説明

ムスカリン受容体拮抗薬として有用なアミジン含有化合物

本発明は、式I:


の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、R1〜3、R、R、a、b、Q、X、X’、X”、Y、Z、およびArは、明細書において定義される通りである。これらの化合物は、ムスカリン受容体拮抗薬である。本発明はまた、そのような化合物を含む医薬組成物、そのような化合物を調製するための方法、ならびに、例えば慢性閉塞性肺疾患および喘息等の肺障害を処置するためにそのような化合物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムスカリン受容体拮抗活性または抗コリン活性を有するアミジン含有化合物に関する。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物、それらを調製するための方法、および肺障害を処置するための使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息等の肺または呼吸器障害は、世界中の何百万もの人々を苦しめており、そのような障害は病的状態および死亡の主要な原因である。
【0003】
ムスカリン受容体拮抗薬は、気管支保護効果を提供することが公知であり、したがってそのような化合物は、COPDおよび喘息等の呼吸器障害の処置に有用である。そのような障害の処置に使用される場合、ムスカリン受容体拮抗薬は、典型的には吸入により投与される。しかしながら、吸入により投与される場合であっても、大量のムスカリン受容体拮抗薬が体循環に吸収されることが多く、口内乾燥症、散瞳および心血管系副作用等の全身性副作用をもたらす。
【0004】
さらに、多くの吸入されたムスカリン受容体拮抗薬は、作用持続期間が比較的短く、1日に数回の投与を必要とする。そのような1日複数回の投薬計画は、不便であるだけでなく、必要とされる頻繁な投薬計画に従う患者のノンコンプライアンスに起因した不十分な処置の大きなリスクを生み出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、新たなムスカリン受容体拮抗薬が必要とされている。特に、高い効力を有し、吸入により投与された場合の全身性副作用が低減され、作用持続期間が長く、それにより1日1回またはさらに週1回の投薬を可能とするムスカリン受容体拮抗薬が必要とされている。さらに、受容体に対する高い親和性および長い受容体半減期を有するムスカリン受容体拮抗薬が必要とされている。そのような化合物は、口内乾燥症および便秘等の副作用を低減または排除しながらCOPDおよび喘息等の肺障害を処置するのに特に効果的であることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ムスカリン受容体拮抗活性または抗コリン活性を有する新規なアミジン含有化合物を提供する。数ある特性の中でも、本発明の化合物は、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプに対する改善された結合親和性を有する、より長い受容体半減期を有する、より広い治療域を有する、または関連化合物と比較してより大きな効力を有することが判明している。したがって、本発明の化合物は、肺障害の処置のための治療薬剤として有用および有利であることが期待される。
【0007】
本発明の一態様は、式I:
【0008】
【化1】

(式中、
は、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C3〜9シクロアルキル、およびアリールから選択され、
はアリールであり、
は、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか、またはRと二重結合を形成するか、または−CRが一緒になって、式:
【0009】
【化2】

(式中、Aは、結合、−O−、−S−、−CH−、−CH=CH−、−CHCH−、−NH−、もしくは−N(CH)−であり、Rは、H、ハロ、−OH、−C1〜8アルキル、および−C1〜8アルコキシから選択される)の基を形成し、
Qは結合であり、X’は−N−であり、XおよびX”はそれぞれ−CH−であり、Yは−N−であり、Zは結合であるか、または、
Qは結合であり、X’は−N−であり、XおよびX”はそれぞれ−CH−であり、Yは−CH−であり、Zは−NR−であるか、または、
Qは−O−であり、X’は−CH−であり、Xは結合であり、X”は−CH−であり、Yは−N−であり、Zは結合であり、
各Rは、独立して、フルオロまたは−C1〜4アルキルであり、aは、0または1から3の整数であり、
およびRは、独立して、Hまたは−C1〜4アルキルであり、
bは1から4の整数であり、
Arは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキル、−S−C1〜4アルキル、−CONR8a8b、−NH−C(O)−C1〜4アルキル、−N−ジ−C1〜4アルキル、および−N(O)Oから独立して選択される1〜5個のR基で任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、R8aおよびR8bは、独立して、Hまたは−C1〜4アルキルであり、
およびRは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−C(O)OR、−SR、−S(O)R、−S(O)、−C(O)NRおよび−NRから独立して選択される1個から5個のR基で任意選択で置換され、各Rは、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、および−C3〜6シクロアルキルから独立して選択され、各RおよびRは、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、および−C3〜6シクロアルキルから独立して選択され、
a〜dおよびR4〜8におけるアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、およびシクロアルキル基は、1個から5個のフルオロ原子で任意選択で置換され、Ra〜dにおける各シクロアルキルは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1〜4アルキル)、−S(C1〜4アルキル)、−S(O)(C1〜4アルキル)、−S(O)(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)および−N(C1〜4アルキル)から独立して選択される1個から3個の置換基で任意選択で置換され、各アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、1個から5個のフルオロ置換基で任意選択で置換され、−(CH−基は、−C1〜2アルキルおよび−OHから独立して選択される1個または2個の置換基で任意選択で置換されている)
を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0010】
式Iの化合物のうち、特に興味深い化合物は、M受容体サブタイプへの結合の阻害解離定数(K)が100nM以下であるもの、具体的にはKが50nM以下であるもの、より具体的にはKが10nM以下であるもの、さらにより具体的にはKが1.0nM以下であるものである。
【0011】
本発明の別の態様は、薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。そのような組成物は、ステロイド性抗炎症薬(例えばコルチコステロイド)、βアドレナリン受容体作動薬、ホスホジエステラーゼ−4阻害薬、およびこれらの組合せ等の他の治療薬剤を任意選択で含有し得る。したがって、本発明のさらに別の態様において、医薬組成物は、本発明の化合物、第2の活性薬剤、および薬学的に許容される担体を含む。本発明の別の態様は、本発明の化合物および第2の活性薬剤を含む、活性薬剤の組合せに関する。本発明の化合物は、追加的薬剤(複数可)と一緒に、またはそれとは別個に製剤化され得る。別個に製剤化される場合、追加的薬剤(複数可)とともに薬学的に許容される担体を含めることができる。したがって、本発明のさらに別の態様は、本発明の化合物および第1の薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物と、第2の活性薬剤および第2の薬学的に許容される担体を含む第2の医薬組成物とを含む、医薬組成物の組合せに関する。本発明はまた、そのような医薬組成物を含有するキットに関し、例えば第1および第2の医薬組成物は別個の医薬組成物である。
【0012】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体拮抗活性を有し、したがって、ムスカリン受容体を阻止することにより処置される疾患または障害に罹患した患者の処置のための治療薬剤として有用であることが期待される。したがって、本発明の一態様は、気管支拡張作用を生成する量の本発明の化合物を患者に投与するステップを含む、患者において気管支拡張作用を生成する方法に関する。本発明はまた、治療上有効な量の本発明の化合物を患者に投与するステップを含む、慢性閉塞性肺疾患または喘息等の肺障害を処置する方法に関する。本発明の別の態様は、ムスカリン受容体を遮断する量の本発明の化合物を哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物においてムスカリン受容体を遮断するための方法に関する。
【0013】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体拮抗活性を有するため、そのような化合物はまた研究ツールとしても有用である。したがって、本発明の一態様は、本発明の化合物を使用して生物学的アッセイを行うステップを含む、本発明の化合物を研究ツールとして使用する方法に関する。本発明の化合物はまた、新たな化学化合物を評価するために使用することもできる。したがって、本発明の別の態様は、(a)試験化合物を用いて生物学的アッセイを行い、第1のアッセイ値を得るステップと、(b)本発明の化合物を用いて生物学的アッセイを行い、第2のアッセイ値を得るステップとを含み、ステップ(a)はステップ(b)の前、後、またはそれと同時に行われ、また(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値を、ステップ(b)からの第2のアッセイ値と比較するステップとを含む、生物学的アッセイにおいて試験化合物を評価する方法に関する。例示的な生物学的アッセイには、哺乳動物におけるムスカリン受容体結合アッセイおよび気管支保護アッセイが含まれる。本発明のさらに別の態様は、(a)生体系または試料を本発明の化合物と接触させるステップと、(b)化合物により生体系または試料にもたらされた効果を決定するステップとを含む、ムスカリン受容体を含む生体系または試料を試験する方法に関する。
【0014】
本発明はまた、本発明の化合物を調製するために有用な方法および中間体に関する。したがって、本発明の別の態様は、(a)アミド結合形成条件下で化合物(1)および化合物(2)をカップリングし、化合物(3)を形成するステップ、またはアミド結合形成条件下で化合物(1)および化合物(4)をカップリングし、化合物(5)を形成するステップ、または化合物(1)および化合物(6)を光延カップリングもしくはエステル交換し、化合物(7)を形成するステップと、(b)化合物(3)もしくは化合物(5)もしくは化合物(7)を化合物(8)と反応させて、式Iの化合物を得るステップとを含む、本発明の化合物を調製する方法に関し、化合物(1)から(8)は、本明細書において定義される通りである。他の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法のいずれかにより調製される生成物に関する。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、医薬の製造、特に、哺乳動物における肺障害の処置またはムスカリン受容体の遮断に有用な医薬の製造のための、本発明の化合物の使用に関する。本発明のさらに別の態様は、研究ツールとしての本発明の化合物の使用に関する。本発明の別の態様および実施形態は、本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一態様において、本発明は、式I:
【0017】
【化3】

を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0018】
本明細書において使用される場合、「本発明の化合物」という用語は、式II〜Vにおいて具体化される種等の、式Iに包含されるすべての化合物を含む。さらに、本発明の化合物が塩基性基または酸性基(例えばアミノまたはカルボキシル基)を含有する場合、化合物は、遊離塩基、遊離酸、または各種塩形態で存在し得る。そのような塩形態はすべて、本発明の範囲に含まれる。したがって、本明細書における化合物への言及、例えば「本発明の化合物」または「式Iの化合物」の言及は、別段の指定がない限り、式Iの化合物だけでなくその化合物の薬学的に許容される塩も含むことが、当業者には認識される。さらに、式Iの化合物の溶媒和物も本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
本発明の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含有し得るため、複数の立体異性型で存在し得る。そのようなキラル中心が存在する場合、本発明は、別段の指定がない限り、ラセミ混合物、純粋な立体異性体(すなわち鏡像異性体またはジアステレオマー)、立体異性体の割合が高い混合物等に関する。いかなる立体化学もなく化学構造が示されている場合、すべての可能な立体異性体がそのような構造に包含されることが理解される。したがって、例えば、「式Iの化合物」という用語は、化合物のすべての可能な立体異性体を含むように意図される。同様に、本明細書において具体的な立体異性体が示されている、または挙げられている場合、別段の指定がない限り、本発明の組成物中に少量の他の立体異性体が存在し得ることが当業者に理解されるが、ただし全体としての組成物の実用性はそのような他の異性体の存在により消失しない。個々の鏡像異性体は、好適なキラル固定相もしくは支持体を使用したキラルクロマトグラフィーを含む、当技術分野において周知である多数の方法により、または、それらをジアステレオマーに化学的に変換し、クロマトグラフィーもしくは再結晶化等の従来の手段によりジアステレオマーを分離し、次いで元の鏡像異性体を再生することにより、得ることができる。さらに、該当する場合は、別段の指定がない限り、本発明の化合物のすべてのシス−トランスまたはE/Z異性体(幾何異性体)、互変異性型、およびトポイソマー型が、本発明の範囲内に含まれる。
【0020】
例えば、R5〜9シクロアルキル部分がシクロペンチルとして、Rアリール部分がフェニルとして、またRが−OHとして示された、以下の部分的な式(明確性のために任意選択の置換基なしで示されている)において、キラル中心は、記号*で指示された炭素原子に存在する。
【0021】
【化4】

別の可能なキラル中心は、以下の部分的な式において、記号**で指示された炭素原子に存在し得る。
【0022】
【化5】

本発明の一実施形態において、記号*および/または**で特定された炭素原子は、(R)配置を有する。この実施形態において、式Iの化合物は記号*および/または**で特定された炭素原子に(R)配置を有するか、または、この炭素原子(複数可)に(R)配置を有する立体異性型を多く含んでいる。別の実施形態において、記号*および/または**で特定された炭素原子は、(S)配置を有する。この実施形態において、式Iの化合物は記号*および/または**で特定された炭素原子に(S)配置を有するか、または、この炭素原子に(S)配置を有する立体異性型を多く含んでいる。化合物は、*および**の炭素原子の両方にキラル中心を有し得ることが理解される。そのような場合、4つの可能なジアステレオマーが存在し得る。いくつかの場合では、例えばムスカリン拮抗薬としての本発明の化合物の治療活性を最適化するために、記号*および/または**で特定された炭素原子が特定の(R)または(S)配置を有することが望ましくなり得る。
【0023】
本発明の化合物、ならびにその合成において使用される化合物はまた、同位体標識化化合物を含んでもよく、すなわち、1個または複数の原子が、天然に主に見られる原子量とは異なる原子量を有する原子に富んでいてもよい。式Iの化合物に組み込まれ得る同位体の例には、例えば、H、H、13C、14C、15N、18Oおよび17Oが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体拮抗活性を有することが判明している。数ある特性の中でも、本発明の化合物は、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプに対する改善された結合親和性を有し、より長い受容体半減期を有し、および関連化合物と比較してより大きな効力を有することが判明しており、肺障害の処置のための治療薬剤として有用であることが期待される。
【0025】
本発明の化合物の名を挙げるために本明細書において使用される命名は、本明細書の実施例に示される。この命名は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL社、サンリアンドロ、カリフォルニア州)を使用して得られた。
【0026】
代表的実施形態
以下の置換基および値は、本発明の様々な態様および実施形態の代表例を提供することを意図する。これらの代表値は、そのような態様および実施形態をさらに定義および例示することを意図し、他の実施形態を除外することも、本発明の範囲を制限することも意図しない。これに関して、特定の値または置換基が好ましいという表現は、具体的に指定されない限り、決して他の値または置換基を本発明から除外することを意図しない。
【0027】
は、非置換の、または1個から5個のR基で置換された、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C3〜9シクロアルキル、またはアリール基であってもよい。各Rは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−C(O)OR、−SR、−S(O)R、−S(O)、−C(O)NRおよび−NRから独立して選択され、各Rは、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、および−C3〜6シクロアルキルから独立して選択される。各RおよびR基は、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、および−C3〜6シクロアルキルから独立して選択される。一実施形態において、Rは−C3〜9シクロアルキルであり、別の実施形態において、−C3〜6シクロアルキル、すなわちシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルであり、さらに別の実施形態において、Rは、−Cシクロアルキル、すなわちシクロペンチルである。一実施形態において、Rは−C1〜6アルキル基、例えば−CHCH(CHである。別の実施形態において、Rは−C2〜6アルケニル基、例えば−CHCHCHである。一実施形態において、Rは非置換である。
【0028】
、R、R、およびRにおける各アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、およびシクロアルキル基は、1個から5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。さらに、Ra〜dにおける各シクロアルキルは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1〜4アルキル)、−S(C1〜4アルキル)、−S(O)(C1〜4アルキル)、−S(O)(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)および−N(C1〜4アルキル)から独立して選択される1個から3個の置換基で置換されていてもよく、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1個から5個のフルオロ置換基で任意選択で置換されている。
【0029】
は、非置換の、または上に定義された1個から5個のR基で置換されたアリール基であってもよい。一実施形態において、Rはフェニルである。別の実施形態において、Rは非置換である。
【0030】
は、Hもしくは−C0〜1アルキレン−OHであってもよく、または、以下のように表現され得るRとの二重結合を形成してもよい。
【0031】
【化6】

具体的な一実施形態において、Rは−C0〜1アルキレン−OH、例えば−OHである。さらに、−CRが一緒になって、式:
【0032】
【化7】

(式中、Aは、結合、−O−、−S−、−CH−、−CH=CH−、−CHCH−、−NH−、もしくは−N(CH)−であり、Rは、H、ハロ、−OH、−C1〜8アルキル、および−C1〜8アルコキシから選択される)の基を形成してもよい。Rにおけるアルキル基は、1個から5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。具体的な一実施形態において、CRが一緒になって、
【0033】
【化8】

を形成する。
この実施形態において、図示されるように、Aは−O−であり、RはHである。
【0034】
一実施形態において、Qは結合であり、X’は−N−であり、XおよびX”はそれぞれ−CH−であり、Yは−N−であり、Zは結合であり、以下のように表現され得る。
【0035】
【化9】

別の実施形態において、Qは結合であり、X’は−N−であり、XおよびX”はそれぞれ−CH−であり、Yは−CH−であり、Zは−NR−であり、以下のように表現され得る。
【0036】
【化10】

別の実施形態において、Qは−O−であり、X’は−CH−であり、Xは結合であり、X”は−CH−であり、Yは−N−であり、Zは結合であり、以下のように表現され得る。
【0037】
【化11】

各Rは、フルオロおよび−C1〜4アルキルから独立して選択される。aの値は、0または1から3の整数である。具体的な一実施形態において、aは0である。Rにおけるアルキル基は、1個から5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。
【0038】
およびRは、Hおよび−C1〜4アルキルから独立して選択される。一実施形態において、Rは水素である。別の実施形態において、Rは水素である。さらに別の具体的な実施形態において、RおよびRの両方が水素である。RおよびRにおけるアルキル基は、フルオロ原子で置換されていてもよい。例えば、Rおよび/またはRは、−CHだけでなく、−CFH、−CFHまたは−CFであってもよい。
【0039】
bの値は、1から4の整数である。一実施形態において、bは1から3の整数であり、さらに別の実施形態において、bは1から2の整数である。−(CH−基は、−C1〜2アルキルおよび−OHから独立して選択される1個または2個の置換基で任意選択で置換されていてもよい。一実施形態において、−(CH−基は非置換である。
【0040】
Arは、アリールまたはヘテロアリール基である。例示的アリール基には、フェニルおよびナフチルが含まれる。一実施形態において、Arはフェニルである。例示的ヘテロアリール基には、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、フラニル、チオフェニル、トリアゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、およびキノキサリニル基が含まれる。特に興味深いのは、チアゾリル(例えば2−チアゾリルおよび4−チアゾリル)、フラニル(例えばフラン−2−イルおよびフラン−3−イル)、チオフェニル(例えばチオフェン−2−イルまたはチオフェン−2−イル)、ピラゾリル(例えば1H−ピラゾール−3−イル)、ピリジニル(例えばピリジン−2−イル)、インドリル(例えば1H−インドール−2−イル、1H−インドール−4−イルおよび1H−インドール−5−イル)、ベンゾフラニル(例えばベンゾフラン−5−イル)、ベンゾチオフェニル(例えばベンゾ[b]チオフェン−2−イルおよびベンゾ[b]チオフェン−5−イル)、ならびにベンゾジオキソリル(例えばベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)基である。具体的な一実施形態において、Arはチオフェニルである。
【0041】
Arは、ハロ(例えばClおよびF)、−C1〜4アルキル(例えば−CH)、−C0〜4アルキレン−OH(例えば−OHおよび−CHOH)、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル(例えば−C(O)O−CH)、−O−C1〜4アルキル(例えば−OCH)、−S−C1〜4アルキル(例えば−S−CH)、−CONR8a8b、−NH−C(O)−C1〜4アルキル、−N−ジ−C1〜4アルキル、および−N(O)Oから独立して選択される1個から5個のR基で置換されていてもよく、R8aおよびR8bは、Hおよび−C1〜4アルキルから独立して選択される。一実施形態において、Arは、非置換であるか、または1個から2個のR基で置換されている。Rにおける各アルキルおよびアルキレン基は、1個から5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。例えば、Rは、−CF等のフルオロ置換−C1〜4アルキル基、または−OCF等のフルオロ置換−O−C1〜4アルキル基であってもよい。
【0042】
一実施形態において、Arは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキル、−S−C1〜4アルキル、および−CONR8a8bから独立して選択される1個から5個のR基で置換されており、各アルキル基は、1個から3個のフルオロ原子で任意選択で置換されている。別の実施形態において、Arは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、および−O−C1〜4アルキルから独立して選択される1個から2個のR基で置換されている。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、式IIもしくはIII:
【0044】
【化12】

を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、R1〜3、a、R5〜7、b、およびArは、式Iに関して定義された通りである。本発明のさらに別の態様は、式IIa、IIb、IIIaもしくはIIIb:
【0045】
【化13】

を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、a、R5〜7、b、およびArは、式Iに関して定義された通りである。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、式IV:
【0047】
【化14】

(式中、Rは−C3〜9シクロアルキルであり、Rはアリールであり、Rは−C0〜1アルキレン−OHであるか、または−CRが一緒になって、式:
【0048】
【化15】

の基を形成し、Yは−CH−でZは−NH−であるか、またはYは−N−でZは結合であり、bは1から3の整数であり、Arは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、および−O−C1〜4アルキルから独立して選択される1個または2個のR基で任意選択で置換されたフェニルまたはチエニルである)を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。さらに別の実施形態において、本発明は、式IVa:
【0049】
【化16】

(式中、Rはシクロペンチルであり、Rはフェニルであり、Rは−OHであり、Yは−CH−でZは−NH−であるか、またはYは−N−でZは結合であり、bは1から2の整数であり、Arは、ハロおよび−C1〜4アルキルから独立して選択される1個または2個のR基で任意選択で置換されたフェニルである)を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0050】
別の実施形態において、本発明は、式V:
【0051】
【化17】

を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、R1〜3、a、R、R、b、およびArは、式Iに関して定義された通りである。さらに別の実施形態において、本発明は、式Va:
【0052】
【化18】

(式中、Rは−シクロペンチルであり、Rはフェニルであり、Rは−OHであり、bは1から3の整数である)を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0053】
さらに、興味深い具体的な式Iの化合物には、以下の実施例に記載のもの、およびその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0054】
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを説明する際、別段の指定がない限り、以下の用語は以下の意味を有する。さらに、本明細書において使用される場合、使用される文脈上異なる定義が明示されていない限り、単数形「a」、「an」および「the」は対応する複数形も含む。「備える」、「含む」、および「有する」という用語は、包含的であることを意図し、列挙された要素以外の追加的な要素が存在し得ることを意味する。本明細書において使用される、成分の量、分子量等の特性、反応条件等を表現するすべての数字は、別段の指定がない限り、すべての場合において「約」という用語により修飾されているものとしてと理解されたい。したがって、本明細書において記載される数字は、本発明により得ようとする所望の特性に依存して変動し得る概数である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとすることなく、各数字は、少なくとも報告される有効数字に照らして、また通常の丸めの手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0055】
「アルキル」という用語は、直線状または分岐状であってもよい一価飽和炭化水素基を意味する。別段に定義されない限り、そのようなアルキル基は、典型的には、1個から10個の炭素原子を含有し、例えば−C1〜2アルキル、−C1〜4アルキル、および−C1〜6アルキルを含む。代表的なアルキル基には、例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が含まれる。
【0056】
本明細書において使用される特定の用語に対し、具体的な数の炭素原子が意図される場合、炭素原子の数は、その用語の前に下付き文字として示される。例えば、「−C1〜4アルキル」という用語は、1個から4個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、「−C5〜9シクロアルキル」という用語は、5個から9個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味し、炭素原子は任意の許容される配置をとる。
【0057】
「アルキレン」という用語は、直線状または分岐状であってもよい二価飽和炭化水素基を意味する。別段に定義されない限り、そのようなアルキレン基は、典型的には、0個から10個の炭素原子を含有し、例えば、−C0〜1アルキレン−、−C0〜2アルキレン−、−C0〜4アルキレン−、−C0〜5アルキレン−、−C1〜4アルキレン−、−C1〜2アルキレン−、−C2〜4アルキレン−、−C2〜5アルキレン−、および−C3〜6アルキレン−を含む。代表的なアルキレン基には、例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル等が含まれる。−C0〜1アルキレン−または−C0〜5アルキレン−等、アルキレンという用語がゼロ個の炭素を含む場合、そのような用語は、炭素原子の不在を含むこと、すなわちアルキレン基が存在しない(ただしアルキレンという用語により分離された基を結合する共有結合が存在する)ことを意図することが理解される。
【0058】
「アルケニル」という用語は、直線状または分岐状であってもよく、少なくとも1個、典型的には1個、2個または3個の炭素間二重結合を有する、一価不飽和炭化水素基を意味する。別段に定義されない限り、そのようなアルケニル基は、典型的には、2個から10個の炭素原子を含有し、例えば、−C2〜4アルケニルおよび−C2〜6アルケニルを含む。代表的なアルケニル基には、例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブタ−2−エニル、n−ヘキサ−3−エニル等が含まれる。「アルケニレン」という用語は、二価アルケニル基を意味し、例示的なアルケニレン基には−C2〜3アルケニレン−が含まれる。
【0059】
「アルコキシ」という用語は、式−O−アルキル(式中、アルキルは本明細書において定義される通りである)の一価の基を意味する。別段に定義されない限り、そのようなアルキレン基は、典型的には、1個から10個の炭素原子を含有し、例えば、−C1〜4アルコキシおよび−C1〜8アルコキシを含む。代表的なアルコキシ基には、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ等が含まれる。
【0060】
「アルキニル」という用語は、直線状または分岐状であってもよく、少なくとも1個、典型的には1個、2個または3個の炭素間三重結合を有する、一価不飽和炭化水素基を意味する。別段に定義されない限り、そのようなアルキニル基は、典型的には、2個から10個の炭素原子を含有し、例えば、−C2〜4アルキニルおよび−C2〜6アルキニルを含む。代表的なアルキニル基には、例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブタ−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニル等が含まれる。
【0061】
「アリール」という用語は、単一の環(すなわちフェニル)または縮合環(すなわちナフタレン)を有する一価芳香族炭化水素を意味する。別段に定義されない限り、そのようなアリール基は、典型的には、6個から10個の炭素環原子を含有し、例えば、−C6〜10アリールを含む。代表的なアリール基には、例として、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル等が含まれる。
【0062】
「シクロアルキル」という用語は、一価飽和炭素環式炭化水素基を意味する。別段に定義されない限り、そのようなシクロアルキル基は、典型的には、3個から10個の炭素原子を含有し、例えば、−C3〜6シクロアルキル、−C3〜7シクロアルキル、および−C5〜9シクロアルキルを含む。代表的なシクロアルキル基には、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれる。
【0063】
「二価炭化水素基」という用語は、主として炭素および水素原子で構成され、任意選択で1個または複数のヘテロ原子を含有する二価炭化水素基を意味する。そのような二価炭化水素基は、分岐状もしくは非分岐状、飽和もしくは不飽和、非環式もしくは環式、脂肪族もしくは芳香族、またはこれらの組合せであってもよい。二価炭化水素基は、炭化水素鎖に組み込まれた、または炭化水素鎖に結合した置換基としてヘテロ原子を任意選択で含有し得る。
【0064】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0065】
本明細書において使用される場合、「式を有する」または「構造を有する」という語句は、制限的であることを意図せず、一般に「備える」という用語が使用されるのと同じ様式で使用される。
【0066】
「ヘテロアリール」という用語は、単一の環または2つの縮合環を有し、環内に窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(典型的には1個から3個のヘテロ原子)を含有する一価芳香族基を意味する。別段に定義されない限り、そのようなヘテロアリール基は、典型的には、合計5個から10個の環原子を含有し、例えば、−C2〜9ヘテロアリールを含む。代表的なヘテロアリール基には、例として、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、フラニル、チエニル、チオフェニル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル等が含まれ、任意の利用可能な炭素または窒素環原子に結合点がある。
【0067】
「任意選択で置換された」という用語は、問題の基が非置換であってもよく、または1回もしくは複数回、例えば1回から3回もしくは1回から5回置換されていてもよいことを意味する。例えば、1個から5個のフルオロ原子で「任意選択で置換された」アルキル基は、非置換であってもよく、または1個、2個、3個、4個もしくは5個のフルオロ原子を含有してもよい。
【0068】
「薬学的に許容される」という用語は、本発明において使用される場合、生物学的に、またはその他の点で許容されないものではない材料を指す。例えば、「薬学的に許容される担体」という用語は、組成物中に組み込むことができ、また許容されない生物学的効果をもたらすことなく、または組成物の他の成分と許容されない様式で相互作用することなく患者に投与することができる材料を指す。そのような薬学的に許容される材料は、典型的には、毒性および製造試験の必要な基準を満たしており、米国食品医薬品局により好適な不活性成分として特定されている材料を含む。
【0069】
「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳動物等の患者への投与が許容される塩基または酸から調製される塩(例えば、所与の投薬計画において許容される哺乳類への安全性を有する塩)を意味する。しかしながら、本発明の範囲に含まれる塩は、患者への投与を目的としない中間化合物の塩等、薬学的に許容される塩である必要はないことが理解される。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機塩基から、および薬学的に許容される無機または有機酸から得ることができる。さらに、式Iの化合物が塩基性部分および酸性部分の両方を含有する場合、両性イオンが形成され得るが、これは本明細書において使用される「塩」という用語に含まれる。薬学的に許容される無機塩基から得られる塩は、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、および亜鉛塩等を含む。薬学的に許容される有機塩基から得られる塩は、置換アミン、環式アミン、天然アミン等を含む第1級、第2級および第3級アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩を含む。薬学的に許容される無機酸から得られる塩は、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩化水素酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩を含む。薬学的に許容される有機酸から得られる塩は、脂肪族ヒドロキシル酸(例えばクエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酪酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えばo−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えばフマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルコロン酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロチン酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸)、キシナホ酸等の塩を含む。
【0070】
「治療上有効な量」という用語は、処置を必要とする患者へ投与された際に処置を達成するのに十分な量、すなわち、所望の治療効果を得るために必要な薬の量を意味する。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置するための治療上有効な量は、例えば、(COPD)の症状を低減、抑制、排除もしくは予防するため、または(COPD)の根本的原因を処置するために必要な化合物の量である。一方、「効果的な」量は、所望の結果を得るために必要な量であり、これは必ずしも治療上有効な量でなくてもよい。例えば、ムスカリン受容体を遮断するための系を試験する場合、「効果的な量」は、受容体を遮断するために必要な量であってもよい。
【0071】
「処置する」または「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、哺乳動物(特にヒト)等の患者における疾患または病状(例えばCOPD)を処置することまたはその処置を意味し、(a)疾患もしくは病状の発生を予防すること、すなわち患者の予防的治療、(b)患者における疾患もしくは病状を改善すること、すなわち疾患もしくは病状を排除する、もしくはその退行をもたらすこと、(c)患者における疾患もしくは病状を抑制すること、すなわち疾患もしくは病状の進行を減速させる、もしくは止めること、または(d)患者における疾患もしくは病状の症状を軽減することのうちの1つまたは複数を含む。例えば、「COPDを処置する」という用語は、COPDの発生を予防すること、COPDを改善すること、COPDを抑制すること、およびCOPDの症状を軽減することを含む。「患者」という用語は、処置または疾患予防を必要としており、現在疾患予防の処置を受けているまたは特定の疾患もしくは病状の処置を受けているヒト等の動物、および、本発明の化合物が評価されている、またはアッセイに使用されている被験対象、例えば動物モデルを含むことを意図する。
【0072】
本明細書において使用される他のすべての用語は、それらが属する技術分野の当業者により理解されるようなその通常の意味を有することを意図する。
【0073】
一般的合成手順
本発明の化合物は、以下の一般的方法、実施例に記載される手順を使用して、または当業者に公知のその他の方法、試薬、および出発材料を使用することにより、容易に入手可能な出発材料から調製することができる。以下の手順は本発明の特定の実施形態を例示し得るが、同じもしくは同様の方法を使用して、または当業者に公知の他の方法、試薬および出発材料を使用することにより、本発明の他の実施形態も同様に調製することができることが理解される。また、典型的な、または好ましいプロセス条件(すなわち反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力等)が示されている場合、別段に明示されない限り、他のプロセス条件もまた使用することができることが認識される。最適な反応条件は、典型的には、特定の反応物質、溶媒および使用される量等の様々な反応パラメータに依存して変動するが、当業者は、慣例的な最適化手順を使用して好適な反応条件を容易に決定することができる。
【0074】
さらに、当業者には明らかなように、ある特定の官能基が望ましくない反応を起こすのを防ぐために、従来の保護基が必要または望ましくなり得る。具体的な官能基に対する好適な保護基の選択、ならびにそのような官能基の保護および脱保護に好適な条件および試薬は、当技術分野において周知である。望ましくない反応を防ぐために保護され得る官能基には、例として、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基等が含まれる。代表的なカルボキシ保護基には、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(fluroenylmethyl)(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)等のエステル;アミドおよびヒドラジドが含まれるが、これらに限定されない。代表的なヒドロキシル保護基には、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)等のトリC1〜6アルキルシリル基を含むシリル基;ホルミル、アセチル等のC1〜6アルカノイル基を含むエステル(アシル基);ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)等のアリールメチル基;ならびにエーテルが含まれるが、これらに限定されない。チオール基に対する代表的な保護基には、チオエーテルおよびチオエステルが含まれる。カルボニル基に対する代表的な保護基には、アセタールおよびケタールが含まれる。本明細書に記載される保護基以外の保護基も、所望により使用することができる。例えば、数々の保護基ならびにそれらの導入および除去が、T. W. GreeneおよびG. M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、NewYork、1999年およびそれに引用されている参考文献に記載されている。より具体的には、以下の略語および試薬が、以下に示されるスキームにおいて使用される。
【0075】
Pは、本明細書においてアミノ基での望ましくない反応を防ぐのに好適な保護基を意味するように使用される用語である「アミノ保護基」を表す。代表的なアミノ保護基には、t−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)等が含まれるが、これらに限定されない。P基を除去するためには標準的な脱保護技術が使用される。例えば、N−BOC基の脱保護は、HClまたは1,4−ジオキサン中4M HCl等の試薬を使用することがきる。
【0076】
これらのスキームにおける使用に好適な塩基には、例示として、限定されることなく、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムt−ブトキシド、および金属水素化物が含まれる。
【0077】
これらのスキームにおける使用に好適な不活性賦形剤または溶媒には、例示として、限定されることなく、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、四塩化炭素(CHCl)、1,4−ジオキサン、メタノール、エタノール、水等が含まれる。
【0078】
好適なカルボン酸/アミンカップリング試薬には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロ−ホスフェート(PyBOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDCI)、カルボニルジイミダゾール(CDI)等が含まれる。カップリング反応は、塩基の存在下で不活性賦形剤中で行われ、従来のアミド結合形成条件下で行われる。
【0079】
すべての反応は、典型的には、約−78℃から100℃の範囲内の温度、例えば室温で行われる。典型的には、反応は、完了するまで薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および/またはLCMSを使用して監視される。反応は、数分で完了し得るか、または数時間、典型的には1〜2時間から48時間まで必要とし得る。完了後、所望の生成物を得るため反応物を処理することができる。例えば、以下の手順のうちの1つまたは複数に反応物を供することができる:ストリッピングもしくは分割(例えば酢酸エチルと水との間、もしくは酢酸エチル中5%THFと1Mリン酸との間);抽出(例えば酢酸エチル、CHCl、DCM、KOH/クロロホルムによる);洗浄(例えば飽和NaCl水溶液、飽和NaHCO、NaCO(5%)、CHCl3、HClもしくはNaOHによる);乾燥(例えばMgSOもしくはNaSO上);溶媒除去(例えば真空中);濾過;濃縮(例えば真空中);および/または精製(例えばシリカゲルクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、調製HPLC、逆相HPLC、もしくは結晶化)。
【0080】
例示として、式Iの化合物は、以下の例示的プロセスの1つまたは複数により調製することができる。反応物質は、すべて市販されており、および/または当技術分野において周知の技術により容易に合成することができる。
【0081】
Qが結合であり、X’が−N−であり、XおよびX”がそれぞれ−CH−であり、Yが−N−であり、Zが結合である頭部基の形成
【0082】
【化19】

化合物(3)は、従来のアミド結合形成条件下で化合物(1)および(2)をカップリングし、続いて脱保護ステップを行うことにより形成される。化合物(1)の例には、(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(Rはシクロペンチルであり、Rはフェニルであり、Rはヒドロキシである)が含まれる。化合物(2)の例には、t−ブチル1−ピペラジンカルボキシレート(aは0であり、Pはt−ブトキシカルボニルである)が含まれる。
【0083】
Qが結合であり、X’が−N−であり、XおよびX”がそれぞれ−CH−であり、Yが−CH−であり、Zが−NR−である頭部基の形成
【0084】
【化20】

化合物(5)は、従来のアミド結合形成条件下で化合物(1)および(4)をカップリングすることにより形成される。
【0085】
化合物(1)の例には、(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(Rはシクロペンチルであり、Rはフェニルであり、Rはヒドロキシである)が含まれる。化合物(4)の例には、t−ブトキシカルボニル−4−アミノピペリジン(aは0であり、Pはt−ブトキシカルボニルである)が含まれる。
【0086】
Qが−O−であり、X’が−CH−であり、Xが結合であり、X”が−CH−であり、Yが−N−であり、Zが結合である頭部基の形成
【0087】
【化21】

化合物(7)は、光延カップリング反応(MitsunobuおよびYamada(1967年)M.Bull. Chem. Soc. JPN. 第40巻:2380〜2382頁)により形成される。トリフェニルホスフィン(triphenylphospine)等のホスフィン触媒、およびジエチルアゾジカルボキシレートまたはジイソプロピルアゾジカルボキシレート等のアゾジカルボキシレートの存在下で化合物(1)および化合物(6)を反応させ、続いて脱保護ステップを行って化合物(7)を得る。化合物(7)はまた、エステル交換により調製することができる。
【0088】
化合物(1)の例には、(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(Rはシクロペンチルであり、Rはフェニルであり、Rはヒドロキシである)が含まれる。化合物(6)の例には、(R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルおよび(S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルが含まれ、これらの化合物の両方において、aは0に等しく、PはBOCである。
【0089】
頭部基へのアリールまたはヘテロアリール部分の付加
【0090】
【化22】

化合物(3)、化合物(5)、または化合物(7)を、DMFまたはエタノール等の適切な溶媒中で化合物(8)と混合する。次いでDIPEAを添加し、典型的には35〜50℃の範囲内の温度に維持しながら反応を完了まで進め、式Iの化合物を得る。化合物(8)の例には、塩化水素酸塩としての3−フェニルプロピオンイミド酸エチルエステル(RはHであり、bは2であり、Arはフェニルである)および2−フェニルアセトイミド酸エチルエステル(RはHであり、bは1であり、Arはフェニルである)が含まれる。
【0091】
化合物(8)は、Kelleyら、(1995年)J. Med. Chem. 第38巻:3676〜3679頁に記載のもの等、当技術分野において周知の技術により合成される。
【0092】
代表的な本発明の化合物もしくはその中間体を調製するための具体的な反応条件およびその他の手順に関するさらなる詳細を、以下に記載する実施例で説明する。
【0093】
実用性
本発明の化合物は、ムスカリン受容体拮抗活性を有し、一実施形態において、ナノモルの効力で該活性を有する。一実施形態において、本発明の化合物は、Mムスカリン受容体サブタイプ活性よりもMムスカリン受容体サブタイプ活性の阻害に対し選択性を有する。別の実施形態において、本発明の化合物は、M、M、およびMムスカリン受容体サブタイプ活性よりもMおよびMムスカリン受容体サブタイプ活性の阻害に対し選択性を有する。さらに、本発明の化合物は、望ましい作用持続期間を有することが期待される。したがって、別の具体的実施形態において、本発明は、約24時間を越える作用持続期間を有する化合物に関する。さらに、本発明の化合物はまた、吸入により投与された場合、吸入により投与される他の公知のムスカリン受容体拮抗薬(例えばチオトロピウム)と比較して、有効用量における口内乾燥症等の副作用が低減されることが期待される。
【0094】
受容体サブタイプに対する化合物の親和性の1つの尺度は、受容体に結合するための阻害解離定数(K)である。本発明の化合物は、例えばインビトロ放射性リガンド置換アッセイにより決定された場合、M受容体サブタイプに対するKが100nM以下であることが期待される。特に興味深い化合物は、50nM以下のKを有するものを含み、別の実施形態においては、化合物は10nm以下のKを有し、さらに別の実施形態において、化合物は1.0nM以下のKを有する。さらにより特別興味深い化合物は、500pM以下のKを有するものを含み、別の実施形態において、化合物は、200pM以下のKを有する。いくつかの場合において、本発明の化合物は、弱いムスカリン受容体拮抗活性を有し得ることに留意されたい。そのような場合、これらの化合物はまだ研究ツールとしての実用性を有することが、当業者には認識される。
【0095】
また、投薬後24時間で100μg/mL以下のID50を有する化合物、より具体的には投薬後24時間で30μg/mL以下のID50を有する化合物もまた特に興味深い。
【0096】
ムスカリン受容体拮抗活性等の本発明の化合物の特性を決定するための例示的アッセイは、実施例に記載されており、例示として、限定されることなく、(例えばアッセイ1に記載のような)hM、hM、hM、hM、およびhMムスカリン受容体結合を測定するアッセイが含まれる。本発明の化合物のムスカリン受容体拮抗活性を決定するための有用な機能アッセイには、例示として、限定されることなく、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)におけるリガンド媒介変化、(cAMPを合成する)酵素アデニリルシクラーゼの活性におけるリガンド媒介変化、GDPのグアノシン5’−O−(γ−チオ)三リン酸([35S]GTPγS)の受容体触媒交換を介した[35S]GTPγSの単離された膜中への導入におけるリガンド媒介変化、遊離細胞内カルシウムイオンにおけるリガンド媒介変化(例えばMolecular Devices, Inc.製蛍光結合イメージングプレートリーダーまたはFLIPR(登録商標)を使用して測定)等を測定するアッセイが含まれる。例示的アッセイは、アッセイ2に記載されている。本発明の化合物は、上に列挙したアッセイ、または同様の性質のアッセイのいずれかにおいてムスカリン受容体の活性化を遮断または低減することが期待され、典型的には、約0.1〜100ナノモルの範囲の濃度でこれらの試験に使用される。したがって、上述のアッセイは、本発明の化合物の治療上の実用性、例えば気管支拡張活性の決定に有用である。
【0097】
本発明の化合物の他の特性および実用性は、当業者に周知の様々なインビトロおよびインビボアッセイを使用して実証することができる。例えば、本発明の化合物のインビボの効力は、Einthovenモデル等の動物モデルにおいて測定することができる。簡潔には、化合物の気管支拡張活性は、気道抵抗の代替的測定値として通気圧を使用する麻酔動物(Einthovenモデル)において評価される。例えば、Einthoven(1892年)Pfugers Arch. 第51巻:367〜445頁;およびMohammedら(2000年)PulmPharmacol Ther. 第13巻(第6号):287〜92頁、ならびにラットEinthovenモデルを説明しているアッセイ3を参照されたい。一実施形態において、100μg/mlの用量でラットEinthovenモデルに投与された本発明の化合物は、24時間で気管支収縮反応の35%以上の阻害を示し、別の実施形態において、24時間で70%以上の阻害を示す。別の有用なインビボアッセイは、(例えばアッセイ4に記載のような)ラット抗唾液分泌(antisialagogue)アッセイである。
【0098】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体により媒介される病状の処置のための治療薬剤として有用であることが期待される。したがって、ムスカリン受容体を阻止することにより処置される疾患または障害に罹患した患者は、治療上有効な量の本発明のムスカリン受容体拮抗薬を投与することにより処置され得る。そのような病状には、例として、可逆性気道閉塞に関連したものを含む肺障害または疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(例えば慢性および喘鳴性気管支炎および気腫)、喘息、肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻漏等が含まれる。ムスカリン受容体拮抗薬で処置され得る他の病状は、泌尿生殖器系障害、例えば過活動膀胱または排尿筋過活動およびそれらの症状;胃腸系障害、例えば過敏性腸症候群、憩室疾患、アカラシア、胃腸系過剰運動障害および下痢;心不整脈、例えば洞性徐脈;パーキンソン病;認知障害、例えばアルツハイマー病;月経困難症(dismenorrhea)等である。
【0099】
用量毎に投与される活性薬剤の量または1日あたり投与される総量は事前に決定されてもよく、または、患者の状態の性質および重症度、処置されている状態、患者の年齢、体重、および総体的な健康、活性薬剤に対する患者の耐性、投与経路、薬理学的な考慮事項、例えば投与されている活性薬剤および任意の補助的薬剤の活性、効能、薬物動態および毒性プロファイル等を含む数々の因子を考慮することにより、患者一人一人に対して決定されてもよい。疾患または病状(COPD等)に罹患した患者の処置は、所定の用量または処置を行う医者により決定される用量で開始することができ、疾患または病状の症状を予防、改善、抑制、または軽減するために必要な期間継続される。そのような処置を受けている患者は、典型的には、治療の有効性を決定するために定期的に監視される。例えば、COPDの処置において、努力呼気肺活量(1秒で測定される)における有意な改善を用いて処置の有効性を決定することができる。本明細書に記載の他の疾患および状態に対する同様の指標は、当業者に周知であり、処置を行う医者に容易に利用可能である。医者による継続的監視により、最適量の活性薬剤が所与の時間に投与されることが確実となるとともに、処置期間の決定が容易化される。これは、補助的薬剤もまた投与されている場合、その選択、用量、および治療期間もまた調整を必要とし得るため、特に有益である。このようにして、所望の有効性を示す最少量の活性薬剤が投与されるように、さらに、疾患または病状の処置が成功するのに必要な期間だけ投与が継続されるように、処置計画および投薬スケジュールを治療中に調整することができる。
【0100】
したがって、一実施形態において、本発明の化合物は、ヒトおよびそのペット(例えばイヌ、ネコ等)を含む哺乳動物における平滑筋障害の処置に有用である。そのような平滑筋障害には、例示として、過活動膀胱、慢性閉塞性肺疾患および過敏性腸症候群が含まれる。典型的には、平滑筋障害またはムスカリン受容体により媒介される他の障害の処置に好適な用量は、約0.15μg/kg/日から約5mg/kg/日を含む、約0.14μg/kg/日から約7mg/kg/日の範囲の活性薬剤である。平均的な70kgの人間において、これは1日約10μgから1日約500mgの活性薬剤に相当する。
【0101】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、治療上有効な量の化合物を患者に投与することにより、ヒトを含む哺乳動物における肺または呼吸器障害、例えばCOPDまたは喘息等の処置に有用である。一般に、肺疾患の処置のための用量は、約10〜1500μg/日の範囲である。「COPD」という用語は、Barnes(2000年)N. Engl. J. Med. 第343巻:269〜78頁およびそれに引用されている参考文献の教示により例示されるように、慢性閉塞性気管支炎および気腫を含む様々な呼吸状態を含むことが、当業者には理解される。肺障害を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、任意選択で、β−アドレナリン受容体作動薬;コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、またはこれらの組合せ等の他の治療薬剤と組み合わせて投与される。
【0102】
吸入により投与される場合、本発明の化合物は、典型的には、気管支拡張作用を生成する効果を有する。したがって、その方法の別の態様において、本発明は、気管支拡張作用を生成する量の本発明の化合物を患者に投与するステップを含む、患者において気管支拡張作用を生成する方法に関する。一般に、気管支拡張作用を生成するための治療上有効な用量は、約10〜1500μg/日の範囲である。
【0103】
別の実施形態において、本発明の化合物は、過活動膀胱を処置するために使用される。過活動膀胱を処置するために使用される場合、典型的な用量は、約1.0〜500mg/日の範囲である。さらに別の実施形態において、本発明の化合物は、過敏性腸症候群を処置するために使用される。過敏性腸症候群を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、典型的には経口または経直腸的に投与され、典型的な用量は、約1.0〜500mg/日の範囲である。
【0104】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体拮抗活性を有するため、そのような化合物はまた、ムスカリン受容体を有する生体系または試料の調査または試験のための研究ツールとしても有用である。M、M、M、Mおよび/またはMムスカリン受容体を有する任意の好適な生体系または試料が、インビトロまたはインビボで行われ得るそのような試験において使用され得る。そのような試験に好適な代表的生体系または試料には、細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織試料、摘出臓器、哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒト等)等が含まれるがこれらに限定されず、特に哺乳動物が興味深い。本発明の具体的な一実施形態において、哺乳動物におけるムスカリン受容体は、ムスカリン受容体を遮断する量の本発明の化合物を投与することにより遮断される。本発明の化合物はまた、そのような化合物を使用して生物学的アッセイを行うことにより、研究ツールとして使用することができる。
【0105】
研究ツールとして使用する場合、典型的には、ムスカリン受容体を含む生体系または試料を、ムスカリン受容体を遮断する量の本発明の化合物に接触させる。生体系または試料が化合物に暴露された後、従来の手順および機器を使用して、例えば放射性リガンド結合アッセイにおいて結合を、もしくは機能アッセイにおいてリガンド媒介変化を測定することにより、または哺乳動物における気管支保護アッセイにおいて化合物により提供される気管支保護の量を決定することにより、ムスカリン受容体を遮断する効果が決定される。暴露は、細胞または組織を化合物に接触させること、例えば腹腔内または静脈内投与等により化合物を哺乳動物に投与すること等を包含する。この決定ステップは、反応の測定、すなわち定量分析を含み得るか、または観察、すなわち定性分析を含み得る。反応の測定は、例えば、放射性リガンド結合アッセイおよび機能アッセイにおけるリガンド媒介変化の測定等の従来の手順および機器を使用して生体系または試料に対する化合物の効果を決定することを含む。アッセイ結果を使用して、活性レベルおよび所望の結果を達成するために必要な化合物の量、すなわちムスカリン遮断量を決定することができる。典型的には、決定ステップは、ムスカリン受容体リガンド媒介効果の決定を含む。
【0106】
さらに、本発明の化合物は、他の化学化合物を評価するための研究ツールとして使用することができ、しがたって、例えばムスカリン受容体結合活性を有する新たな化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにおいても有用である。このように、本発明の化合物は、試験化合物を用いて得られた結果と本発明の化合物を用いて得られた結果の比較を可能とするアッセイにおける基準として使用され、該当する場合は、ほぼ等しい、またはより優れた結合を有する試験化合物が特定される。例えば、試験化合物または試験化合物群のムスカリン受容体結合データ(例えばインビトロ放射性リガンド置換アッセイにより決定されるようなデータ)が、本発明の化合物のムスカリン受容体結合データと比較され、該当する場合は、所望の特性を有する試験化合物、例えば本発明の化合物とほぼ等しい、またはより優れた結合を有する試験化合物が特定される。あるいは、例えば、哺乳動物における気管支保護アッセイにおいて、試験化合物および本発明の化合物に対して気管支保護効果を決定し、このデータを比較して、ほぼ等しい、またはより優れた気管支保護効果を提供する試験化合物を特定することができる。本発明のこの態様は、別個の実施形態として、(適切なアッセイを使用した)比較データの生成、および関心のある試験化合物の特定のための試験データの分析の両方を含む。したがって、(a)試験化合物を用いて生物学的アッセイを行い、第1のアッセイ値を得るステップと、(b)本発明の化合物を用いて生物学的アッセイを行い、第2のアッセイ値を得るステップとを含み、ステップ(a)はステップ(b)の前、後、またはそれと同時に行われ、また(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値を、ステップ(b)からの第2のアッセイ値と比較するステップとを含む方法により、生物学的アッセイにおいて試験化合物を評価することができる。例示的な生物学的アッセイには、ムスカリン受容体結合アッセイが含まれる。
【0107】
医薬組成物および製剤
本発明の化合物は、典型的には、医薬組成物または製剤の形態で患者に投与される。そのような医薬組成物は、吸入、経口、経鼻、局所(経皮を含む)および非経口投与形式を含むがこれらに限定されない任意の許容される投与経路により患者に投与され得る。さらに、本発明の化合物は、例えば経口で、1日複数回の投薬、1日1回の投薬、または週1回の投薬で投与され得る。特定の投与形式に好適な本発明の化合物の任意の形態(すなわち、遊離塩基、薬学的に許容される塩、溶媒和物等)を、本明細書で議論される医薬組成物において使用することができることが理解される。
【0108】
したがって、一実施形態において、本発明は、薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。組成物は、所望により、他の治療薬剤および/または製剤化剤を含有し得る。「本発明の化合物」はまた、本明細書において、「活性薬剤」と呼ばれ得る。
【0109】
本発明の医薬組成物は、典型的には、治療上有効な量の本発明の化合物を含有する。しかしながら、医薬組成物は、治療上有効な量を超える、すなわちバルクの組成物、または治療上有効な量未満、すなわち治療上有効な量を達成するための複数回投与用に設計された個々の単位用量を含有し得ることが、当業者には認識される。一実施形態において、組成物は、約0.01〜30wt%を含む、例えば約0.01〜10wt%等の約0.01〜95wt%の活性薬剤を含有し、実際の量は、製剤自体、投与経路、投薬頻度等に依存する。別の実施形態において、吸入に好適な組成物は、例えば、約0.01〜30wt%の活性薬剤を含み、さらに別の実施形態では、約0.01〜10wt%の活性薬剤を含む。
【0110】
本発明の医薬組成物において、任意の従来の担体または添加剤を使用することができる。具体的な担体もしくは添加剤、または担体もしくは添加剤の組合せの選択は、特定の患者の処置に使用されている投与形式または病状もしくは疾患状態の種類に依存する。これに関して、特定の投与形式に好適な組成物の調製は、十分に医薬分野における当業者の能力の範囲内である。さらに、そのような組成物中に使用される担体または添加剤は市販されている。さらなる例示として、従来の製剤化技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、LippincottWilliams & White、Baltimore、Maryland(2000年);およびH. C. Anselら、PharmaceuticalDosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)に記載されている。
【0111】
薬学的に許容される担体として機能し得る材料の代表例には、糖類、例えば乳糖、ブドウ糖およびショ糖;デンプン、例えばどうもろこしデンプンおよびじゃがいもデンプン;セルロース、例えば微結晶性セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガント末;モルト;ゼラチン;タルク;添加剤、例えばココアバターおよび坐剤ワックス;油、例えばピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;圧縮噴射ガス、例えばクロロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボン;ならびに医薬組成物中に使用される他の非毒性適合性物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
医薬組成物は、典型的には、活性薬剤を、薬学的に許容される担体および1種または複数種の任意選択の成分と、完全および密に混合またはブレンドすることにより調製される。均一にブレンドされた得られる混合物は、次いで、従来の手順および機器を使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤、容器、カートリッジ、ディスペンサ等に成形または装填され得る。
【0113】
一実施形態において、医薬組成物は、吸入投与に好適である。吸入投与に好適な組成物は、典型的には、エアゾール剤または散剤の形態である。そのような組成物は、一般に、周知の送達デバイス、例えば噴霧吸入器、乾燥粉末吸入器、または定量吸入器等を使用して投与され、その例を以下で説明する。
【0114】
本発明の具体的な実施形態において、活性薬剤を含む組成物は、噴霧吸入器を使用した吸入により投与される。そのような噴霧デバイスは、典型的には、組成物を患者の気道に導入される霧として噴霧させる高速空気流を生成する。したがって、噴霧吸入器における使用のために製剤化される場合、活性薬剤は、典型的には、好適な担体に溶解されて溶液を形成する。あるいは、活性薬剤は、微粉化され好適な担体と組み合わされて呼吸可能な大きさの微粉化粒子の懸濁液を形成し得るが、ここで微粉化とは、典型的には、粒子の少なくとも約90パーセントが約10μm未満の質量中央径を有する粒子を有するものとして定義される。「質量中央径」という用語は、粒子の質量の半分がより大きい直径を有する粒子に含有され、半分がより小さい直径を有する粒子に含有されるような直径を意味する。
【0115】
好適な噴霧デバイスには、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)Inhaler(Boehringer Ingelheim社製)、AERx(登録商標)Pulmonary Delivery System(Aradigm Corp.製)、およびPARI LC Plus Reusable Nebulizer(Pari GmbH製)が含まれる。噴霧吸入器における使用のための例示的組成物は、約0.05μg/mLから約10mg/mLの本発明の化合物を含む等張水溶液を含む。一実施形態において、そのような溶液は、約4〜6のpHを有する。
【0116】
本発明の別の具体的な実施形態において、活性薬剤を含む組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)を使用した吸入により投与される。そのようなDPIは、典型的には、吸息中の患者の空気流中に分散した浮遊性粉末として活性薬剤を投与する。浮遊性粉末を達成するために、活性薬剤は、典型的には、乳糖、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリド、およびこれらの組合せ等の好適な添加剤とともに製剤化される。典型的には、活性薬剤は微粉化され添加剤と組み合わされて、吸入に好適なブレンドを形成する。したがって、本発明の一実施形態において、活性薬剤は微粉化形態である。例えば、DPIにおける使用のための代表的な組成物は、約1μmから約100μmの粒径を有する乾燥乳糖(例えば乾式粉砕乳糖)、および活性薬剤の微粉化粒子を含む。そのような乾燥粉末製剤は、例えば、乳糖を活性薬剤と組み合わせ、次いでその成分を乾式ブレンドすることにより作製することができる。あるいは、所望により、活性薬剤は、添加剤なしで製剤化することができる。次いで組成物は、典型的には、DPIに、またはDPIとの使用のための吸入カートリッジもしくはカプセルに装填される。DPIは当業者に周知であり、そのようなデバイスの多くは市販されており、代表的なデバイスには、Aerolizer(登録商標)(Novartis社製)、airmax(商標)(IVAX社製)、ClickHaler(登録商標)(Innovata Biomed社製)、Diskhaler(登録商標)(GlaxoSmithKline社製)、Diskus(登録商標)またはAccuhaler(GlaxoSmithKline社製)、Easyhaler(登録商標)(Orion Pharma社製)、Eclipse(商標)(Aventis社製)、FlowCaps(登録商標)(Hovione社製)、Handihaler(登録商標)(Boehringer Ingelheim社製)、Pulvinal(登録商標)(Chiesi社製)、Rotahaler(登録商標)(GlaxoSmithKline社製)、SkyeHaler(商標)またはCertihaler(商標)(SkyePharma社製)、Twisthaler(Schering−Plough社製)、Turbuhaler(登録商標)(AstraZeneca社製)、Ultrahaler(登録商標)(Aventis社製)等が含まれる。
【0117】
本発明のさらに別の具体的な実施形態において、活性薬剤を含む組成物は、定量吸入器(MDI)を使用した吸入により投与される。そのようなMDIは、典型的には、圧縮噴射ガスを使用して一定量の活性薬剤を放出する。したがって定量製剤は、典型的には、液化噴射剤中、例えばCClF等のクロロフルオロカーボンまたは1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)等のハイドロフルオロアルカン(HFA)中の活性薬剤の溶液または懸濁液を含むが、オゾン層に影響を与えるクロロフルオロカーボンに関する懸念から、一般にHFAが好ましい。HFA製剤の追加的な任意の成分には、エタノールまたはペンタン等の共溶媒、ならびにソルビタントリオレエート、オレイン酸、レシチン、およびグリセリン等の界面活性剤が含まれる。例えば、Purewalらに対する米国特許第5,225,183号、欧州特許第0717987A2号(Minnesota Mining and Manufacturing Company)、および国際公開第92/22286号(Minnesota Mining and Manufacturing Company)を参照されたい。MDIにおける使用のための代表的な組成物は、約0.01〜5wt%の活性薬剤、約0〜20wt%のエタノール、および約0〜5wt%の界面活性剤を含み、残りはHFA噴射剤である。そのような組成物は、典型的には、冷却または加圧されたハイドロフルオロアルカンを、活性薬剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含有する好適な容器に加えることにより調製される。懸濁液を調製するために、活性薬剤は微粉化され、次いで噴射剤と組み合わされる。次いで製剤は、MDIの一部を形成するエアゾール容器に装填される。MDIは当業者に周知であり、そのようなデバイスの多くは市販されており、代表的なデバイスには、AeroBid Inhaler System(Forest Pharmaceuticals社製)、Atrovent Inhalation Aerosol(Boehringer Ingelheim社製)、Flovent(登録商標)(GlaxoSmithKline社製)、Maxair Inhaler(3M社製)、Proventil(登録商標)Inhaler(Schering社製)、Serevent(登録商標)Inhalation Aerosol(GlaxoSmithKline社製)等が含まれる。あるいは、懸濁液製剤は、活性薬剤の微粉化粒子上に界面活性剤のコーティングを噴霧乾燥することにより調製することができる。例えば、国際公開第99/53901号(Glaxo Group Ltd.)および国際公開第00/61108号(Glaxo Group Ltd.)を参照されたい。
【0118】
呼吸可能な粒子を調製するプロセス、ならびに吸入投薬に好適な製剤およびデバイスの追加的な例は、Briggnerらに対する米国特許第5,874,063号;Trofastに対する米国特許第5,983,956号;Jakupovicらに対する米国特許第6,221,398号;Gaoらに対する米国特許第6,268,533号;Bisratらに対する米国特許第6,475,524号;およびCooperに対する米国特許第6,613,307号に記載されている。
【0119】
別の実施形態において、医薬組成物は、経口投与に好適である。経口投与に好適な組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、水性または非水性の液体中の溶液剤または懸濁剤、水中油型または油中水型液体乳剤、エリキシル剤またはシロップ剤等の形態であってもよく、それぞれ所定量の活性薬剤を含有する。
【0120】
固体剤形での(すなわちカプセル剤、錠剤、丸剤等としての)経口投与が意図される場合、組成物は、典型的には、活性薬剤および1種または複数種の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたは第2リン酸カルシウム等を含む。固体剤形はまた、充填剤または増量剤、例えばデンプン、微結晶性セルロース、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、および/またはケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアカシア;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、じゃがいももしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート、および/または炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレート;吸収剤、例えばカオリンおよび/またはベントナイト粘土;潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはこれらの混合物;着色剤;ならびに緩衝剤を含み得る。
【0121】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味および芳香剤、保存料、ならびに酸化防止剤もまた、医薬組成物中に存在し得る。錠剤、カプセル剤、丸剤等用の例示的コーティング剤には、腸溶コーティングに使用されるもの、例えば酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、酢酸トリメリト酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が含まれる。薬学的に許容される酸化防止剤の例には、水溶性酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;油溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等;および金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等が含まれる。
【0122】
組成物はまた、例として様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはその他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを使用して、活性薬剤の徐放または制御放出を提供するように製剤化することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、乳白剤を含有してもよく、また、任意選択で徐放的に、胃腸管のある特定の部分のみ、またはそこに優先的に活性薬剤を放出するように製剤化され得る。使用可能な包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。活性薬剤はまた、適切な場合には、上記添加剤のうちの1種または複数種とともにマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0123】
経口投与に好適な液体剤形には、例示として、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は、典型的には、活性薬剤および不活性賦形剤、例えば水またはその他の溶剤等、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(例えば綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含む。懸濁剤は、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにこれらの混合物を含有し得る。
【0124】
経口投与が意図される場合、本発明の医薬組成物は、単位剤形として包装され得る。「単位剤形」という用語は、患者への投薬に好適な物理的に別個の単位、すなわち、単独または1種もしくは複数種の追加的な単位と組み合わせて所望の治療効果を生成するように計算された所定量の活性薬剤を含有するそれぞれの単位を指す。例えば、そのような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤等であってもよい。
【0125】
本発明の化合物はまた、非経口的に(例えば皮下注射、静脈注射、筋肉注射、または腹腔内注射等により)投与することができる。そのような投与の場合、活性薬剤は、滅菌溶液剤、懸濁剤、または乳剤として提供される。そのような製剤を調製するための例示的溶媒には、水、生理食塩水、プロピレングリコール等の低分子量アルコール、ポリエチレングリコール、油、ゼラチン、オレイン酸エチル等の脂肪酸エステル等が含まれる。典型的な非経口製剤は、活性薬剤のpH4〜7の滅菌水溶液である。非経口製剤はまた、1種または複数種の可溶化剤、安定剤、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤を含有し得る。これらの製剤は、滅菌注射用媒体、滅菌剤、濾過、照射殺菌、または加熱を使用して滅菌され得る。
【0126】
本発明の化合物はまた、公知の経皮吸収型製剤(transdermal delivery system)および添加剤を使用して、経皮的に投与することができる。例えば、化合物は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オン等の透過促進剤と混合することができ、またパッチ剤または同様の吸収型製剤に組み込むことができる。ゲル化剤、乳化剤および緩衝剤を含む追加的な添加剤が、所望によりそのような経皮組成物中に使用されてもよい。
【0127】
望ましい場合は、本発明の化合物は、1種または複数種のその他の治療薬剤と組み合わせて投与され得る。したがって、一実施形態において、本発明の組成物は、本発明の化合物と同時投与されるその他の薬を任意選択で含有し得る。例えば、組成物は、他の気管支拡張薬(例えばPDE阻害薬、アデノシン2b調整薬およびβアドレナリン受容体作動薬);抗炎症薬(例えばコルチコステロイドおよびグルココルチコイド等のステロイド性抗炎症薬;非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);ならびにPDE阻害薬);他のムスカリン受容体拮抗薬(すなわち抗コリン(antichlolinergic)剤);抗感染症薬(例えばグラム陽性およびグラム陰性抗生剤、ならびに抗ウイルス薬);抗ヒスタミン剤;プロテアーゼ阻害薬;求心性ブロッカー(例えばD作動薬およびニューロキニン調整薬);およびこれらの組合せの群から選択される、1種または複数種の薬(「補助的薬剤(複数可)」とも呼ばれる)をさらに含み得る。そのような治療薬剤の多くの例が当技術分野において周知であり、以下にその例を記載する。本発明の化合物を補助的薬剤と組み合わせることにより、いくつかの場合においては2種の組成物を投与することで、またいくつかの場合においては活性薬剤および補助的薬剤を含有する単一の組成物を投与することで、二剤併用療法、すなわちムスカリン受容体拮抗活性および補助的薬剤(例えばβアドレナリン受容体作動薬)と関連した活性を達成することができる。したがって、本発明のさらに別の態様において、医薬組成物は、本発明の化合物、第2の活性薬剤、および薬学的に許容される担体を含む。第3、第4等の活性薬剤が組成物に含まれてもよい。例えば、組成物は、本発明の化合物;コルチコステロイド、βアドレナリン受容体作動薬、ホスホジエステラーゼ−4阻害薬、およびこれらの組合せから選択される補助的薬剤;ならびに薬学的に許容される担体を含んでもよい。具体的実施形態において、組成物は、本発明の化合物、βアドレナリン受容体作動薬、およびステロイド性抗炎症薬を含む。併用療法において、投与される本発明の化合物の量、および補助的薬剤の量は、単剤療法において典型的に投与される量より少なくてもよい。
【0128】
本発明の化合物は、第2の活性薬剤と物理的に混合されて両方の薬剤を含有する組成物を形成し得るか、または各薬剤が別個の異なる組成物として存在し、同時または逐次的に患者に投与され得る。例えば、本発明の化合物は、従来の手順および機器を使用して第2の活性薬剤と組み合わされ、本発明の化合物を含む活性薬剤および第2の活性薬剤の組合せを形成し得る。さらに、活性薬剤は、薬学的に許容される担体と組み合わされ、本発明の化合物、第2の活性薬剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を形成し得る。この実施形態において、組成物の成分は、典型的には、混合またはブレンドされて物理的混合物を形成する。次いで、物理的混合物は、本明細書に記載の経路のいずれかを使用して、治療上有効な量で投与される。
【0129】
あるいは、活性薬剤は、患者への投与前、別個の異なる状態のままであってもよい。この実施形態において、薬剤は、投与前に互いに物理的に混合されないが、別個の組成物として同時にまたは別個の時間に投与される。そのような組成物は、別個に包装されてもよく、またはキットとして一緒に包装されてもよい。別個の時間に投与される場合、補助的薬剤は、典型的には、本発明の化合物の投与後24時間未満に投与される。他の実施形態において、この時間的な関係は、本発明の化合物の投与後12時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、3時間未満、1時間未満、30分未満、10分未満、1分未満、または投与直後である。これはまた、逐次的投与とも呼ばれる。したがって、本発明の化合物は、各活性薬剤に対し別個の区画(例えばブリスターパック)を使用する吸入送達デバイスを使用して、別の活性薬剤と同時または逐次的に吸入により投与することができ、ここで逐次的とは、本発明の化合物の投与直後、またはある所定時間後(例えば1時間後または3時間後)に投与されることを意味し得る。あるいは、別個の送達デバイス、すなわち各薬剤につき1つの送達デバイスを使用して組合せが投与されてもよい。さらに、薬剤は、異なる投与経路で、すなわち一方は吸入投与、他方は経口投与により送達され得る。
【0130】
一実施形態において、キットは、本発明の方法を行うために十分な量で、本発明の化合物を含む第1の剤形、および本明細書に記載の1種または複数種の補助的薬剤を含む少なくとも1つの追加的な剤形を含む。第1の剤形および第2の(または第3等の)剤形は、共に、患者における疾患または病状の処置または予防のための、治療上有効な量の活性薬剤を含む。
【0131】
補助的薬剤(複数可)は、含まれる場合、治療上有効な量で存在し、すなわち、典型的には、本発明の化合物と同時投与されたときに治療上有益な効果を生成する量で投与される。補助的薬剤は、薬学的に許容される塩、溶媒和物、光学的に純粋な立体異性体等の形態であってもよい。したがって、以下に列挙される補助的薬剤はすべてのそのような形態を含むように意図され、市販されているか、または従来の手順および試薬を使用して調製することができる。補助的薬剤の好適な用量は、典型的には、約0.05μg/日から約500mg/日の範囲内である。
【0132】
具体的な実施形態において、本発明の化合物は、βアドレナリン受容体作動薬と組み合わせて投与される。代表的なβアドレナリン受容体作動薬には、アルブテロール、ビトルテロール、フェノテロール、ホルモテロール、インダカテロール、イソエタリン、レバルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルブタモール、サルメファモール、サルメテロール、テルブタリン等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物と組み合わせて使用することができる他のβアドレナリン受容体作動薬には、国際公開第02/066422号(Glaxo Group Ltd.)に開示されている3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび3−(−3−{[7−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−フェニル]エチル}アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミドおよび関連化合物;国際公開第02/070490号(Glaxo Group Ltd.)に開示されている3−[3−(4−{[6−([(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−フェニル]イミダゾリン−2,4−ジオンおよび関連化合物;国際公開第02/076933号(Glaxo Group Ltd.)に開示されている3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}−ブチル)ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼン−スルホンアミド、N−(t−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(t−ブチル)−3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(t−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび関連化合物;国際公開第03/024439号(Glaxo Group Ltd.)に開示されている4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)−オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノールおよび関連化合物;Moranらに対する米国特許第6,576,793号に開示されているN−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)−エチルアミンおよび関連化合物;Moranらに対する米国特許第6,653,323号に開示されているN−{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシフェニル)アミノフェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミンおよび関連化合物が含まれるが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、β−アドレナリン受容体作動薬は、N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)−フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンの結晶性一塩酸塩である。典型的には、β−アドレナリン受容体作動薬は、1用量あたり約0.05〜500μgを提供するために十分な量で投与される。
【0133】
具体的な実施形態において、本発明の化合物は、ステロイド性抗炎症薬と組み合わせて投与される。代表的なステロイド性抗炎症薬には、ジプロピオン酸ベクロメタゾン;ブデソニド;プロピオン酸ブチキソコート;20R−16α,17α−[ブチリデンビス(オキシ)]−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−17β−(メチルチオ)アンドロスタ−4−エン−3−オン(RPR−106541);シクレソニド;デキサメタゾン;6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸S−フルオロメチルエステル;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸S−フルオロメチルエステル;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸(S)−(2−オキソテトラヒドロ−フラン−3S−イル)エステル;フルニソリド;プロピオン酸フルチカゾン;メチルプレドニゾロン;フロ酸モメタゾン;プレドニゾロン;プレドニゾン;ロフレポニド;ST−126;トリアムシノロンアセトニド等が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、ステロイド性抗炎症薬は、1用量あたり約0.05〜500μgを提供するために十分な量で投与される。
【0134】
例示的な組合せは、βアドレナリン受容体作動薬としてのサルメテロールおよびステロイド性抗炎症薬としてのプロピオン酸フルチカゾンと同時投与される本発明の化合物である。別の例示的な組合せは、β−アドレナリン受容体作動薬としてのN−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)−エチルアミンの結晶性一塩酸塩、およびステロイド性抗炎症薬としての6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)−オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸S−フルオロメチルエステルと同時投与される本発明の化合物である。
【0135】
その他の好適な組合せには、例えば、その他の抗炎症薬、例えばNSAID(例えばクロモグリク酸ナトリウム;ネドクロミルナトリウム;ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬(例えばテオフィリン、PDE4阻害薬または混合PDE3/PDE4阻害薬);ロイコトリエン拮抗薬(例えばモンテロイカスト(monteleukast));ロイコトリエン合成の阻害薬;iNOS阻害薬;プロテアーゼ阻害薬、例えばトリプターゼおよびエラスターゼ阻害薬;β−2インテグリン拮抗薬およびアデノシン受容体作動薬もしくは拮抗薬(例えばアデノシン2a作動薬);サイトカイン拮抗薬(例えばケモカイン拮抗薬、例えばインターロイキン抗体(αIL抗体)、具体的にはαIL−4治療、αIL−13治療もしくはこれらの組合せ);またはサイトカイン合成の阻害薬が含まれる。
【0136】
具体的な実施形態において、本発明の化合物は、ホスホジエステラーゼ−4(PDE4)阻害薬または混合PDE3/PDE4阻害薬と組み合わせて投与される。代表的なPDE4または混合PDE3/PDE4阻害薬には、cis4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オン;cis−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オール];cis−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸等、またはその薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。その他の代表的なPDE4または混合PDE4/PDE3阻害薬には、AWD−12−281(elbion社製);NCS−613(INSERM製);D−4418(Chiroscience and Schering−Plough製);CI−1018またはPD−168787(Pfizer社製);国際公開第99/16766号(協和発酵社)に開示されているベンゾジオキソール化合物;K−34(協和発酵社製);V−11294A(Napp社製);ロフルミラスト(Byk−Gulden社製);国際公開第99/47505号(Byk−Gulden社)に開示されているフタラジノン(pthalazinone)化合物;プマフェントリン(Byk−Gulden社製、現在Altana社製);アロフィリン(Almirall−Prodesfarma社製);VM554/UM565(Vernalis社製);T−440(田辺製薬社製);およびT2585(田辺製薬社製)が含まれる。
【0137】
具体的な実施形態において、本発明の化合物は、ムスカリン拮抗薬(すなわち抗コリン剤)と組み合わせて投与される。代表的なムスカリン拮抗薬には、アトロピン、硫酸アトロピン、酸化アトロピン、メチルアトロピン硝酸塩、ホマトロピン臭化水素酸塩、ヒヨスチアミン(d,l)臭化水素酸塩、スコポラミン臭化水素酸塩、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、メタンテリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルアニソトロピン、臭化クリジニウム、コピロレート(Robinul)、ヨウ化イソプロパミド、臭化メペンゾラート、塩化トリジヘキセチル(Pathilone)、メチル硫酸ヘキソシクリウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、塩酸トリヘキシフェニジル、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF−DX116およびメトクトラミン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
具体的な実施形態において、本発明の化合物は、抗ヒスタミン剤(すなわちH−受容体拮抗薬)と組み合わせて投与される。代表的な抗ヒスタミン剤には、エタノールアミン、例えばマレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミンおよびジメンヒドリナート;エチレンジアミン、例えばマレイン酸(amleate)ピリラミン、塩酸トリペレナミンおよびクエン酸トリペレナミン;アルキルアミン、例えばクロルフェニラミンおよびアクリバスチン;ピペラジン、例えば塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジンおよび塩酸セチリジン;ピペリジン、例えばアステミゾール、塩酸レボカバスチン、ロラタジンまたはそのデスカルボエトキシ類似体、テルフェナジンおよび塩酸フェキソフェナジン;塩酸アゼラスチン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
以下の製剤は、代表的な本発明の医薬組成物を例示している。
【0140】
DPIによる投与のための例示的組成物
本発明の化合物(0.2mg)を微粉化し、次いで乳糖(25mg)とブレンドする。次いで、このブレンドされた混合物をゼラチン吸入カートリッジに装填する。例えばDPIを使用して、カートリッジの中身を投与する。
【0141】
微粉化された本発明の化合物(100mg)を、粉砕された乳糖(25g)(例えば、粒子の約85%以下が約60μmから約90μmのMMDを有し、粒子の15%以上が15μm未満のMMDを有する乳糖)とブレンドする。次いで、このブレンドされた混合物を、1用量あたり約10μgから約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、剥離可能なブリスターパックの個々のブリスターに装填する。DPIを使用してブリスターの中身を投与する。
【0142】
あるいは、微粉化された本発明の化合物(1g)を粉砕された乳酸(200g)とブレンドし、粉砕された乳酸に対する化合物の重量比が1:200のバルク組成物を形成する。ブレンドされた組成物を、1用量あたり約10μgから約500μgの本発明の化合物を送達することができるDPIに詰める。
【0143】
あるいは、微粉化された本発明の化合物(100mg)および微粉化されたβアドレナリン受容体作動薬(500mg)を、粉砕された乳糖(30g)とブレンドする。次いで、ブレンドされた混合物を、1用量あたり約10μgから約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、剥離可能なブリスターパックの個々のブリスターに装填する。DPIを使用してブリスターの中身を投与する。
【0144】
MDIにおける使用のための例示的組成物
レシチン(0.2g)を脱塩水(200mL)に溶解することにより調製された溶液中に、微粉化された本発明の化合物(10g)を分散させる。得られた懸濁液を噴霧乾燥させ、次いで微粉化して、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微粉化された組成物を形成する。次いで、微粉化された組成物を、MDIにより投与されたときに1用量あたり約10μgから約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、加圧された1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含有するMDIカートリッジに装填する。
【0145】
あるいは、10μm未満の平均径を有する微粉化された粒子としての本発明の化合物5gを、脱塩水100mLに溶解されたトレハロース0.5gおよびレシチン0.5gから形成されたコロイド状溶液中に分散させることにより、5wt%の本発明の化合物、0.5wt%のレシチン、および0.5wt%のトレハロースを含有する懸濁液を調製する。懸濁液を噴霧乾燥させ、得られた材料を、1.5μm未満の平均直径を有する粒子まで微粉化する。加圧された1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む容器中に粒子を装填する。
【0146】
噴霧吸入器における使用のための例示的組成物
本発明の組成物(25mg)を、クエン酸緩衝(pH5)等張食塩水(125mL)に溶解する。混合物を撹拌し、化合物が溶解するまで超音波照射する。溶液のpHを確認し、必要に応じて、1N水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加することによりpH5に調整する。1用量あたり約10μgから約500μgの本発明の化合物を提供する噴霧デバイスを使用して、溶液を投与する。
【0147】
経口投与のための例示的硬質ゼラチンカプセル
本発明の化合物(50g)、噴霧乾燥された乳糖(440g)およびステアリン酸マグネシウム(10g)を、十分にブレンドする。次いで、得られた組成物を硬質ゼラチンカプセルに装填する(カプセルあたり組成物500mg)。
【0148】
経口投与のための例示的懸濁液
以下の成分を混合して、懸濁液10mLあたり化合物100mgを含有する懸濁液を形成する。
【0149】
【表1】

注射による投与のための例示的注射製剤
本発明の化合物(0.2g)を、0.4M酢酸ナトリウム緩衝溶液(2.0mL)とブレンドする。必要に応じて、0.5N塩酸水溶液または0.5N水酸化ナトリウム水溶液を使用して、得られた溶液のpHをpH4に調整し、次いで十分な注射用の水を添加して総体積を20mLとする。次いで混合物を滅菌フィルター(0.22ミクロン)を通して濾過し、注射による投与に好適な滅菌溶液を得る。
【実施例】
【0150】
以下の調製および実施例は、本発明の具体的な実施形態を例示するために提供される。しかしながら、これらの具体的な実施形態は、具体的に指定されていない限り、決して本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0151】
別段に指定されない限り、以下の略語は以下の意味を有し、本明細書において使用され定義されていない他の任意の略語は、その標準的な意味を有する。
AC アデニリルシクラーゼ
BSA 牛血清アルブミン
cAMP 3'-5'環状アデノシン一リン酸
CHO チャイニーズハムスター卵巣
cM5 クローンチンパンジーM5受容体
DCM ジクロロメタン(すなわち塩化メチレン)
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
dPBS ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
EDCI N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
FBS ウシ胎仔血清
FLIPR 蛍光イメージングプレートリーダー
HBSS ハンク緩衝生理食塩水
HEPES 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸
hM1 クローンヒトM1受容体
hM2 クローンヒトM2受容体
hM3 クローンヒトM3受容体
hM4 クローンヒトM4受容体
hM5 クローンヒトM5受容体
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
MCh メチルコリン
MeOH メタノール
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
本明細書において使用されているが定義されていない他の任意の略語は、その標準的な、一般に認められている意味を有する。別段に示されていない限り、試薬、出発材料および溶媒等のすべての材料は、商業的供給者(例えばSigma−Aldrich社、Fluka Riedel−de Haen社等)から購入され、それ以上精製せずに使用された。別段に示されていない限り、反応は窒素雰囲気下で行われた。反応混合物の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析高速液体クロマトグラフィー(分析HPLC)、および質量分析法により監視され、その詳細は、反応の具体例において以下に個別に示されている。反応混合物は、各反応において具体的に説明されているように後処理され、一般に、抽出およびその他の精製法、例えば温度依存性および溶媒依存性再結晶化および沈殿法等により精製された。さらに、反応混合物は、調製HPLCにより慣例的に精製された。
【0152】
調製1
(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸
【0153】
【化23】

(2R,5R)−2−t−ブチル−5−フェニル−1,3−ジオキソラン−4−オン(1a):(R)−マンデル酸(20g、130mmol)を、無水ペンタン(200mL、1.7mol)に溶解した。ピバルデヒド(pivaldehyde)(13.6g、153mmol)、続いてトリフルオロメタンスルホン酸(488μL、5.4mmol)を添加した。反応物を、窒素下で36℃で還流した。5.5時間後、混合物を室温まで冷却してから、8wt%NaHCO溶液200mLとともに10分間撹拌した。過剰のペンタンはロータリーエバポレーションにより除去した。濾過により固体を回収し、真空濾過しながら濯いだ(水100mL)。固体を高真空下で一晩乾燥させると、白色固体として23.8グラムの中間体(1a)を得た(純度88%)。
【0154】
(2R,5S)−2−t−ブチル−5−(1−ヒドロキシシクロペンチル)−5−フェニル−1,3−ジオキソラン−4−オン(1b):リチウムヘキサメチルジシラジド(0.8g、4.7mmol;ヘキサン中1.0Mの4.7mL)を、無水THF(5.3mL、65mmol)に−78℃で添加した。無水THF5.3mL中の中間体(1a)(800mg、3.6mmol)を、15分間にわたり滴下により溶液に添加した。30分後、シクロペンタノン(451μL、5.1mmol)を1分未満にわたり滴下により添加した。2時間後、飽和NaHPO水溶液0.8mLを添加し、混合物を室温で5分間撹拌した。混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液8mLに添加した。水層を洗浄し(2×80mL EtOAc)、有機層を組み合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過および濃縮した。粗生成物(780mg)をフラッシュクロマトグラフィー(30分にわたるヘキサン中5〜15%EtOAc勾配)で精製し、中間体(1b)を得た。
【0155】
(2R,5S)−2−t−ブチル−5−シクロペンタ−1−エニル−5−フェニル−1,3−ジオキソラン−4−オン(1c):中間体(1b)(650mg、2.1mmol)を無水THF6.8mLに溶解し、溶液を0℃に冷却した。塩化チオニル(436μL、6mmol)を滴下により添加し、続いてピリジン(777μL、9.6mmol)を添加した。混合物を0℃で1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(14mL)を添加し、室温まで加温しながら混合物を5分間撹拌した。層を分離し、水層を洗浄した(2×100mL EtOAc)。有機層を組み合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過および濃縮すると、淡黄色の油(540mg)として中間体(1c)を得、それ以上精製することなくこれを次のステップに使用した。
【0156】
(S)−シクロペンタ−1−エニル−ヒドロキシフェニル酢酸(1d):中間体(1c)(540mg、1.9mmol)をMeOH(927μL、22.9mmol)に溶解した。水(1.84mL、102mmol)を添加し、続いてKOH(1.1g、18.8mmol)を添加した。反応物を130℃で3時間還流した。飽和塩化アンモニウムで混合物を250mLに希釈し、次いで洗浄した(2×100mLヘキサン)。残りの水性エマルジョンを洗浄した(2×250mL EtOAc)。EtOAc層を組み合わせ、飽和NaCl水溶液50mLで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過および濃縮すると、黄褐色固体として中間体(1d)を得た(290mg)。
【0157】
中間体(1d)(280mg、1.3mmol)をMeOH(2.50mL、61.7mmol)に溶解し、反応フラスコを窒素で洗浄してから10%Pd/C28mgを混合物に添加した。1気圧の水素下で混合物を室温で撹拌し、出発材料が消費されるまで(約24時間)HPLCにより反応を監視した。反応槽を窒素で洗浄し、次いで混合物をセライトを通して濾過し、MeOHで濯いだ。真空下で濾液を濃縮すると、黄色がかった固体として表題化合物を得た(284mg)。
【0158】
調製2
(R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニル−1−ピペラジン−1−イルエタノン
【0159】
【化24】

DCM(200mL)中の(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(10.0g、45.4mmol)の撹拌溶液に、t−ブチル1−ピペラジンカルボキシレート(8.5g、45.4mmol)を添加した。DIPEA(23.7mL、13.6mmol)およびHOBt(10.4g、68.1mmol)を混合物に添加し、続いてEDCI(10.4g、54.5mmol)を添加した。混合物を室温で12時間撹拌した。次いで混合物を1N NaOH(300mL)、1N HCl(300mL)、次いで飽和NaCl水溶液(300mL)で洗浄した。有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。20%TFA/DCMの溶液を粗材料に添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。DCM(300mL)を添加し、混合物を飽和重炭酸ナトリウム(300mL)で洗浄した。次いで有機層を除去し、MgSO上で乾燥させ、濾過した。粗材料をシリカゲルクロマトグラフィー(1%NH(水溶液)を含む10%MeOH/DCM)により精製すると、白色粉末として表題化合物を得た(9.0g、31.2mmol)。
【0160】
調製3
3−フェニルプロピオンイミド酸エチルエステル・HCl
【0161】
【化25】

3−フェニルプロピオニトリル(2.5mL、19mmol)を、エタノール(3.3mL、57mmol)およびエーテル(10mL)に溶解し、混合物を0℃に冷却した。次いで、1,4−ジオキサン中4.0MのHCl(19mL)を添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで48時間冷蔵(0〜5℃)した。混合物を40℃に加温し、窒素をバブリングして過剰のHClを除去した。溶媒の体積を真空下で減少させ、無水エーテルを添加して表題化合物の沈殿を生じさせた(3.4g、1.6mmol)。
【0162】
(実施例1)
(R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−1−[4−(1−イミノ−3−フェニルプロピル)ピペラジン−1−イル]−2−フェニルエタノン
【0163】
【化26】

3−フェニルプロピオンイミド酸エチルエステル・HCl(26mg、150mol)および(R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニル−1−ピペラジン−1−イルエタノン(43mg、150mol)を、DMF(1.0mL)中で組み合わせた。DIPEA(52μL、0.3mmol)を添加し、混合物を40℃で14時間加熱した。次いで混合物を真空下で濃縮し、逆相HPLCにより精製すると、HCl塩として表題化合物を得た(23mg、0.1mmol、純度93.3%)。MS m/z:[M+H]2633の計算値420.26;実測値420.4。
【0164】
調製4
(R)−1−(4−アミノピペリジン−1−イル)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノン
【0165】
【化27】

DCM(50mL)中の(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(1.0g、4.54mmol)の撹拌溶液に、t−ブトキシカルボニル−4−アミノピペリジン(0.9g、4.5mmol)を添加した。DIPEA(2.4mL、1.4mmol)およびHOBt(1.0g、6.8mmol)を混合物に添加し、続いてEDCI(1.0g、5.5mmol)を添加した。混合物を室温で12時間撹拌した。次いで混合物を1N NaOH(50mL)、1N HCl(50mL)、次いで飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。粗材料に20%TFA/DCMの溶液を添加し、反応物を室温で2時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。DCM(50mL)を添加し、次いで混合物を飽和重炭酸ナトリウム(50mL)で洗浄した。有機層を除去し、MgSO上で乾燥させ、濾過した。粗材料をシリカゲルクロマトグラフィー(1%NH(水溶液)を含む10%MeOH/DCM)により精製すると、白色粉末として表題化合物を得た(920mg、3.0mmol)。
【0166】
調製5
2−フェニルアセトイミド酸エチルエステル・HCl
【0167】
【化28】

ベンゼンアセトニトリル(4.4mL、38mmol)をエタノール(6.7mL、110mmol)およびエーテル(20mL)に溶解した。混合物を0℃に冷却した。次いで、1,4−ジオキサン中4.0MのHCl(38mL)を添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで48時間冷蔵(0〜5℃)した。混合物を40℃に加温し、窒素をバブリングして過剰のHClを除去した。溶媒の体積を真空下で減少させ、無水エーテルを添加して表題化合物の沈殿を生じさせた(3.7g、1.9mmol)。
【0168】
(実施例2)
N−[1−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル]−2−フェニルアセトアミジン
【0169】
【化29】

2−フェニルアセトイミド酸エチルエステル・HCl(990mg)および(R)−1−(4−アミノピペリジン−1−イル)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノン(250mg、0.8mmol)を、エタノール(15mL、0.3mmol)中で組み合わせた。DIPEA(432μL、2.5mmol)を添加し、混合物を45℃で14時間撹拌した。次いで混合物を真空下で濃縮し、逆相HPLCにより精製すると、TFA塩として表題化合物を得た(58mg、0.1mmol、純度98.8%)。MS m/z:[M+H]2633の計算値420.26;実測値420.4。
【0170】
(実施例3)
[4−(1−イミノ−4−フェニルブチル)ピペラジン−1−イル]−(9H−キサンテン−9−イル)メタノン
表題化合物は、前述の実施例において説明された手順に従い、適切な出発材料および試薬を置き換えて調製することができる。
【0171】
【化30】

(実施例4)
前述の実施例に説明された手順に従い、適切な出発材料および試薬を置き換えて、以下の構造を有する化合物4−1から4−10をTFA塩として調製した。
【0172】
【化31】

(4-1) N-[1-(2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)-ピペリジン-4-イル]-2-フェニルアセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C26H33N3O2の計算値,420.26; 実測値 420.4.
(4-2) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-(2-フルオロフェニル)アセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C26H32FN3O2の計算値,438.25; 実測値 438.2.
(4-3) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-(3-フルオロフェニル)アセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C26H32FN3O2の計算値,438.25; 実測値 438.2.
(4-4) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-(2,5-ジフルオロフェニル)アセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C26H31F2N3O2の計算値,456.24; 実測値 456.2.
(4-5) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-(4-フルオロフェニル)アセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C26H32FN3O2の計算値,438.25; 実測値 438.2.
(4-6) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C26H33N3O3の計算値,436.25; 実測値 436.2.
(4-7) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-m-トリルアセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C27H35N3O2の計算値,434.27; 実測値 434.2.
(4-8) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-p-トリルアセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C27H35N3O2の計算値,434.27; 実測値 434.2.
(4-9) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-チオフェン-2-イルアセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C24H31N3O2Sの計算値,426.21; 実測値 426.2.
(4-10) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-チオフェン-3-イルアセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C24H31N3O2Sの計算値,426.21; 実測値 426.2.
(4-11) N-[1-((R)-2-シクロペンチル-2-ヒドロキシ-2-フェニルアセチル)ピペリジン-4-イル]-2-(3-メトキシフェニル)アセトアミジン.MS m/z: [M+H]+ C27H35N3O3の計算値,450.27; 実測値 450.2.
(実施例5)
N−[1−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル]−2−フェニルアセトアミジン
表題化合物は、前述の実施例において説明された手順に従い、適切な出発材料および試薬を置き換えて調製することができる。
【0173】
【化32】

調製6
(R)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)ピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0174】
【化33】

(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(20g、90.8mmol)、(S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(18g、96.2mmol)およびトリフェニルホスフィン(24g、91.5mmol)を、THF(100mL)に溶解した。ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(19.7mL、99.9mmol)を、室温で徐々に添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。次いでEtOAcを添加し、溶液を飽和NaHCO溶液で、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層をNaSO上で乾燥させ、次いで濃縮すると、約100gの粗表題化合物を得、それ以上精製することなくこれをすぐに使用した。
【0175】
調製7
(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(R)−ピロリジン−3−イルエステル・HCl
【0176】
【化34】

(R)−3−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトキシ)ピロリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(50g)を1,4−ジオキサン150mlに溶解した。溶液を0℃に冷却し、次いで1,4−ジオキサン中4NのHCl75mlを徐々に添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。溶液を100mlに濃縮し、続いてEtOAc200mlを添加した。溶液を50℃で15分間加熱し、室温まで冷却して72時間放置した。白色固体沈殿物を濾過により単離し、単離された固体をEtOAc100mlに添加し、30分間撹拌してから再び濾過すると、白色固体として表題化合物を得た(13g)。
【0177】
(実施例6)
(R)−シクロペンチルヒドロキシ−フェニル酢酸(R)−1−(1−イミノ−3−フェニルプロピル)ピロリジン−3−イルエステル
【0178】
【化35】

3−フェニルプロピオンイミド酸エチルエステル・HCl(49.2mg)およびDIPEA(107μL、614μmol)を、((R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(R)−ピロリジン−3−イルエステル・HCl(50mg、153μmol)のDMF(1.5mL、19mmol)中溶液に添加し、混合物を80℃で一晩撹拌した。混合物を濃縮し、次いで調製HPLCにより精製すると、TFA塩として表題化合物を得た(70.9mg、純度99%)。
【0179】
MS m/z:[M+H]2632の計算値421.24;実測値421.2。
【0180】
(実施例7)
前述の実施例において説明された手順に従い、適切な出発材料および試薬を置き換えて、以下の構造を有する化合物7−1から7−2をTFA塩として調製した。
【0181】
【化36】

(7−1) (R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(R)−1−(1−イミノ−2−フェニルエチル)−ピロリジン−3−イルエステル(b=1)。MS m/z:[M+H]2530の計算値407.23;実測値407.2。
(7−2) (R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(R)−1−(1−イミノ−4−フェニルブチル)−ピロリジン−3−イルエステル(b=3)。MS m/z:[M+H]2734の計算値435.26;実測値435.2。
【0182】
アッセイ1
放射性リガンド結合アッセイ
hM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプを発現する細胞からの膜調製
クローンヒトhM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプをそれぞれ安定して発現するCHO細胞株を、10%FBSおよび250μg/mLジェネティシンを添加したHAM’s F−12からなる培地中で、コンフルエント近くまで成長させた。5%CO、37℃インキュベータ内で細胞を成長させ、dPBS中2mM EDTAで浮き上がらせた。650×gで5分間の遠心分離により細胞を回収し、細胞ペレットを−80℃(で冷凍保存するか、すぐに膜を調製した。膜調製のために、細胞ペレットを溶解緩衝液中に再懸濁させ、Polytron PT−2100組織破壊器(Kinematica AG製;20秒×2回のバースト)で均質化した。粗膜を40,000×gで15分間、4℃で遠心分離した。次いで膜ペレットを再懸濁緩衝液で再懸濁させ、再びPolytron組織破壊器で均質化した。膜懸濁液のタンパク質濃度は、Lowry,O.ら、Journal of Biochemistry 第193巻:265頁(1951年)に記載の方法により決定した。膜はすべて一定分量で−80℃で冷凍保存するか、またはすぐに使用した。調製されたhM受容体膜の一定分量は、Perkin Elmer社から直接購入し、使用するまで−80℃で保存した。
【0183】
ムスカリン受容体サブタイプhM、hM、hM、hMおよびhMに対する放射性リガンド結合アッセイ
全アッセイ量を1000μLとして、96ウェルマイクロタイタープレートで放射性リガンド結合アッセイを行った。hM、hM、hM、hMまたはhMムスカリンサブタイプを安定して発現するCHO細胞膜を、以下の特定の標的タンパク質濃度(μg/ウェル)までアッセイ緩衝液中に希釈した:hMに対しては10μg、hMに対しては10〜15μg、hMに対しては10〜20μg、hMに対しては10〜20μg、およびhMに対しては10〜12μg。アッセイプレート添加前に、Polytron組織破壊器を使用(10秒)して膜を簡単に均質化した。放射性リガンドのK値の決定のための飽和結合試験は、0.001nMから20nMの濃度範囲で、L−[N−メチル−H]スコポラミンメチルクロリド([H]−NMS)(TRK666、84.0Ci/mmol、Amersham Pharmacia Biotech社製、バッキンガムシャー州、英国)を使用して行った。試験化合物のK値の決定のための置換アッセイは、[H]−NMSにより、1nMおよび11の異なる試験化合物濃度で行った。試験化合物を、まず希釈緩衝液中40μMの濃度まで溶解し、次いで連続的に希釈緩衝液で5回希釈し、400fMから4μMの範囲の最終濃度とした。アッセイプレートへの添加順序および体積は、0.1%BSAを含むアッセイ緩衝液825μL、放射性リガンド25μL、希釈試験化合物100μL、および膜50μLであった。アッセイプレートを37℃で6時間インキュベートした。0.3%ポリエチレンイミン(PEI)中で前処理したGF/Bガラス繊維フィルタプレート(Perkin Elmer Inc.製、ウェルズリー、マサチューセッツ州)上での急速濾過により、結合反応を停止させた。フィルタプレートを洗浄緩衝液(10mM HEPES)で3回濯ぎ、未結合の放射能を除去した。次いでプレートを空気乾燥し、Microscint−20液体シンチレーション液(PerkinElmer Inc.製、ウェルズリー、マサチューセッツ州)50μLを各ウェルに添加した。次いでプレートをPerkinElmer Topcount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.製、ウェルズリー、マサチューセッツ州)で計測した。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software, Inc.製、サンディエゴ、カリフォルニア州)で一部位競合(one−site competition)モデルを使用し、結合データを非線形回帰分析により分析した。観察されたIC50値から試験化合物のK値を計算し、Cheng−Prusoff式(Cheng Y; Prusoff W.H. Biochemical Pharmacology 第22巻(第23号):3099〜108頁(1973年))を使用して放射性リガンドのK値を計算した。K値をpK値に変換して、幾何平均および95%信頼区間を決定した。次いでこれらの要約統計量を再びK値に変換してデータを報告した。
【0184】
このアッセイにおいて、K値が低いほど、試験化合物が試験された受容体に対しより高い結合親和性を有することを示している。このアッセイにおいて試験された例示的な本発明の化合物は、このアッセイにおいて、Mムスカリン受容体サブタイプに対し約100nM未満のK値を有することが判明した。より具体的には、これらの化合物は約50nM未満のK値を有し、いくつかの化合物は約10nM未満または約1.0nM未満のK値を有することが判明した。
【0185】
アッセイ2
ムスカリン受容体機能的効力アッセイ
cAMP蓄積の作動薬媒介阻害の阻止
このアッセイでは、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるホルスコリン媒介cAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を阻止する試験化合物の能力を測定することにより、試験化合物の機能的効力を決定する。
【0186】
cAMPアッセイは、製造者の指示に従い、125I−cAMPによるFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay System(NEN SMP004B、PerkinElmer Life Sciences Inc.製、ボストン、マサチューセッツ州)を使用して、放射免疫測定形式で行う。アッセイ1に記載したように、細胞をdPBSで1回濯ぎ、Trypsin−EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.53mM EDTA)で浮き上がらせた。dPBS50mL中で650×gで5分間の遠心分離を行い、分離した細胞を2回洗浄する。次いで細胞ペレットをdPBS10mLに再懸濁させ、Coulter Z1 Dual Particle Counter(Beckman Coulter社製、フラートン、カリフォルニア州)で細胞を計測する。再び細胞を650×gで5分間遠心分離し、1.6×10〜2.8×10細胞/mLのアッセイ濃度まで刺激緩衝液に再懸濁させる。
【0187】
試験化合物を、まず希釈緩衝液(1mg/mL BSA(0.1%)を添加したdPBS)中400μMの濃度まで溶解し、次いで連続的に希釈緩衝液で希釈し、100μM〜0.1nMの範囲の最終モル濃度とする。オキソトレモリンを同様に希釈する。AC活性のオキソトレモリン阻害を測定するために、ホルスコリン25μL(dPBS中に希釈して最終濃度25μMとする)、希釈オキソトレモリン25μL、および細胞50μLを、作動薬アッセイウェルに添加する。オキソトレモリン阻害AC活性を阻止する試験化合物の能力を測定するために、ホルスコリン25μLおよびオキソトレモリン(それぞれdPBS中に希釈して最終濃度25μMおよび5μMとする)、希釈試験化合物25μL、および細胞50μLを、残りのアッセイウェルに添加する。
【0188】
反応物を37℃で10分間インキュベートし、氷冷検出緩衝液100μLの添加により停止させる。プレートを密閉し、室温で一晩インキュベートし、翌日の朝、PerkinElmer TopCount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.製、ウェルズリー、マサチューセッツ州)で計測する。製造者によるユーザーマニュアルに記載のように、生成されたcAMPの量(pmol/ウェル)を、試料およびcAMP標準に対し観測された計測値に基づき計算する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software, Inc.製、サンディエゴ、カリフォルニア州)で非線形回帰一部位競合式を使用して、データを非線形回帰分析により分析する。Cheng−Prusoff式を用い、オキソトレモリン濃度−反応曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度をそれぞれKおよび[L]として使用して、Kを計算する。K値をpK値に変換して、幾何平均および95%信頼区間を決定する。次いでこれらの要約統計量を再びK値に変換してデータを報告する。
【0189】
このアッセイにおいて、K値が低いほど、試験化合物が試験された受容体においてより高い機能活性を有することを示している。例示された本発明の化合物は、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるホルスコリン媒介cAMP蓄積のオキソトレモリン阻害の阻止において、約100nM未満のK値を有することが期待される。
【0190】
作動薬媒介[35S]GTPγS結合の阻止
第2の機能アッセイでは、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるオキソトレモリン刺激[35S]GTPγS結合を阻止する化合物の能力を測定することにより、試験化合物の機能的効力を決定することができる。
【0191】
使用時に、凍結膜を解凍し、次いでアッセイ緩衝液中に希釈し、最終標的組織濃度をウェルあたり5〜10μgのタンパク質とする。Polytron PT−2100組織破壊器を使用して膜を簡単に均質化し、次いでアッセイプレートに添加する。作動薬オキソトレモリンによる[35S]GTPγS結合の刺激のEC90値(90%最大反応に効果的な濃度)を、各実験において決定する。
【0192】
オキソトレモリン刺激[35S]GTPγS結合を阻害する試験化合物の能力を決定するために、96ウェルプレートの各ウェルに、[35S]GTPγS(0.4nM)を含むアッセイ緩衝液25μL、オキソトレモリン(EC90)25μLおよびGDP(3μM)、希釈試験化合物25μL、ならびにhM受容体を発現するCHO細胞膜25μLを添加する。次いでアッセイプレートを37℃で60分間インキュベートする。PerkinElmer 96ウェル収集器を使用して、1%BSAで前処理したGF/Bフィルター上でアッセイプレートを濾過する。プレートを氷冷洗浄緩衝液で3秒×3回濯ぎ、次いで空気乾燥または真空乾燥させる。Microscint−20シンチレーション液(50μL)を各ウェルに添加し、各プレートを密閉し、トップカウンター(PerkinElmer社製)で放射能を計測する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software, Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)で非線形回帰一部位競合式を使用し、データを非線形回帰分析により分析する。Cheng−Prusoff式を用い、試験化合物の濃度−反応曲線のIC50値およびアッセイにおけるオキソトレモリン濃度をそれぞれKおよび[L]、リガンド濃度として使用して、Kを計算する。
【0193】
このアッセイにおいて、K値が低いほど、試験化合物が試験された受容体においてより高い機能活性を有することを示している。例示された本発明の化合物は、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるオキソトレモリン刺激[35S]GTPγS結合の阻止において、約100nM未満のK値を有することが期待される。
【0194】
FLIPRアッセイによる作動薬媒介カルシウム放出の阻止
タンパク質に結合するムスカリン受容体サブタイプ(M、MおよびM受容体)は、作動薬が受容体に結合すると、ホスホリパーゼC(PLC)経路を活性化する。その結果、活性化されたPLCはホスファチル(phosphatyl)イノシトールジホスフェート(PIP)をジアシルグリセロール(DAG)およびホスファチジル−1,4,5−トリホスフェート(IP)に加水分解し、一方これは細胞内貯蔵、すなわち小胞体および筋小胞体からのカルシウム放出を生じさせる。FLIPR(Molecular Devices社製、サニーベール、カリフォルニア州)アッセイは、遊離カルシウムが結合すると蛍光を発するカルシウム感受性染料(Fluo−4AM、Molecular Probes社製、ユージーン、オレゴン州)を使用することにより、この細胞内カルシウムの増加を利用する。この蛍光事象は、ヒトMおよびM、ならびにチンパンジーM受容体でクローン化された細胞の単層からの蛍光の変化を検出するFLIPRにより、リアルタイムで測定される。拮抗効力は、作動薬が媒介した細胞内カルシウムの増加を阻害する拮抗薬の能力により決定することができる。
【0195】
FLIPRカルシウム刺激アッセイでは、アッセイを行う前夜に、hM、hMおよびcM受容体を安定して発現するCHO細胞を96ウェルFLIPRプレートに播種する。播種された細胞を、Cellwash(MTX Labsystems, Inc.製)により、FLIPR緩衝液(カルシウムおよびマグネシウム不含HBSS中10mM HEPES、pH7.4、2mM塩化カルシウム、2.5mMプロベネシド)で2回洗浄し、成長培地を除去して50μL/ウェルのFLIPR緩衝液を残す。次いで、細胞を50μL/ウェルの4μM FLUO−4AM(2倍溶液を作製)で40分間、37℃、5%二酸化炭素でインキュベートする。染料インキュベーション期間の後、細胞をFLIPR緩衝液で2回洗浄し、最終体積を50μL/ウェルとする。
【0196】
拮抗効力を決定するために、EC90濃度でのオキソトレモリン刺激に対する拮抗効力を後に測定できるように、オキソトレモリンに対する細胞内Ca2+放出の用量依存性刺激をまず決定する。まず細胞を化合物希釈緩衝液で20分間インキュベートし、続いて作動薬を添加するが、これはFLIPRにより行われる。オキソトレモリンのEC90値は、式EC=((F/100−F)^1/H)EC50と併せて、以下のFLIPR測定およびデータ整理の項で詳説される方法に従い生成される。3×ECのオキソトレモリン濃度は、オキソトレモリンのEC90濃度が拮抗薬阻害アッセイプレートの各ウェルに添加されるように、刺激プレート内で調製される。
【0197】
FLIPRに使用されるパラメータは、暴露期間0.4秒、レーザ強度0.5ワット、励起波長488nm、発光波長550nmである。作動薬の添加前10秒間の蛍光の変化を測定することにより、基線を決定する。作動薬刺激後、FLIPRは1.5分の間0.5秒から1秒ごとに蛍光の変化を連続的に測定し、最大蛍光変化を捕捉する。
【0198】
蛍光の変化は、各ウェルに対し、最大蛍光から基線蛍光を差し引いたものとして表現される。GraphPad Prism (GraphPad Software, Inc.製、サンディエゴ、カルフォルニア州)での非線形回帰により、シグモイド用量反応の組み込まれたモデルを使用して、生データを薬の濃度の対数に対して分析する。拮抗薬K値は、Prismにより、Cheng−Prusoff式(Cheng&Prusoff、1973年)に従い、オキソトレモリンEC50値をK値として、およびオキソトレモリンEC90をリガンド濃度に使用することで決定する。
【0199】
このアッセイにおいて、K値が低いほど、試験化合物が試験された受容体においてより高い機能活性を有することを示している。例示された本発明の化合物は、hM受容体を安定して発現するCHO細胞における作動薬媒介カルシウム放出の阻止において、約100nM未満のK値を有することが期待される。
【0200】
アッセイ3
ラットEinthovenアッセイ
このインビボアッセイを用いて、ムスカリン受容体拮抗活性を示す試験化合物の気管支保護効果を評価する。
【0201】
すべての試験化合物を滅菌水中に希釈し、吸入経路(IH)により投薬する。ラット(Sprague−Dawley、オス、250〜350g)をLC Star Nebulizer Setから生成されガスの混合物(5%CO/95%大気)により噴射されたエアゾールに暴露する。6匹のラットを保持することができるパイ状の投薬チャンバ内で、各試験化合物溶液を10分間にわたり噴霧する。化合物の吸入後所定の時点で、Einthovenアッセイを行う。
【0202】
肺の評価の開始の30分前に、動物をイナクチン(チオブタバルビタール、120mg/kg IP)で麻酔する。生理食塩水充填ポリエチレンカテーテル(PE−50)を頸静脈に挿入し、MChの注入に使用する。次いで気管を切開し、14G針のカニューレを挿入し、肺の評価中のラットの通気に使用した。手術が完了したら、1回拍出体積1ml/体重100g(ただし2.5mlの体積を超えない)、および1分あたり90拍の速度に設定されたピストンレスピレーターを使用してラットに通気する。
【0203】
各呼吸で生じる圧力の変化を測定する。基線値を少なくとも2.5分間収集し、次いで、非累積的に2倍増分で増加させた気管支収縮剤MCh(5、10、20、40および80μg/ml)をラットに負荷する。シリンジポンプから2mL/kg/分の速度で2.5分間MChを注入する。動物は試験終了後に安楽死させる。
【0204】
処置された動物の通気圧(cmHO)の変化は、対照動物と比較したMCh反応の%阻害として表現される。このアッセイにおいて、%阻害値が高いほど、試験化合物が気管支保護効果を有することを示している。このアッセイにおいて100μg/mlの用量で試験される例示的な本発明の化合物は、35%を超える阻害を示すことが期待され、いくつかは70%を超える阻害を示すことが期待され、いくつかは90%を超える阻害を示すことが期待される。
【0205】
1.5時間ID50の決定
標準的なムスカリン拮抗薬を、ラットEinthovenアッセイにおいて投薬から1.5時間後に評価した。試験された5つの標準の効力(ID50)の順番は、イプラトロピウム(4.4μg/ml)>チオトロピウム(6μg/ml)>デス−メチル−チオトロピウム(12μg/ml)>グリコピロレート(15μg/ml)>LAS−34237(24μg/ml)と決定された。同様に試験化合物の効力を投薬から1.5時間後に決定した。
【0206】
6時間および24時間ID50の決定
標準チオトロピウムおよびイプラトロピウムを、ラットEinthovenアッセイにおいて、投薬から24時間後および/または6時間後にも評価した。イプラトロピウム(10および30μg/ml)は、その1.5時間の効力と比較して、投与から6時間後の効力が約3分の1低かった。この時点(6時間)での活性の観察される損失は、臨床における比較的短い作用持続期間と一致する。チオトロピウムは、効果の遅い発現を示し、投薬から6時間後にピーク気管支保護が達成される。その6時間および24時間の効力値は互いに有意には異ならず、1.5時間の効力と比較して約2倍高い効力であった。試験化合物の作用の発現を、6時間および24時間の効力値とともに同様に決定する。
【0207】
アッセイ4
ラット抗唾液分泌アッセイ
アッセイ3で説明したように、ラット(Sprague−Dawley、オス、250〜350g)に投薬し、麻酔し、カニューレを挿入する。所定の時点および手術後に、頭を下向きに20度の傾斜角で傾けて動物を仰向けに置く。事前に秤量されたガーゼパッドを動物の口に挿入し、ムスカリン作動薬ピロカルピン(PILO)(3mg/kg、静脈内)を投与する。PILO投与後10分間に生成された唾液を、PILO投与前後のガーゼパッドの重量を決定することにより重量測定法で測定する。抗唾液分泌効果は、対照動物と比較した唾液分泌の%阻害として表現される。
【0208】
1時間、6時間および24時間ID50の決定
ラット抗唾液分泌アッセイを拡張し、全身暴露の評価および試験化合物の肺選択性指数(LSI)の計算を行った。このモデルにおいて、投薬後1、6および24時間での標準チオトロピウムを評価した。チオトロピウムは、投薬後6時間でピロカルピン誘発性分泌の阻害に最も効力を有することが判明した。この所見は、Einthovenアッセイにおいて観察されるピーク効果と一致している。このモデルは、Rechter、「Estimation of anticholinergic drug effects in mice by antagonismagainst pilocarpine-induced salivation」Ata Pharmacol Toxicol 第24巻:243〜254頁(1996年)に記載の手順の修正版である。各前処理時間におけるビヒクル処理動物における唾液の平均重量を計算し、各用量での対応する前処理時間における唾液分泌の%阻害の算出に使用する。
【0209】
このアッセイにおいて試験される例示的な本発明の化合物は、100μg/ml未満(24時間で測定)のID50値を示すことが期待され、いくつかの化合物は30μg/ml未満のID50値、いくつかは20μg/ml未満、いくつかは15μg/ml未満の値を示すことが期待される。気管支保護ID50に対する抗唾液分泌ID50の比率を使用して、試験化合物の見かけの肺選択性指数を算出する。一般に、約5を超える見かけの肺選択性指数を有する化合物が好ましい。
【0210】
本発明の具体的な態様または実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱しない限り、様々な変更を行うことができ、または均等物で置き換えることができることが、当業者に理解される。さらに、該当する特許法および規則により許容される限り、本明細書において引用されるすべての出版物、特許および特許出願は、それぞれの文献が参照により個々に本明細書に組み込まれる場合と同程度に、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化37】

(式中、
は、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C3〜9シクロアルキル、およびアリールから選択され、
はアリールであり、
は、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか、またはRと二重結合を形成するか、または−CRが一緒になって、式:
【化38】

(式中、Aは、結合、−O−、−S−、−CH−、−CH=CH−、−CHCH−、−NH−、もしくは−N(CH)−であり、Rは、H、ハロ、−OH、−C1〜8アルキル、および−C1〜8アルコキシから選択される)の基を形成し、
Qは結合であり、X’は−N−であり、XおよびX”はそれぞれ−CH−であり、Yは−N−であり、Zは結合であるか、または、
Qは結合であり、X’は−N−であり、XおよびX”はそれぞれ−CH−であり、Yは−CH−であり、Zは−NR−であるか、または、
Qは−O−であり、X’は−CH−であり、Xは結合であり、X”は−CH−であり、Yは−N−であり、Zは結合であり、
各Rは、独立して、フルオロまたは−C1〜4アルキルであり、aは、0または1から3の整数であり、
およびRは、独立して、Hまたは−C1〜4アルキルであり、
bは1から4の整数であり、
Arは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキル、−S−C1〜4アルキル、−CONR8a8b、−NH−C(O)−C1〜4アルキル、−N−ジ−C1〜4アルキル、および−N(O)Oから独立して選択される1〜5個のR基で任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、R8aおよびR8bは、独立して、Hまたは−C1〜4アルキルであり、
およびRは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−C(O)OR、−SR、−S(O)R、−S(O)、−C(O)NRおよび−NRから独立して選択される1個から5個のR基で任意選択で置換され、各Rは、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、および−C3〜6シクロアルキルから独立して選択され、各RおよびRは、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、および−C3〜6シクロアルキルから独立して選択され、
a〜dおよびR4〜8におけるアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、およびシクロアルキル基は、1個から5個のフルオロ原子で任意選択で置換され、Ra〜dにおける各シクロアルキルは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1〜4アルキル)、−S(C1〜4アルキル)、−S(O)(C1〜4アルキル)、−S(O)(C1〜4アルキル)、−NH、−NH(C1〜4アルキル)および−N(C1〜4アルキル)から独立して選択される1個から3個の置換基で任意選択で置換され、各アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、1個から5個のフルオロ置換基で任意選択で置換され、−(CH−基は、−C1〜2アルキルおよび−OHから独立して選択される1個または2個の置換基で任意選択で置換されている)の化合物、
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
が、−C3〜9シクロアルキルおよびアリールから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が−C0〜1アルキレン−OHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
−CRが一緒になって、式:
【化39】

の基を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Qが結合であり、X’が−N−であり、XおよびX”がそれぞれ−CH−であり、Yが−N−であり、Zが結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Qが結合であり、X’が−N−であり、XおよびX”がそれぞれ−CH−であり、Yが−CH−であり、Zが−NR−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
がHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Qが−O−であり、X’が−CH−であり、Xが結合であり、X”が−CH−であり、Yが−N−であり、Zが結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
aが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
bが1から3の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Arがアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Arがヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Arがチエニルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Arが、非置換であるか、または1個から2個のR基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
【化40】

から選択される式を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
【化41】

から選択される式を有する、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
式:
【化42】

(式中、Rは−C3〜9シクロアルキルであり、Rはアリールであり、Rは−C0〜1アルキレン−OHであるか、または−CRが一緒になって、式:
【化43】

の基を形成し、bは1から3の整数であり、Arは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、および−O−C1〜4アルキルから独立して選択される1個または2個のR基で任意選択で置換されたフェニルまたはチエニルである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
式:
【化44】

(式中、Rは−シクロペンチルであり、Rはフェニルであり、Rは−OHであり、Yは−CH−でZは−NH−であるか、またはYは−N−でZは結合であり、bは1から2の整数であり、Arは、ハロおよび−C1〜4アルキルから独立して選択される1個または2個のR基で任意選択で置換されたフェニルである)を有する、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
式:
【化45】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
式:
【化46】

(式中、Rは−シクロペンチルであり、Rはフェニルであり、Rは−OHであり、bは1から3の整数である)を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
微粉化形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項25】
第2の治療薬剤をさらに含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記第2の治療薬剤が、βアドレナリン受容体作動薬、ステロイド性抗炎症薬、ホスホジエステラーゼ−4阻害薬、およびこれらの組合せから選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
βアドレナリン受容体作動薬およびステロイド性抗炎症薬を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物を調製するための方法であって、
(a)アミド結合形成条件下で化合物(1)および化合物(2)をカップリングし、化合物(3)を形成するステップ:
【化47】

または、アミド結合形成条件下で化合物(1)および化合物(4)をカップリングし、化合物(5)を形成するステップ:
【化48】

または、化合物(1)および化合物(6)を光延カップリングもしくはエステル交換し、化合物(7)を形成するステップ:
【化49】

(式中、Pはアミノ保護基である)と、
(b)化合物(3)もしくは化合物(5)もしくは化合物(7)を化合物(8)と反応させ、式I:
【化50】

の化合物を得るステップと、
を含む方法。
【請求項29】
請求項28の方法により調製される化合物。
【請求項30】
医薬の製造のための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項31】
前記医薬が、慢性閉塞性肺疾患の処置、または喘息の処置、または気管支拡張作用の生成に有用である、請求項30に記載の使用。

【公表番号】特表2011−506477(P2011−506477A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538197(P2010−538197)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086645
【国際公開番号】WO2009/079392
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】