説明

マニピュレータ、マニピュレータシステム、マニピュレータ用画像表示装置及びマニピュレーションシステム

【課題】細胞等の微小微小対象物に対しキャピラリによるインジェクション操作を行う際に、かかる操作のための動作を確実に精度よく繰り返して行うことが可能なマニピュレータ及びマニピュレータシステムを提供する。
【解決手段】このマニピュレータは、ナノポジショナの構造を有し、キャピラリの微動動作を行うことで微小対象物に対するインジェクションが可能であって、キャピラリの動作を制御する制御部43と、制御部に対しキャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部47,49と、を備え、操作部が、その指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部47a,47bを有し、ボタン操作部を押すことで、キャピラリによるインジェクション操作の少なくとも一部の動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞等の微小な対象物を操作するマニピュレータ、マニピュレータシステム、マニピュレータ用画像表示装置及びマニピュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジ分野において顕微鏡観察下で卵細胞に核や精子を注入するなどのように細胞等の微小な対象物に操作を行うマニピュレータが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。特許文献1に開示のマイクロマニピュレータ1000は、図7に示すように、ホルダブロック1300と、移動テーブル1400と、圧電素子1500と、移動ステージ1600と、ステッピングモータ1700と、を有する。ピペット1100がピペットホルダ1200に装着され、ピペット1100の先端に卵子等の細胞に核や精子を注入するガラス製のインジェクションキャピラリ1110が接続されている。
【0003】
ホルダブロック1300は移動テーブル1400に取り付けられ、移動テーブル1400は、移動ステージ1600に設けられたガイドレール1900に沿って直線移動可能である。移動ステージ1600にはステッピングモータ1700が取り付けられ、ステッピングモータ1700の駆動力が図示しないネジ機構等を介して移動テーブル1400へ伝達される。これにより、移動テーブル1400は、ガイドレール1900に沿って直線移動されてホルダブロック1300を移動させ、ホルダブロック1300及びピペットホルダ1200を介して、ピペット1100,キャピラリ1110を所望位置まで直線移動させる。圧電素子1500は、電圧の印加でひずみを生じるピエゾ素子からなり、ホルダブロック1300に直接取り付けられている。圧電素子1500にパルス電圧を加えることでホルダブロック1300が振動することにより、ピペットホルダ1200、ピペット1100を介してインジェクションキャピラリ1110が微小振動する。
【0004】
マイクロマニピュレータ1000によるインジェクションキャピラリ1110の動作について図8を参照して説明する。インジェクションキャピラリ1110を移動テーブル1400により方向AAに移動させ、圧電素子1500によりインジェクションキャピラリ1110を微小振動させる。これにより、図8のように、細胞3000の細胞質3100を覆う細胞膜3200及び細胞膜3200の周囲で細胞3000を保護する透明帯3300に穿孔3400が形成される。次に、インジェクションキャピラリ1110を穿孔3400を通過させて移動テーブル1400により細胞3000内に進入させ、インジェクションキャピラリ1110から細胞3000内へ核または精子を注入する。注入後、移動テーブル1400を方向AAと反対の方向A’に移動させることで、インジェクションキャピラリ1110を細胞3000から抜く。なお、上記動作の際に、ホールディングキャピラリ2100により細胞3000が保持される。
【0005】
上述のインジェクションキャピラリ1110による穿孔動作は圧電素子1500を駆動することで行い、インジェクションキャピラリ1110を細胞3000から抜く動作はマニピュレータ1000を駆動して行う。
【0006】
また、上述のような細胞等の微小な対象物に微細な操作を行うマニピュレータを使用する際には、顕微鏡画像を集録し、パソコン(PC)等のディスプレイ上に表示し、ディスプレイ上の顕微鏡画像を観察しながら操作を行っている。または、作業者が顕微鏡の接眼レンズから対象試料を観察しながら操作を行っている。
【0007】
また、特許文献2は、顕微鏡下で硝子電極等のマイクロツールを操作者がダイヤルで油圧等の液圧により微動的に遠隔操作できるようにした液圧遠隔操作型マイクロマニピュレータ装置を開示する。また、特許文献3は、細胞操作用途のマニピュレータションシステムであって、作業者が顕微鏡接眼レンズを見ながらジョイスティックを操作するものを開示する。
【特許文献1】特開2004−325836号公報
【特許文献2】特許3341151号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2004/015055A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、インジェクションキャピラリを卵子等の細胞から抜く動作は、人的操作であり、す早くインジェクション方法とは逆方向へ行う必要があるが、このような速い動作は操作者の技量に依存するため、インジェクションキャピラリを細胞から抜く動作に人為的な誤差が生じ易い問題があった。また、インジェクションキャピラリによる穿孔・インジェクションの各動作にも同様の問題があった。
【0009】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、細胞等の微小対象物に対しキャピラリによるインジェクション操作を行う際に、かかる操作のための動作を確実に精度よく繰り返して行うことが可能なマニピュレータ及びマニピュレータシステムを提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、上述のPCディスプレイ上に表示される顕微鏡画像の表示倍率や顕微鏡倍率を変更するとき、ディスプレイ上の表示設定を変更するか、または、顕微鏡の対物レンズの倍率を変えなければならない。このため、倍率変更の必要が生じる度に、倍率変更のための操作が必要となり、マニピュレータによる迅速な操作処理の支障となってしまう。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、顕微鏡画像の表示倍率の変更の必要性がなくマニピュレータによる迅速な操作処理が可能なマニピュレータシステム及びマニピュレータ用画像表示装置を提供することを第2の目的とする。
【0012】
また、特許文献2のように、液圧や空圧により駆動されるアクチュエータを有するマニピュレータを操作する場合、マニピュレータと操作するインターフェイスとがホースで接続されて圧力を伝達するが、圧力を伝達するホースが長くなると動作に不具合が生じる可能性があるため遠隔操作が困難であった。また、距離的に遠く離れた場合は遠隔操作は不可能となる。また、クリーンベンチ内にマニピュレータを設置する必要がある場合、マニピュレータを遠隔操作できないため、操作者の上肢をクリーンベンチ内に入れて操作しなければならず、操作者に対する負担が大きい。また、従来の多くのマニピュレータは、顕微鏡設置場所にジョイスティック等を設置し、接眼レンズを操作者がのぞきながら操作するが、このような操作では、ジョイスティックの操作を目視しないまま行うので、使用するには熟練した技術が必要となり、また、ジョイステック操作時の顕微鏡へ伝わる振動も操作する上で問題となる。
【0013】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、電動操作可能なマニピュレータシステムを使用して遠隔操作が可能なマニピュレーションシステムを提供することを第3の目的とする。また、操作者が操作し易い姿勢・位置で自由に操作可能なマニピュレータシステムを提供することを第4の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記第1の目的を達成するために、本実施形態によるマニピュレータは、ナノポジショナの構造を有し、キャピラリの微動動作を行うことで微小対象物に対するインジェクションが可能なマニピュレータであって、前記キャピラリの動作を制御する制御部と、前記制御部に対し前記キャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部と、を備え、前記操作部が、前記指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部を有し、前記ボタン操作部を押すことで、前記キャピラリによるインジェクション操作の少なくとも一部の動作が行われることを特徴とする。
【0015】
このマニピュレータによれば、キャピラリの動作を指示する操作部にボタン操作部を設け、キャピラリによるインジェクション操作の少なくとも一部の動作がボタン操作部を押すことで行われるので、細胞や卵子等の微小対象物に対するインジェクションのための動作を、人為的な誤差の発生が抑えられて、確実に精度よく繰り返して行うことができる。
【0016】
上記マニピュレータにおいて、前記キャピラリによるインジェクション操作には、前記微小対象物に対する穿孔動作、前記微小対象物内へのインジェクション動作及び前記微小対象物から前記キャピラリを抜く動作が含まれる。例えば、ボタン操作部を押すことで微小対象物からキャピラリを抜く動作が行われるようにすることで、キャピラリを抜く動作において人為的な誤差が抑えられて確実に精度よく繰り返して行うことができる。
【0017】
また、前記ボタン操作部を少なくとも2つ備え、前記微小対象物に対する穿孔動作及び前記微小対象物内へのインジェクション動作と、前記微小対象物から前記キャピラリを抜く動作と、が異なる前記ボタン操作部を別々に押すことで行われるように構成することが好ましい。なお、少なくとも2つボタン操作部は並んで配置することで操作性が向上する。
【0018】
上記第1の目的を達成するために、別の実施形態によるマニピュレータは、ナノポジショナの構造を有し、キャピラリの微動動作を行うことで微小対象物に対するインジェクションが可能なマニピュレータであって、前記キャピラリの動作を制御する制御部と、前記制御部に対し前記キャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部と、を備え、前記操作部が、前記指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部を有し、前記ボタン操作部を押すことで、前記キャピラリによる前記微小対象物に対する穿孔動作、前記微小対象物内へのインジェクション動作及び前記微小対象物から前記キャピラリを抜く動作が自動的に連続して行われることを特徴とする。
【0019】
このマニピュレータによれば、キャピラリの動作を指示する操作部にボタン操作部を設け、キャピラリによるインジェクション操作の一連の動作がボタン操作部を押すことで自動的に連続して行われるので、細胞や卵子等の微小対象物に対するインジェクションのための動作を、人為的な誤差の発生が抑えられて、確実に精度よく繰り返して行うことができる。
【0020】
上記各マニピュレータにおいて、前記ボタン操作部は前記操作部の近傍に配置されていることが好ましい。操作部を操作しながらボタン操作部を簡単に押すことができ、操作性が向上する。
【0021】
また、前記キャピラリを粗動駆動する粗動部と、前記キャピラリを微動駆動する微動部と、を備え、前記操作部の操作に基づいて前記制御部が前記キャピラリの粗動と微動を切り換えるように構成できる。
【0022】
なお、上述の操作部はポインティングデバイスから構成することができ、このポインティングデバイスの操作によりキャピラリの動作を指示することができる。
【0023】
さらに別の実施形態によるマニピュレータシステムは、上述のマニピュレータと、前記微小対象物を保持するキャピラリの動作を行う別のマニピュレータと、を備える。
【0024】
このマニピュレータシステムによれば、卵子や細胞等の微小対象物を別のキャピラリで保持しながらインジェクション操作を確実に行うことができ、このときのインジェクション操作による動作がボタン操作部を押すことで行われるので、微小対象物に対するインジェクションのための動作を、人為的な誤差の発生が抑えられて、確実に精度よく繰り返して行うことができる。
【0025】
なお、上記マニピュレータシステムは、さらに、前記各キャピラリの先端と前記微小対象物とを観察可能な顕微鏡と、前記顕微鏡からの画像信号に基づいて顕微鏡画像を表示するCRTや液晶パネル等からなる表示部(ディスプレイ)と、を備え、前記表示部に上述のボタン操作部を表示させて、前記表示部の画面上でマウス等のポインティングデバイスを操作してボタン操作部を押すように構成することができる。
【0026】
上記第2の目的を達成するために、本実施形態によるマニピュレータシステムは、微小な対象物を操作するマニピュレータと、前記操作される微小な対象物の拡大像を観察する顕微鏡と、前記顕微鏡による拡大像を撮像する撮像部と、前記撮像部で得た前記対象物の顕微鏡画像を表示する表示部を有する画像表示装置と、を備え、前記表示部の画面を分割し、各分割された画面に前記対象物の顕微鏡画像を表示することを特徴とする。
【0027】
このマニピュレータシステムによれば、分割された画面に微小な対象物の顕微鏡画像を表示するので、少なくとも2画面に同一対象物の顕微鏡画像を表示でき、例えば、表示倍率を変えて表示することが可能となる。このため、顕微鏡画像の表示倍率の変更の必要性がなくマニピュレータによる迅速な操作処理が可能となる。
【0028】
上記マニピュレータシステムにおいて前記表示部に分割して表示される各顕微鏡画像は表示倍率が異なるようにできる。これにより、低倍率による顕微鏡画像で顕微鏡下の細胞等の微小な対象物の状態を把握しながら高倍率による顕微鏡画像で細胞等に対する微細な操作を行うことができる。
【0029】
また、前記各顕微鏡画像は同一の前記撮像部で撮像したものであり、1つの撮像部で各顕微鏡画像を集録する。
【0030】
また、前記表示倍率の異なる各顕微鏡画像は前記画像表示装置における画像処理により得ることができる。
【0031】
また、マニピュレータ用画像表示装置は、上述のマニピュレータシステムに使用されるものである。これにより、分割された画面に微小な対象物の顕微鏡画像を表示するので、少なくとも2画面に同一対象物の顕微鏡画像を表示でき、例えば、表示倍率を変えて表示することが可能となる。このため、顕微鏡画像の表示倍率の変更の必要性がなくマニピュレータによる迅速な操作処理が可能となる。
【0032】
上記第3の目的を達成するために、本実施形態によるマニピュレーションシステムは、電動駆動可能なアクチュエータにより微動動作を行うことで微小対象物に対する操作が可能な一対のマニピュレータを備えるマニピュレータシステムと、前記マニピュレータシステムから離れて設置された情報端末装置と、がネットワークを介して接続可能であり、前記情報端末装置からの情報入力に基づいて前記マニピュレータシステムが遠隔操作されることを特徴とする。
【0033】
このマニピュレーションシステムによれば、ネットワークを介して接続した情報端末装置からの情報入力に基づいてアクチュエータを電動駆動することでマニピュレータにより微小対象物に対する操作を行うことが可能となるので、情報端末装置により離れた位置でマニピュレータを遠隔操作することができる。
【0034】
上記マニピュレーションシステムにおいて前記マニピュレータシステムは、前記微小対象物を撮像し顕微鏡画像を得るとともに電動焦点合わせアクチュエータを有する顕微鏡と、前記微小対象物を電動アクチュエータにより移動可能な試料ステージと、前記マニピュレータの一方に取り付けられて前記微小対象物に対するインジェクションが可能なように電動で圧力調整可能なインジェクタと、を備え、前記情報端末装置は、前記情報入力のための情報入力手段と、前記顕微鏡画像を表示可能な表示手段と、を備え、前記マニピュレータシステムからネットワークを介して得た顕微鏡画像を前記表示部に表示するとともに前記情報入力手段からの情報入力に基づいて前記各アクチュエータ及び前記インジェクタを遠隔操作することができる。なお、一対のマニピュレータの他方に微小対象物を陰圧で保持するキャピラリが取り付けられる場合には、陰圧が電動で調整可能に構成され、そのキャピラリの陰圧を遠隔操作で調整可能である。
【0035】
上記第4の目的を達成するために、本実施形態によるマニピュレータシステムは、電動駆動可能なアクチュエータにより微動動作を行うことで微小対象物に対する操作が可能な一対のマニピュレータと、前記マニピュレータを制御する制御手段と、前記制御手段を介して前記マニピュレータを操作する操作手段と、を備え、 前記操作手段が前記マニピュレータをワイヤレスで操作するように構成されていることを特徴とする。
【0036】
このマニピュレータシステムによれば、マニピュレータを操作手段によりワイヤレスで操作できるので、机上及び空中の双方の任意の位置で操作が可能であり、操作者が操作し易い姿勢・位置で自由に操作することができる。
【0037】
上記マニピュレータシステムにおいて前記微小対象物を撮像し顕微鏡画像を得るとともに電動焦点合わせアクチュエータを有する顕微鏡と、前記微小対象物を電動アクチュエータにより移動可能な試料ステージと、前記マニピュレータの一方に取り付けられて前記微小対象物に対するインジェクションが可能なように電動で圧力調整可能なインジェクタと、前記顕微鏡画像を表示可能な表示手段と、を備え、前記操作手段のワイヤレス操作に基づいて前記各アクチュエータ及び前記インジェクタを操作することができる。これにより、表示手段上に表示された顕微鏡画像を見ながら、操作者が操作し易い姿勢でマニピュレータを操作することができ、操作者への負担を軽減できる。また、顕微鏡の近くで操作する必要がないため、操作者が操作する際に顕微鏡へ伝わる振動を軽減でき、振動に起因する顕微鏡への悪影響を抑えることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明のマニピュレータ及びマニピュレータシステムによれば、細胞等の微小対象物に対しキャピラリによるインジェクション操作を行う際に、かかる操作のためのキャピラリの動作を確実に精度よく繰り返して行うことが可能となる。
【0039】
本発明のマニピュレータシステム及びマニピュレータ用画像表示装置によれば、顕微鏡画像の表示倍率の変更の必要性がなくマニピュレータによる迅速な操作処理が可能となる。
【0040】
本発明のマニピュレーションシステムによれば、電動操作可能なマニピュレータシステムを使用して遠隔操作が可能となる。また、操作者が操作し易い姿勢・位置で自由に操作可能なマニピュレータシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0042】
〈第1の実施形態〉
図1は第1の実施形態によるマニピュレータシステムの概略的構成を示す図である。
【0043】
図1において、マニピュレータシステム10は、顕微鏡観察下で細胞等の微小対象物に人工操作を実施するためのシステムとして、顕微鏡ユニット12と、ホールディング用マニピュレータ14と、インジェクション用マニピュレータ16とを備え、顕微鏡ユニット12の左右にマニピュレータ14,16が配置されている。
【0044】
顕微鏡ユニット12は、カメラ18、顕微鏡20、ベース22を備え、ベース22の上方に顕微鏡20が配置され、顕微鏡20にはカメラ18が連結されている。ベース22上には細胞等の微小対象物が載置可能であり、ベース22上の細胞(図示せず)に顕微鏡20から光が照射される。ベース22上の細胞で反射した光が顕微鏡20に入射すると、細胞に関する光学像は、顕微鏡20で拡大された後、カメラ18で撮像され、カメラ18の撮像による画像を表示部45に表示し、細胞を観察できる。
【0045】
ホールディング用マニピュレータ14は、直交3軸構成のマニピュレータとして、ホールディングピペット24、XY軸テーブル26、Z軸テーブル28、XY軸テーブル26を駆動する駆動装置30、Z軸テーブル28を駆動する駆動装置32を備えている。ホールディングピペット24は、Z軸テーブル28に連結され、Z軸テーブル28はXY軸テーブル26上に上下動自在に配置されている。XY軸テーブル26は、駆動装置30の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル28は、駆動装置32の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。
【0046】
Z軸テーブル28に連結されたホールディングピペット24は、その先端にホールディングキャピラリ25が装着されており、XY軸テーブル26とZ軸テーブル28の移動に従って三次元空間を移動領域として移動し、ホールディングキャピラリ25によりベース22上の細胞等を保持するように構成されている。
【0047】
インジェクション用マニピュレータ16は、直交3軸構成のマニピュレータとして、インジェクションピペット34、XY軸テーブル36、Z軸テーブル38、XY軸テーブル36を駆動する駆動装置40、Z軸テーブル38を駆動する駆動装置42を備え、インジェクションピペット34は、Z軸テーブル38に連結され、Z軸テーブル38はXY軸テーブル36上に上下動自在に配置され、駆動装置40、42はコントローラ43に接続されている。
【0048】
なお、図1では、マニピュレータ14,16は下方からX軸Y軸Z軸の順で駆動する構成であるが、この構成順序(配置方法)に限定されるものではなく、他の順序で構成してもよく、例えば、ピペット24,34をX軸やY軸のテーブルに連結する構成であってもよい。
【0049】
XY軸テーブル36は、駆動装置40の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル38は、駆動装置42の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。Z軸テーブル38に連結されたインジェクションピペット34は、その先端にインジェクションキャピラリ35が装着され、インジェクションキャピラリ35は、針状になっており、ベース22上の細胞等に挿入される。
【0050】
XY軸テーブル36とZ軸テーブル38は、駆動装置40、42の駆動により、ベース22上の細胞等を含む三次元空間を移動領域として移動し、インジェクションピペット34を、例えば、インジェクションキャピラリ35がベース22上の細胞に挿入される挿入位置まで粗動駆動する粗動機構(三次元軸移動テーブル)として構成されている。
【0051】
また、これらテーブル36,38は、移動テーブルとしての機能の他に、ナノポジショナとしての機能を備え、インジェクションピペット34を往復動自在に支持するととともに、インジェクションピペット34をその長手方向(軸方向)に沿って微動駆動するように構成されている。
【0052】
具体的には、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38には、ナノポジショナとして、図2に示す微動機構44が付加(内蔵)されている。図2は、図1のXY軸テーブル36,Z軸テーブル38に付加される微動機構の例を示す断面図である。
【0053】
図2の微動機構44は、圧電アクチュエータの本体を構成するハウジング48を備え、略円筒状に形成されたハウジング48内には、ねじ軸50が挿通されているとともに、円筒状の圧電素子54、円筒状の間座56がねじ軸50の外周側に収納されており、軸受58、60が内輪間座62を間にしてねじ軸50にロックナット66により固定されて収納されている。
【0054】
軸受58、60は、それぞれ内輪58a、60aと、外輪58b、60bと、内輪58a、60aと外輪58b、60b間に挿入されたボール58c、60cを備え、各内輪58a、60aがねじ軸50の外周面に内輪間座62を介して嵌合され、各外輪58b、60bがハウジング48の内周面に嵌合され、ねじ軸50を回転可能に支持する。軸受58は、ハウジング48の内周面に嵌合された間座56との当接により、圧電素子を介して蓋64を締め付けることによって予圧が付与される。ハウジング48の一端側には圧電素子に電圧を印加するための信号線を通すための孔48a、48bが形成されている。予圧調整は間座56の長さを調整することによって押圧力を調整させ、軸受58、60へ適切な予圧力を与える。これにより、軸受58、60に所定の予圧が付与され、軸受58、60の外輪間に軸方向間距離としての間隙63が形成される。
【0055】
圧電素子54は、孔48a、48b内にそれぞれ挿入されたリード線70、72を介して図1のコントローラ43に接続されており、コントローラ43からの電圧に応じてインジェクションピペット34の軸長手方向に沿って伸縮する圧電アクチュエータの一要素として構成されている。
【0056】
圧電素子54は、コントローラ43からインジェクション用電圧が印加されると、インジェクションキャピラリ35に対しベース22上の細胞に挿入するための穿孔動作を行うようになっており、また、コントローラ43から微動用電圧が印加されると、ねじ軸50をその長手方向(軸方向)に沿って微動させて、インジェクションキャピラリ35の位置を微調整するようになっている。
【0057】
なお、圧電素子54に対するインジェクション用電圧を設定するに際しては、操作対象の細胞の性質等に合わせて、電圧の振幅や電圧の波形を調整できるようになっている。また、図2では円筒型の圧電素子を使用しているが、これに限定されず、例えば角筒型であってもよい。
【0058】
コントローラ43は、インジェクション用マニピュレータ16を駆動するときには、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38を粗動駆動して、インジェクションピペット34の先端に装着されたインジェクションキャピラリ35をベース22上の細胞に近づけて位置決めした後、微動機構44を用いてインジェクションキャピラリ35を微動駆動するようになっている。
【0059】
図1のコントローラ43は、例えば、演算手段としてのCPU(中央演算処理装置)及び記憶手段としてのRAM、ROMなどのハードウエア資源を備えたマイクロコンピュータで構成されており、所定のプログラムを基に各種の演算を行い、演算結果に従って駆動装置40、42に駆動指令を出力するとともに、カメラ18で撮像した細胞の画像や演算結果に関する情報などをCRTや液晶パネルからなる表示部(パソコンディスプレイ)45の画面上に表示させる制御手段として構成されている。
【0060】
図3は図1のコントローラ43の制御系要部を示すブロック図である。図4は図1,図3のジョイスティックの具体例を示す斜視図である。
【0061】
図1のマニピュレータ16の駆動装置40、42には、粗動用モータとして、例えばステッピングモータ46(図3)が内蔵されており、ステッピングモータ46の回転がリニアガイドやボールねじ等により直線運動に変換されるように構成されている。図3のように、コントローラ43のCPU44は、粗動時にステッピングモータ46に対してドライバを介して(図示省略)駆動を指令し、また、微動時に圧電素子54に対してアンプ(図示省略)を介して駆動を指令する。
【0062】
図1のマニピュレータ16における粗動と微動の駆動を切り換えるために、図1、図3のように、コントローラ43に接続されたジョイスティック47を用いる。
【0063】
図3のコントローラ43のCPU44は、ジョイスティック47から操作方向に関する信号が入力すると、ジョイスティック47の操作方向を判別し、例えば、図4のようにジョイスティック47が中立位置でインジェクション用マニピュレータ16が停止した状態から、本体部(ハンドル)47eが操作者により掴まれて右側Rに操作されたとき、ステッピングモータ46を駆動しインジェクションキャピラリ35を粗動駆動する。
【0064】
また、図4のように、ジョイスティック47は、その上部に並んで配置された第1及び第2押しボタンスイッチ47a,47bを備えている。図3において、第1押しボタンスイッチ47aが押されてオンになると、圧電素子54を駆動し、インジェクションキャピラリ35が細胞に接近した位置で微小量の移動を行うことで細胞に対する穿孔動作を行うようになっている。また、第2押しボタンスイッチ47aが押されてオンになると、ステッピングモータ46を駆動し、インジェクションキャピラリ35を細胞内の位置から抜くように後退方向C(図5)に駆動するようになっている。
【0065】
次に、図1〜図4のマニピュレータシステム10の動作について図1〜図5を参照して説明する。図5は、図1の顕微鏡ユニット12による顕微鏡視野を模式的に示し、卵子に対するインジェクションのための各ステップ(a)〜(d)を説明するための図である。
【0066】
図5(a)のように、ホールディング用マニピュレータ14を駆動し、ホールディングキャピラリ25によりベース22上の卵子Dを保持した状態で、図3,図4のジョイスティック47を右側Rに操作し、ステッピングモータ46を駆動し、インジェクションキャピラリ35の先端35aを卵子Dに接近させる。
【0067】
次に、図5(b)のように、ジョイスティック47を左側Lに操作し、コントローラ43でステッピングモータ46を駆動し、インジェクションキャピラリ35の先端35aを卵子Dに当接させる。
【0068】
次に、図5(c)のように、図3,図4のジョイスティック47の上部の第1押しボタンスイッチ47aを押すと、コントローラ43からインジェクション用電圧を印加して圧電素子54を駆動し、初期設定されたインジェクション用電圧の信号波形に基づいて圧電素子54によりインジェクションキャピラリ35が先端35aで穿孔動作を行い、インジェクションキャピラリ35の先端35aが前進方向Bに卵子Dの透明帯を通して卵子D内へと挿入され、インジェクションキャピラリ35から精子の入った溶液を注入する。
【0069】
なお、圧電素子54による穿孔動作は、圧電素子54の駆動時間が卵子の個体差により異なるため、押しボタンスイッチ47aを押している間に継続して圧電素子54を駆動し、押しボタンスイッチ47aを離すと圧電素子54がオフとなる構成とすることが好ましい。
【0070】
次に、上述のインジェクション動作の後、図5(d)のように、図3,図4のジョイスティック47の上部の第2押しボタンスイッチ47bを押すと、ステッピングモータ46を駆動し、インジェクションピペット34の軸長手方向に沿って駆動して、後退方向Cにインジェクションキャピラリ35を駆動することで細胞D内から抜く。
【0071】
上述のように、図1〜図5の本実施形態によれば、圧電素子54による穿孔動作・インジェクション開始からインジェクションキャピラリ35を細胞(卵子D)から抜くまでの操作を押しボタンスイッチ47a、47bの押す動作だけで実行することができ、ジョイスティックのレバー操作の必要がなくなり、操作がが容易になる。また、上記操作をボタン操作とすることで、初期設定した動作を安定して実行させることができ、このため、人為的な誤差が少なくなるとともに、各操作を安定して繰り返し行うことが可能となる。
【0072】
また、第1及び第2押しボタンスイッチ47a、47bがジョイスティック47の上部に並んでいるので、押しボタンスイッチ47a、47bを続けて押すことが簡単にでき、穿孔動作・インジェクション動作及びインジェクションキャピラリを抜く動作を連続的に正確かつ容易に行うことができる。
【0073】
次に、上述のジョイスティック47による操作の代わりに、図1のマウス49を用いて表示部45の画面上で操作するように構成してもよい。すなわち、図6の表示部45の画面45a上に、例えば、図5のような顕微鏡視野の画像を表示するとともに、図1のマウス49でクリックすることでスイッチと同様の動作をする押しボタン41a〜41eを表示する。これらの押しボタン41a〜41eをマウス49で操作することで、図5(a)〜(d)と同様の操作を行うことができる。
【0074】
すなわち、画面45a上に表示された粗動ボタン41aをマウス49でクリックすることで、ステッピングモータ46を駆動し、図5(a)のように、インジェクションキャピラリ35の先端35aを卵子Dに接近させる。ここで、停止ボタン41bをクリックし停止してもよい。
【0075】
次に、粗動ボタン41aをクリックしてステッピングモータ46を駆動し、図5(b)のように、インジェクションキャピラリ35を移動させて先端35aを卵子Dに当接させる。
【0076】
次に、注入ボタン41dをクリックすると、インジェクション用電圧を印加して圧電素子54を駆動し、図5(c)のように、インジェクションキャピラリ35が先端35aで穿孔動作を行い、注入を行う。
【0077】
次に、上述のインジェクション動作の後、後退ボタン41eをクリックすると、ステッピングモータ46を駆動し、図5(d)のように、インジェクションキャピラリ35を後退方向Cに駆動することで細胞D内から抜く。
【0078】
なお、上述の図3〜図5及び図6では、穿孔動作・インジェクション動作と、インジェクションキャピラリを抜く動作と、を2つの押しボタンにより別々に行うようにしたが、1つの押しボタンを押すことで、穿孔動作・インジェクション動作からインジェクションキャピラリを抜く動作まで自動的に連続して行うようにしてもよい。
【0079】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図4では押しボタンスイッチ47a、47bを例にして説明したが、他の押しボタンスイッチに同様の機能を備えさることが可能であり、操作者が操作し易い他の押しボタンスイッチに同様の機能を割り振ることができる。
【0080】
また、図1のマウス49として押しボタンスイッチを有するマウスを用いて、かかるマウス49に付属した押しボタンスイッチを押すことでジョイスティック47の第1及び第2押しボタンスイッチ47a、47bと同様の操作を行わせるように構成してもよい。この場合、粗動と微動の切り換えは、例えば、図6と同様の押しボタン41a,41b,41cにより行うようにしてもよい。
【0081】
また、ジョイスティックやマウス以外のポインティングデバイスを用いてもよく、例えば、ペンタブレット等を使用してもよく、押しボタンが不足するときは、画面上にクリック可能な押しボタンを設置することが好ましい。
【0082】
〈第2の実施形態〉
【0083】
第2の実施形態によるマニピュレータシステム10は図1と同様の構成である。すなわち、マニピュレータシステム10は、図1のように、顕微鏡観察下で細胞等の微小対象物に微細な人工操作を実施するためのシステムとして、顕微鏡ユニット12と、ホールディング用マニピュレータ14と、インジェクション用マニピュレータ16とを備え、顕微鏡ユニット12の左右にマニピュレータ14,16が配置されている。顕微鏡ユニット12は、カメラ18、顕微鏡20、ベース22を備え、ベース22の上方に顕微鏡20が配置され、顕微鏡20にはCCDやCMOS等の撮像素子を用いたカメラ18が連結されている。ベース22上には細胞等の微小対象物が載置可能であり、ベース22上の細胞(図示せず)に顕微鏡20から光が照射される。ベース22上の細胞で反射した光が顕微鏡20に入射すると、細胞に関する光学像は、顕微鏡20で拡大された後、カメラ18で撮像され、カメラ18の撮像による画像を表示部45に表示し、細胞を観察できる。
【0084】
なお、マニピュレータシステム10の各部は、図1と同様であるので、その説明は省略する。また、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38には、ナノポジショナとして、微動機構44が付加(内蔵)されているが、この微動機構44は図2に示すものと同様であるので、その説明は省略する。
【0085】
図9は第2の実施形態による図1のコントローラ43の制御系要部を示すブロック図である。図4は図9の表示部の分割された画面の例を示す図である。
【0086】
図1のマニピュレータ16の駆動装置40、42には、粗動用モータとして、例えばステッピングモータ46(図3)が内蔵されており、ステッピングモータ46の回転がリニアガイドやボールねじ等により直線運動に変換されるように構成されている。図9のように、コントローラ43のCPU44は、粗動時にステッピングモータ46に対してドライバ(図示省略)を介して駆動を指令し、また、微動時に圧電素子54に対してアンプ(図示省略)を介して駆動を指令する。
【0087】
図9の表示部45と、画像処理部80と、表示部45と画像処理部80とを制御するCPU44とにより、画像表示装置が構成される。すなわち、図9のCPU44は表示部45の画面表示形態を制御し、図10のように表示部45の画面45aを例えば画面81,82の二画面に分割する。図1の顕微鏡20に設けられたカメラ18で撮像された顕微鏡画像が、各分割画面81,82に細胞等の微小対象物の画像としてそれぞれ表示される。
【0088】
カメラ18からの画像は、図9の画像処理部80で各種の画像処理が施されるが、例えば、微小対象物の顕微鏡画像を所望の倍率に縮小・拡大処理することができる。すなわち、画像処理部80は、入力画像について所定のアルゴリズムでソフト的に縮小処理または拡大処理を行い、縮小または拡大された出力画像とするようになっている。
【0089】
図10のように、画像処理部80で拡大処理された例えば表示倍率10倍(×10)の顕微鏡画像が画面81に表示され、表示倍率40倍(×40)の同一の顕微鏡画像が画面82に表示される。
【0090】
図11に図9のジョイスティックの具体例を示す斜視図を示す。図1,図9のようにコントローラ43に接続されたジョイスティック47を用いて、例えば、図10のようにジョイスティック47が中立位置でインジェクション用マニピュレータ16が停止した状態から、本体部47eが操作者により掴まれて右側Rまたは左側Lに操作されたとき、ステッピングモータ46を駆動しインジェクションキャピラリ35を粗動駆動する。
【0091】
また、図11のように、ジョイスティック47は、その上部に並んで配置された第1及び第2押しボタンスイッチ47a,47bを備え、第1押しボタンスイッチ47aが押されてオンになると、圧電素子54を駆動し、インジェクションキャピラリ35が細胞に接近した位置で微小量の移動を行うことで細胞に対する穿孔動作を行う。また、第2押しボタンスイッチ47bが押されてオンになると、ステッピングモータ46を駆動し、インジェクションキャピラリ35を細胞内の位置から抜くように後退方向C(図6)に駆動する。
【0092】
なお、図11のようにジョイスティック47の上部に設置されたハットスイッチ47dを用いて、第2押しボタンスイッチ47bの上記ボタン操作を代用するように構成してもよい。また、図11の押しボタンスイッチ47aの隣の第3押しボタンスイッチ47c等の他の押しボタンスイッチに同様の機能を備えさることが可能であり、操作者が操作し易い他の押しボタンスイッチに同様の機能を割り振るようにしてもよい。
【0093】
次に、本実施形態のマニピュレータシステム10の動作について図9〜図11、さらに上述の図5を参照して説明する。
【0094】
図5(a)のように、ホールディング用マニピュレータ14を駆動し、ホールディングキャピラリ25によりベース22上の卵子Dを保持した状態で、図9,図11のジョイスティック47を右側Rに操作し、ステッピングモータ46を駆動し、インジェクションキャピラリ35の先端35aを卵子Dに接近させる。
【0095】
次に、図5(b)のように、ジョイスティック47を左側Lに操作し、コントローラ43でステッピングモータ46を駆動し、インジェクションキャピラリ35の先端35aを卵子Dに当接させる。
【0096】
次に、図5(c)のように、図11のジョイスティック47の上部の第1押しボタンスイッチ47aを押すと、コントローラ43からインジェクション用電圧を印加して圧電素子54を駆動し、初期設定されたインジェクション用電圧の信号波形に基づいて圧電素子54によりインジェクションキャピラリ35が先端35aで穿孔動作を行い、インジェクションキャピラリ35の先端35aが前進方向Bに卵子Dの透明帯を通して卵子D内へと挿入され、インジェクションキャピラリ35から精子の入った溶液を注入する。
【0097】
なお、圧電素子54による穿孔動作は、圧電素子54の駆動時間が卵子の個体差により異なるため、押しボタンスイッチ47aを押している間に継続して圧電素子54を駆動し、押しボタンスイッチ47aを離すと圧電素子54がオフとなる構成とすることが好ましい。
【0098】
次に、上述のインジェクション動作の後、図5(d)のように、図11のジョイスティック47の上部の第2押しボタンスイッチ47bを押すと、ステッピングモータ46を駆動し、インジェクションピペット34の軸長手方向に沿って駆動して、後退方向Cにインジェクションキャピラリ35を駆動することで細胞D内から抜く。
【0099】
上述のように、本実施形態によれば、圧電素子54による穿孔動作・インジェクション開始からインジェクションキャピラリ35を細胞(卵子D)から抜くまでの操作を押しボタンスイッチ47a、47bの押す動作だけで実行することができ、ジョイスティックのレバー操作の必要がなくなり、操作がが容易になる。また、上記操作をボタン操作とすることで、初期設定した動作を安定して実行させることができ、このため、人為的な誤差が少なくなるとともに、各操作を安定して繰り返し行うことが可能となる。
【0100】
また、第1及び第2押しボタンスイッチ47a、47bがジョイスティック47の上部に並んでいるので、押しボタンスイッチ47a、47bを続けて押すことが簡単にでき、穿孔動作・インジェクション動作及びインジェクションキャピラリを抜く動作を連続的に正確かつ容易に行うことができる。
【0101】
上述の図5(a)〜(d)の各操作の際に、図10のように、表示部45の2分割された画面81,82に、同一の顕微鏡画像について低倍率の画像と高倍率の画像を表示しながら、低倍率画像で細胞Dの状態を把握しながら高倍率画像で細胞Dに対する微細な各操作を実行できる。例えば、図5(b)の操作の際に、図10のように2分割された画面81,82に低倍率画像と高倍率画像を表示し、ジョイスティック47を操作して、画面81の低倍率画像で細胞Dの全体を把握し、画面82の高倍率画像をみながらインジェクションキャピラリ35の先端35aを卵子Dに当接させることができる。
【0102】
以上のように、本実施形態のマニピュレータシステム10によれば、マニピュレータ14,16で細胞等の微小対象物を操作する際、顕微鏡画像の集録を1つのカメラ18で行い、例えば、PC(パソコン)等に集録することができる。集録した顕微鏡画像を表示部45の2画面81,82に分けて異なる表示倍率で表示でき、例えば、画面81では表示倍率が10倍であり、画面82では表示倍率が40倍である。これにより、常に低倍率画像で顕微鏡下の試料状態を把握しながら高倍率画像での微細な操作が可能になる。また、顕微鏡の対物レンズを交換する手間が省略できるとともに、高倍率の対物レンズが不要となる。さらに、顕微鏡で電動レボルバ等の高価な製品を使用しなくてもよく、マニピュレータシステム全体のコスト減に寄与できる。
【0103】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図4の画面81,82における表示倍率は、変更可能であり、例えば、一方をほぼ等倍とし、他方をデジタルズームによる所望の倍率にできる。また、表示部45の分割画面は、2画面に限定されず、さらに、3画面、4画面、・・・のように増やしてもよい。
【0104】
〈第3の実施形態〉
図12は第5の実施形態によるマニピュレータシステムの概略的構成を示す斜視図である。図13は図12のインジェクション用電動3軸マニピュレータの概略的構成を示す斜視図である。
【0105】
図12は、図1のマニピュレータシステム10をより具体化したマニピュレータシステム500を示している。すなわち、図12のように、本実施形態によるマニピュレータシステム500は、ホールディング用の電動3軸(XYZ)マニピュレータ140と、インジェクション用の電動3軸(XYZ)マニピュレータ160と、倒立顕微鏡120と、電動の試料ステージ110と、を備え、各電動3軸マニピュレータ140,160は倒立顕微鏡120と一体になるように取り付けられている。なお、電動3軸マニピュレータ140,160は、試料ステージ110と一体構造となるように取り付けてもよく、これにより外部からの振動等の影響が受け難くなる。
【0106】
インジェクション用の電動3軸マニピュレータ160には、電動で圧力調整可能なインジェクタ340を設置軸方向に往復運動するようにモータ駆動及び圧電素子駆動が可能なナット回転型アクチュエータ170が取り付けられている。ホールディング用の電動3軸マニピュレータ140にも同様のナット回転型アクチュエータ191が取り付けられている。
【0107】
倒立顕微鏡120は電動焦点合わせアクチュエータ、対物レンズを切り替えるレボルバ部及び観察対象物への光照射のための光源を有する。
【0108】
また、各電動3軸マニピュレータ140,160の設置時の安定性を向上するため、各電動3軸マニピュレータ140,160を重力方向に支持するための脚149,169を設置している。各脚149,169は、図12では各電動3軸マニピュレータ140,160に対しそれぞれ1箇所しか配置していないが、複数でもよい。
【0109】
図13のように、電動3軸マニピュレータ160は、3つの1軸アクチュエータ161,162,163を3軸(XYZ)方向に組み合わせて構成されている。各1軸アクチュエータ161〜163は、ステッピングモータとカップリングとBS(ボールねじ)と案内要素とスライダとから構成され、オーバーストロークを防止するために駆動軸方向の両端にリミットスイッチが設置されている。また、各1軸アクチュエータ161〜163のステッピングモータの励磁を切ることにより、各1軸アクチュエータ161〜163の各手動ノブ161a,162a,163aによりマニピュレータ160を各軸方向に手動操作することも可能な構成となっている。電動3軸マニピュレータ140も同様に構成されている。
【0110】
1軸アクチュエータ163をZ軸方向の駆動用とし、そのZ軸スライダ163b上にはθステージ164が配置され、さらにθステージ164上にはナット回転型アクチュエータ170が配置されている。θステージ164は、ナット回転型アクチュエータ170の設置角度を調整するためのものであり、手動タイプであるが、電動タイプに構成してもよい。θステージ164の設置角度は、インジェクタ340に装着されるガラス製のインジェクションキャピラリ341の折れ曲がり角度またはインジェクション角度と一致するよう設定される。
【0111】
次に、図12,図13のナット回転型アクチュエータ170について図14,図15を参照して説明する。図14は図13のナット回転型アクチュエータ170をθステージ164の平面と平行な方向に切断してみた断面図である。図15は図13,図14のナット回転型アクチュエータ170の斜視図である。
【0112】
図14,図15に示すように、ナット回転型アクチュエータ170は、圧電アクチュエータとしての本体を構成するハウジング480を備えており、ほぼ筒状に形成されたハウジング480内には、ピペット状のインジェクタ340を駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸520と、ねじ軸520を囲む中空状の回転軸540が挿通されている。ハウジング480はその底部がベース560に固定されており、微動機構、ナノポジショナとして構成されている。
【0113】
ねじ軸520の先端側には、治具580を介してピペット状のインジェクタ340の根元側が連結されており、ねじ軸520の中程には、ねじ軸520外周のねじ部とねじ結合されるねじ要素としてのボールねじナット(BSナット)600が装着され、治具580とねじ軸520との間にはスライダ620が連結されている。スライダ620はベース560とほぼ直交する方向に配置され、切り欠き640を間にしてリニアガイド660に連結されている。リニアガイド660はベース560底部側に配置され、ベアリング680を介して、ねじ軸520の軸方向に沿って移動自在にベース560に連結されている。
【0114】
すなわち、リニアガイド660は、ねじ軸520の軸方向の移動に合わせて、ねじ軸520の先端側を支持したスライダ620を、ベース560に沿って往復動させるようになっている。この際、ねじ軸520のうちボールねじナット600よりもインジェクタ340側の部位が、スライダ620を介してリニアガイド660でスライド自在に支持されるので、ねじ軸520の直線運動をインジェクタ340へ伝達することができる。
【0115】
ボールねじナット600は、回転軸540の軸方向一端側(先端側)の段部540aに固定されているとともに、ねじ軸520外周のねじ部とねじ結合され、ねじ軸520がその軸方向に沿って往復動(直線運動)するのを自在に支持するようになっている。すなわち、ボールねじナット600は、回転軸540の回転運動をねじ軸520の直線運動に変換するための要素として構成されている。
【0116】
回転軸540の軸方向他端側は、中空モータ700内の回転部に連結している。中空モータ700のハウジング740は、その底部側がベース560に弾性体としてのゴムワッシャ760を介してボルト780が固定されている。中空モータ700が駆動されると回転軸540が回転し、回転軸540の回転運動がボールねじナット600を介してねじ軸520に伝達され、ねじ軸520がその軸方向に沿って直線運動するようになっている。
【0117】
一方、回転軸540の段部540aに隣接して、軸受800、820が内輪間座840を間にして収納されている。軸受800、820は、それぞれ内輪800a、820aと、外輪800b、820bと、内輪と外輪間に挿入されたボール800c、820cを備え、各内輪800a、820aが回転軸540の外周面に嵌合され、各外輪800b、820bがハウジング480の内周面に嵌合され、回転軸540を回転自在に支持するようになっている。軸受800、820は、内輪間座840を間にし、回転軸540にロックナット860により固定されている。軸受800は、ハウジング480内の段部540aと円環状のスペーサ920と当接することにより、回転軸540の軸方向への移動が規制されるようになっている。軸受820の外輪820bとハウジング480の蓋880との間に、円環状の圧電素子920と円環状のスペーサ900が圧入されている。
【0118】
また、各軸受800、820、圧電素子920は、スペーサ900の長さを調節し、蓋880を閉めることにより、予圧が付与される。具体的には、スペーサ900の長さを調整し、蓋880を閉めると、その位置に応じた締結力が軸受820と軸受800の外輪820b、800bに、軸方向に沿った押圧力として予圧が付与されるとともに、同時に圧電素子920にも予圧が付与される。これにより、軸受800、820および圧電素子920に所定の予圧が付与され、軸受800、820の外輪間に軸方向間の距離としての間隙940が形成される。
【0119】
圧電素子920は、リード線(図示せず)を介してコントローラとしてのパソコン(PC)430(図17参照)に接続されており、パソコン430からの電圧に応じて回転軸540の長手方向(軸方向)に沿って伸縮する圧電アクチュエータの一要素として構成されている。すなわち、圧電素子920は、パソコン430からの印加電圧に応答して、回転軸540の軸方向に沿って伸縮し、回転軸540をその軸方向に沿って微動させるようになっている。回転軸540が軸方向に沿って微動すると、この微動がねじ軸520を介してインジェクタ340に伝達され、インジェクタ340の位置が微調整されることになる。
【0120】
上述のように、ナット回転型アクチュエータ170は、中空モータ700によりボールねじナット600の回転運動をねじ軸520の直線運動に変換しねじ軸520を直動するが、ねじ軸520取り付けられたインジェクタ340は、中空モータ700の駆動時にリニアガイド660により回転せず、回り止めの機能を有している。このため、中空モータ700の駆動によりインジェクタ340が直線往復運動できる。
【0121】
図14,図15のナット回転型アクチュエータ170は、中空モータ700を駆動することで、インジェクタ340を駆動し顕微鏡視野中央部ヘセットし、また、顕微鏡視野中央部から退避する機能を有し、圧電素子920を駆動することで、インジェクタ340の先端に取り付けたガラスキャピラリ341(図13)による細胞(卵)に対する穿孔動作をアシストすることができる。
【0122】
次に、図12の試料ステージ110について図16を参照して説明する。図16は、図12の試料ステージ110を示す斜視図である。図16のように、試料ステージ110は、2つの1軸アクチュエータ111,112が2軸方向に配置され、試料台113を2軸方向に移動させるように構成され、図12の倒立顕微鏡120に取り付けられている。試料ステージ110を駆動する各アクチュエータ111,112の各モータの軸端には手動ノブ111a,112aがそれぞれ取り付けられており、各モータの励磁を切ることにより手動操作も可能となっている。
【0123】
次に、図12のマニピュレータシステム500を制御するコントローラとしてのパソコンについて図17を参照して説明する。図17は、図12〜図16のマニピュレータシステム500についてのパソコンによる制御系を説明するための要部ブロック図である。
【0124】
図17のパソコン(パーソナルコンピュータ)430は、各種制御を行うCPU(中央演算処理装置)431と、記憶装置に格納されておりマニピュレータシステム500の使用時に読み出されるプログラム432と、液晶パネルやCRT等からなる表示部433と、ハードディスクや光ディスク等の記録媒体に顕微鏡画像等を保存可能な記憶部430aと、インターネット等のネットワークを介して外部との通信のインターフェースである通信部430bと、を備える。また、操作者により操作されるジョイスティック470及びマウス470aは、パソコン430にネットワークを介して接続可能な別のパソコンへの入力手段である。パソコン430は、CPU431によりプログラム432の動作及びネットワークを介して外部から通信部430bで受信したジョイスティック470やマウス470aの各操作による操作信号に基づいてマニピュレータシステム500の各部分を制御する。
【0125】
すなわち、パソコン430は、信号発生器438を駆動し、その信号によりピエゾアンプ434を介してナット回転型アクチュエータ170のピエゾ素子からなる圧電素子920を駆動する。また、パソコン430は、端子台ボックス435を介してナット回転型アクチュエータ170と電動3軸マニピュレータ140,160と試料ステージ110と顕微鏡120のハンドルを電動で回転させる焦点合わせアクチュエータ436とにそれぞれ電気的に接続されており、ナット回転型アクチュエータ170の中空モータ700、電動3軸マニピュレータ160の各1軸アクチュエータ161〜163、試料ステージ110の各1軸アクチュエータ111,112及び焦点合わせアクチュエータ436がそれぞれ駆動されるようになっている。また、顕微鏡120に関し、対物レンズのレボルバ部や光源の光量調整も電動駆動するようにしてもよい。
【0126】
また、マニピュレータ160には、インジェクタ340の圧力調整を行うシリンジモータが含まれ、そのモータが同様に駆動制御されることでシリンジの圧力を調整することができる。また、顕微鏡120には撮像素子から構成されたカメラ437が配置されており、カメラ437により撮像された顕微鏡画像がパソコン430の表示部433に表示される。
【0127】
また、ホールディング用のマニピュレータ140も同様に駆動されるが、マニピュレータ140にはホールディングキャピラリの圧力(陰圧)調整を行うシリンジモータが含まれ、そのモータが同様に駆動制御されることでシリンジの圧力(陰圧)を調整することができる。
【0128】
次に、図17のジョイスティックについて図18を参照して説明する。図18は、図17のジョイスティックの例を示す斜視図である。
【0129】
上述のマニピュレータシステム500は、少なくとも2つのジョイスティック470を使用して操作される。ジョイスティック470は、一例として図18に示すようなハンドル479と複数のボタン471〜477が配置されたものを使用する。
【0130】
図18のジョイスティック470のハンドル479と複数のボタン471〜477によりマニピュレータシステム500において次の表1のような操作を実行できるようになっている。ハンドル479は、右方向R、左方向Lに傾斜させる(倒す)ことでマニュピレータ140,160をX軸方向、Y軸方向に駆動でき、回転させる(ひねる)ことでZ軸方向に駆動できる。なお、表1において、4方向のハットスイッチ477の「⇔」は、左右方向の2つのスイッチであり、同じく「↓↑」は、上下方向の2つのスイッチである。また、陰圧+、圧力+は各シリンジモータによる圧力絶対値の増加、陰圧−、圧力−は圧力絶対値の減少である。微動駆動Z+、−は、Z軸方向に対する移動量の増加、減少である。
【0131】
【表1】

【0132】
なお、表1のようなハンドル479と複数のボタン471〜477の各操作に対するレイアウトは、操作者が使い易いように適宜変更が可能である。また、細胞操作で圧電素子920を駆動する際、複数のパラメータで駆動する必要が生じる可能性があるが、その場合は、同様のボタンを追加等することにより対応できる。
【0133】
また、使用するジョイスティック470は、ハンドル479を倒す(傾斜させる)度合いに応じて速度調整し、離すとマニピュレータ140,160の駆動を停止するタイプでもよいし(速度指令型)、ハンドル479を倒した分だけマニピュレータ140,160を駆動するタイプでもよい(位置制御型)。また、上述のような操作に用いるインターフェイスは、ジョイスティック以外に、例えば、図17のマウス470aとして複数ボタンが存在する2次元または3次元マウスを使用してもよい。
【0134】
次に、パソコン430の表示部433に表示されるコントローラ画面について図19を参照して説明する。図19は図17のパソコン430の表示部433に表示されるコントローラ画面の一例を示す図である。
【0135】
パソコン430の表示部433のコントローラ画面上には、上述の図10と同様にカメラ437による顕微鏡画像を少なくとも2画面で表示するようになっており、例えば、図19のように、顕微鏡画像を第1表示画面433aに標準倍率で、第2表示画面433bに拡大倍率でそれぞれ表示できるようになっている。図19の例では、マニピュレータシステム500で卵Dが操作され、ガラス製のホールディングキャピラリ342に陰圧で保持された卵Dに対しインジェクタ340の先端のインジェクションキャピラリ341が穿孔動作した状態を第1表示画面433aに標準倍率で表示し、第2表示画面433bに拡大倍率で表示している。これにより、図10と同様に低倍率の顕微鏡画像と高倍率の顕微鏡画像とを参照するとき、顕微鏡画像の表示倍率の変更の必要性がなくマニピュレータシステム500による迅速な操作処理が可能となるとともに、常に標準倍率の画像で顕微鏡下の細胞(卵)等の試料の状態を把握しながら、拡大倍率の画像で微細な操作を行うことができる。
【0136】
表示部433のコントローラ画面には、図19に示すように、略中央左右に第1,第2表示画面433a,433bが配置されるとともに、その下側に動作状態表示パネル433cが配置され、その上側には、画像操作パネル433d,試料ステージ操作パネル433e及びマニピュレータ操作パネル433fが配置されており、マウス470aによりそれぞれ操作が可能になっている。
【0137】
動作状態表示パネル433cには、マニピュレータ140,160の実際のXYZ位置座標等が表示部433gに表示され、また、ジョイスティック470のボタン操作時に、どのボタンを押しているかを認識可能な表示部433hが配置されており、画像をみながら操作状態を把握することができ、さらに、マニピュレータ140,160の電動・手動の切り替え部433i及び休止ボタン433jが配置されている。
【0138】
また、画像操作パネル433dには、第1,第2表示画面433a,433bにおける画像の倍率メニュー433k及び画像の表示位置メニュー433mが配置されており、操作者が画像の倍率や表示位置を調整可能となっている。また、顕微鏡画像はコントローラ画面上でのマウス470aによる操作で記憶部430aに保存でき、また、コントローラ画面上のボタンを押すことで、動画保存も可能である。
【0139】
また、試料ステージ操作パネル433eには、試料ステージ110の駆動パラメータを調整するメニュー433nに加えて、XY駆動、原点復帰等操作が可能なボタンが配置されている。試料ステージ110は表示画面433a,433b上の顕微鏡画像を見ながらボタン操作により駆動できる。例えば、ボタンを押している間だけ+X方向に動かすことができる。
【0140】
また、マニピュレータ操作パネル433fには、マニピュレータ140,160の駆動パラメータを調整するメニュー433pがあり、操作者が好みのパラメータに設定して使用することができる。また、マニピュレータ操作パネル433fには、図13〜図15のナット回転型アクチュエータ170を駆動するボタン433qが配置されている。このボタン433qを押すことで、予め設定したストロークでナット回転型アクチュエータ170が駆動し、インジェクタ340を顕微鏡中心部ヘセットし、また、退避させることができる。
【0141】
なお、ナット回転型アクチュエータ170及び試料ステージ110は、上述のように図19のコントローラ画面上のボタン操作により行うことができるが、ジョイスティック470等で行うようにしてもよい。
【0142】
特許文献3のような従来のマニピュレータシステムによれば、顕微鏡設置場所にジョイスティック等を設置し、接眼レンズを操作者がのぞきながら操作するが、このような操作では、ジョイスティックの操作を目視しないまま行わざるを得ないので、使用するには熟練した技術が必要となるのに対し、上述のマニピュレータシステム500によれば、表示部433のコントローラ画面をみながらジョイスティック470の操作も目視できるとともに、コントローラ画面にもジョイスティック470の操作状態が表示されるので、マニピュレータシステム500を簡単かつ確実に使用することができる。
【0143】
次に、本実施形態による遠隔操作可能なマニピュレーションシステムについて図20を参照して説明する。図20は、第3の実施形態によるネットワークを介して遠隔操作可能なマニピュレーションシステムを説明するための概念図である。
【0144】
図20に示すように、本実施形態によるマニピュレーションシステム901は、ネットワーク通信により上述のマニピュレータシステム500を遠隔操作可能に構成したものである。
【0145】
マニピュレーションシステム901では、マニピュレータシステム500及びコントローラとしてのパソコンPC1を端子台ボックス435の各コネクタに接続する。PC1は、図17のパソコン430と同じであってよいが、図20ではマニピュレータシステム500の制御のためのプログラム(1)がインストールされている。
【0146】
さらに、マニピュレーションシステム901では、図20のように、遠隔操作のためのパソコンPC2を別途用意し、PC1とともにネットワークNに接続可能にする。ネットワークNとしては、インターネットであってよいが、専用回線や特定領域に設けられたネットワーク等であってもよい。
【0147】
遠隔操作のためのパソコンPC2は、インターネット等のネットワークNを介して外部との通信のインターフェースである通信部PC21と、液晶パネルやCRT等からなり顕微鏡画像や制御プログラムとしてのコントロール画面をWebページで表示可能な表示部PC22と、各種制御を行う中央演算処理装置(CPU)PC23と、を備え、操作者により操作されるインターフェイスPC24が指令入力手段として接続されている。
【0148】
パソコンPC2は、ネットワークNを介してPC1と接続し、図20の通信AによりPC1から送信された画像情報及びコントローラ情報を受信し、表示部PC22に顕微鏡画像や制御プログラム画面を表示するとともに、通信BによりPC1に対しインターフェイスPC24から入力されたインターフェイス情報を送信し、PC1は受信したインターフェイス情報に基づいてマニピュレータシステム500を操作する。
【0149】
インターフェイスPC24は、例えば、ジョイスティック470(図17,図18)やマウス470a(図17)であってよく、ジョイスティック470の場合は、図18のハンドル479と複数のボタン471〜477を上述の表1と同様の操作に割り当てることができる。
【0150】
図20のマニピュレーションシステム901における遠隔操作について説明する。まず、図12のマニピュレータシステム500に、マニピュレータ操作に必要なインジェクションキャピラリ341(図13,図19)、ホールディングキャピラリ342(図19)やサンプルの入ったシャーレ等をセッティングすることで、マニピュレーションを実行できる状態とする。
【0151】
次に、PC1及びPC2を起動しネットワークNを介して接続するとともに、図20のPC1でマニピュレータシステム500を駆動するためのプログラム(1)を起動する。起動したプログラム(1)自体を遠隔操作するため、PC1からネットワークNを介してPC2にコントローラ情報が送信されると、PC2の表示部PC22にWebページによる制御プログラム画面が表示される。また、カメラ437で撮像した顕微鏡画像情報がPC1からネットワークNを介してPC2に送信されて表示部PC22に表示される。このような構成でプログラム(1)を実行すると、PC2に接続しているインターフェイスPC24からの指令入力信号によりマニピュレータシステム500を制御でき、かつ、PC1上で起動しているプログラム(1)はPC2上に開いたWebページ内に表示されて制御可能となっているため、マニピュレータシステム500の全ての操作をPC2上で行うことができる。このようにして、PC2によりマニピュレータシステム500を遠隔操作することができる。なお、PC2の表示部PC22の制御プログラム画面(コントローラ画面)は図19のような画面表示の構成であってよいが、図19の例に限定されるものではない。
【0152】
図21により図20の変形例を説明する。図21のように、PC2にはインターフェイスPC24からの信号でマニピュレータシステム500を制御するためのプログラム(2)がインストールされており、プログラム(2)を起動し、PC2でインターフェイスPC24から指令入力信号を入力すると、プログラム(2)でインターフェイス情報をPC1に送信し、PC1のプログラム(1)がネットワークN経由でプログラム(2)から送信されたインターフェイス情報を読み取ることで、マニピュレータシステム500の全ての操作をPC2上で行うことができる。
【0153】
次に、本実施形態による遠隔操作可能なマニピュレーションシステムの別の例について図22を参照して説明する。図22は、第3の実施形態によるネットワークを介して遠隔操作可能なマニピュレーションシステムの別の例を説明するための概念図である。
【0154】
図22に示すマニピュレーションシステム902は、図20と比べて、画像情報通信のために別のプログラムにより通信するものである。すなわち、上述の図20では、プログラム(1)に顕微鏡からの顕微鏡画像を表示するプログラムが内蔵された構成であるため、ネットワーク通信の方法等によっては、プログラム(1)によるコントロール画面(制御プログラム画面)をWebページで表示しコントロール画面上で制御し画像情報を転送する際に、通信するデータ容量が大きくなってしまう。そこで、図22のように、画像情報通信用にPC1,PC2に別途ポートを設置し、画像情報をPC1にインストールしたプログラム(3−1)及びPC2にインストールしたプログラム(3−2)によりネットワーク通信Fにより通信する。また、PC2からPC1へのインターフェイス情報及びPC1からPC2へのコントローラ情報はネットワーク通信Gにより図20と同様に通信する。
【0155】
図22のマニピュレーションシステム902によれば、PC2でマニピュレータシステム500を遠隔操作する際に、画像情報の通信が円滑になり、かつ、マニピュレータ操作時の通信におけるタイムラグを低減することができる。
【0156】
図23により図22の変形例を説明する。図23の例は、図22においてPC2にインターフェイスPC24からの信号でマニピュレータシステム500を制御するためのプログラム(2)を図21と同様にインストールしたものである。本実施形態のその他の例として、図21のプログラム(2)内に画像情報通信のためのプログラムを挿入し使用するようにしてもよく、これによって、マニピュレータシステム500を駆動するためのWebページ上の操作に対する負荷を低減することができる。
【0157】
以上のように、図20〜図23のマニピュレーションシステム901,902によれば、マニピュレータシステム500を遠隔操作することができるので、マニピュレータシステム500をクリーンベンチ内で使用する場合に、操作者は、操作者の上肢をクリーンベンチ内に入れて操作する必要がなくなり、また、クリーンルームで作業する必要がある場合に、操作者はクリーンスーツを着てインジェクション作業する必要がなくなり、このため、操作者に対する負担を軽減できる。また、制約された環境下でマニピュレータシステム500を使用して作業する場合にも、マニピュレータシステム500を遠隔操作することで、かかる制約された環境下でもマニピュレータシステム500を使用できる。また、距離的に遠く離れた場合でもPC1,PC2がネットワークに接続可能であれば、遠隔操作が可能となる。
【0158】
また、熟練した技術者がマニピュレータシステム500の傍にいなくてもインジェクション操作することが可能になり、マニピュレータシステム500が設置されている場所に操作者がいる必要がなく、他の者がインジェクションキャピラリ341やホールディングキャピラリ342やサンプルの入ったシャーレ等の準備のみすれば、操作可能となる。
【0159】
〈第4の実施形態〉
図24は第4の実施形態によるマニピュレータシステムについての制御系を説明するための要部ブロック図である。図25は図24のマニピュレータシステムで使用可能なワイヤレスインターフェイスの例を示す平面図である。
【0160】
第4の実施形態によるマニピュレータシステムは、図12〜図16と同様の構成であるが、マニュピレータの操作手段としてワイヤレスのインターフェイスを用いたものである。すなわち、図24のように、本実施形態によるマニピュレータシステム501は、インジェクション用マニピュレータ160を主に操作するための操作信号をワイヤレスで送信する第1ワイヤレス操作部430d及びホールディング用マニピュレータ140を主に操作するための操作信号をワイヤレスで送信する第2ワイヤレス操作部430eを備える。パソコン430は、第1ワイヤレス操作部430d及び第2ワイヤレス操作部430eからの操作信号を受信する受信部430cを備え、かかる受信した操作信号に基づいてマニピュレータシステム501の各部分を制御する。各ワイヤレス操作部430d,430eは電波や赤外線により無線で操作信号を送信する。
【0161】
第1ワイヤレス操作部430d及び第2ワイヤレス操作部430eとして、例えば、図25のようなワイヤレスのポインタ及びマウスが一体となったワイヤレスインターフェイスを使用する。図25のワイヤレスインターフェイスは、マウス機能とポインタ機能とを有し、手動されるクリック部KRと複数のボタン部BTとを備え、机上で使用するときにはマウス機能を有し、空中で操作してもポインタ機能を有するようになっている。マウス機能時は光学センサで機能し、空中操作時はワイヤレスインターフェイス中のジャイロセンサ等が機能し操作可能となる。マニピュレータ140,160を使用するときは、ポインタ機能により手動で発生する操作信号をパソコン430が受信し検知し、マニピュレータ140,160を操作する。試料ステージ110を駆動する場合は、図25のワイヤレスインターフェイスを机上に置き、マウス機能を使用し操作する。その他のマニピュレータシステム501内のアクチュエータやインジェクタは複数のボタン部BUを用いて操作する。
【0162】
パソコン430は、図25のワイヤレスインターフェイスの使用状態を検知し、現状どちらのモード(机上、空中)で操作しているかを判断し、また、ポインタ機能によるポインタの位置を認識しその位置に従ってマニピュレータシステム501を駆動する。操作者はポインタを表示部43に表示された画像上に置き、任意に動かして操作する。
【0163】
なお、ポインタの小さな動きを検知し、誤動作を招く可能性があるため、操作時は、ワイヤレスインターフェイス中のボタンを押している間だけ、マニピュレータシステム501を駆動可能にして操作することが好ましい。また、図25のワイヤレスインターフェイスにおいてボタン部BUの個数を必要に応じて増やすことで、マニピュレータシステム501における各種の操作が可能となる。また、図25のワイヤレスインターフェイスは一例であり、インターフェイスの形状、種類は問わず、他の形状・種類のものを使用できる。
【0164】
第1ワイヤレス操作部430d及び第2ワイヤレス操作部430eを図25のワイヤレスインターフェイス1個で構成してもよく、この場合、図25のワイヤレスインターフェイスを空中で操作する場合はインジェクション用マニピュレータ160を駆動し、机上で操作する場合はホールディング用マニピュレータ140を駆動するように使用してもよい(逆でもよい)。
【0165】
第1ワイヤレス操作部430d及び第2ワイヤレス操作部430eを2個のワイヤレスインターフェイスから構成した場合、各ワイヤレスインターフェイスをインジェクション用、ホールディング用として使用するが、折衷で操作するようにしてもよく、この場合は空中で使用する場合はマニピュレータ駆動、机上で使用する場合は試料ステージ110等のアクチュエータを駆動するように使用してもよい(逆でもよい)。
【0166】
また、顕微鏡画像を表示部433上に映し出し、図10や図19のように、顕微鏡画像を標準倍率、拡大倍率の2種類を表示し、各画像上にポインタを当てて操作する際、各画像に対するマニピュレーションシステムの速度ゲインを設定するようにしてもよい。その結果、標準倍率の画像上にポインタを当てたときのマニピュレータの駆動よりも、拡大倍率の画像上にポインタを当てたとのマニピュレータの駆動を細かく操作できる。
【0167】
本実施形態によれば、表示部433上に映し出された顕微鏡画像を見ながら、操作者が操作し易い姿勢・位置でマニピュレータシステム501を操作することができ、操作者への負担を軽減できる。また、顕微鏡120の近くで操作する必要がないため、操作者が操作する際に顕微鏡へ伝わる振動を軽減でき、振動に起因する顕微鏡120への悪影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】第1の実施形態によるマニピュレータシステムの概略的構成を示す図である。
【図2】図1のXY軸テーブル36,Z軸テーブル38に付加される微動機構の例を示す断面図である。
【図3】図1のコントローラ43の制御系要部を示すブロック図である。
【図4】図1,図3のジョイスティックの具体例を示す斜視図である。
【図5】図1の顕微鏡ユニット12による顕微鏡視野を模式的に示し、卵子に対するインジェクションのための各ステップ(a)〜(d)を説明するための図である。
【図6】図3,図4のジョイスティックの代わりにマウスを用いた例を説明するために図1の表示部45の画面を模式的に示す図である。
【図7】従来のマニピュレータの構成を示す側面図である。
【図8】図7のマニピュレータの操作を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態による図1のコントローラ43の制御系要部を示すブロック図である。
【図10】図9の表示部の分割された画面の例を示す図である。
【図11】図9のジョイスティックの具体例を示す斜視図である。
【図12】第3の実施形態によるマニピュレータシステムの概略的構成を示す斜視図である。
【図13】図12のインジェクション用電動3軸マニピュレータの概略的構成を示す斜視図である。
【図14】図13のナット回転型アクチュエータ170をθステージ164の平面と平行な面で切断してみた断面図である。
【図15】図13,図14のナット回転型アクチュエータ170の斜視図である。
【図16】図12の試料ステージ110を示す斜視図である。
【図17】図12〜図16のマニピュレータシステム500についてのパソコンによる制御系を説明するための要部ブロック図である。
【図18】図17のジョイスティックの例を示す斜視図である。
【図19】図17のパソコン430の表示部433に表示されるコントローラ画面の一例を示す図である。
【図20】第3の実施形態によるネットワークを介して遠隔操作可能なマニピュレーションシステムを説明するための概念図である。
【図21】図20の変形例のマニピュレーションシステムを説明するための概念図である。
【図22】第3の実施形態によるネットワークを介して遠隔操作可能なマニピュレーションシステムの別の例を説明するための概念図である。
【図23】図22の変形例のマニピュレーションシステムを説明するための概念図である。
【図24】第4の実施形態によるマニピュレータシステムについての制御系を説明するための要部ブロック図である。
【図25】図24のマニピュレータシステムで使用可能なワイヤレスインターフェイスの例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0169】
10 マニピュレータシステム、12 顕微鏡ユニット、14 ホールディング用マニピュレータ、16 インジェクション用マニピュレータ、18 カメラ、20 顕微鏡、25 ホールディングキャピラリ、35 インジェクションキャピラリ、43 コントローラ、制御部、44 微動機構、45 表示部、47 ジョイスティック、120 倒立顕微鏡、顕微鏡、140 ホールディング用マニピュレータ、マニピュレータ、150 圧電素子、160 インジェクション用マニピュレータ、マニピュレータ、170 ナット回転型アクチュエータ、340 インジェクタ、341 インジェクションキャピラリ、342 ホールディングキャピラリ、430 パソコン、コントローラ、433 表示部、437 カメラ、470 ジョイスティック、500,501 マニピュレータシステム、700 中空モータ、920 圧電素子、901,902 マニピュレーションシステム、D 卵子、細胞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノポジショナの構造を有し、キャピラリの微動動作を行うことで微小対象物に対するインジェクションが可能なマニピュレータであって、
前記キャピラリの動作を制御する制御部と、
前記制御部に対し前記キャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部と、を備え、
前記操作部が、前記指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部を有し、前記ボタン操作部を押すことで、前記キャピラリによるインジェクション操作の少なくとも一部の動作が行われることを特徴とするマニピュレータ。
【請求項2】
前記キャピラリによるインジェクション操作には、前記微小対象物に対する穿孔動作、前記微小対象物内へのインジェクション動作及び前記微小対象物から前記キャピラリを抜く動作が含まれる請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記ボタン操作部を少なくとも2つ備え、前記微小対象物に対する穿孔動作及び前記微小対象物内へのインジェクション動作と、前記微小対象物から前記キャピラリを抜く動作と、が異なる前記ボタン操作部を別々に押すことで行われる請求項1または2に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
ナノポジショナの構造を有し、キャピラリの微動動作を行うことで微小対象物に対するインジェクションが可能なマニピュレータであって、
前記キャピラリの動作を制御する制御部と、
前記制御部に対し前記キャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部と、を備え、
前記操作部が、前記指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部を有し、前記ボタン操作部を押すことで、前記キャピラリによる前記微小対象物に対する穿孔動作、前記微小対象物内へのインジェクション動作及び前記微小対象物から前記キャピラリを抜く動作が自動的に連続して行われることを特徴とするマニピュレータ。
【請求項5】
前記ボタン操作部は前記操作部の近傍に配置されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項6】
前記キャピラリを粗動駆動する粗動部と、前記キャピラリを微動駆動する微動部と、を備え、
前記操作部の操作に基づいて前記制御部が前記キャピラリの粗動と微動を切り換える請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマニピュレータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマニピュレータと、
前記微小対象物を保持するキャピラリの動作を行う別のマニピュレータと、を備えるマニピュレータシステム。
【請求項8】
微小な対象物を操作するマニピュレータと、
前記操作される微小な対象物の拡大像を観察する顕微鏡と、
前記顕微鏡による拡大像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で得た前記対象物の顕微鏡画像を表示する表示部を有する画像表示装置と、を備え、
前記表示部の画面を分割し、各分割された画面に前記対象物の顕微鏡画像を表示することを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項9】
前記表示部に分割して表示される各顕微鏡画像は表示倍率が異なる請求項8に記載のマニピュレータシステム。
【請求項10】
前記各顕微鏡画像は同一の前記撮像部で撮像したものである請求項9に記載のマニピュレータシステム。
【請求項11】
前記表示倍率の異なる各顕微鏡画像は前記画像表示装置における画像処理により得られる請求項9または10に記載のマニピュレータシステム。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムに使用されるマニピュレータ用画像表示装置。
【請求項13】
電動駆動可能なアクチュエータにより微動動作を行うことで微小対象物に対する操作が可能な一対のマニピュレータを備えるマニピュレータシステムと、前記マニピュレータシステムから離れて設置された情報端末装置と、がネットワークを介して接続可能であり、前記情報端末装置からの情報入力に基づいて前記マニピュレータシステムが遠隔操作されることを特徴とするマニピュレーションシステム。
【請求項14】
前記マニピュレータシステムは、前記微小対象物を撮像し顕微鏡画像を得るとともに電動焦点合わせアクチュエータを有する顕微鏡と、前記微小対象物を電動アクチュエータにより移動可能な試料ステージと、前記マニピュレータの一方に取り付けられて前記微小対象物に対するインジェクションが可能なように電動で圧力調整可能なインジェクタと、を備え、
前記情報端末装置は、前記情報入力のための情報入力手段と、前記顕微鏡画像を表示可能な表示手段と、を備え、前記マニピュレータシステムからネットワークを介して得た顕微鏡画像を前記表示部に表示するとともに前記情報入力手段からの情報入力に基づいて前記各アクチュエータ及び前記インジェクタを遠隔操作する請求項13に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項15】
電動駆動可能なアクチュエータにより微動動作を行うことで微小対象物に対する操作が可能な一対のマニピュレータと、前記マニピュレータを制御する制御手段と、前記制御手段を介して前記マニピュレータを操作する操作手段と、を備え、 前記操作手段が前記マニピュレータをワイヤレスで操作するように構成されていることを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項16】
前記微小対象物を撮像し顕微鏡画像を得るとともに電動焦点合わせアクチュエータを有する顕微鏡と、前記微小対象物を電動アクチュエータにより移動可能な試料ステージと、前記マニピュレータの一方に取り付けられて前記微小対象物に対するインジェクションが可能なように電動で圧力調整可能なインジェクタと、前記顕微鏡画像を表示可能な表示手段と、を備え、前記操作手段のワイヤレス操作に基づいて前記各アクチュエータ及び前記インジェクタを操作する請求項15に記載のマニピュレータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−78345(P2009−78345A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127276(P2008−127276)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】