ガラス基板、例えばナトリウムなどの可動イオンを含みシリコン基板と陽極接合が可能な硼珪酸ガラス基板、シリコン基板と直接接合が可能な無アルカリガラス基板などを用意する。この第2の基板131の裏面(第1の基板と接合される面)側にCr膜などのエッチングマスク膜132をスパッタリング法、蒸着法などを用いて形成する(図4(c)参照)。
【0047】
次に、フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて、エッチングマスク膜132に開口133を形成する(図4(d)参照)。エッチング技術としては、例えば、ウェットエッチング技術、ドライエッチング技術などを用いればよい。
【0048】
次に、第2の基板131をフッ酸などガラスをエッチング可能なエッチング液でウェットエッチングし、裏面側に溝部134を形成する(図4(e)参照)。なお、ドライエッチング技術を用いて溝部134を形成しても良い。エッチング後には、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト膜を除去すればよい。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト膜を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。そして、Cr膜などで形成したエッチングマスク膜をウェットエッチング技術などを用いて除去する(図4(f)参照)。
【0049】
次に、第2の基板の表面(第1の基板と陽極接合により接合される面の反対側の面)側にドライフィルムレジスト膜136を貼り付け、露光、現像することにより弁106を駆動するための圧力を導入する開孔パターン137aと、ダイアフラム107の電位を取り出すための電極140bを象った開孔パターン137bのそれぞれを形成する(図4(f)参照)。そして、ドライフィルムレジスト膜136をマスクとして、ブラスト加工法等を用いて、第2の基板131に弁106を駆動するための圧力を導入する貫通穴138a、後工程で形成する電極を象った貫通穴138bを形成する(図4(g)参照)。
【0050】
次に、ドライフィルムレジスト膜136を除去し、第2の基板の裏面(第1の基板と接合される面)側にCr膜などの導電膜135を形成する(図4(h)参照)。そして、フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて第2の電極(固定電極)135aを形成する(第1の電極を形成する工程)。この後、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト膜を除去する(図5(a)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト膜を灰化しても良く、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0051】
続いて、第1の基板100と第2の基板131とを、例えば、陽極接合法、直接接合法などを用いて接合する(図5(b)参照)。接合後、第2の基板131の表面(第1の基板と接合される面の反対側の面)側にアルミニウムなどの金属膜139を形成する。金属膜139の形成は、スパッタ法、電子ビーム蒸着法など、真空中で成膜する方法を用いれば良い。
【0052】
金属膜139が形成された第1の基板100と第2の基板131を大気中に取り出すと、第2の基板131に開孔した溝部134と第1の基板100のダイアフラム部107で囲まれる空隙24が真空で、これら基板の外部は大気圧になっているため、第1の基板100に形成されたダイアフラム部107が圧力差によって変形し、弁106が第2の基板131に引きつけられる。この時、弁106上のダイアフラム107には酸化膜111cが形成されており、ダイアフラム(第1の電極)107は酸化膜111cを挟んで、第2の基板131に形成された第2の電極135aに接触する。
【0053】
次に、第3の基板141として、硼珪酸ガラス基板、無アルカリガラス基板などを用意する(図5(c)参照)。この第3の基板141に、ドライフィルムレジスト膜142を貼り付け、露光、現像を行うことにより、流体の流入口、流出口となるパターン143を形成する。
【0054】
次に、このドライフィルムレジスト膜142をマスクとして、ブラスト技術等を利用して、第3の基板141を厚さ方向に貫通し、流体の流入口、流出口となる貫通穴144を形成する(図5(d)参照)。その後、ドライフィルムレジスト膜142を除去する(図5(e)参照)。
なお、流入口、流出口となる2つ貫通穴144のうち、いずれか一方を第1の基板100の弁106に相対する位置に形成し、他方を弁106にから外れた位置に形成してもよい。
【0055】
前工程で接合され一体化している第1の基板100と第2の基板131に、第3の基板141を、例えば直接接合法、陽極接合法などを用いて接合する(図5(f)参照)。この時、第1の基板に形成した弁106は第2の基板131に引きつけられているため、第2の基板131に形成した溝部134の深さを適切に設定することによって、第3の基板141と弁106とを充分にに離間させることができる。したがって直接接合の際に、弁106が第3の基板141と密着していないため、これらが接合されてしまうことはない。
【0056】
また、陽極接合法を用いた場合であっても、弁106を第3の基板141から充分に離間させることで、第1の基板100と第3の基板141に印加される電圧によって生じる静電気力で、弁106が第3の基板に引きつけられないようにすることができる。このため、弁106と第3の基板とが陽極接合されることはない。
【0057】
次に、第2の基板131に形成した金属膜139を、例えば、フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて電極140bとなる部分を残してエッチングする。なお、エッチング方法としては、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などを用いることができる。また、弁106を駆動するための圧力を導入する貫通穴138aから金属膜139を除去すると、この貫通穴138aから大気が流入し、第2の基板131に開孔した溝部134と、酸化膜111cで囲まれる空隙24は大気圧となる。すると、ダイアフラム107を変形させていた圧力差が無くなるため、ダイアフラム107は元の形に戻り、弁106は第3の基板141に接触し、流体の流入口144、流出口145を閉塞する(図5(f)参照)。
以上のような工程を経て、図1に示す第一の実施形態のマイクロバルブ1を製造することができる。
【0058】
[第二の実施形態(マイクロバルブ)]
図6は、本発明のマイクロバルブの別な一例を示す断面図である。本実施形態に係るマイクロバルブ2は、例えば、第1の基板40、第2の基板50、および第3の基板60を重ね合わせて接合一体化してなる。
【0059】
第1の基板40は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板11の一部がシリコン側からエッチング加工されてダイアフラム部49とされ、このダイアフラム部49の下面(一方の面)側に、酸化膜55を介して弁(弁体部)43及び固定部44が設けられている。また、ダイアフラム部49の上面(他方の面)はダイアフラム42が形成される。このダイアフラム部49は、開閉検出手段56を構成する第1の電極(可動電極)を兼ねている。さらに、ダイアフラム42の上面には、酸化膜57が設けられている。
【0060】
第2の基板50は、空隙54を構成する溝部52が形成される。この溝部52においてダイアフラム42と対面する位置に、開閉検出手段56を構成する第2の電極(固定電極)58が形成される。そして、溝部52の一端には、第2の電極58に電力を供給するとともに、第2の電極58の電位を外部に取り出すための貫通電極59aが形成されている。また、第2の基板50の一端には、ダイアフラム(第1の電極)42に電力を供給するとともに、ダイアフラム42の電位を外部に取り出すための貫通電極59bが形成されている。
【0061】
第3の基板60は、ガラス基板61から形成され、弁43に対応する位置に、流体の流入口62及び流出口63が形成されている。
【0062】
このような構成のマイクロバルブ2は、ダイアフラム42を静電気力で駆動(湾曲)させて、弁43を開閉させる。即ち、マイクロバルブ2は、ダイアフラム(第1の電極)42と対になって静電容量を形成する第2の電極58に電圧が印加されていない時は、ダイアフラムと第2の電極58との間には静電気力が働かない。このため、弁43が第3の基板60に押しつけられ、弁43により流入口62及び流出口63が閉塞される。これにより、流入口62から流出口63に至る流路は遮断され、流体は流れることができない。すなわち、マイクロバルブ2は「閉」の状態となる。
【0063】
一方、ダイアフラム(第1の電極)42と第2の電極58との間に電圧が印加されると、ダイアフラム42と第2の電極58との間に静電気力が生じ、ダイアフラム42は第2の電極58に引き付けられ湾曲する。ダイアフラム42が湾曲すると、流体の流入口62及び流出口63を閉鎖していた弁43は第3の基板60の表面から離れ、流入口62及び流出口63は開放される。これにより流入口62から流出口63に至る流路を流体が流れることが可能になる。すなわち、マイクロバルブ2は「開」の状態になる。
【0064】
[第二の実施形態(マイクロバルブの開閉検出方法)]
第二の実施形態に示すマイクロバルブの作用、即ち、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法について述べる。図7は、マイクロバルブを構成するダイアフラムの駆動回路、および第12の電極と第2の電極との静電容量の測定回路を示す概略図である。
【0065】
弁43を開閉するために必要な電圧は、制御したい流体の圧力、ダイアフラム42の面積と厚さや剛性、流体の流入口62や流出口63の開口面積などによって異なり、適切に設計することが必要である。ダイアフラム42を第2の電極58側に湾曲させ、マイクロバルブ2は「開」状態にするには、貫通電極59a,59bを介して、ダイアフラム42を第2の電極58との間に直流電圧(駆動電圧)Vを印加させる。
【0066】
一方、ダイアフラム42の湾曲状態、即ち、弁43の開閉状態を検出する際には、直流の駆動電圧Vに重畳して、この駆動電圧よりも低い電圧値の交流電圧V(t)を印加する。例えば、ダイアフラム(第1の電極)42と第2の電極58によって構成される静電容量C1のインピーダンスをZ1、静電容量C1に流れる電流をi(t)とする。また、マイクロバルブが「開」状態の時の静電容量C1をC1o、インピーダンスZ1をZ1o、静電容量C1に流れる電流i(t)をio(t)、「閉」状態の時の静電容量C1をC1c、インピーダンスZ1をZ1c、静電容量C1に流れる電流i(t)をic(t)とすると、C1o>C1c、Z1o<Z1cとなり、交流電圧v(t)を印加したときの電流i(t)は、
io(t)>ic(t)
となるため、マイクロバルブの開閉状態を電流の変化として検知することができる。なお、直流の駆動電圧Vに重畳する微小な交流電圧v(t)は、弁43の開閉に影響を与えないように、駆動電圧V>>微小な交流電圧v(t)とするのが好ましい。
【0067】
[第三の実施形態(マイクロバルブ)]
図8(a)は、本発明のマイクロバルブの別な一例を示す平面図である。また、図8(b)は、図8(a)のA−A線での断面図である。本実施形態に係るマイクロバルブ3は、第1の基板70、第2の基板80、および第3の基板90を重ね合わせて接合一体化してなる。
【0068】
第1の基板70は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板71の一部がシリコン側からエッチング加工されてダイアフラム部79とされる。このダイアフラム部79の下面(一方の面)側に、酸化膜85を介して弁(弁体部)73及び固定部74が設けられている。また、ダイアフラム部79の上面(他方の面)はダイアフラム72が形成される。このダイアフラム72には、開閉検出手段を構成するピエゾ抵抗素子88が形成されている。さらに、このダイアフラム72の上面には、酸化膜87が設けられている。
【0069】
ピエゾ抵抗素子88は、例えば、4つのピエゾ抵抗素子88a〜88dの長手方向が互いに直交するように配置され、互いにブリッジ回路を成すように接続されたものであればよい。これにより、ピエゾ抵抗素子88a〜88dの長手方向に電流を流した状態で、例えば、ダイアフラム部79が上方に湾曲して弁73が開状態になると、ピエゾ抵抗素子88a,88cと、ピエゾ抵抗素子88b,88dとでは、互いに応力の加わる方向が90°ずれることとなる。これにより、ブリッジ回路のバランスが崩れ、弁73の位置を検出することが可能になる。
【0070】
第2の基板80は、第1の基板70と同じ大きさであり、かつ陽極接合できるガラス基板81のダイアフラム72に相対する位置に下側からのエッチング加工により、ダイアフラム72が湾曲するために必要な空隙84を構成する溝部82が形成される。また、この溝部82の一端部に、弁73及びダイアフラム72を駆動するための流体の流入口及び流出口である開孔部83が形成されている。さらに、第2の基板80の一端には、ピエゾ抵抗素子88の電位を外部に取り出すための貫通電極89が形成されている。
【0071】
第3の基板90は、ガラス基板91から形成され、弁73に対応する位置に、流体の流入口92及び流出口93が形成されている。
【0072】
以上の構成のマイクロバルブ3は、第1の基板70のダイアフラム72と、第2の基板80の溝部82により構成される空隙84内の圧力が高い場合、弁73が第3の基板90に押しつけられ、弁73により流入口92及び流出口93が閉塞される。これにより、流入口92から流出口93に至る流路は遮断され、マイクロバルブ1は「閉」の状態となる。
【0073】
一方、空隙84内の圧力を低くすると、この圧力の低下に伴いダイアフラム72は上方、即ち溝部82に入り込むように湾曲する。ダイアフラム72が湾曲すると、流体の流入口92及び流出口93を閉鎖していた弁73は第3の基板90の表面から離れ、流入口92及び流出口93は開放されて、マイクロバルブ1は「開」の状態になる。
【0074】
[第三の実施形態(マイクロバルブの開閉検出方法)]
第三の実施形態に示すマイクロバルブの作用、即ち、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法について述べる。図8に示すマイクロバルブ3は、開閉検出手段であるピエゾ抵抗素子88によって、弁73の開閉状態を検出する。即ち、ダイアフラム72の湾曲に応じて、抵抗値が変化するピエゾ抵抗素子88a〜88dの電圧値を測定することで、弁73の開閉状態が検出できる。こうしたピエゾ抵抗素子88a〜88dは、例えば、ブリッジ回路を成すように接続されれば良い。
【0075】
例えば、図8に示すマイクロバルブ3が「閉」状態の時、ダイアフラム72は平坦になり、ピエゾ抵抗素子88a〜88dにダイアフラム72の湾曲による歪は加わらないため、ピエゾ抵抗素子88a〜88dの抵抗値は一定となる。これにより、マイクロバルブ3が「閉」状態であることを検出できる。
【0076】
一方、マイクロバルブ3が「開」状態のとき、ダイアフラム72は上方に湾曲する。すると、互いに長手方向が直交するように配置されたピエゾ抵抗素子88a,88cと、ピエゾ抵抗素子88b,88dに、互いに90°ずれた方向の応力が印加される。これにより、例えば、ピエゾ抵抗素子88a,88cの抵抗値は減少し、逆にピエゾ抵抗素子88b,88dの抵抗値は増加する。これにより、マイクロバルブ3が「閉」状態のときは一定であったピエゾ抵抗素子88a〜88dの抵抗値は変化し、ブリッジ回路のバランスが崩れるため、ブリッジ回路の電圧を測定することによって、マイクロバルブ3の「開」状態を検出することが可能になる。
【0077】
こうした、ダイアフラム72に形成されたピエゾ抵抗素子88の電圧値の値を計測するためには、例えば、図9に示すような回路を用いればよい。マイクロバルブ3が「閉」状態の時、ダイアフラム72は平坦であるため、ピエゾ抵抗素子88によって形成されるブリッジ回路に電流iを印加したときの出力電圧Vは0になる。一方、ダイアフラム72を湾曲させてマイクロバルブを「開」状態にすると、ピエゾ抵抗素子88によって形成されるブリッジ回路の出力電圧Vが変化し、0ではない一定の値Vをとる。
【0078】
なお、この時の出力電圧Vの値、電圧の正負は、ピエゾ抵抗素子88の設計によって決まる。また、マイクロバルブ3の「閉」状態の時、あるいは「開」状態の時の出力電圧Vの値は、ピエゾ抵抗素子88からなるブリッジ回路の平衡を調整する可変抵抗95を調整することによって、電圧を0でないオフセット電圧に設定することもできる。
【0079】
また、ダイアフラム72と、ピエゾ抵抗素子88からなるブリッジ回路の出力電圧Vの値と、マイクロバルブ3の開度、すなわちマイクロバルブ3を流れる液体の流量は相関があるため、この出力電圧Vを測定し、その値に従って空隙84内の圧力を制御することにより、マイクロバルブ3を流れる流体の流量を制御することもできる。
【0080】
[第三の実施形態(マイクロバルブの製造方法)]
第三の実施形態に示すマイクロバルブの製造方法について述べる。図8に示すマイクロバルブ3の製造にあたっては、まず、図10(a)に示すように、第1の基板300としてSOI基板を用いる。薄膜層301、支持基板303共にn型Si(100)単結晶基板を用いる。また、薄膜層301、支持基板303の間には埋め込み酸化膜302が形成されている。
【0081】
SOI基板300をRCA洗浄法などを用いて洗浄した後、表面(薄膜層側)と裏面(支持基板側)を熱酸化する等によって酸化膜311a、311bを形成する。表面側にフォトレジスト351を塗布し、露光、現像することによって、ピエゾ抵抗素子のパターン351aと拡散層配線部のパターン351bを形成する(図10(b)参照)。そして、フォトレジストパターンをマスクにして燐イオンを薄膜層301にイオン注入し、ピエゾ抵抗素子となるイオン注入層352aと拡散層配線部となるイオン注入層352bを形成する。
【0082】
次に、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト351を除去する(図10(c)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト351を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。SOI基板300を900℃〜1100℃程度の温度で窒素、アルゴンガスなどの不活性ガス中で熱処理することにより、燐イオンを注入した部分を活性化し、p型半導体層であるピエゾ抵抗素子353aと拡散層配線部353bを形成する(ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成する工程)。その後、裏面側にフォトレジスト321を塗布する。
【0083】
フォトレジスト321を露光、現像することによって、固定部のパターン321aと弁体部のパターン321bを形成する(図10(d)参照)。そして、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて、フォトレジスト321をマスクとして酸化膜311bをエッチングし、開孔部312を形成する(図10(e)参照)。ウェットエッチング法ではエッチング液として希釈フッ酸、緩衝フッ酸などを用いればよい。また、界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。ドライエッチング法では、CF4などのフッ素を含むガスのプラズマなどを用いる。なお、第1の基板300の表面側の酸化膜311aは、本工程のエッチングの際、特にウェットエッチングにおいては、除去されてしまわないように、治具ないしはフォトレジストなどを用いて保護するのが好ましい。
【0084】
次に、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト321a、321bを除去する(図10(f)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト321a、321bを灰化しても良く、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0085】
酸化膜311bに形成された開孔部312を通して、アルカリ性のエッチング液を用いて支持基板303を結晶異方性エッチングする。これにより、支持基板303に凹部304が形成される(図10(g)参照)。アルカリ性のエッチング液としては、KOH、TMAH、ヒドラジンないしはEDP(エチレンジアミン+ピロカテコール)などを用いることができる。KOHをエッチング液として用いる場合は、KOHによるエッチング速度の遅いシリコン窒化膜を酸化膜311bの代わりに用いることが望ましい。この場合、シリコン窒化膜と第1の基板の間に酸化膜を形成した積層膜構造とし、シリコン窒化膜の応力を緩和することが望ましい。なお、この場合、開孔部312を形成するためのシリコン窒化膜のエッチングには、CF4などのフッ素を含むガスを用いたドライエッチング法を利用すればよい。
【0086】
次に、表面側にフォトレジスト322を塗布し、露光、現像することによって、酸化膜311a上にピエゾ抵抗353a、拡散層配線部353bに電圧を供給するための開孔パターン322aを形成する(図10(h)参照)。そして、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて酸化膜311aをエッチングし、開孔部313を形成する(図11(a)参照)。ウェットエッチング法では希釈フッ酸、緩衝フッ酸などをエッチング液として用いればよい。また、界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。ドライエッチング法では、CF4などのフッ素を含むガスなどを用いる。なお、この際、支持基板303に形成された凹部304の底部に露出している埋め込み酸化膜302も同時にエッチングされ開孔部305が形成される。
【0087】
次に、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト322を除去する(図11(b)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト322を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。以上の工程で、第1の基板300には、支持基板303に弁306、薄膜層301にはダイアフラム部307、ダイアフラム部307上には酸化膜311c、およびピエゾ抵抗353aが形成される。
【0088】
次に、第2の基板331としてガラス基板、例えばナトリウムなどの可動イオンを含みシリコン基板と陽極接合が可能な硼珪酸ガラス基板、シリコン基板と直接接合が可能な無アルカリガラス基板などを用意する。第2の基板331の裏面(第1の基板と接合される面)側にCr膜などのエッチングマスク膜332をスパッタリング法、蒸着法などを用いて形成する(図11(c)参照)。
【0089】
フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いてエッチングマスク膜332に開孔部333を形成する(図11(d)参照)。エッチング技術としては、ウェットエッチング技術、ドライエッチング技術などを用いることができる。
【0090】
次に、エッチングマスク膜332をマスクとして、第2の基板331をフッ酸などのガラスをエッチングするエッチング液でウェットエッチングし、裏面側に溝部334を形成する(図11(e)参照)。なお、ドライエッチング技術を用いて溝部334を形成しても良い。エッチングマスク膜332のフォトレジスト膜は、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによって除去する。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト膜を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0091】
次に、Cr膜などで形成したエッチングマスク膜332をウェットエッチング技術などを用いて除去する(図11(f)参照)。そして、第2の基板の表面(第1の基板と陽極接合により接合される面の反対側の面)側にドライフィルムレジスト膜336を貼り付け、露光、現像することにより弁を駆動するための圧力を導入するための開孔パターン337a、ピエゾ抵抗353aと拡散層配線部353bに電圧を印加するための電極340bを取り出すための開孔パターン337bを形成する(図11(g)参照)。
【0092】
次に、例えば、ブラスト加工法等を用いて第2の基板331に弁を駆動するための圧力を導入するための貫通穴338a、電極340b用の貫通穴338bを形成する(図11(h)参照)。この後、ドライフィルムレジスト膜336を除去する(図12(a)参照)。
【0093】
第1の基板300と第2の基板331を陽極接合法、直接接合法などを用いて接合する。接合後、第2の基板331の表面(第1の基板と接合される面の反対側の面)側にアルミなどの金属膜339を形成する(図12(b)参照)。金属膜339の形成は、スパッタ法、電子ビーム蒸着法などの真空中で成膜する方法を利用する。
【0094】
金属膜が形成された第1の基板300と第2の基板331を大気中に取り出すと、第2の基板331に開孔した溝部334と第1の基板300のダイアフラム部307で囲まれる空隙が真空で、これらの基板の外部は大気圧になっているため、第1の基板300に形成されたダイアフラム部307が圧力差によって変形し、弁306が第2の基板331に引きつけられる。
【0095】
次に、第3の基板として、硼珪酸ガラス基板、無アルカリガラス基板などを用意する。この第3の基板341にドライフィルムレジスト膜342を貼り付け、露光、現像することによって、流体の流入口、流出口となる開孔部のパターン343を形成する(図12(c)参照)。そして、このドライフィルムレジスト膜342をマスクとして、ブラスト技術等を利用して、第3の基板341を厚さ方向に貫通し、流体の流入口、流出口となる貫通穴344を形成する(図12(d)参照)。その後、ドライフィルムレジスト膜342を除去する(図12(e)参照)。
【0096】
前工程で接合されて一体化している第1の基板300と第2の基板331に、第3の基板341を直接接合法、陽極接合法などを用いて接合する(図12(f)参照)。この時、第1の基板に形成した弁306は第2の基板331に引きつけられているため、第2の基板331に形成した溝部334の深さを適切に設定することによって、第3の基板341と弁306を十分離すことができる。従って、直接接合の際に弁306が第3の基板341と密着していないため、これらが接合されてしまうことはない。
【0097】
また、陽極接合法を用いた場合も、弁306を第3の基板341から十分に離しておくことで、第1の基板300と第3の基板341に印加される電圧によって発生する静電気力によって弁306が第3の基板に引きつけられないようにできるので、陽極接合されることはない。
【0098】
次に、第2の基板331に形成した金属膜339をフォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて電極340bとなる部分を残してエッチングする(図12(g)参照)。なお、エッチング方法としては、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などを用いることができる。
【0099】
また、弁を駆動するための圧力を導入するための貫通穴338aから金属膜339を除去すると貫通穴338aから大気が流入するため、第2の基板331に開孔した溝部334と第1の基板300のダイアフラム部307で囲まれる空隙84は大気圧となる。するとダイアフラム部307を変形させていた圧力差が無くなるため、ダイアフラム部307は元の形に戻り、弁306は第3の基板341に接触し、流体の流入口、流出口344を閉塞する。
以上のような工程を経て、図8に示す第三の実施形態のマイクロバルブ3を製造することができる。
【0100】
上述したマイクロバルブの製造方法において、第1の基板としてはSOI基板を用いる例を示したが、単結晶シリコン基板を用いることもできる。また、第1の基板の支持基板の結晶異方性エッチングの代わりにドライエッチング法を用いることもできる。
【0101】
第2の基板、もしくは第3の基板のエッチングにおいて、これらの基板をエッチングする前に、エッチングマスク膜のパターン形成に利用したフォトレジスト膜を除去するとしたが、エッチングマスク膜上のフォトレジスト膜を残したまま第2の基板、ないしは第3の基板をエッチングしてもよい。この場合、フォトレジスト膜は基板のエッチング後、除去する。エッチングマスクが2層構造になるため、エッチングマスクのエッチング耐性が向上し、エッチングマスクのピンホール等に起因する欠陥の発生を抑制することができる。
【0102】
また、一般的な半導体デバイスの製造方法と同様に、複数のマイクロバルブを同時に1組の基板上に形成し、最後にダイシング等の手段を用いて切断することにより、マイクロバルブを一括して大量生産することもできる。
【0103】
マイクロバルブの駆動手段として、気体(真空、気体圧力)、静電気力を例に挙げた、ダイアフラム上に圧電素子からなるユニモルフ構造を設ける、磁気を利用する等、各種の駆動力を用いることもできる。これらの駆動手段を用いた場合も、本発明のように、ダイアフラム部に形成した可動電極と基板等に形成した固定電極間の静電容量の変化や、ダイアフラム部に形成したピエゾ抵抗の変化を用いてマイクロバルブの開閉状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のマイクロバルブの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のマイクロバルブの開閉検出方法を示す説明図である。
【図3】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図6】本発明のマイクロバルブの別な一例を示す断面図である。
【図7】本発明のマイクロバルブの開閉検出方法を示す説明図である。
【図8】本発明のマイクロバルブの別な一例を示す平面図、断面図である。
【図9】本発明のマイクロバルブの開閉検出方法を示す説明図である。
【図10】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図11】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図12】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図13】本発明のマイクロバルブの別な一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 マイクロバルブ
10 第1の基板
12 ダイアフラム
13 弁(弁体部)
19 ダイアフラム部
20 第2の基板
26 開閉検出手段
30 第3の基板
32 流入口
33 流出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバルブ及びその製造方法、ならびにマイクロバルブの開閉検出方法に関し、詳しくは、流体の流入口及び流出口を開閉させる弁体部の開閉状態を確実に検出可能なマイクロバルブ及びその製造方法、ならびにマイクロバルブの開閉検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン等の半導体基板にマイクロマシニング技術を適用したダイアフラム構造を有するマイクロバルブが提案され実用に供されている。例えば、特許文献1には、弁体基板の弁体部における第1の基板への対向面に可動電極を形成するとともに、第1の基板の可動電極に対向する表面に固定電極を形成し、これら可動電極と固定電極との間に所定量のギャップを持たせたマイクロバルブが記載されている。こうした構成により、弁体部が可動電極及び固定電極に電圧を印加しない状態では、弁孔をその接触圧により塞ぐことができる。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、枠体となる半導体基板に熱絶縁領域を介して可撓領域の一端が連結されるとともに、可撓領域の他端は弁体となる可動エレメントが連設され、この可撓領域を互いに熱膨張係数の異なる薄肉部と薄膜から構成してマイクロバルブが記載されている。これにより、薄肉部の表面に形成された拡散抵抗が加熱されると、薄肉部と薄膜の熱膨張差により可撓領域が変位し、弁体である可動エレメントが弁孔を塞ぐことができる。
【特許文献1】特開2005−180530号公報
【特許文献2】特開2000−309000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示すマイクロバルブでは、例えば、可動電極と固定電極の間に絶縁物などの異物が挟まり、駆動電圧を印加した際に弁体が第1の基板に向かって十分に上昇できずに弁孔の開閉不良を引き起こしても、こうした不具合の発生を検出できないという課題があった。
【0005】
同様に、特許文献2に示すマイクロバルブも、例えば、可動エレメントと弁孔の形成されている台座の間に異物が挟まり、駆動電圧を印加した際に異物のため可動エレメントの動作が制限されるなとの開閉不良を引き起こしても、こうした不具合の発生を検出できないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、異物の侵入などによって弁体部に開閉不良が生じた場合、確実にこれを検出することが可能なマイクロバルブを提供することを目的とする。
【0007】
また、異物の侵入などによって生じた弁体部の開閉不良を検出可能なマイクロバルブの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
更に、異物の侵入などによって弁体部に開閉不良が生じた場合、確実にこれを検出することが可能なマイクロバルブの開閉検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は次のようなマイクロバルブを提供した。
すなわち、本発明のマイクロバルブは、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブであって、前記ダイアフラム部の変形を検出する開閉検出手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部の他方の面側に形成した第1の電極と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に形成した第2の電極とから形成されていればよい。また、前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部に形成されたピエゾ抵抗素子から形成されていればよい。前記ピエゾ抵抗素子は複数形成され、前記ダイアフラム部の変形時に、応力の印加される方向が互いに異なるように配置すればよい。前記溝部には、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動するための流体の開孔部がさらに形成されていればよい。
【0011】
本発明のマイクロバルブの製造方法は、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、前記ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成する工程と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成する工程とを少なくとも備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のマイクロバルブの製造方法は、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成する工程を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明のマイクロバルブの開閉検出方法は、ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を形成するとともに、該ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成した第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部を形成し、該溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成した第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの開閉検出方法であって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定することにより、前記弁体部の前記流入口及び流出口に対する開閉状態を検出することを特徴とする。
【0014】
前記溝部には流体を流出入させる開孔部が形成され、該開孔部を介して流体を流出入させることにより、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させればよい。また、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させる直流電流を印加するとともに、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記直流電流の電圧値よりも低い電圧の交流電流を印加して前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定すればよい。また、前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成し、前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値に応じて変化する電圧値を測定ればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイクロバルブによれば、ダイアフラム部に形成された弁体部の開閉状態を検出するための開閉検出手段を設けた。これにより、外部の流路に圧力センサや流量センサなどを付加することなく、弁体部の開閉状態を外部から確認することができる。よって、弁体部に異物などが侵入して、弁体部に開閉不良が生じても、確実にこれを検出することが可能なマイクロバルブを実現することができる。
【0016】
また、本発明のマイクロバルブの製造方法によれば、開閉検出手段を形成する工程を備えることにより、弁体部の開閉状態を外部から確実に確認可能なマイクロバルブを製造することができる。
【0017】
さらに、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法によれば、ダイアフラム部に形成された弁体部の開閉状態を検出するための開閉検出手段を設けたマイクロバルブを用いることによって、弁体部の開閉状態を外部から確認することが可能になる。これにより、弁体部に異物などが侵入して、弁体部に開閉不良が生じても、確実にこれを検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るマイクロバルブ及びその製造方法、ならびにマイクロバルブの開閉検出方法の最良の形態について、図面に基づき説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
[第一の実施形態(マイクロバルブ)]
図1は、本発明のマイクロバルブの一例を示す断面図である。本実施形態に係るマイクロバルブ1は、例えば、第1の基板10、第2の基板20、および第3の基板30を重ね合わせて接合一体化してなる。
【0020】
第1の基板10は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板11の一部がシリコン側からエッチング加工されてダイアフラム部19とされる。このダイアフラム部19の下面(一方の面)側に、酸化膜25を介して弁(弁体部)13及び固定部14が設けられている。また、ダイアフラム部19の上面(他方の面)はダイアフラム12が形成される。このダイアフラム部19は、開閉検出手段26を構成する第1の電極(可動電極)を兼ねている。さらに、ダイアフラム12の上面には、酸化膜27が設けられている。
【0021】
第2の基板20は、第1の基板10と同じ大きさであり、かつ陽極接合できる材質、例えばNa等の可動イオンを含むガラス基板21のダイアフラム12に相対する位置に下側からのエッチング加工により、ダイアフラム12が湾曲するために必要な空隙24を構成する溝部22が形成される。また、この溝部22の一端部に、弁13及びダイアフラム12を駆動するための流体の流入口及び流出口である開孔部23が形成されている。
溝部22においてダイアフラム12と対面する位置に、開閉検出手段26を構成する第2の電極(固定電極)28が形成される。さらに、第2の基板20の一端には、ダイアフラム(第1の電極)12の電位を外部に取り出すための貫通電極29が形成されている。
【0022】
第3の基板30は、ガラス基板31から形成され、弁13に対応する位置に、流体の流入口32及び流出口33が形成されている。
【0023】
なお、SOI基板からなる第1の基板10は、例えば、1〜100μm程度の厚さの単結晶Si(100)であるダイアフラム12と、100〜600μm程度の厚さの単結晶Si(100)からなる弁(弁体部)13及び固定部14と、これらダイアフラム12と弁13及び固定部14との間の厚さ0.1〜10μm程度の埋め込み酸化膜である酸化膜25から構成されていればよい。これら各層の厚みは、マイクロバルブ1が制御する流体の流量、圧力などによって適宜、最適化されればよい。また、第1の基板10のサイズも製造装置の仕様に応じて、4インチ基板、6インチ基板等、各種サイズから選択されればよい。
【0024】
第2の基板20や第3の基板30を構成するガラス基板は、例えば、Naなどの可動イオンを含み第1の基板10と陽極接合可能な硼珪酸ガラス、直接接合が可能な無アルカリガラスなどによって構成されればよい。
【0025】
このような構成のマイクロバルブ1は、第1の基板10のダイアフラム12と、第2の基板20の溝部22により構成される空隙24内の圧力が高い場合、弁13が第3の基板30に押しつけられ、弁13により流入口32及び流出口33が閉塞される。これにより、流入口32から流出口33に至る流路は遮断され、流体は流れることができない。すなわち、マイクロバルブ1は「閉」の状態となる。
【0026】
一方、空隙24内の圧力を低くすると、この圧力の低下に伴いダイアフラム12は上方、即ち溝部22に入り込むように湾曲する。ダイアフラム12が湾曲すると、流体の流入口32及び流出口33を閉鎖していた弁13は第3の基板30の表面から離れ、流入口32及び流出口33は開放される。これにより流入口32から流出口33に至る流路を流体が流れることが可能になる。すなわち、マイクロバルブ1は「開」の状態になる。
【0027】
このように、空隙24内の圧力を増減することで、ダイアフラム12の湾曲を制御し、マイクロバルブ1の開閉を制御することができる。空隙24内の圧力を増減するには、開孔部23から流体を空隙24に導入したり、あるいは空隙24から流体を排出することによって行うことができる。
【0028】
即ち、マイクロバルブ1では、開孔部23から空隙24内に流体を導入し、空隙24内を所定の圧力以上にすることで、マイクロバルブ1は「閉」状態となる。また、開孔部23から空隙24内の流体を排出し、空隙24内を所定の圧力以下にすることで、マイクロバルブ1は「開」状態となる。なお、こうした空隙24内の圧力の増減による弁13の開閉制御では、空隙24に圧力を印加しない状態で弁13が閉まっているノーマリクローズ型、空隙24に圧力を印加しない状態で弁13が開いているノーマリオープン型があり、必要に応じて適切なタイプが選択されれば良い。
【0029】
なお、この第一の実施形態のマイクロバルブ1では、開閉検出手段26をなす第1の電極と第2の電極のうち、第1の電極をダイアフラム12と兼用する構成、即ち、ダイアフラム12は、湾曲により弁13を開閉させる機能と、可動電極としての機能とを兼ね備えた構成としたが、ダイアフラム12とは別に、第2の電極と対面する位置に第1の電極を形成してもよい。
【0030】
また、上述した図1に示す実施形態では、弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口を両方とも形成しているが、これ以外にも、弁体部に相対する位置には、流入口または流出口のいずれか一方を形成した構成であってもよい。
例えば、図13に示すように、第3の基板430において、第1の基板410の弁(弁体部)413に相対する位置には、流体を流入させる流入口432だけを形成し、弁(弁体部)413にから外れた位置に流出口433を形成した構成であってもよい。この場合、流出口433は常に開放された状態となる。更に、流出口433の先に逆止弁などを設けるのも好ましい。
【0031】
[第一の実施形態(マイクロバルブの開閉検出方法)]
第一の実施形態に示すマイクロバルブの作用、即ち、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法について述べる。図1に示すマイクロバルブ1は、開閉検出手段26によって、弁13の開閉状態を検出する。即ち、開閉検出手段26を構成する、互いに対面したダイアフラム(第1の電極:可動電極)12と第2の電極(固定電極)28との隙間dに形成される静電容量Cの値を測定することで、弁13の開閉状態が検出できる。
【0032】
例えば、図1に示すマイクロバルブ1が「閉」状態の時、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間bは最大となる。この時の静電容量Cの値は最小値をとる。一方、マイクロバルブ1が「開」状態のとき、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間dは最小となる。この時の静電容量Cの値は最大値をとる。従って、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間dが形成する静電容量の値Cを測定した結果が最小値である時には、マイクロバルブ1が「閉」状態であり、最大値である時には、マイクロバルブ1が「開」状態であることを検出することが可能になる。
【0033】
こうした、ダイアフラム(第1の電極)と第2の電極28との隙間dが形成する静電容量の値を計測するためには、例えば、図2に示すような回路を用いればよい。即ち、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間dが形成する静電容量C1に対して直列に、固定の静電容量C2を接続し、これらの静電容量C1,C2に電圧Vを印加する。静電容量C1、静電容量C2の合成静電容量をC、静電容量C1、静電容量C2の両端電圧をそれぞれV1、V2、静電容量C1、静電容量C2に蓄積される電荷量をQとすると、下記のようになる。
V=V1+V2
V=Q/C
C=(C1×C2)/(C1+C2) : C1とC2の合成静電容量
V1=Q/C1
V2=Q/C2
【0034】
したがって、
V1={C2/(C1+C2)}×V
V2={C1/(C1+C2)}×V
ここで、マイクロバルブ1が「開」状態の時の静電容量C1をC1o、「閉」状態の時の静電容量C1をC1c、「開」状態の時に静電容量C1の両端に印加される電圧をV1o、「閉」状態の時に静電容量C1の両端に印加される電圧をV1cで表すと、
V1o={C2/(C1o+C2)}×V
V1c={C2/(C1c+C2)}×V
ここで、C1o>C1cなので、
V1o<V1c
となるため、マイクロバルブ1の開閉状態を電圧の変化として検出することができる。
【0035】
なお、ダイアフラム12と第2の電極28とが形成する静電容量C1の値と、マイクロバルブ1の開度、すなわちマイクロバルブ1を流れる液体の流量は相関関係があるため、静電容量Cを測定し、その値に従って空隙24内の圧力を制御することで、マイクロバルブ1を流れる流体の流量を制御することも可能である。
【0036】
即ち、ダイアフラム12と第2の電極28との間に形成される静電容量C1は、これら電極の面積をS、両電極間の間隔をd、誘電率をεとすると、
C1=ε×S/d
即ち
d=ε×S/C1
なので、静電容量C1を測定することによって、ダイアフラム12と第2の電極28との間隔が計算できる。弁13と第3の基板30の表面との間隔は、ダイアフラム12と第2の電極28との間隔から計算でき、かつマイクロバルブ1によって制御される流体の流量は、弁13と第3の基板30の表面との間隔に依存している。よって、ダイアフラム12と第2の電極28との隙間によって形成される静電容量C1の値を用いることで、マイクロバルブ1の開度、すなわちマイクロバルブ1を流れる液体の流量を制御することが可能になる。
【0037】
[第一の実施形態(マイクロバルブの製造方法)]
第一の実施形態に示すマイクロバルブの製造方法について述べる。図1に示すマイクロバルブ1の製造にあたっては、まず、図3(a)に示すように、第1の基板となるSOI基板100を用意する。SOI基板100は、Si(100)単結晶からなる薄膜層101、支持基板103と、この薄膜層101、支持基板103の間に形成された埋め込み酸化膜102からなる。
【0038】
SOI基板100をRCA洗浄法などを用いて洗浄した後、表面(薄膜層側)と裏面(支持基板側)を熱酸化する等により、酸化膜111a、111bを形成する(図3(b)参照)。そして、裏面側にフォトレジスト121を塗布する(図3(c)参照)。これを露光、現像することによって、固定部のパターン121aと弁(弁体部)のパターン121bを形成する(図3(d)参照)。
【0039】
次に、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて、酸化膜111bをエッチングし、凹部112を形成する(図3(e)参照)。ウェットエッチング法ではエッチング液として希釈フッ酸、緩衝フッ酸などを用いればよい。また、界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。ドライエッチング法では、CF4などフッ素を含むガスのプラズマなどを用いる。なお、第1の基板の表面側の酸化膜111aは、特にウェットエッチングにおいては、除去されてしまわないように、治具ないしはフォトレジストなどを用いて保護するのが好ましい。
【0040】
次に、加熱した濃硫酸、あるいは濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト121a、121bを除去する(図3(f)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト121a、121bを灰化しても良く、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0041】
次に、酸化膜111bに形成された凹部112を通して、アルカリ性のエッチング液を用いて支持基板103を結晶異方性エッチングし、支持基板103に、例えば断面台形の凹部104を形成する(図3(g)参照)。これにより、弁106、およびダイアフラム(第1の電極)107が形成される(第1の電極を形成する工程)。アルカリ性のエッチング液としては、例えば、KOH、TMAH、ヒドラジンないしはEDP(エチレンジアミン+ピロカテコール)などを用いることができる。
【0042】
KOHをエッチング液として用いる場合は、KOHによるエッチング速度の遅いシリコン窒化膜を酸化膜111bの代わりに用いることが望ましい。この場合、シリコン窒化膜と第1の基板の間に酸化膜を形成した積層膜構造とし、シリコン窒化膜の応力を緩和することが望ましい。なお、この場合、凹部112を形成するためのシリコン窒化膜のエッチングには、CF4などのフッ素を含むガスを用いたドライエッチング法を利用するとよい。
【0043】
次に、酸化膜111aの表面にフォトレジスト122を塗布し、露光、現像することによって、フォトレジスト122にダイアフラムの電位を取り出すための開孔パターン122aを形成する(図3(h)参照)。
【0044】
次に、この開孔パターン122aを形成したフォトレジスト122をマスクとして、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて酸化膜111aをエッチングし、開孔部113を形成する(図4(a)参照)。ウェットエッチング法では、例えば、希釈フッ酸、緩衝フッ酸などをエッチング液として用いればよい。界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。また、ドライエッチング法では、CF4などのフッ素を含むガスなどを用いればよい。なお、この時、支持基板103に形成された開孔部104の底部に露出している埋め込み酸化膜102も同時にエッチングされ開孔部105が形成される。
【0045】
そして、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することにより、フォトレジスト122を除去する(図4(b)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト122を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。以上で、第1の基板100には、支持基板103に弁106、薄膜層101にダイアフラム107、ダイアフラム107の上に酸化膜111cが形成される。
【0046】
次に、第2の基板131として、ガラス基板、例えばナトリウムなどの可動イオンを含みシリコン基板と陽極接合が可能な硼珪酸ガラス基板、シリコン基板と直接接合が可能な無アルカリガラス基板などを用意する。この第2の基板131の裏面(第1の基板と接合される面)側にCr膜などのエッチングマスク膜132をスパッタリング法、蒸着法などを用いて形成する(図4(c)参照)。
【0047】
次に、フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて、エッチングマスク膜132に開口133を形成する(図4(d)参照)。エッチング技術としては、例えば、ウェットエッチング技術、ドライエッチング技術などを用いればよい。
【0048】
次に、第2の基板131をフッ酸などガラスをエッチング可能なエッチング液でウェットエッチングし、裏面側に溝部134を形成する(図4(e)参照)。なお、ドライエッチング技術を用いて溝部134を形成しても良い。エッチング後には、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト膜を除去すればよい。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト膜を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。そして、Cr膜などで形成したエッチングマスク膜をウェットエッチング技術などを用いて除去する(図4(f)参照)。
【0049】
次に、第2の基板の表面(第1の基板と陽極接合により接合される面の反対側の面)側にドライフィルムレジスト膜136を貼り付け、露光、現像することにより弁106を駆動するための圧力を導入する開孔パターン137aと、ダイアフラム107の電位を取り出すための電極140bを象った開孔パターン137bのそれぞれを形成する(図4(f)参照)。そして、ドライフィルムレジスト膜136をマスクとして、ブラスト加工法等を用いて、第2の基板131に弁106を駆動するための圧力を導入する貫通穴138a、後工程で形成する電極を象った貫通穴138bを形成する(図4(g)参照)。
【0050】
次に、ドライフィルムレジスト膜136を除去し、第2の基板の裏面(第1の基板と接合される面)側にCr膜などの導電膜135を形成する(図4(h)参照)。そして、フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて第2の電極(固定電極)135aを形成する(第1の電極を形成する工程)。この後、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト膜を除去する(図5(a)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト膜を灰化しても良く、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0051】
続いて、第1の基板100と第2の基板131とを、例えば、陽極接合法、直接接合法などを用いて接合する(図5(b)参照)。接合後、第2の基板131の表面(第1の基板と接合される面の反対側の面)側にアルミニウムなどの金属膜139を形成する。金属膜139の形成は、スパッタ法、電子ビーム蒸着法など、真空中で成膜する方法を用いれば良い。
【0052】
金属膜139が形成された第1の基板100と第2の基板131を大気中に取り出すと、第2の基板131に開孔した溝部134と第1の基板100のダイアフラム部107で囲まれる空隙24が真空で、これら基板の外部は大気圧になっているため、第1の基板100に形成されたダイアフラム部107が圧力差によって変形し、弁106が第2の基板131に引きつけられる。この時、弁106上のダイアフラム107には酸化膜111cが形成されており、ダイアフラム(第1の電極)107は酸化膜111cを挟んで、第2の基板131に形成された第2の電極135aに接触する。
【0053】
次に、第3の基板141として、硼珪酸ガラス基板、無アルカリガラス基板などを用意する(図5(c)参照)。この第3の基板141に、ドライフィルムレジスト膜142を貼り付け、露光、現像を行うことにより、流体の流入口、流出口となるパターン143を形成する。
【0054】
次に、このドライフィルムレジスト膜142をマスクとして、ブラスト技術等を利用して、第3の基板141を厚さ方向に貫通し、流体の流入口、流出口となる貫通穴144を形成する(図5(d)参照)。その後、ドライフィルムレジスト膜142を除去する(図5(e)参照)。
なお、流入口、流出口となる2つ貫通穴144のうち、いずれか一方を第1の基板100の弁106に相対する位置に形成し、他方を弁106にから外れた位置に形成してもよい。
【0055】
前工程で接合され一体化している第1の基板100と第2の基板131に、第3の基板141を、例えば直接接合法、陽極接合法などを用いて接合する(図5(f)参照)。この時、第1の基板に形成した弁106は第2の基板131に引きつけられているため、第2の基板131に形成した溝部134の深さを適切に設定することによって、第3の基板141と弁106とを充分にに離間させることができる。したがって直接接合の際に、弁106が第3の基板141と密着していないため、これらが接合されてしまうことはない。
【0056】
また、陽極接合法を用いた場合であっても、弁106を第3の基板141から充分に離間させることで、第1の基板100と第3の基板141に印加される電圧によって生じる静電気力で、弁106が第3の基板に引きつけられないようにすることができる。このため、弁106と第3の基板とが陽極接合されることはない。
【0057】
次に、第2の基板131に形成した金属膜139を、例えば、フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて電極140bとなる部分を残してエッチングする。なお、エッチング方法としては、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などを用いることができる。また、弁106を駆動するための圧力を導入する貫通穴138aから金属膜139を除去すると、この貫通穴138aから大気が流入し、第2の基板131に開孔した溝部134と、酸化膜111cで囲まれる空隙24は大気圧となる。すると、ダイアフラム107を変形させていた圧力差が無くなるため、ダイアフラム107は元の形に戻り、弁106は第3の基板141に接触し、流体の流入口144、流出口145を閉塞する(図5(f)参照)。
以上のような工程を経て、図1に示す第一の実施形態のマイクロバルブ1を製造することができる。
【0058】
[第二の実施形態(マイクロバルブ)]
図6は、本発明のマイクロバルブの別な一例を示す断面図である。本実施形態に係るマイクロバルブ2は、例えば、第1の基板40、第2の基板50、および第3の基板60を重ね合わせて接合一体化してなる。
【0059】
第1の基板40は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板11の一部がシリコン側からエッチング加工されてダイアフラム部49とされ、このダイアフラム部49の下面(一方の面)側に、酸化膜55を介して弁(弁体部)43及び固定部44が設けられている。また、ダイアフラム部49の上面(他方の面)はダイアフラム42が形成される。このダイアフラム部49は、開閉検出手段56を構成する第1の電極(可動電極)を兼ねている。さらに、ダイアフラム42の上面には、酸化膜57が設けられている。
【0060】
第2の基板50は、空隙54を構成する溝部52が形成される。この溝部52においてダイアフラム42と対面する位置に、開閉検出手段56を構成する第2の電極(固定電極)58が形成される。そして、溝部52の一端には、第2の電極58に電力を供給するとともに、第2の電極58の電位を外部に取り出すための貫通電極59aが形成されている。また、第2の基板50の一端には、ダイアフラム(第1の電極)42に電力を供給するとともに、ダイアフラム42の電位を外部に取り出すための貫通電極59bが形成されている。
【0061】
第3の基板60は、ガラス基板61から形成され、弁43に対応する位置に、流体の流入口62及び流出口63が形成されている。
【0062】
このような構成のマイクロバルブ2は、ダイアフラム42を静電気力で駆動(湾曲)させて、弁43を開閉させる。即ち、マイクロバルブ2は、ダイアフラム(第1の電極)42と対になって静電容量を形成する第2の電極58に電圧が印加されていない時は、ダイアフラムと第2の電極58との間には静電気力が働かない。このため、弁43が第3の基板60に押しつけられ、弁43により流入口62及び流出口63が閉塞される。これにより、流入口62から流出口63に至る流路は遮断され、流体は流れることができない。すなわち、マイクロバルブ2は「閉」の状態となる。
【0063】
一方、ダイアフラム(第1の電極)42と第2の電極58との間に電圧が印加されると、ダイアフラム42と第2の電極58との間に静電気力が生じ、ダイアフラム42は第2の電極58に引き付けられ湾曲する。ダイアフラム42が湾曲すると、流体の流入口62及び流出口63を閉鎖していた弁43は第3の基板60の表面から離れ、流入口62及び流出口63は開放される。これにより流入口62から流出口63に至る流路を流体が流れることが可能になる。すなわち、マイクロバルブ2は「開」の状態になる。
【0064】
[第二の実施形態(マイクロバルブの開閉検出方法)]
第二の実施形態に示すマイクロバルブの作用、即ち、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法について述べる。図7は、マイクロバルブを構成するダイアフラムの駆動回路、および第12の電極と第2の電極との静電容量の測定回路を示す概略図である。
【0065】
弁43を開閉するために必要な電圧は、制御したい流体の圧力、ダイアフラム42の面積と厚さや剛性、流体の流入口62や流出口63の開口面積などによって異なり、適切に設計することが必要である。ダイアフラム42を第2の電極58側に湾曲させ、マイクロバルブ2は「開」状態にするには、貫通電極59a,59bを介して、ダイアフラム42を第2の電極58との間に直流電圧(駆動電圧)Vを印加させる。
【0066】
一方、ダイアフラム42の湾曲状態、即ち、弁43の開閉状態を検出する際には、直流の駆動電圧Vに重畳して、この駆動電圧よりも低い電圧値の交流電圧V(t)を印加する。例えば、ダイアフラム(第1の電極)42と第2の電極58によって構成される静電容量C1のインピーダンスをZ1、静電容量C1に流れる電流をi(t)とする。また、マイクロバルブが「開」状態の時の静電容量C1をC1o、インピーダンスZ1をZ1o、静電容量C1に流れる電流i(t)をio(t)、「閉」状態の時の静電容量C1をC1c、インピーダンスZ1をZ1c、静電容量C1に流れる電流i(t)をic(t)とすると、C1o>C1c、Z1o<Z1cとなり、交流電圧v(t)を印加したときの電流i(t)は、
io(t)>ic(t)
となるため、マイクロバルブの開閉状態を電流の変化として検知することができる。なお、直流の駆動電圧Vに重畳する微小な交流電圧v(t)は、弁43の開閉に影響を与えないように、駆動電圧V>>微小な交流電圧v(t)とするのが好ましい。
【0067】
[第三の実施形態(マイクロバルブ)]
図8(a)は、本発明のマイクロバルブの別な一例を示す平面図である。また、図8(b)は、図8(a)のA−A線での断面図である。本実施形態に係るマイクロバルブ3は、第1の基板70、第2の基板80、および第3の基板90を重ね合わせて接合一体化してなる。
【0068】
第1の基板70は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板71の一部がシリコン側からエッチング加工されてダイアフラム部79とされる。このダイアフラム部79の下面(一方の面)側に、酸化膜85を介して弁(弁体部)73及び固定部74が設けられている。また、ダイアフラム部79の上面(他方の面)はダイアフラム72が形成される。このダイアフラム72には、開閉検出手段を構成するピエゾ抵抗素子88が形成されている。さらに、このダイアフラム72の上面には、酸化膜87が設けられている。
【0069】
ピエゾ抵抗素子88は、例えば、4つのピエゾ抵抗素子88a〜88dの長手方向が互いに直交するように配置され、互いにブリッジ回路を成すように接続されたものであればよい。これにより、ピエゾ抵抗素子88a〜88dの長手方向に電流を流した状態で、例えば、ダイアフラム部79が上方に湾曲して弁73が開状態になると、ピエゾ抵抗素子88a,88cと、ピエゾ抵抗素子88b,88dとでは、互いに応力の加わる方向が90°ずれることとなる。これにより、ブリッジ回路のバランスが崩れ、弁73の位置を検出することが可能になる。
【0070】
第2の基板80は、第1の基板70と同じ大きさであり、かつ陽極接合できるガラス基板81のダイアフラム72に相対する位置に下側からのエッチング加工により、ダイアフラム72が湾曲するために必要な空隙84を構成する溝部82が形成される。また、この溝部82の一端部に、弁73及びダイアフラム72を駆動するための流体の流入口及び流出口である開孔部83が形成されている。さらに、第2の基板80の一端には、ピエゾ抵抗素子88の電位を外部に取り出すための貫通電極89が形成されている。
【0071】
第3の基板90は、ガラス基板91から形成され、弁73に対応する位置に、流体の流入口92及び流出口93が形成されている。
【0072】
以上の構成のマイクロバルブ3は、第1の基板70のダイアフラム72と、第2の基板80の溝部82により構成される空隙84内の圧力が高い場合、弁73が第3の基板90に押しつけられ、弁73により流入口92及び流出口93が閉塞される。これにより、流入口92から流出口93に至る流路は遮断され、マイクロバルブ1は「閉」の状態となる。
【0073】
一方、空隙84内の圧力を低くすると、この圧力の低下に伴いダイアフラム72は上方、即ち溝部82に入り込むように湾曲する。ダイアフラム72が湾曲すると、流体の流入口92及び流出口93を閉鎖していた弁73は第3の基板90の表面から離れ、流入口92及び流出口93は開放されて、マイクロバルブ1は「開」の状態になる。
【0074】
[第三の実施形態(マイクロバルブの開閉検出方法)]
第三の実施形態に示すマイクロバルブの作用、即ち、本発明のマイクロバルブの開閉検出方法について述べる。図8に示すマイクロバルブ3は、開閉検出手段であるピエゾ抵抗素子88によって、弁73の開閉状態を検出する。即ち、ダイアフラム72の湾曲に応じて、抵抗値が変化するピエゾ抵抗素子88a〜88dの電圧値を測定することで、弁73の開閉状態が検出できる。こうしたピエゾ抵抗素子88a〜88dは、例えば、ブリッジ回路を成すように接続されれば良い。
【0075】
例えば、図8に示すマイクロバルブ3が「閉」状態の時、ダイアフラム72は平坦になり、ピエゾ抵抗素子88a〜88dにダイアフラム72の湾曲による歪は加わらないため、ピエゾ抵抗素子88a〜88dの抵抗値は一定となる。これにより、マイクロバルブ3が「閉」状態であることを検出できる。
【0076】
一方、マイクロバルブ3が「開」状態のとき、ダイアフラム72は上方に湾曲する。すると、互いに長手方向が直交するように配置されたピエゾ抵抗素子88a,88cと、ピエゾ抵抗素子88b,88dに、互いに90°ずれた方向の応力が印加される。これにより、例えば、ピエゾ抵抗素子88a,88cの抵抗値は減少し、逆にピエゾ抵抗素子88b,88dの抵抗値は増加する。これにより、マイクロバルブ3が「閉」状態のときは一定であったピエゾ抵抗素子88a〜88dの抵抗値は変化し、ブリッジ回路のバランスが崩れるため、ブリッジ回路の電圧を測定することによって、マイクロバルブ3の「開」状態を検出することが可能になる。
【0077】
こうした、ダイアフラム72に形成されたピエゾ抵抗素子88の電圧値の値を計測するためには、例えば、図9に示すような回路を用いればよい。マイクロバルブ3が「閉」状態の時、ダイアフラム72は平坦であるため、ピエゾ抵抗素子88によって形成されるブリッジ回路に電流iを印加したときの出力電圧Vは0になる。一方、ダイアフラム72を湾曲させてマイクロバルブを「開」状態にすると、ピエゾ抵抗素子88によって形成されるブリッジ回路の出力電圧Vが変化し、0ではない一定の値Vをとる。
【0078】
なお、この時の出力電圧Vの値、電圧の正負は、ピエゾ抵抗素子88の設計によって決まる。また、マイクロバルブ3の「閉」状態の時、あるいは「開」状態の時の出力電圧Vの値は、ピエゾ抵抗素子88からなるブリッジ回路の平衡を調整する可変抵抗95を調整することによって、電圧を0でないオフセット電圧に設定することもできる。
【0079】
また、ダイアフラム72と、ピエゾ抵抗素子88からなるブリッジ回路の出力電圧Vの値と、マイクロバルブ3の開度、すなわちマイクロバルブ3を流れる液体の流量は相関があるため、この出力電圧Vを測定し、その値に従って空隙84内の圧力を制御することにより、マイクロバルブ3を流れる流体の流量を制御することもできる。
【0080】
[第三の実施形態(マイクロバルブの製造方法)]
第三の実施形態に示すマイクロバルブの製造方法について述べる。図8に示すマイクロバルブ3の製造にあたっては、まず、図10(a)に示すように、第1の基板300としてSOI基板を用いる。薄膜層301、支持基板303共にn型Si(100)単結晶基板を用いる。また、薄膜層301、支持基板303の間には埋め込み酸化膜302が形成されている。
【0081】
SOI基板300をRCA洗浄法などを用いて洗浄した後、表面(薄膜層側)と裏面(支持基板側)を熱酸化する等によって酸化膜311a、311bを形成する。表面側にフォトレジスト351を塗布し、露光、現像することによって、ピエゾ抵抗素子のパターン351aと拡散層配線部のパターン351bを形成する(図10(b)参照)。そして、フォトレジストパターンをマスクにして燐イオンを薄膜層301にイオン注入し、ピエゾ抵抗素子となるイオン注入層352aと拡散層配線部となるイオン注入層352bを形成する。
【0082】
次に、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト351を除去する(図10(c)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト351を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。SOI基板300を900℃〜1100℃程度の温度で窒素、アルゴンガスなどの不活性ガス中で熱処理することにより、燐イオンを注入した部分を活性化し、p型半導体層であるピエゾ抵抗素子353aと拡散層配線部353bを形成する(ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成する工程)。その後、裏面側にフォトレジスト321を塗布する。
【0083】
フォトレジスト321を露光、現像することによって、固定部のパターン321aと弁体部のパターン321bを形成する(図10(d)参照)。そして、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて、フォトレジスト321をマスクとして酸化膜311bをエッチングし、開孔部312を形成する(図10(e)参照)。ウェットエッチング法ではエッチング液として希釈フッ酸、緩衝フッ酸などを用いればよい。また、界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。ドライエッチング法では、CF4などのフッ素を含むガスのプラズマなどを用いる。なお、第1の基板300の表面側の酸化膜311aは、本工程のエッチングの際、特にウェットエッチングにおいては、除去されてしまわないように、治具ないしはフォトレジストなどを用いて保護するのが好ましい。
【0084】
次に、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト321a、321bを除去する(図10(f)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト321a、321bを灰化しても良く、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0085】
酸化膜311bに形成された開孔部312を通して、アルカリ性のエッチング液を用いて支持基板303を結晶異方性エッチングする。これにより、支持基板303に凹部304が形成される(図10(g)参照)。アルカリ性のエッチング液としては、KOH、TMAH、ヒドラジンないしはEDP(エチレンジアミン+ピロカテコール)などを用いることができる。KOHをエッチング液として用いる場合は、KOHによるエッチング速度の遅いシリコン窒化膜を酸化膜311bの代わりに用いることが望ましい。この場合、シリコン窒化膜と第1の基板の間に酸化膜を形成した積層膜構造とし、シリコン窒化膜の応力を緩和することが望ましい。なお、この場合、開孔部312を形成するためのシリコン窒化膜のエッチングには、CF4などのフッ素を含むガスを用いたドライエッチング法を利用すればよい。
【0086】
次に、表面側にフォトレジスト322を塗布し、露光、現像することによって、酸化膜311a上にピエゾ抵抗353a、拡散層配線部353bに電圧を供給するための開孔パターン322aを形成する(図10(h)参照)。そして、ウェットエッチング法、ないしはドライエッチング法を用いて酸化膜311aをエッチングし、開孔部313を形成する(図11(a)参照)。ウェットエッチング法では希釈フッ酸、緩衝フッ酸などをエッチング液として用いればよい。また、界面活性剤を含んだエッチング液を用いても良い。ドライエッチング法では、CF4などのフッ素を含むガスなどを用いる。なお、この際、支持基板303に形成された凹部304の底部に露出している埋め込み酸化膜302も同時にエッチングされ開孔部305が形成される。
【0087】
次に、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによってフォトレジスト322を除去する(図11(b)参照)。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト322を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。以上の工程で、第1の基板300には、支持基板303に弁306、薄膜層301にはダイアフラム部307、ダイアフラム部307上には酸化膜311c、およびピエゾ抵抗353aが形成される。
【0088】
次に、第2の基板331としてガラス基板、例えばナトリウムなどの可動イオンを含みシリコン基板と陽極接合が可能な硼珪酸ガラス基板、シリコン基板と直接接合が可能な無アルカリガラス基板などを用意する。第2の基板331の裏面(第1の基板と接合される面)側にCr膜などのエッチングマスク膜332をスパッタリング法、蒸着法などを用いて形成する(図11(c)参照)。
【0089】
フォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いてエッチングマスク膜332に開孔部333を形成する(図11(d)参照)。エッチング技術としては、ウェットエッチング技術、ドライエッチング技術などを用いることができる。
【0090】
次に、エッチングマスク膜332をマスクとして、第2の基板331をフッ酸などのガラスをエッチングするエッチング液でウェットエッチングし、裏面側に溝部334を形成する(図11(e)参照)。なお、ドライエッチング技術を用いて溝部334を形成しても良い。エッチングマスク膜332のフォトレジスト膜は、加熱した濃硫酸、濃硫酸と過酸化水素水の混合液(ピラニア)などの薬液で処理することによって除去する。なお、酸素プラズマ処理などを用いてフォトレジスト膜を灰化しても良く、また、灰化処理後に前記薬液で処理しても良い。
【0091】
次に、Cr膜などで形成したエッチングマスク膜332をウェットエッチング技術などを用いて除去する(図11(f)参照)。そして、第2の基板の表面(第1の基板と陽極接合により接合される面の反対側の面)側にドライフィルムレジスト膜336を貼り付け、露光、現像することにより弁を駆動するための圧力を導入するための開孔パターン337a、ピエゾ抵抗353aと拡散層配線部353bに電圧を印加するための電極340bを取り出すための開孔パターン337bを形成する(図11(g)参照)。
【0092】
次に、例えば、ブラスト加工法等を用いて第2の基板331に弁を駆動するための圧力を導入するための貫通穴338a、電極340b用の貫通穴338bを形成する(図11(h)参照)。この後、ドライフィルムレジスト膜336を除去する(図12(a)参照)。
【0093】
第1の基板300と第2の基板331を陽極接合法、直接接合法などを用いて接合する。接合後、第2の基板331の表面(第1の基板と接合される面の反対側の面)側にアルミなどの金属膜339を形成する(図12(b)参照)。金属膜339の形成は、スパッタ法、電子ビーム蒸着法などの真空中で成膜する方法を利用する。
【0094】
金属膜が形成された第1の基板300と第2の基板331を大気中に取り出すと、第2の基板331に開孔した溝部334と第1の基板300のダイアフラム部307で囲まれる空隙が真空で、これらの基板の外部は大気圧になっているため、第1の基板300に形成されたダイアフラム部307が圧力差によって変形し、弁306が第2の基板331に引きつけられる。
【0095】
次に、第3の基板として、硼珪酸ガラス基板、無アルカリガラス基板などを用意する。この第3の基板341にドライフィルムレジスト膜342を貼り付け、露光、現像することによって、流体の流入口、流出口となる開孔部のパターン343を形成する(図12(c)参照)。そして、このドライフィルムレジスト膜342をマスクとして、ブラスト技術等を利用して、第3の基板341を厚さ方向に貫通し、流体の流入口、流出口となる貫通穴344を形成する(図12(d)参照)。その後、ドライフィルムレジスト膜342を除去する(図12(e)参照)。
【0096】
前工程で接合されて一体化している第1の基板300と第2の基板331に、第3の基板341を直接接合法、陽極接合法などを用いて接合する(図12(f)参照)。この時、第1の基板に形成した弁306は第2の基板331に引きつけられているため、第2の基板331に形成した溝部334の深さを適切に設定することによって、第3の基板341と弁306を十分離すことができる。従って、直接接合の際に弁306が第3の基板341と密着していないため、これらが接合されてしまうことはない。
【0097】
また、陽極接合法を用いた場合も、弁306を第3の基板341から十分に離しておくことで、第1の基板300と第3の基板341に印加される電圧によって発生する静電気力によって弁306が第3の基板に引きつけられないようにできるので、陽極接合されることはない。
【0098】
次に、第2の基板331に形成した金属膜339をフォトリソグラフィ技術(フォトレジスト塗布、露光、現像)とエッチング技術を用いて電極340bとなる部分を残してエッチングする(図12(g)参照)。なお、エッチング方法としては、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などを用いることができる。
【0099】
また、弁を駆動するための圧力を導入するための貫通穴338aから金属膜339を除去すると貫通穴338aから大気が流入するため、第2の基板331に開孔した溝部334と第1の基板300のダイアフラム部307で囲まれる空隙84は大気圧となる。するとダイアフラム部307を変形させていた圧力差が無くなるため、ダイアフラム部307は元の形に戻り、弁306は第3の基板341に接触し、流体の流入口、流出口344を閉塞する。
以上のような工程を経て、図8に示す第三の実施形態のマイクロバルブ3を製造することができる。
【0100】
上述したマイクロバルブの製造方法において、第1の基板としてはSOI基板を用いる例を示したが、単結晶シリコン基板を用いることもできる。また、第1の基板の支持基板の結晶異方性エッチングの代わりにドライエッチング法を用いることもできる。
【0101】
第2の基板、もしくは第3の基板のエッチングにおいて、これらの基板をエッチングする前に、エッチングマスク膜のパターン形成に利用したフォトレジスト膜を除去するとしたが、エッチングマスク膜上のフォトレジスト膜を残したまま第2の基板、ないしは第3の基板をエッチングしてもよい。この場合、フォトレジスト膜は基板のエッチング後、除去する。エッチングマスクが2層構造になるため、エッチングマスクのエッチング耐性が向上し、エッチングマスクのピンホール等に起因する欠陥の発生を抑制することができる。
【0102】
また、一般的な半導体デバイスの製造方法と同様に、複数のマイクロバルブを同時に1組の基板上に形成し、最後にダイシング等の手段を用いて切断することにより、マイクロバルブを一括して大量生産することもできる。
【0103】
マイクロバルブの駆動手段として、気体(真空、気体圧力)、静電気力を例に挙げた、ダイアフラム上に圧電素子からなるユニモルフ構造を設ける、磁気を利用する等、各種の駆動力を用いることもできる。これらの駆動手段を用いた場合も、本発明のように、ダイアフラム部に形成した可動電極と基板等に形成した固定電極間の静電容量の変化や、ダイアフラム部に形成したピエゾ抵抗の変化を用いてマイクロバルブの開閉状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のマイクロバルブの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のマイクロバルブの開閉検出方法を示す説明図である。
【図3】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図6】本発明のマイクロバルブの別な一例を示す断面図である。
【図7】本発明のマイクロバルブの開閉検出方法を示す説明図である。
【図8】本発明のマイクロバルブの別な一例を示す平面図、断面図である。
【図9】本発明のマイクロバルブの開閉検出方法を示す説明図である。
【図10】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図11】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図12】本発明のマイクロバルブの製造方法の一例を示す断面図である。
【図13】本発明のマイクロバルブの別な一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 マイクロバルブ
10 第1の基板
12 ダイアフラム
13 弁(弁体部)
19 ダイアフラム部
20 第2の基板
26 開閉検出手段
30 第3の基板
32 流入口
33 流出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブであって、
前記ダイアフラム部の変形を検出する開閉検出手段を備えたことを特徴とするマイクロバルブ。
【請求項2】
前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部の他方の面側に形成した第1の電極と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に形成した第2の電極とからなることを特徴とする請求項1マイクロバルブ。
【請求項3】
前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部に形成されたピエゾ抵抗素子からなることを特徴とする請求項1記載のマイクロバルブ。
【請求項4】
前記ピエゾ抵抗素子は複数形成され、前記ダイアフラム部の変形時に、応力の印加される方向が互いに異なるように配置したことを特徴とする請求項3記載のマイクロバルブ。
【請求項5】
前記溝部には、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動するための流体の開孔部がさらに形成されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のマイクロバルブ。
【請求項6】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、
前記ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成する工程と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成する工程と
を少なくとも備えたことを特徴とするマイクロバルブの製造方法。
【請求項7】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、
前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成する工程を少なくとも備えたことを特徴とするマイクロバルブの製造方法。
【請求項8】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を形成するとともに、該ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成した第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部を形成し、該溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成した第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの開閉検出方法であって、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定することにより、前記弁体部の前記流入口及び流出口に対する開閉状態を検出することを特徴とするマイクロバルブの開閉検出方法。
【請求項9】
前記溝部には流体を流出入させる開孔部が形成され、該開孔部を介して流体を流出入させることにより、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させることを特徴とする請求項8記載のマイクロバルブの開閉検出方法。
【請求項10】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させる直流電流を印加するとともに、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記直流電流の電圧値よりも低い電圧の交流電流を印加して前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定することを特徴とする請求項8記載のマイクロバルブの開閉検出方法。
【請求項11】
前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成し、前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値に応じて変化する電圧値を測定することを特徴とする請求項8記載のマイクロバルブの開閉検出方法。
【請求項1】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブであって、
前記ダイアフラム部の変形を検出する開閉検出手段を備えたことを特徴とするマイクロバルブ。
【請求項2】
前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部の他方の面側に形成した第1の電極と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に形成した第2の電極とからなることを特徴とする請求項1マイクロバルブ。
【請求項3】
前記開閉検出手段は、前記ダイアフラム部に形成されたピエゾ抵抗素子からなることを特徴とする請求項1記載のマイクロバルブ。
【請求項4】
前記ピエゾ抵抗素子は複数形成され、前記ダイアフラム部の変形時に、応力の印加される方向が互いに異なるように配置したことを特徴とする請求項3記載のマイクロバルブ。
【請求項5】
前記溝部には、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動するための流体の開孔部がさらに形成されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のマイクロバルブ。
【請求項6】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、
前記ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成する工程と、前記溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成する工程と
を少なくとも備えたことを特徴とするマイクロバルブの製造方法。
【請求項7】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を備えた第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部が形成された第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの製造方法であって、
前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成する工程を少なくとも備えたことを特徴とするマイクロバルブの製造方法。
【請求項8】
ダイアフラム部の一方の面側に弁体部及び固定部を形成するとともに、該ダイアフラム部の他方の面側に第1の電極を形成した第1の基板と、前記ダイアフラム部に相対する位置に溝部を形成し、該溝部において前記第1の電極と対面する位置に第2の電極を形成した第2の基板と、前記弁体部に相対する位置に、流体の流入口及び流出口のうち、少なくとも一方、または両方が形成された第3の基板とを備え、これら第3の基板、第1の基板及び第2の基板を重ね合わせ、前記固定部にて接合一体化してなるマイクロバルブの開閉検出方法であって、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定することにより、前記弁体部の前記流入口及び流出口に対する開閉状態を検出することを特徴とするマイクロバルブの開閉検出方法。
【請求項9】
前記溝部には流体を流出入させる開孔部が形成され、該開孔部を介して流体を流出入させることにより、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させることを特徴とする請求項8記載のマイクロバルブの開閉検出方法。
【請求項10】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記弁体部及び前記ダイアフラム部を駆動させる直流電流を印加するとともに、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、前記直流電流の電圧値よりも低い電圧の交流電流を印加して前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量を測定することを特徴とする請求項8記載のマイクロバルブの開閉検出方法。
【請求項11】
前記ダイアフラム部にピエゾ抵抗素子を形成し、前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値に応じて変化する電圧値を測定することを特徴とする請求項8記載のマイクロバルブの開閉検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−14131(P2010−14131A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171849(P2008−171849)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【出願人】(598163064)学校法人千葉工業大学 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【出願人】(598163064)学校法人千葉工業大学 (101)
【Fターム(参考)】
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