説明

メルカプト官能化ラジカル重合可能モノマーを有する平版印刷版前駆体

a) 処理されていないか又は前処理されている基板、及びb) (i)水性アルカリ性現像剤中に可溶性又は膨潤性の1種以上の高分子バインダー;(ii)1つ以上の非芳香族C-C二重結合と1つ以上のSH基とを分子中に含む1種以上のラジカル重合可能モノマー及び/又はオリゴマー;及び(iii)ラジカル重合のための輻射線感受性開始剤又は開始剤系を含む輻射線感受性塗膜を含んで成る平版印刷版前駆体であって、成分(ii)が式(I)、[ここで当該式中、各R1a、R1b、及びR1cは独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C8アルケニル、アリール、ハロゲン、CN及びCOOR1dから選択され、ここでR1dは、H、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、又はアリールであり;そして、Zは脂肪族、複素環式又は複素芳香族スペーサー、又はこれらのうち2つ又は3つ以上の組み合わせであり、Zは随意選択的に、1つもしくは2つ以上の追加のSH基、及び/又は1つもしくは2つ以上の追加の非芳香族C-C二重結合を含むことができ;そして、各Z1は独立して、単結合、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、(Ih)、(Ij)、(Ik)、(Im)、(In)、(Io)、(Ip)、(Iq)、(Ir)、(Is)、(It)、(Iu)、(Iv)、から選択される、(ここで式中、R2a、R2b、及びR2cは独立して、H、C1-C6アルキル、及びアリールから選択され、Z2は、単結合、O、S及びNR2cから選択され、Z3は、Zに結合された単結合であり、bは、整数1〜10であり、そしてcは、整数1〜3である)]を有する平版印刷版前駆体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型平版印刷版前駆体、具体的には、メルカプト官能化ラジカル重合可能モノマーを含む輻射線感受性塗膜を有する前駆体に関する。本発明はさらに、これらを製造する方法、並びにこのような前駆体の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷の技術分野は、油及び水の不混和性に基づく。油性材料又は印刷インクは、好ましくは画像領域によって受容され、そして水又はファウンテンは、好ましくは非画像領域によって受容される。適切に生成された表面が水で湿潤され、そして印刷インクが塗布されると、背景又は非画像領域が水を受容し、印刷インクを弾くのに対して、画像領域は印刷インクを受容し、水を弾く。次いで画像領域内の印刷インクは材料、例えば紙や布地などの被画像形成面に移される。しかし、一般に、印刷インクは先ず、ブランケットと呼ばれる中間材料に移され、次いで、ブランケットは、被画像形成面上に印刷インクを移す。この技術はオフセット平版印刷と呼ばれる。
【0003】
しばしば使用される平版印刷版前駆体のタイプ(これと関連して、印刷版前駆体という用語は、露光及び現像の前のコートされた印刷版を意味する)は、アルミニウムを基材とする基板上に塗布された感光性塗膜を含んで成る。塗膜は輻射線に対して反応することができ、これにより露光済部分が可溶性になって、この部分が現像プロセス中に除去されるようになっている。このような印刷版はポジ型と呼ばれる。他方において、塗膜の露光済部分が輻射線によって硬化される場合には、ネガ型と呼ばれる。両方の事例において、残りの画像領域は印刷インクを受容、すなわち親油性であり、非画像領域(背景)は水を受容、すなわち親水性である。画像領域と非画像領域との区別化は露光中に行われる。
【0004】
コンベンショナルな印刷版の場合、転写されるべき情報を含有するフィルムを、真空下で印刷版前駆体に取り付けることにより、良好な接触を保証する。次いで、輻射線源によって印刷版に露光を施す。輻射線源の一部はUV線から成る。ポジティブ印刷版前駆体が使用される場合、印刷版上の画像に対応するフィルム上の領域は、光が印刷版に達しないように不透明であり、これに対して、非画像領域に対応するフィルム上の領域は透明であり、そして光が塗膜を透過するのを可能にし、塗膜の溶解度は増大する。ネガティブ印刷版の場合、反対のことが行われる:印刷版上の画像に対応するフィルム上の領域は透明であり、これに対して、非画像領域は不透明である。透明フィルム領域の下側の塗膜は、入射光により硬化され、これに対して、光によって影響されない領域は現像中に除去される。従って、ネガ型印刷版の光硬化済表面は、親油性であり、印刷インクを受容し、これに対して、現像剤によって除去される塗膜でコートされていた非画像領域は、不感脂化され、従って親水性である。
【0005】
数十年間にわたって、ポジ型の商業的な印刷版前駆体は、アルカリ可溶性フェノール樹脂及びナフトキノンジアジド誘導体を使用することを特徴としており、画像形成はUV線で行われた。
【0006】
平版印刷版前駆体の分野における最近の開発は、レーザーによって直接的にアドレスすることができる印刷フォーム前駆体の製造に適した輻射線感受性組成物をもたらした。デジタル画像形成情報は、コンベンショナルな印刷版において一般的であるような、フィルムを使用することなしに、印刷フォーム前駆体上に画像を運ぶために使用することができる。しばしば、これらのデジタル・アドレス可能な前駆体は、IRレーザーによって画像形成されるIR感受性前駆体である。
【0007】
UV感受性画像形成性要素、例えば平版印刷版前駆体は、例えば、独国特許第44 18 645号明細書、同第195 25 050号明細書、及び欧州特許第0 838 478号明細書に記載されている。
【0008】
IR感受性画像形成性要素に関しては、例えば独国特許第199 06 823号明細書、欧州特許出願公開第0 672 544号明細書、同第1 129 845号明細書、米国特許第5,491,046号明細書及び同第6,391,524号明細書を参照されたい。
【0009】
メルカプト化合物、例えば3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプトベンゾキサゾール、2-メルカプトベンズチアゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプト-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール又は5-メルカプト-1-メチル-1H-テトラゾールを、輻射線感受性塗膜中の連鎖移動剤として使用できることが知られている。輻射線感受性塗膜はUVからIRの波長範囲内において感受性であり、さらに、ラジカル重合可能モノマーを含む(例えば米国特許第4,410,621号、同第4,937,159号、欧州特許第0 889 363号明細書、米国特許出願公開第2002/0025489号明細書を参照)。これら全ての事例において、メルカプト化合物及びフリーラジカル重合可能モノマーが組成物中の別個の成分として使用される組成物が記載されている。
【0010】
米国特許第6,569,603号明細書に記載された感光性組成物の高分子バインダーは、メルカプト置換型コモノマーを使用して製造される。画像形成性要素、例えば印刷版前駆体の輻射線感受性塗膜中の重合可能モノマー成分として、このようなメルカプト置換型モノマーを使用することについては記載されていない。
【0011】
米国特許第5,115,032号明細書に記載された低臭気化合物は、チオールと多官能性C-C不飽和型化合物とを反応させることによって合成され、多官能性C-C不飽和型化合物のC-C二重結合は、異なる反応度を示さなければならない。これらの化合物は次いで、ペイント及び接着剤などにおいて使用される。
【0012】
米国特許第6,562,543号明細書には、環内に二重結合を有する1つ又は2つのN含有複素環を含む化合物、一次、二次又は三次アミノ基を有する化合物、及びチオール基を有する化合物は、有機ホウ酸塩を開始剤として含む輻射線感受性組成物のための安定剤として使用され、安定剤は、ホウ酸塩の熱分解を防止する。式R5R6R7Nのアミノ基、又は式R8-SXのチオール基を有する安定剤中、R5〜R8は、所望の通りに選択することができる。輻射線感受性に関する情報は提供されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、顕著に改善された輻射線感受性を示す平版印刷版前駆体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、
a) 処理されていないか又は前処理されている基板、及び、
b) (i)水性アルカリ性現像剤中に可溶性又は膨潤性の1種以上の高分子バインダー;
(ii)1つ以上の非芳香族C-C二重結合と1つ以上のSH基とを分子中に含む1種以上のラジカル重合可能モノマー及び/又はオリゴマー;及び
(iii)ラジカル重合のための輻射線感受性開始剤又は開始剤系
を含む輻射線感受性塗膜
を含んで成る平版印刷版前駆体であって、
成分(ii)が下記式(I):
HS-Z-(Z1-CR1a=CR1bR1c)c (I)
[上記式中、各R1a、R1b、及びR1cは独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C8アルケニル、アリール、ハロゲン、CN及びCOOR1dから選択され、ここでR1dは、H、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、又はアリールであり;そして、
Zは脂肪族、複素環式又は複素芳香族スペーサー、又はこれらのうち2つ又は3つ以上の組み合わせであり、Zは随意選択的に、1つもしくは2つ以上の追加のSH基、及び/又は1つもしくは2つ以上の追加の非芳香族C-C二重結合を含むことができ;そして、各Z1は独立して、単結合、
【0015】
【化1】

【0016】
から選択される
(上記式中、R2a、R2b、及びR2cは独立して、H、C1-C6アルキル、及びアリールから選択され、
Z2は、単結合、O、S及びNR2cから選択され、
Z3は、Zに結合された単結合であり、
bは、整数1〜10であり、そして
cは、整数1〜3である)]
を有する平版印刷版前駆体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による平版印刷版前駆体を以下に、より詳細に説明する。
【0018】
特に断りのない限り、本発明において使用される「アルキル基」という用語は、炭素原子数が好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜10、最も好ましくは1〜6の直鎖、分枝状又は環状飽和型炭化水素基を意味する。アルキル基は随意選択的に、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NO2、NRIV2、COORIV、SRIV、及びORIV(RIVは独立して水素原子又はアルキル基を表す)から選択された1つ又は2つ以上の置換基(好ましくは0又は1つの置換基)を含むことができる。上記定義はまた、アラルキル基及びアルコキシ基のアルキル単位に当てはまる。
【0019】
特に断りのない限り、本発明において使用される「アルケニル基」という用語は、炭素原子数が好ましくは2〜18、特に好ましくは2〜10、最も好ましくは2〜6の、C-C二重結合を有する直鎖状、分枝状又は環状炭化水素基を意味する。アルケニル基は随意選択的に、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NO2、NRIV2、COORIV、SRIV、及びORIV(RIVは独立して水素原子又はアルキル基を表す)から選択された1つ又は2つ以上の置換基(好ましくは0又は1つの置換基)を含むことができる。上記定義はまた、アルケンジイル基に当てはまる。
【0020】
特に断りのない限り、本発明において使用される「アルキニル基」という用語は、炭素原子数が好ましくは2〜18、特に好ましくは2〜10、最も好ましくは2〜6の、C-C三重結合を有する直鎖状、又は分枝状の炭化水素基を意味する。アルケニル基は随意選択的に、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NO2、NRIV2、COORIV、SRIV、及びORIV(RIVは独立して水素原子又はアルキル基を表す)から選択された1つ又は2つ以上の置換基(好ましくは0又は1つの置換基)を含むことができる。
【0021】
特に断りのない限り、本発明において使用される「アリール基」という用語は、炭素原子数が好ましくは6〜14の、1つ又は2つ以上の縮合環を有する芳香族炭素環式基を意味する。アルキニル基は随意選択的に、例えばハロゲン原子、アルキル基、CN、NO2、NRIV2、COORIV、SO3H、ORIV及びSRIV(各RIVは独立して水素及びアルキル基から選択される)から選択された1つ又は2つ以上の置換基(好ましくは0〜3つ)を含む。上記定義はアラルキル基のアリール単位にも当てはまる。例は、フェニル、トリル、キシリル、2-又は4-アルキルフェニル、例えば2-メチルフェニル、4-エチルフェニル及び4-t-ブチルフェニル、2-又は4-アルコキシフェニル、例えば2-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、4-ジアルキルアミノフェニル、ナフチル及び4-アルキルナフチルを含む。好ましい例は、随意選択的に置換することができるフェニル基及びナフチル基である。上記定義はアリーレン基(すなわち二価芳香族基)にも当てはまり、その例は、1,4-フェニレン、3-メチル-1,4-フェニレン、2-メトキシ-1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、4-シアノ-1,3-フェニレン、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン、4-ジメチルアミノ-1,5-ナフチレン、及び9,10-フェナントレニレン(特に好ましいのは、1,4-フェニレン及び1,3-フェニレン)である。
【0022】
特に断りのない限り、本発明において使用される「複素環式基」という用語は、飽和型又は不飽和型(非芳香族)環式基であって、環内の1つ又は2つ以上のC原子が、O, S, Se, Te及びN、好ましくはO, S及びNから選択されたヘテロ原子で置換され、好ましくは1つ又は2つのC原子が置換されている基を意味する。好ましくは、複素環式基は5又は6員環である。複素環式基は随意選択的に、1つ又は2つ以上の置換基(C原子及び/又はN原子に結合されている)を含むことができる。好ましくは、複素環式基は無置換型であり、又は1つの置換基を含む。任意の置換基は好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、CN、NO2、NRIV2、ORIV及びSRIV(各RIVは独立して水素及びアルキル基から選択される)から選択される。複素環式基の例は、ピペリジル、ピペラジニル、テトラヒドロキノリニル、ピロリジル、テトラヒドロフルフリル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル及びテトラヒドロチオフェニルを含む。
【0023】
特に断りのない限り、本発明において使用される「複素芳香族基」という用語は、アリール基であって、1つ又は2つ以上の環炭素原子がO, S, Se, Te及びN、好ましくはO, S及びNから選択されたヘテロ原子で置換され、好ましくは1つ、2つ、又は3つの炭素原子が置換されている基を意味する。複素芳香族基は随意選択的に、1つ又は2つ以上の置換基を含むことができる。置換基は好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、CN、NRIV2、COORIV、ORIV及びSRIVから(特に好ましくはアルキル基、ORIV及びSRIVから)選択され、各RIVは独立して水素及びアルキルから選択される。置換基はC原子及び/又はN原子に結合することができる。複素芳香族基の例は、イミダゾリル、1,2,4-トリアゾリル、ピラゾリル、1,3-チアゾリル、ピリジル、キノリニル、ピリミジル、1,3,4-チアジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,3,5-トリアジニル、ベンズイミダゾリル、アクリジニル、フラニル及びチエニルを含む。
【0024】
寸法安定性のある板又はフォイル形材料が、平板印刷基板として好ましく用いられる。平版印刷版のための基板として当業者に知られている寸法安定性のある板又はフォイル形材料が、リソグラフィ基板として用いられる。このような基板の例は、紙、プラスチック材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)でコート紙、金属板又はフォイル、例えばアルミニウム(アルミニウム合金を含む)、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリビニルアセテートから形成されたプラスチックフィルム、及び、紙又はプラスチックフィルム及び上記金属のうちの1つから形成された積層材料、又は、蒸着によって金属化された紙/プラスチックフィルムを含む。これらの基板のうち、アルミニウム板又はフォイルが特に好ましい。それというのも、これは顕著な寸法安定度を示し、低廉であり、そしてさらに、塗膜に対し優れた接着力を示すからである。さらに、複合フィルムを使用することもできる。複合フィルムの場合、アルミニウム・フォイルが、ポリエチレンテレフタレート・フィルム上に積層されている。
【0025】
金属基板、具体的にはアルミニウム基板に、好ましくは表面処理、例えば乾燥状態におけるブラッシング又は研磨剤懸濁液を用いたブラッシングによる砂目立て処理、又は例えば塩酸電解質による電気化学砂目立て処理、及び随意選択的に陽極処理が施される。
【0026】
さらに、砂目立て処理され、そして随意選択的に硫酸又はリン酸中で陽極処理されている金属基板の表面の親水性を改善するために、金属基板には、例えばケイ酸ナトリウム、フッ化カルシウムジルコニウム、ポリビニルホスホン酸又はリン酸の水溶液で後処理を施すことができる。本発明の範囲内で、「基板」という用語は、処理されていない基板及び前処理された基板、例えば表面上に親水性化用層を示す前処理された基板の両方を含む。
上述の基板前処理の詳細は当業者によく知られている。
【0027】
水性アルカリ性現像剤中に可溶性又は膨潤性の高分子バインダーは、輻射線感受性塗膜の必須成分である。輻射線感受性組成物の技術分野において知られた基本的には全てのポリマー又はポリマー混合物を、輻射線感受性塗膜のための高分子バインダーとして使用することができる。水中又は水性アルカリ性溶液中に可溶性又は膨潤性の線状有機ポリマーが特に好適である。好適なバインダーが例えば欧州特許出願公開第170 123号明細書に記載されている。アクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、イタコン酸コポリマー、クロトン酸コポリマー、マレイン酸コポリマー、マレイン酸の部分エステル化コポリマー、及び酸性セルロース誘導体が、特に好適である。好ましくは、ポリマーの重量平均分子量は10,000〜1,000,000である(GPCによって測定)。印刷プロセス中のインクの受容に関して発生し得る問題を考慮すると、使用されるポリマーの酸価は>70 mg KOH/gであるか、或いは、ポリマー混合物が使用される場合、個々の酸価の相加平均は>70 mg KOH/gである。酸価が>110 mg KOH/gであるポリマー又はポリマー混合物がより好ましく、酸価が140〜160 mg KOH/gであることが特に好ましい。しかし、酸価を有しない高分子バインダーを使用することもできる。このようなポリマーは例えば米国特許出願公開第2003/0124460号明細書に記載されている。輻射線感受性塗膜中の高分子バインダーの含有率は、乾燥層重量を基準として、好ましくは25〜60 wt%、より好ましくは30〜45 wt%を占める。
【0028】
もちろん、高分子バインダーの混合物を使用することもでき、この場合、所与の量は、高分子バインダーの合計量を意味する。
【0029】
高分子バインダーは官能基を含むことができるが、SH基は含まない。ノボラックは水性アルカリ性現像剤中に可溶性ではあるが、高分子バインダーとしては特に好適というわけではない。
【0030】
塗膜が、少なくとも1つの非芳香族(すなわちラジカル重合可能な)C-C二重結合と少なくとも1つのSH基とを分子中に含む1種以上のラジカル重合可能化合物を含む(以下、単に「SHモノマー」とも呼ぶ)ことが本発明にとって必須であり、この化合物は、下記式(I)
HS-Z-(Z1-CR1a=CR1bR1c)c (I)
によって表される。
【0031】
上記式中、各R1a、R1b、及びR1cは独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C8アルケニル、アリール、ハロゲン、CN及びCOOR1dから選択され、R1dは、H、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、又はアリールであり;そして、
Zは脂肪族、複素環式又は複素芳香族スペーサー、又はこれらのうち2つ又は3つ以上の組み合わせであり、Zは随意選択的に、1つもしくは2つ以上の追加のSH基、及び/又は1つもしくは2つ以上の追加の非芳香族C-C二重結合を含むことができ;そして、各Z1は独立して、単結合、
【0032】
【化2】

【0033】
から選択され、
上記式中、R2a、R2b、及びR2cは独立して、H、C1-C6アルキル、及びアリールから選択され、
Z2は、単結合、O、S及びNR2cから選択され、
Z3は、Zに結合された単結合であり、
bは、整数1〜10であり、そして
cは、整数1〜3である。
cに応じて、Zは二価、三価又は四価基を表す。
【0034】
R1aは好ましくは、H、C1-C6アルキル、又はCOOR1dから選択され、そして特に好ましくは、R1aはH、メチル又はCOOHを表す。
【0035】
R1b及びR1cは独立して、好ましくは、H、C1-C6アルキル、又はCOOR1dであり、特に好ましくはH、メチル又は-COOCH3を表す。
R1dは好ましくは、H、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、特に好ましくは水素、メチル又は-CH2-CH=CH2である。
【0036】
Z1は好ましくは単結合、Z3-(CR2aR2b)b(b=1)、
【0037】
【化3】

【0038】
特に好ましくは単結合、-CH2-又は
【0039】
【化4】

【0040】
である。
【0041】
Zは好ましくは、1,3,4-チアジアゾール基(c=1である場合、式(I)に示されたSH基とZ1とは、好ましくはチアジアゾール環内の2,5位置にある)、1,2,4-トリアゾール基(c=1である場合、式(I)に示されたSH基とZ1とは、好ましくはトリアゾール環内の3,5位置にある)、又は1,3,5-トリアジン基(c=1である場合、式(I)に示されたSH基とZ1とは、好ましくはトリアジン環内の2,4位置にあり;c=2である場合、式(I)に示されたSH基と2つの基Z1とは、トリアジン環内の2,4,6位置にある)であり、これらの化合物のうち、1,3,4-チアジアゾール基又は1,3,5-トリアジン基が特に好ましく、SHとZ1との結合部位は上記の通りである。
【0042】
R2a及びR2bは独立して、好ましくはH、C1-C3アルキル又はフェニル、特に好ましくは水素又はメチルである。
R2cは好ましくは、水素、C1-C3アルキル又はフェニル、特に好ましくは水素又はメチルである。
【0043】
bは好ましくは1〜6、特に好ましくは1又は2である。
cは好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。
【0044】
一つの態様によれば、式(I)の化合物は、全部で2つのSH基と、1つの非芳香族C-C二重結合とを含む。第2のSH基は好ましくは、一般式(I)のZ単位内にある。Zは、SHで置換された1,3,5-トリアジニルを表すことが特に好ましく、この結果、全部で2つのSH基を有する式(I)の化合物をもたらす。
【0045】
別の態様によれば、式(I)の化合物は、SH基と、2つ又は3つ以上の非芳香族のラジカル重合可能なC-C二重結合とを含む。式(I)で示されたものに対して追加の非芳香族のラジカル重合可能なC-C二重結合が単位Z内にあるか、又は基R1a、R1b及びR1cのうちの1つがCOOR1d(R1dはC2-C8アルケニルである)を表すか、又は式(I)内のcは2又は3を表すことが可能である。Zが、非芳香族C-C二重結合を有する置換基を含む1,3,5-トリアジニルを表すことが特に好ましい。
【0046】
SHモノマーの具体例は下記の通りである:
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
2-チオ(4-メチル-クロトナト)-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン
2,4-ジ-チオ(4-エテニル)ベンジル-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン
2-チオ(4-メタクロイルメチレン)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
3-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール。
【0047】
SHモノマーは、輻射線感受性塗膜の乾燥層重量を基準として、好ましくは10〜55 wt.%、特に好ましくは15〜35 wt.%の量で存在する。異なるSHモノマーの混合物が使用される場合、所与の量はSHモノマーの合計量を意味する。
【0048】
随意選択的に、SHモノマーに加えて、輻射線感受性組成物は、SH基を含有しない、ラジカル重合可能なC-C二重結合を有する更なるモノマー及び/又はオリゴマーを含むことができる。
【0049】
ラジカル重合可能であり、そして1つ以上のC-C二重結合又は三重結合を含む、C-C二重結合又は三重結合を有する全てのモノマー及びオリゴマーは、SH基を含まない任意のC-C不飽和型モノマー/オリゴマーとして使用することができる。このような化合物は当業者によく知られており、そして特定の制限なしに本発明に使用することができる。モノマー、オリゴマー又はプレポリマーの形態の、1つ又は2つ以上の不飽和基を有するアクリル酸及びメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸及びフマル酸のエステルが好ましい。これらは固体又は液体の形態で存在してよく、固体及び高粘性形態が好ましい。モノマーとして適した化合物は、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート及びメタクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート及びメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート及びメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びメタクリレート、又はテトラエチレングリコールジアクリレート及びメタクリレートを含む。好適なオリゴマー及び/又はプレポリマーは、例えばウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート、又は不飽和型ポリエステル樹脂を含む。
【0050】
他の好適な不飽和型ラジカル重合可能化合物は、例えば不飽和型アミド、例えば1,6-ヘキサメチレン-ビス-アクリルアミド、ビニルエステル、例えばジビニルスクシネート又はジビニルフタレート、スチレン、ジビニルスチレン又はこれらの誘導体、N-ビニルモノマー、例えばN-ビニルカルバゾール又はN-ビニルピロリドンである。
【0051】
モノマー及び/又はオリゴマーに加えて、主鎖又は側鎖内にラジカル重合可能なC-C二重結合を含むポリマーを使用することもできる。その例は、無水マレイン酸オレフィン・コポリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物;アリルアルコールエステル基を含むポリエステル;高分子ポリアルコールとイソシアナト(メタ)アクリレートとの反応生成物;不飽和型ポリエステル;(メタ)アクリレートを末端基とするポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド及びポリエーテルを含む。この関連において、接頭辞「(メタ)」は、アクリル酸及びメタクリル酸双方の誘導体を使用できることを示す。
【0052】
SH基を含まない追加の好適なC-C不飽和型ラジカル重合可能化合物は、例えば欧州特許出願公開第176 007号明細書に記載されている。
【0053】
SH基を含まない随意選択のラジカル重合可能モノマー/オリゴマーは、輻射線感受性塗膜の乾燥層重量を基準として、好ましくは20〜70 wt.%、特に好ましくは30〜50 wt.%の量で存在する。SH基を含まない異なるSHモノマーの混合物が使用される場合、所与の量はこれらのモノマーの合計量を意味する。
【0054】
SH基を含まない追加のC-C不飽和型ラジカル重合可能化合物が使用される場合、SH不飽和型モノマーは、輻射線感受性塗膜の乾燥層重量を基準として、好ましくは2〜35 wt.%、特に好ましくは5〜15 wt.%で存在する。
【0055】
別の必須成分として、本発明の平版印刷版前駆体の輻射線感受性塗膜は、照射時にSHモノマー、及び、任意に存在可能な追加のラジカル重合可能モノマーのラジカル重合を開始することができる、開始剤又は開始剤系を含む。本発明による前駆体がUV線、可視線(VIS)、又はIR線のいずれによって画像形成され得るかは、開始剤又は開始剤系のタイプに依存する。
【0056】
UV線の吸収時にフリーラジカルを直接的に形成する開始剤が、当業者によく知られており、これらは例えばK.K. Dietliker;「Chemistry & Technology of UV&EB formulation for coatings, inks & prints」、第3巻(SITA Technology, London (1991))に記載されている。開始剤は例えばオキシムエーテル及びオキシムエステル、ベンゾイン及びベンゾインエーテル、α-ヒドロキシ又はα-アミノアセトフェノン、過酸化物(例えば有機過酸化物型アクチベーターとして欧州特許出願公開第035 435号明細書に挙げられているもの)、アシルホスフィンオキシド及びジアシルホスフィンオキシドを含む。
【0057】
本発明の範囲において、
(a) UV、VIS又はIR線を吸収するが、しかしそれ自体でフリーラジカルを形成することはできない増感剤、及び
(b) UV、VIS又はIR線それ自体を吸収することは本質的にできないが、しかし増感剤と一緒にフリーラジカルを形成する共開始剤
を含む開始剤系が特に好ましい。
【0058】
本発明において、これらの開始剤系は2つの群に分けられる。すなわち、増感剤が波長750超〜1,200 nmの輻射線を吸収する開始剤系(短くIR吸収剤とも呼ぶ)、及び、開始剤が300〜750 nmの輻射線を吸収する開始剤系である。前者の群の開始剤系が使用される場合、IR感受性要素が得られるのに対して、後者の群の開始剤系を使用すると、UV感受性又はVIS感受性要素がもたらされる。
【0059】
最適な増感剤量は、種々のファクター、例えば放射波長における減衰係数、又は輻射線源の放射波長、輻射線感受性要素の輻射線感受性層の厚さ及びそのモル質量に依存する。典型的には、これらは、輻射線感受性塗膜の乾燥層重量に基づいて、0.5〜15 wt.%の量で使用される。これらの値は両群の開始剤系に当てはまる。各開始剤系は、増感剤(Sens)と共開始剤(Coinit)とのモル比(nM = Mol Sens : Mol Coinit)の最適値を有する。このモル比は通常0.1〜2である。
【0060】
1,4-ジヒドロピリジン、オキサゾール、ビスオキサゾール及び類似体、クマリン及びメタロセンを、例えばUV又はVIS吸収性増感剤として使用することができる。このような増感剤は、例えば独国特許出願公開第42 17 495号明細書、独国特許第44 18 645号明細書、独国特許第3 801 065号明細書、欧州特許出願公開第1 041 074号明細書、及びDD 287 796 Aに記載されている。
【0061】
1,4-ジヒドロピリジン・タイプのUV又はVIS増感剤として、好ましくは式(II)の化合物が使用される。
【0062】
【化5】

【0063】
上記式中、R1は、水素原子、-C(O)OR7、随意選択的に置換型のアルキル基、随意選択的に置換型のアリール基、及び随意選択的に置換型のアラルキル基から選択され、
R2及びR3は独立して、随意選択的に置換型のアルキル基、随意選択的に置換型のアリール基、CN及び水素原子から選択され、
R4及びR5は独立して、-C(O)OR7、-C(O)R7、-C(O)NR8R9、及びCNから選択され、
又は、R2とR4とが結合して、随意選択的に置換型のフェニル環又は5〜7員炭素環又は複素環を形成し、単位
【0064】
【化6】

【0065】
は、該ジヒドロピリジン環の位置5に隣接する該炭素環又は該複素環内に存在し、そして、該炭素環又は該複素環は随意選択的に追加の置換基を含み、
又は、R2及びR4、並びにR3及びR5は、随意選択的に置換型のフェニル環又は5〜7員炭素環又は複素環を形成し、単位
【0066】
【化7】

【0067】
は、該ジヒドロピリジン環の位置3及び5に隣接する該炭素環又は該複素環内に存在し、そして、該炭素環又は該複素環は随意選択的に追加の置換基を含み、
又は、R2/R4対、及びR3/R5対のうちの一方は、5〜7員炭素環又は複素環を形成し、単位
【0068】
【化8】

【0069】
は、該ジヒドロピリジン環の位置5又は3に隣接する該炭素環又は該複素環内に存在し、そして、該炭素環又は該複素環は随意選択的に追加の置換基を含み、そして他方の対は、随意選択的に置換型のフェニル環を形成し、
又は、R2及びR1、又はR3及びR1は、5〜7員複素環を形成し、該複素環は随意選択的に、1つ又は2つ以上の置換基を含むことができ、そして該窒素原子に加えてこれを該1,4-ジヒドロピリジン環と共有し、随意選択的に、追加の窒素原子、-NR13基、-S-又は-O-を含み、
R13は、水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基から選択され、
R6は、随意選択的にハロゲン原子又は-C(O)基で置換されたアルキル基、随意選択的に置換型のアリール基、随意選択的に置換型のアラルキル基、随意選択的に置換型の複素環式基、及び基
【0070】
【化9】

【0071】
(Yはアルキレン又はアリーレン基である)から選択され、
【0072】
R7は、水素原子、アリール基、アラルキル基又はアルキル基であり、該アルキル基、及び該アラルキル基のアルキル単位は随意選択的に、1つ又は2つ以上のC-C二重結合及び/又はC-C三重結合を含み、
そして、R8及びR9は独立して、水素原子、随意選択的に置換型のアルキル基、随意選択的に置換型のアリール基、及び随意選択的に置換型のアラルキル基から選択される。
好ましい態様によれば、R1は、水素原子である。
【0073】
R2とR3とが隣接置換基と環を形成しない場合、これらは好ましくは独立して、C1-C5アルキル基又はアリール基から選択される。
【0074】
R4とR5とが隣接置換基と環を形成しない場合、これらは好ましくは独立して、-C(O)OR7から選択される。
【0075】
R6は好ましくは、C1-C5アルキル基又はアリール基から選択される。
R7は好ましくは、C1-C5アルキル基から選択され、そしてR6がメチル基を表すことが特に好ましい。
【0076】
一つの態様によれば、R2/R4及びR3/R5による1,4-ジヒドロピリジン環の置換は対称的であり、すなわち、R2=R3及びR4=R5である。
【0077】
好ましい態様によれば、R2及びR3は独立して、随意選択的に置換型のアルキル基、随意選択的に置換型のアリール基、CN及び水素原子から選択され、そしてR4及びR5は独立して、-C(O)OR7、-C(O)R7、-C(O)NR8R9、及びCNから選択される。
【0078】
具体的な1,4-ジヒドロピリジン誘導体は、次の
【0079】
式(IIa)
【化10】

【0080】
(上記式中、R1及びR6は上に定義された通りであり、
基R8a〜R8d及びR9a〜R9dは独立して、水素原子、アルキル基及びアリール基から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R9又R8は、飽和型又は不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもでき、
各Uは独立して、CR132、O、S及びNR13から選択され、そして
各R13は独立して、水素原子、アルキル、アラルキル又はアリール基を表す)、
【0081】
式(IIb)
【化11】

【0082】
[上記式中、R1及びR6は上に定義された通りであり、
基R10a〜R10d及びR11a〜R11dは独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NR132、-C(O)OR13、及びOR13(各R13は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R11又はR10は、不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもできる]、
【0083】
式(IIc)
【化12】

【0084】
[上記式中、R1、R3、R5及びR6は上に定義された通りであり、そして、基R9a〜R9fは独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NR132、-C(O)OR13、及びOR13(各R13は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R9は、飽和型又は不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもできる]、
【0085】
式(IId)
【化13】

【0086】
(上記式中、各R1、R2、R3、R4及びR5は独立して、上に定義された通りであり、そしてYはアルキレン及びアリーレンから選択される)、
【0087】
式(IIe)
【化14】

【0088】
(上記式中、R2、R4、R5及びR6は上に定義された通りであり、そして基R9a〜R9fは、上記式(IIa)の基R9a〜R9dのように定義される)、
【0089】
式(IIf)
【化15】

【0090】
(上記式中、R2、R4、R5及びR6は上に定義された通りであり、そして基R9a〜R9hは、上記式(IIa)の基R9a〜R9dのように定義される)、
【0091】
及び式(IIg)
【化16】

【0092】
[上記式中、R2、R4、R5及びR6は上に定義された通りであり、そして、基R11a〜R11dは独立して、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、CN、NR132、-C(O)OR13、及びOR13(R13は独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)から選択され、隣接環炭素原子の2つの基R11は、不飽和型の炭素環又は複素環又は縮合芳香族環を一緒に形成することもできる]
の誘導体である。
【0093】
言うまでもなく、隣接環炭素原子の2つの基R8又はR9が縮合芳香族環を一緒に形成する場合、式(IIa)、(IIc)、(IIe)及び(IIf)における基R8又はR9の数は、低減する。
【0094】
式(IIa)の1,4-ジヒドロピリジン誘導体において、R1は好ましくは水素原子であり、R6はメチル基又はフェニル基であり、そしてUは好ましくはO又はCH2であり、置換基R8a〜R8d及びR9a〜R9dは独立して、好ましくは、水素原子及びメチル基から選択される。式(IIa)の誘導体のうち、ジヒドロピリジン環において対称的な置換を有する誘導体が、特に好ましい。
【0095】
式(IIb)の誘導体において、R1は好ましくは水素原子であり、R6は好ましくはメチル基又はフェニル基である。置換基R10a〜R10d及びR11a〜R11dは独立して、好ましくは、C1-C5アルキル基、OR13及びハロゲン原子から選択され、2つの芳香族環の対称的な置換が、特に好ましい。
【0096】
式(IIc)の1,4-ジヒドロピリジン誘導体において、R1は好ましくは水素原子であり、R6はメチル基又はフェニル基であり、R3は好ましくはメチル基であり、そしてR5はC(O)OR7である(R7は上に定義した通りである)。置換基R9a〜R9fは独立して、好ましくはC1-C5アルキル基から選択され、メチル基が特に好ましい。
【0097】
式(IId)の誘導体において、Yは好ましくは1,4-フェニレン又は1,2-エチレン基である。さらに、両R1基が同じものであり、両R2基が同じものであり、両R3基が同じものであり、両R4基が同じものであり、そして両R5基が同じものであることが好ましく、式(II)に関して与えられた好ましい定義は、全ての基R1〜R5に当てはまる。
【0098】
式(IIe)の誘導体において、R2は好ましくはC1-C5アルキルであり、R4は好ましくは-C(O)OR7であり、R5は好ましくは-C(O)OR7であり、そしてR6は好ましくはC1-C5アルキル又はフェニル基である(R7は上に定義した通りである)。置換基R9a〜R9fは好ましくは、独立してC1-C5アルキル基から選択される。
【0099】
式(IIf)の誘導体において、R2は好ましくはC1-C5アルキルであり、R4は好ましくは-C(O)OR7であり、R5は好ましくは-C(O)OR7であり、そしてR6は好ましくはC1-C5アルキル又はフェニル基である(R7は上に定義した通りである)。置換基R9a〜R9hは好ましくは、独立してC1-C5アルキル基から選択される。
【0100】
式(IIg)の誘導体において、R2は好ましくはC1-C5アルキルであり、R4は好ましくは-C(O)OR7であり、R5は好ましくは-C(O)OR7であり、そしてR6は好ましくはC1-C5アルキル又はフェニル基である。置換基R11は好ましくは、独立してC1-C5アルキル基から選択される。
【0101】
式(IIa)〜(IIg)の1,4-ジヒドロピリジン誘導体のうち、式(IIa)及び(IId)の誘導体が特に好ましい。
【0102】
本発明において使用される1,4-ジヒドロピリジン誘導体は、当業者によく知られた方法、例えばHantzsch合成に従って調製することができる。一例として、J. Org. Chem. 30(1965)、第1914頁以下、及びAngew. Chem.[Applied Chemistry](Intern.) 20(1981)、第762頁以下を参照されたい。これらの文献に記載された方法を、出発化合物を適宜に変化させることにより、これらの文献に明確には開示されていない1,4-ジヒドロピリジンの合成のために用いることができる。
【0103】
オキサゾール・タイプのUV又はVIS増感剤として、式(III)の化合物が使用される。
【0104】
【化17】

【0105】
上記式中、各Rd、Re及びRfは独立して、ハロゲン原子、随意選択的に置換型のアルキル基、縮合されてもよい随意選択的に置換型のアリール基から選択され、随意選択的に置換型のアラルキル基、基-NR'R''及び基-OR'''から選択され、ここでR'及びR''は独立して、水素原子、アルキル、アリール又はアラルキル基から選択され、
R'''は、随意選択的に置換型のアルキル、アリール又はアラルキル基又は水素原子であり、そしてk, m及びnは独立して、0又は整数1〜5である。
【0106】
好ましくは、Rd、Re及びRfは独立して、ハロゲン原子、C1-C8アルキル基及び基-NR'R''から選択され、R'及びR''は好ましくは独立して、水素原子及びC1-C6アルキルから選択される。
k, m及びnは好ましくは独立して0又は1である。
式(III)のオキサゾール誘導体において、Rd、Re及びRfの1つ以上は基-NR'R''を表し、R'及びR''は好ましくは独立して、水素原子及びC1-C6アルキルから選択され、そして、R'=R''=C1-C6アルキルであることが特に好ましい。
【0107】
本発明に使用されるオキサゾール誘導体は、当業者によく知られた方法に従って調製することができる。これと関連して、独国特許出願公開第120 875号明細書及び欧州特許出願公開第0 129 059号明細書を参照されたい。これらの文献に記載された方法を、出発化合物を適宜に変化させることにより、これらの文献に明確には記載されていないオキサゾールの合成のために用いることもできる。
【0108】
本発明によれば、UV又はVIS増感剤として、式(IV)
【0109】
【化18】

【0110】
の化合物を使用することもでき、Xは、複素環に複合された1つ以上のC-C二重結合を含むスペーサー基である。
【0111】
D1及びD2は独立して、随意選択的に置換型の縮合芳香族環を表し、そしてV及びWは独立して、O、S及びNRから選択され、Rは、随意選択的に一置換型又は多置換型であることができるアルキル、アリール及びアラルキル基から選択される。
好ましくはV=Wであり、そしてO又はNRを表す。
Rは、好ましくはC1-C12アルキルである。
【0112】
スペーサー基Xは鎖状又は環状単位又はその組み合わせであってよい。これは好ましくは以下から選択される。
【0113】
随意選択的に1つ又は2つのベンゾ縮合芳香族環を含むフェニレン(例えばナフタレン)(2つの複素環との結合部位は、同じ環又は異なる環に配置することができる)、
【0114】
【化19】

【0115】
上に示した6員環の場合、結合部位は1,4-位置にあるのが好ましく、そして5員環の場合、2,5-位置にあるのが好ましい。上に示した5員環及び6員環は、上記式に示されていなくても、1つ又は2つ以上の置換基、例えばC1-C10アルキル基及びハロゲン原子を含むことができる。
【0116】
D1及びD2は好ましくは、随意選択的に置換することができる縮合芳香族環を表す。
【0117】
式(IV)の好ましい増感剤は、式(IVa)、(IVb)及び(IVc) によって表される。
【0118】
【化20】

【0119】
上記式中、p及びqは独立して整数1〜4であり、各基R14及びR15は独立して、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ基、飽和型又は非芳香族不飽和型炭素環、縮合アリール基、-SO3H、NR162、COOR17及びCOR17から選択され;
各R16基は独立して、水素原子又はアルキル基であり、そして基R17は独立して、水素原子、及びアルキル基及びアリール基から選択され、そしてX及びRは上に定義された通りである。
【0120】
R14及びR15は好ましくは独立して、-NR32、アルコキシ基及びアリール基から選択される。
R16は好ましくはC1-C10アルキル基である。
R17は好ましくはC1-C10アルキル基である。
【0121】
本発明において使用される式(IV)の増感剤は、当業者によく知られた方法に従って調製することができる。これと関連して、Angew. Chemie.[Applied Chemistry](Intern.) 第87巻(1975)、693-707を参照されたい。これらの文献に記載された方法を、出発化合物を適宜に変化させることにより、これらの文献に明確には開示されていない化合物の合成のために用いることもできる。
【0122】
チタノセン、特に好ましくは、1つ以上のオルソ-フッ素原子及び随意選択的に1つのピリル基を有する、2つの5員シクロジエニル基、例えばシクロペンタジエニル基及び1つ又は2つの6員芳香族基を含むチタノセン、例えばビス(シクロペンタジエニル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニル]チタニウム及びジ-シクロペンタジエン-ビス-2,4,6-トリフルオロフェニル-チタニウム、又は、ジルコノセン、例えばビス(シクロペンタジエニル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニル]ジルコニウム)を、メタロセン・タイプのUV又はVIS増感剤として好ましく使用することができる。
【0123】
平版印刷版前駆体のUV又はVIS感受性塗膜のための共開始剤は、例えば、アミン、例えばアルカノールアミン;オニウム塩、例えばアンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ホスホニウム塩及びN-アルコキシピリジニウム塩;N,N-ジアルキルアミノ安息香酸エステル;N-アリールグリシン及びこれらの誘導体(例えばN-フェニルグリシン);イミド、例えばN-ベンゾイルオキシフタリミド;ジアゾスルホネート;9,10-ジヒドロアントラセン誘導体、例えば9,10-ジメトキシジヒドロアントラセン;少なくとも1つがアリール単位の窒素、酸素又は硫黄原子に結合された少なくとも2つのカルボキシル基を有するN-アリール、S-アリール又はO-アリールポリカルボン酸(例えば、アニリン二酢酸及びその誘導体、及び米国特許第5,629,354号明細書に記載されたその他の共開始剤);ヘキサアリールビイミダゾール、例えば米国特許第3,552,973号明細書に記載されたもの、及びポリハロゲンアルキル置換型化合物から選択される。これらの化合物のうち、ポリハロゲンアルキル置換型化合物が、本発明において好ましい。本発明の場合、共開始剤としてホウ酸塩は使用されない。
【0124】
本明細書中に使用される「ポリハロゲンアルキル置換型化合物」という用語は、1つのポリハロゲン化又はいくつかのモノハロゲン化アルキル置換基を含む化合物を意味する。ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は1〜3であり;ハロゲン化メチル基が特に好ましい。フッ素、塩素及び臭素原子がハロゲン原子として好ましく使用され、塩素及び臭素原子が特に好ましい。
【0125】
本発明による前駆体中に使用するための、特に好適なポリハロゲンアルキル置換型化合物の例は:トリハロゲンメチルアリールスルホン及びトリハロゲンメチルヘタリールスルホン、例えばトリブロモメチルフェニルスルホン及びトリブロモメチル-2-ピリジルスルホン;2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-s-トリアジン、2-(4-エトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、及び2-[4-(2-エトキシエチル)-ナフト-1-イル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン;1つ以上のC(Hal)3基を含むその他の複素環、例えば2-トリクロロメチルベンゾキサゾール、2-トリクロロメチルベンズチアゾール、2-トリクロロメチル-5-フェニル-1,3-オキサゾール;1,2,3,4-テトラブロモブタンを含む。
【0126】
IR感受性平版印刷版前駆体のための開始剤系は、1種以上のIR吸収剤と、1種又は2種以上の共開始剤とを含む。
【0127】
本発明において、IR吸収剤は好ましくは、トリアリールアミン色素、チアゾリウム色素、インドリウム色素、オキサゾリウム色素、シアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素及びフタロシアニン色素及び顔料のクラスから選択される。しかし、他のIR吸収剤、例えば米国特許出願公開第2002/0025489号明細書に記載された吸収剤を使用することもできる。
【0128】
好適なIR吸収剤は例えば以下の化合物を含む:
【0129】
【化21】

【0130】
【化22】

【0131】
【化23】

【0132】
【化24】

【0133】
【化25】

【0134】
【化26】

【0135】
本発明の好ましい態様によれば、式(V)のIR吸収剤が使用される。
【0136】
【化27】

【0137】
上記式中、
各D3は独立して、S、O、NR12又はC(アルキル)2を表し;
各R18は独立して、アルキル基を表し;
R19はハロゲン原子、SR12、OR12、又はNR122を表し;
各R20は独立して、水素原子、アルキル基、OR12、SR12、又はNR122又はハロゲン原子を表し;R20はベンゾ縮合環であってもよく;
A-はアニオンを表し;
---は、任意に存在する炭素環式5員又は6員環を表し;
R12は、アルキル又はアリール基を表し;NR122の場合、一方のR12はHを表すこともでき;
各rは独立して、0、1、2又は3であることが可能である。
【0138】
これらのIR吸収剤は、800〜1,200 nmの範囲で吸収し、810〜860 nmの範囲で吸収する式(V)の吸収剤が特に好ましい。
【0139】
D3は好ましくは、C(アルキル)2基であり、アルキル基の炭素原子数は好ましくは1〜3である。
R18は好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基である。
R19は好ましくはSR12である。
R20は好ましくは水素原子である。
R12は好ましくはフェニル基である。
破線は、炭素原子数5又は6の環基を表すことが好ましい。
対イオンA-は好ましくは、塩化物イオン又はトシレート・アニオンである。
対称的な構造(V)を有するIR吸収剤が特に好ましい。
【0140】
特に好ましいIR吸収剤の例は、
2-[2-[2-フェニルスルホニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロペンテン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムトシレート、
2-[2-[2-クロロ-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-ベンゾ[e]-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-1H-ベンゾ[e]-インドリウム-トシレート、及び、
2-[2-[2-クロロ-3-[2-エチル-3H-ベンズチアゾル-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-3-エチル-ベンズチアゾリウム-トシレート
を含む。
【0141】
IR感受性開始剤系のための共開始剤として、米国特許第6,309,792号明細書に記載されたポリハロゲンアルキル置換型化合物、オニウム塩及びその他の化合物を好ましく使用することができる。特に好適なポリハロゲンアルキル置換型化合物及びオニウム化合物が、UV及びVIS感受性開始剤系のための共開始剤との関連において、既に挙げられている。
【0142】
IR感受性要素の貯蔵安定性を必要な場合に高めるために、好ましい態様による輻射線感受性塗膜は1種以上のポリカルボン酸、具体的には一般式(VI)のポリカルボン酸を含む。
【0143】
R21-(CR22R23)a-A-CH2COOH (VI)
上記式中、Aは、O、S又はNR24から選択され、R24は、水素原子、C1-C6アルキル基、基CH2CH2COOH、又は-COOHで置換されたC1-C5アルキル基を表し;
R21、R22及びR23は独立して、水素原子、C1-C6アルキル基、置換型又は無置換型アリール基、-COOH又はNR25CH2COOHから選択され、R25は、-CH2COOH、-CH2OH及び-(CH2)N(CH2)COOHから選択され;そして
aは0、1、2又は3であり、
ただし、A、R21、R22及びR23は、式(VI)の酸が、式(VI)に示されたCOOH基に加えて、1つ以上の別のCOOH基を含むように選択される。
【0144】
N-アリール-ポリカルボン酸がとりわけ好ましく、具体的には下記
【0145】
式(VIa)
【化28】

【0146】
(上記式中、Arは一置換型又は多置換型又は無置換型のアリール基を表し、そしてsは整数1〜5である)
【0147】
及び式(VIb)
【化29】

【0148】
(上記式中、R26は水素原子又はC1-C6アルキル基を表し、そしてt及びvはそれぞれ整数1〜5を表す)
のN-アリール-ポリカルボン酸が特に好ましい。
【0149】
アリール基の可能な置換基は、C1-C3アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C1-C3チオアルキル基及びハロゲン原子である。アリール基は、1〜3つの同一又は異なる置換基を含むことができる。
【0150】
Arは好ましくはフェニル基を表す。
式(VIb)において、vは好ましくは1であり、そしてR26は好ましくは水素原子を表す。
【0151】
このようなポリカルボン酸の例は下記のものを含む:
(4-アセトアミドフェニルイミノ)二酢酸
3-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)安息香酸
4-(ビス(カルボキシメチル)アミノ)安息香酸
2-[(カルボキシメチル)フェニルアミノ]安息香酸
2-[(カルボキシメチル)フェニルアミノ]-5-メトキシ安息香酸
3-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]-2-ナフタレンカルボン酸
N-(4-アミノフェニル)-N-(カルボキシメチル)グリシン
N,N'-1,3-フェニレン-ビスグリシン
N,N'-1,3-フェニレン-ビス[N-(カルボキシメチル)]グリシン
N,N'-1,2-フェニレン-ビス[N-(カルボキシメチル)]グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-メトキシフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3-メトキシフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3-ヒドロキシフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3-クロロフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-ブロモフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-クロロフェニル)グリシン
【0152】
N-(カルボキシメチル)-N-(2-クロロフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-エチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(2,3-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3,4-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(3,5-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(2,4-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(2,6-ジメチルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-(4-ホルミルフェニル)グリシン
N-(カルボキシメチル)-N-エチルアントラニル酸
N-(カルボキシメチル)-N-プロピルアントラニル酸
N-(カルボキシメチル)-N-ベンジルグリシン
【0153】
5-ブロモ-N-(カルボキシメチル)アントラニル酸
N-(2-カルボキシフェニル)グリシン
o-ジアニシジン-N,N,N',N'-四酢酸
4-カルボキシフェノキシ酢酸
カテコール-O,O'-二酢酸
4-メチルカテコール-O,O'-二酢酸
レゾルシノール-O,O'-二酢酸
ヒドロキノン-O,O'-二酢酸
α-カルボキシ-o-アニス酸
2,2'-(ジベンゾフラン-2,8-ジイルジオキシ)二酢酸
2-(カルボキシメチルチオ)安息香酸
5-アミノ-2-(カルボキシメチルチオ)安息香酸
3-[(カルボキシメチル)チオ]-2-ナフタレンカルボン酸
エチレンジアミノ四酢酸
ニトリロ三酢酸。
最も好ましいポリカルボン酸は、アニリノ二酢酸である。
【0154】
ポリカルボン酸は輻射線感受性塗膜中に、輻射線感受性塗膜の乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜10 wt.%、より好ましくは1〜10 wt.%、特に好ましくは1.5〜3 wt%の量で存在する。
【0155】
輻射線感受性塗膜は、塗膜を着色するための可視スペクトル範囲内で吸収性の1種又は2種以上の色素をさらに含むことができ、好適な色素は、塗膜のために使用される溶剤又は溶剤混合物中によく溶ける色素であるか、又は顔料の分散形態中に容易に導入される色素である。塗膜がUV又はVIS感受性である場合、添加される色素は、使用される増感剤の光吸収性に影響を及ぼしてはならず、又は決定的な影響を及ぼしてはならない。好適なコントラスト色素は、とりわけローダミン色素、トリアリールメタン色素、アントラキノン顔料及びフタロシアニン色素及び/又は顔料を含む。色素は輻射線感受性組成物中に乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜10 wt.%の量、特に好ましくは0.5〜3 wt.%の量で存在する。
【0156】
輻射線感受性塗膜は、1種又は2種以上の可塑剤をさらに含むことができる。好適な可塑剤はとりわけ、ジブチルフタレート、トリアリールホスフェート及びジオクチルフタレートを含む。1種又は2種以上の可塑剤が使用される場合、これらの総量は乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜2 wt.%、特に好ましくは0.25〜1.8 wt.%を占める。
【0157】
輻射線感受性塗膜中に存在することができる更なる添加剤は、界面活性剤、非イオン性、アニオン性及びカチオン性界面活性剤、及びこれらの混合物である。好適な界面活性剤の例は、ソルビトール-トリ-ステアレート、グリセロールモノステアレート、ポリオキシエチレンノニルエーテル、アルキル-ジ-(アミノエチル)-グリシン、2-アルキル-N-カルボキシエチル-イミダゾリウムベテイン及びペルフルオロ化合物を含む。界面活性剤の総量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは0〜0.8 wt.%、特に好ましくは0.05〜0.5 wt.%を占める。
【0158】
本発明の平版印刷版前駆体は、下記のように製造することができる:
随意選択的に前処理された乾燥基板を、有機溶剤又は溶剤混合物から得られた輻射線感受性組成物でコーティングすることにより、好ましくは0.5〜4 g/m2、より好ましくは0.8〜3 g/m2の乾燥層重量を得る。これらの値は、UV感受性組成物であろうと、VIS感受性組成物であろうと、IR感受性組成物であろうと、本発明の全ての輻射線感受性組成物に当てはまる。共通のコーティング法、例えばドクターブレードを用いたコーティング、噴霧コーティング、浸漬コーティング及びスピン・コーティングをこの目的に用いることができる。
【0159】
好ましい態様によれば、輻射線感受性層の上側には、当業者に知られているような酸素不透過性オーバーコート、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート・コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/ポリビニルアセテート・コポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びゼラチンから成る層が塗布されるのが好ましい。酸素不透過性オーバーコートの乾燥層重量は、好ましくは0.1〜4 g/m2、より好ましくは0.3〜2 g/m2である。
【0160】
本発明の平版印刷版前駆体は、これらの開始剤システムに応じて、UV線、VIS線又はIR線で画像形成することができる。像様照射中、塗膜は、露光された領域内で硬化され、非露光領域だけが続いて現像中に除去される。
【0161】
要素内に使用される増感剤がUV又はVIS線を吸収する場合、すなわち、波長300〜750 nmの輻射線を区別的に吸収し、そして好ましくはその範囲内の吸収スペクトルにおいて吸収極大値を示す場合、これらの波長のための一般的なランプ、例えば当業者に知られた炭素アーク・ランプ、水銀ランプ、キセノンランプ及び金属ハロゲン化物ランプ、又はレーザー又はレーザー・ダイオードによって像様露光を行うことができる。レーザー照射はコンピューターを介してデジタル制御することができ、すなわち、コンピューター内に記憶されたデジタル化情報を介して前駆体の像様露光を生じさせることができるように、レーザー照射をオン又はオフにすることができる。従って、このタイプの平版印刷版前駆体は、コンピューター・プレート間(CTP)印刷版と呼ばれる。
【0162】
要素内に使用される増感剤がIR線を吸収する場合、すなわち、波長750超〜1,200 nmの輻射線を区別的に吸収し、そして好ましくはその範囲内の吸収スペクトルにおいて吸収極大値を示す場合、像様露光はIR線源によって実施することができる。例えば、本発明のIR感受性平版印刷版前駆体は、約800〜1,200 nmで発光する半導体レーザー又はレーザー・ダイオードによって像様露光することができる。
【0163】
次いで、像様露光済印刷版前駆体を、商業的に入手可能な水性アルカリ性現像剤で現像し、基板上に露光された領域を残し、そして露光されていない領域を除去する。
【0164】
像様露光後、すなわち現像前に、50〜180℃、好ましくは90〜150℃で熱処理を行うことができる。
【0165】
ある特定の用途の場合、現像後に残る塗膜部分に、熱処理(「ベーキング」と呼ばれる)、又はベーキングと全体露光との組み合わせ(例えばUV線に当てる)を施すことにより、これらの部分の機械強度を高めることがさらに有利である。この目的の場合、処理前に、熱処理がこれらの領域にインクを受容させることのないように、非画像領域を保護する溶液で処理される。この目的に適した溶液は例えば米国特許第4,355,096号明細書に記載されている。ベーキングは、150〜250℃、好ましくは170〜220℃の温度で行われる。この処理は、どのような輻射線波長が前駆体の像様露光のために使用されたかとは独立して行うことができる。
【0166】
本発明の現像済印刷版は通常、現像後に、保存剤で処理される(「ゴム引き処理」)。保存剤は、親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール又はデキストリン、湿潤剤及びその他の添加剤の水溶液である。
【0167】
メルカプト官能化ラジカル重合可能モノマーの使用は、輻射線感受性を著しく改善することができる。本発明のIR感受性要素の場合、感受性は、このようなSHモノマーを含まない要素と比較して50〜100%だけ改善することができる。IR感受性要素の場合、感受性のこのような増大は、貯蔵安定性に影響を及ぼすことがある。しかし、貯蔵安定性の問題は、上記のようなポリカルボン酸を同時に使用することにより解決することができ、このような場合にも、感受性がかなり高められる(約25〜50%だけ)。本発明のUV感受性要素の感受性は、約20〜60%だけ高めることができる。
【実施例】
【0168】
本発明を下記例において、より詳しく説明する。
【0169】
調製例1
(米国特許第6,569,603号明細書に基づく)
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
75 g(0.5 モル)の2.5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(Aldrichから入手可能)を、300 mlのメタノール中に分散し、そして懸濁液を外部から氷で5℃まで冷却した。次いで、温度を5〜10℃に保ちながら、50.5 g(0.5 モル)のトリエチルアミンを撹拌しながら添加した。透明な淡色の溶液を得、これに76.3 g(0.5モル)の4-クロロメチルスチレン(Aldrichから入手可能)を、15分間にわたって撹拌しながら液滴状に添加した。次いで、4時間にわたって室温で溶液を撹拌した。その時間中、形成された沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして40℃で1日間にわたって真空炉内で乾燥させた。収量:103 g(77.4 %)。
【0170】
精製のために、分離されて乾燥させられた生成物80 gを、350 mlの水中16.8 gの水酸化カリウムの溶液中に溶解した。僅かな不溶性部分を濾過によって除去し、残った透明溶液30 mlに、撹拌して冷却しながら、濃塩酸を添加した。結果として生じた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして40℃で1日間にわたって真空炉内で乾燥させた。
【0171】
元素分析:
【表1】

【0172】
IRデータ(cm-1):
3073, 2892, 1628
【0173】
調製例2
2-チオ(4-メチルクロトナト)-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
15 g(0.1 モル)の2.5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(Aldrichから入手可能)を、60 mlのメタノール中に分散し、そして懸濁液を外部から氷で5℃まで冷却した。次いで、温度を5〜10℃に保ちながら、10.1 g(0.1 モル)のトリエチルアミンを撹拌しながら添加した。結果として得られた透明な淡色の溶液に、23.3 g(0.1モル)のメチル-4-ブロモクロトネート(純度80 wt.%の生成物、Lancasterから入手可能)を、15分間にわたって撹拌しながら液滴状に添加した。次いで、14時間にわたって室温で溶液を撹拌し、そして40 mlの水を撹拌しながら添加した。結果として生じた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして40℃で1日間にわたって真空炉内で乾燥させた。収量:23.7 g(85.9 %)。
【0174】
IRデータ(cm-1):
3053, 2855, 1703, 1655
融点:100-102℃
【0175】
調製例3
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン
18.6 g(0.1 モル)のトリチオシアヌル酸(Aldrichから入手可能)を、70 mlのメタノール中に分散し、そして懸濁液を外部から氷で5℃まで冷却した。次いで、温度を5〜10℃に保ちながら、10.1 g(0.1 モル)のトリエチルアミンを30分間にわたって撹拌しながら添加した。結果として得られた黄味を帯びた懸濁液に、15.3 g(0.1モル)の4-クロロメチルスチレン(Aldrichから入手可能)を、15分間にわたって撹拌しながら液滴状に添加した。次いで、14時間にわたって室温で溶液を撹拌した。結果として生じた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして40℃で1日間にわたって真空炉内で乾燥させた。収量:25.5 g(84.4 %)。
【0176】
IRデータ(cm-1):
3053, 2901, 1627
【0177】
調製例4
2-チオベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
30 g(0.2 モル)の2.5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(Aldrichから入手可能)を、120 mlのメタノール中に分散し、そして懸濁液を外部から氷で5℃まで冷却した。次いで、温度を5〜10℃に保ちながら、20.2 g(0.2 モル)のトリエチルアミンを撹拌しながら添加した。結果として得られた透明な淡色の溶液に、25.2 g(0.2モル)の塩化ベンジル(Aldrichから入手可能)を、15分間にわたって撹拌しながら液滴状に添加した。次いで、14時間にわたって室温で溶液を撹拌し、そして70 mlの水を撹拌しながら添加した。結果として得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして40℃で1日間にわたって真空炉内で乾燥させた。収量:47 g(91.1 %)。
【0178】
精製のために、分離されて乾燥させられた生成物36 gを、150 mlの水中8.4 gの水酸化カリウムの溶液中に溶解した。僅かな不溶性部分を濾過によって除去し、残った透明溶液15 mlに、撹拌して冷却しながら、濃塩酸を添加した。結果として生じた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして40℃で1日間にわたって真空炉内で乾燥させた。
融点:112-115℃
【0179】
例1
下記成分からコーティング溶液を調製した:
6.3 gのIoncryl 683(商標)(SC Johnson & Son Inc.社製の、酸価175 mg KOH/gのアクリル酸コポリマー)
9.0 gのAC 50(商標)(PCAS/France社製の、酸価48 mg KOH/gのメタクリル酸コポリマー、エチレングリコールモノメチルエーテル中の70 wt.%溶液)
16.8 gの、ウレタンアクリレートの80%メチルエチルケトン溶液[1-メチル-2,4-ビス-イソシアネートベンゼン(Bayer社のDesmodur 100(商標))と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとを反応させることにより調製され、全てのイソシアネート基が完全に反応させられたときの二重結合含有率は0.50 二重結合/100 gである]
【0180】
1.4 gのジペンタエリトリトールペンタアクリレート
1.8 gの調製例1の2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
2.5 gの2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス-(トリクロロメチル)-s-トリアジン
0.4 gのBasonyl Violet 610(Basic Violet 3, C.I. 42555、Bayerから入手可能)
0.45 gの2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド。
【0181】
これらの成分を、
90容積部の1-メトキシ-2-プロパノールと
10容積部のアセトンと
から成る混合物200 ml中に撹拌しながら溶解した。
【0182】
溶液の濾過後、ポリビニルホスホン酸の水溶液で後処理を施されている電気化学的砂目立て処理・陽極処理済アルミニウム・フォイルに、一般的な方法によってこれを塗布し、そして層を90℃で4分間にわたって乾燥させた。結果として生じるIR感受性層の乾燥重量は約1.4 g/m2であった。
【0183】
次いで、下記組成物:
7.5 gのポリビニルイミダゾール、
42.5 gのポリビニルアルコール(Airproducts社製のAirvol 203(商標);12 wt.%の残留アセチル基)、
170 gの水、
の溶液でコーティングすることにより、乾燥層重量2.0 g/m2を有する酸素不透過性層を同様に塗布した。
90℃で5分間にわたって乾燥させた。
【0184】
このように製造された印刷版前駆体を、830 nmレーザー・ダイオード(20 Wヘッド、3 W、異なるドラム速度)を有する、Creo/Scitex社のTrendsetter 3244内で露光させた。コピーの品質を評価するための種々異なる要素を含有するUGRA/FOGRA Postscript 試験片、EPSバージョンを、画像形成のために使用した。
【0185】
露光済印刷版前駆体をMercury News処理装置(Kodak Polychrome Graphics LLC)内で処理した。この装置は、予加熱ユニット、予洗ユニット、浸漬タイプ現像浴、水すすぎユニット、ゴム引き処理ユニット及び乾燥ユニットを備えた。処理装置に、Kodak Polychrome Graphics LLCの現像剤980を満たした。
【0186】
下記設定値を用いた:
速度 120 cm/分
予加熱 630 ディジット
予洗率 0.5 l/印刷版1m2
現像剤浴の温度23±1℃
【0187】
この処理後、露光された領域は印刷版上に残され、これに対して露光されていない領域は現像剤によって完全に除去された。
【0188】
加熱及び現像後に得られるコピーを評価するために、下記基準を試験した:1画素要素の再現品質、画素要素の格子縞パターンの光学濃度、及びベタの光学濃度。ベタ及び格子点のコントラスト及び濃度を評価するために、D19C/D196濃度計(Gretag/Macbeth Colour Data Systems, 英国)を使用した。
【0189】
所要エネルギーに関する結果は、ベタの良好な再現のためには31 mJ/cm2の露光エネルギーで十分であり、1画素要素には40 mJ/cm2のエネルギーで十分であることを示した。
【0190】
40 mJ/cm2で露光された印刷版を、枚葉紙オフセット印刷機内に載置し、これをコンベンショナルな印刷インクで印刷するために使用した。画像領域は問題なしに印刷インクを受容し、そして紙コピーは、背景領域にいかなるトーンも示さなかった。130,000部の高品質コピー後、印刷を中断したが、印刷版をより多数のプリントのために使用することもできた。
【0191】
例2
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリドの代わりに、ポリエメチン色素である0.45 gのIRT色素(Showa Denko K.K., 日本国から入手可能)を使用し、そして、調製例1の1.8 gの2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの代わりに、調製例3の1.85 gの2-チオ(4-エテニル)ベンジル-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジンを使用することによって、例1のコーティング溶液を改質した。こうして得られた組成物を、例1に記載されたように塗布し、露光し、そして現像した。下記露光エネルギーが良好な再現に必要であった:
ベタに対して32 mJ/cm2、及び
1画素要素に対して42 mJ/cm2
【0192】
例3
1.8 gの2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの代わりに、調製例2の1.8 gの2-チオ(4-(メチルクロトナト))-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールを使用することによって、例1のコーティング溶液を改質した。コーティング組成物を、例1に記載されたように塗布し、露光し、そして現像した。下記露光エネルギーが良好な再現に必要であった:
ベタに対して34 mJ/cm2、及び
1画素要素に対して45 mJ/cm2
【0193】
例4
0.45 gのアニリノ二酢酸(Synton, 独国から入手可能)を添加し、そして1.4 gのジペンタエリトリトールペンタアクリレートを除外することにより、例1のコーティング溶液を改質した。コーティング組成物を、例1に記載されたように塗布し、露光し、そして現像した。下記露光エネルギーが良好な再現に必要であった:
ベタに対して56 mJ/cm2、及び
1画素要素に対して79 mJ/cm2
【0194】
印刷版の貯蔵安定性を試験するために、疑似エージング迅速試験を実施した。これを目的として、印刷版前駆体を15時間にわたってインキュベータ内で60℃まで加熱する(以下、「乾式エージングされた」印刷版前駆体と呼ぶ)か、或いは、温度40℃及び相対湿度80%で7日間にわたって気候室内に貯蔵した(以下、「湿式エージングされた」印刷版前駆体と呼ぶ)。これらの前駆体のIR感受性及び印刷結果を上記の通り測定した。両タイプのエージングされた前駆体の露光されていない領域は、現像剤で完全に除去することができた。所要エネルギーに関する結果は、乾式エージングされた前駆体の場合には、ベタの良好な再現のために61 mJ/cm2の露光エネルギーが必要であり、そして、湿式エージングされた前駆体の場合には、66 mJ/cm2の露光エネルギーが必要であることを示した。1画素要素の良好な再現はそれぞれ、84 mJ/cm2(乾式エージング)及び92 mJ/cm2(湿式エージング)を必要とした。
【0195】
湿式エージングされた前駆体及び乾式エージングされた前駆体から製造され、そして前述の露光エネルギーで露光を施された印刷版を、枚葉紙オフセット印刷機内に載置し、これを印刷するために使用した。画像領域は問題なしに印刷インクを受容し、そして紙コピーは、非画像領域にいかなるトーンも示さなかった。130,000部の高品質コピー後、印刷を中断したが、両印刷版をより多数のプリントのために使用することもできた。
【0196】
例5
電気化学的(HCl中)砂目立て処理・陽極処理済アルミニウム・フォイルに、ポリビニルホスホン酸(PVPA)の水溶液による処理を施し、そしてこのフォイルを、乾燥後、下記成分から調製されたコーティング溶液でコーティングした。
【0197】
2.1 gのターポリマー30%溶液(1-メトキシ-2-プロパノール中で、470重量部のスチレン、336重量部のメチルメタクリレート、及び193重量部のメタクリル酸を重合させることにより調製)
2.0 gの調製例1の2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
6.9 gの、ウレタンアクリレートの80%メチルエチルケトン溶液[Desmodur N 100(商標)(Bayer社から入手可能)と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとを反応させることにより調製され、全てのイソシアネート基がヒドロキシ基を含有するアクリレートと完全に反応したときの二重結合量:0.5 二重結合/100 gである]
【0198】
0.8 gのジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
4.4 gの1-メトキシ-2-プロパノール中分散体 (10 wt%の銅フタロシアニンと、39.9モル%のビニルアルコール基、1.2モル%のビニルアセテート基、アセトアルデヒドから誘導された15.4モル%のアセタール基、ブチルアルデヒドから誘導された36.1モル%のアセタール基、及び4-ホルミル安息香酸から誘導された7.4モル%のアセタール基を含む5 wt%のポリビニルアセタール・バインダーとを含む)
1.0 gの1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチル-3,5-ジ(メトキシカルボニル)-4-フェニルピリジン
0.75 gの2,2-ビス(2-クロロフェニル)-4,5,4',5'-テトラフェニル-2'H-[1,2]-ビイミダゾール
115 mlの1-メトキシ-2-プロパノール
90 mlのメタノール
130 mlのメチルエチルケトン
【0199】
この溶液を濾過し、リソグラフィ基板上に塗布し、そして塗膜を90℃で4分間にわたって乾燥させた。感光性ポリマー層の乾燥層重量は約1.6 g/m2であった。
【0200】
こうして得られた試料上に、例1に記載されたオーバーコートを塗布し、4分間にわたって90℃で乾燥させた後、オーバーコート層の乾燥層重量は約2 g/m2であった。
【0201】
濃度範囲0.15〜1.95のグレースケールを使用して、真空フレーム内でエネルギー3.4 mJ/cm2のGaドープ型MHランプによって、印刷版前駆体に露光を施した。濃度増分は0.15に達した(UGRAグレースケール)。
露光直後に、印刷版を90℃で1分間にわたって炉内で加熱した。
【0202】
次いで、Kodak Polychrome Graphics LLC製の現像剤952によって、露光済印刷版を30秒間にわたって処理した。次いで、現像剤溶液をさらに30秒間にわたって、表面上にタンポンを使用してすり付け、次いで印刷版全体を水ですすいだ。この処理後、露光済部分は印刷版上に残った。その感光性の評価のために、印刷版を湿潤状態において印刷インクで黒化した。
【0203】
下記感光性結果が得られた:
黒化グレースケールの6つのベタステップ。
ステップ9がインクを受容しない最初のステップであった。
【0204】
34 mJ/cm2で露光され、そして上述のように現像された印刷版を、枚葉紙オフセット印刷機内に載置し、これを摩耗性印刷インクで印刷するために使用した(Sun Chemical製Offset S 7184;10%の炭酸カルシウムを含有)。50,000部のコピー後に、摩耗は観察されなかった。
【0205】
比較例1
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの添加なしで、例1を繰り返し、そして結果として生じる組成物を、例1に記載されたように塗布し、露光し、そして現像した。ベタの最大濃度を達成するためには、最小露光エネルギー約300 mJ/cm2が必要であり、そして1画素要素の良好な再現のためには、約350 mJ/cm2が必要であった。この結果は、エチレン系不飽和型二重結合を有するメルカプト置換型モノマー化合物が存在しないと、本発明の組成物における感受性よりも、感受性が著しく低くなることを示す。
【0206】
比較例2
例1を繰り返すが、しかし2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの代わりに、調製例4の2-チオベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールを使用し、そして結果として生じる組成物を、例1に記載されたように塗布し、照射し、そして現像した。ベタのためには、最小エネルギー約88 mJ/cm2が必要であり、そして1画素要素の良好な再現のためには、約120 mJ/cm2が必要であった。これは、エチレン系不飽和型二重結合を有するメルカプト置換型モノマー化合物の代わりに、エチレン系不飽和型二重結合なしのメルカプト置換型モノマー化合物を使用する結果、感受性が著しく低くなることを示す。
【0207】
比較例3
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの添加なしで、例5を繰り返し、そして結果として生じる組成物を、例5に記載されたようにリソグラフィ基板に塗布し、露光し、加熱し、そして現像した。下記感光性結果が得られた:
黒化グレースケールの3つのベタステップ。
ステップ6がインクを受容しない最初のステップであった。
【0208】
このことは、エチレン系不飽和型二重結合を有するメルカプト置換型モノマー化合物が存在しないと、本発明の組成物を用いて達成される感受性よりも、感受性が著しく低くなることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 処理されていないか又は前処理されている基板、及び
b) (i)水性アルカリ性現像剤中に可溶性又は膨潤性の1種以上の高分子バインダー;
(ii)1つ以上の非芳香族C-C二重結合と1つ以上のSH基とを分子中に含む1種以上のラジカル重合可能モノマー及び/又はオリゴマー;及び
(iii)ラジカル重合のための輻射線感受性開始剤又は開始剤系
を含む輻射線感受性塗膜
を含んで成る平版印刷版前駆体であって、
成分(ii)が下記式(I):
HS-Z-(Z1-CR1a=CR1bR1c)c (I)
[上記式中、各R1a、R1b、及びR1cは独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C8アルケニル、アリール、ハロゲン、CN及びCOOR1dから選択され、ここでR1dは、H、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、又はアリールであり;そして、
Zは脂肪族、複素環式又は複素芳香族スペーサー、又はこれらのうち2つ又は3つ以上の組み合わせであり、Zは随意選択的に、1つもしくは2つ以上の追加のSH基、及び/又は1つもしくは2つ以上の追加の非芳香族C-C二重結合を含むことができ;そして、各Z1は独立して、単結合、
【化1】

から選択される
(上記式中、R2a、R2b、及びR2cは独立して、H、C1-C6アルキル、及びアリールから選択され、
Z2は、単結合、O、S及びNR2cから選択され、
Z3は、Zに結合された単結合であり、
bは、整数1〜10であり、そして
cは、整数1〜3である)]
を有する平版印刷版前駆体。
【請求項2】
R1aが、H、CH3及びCOOHから選択され、
R1b及びR1cが独立して、H、CH3又は-COOCH3であり、
R1dが、H、CH3又は-CH2-CH=CH2を表し、
各Z1が、単結合、
【化2】

であり、
cが、1であり、
Zが、1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル、又は1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジイルであり、
R2a、R2b、及びR2cが独立して、H、又はCH3であり、そして、
bが、1又は2を表す、
請求項1に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項3】
該成分(ii)が、1分子当たり、2つのSH基と1つの非芳香族C-C二重結合とを含む、請求項1に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項4】
該成分(ii)が、1分子当たり、1つのSH基と2つ又は3つ以上の非芳香族C-C二重結合とを含む、請求項1に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項5】
該成分(ii)が、
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
2-チオ(4-メチルクロトナト)-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール
2-チオ(4-エテニル)ベンジル-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン
2,4-ジ-チオ(4-エテニル)ベンジル-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン
2-チオ(4-メタクロイルメチレン)ベンジル-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、及び
3-チオ(4-エテニル)ベンジル-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール
から選択された1種以上の化合物である、請求項1又は2に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項6】
該輻射線感受性塗膜が、SH基を含まない1種以上のラジカル重合可能モノマー及び/又はオリゴマーをさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項7】
該輻射線感受性塗膜が、界面活性剤、着色色素及び着色顔料、可塑剤及び露光指示剤から選択された1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項8】
該塗膜が、波長750超〜1,200 nmの輻射線を吸収することができる1種以上のIR吸収剤、並びに、ポリハロゲンアルキル置換型化合物、オニウム化合物、及びポリハロゲンアルキル置換型化合物とオニウム化合物との混合物から選択された1種以上の共開始剤を含む開始剤系を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項9】
該IR吸収剤が、トリアリール色素、チアゾリウム色素、インドリウム色素、オキサゾリウム色素、シアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素及びフタロシアニン色素並びに顔料のクラスから選択される、請求項8に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項10】
該IR吸収剤が、式(V):
【化3】

[上記式中、
各D3は独立して、S、O、NR12、又はC(アルキル)2を表し;
各R18は独立して、アルキル基を表し;
R19はハロゲン原子、SR12、OR12、又はNR122を表し;
各R20は独立して、水素原子、アルキル基、OR12、SR12、又はNR122又はハロゲン原子を表し;R20はベンゾ縮合環であってもよく;
A-はアニオンを表し;
---は、随意選択的に存在する炭素環式5員又は6員環を表し;
R12は、アルキル又はアリール基を表し;NR122の場合、一方のR12はHを表すこともでき;
各rは独立して、0、1、2又は3となることができる]
のシアニン色素である請求項9に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項11】
該IR色素が、
2-[2-[2-フェニルスルホニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロペンテン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムトシレート、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-クロロ-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-ベンゾ[e]-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-1H-ベンゾ[e]-インドリウム-トシレート、又は、
2-[2-[2-クロロ-3-[2-エチル-3H-ベンズ-チアゾール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-3-エチル-ベンズチアゾリウム-トシレート
である、請求項10に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項12】
該共開始剤が、2-フェニル-4,6-ビス-(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,2,3,4-テトラブロモ-n-ブタン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロ-メチル)-s-トリアジン、トリブロモメチルフェニルスルホン、2,4,6-トリ(トリクロロメチル)-s-トリアジン及び2,4,6-トリ(トリブロモメチル)-s-トリアジンから選択されたポリハロゲンアルキル置換型化合物である、請求項8から11までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項13】
該塗膜が、UV線を吸収すると、フリーラジカルを直接的に形成することができる開始剤を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項14】
該塗膜が、300〜750 nmの輻射線を吸収することができる1種以上の増感剤と、300〜750 nmの輻射線をそれ自体は吸収することはできないがしかし該増感剤と一緒にフリーラジカルを形成することができる1種以上の共開始剤とを含む開始剤系を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項15】
該増感剤が、1,4-ジヒドロピリジン、オキサゾール、ビスオキサゾール、及びこれらの類似体、クマリン及びメタロセンから選択される、請求項14に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項16】
該共開始剤が、アミン、オニウム塩、N,N-ジアルキルアミノ安息香酸エステル、N-アリールグリシン及びこれらの誘導体、ジアゾスルホネート、9,10-ジヒドロアントラセン誘導体、少なくとも2つのカルボキシル基(これらのうちの少なくとも1つは該アリール単位の窒素、酸素又は硫黄原子に結合される)を有するN-アリール-、S-アリール-、O-アリール-ポリカルボン酸、ヘキサアリールビイミダゾール、及びポリハロゲンアルキル置換型化合物から選択される、請求項14又は15に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項17】
該輻射線感受性塗膜が、さらに、1種以上のポリカルボン酸を含む、請求項8から12までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項18】
該ポリカルボン酸が式(VI):
R21 - (CR22R23)a - A - CH2COOH (VI)
(上記式中、
Aは、O、S又はNR24から選択され、R24は、水素原子、C1-C6アルキル基、基CH2CH2COOH、又は-COOHで置換されたC1-C5アルキル基を表し;
R21、R22及びR23は独立して、水素原子、C1-C6アルキル基、置換型又は無置換型アリール基、-COOH又はNR25CH2COOHから選択され、ここでR25は、-CH2COOH、-CH2OH及び-(CH2)N(CH2)COOHから選択され;そして
aは0、1、2又は3であるが、
但し、A、R21、R22及びR23は、式(VI)の酸が、式(VI)に示されたCOOH基に加えて、1つ以上の別のCOOH基を含むように選択される)
を有する請求項17に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項19】
該ポリカルボン酸が式(VIa):
【化4】

(上記式中、Arは一置換型又は多置換型又は無置換型アリール基を表し、そしてsは整数1〜5である)の化合物、又は
式(VIb)
【化5】

(上記式中、R26は、水素原子又はC1-C6アルキル基を表し、そしてt及びvはそれぞれ整数1〜5である)の化合物である請求項18に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項20】
該基板がアルミニウム板又はフォイルである、請求項1から19までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項21】
コーティングの前に、該アルミニウム基板が、砂目立て処理、陽極処理及び親水性化処理から選択された1種以上の処理が施されている、請求項20に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項22】
該輻射線感受性層上に、酸素不透過性オーバーコートが設けられている、請求項1から21までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項23】
該高分子バインダーの酸価が>70 mg KOH/gポリマーである、請求項1から22までのいずれか1項に記載の平版印刷版前駆体。
【請求項24】
a) 処理されていないか又は前処理されている基板を用意すること、
b) (i)水性アルカリ性現像剤中に可溶性又は膨潤性の1種以上の高分子バインダー;
(ii)1つ以上の非芳香族C-C二重結合と1つ以上のSH基とを分子中に含む1種以上のラジカル重合可能モノマー及び/又はオリゴマー;及び
(iii)ラジカル重合のための輻射線感受性開始剤又は開始剤系
を含む輻射線感受性塗膜を塗布すること、
ここで成分(ii)は下記式(I)を有する:
HS-Z-(Z1-CR1a=CR1bR1c)c (I)
[上記式中、各R1a、R1b、及びR1cは独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C8アルケニル、アリール、ハロゲン、CN及びCOOR1dから選択され、ここでR1dは、H、C1-C18アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、又はアリールであり;そして、
Zは脂肪族、複素環式又は複素芳香族スペーサー、又はこれらのうち2つ又は3つ以上の組み合わせであり、Zは随意選択的に、1つもしくは2つ以上の追加のSH基、及び/又は1つもしくは2つ以上の追加の非芳香族C-C二重結合を含むことができ;そして、各Z1は独立して、単結合、
【化6】

から選択される
(上記式中、R2a、R2b、及びR2cは独立して、H、C1-C6アルキル、及びアリールから選択され、
Z2は、単結合、O、S及びNR2cから選択され、
Z3は、Zに結合された単結合であり、
bは、整数1〜10であり、そして
cは、整数1〜3である)]
(c) 乾燥させること、及び
(d) 随意選択的に、酸素不透過性オーバーコートを塗布し、そして乾燥させる
ことを含んで成る、請求項1から23までのいずれか1項記載の平版印刷版前駆体の製造方法。
【請求項25】
(a) 請求項1から23までのいずれか1項記載の平版印刷版前駆体を用意し、
(b) 該前駆体内で使用された該開始剤又は該開始剤系に適した波長の輻射線で、該前駆体に像様露光を施し、そして
(c) 続いて、工程(b)で得られた該露光済前駆体を水性アルカリ性現像剤で現像する
ことを含む、平版印刷フォームを提供する方法。

【公表番号】特表2007−525701(P2007−525701A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550023(P2006−550023)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000489
【国際公開番号】WO2005/071488
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(505316060)コダック ポリクロウム グラフィクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【Fターム(参考)】