説明

モータ式車両駆動装置

【課題】強度安全率を低下させることなく従来よりも小形軽量化を実現し、シャーシ上における配置の自由度を確保できるモータ式車両駆動装置を提供する。
【解決手段】タイヤ67およびホイール64を有する駆動輪6と、シャーシ20に配設され、駆動輪6のホイール64を回転駆動する駆動トルクを出力する出力軸(ロータ部72)を有するモータ7と、モータ7の出力軸72に回転連結され駆動輪6のホイール64に駆動トルクを伝達するアウトプット軸31と、モータ7の出力軸72とアウトプット軸31配設され、伝達トルクが所定トルクに達するまでは連結状態を維持し、所定トルクを超過するとすべりを発生して伝達トルクを制限するトルク制限機構5と、を備えることを特徴とするモータ式車両駆動装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などに搭載されるモータ式車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動用の原動機としてモータを搭載した車両の開発が進められており、原動機としてモータおよびエンジンを併用するハイブリッド車両が急速に普及しつつある。また、原動機としてモータのみを搭載する電気自動車についても、モータの搭載位置が異なる各種方式の試作がなされて展示会に出展され、一部は実用段階にさしかかっている。電気自動車の第1の方式として、従来のエンジンをモータに置き換え、差動装置を含むパワートレーンを踏襲した方式がある。また、第2の方式として、駆動輪を構成するホイールの内部にそれぞれモータを配設するいわゆるインホイールモータ方式がある。インホイールモータでは、従来のエンジン車で必要とされた変速装置や差動装置などが不要となり、車両構造が大きく様変わりするものと考えられる。また、インホイールモータでバネ下荷重が増加して操作安定性が低下する欠点を補うために、第3の方式として、各駆動輪用のモータをそれぞれシャーシに配設し、連結軸により各駆動輪に駆動力を伝達する方式も考えられている。
【0003】
特許文献1には、ハイブリッド車両用の駆動制御装置の一例である四輪駆動制御装置が開示されている。この装置は、主駆動輪を駆動する内燃機関と、副駆動輪の駆動力を発生する電動機と、副駆動輪と電動機との間に設けられたクラッチとを備えている。そして、クラッチを締結して四輪駆動状態とし、クラッチを開放して二輪駆動状態とすることができるようになっている。さらに、クラッチ反力が所定値以上となった場合にクラッチ締結と判断する制御手段を備え、クラッチの締結を判断する精度を向上できるとされている。なお、実施形態には、シャーシに配設された1台のモータが減速機、クラッチ、および差動装置を介して左右の後輪を駆動する態様が開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、4輪を駆動するためにそれぞれモータを備える上記の第3の方式の電気自動車の一例が公開されている。この電気自動車は、4輪全てをモータ駆動することで左右前後の駆動力配分が自在となる、とされている。加えて、モータはインホイールではなく車両中心部に設置し、ドライブシャフトでホイールを駆動する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−260497号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】インターネット公開資料:Tech−On!「フランクフルトショー:Audi社、4輪にモータを搭載する電気自動車のスポーツコンセプトe−trnを出展」、ページアドレスhttp://techon.nikkeibp.co.jp/article/EVENT/20090916/175386/?ST=print、2009年9月16日公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1および非特許文献1を始めとして、シャーシに配設したモータから伝達軸を介して駆動輪を駆動するモータ式車両駆動装置では通常、伝達軸や減速用ギヤの強度はモータ出力だけでなく各種の外来トルクを考慮して決められている。つまり、タイヤ側からの衝撃的な入力やブレーキによる急制動においても破損しないように、モータから出力される最大駆動トルクに対するよりもさらに過大な強度を確保するように決められている。例えば、車輪が縁石等へ乗り上げたときにタイヤに加わる荷重がトルクとして衝撃的に駆動装置に加わる場合がある。また、氷結した路上でブレーキロックさせるとタイヤは0.1秒程度で停止するため、モータ慣性による大きなせん断力が伝達軸などに発生する。このような過大な外来トルクを考慮するので、シャフトや減速用ギヤなどの諸部材が過大に頑丈となり、駆動装置全体が大形化して重量が増加するという問題点が生じる。
【0008】
さらに、モータ式車両駆動装置が大形化すると、シャーシ上における配置の自由度が減少するという問題点が派生する。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、強度安全率を低下させることなく従来よりも小形軽量化を実現し、シャーシ上における配置の自由度を確保できるモータ式車両駆動装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1に係るモータ式車両駆動装置の発明は、タイヤおよびホイールを有する駆動輪と、シャーシに配設され、前記駆動輪の前記ホイールを回転駆動する駆動トルクを出力する出力軸を有するモータと、前記モータの前記出力軸に回転連結され前記駆動輪の前記ホイールに連結軸を介して前記駆動トルクを伝達するアウトプット軸と、前記モータの前記出力軸から前記連結軸に動力伝達する動力伝達経路に配設され、伝達トルクが所定トルクに達するまでは連結状態を維持し、前記所定トルクを超過するとすべりを発生して前記伝達トルクを制限するトルク制限機構と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記モータと前記アウトプット軸との間に減速機構を備え、前記トルク制限機構は前記モータの前記出力軸と前記減速機構との間、前記減速機構内、および前記減速機構と前記連結軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記減速機構はプラネタリギヤ形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に連結されたサンギヤと、前記ギヤケースに固定されたリングギヤと、前記サンギヤおよび前記リングギヤに噛合するプラネタリギヤを支承し前記アウトプット軸に連結されたプラネタリキャリアとを有し、前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記サンギヤとの間、ならびに前記プラネタリキャリアと前記アウトプット軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2において、前記減速機構は平行多軸形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に平行配置されたカウンター軸と、前記モータの前記出力軸に設けられた第1駆動ギヤと、前記カウンター軸に設けられて前記第1駆動ギヤに噛合しかつ前記第1駆動ギヤよりも歯数が多い第1従動ギヤと、前記カウンター軸に設けられた第2駆動ギヤと、前記アウトプット軸に設けられて前記第2駆動ギヤに噛合しかつ前記第2駆動ギヤよりも歯数が多い第2従動ギヤとを有し、前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記第1駆動ギヤとの間、前記カウンター軸と前記第1従動ギヤまたは前記第2駆動ギヤとの間、ならびに前記アウトプット軸と前記第2従動ギヤとの間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4のいずれか一項において、左右一対の前記駆動輪に対してそれぞれ、個別の前記モータ、前記減速機構、前記アウトプット軸、および前記トルク制限機構を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項2〜4のいずれか一項において、1台の前記モータ、1個の前記減速機構、および1個の前記アウトプット軸が左右一対の前記駆動輪に対して共用され、前記アウトプット軸は、左右一対の前記駆動輪の前記ホイールにそれぞれ連結された連結軸に差動装置を介して連結され、前記トルク制限機構は、前記差動装置によって前記駆動トルクが分岐される前の位置に左右一対の前記駆動輪に対して共用に配置され、および/または前記駆動トルクが分岐された後の位置に左右一対の前記駆動輪に対して個別に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、トルク制限機構は、伝達トルクが所定トルクに達するまでは直結状態を維持し、所定トルクを超過するとすべりを発生して伝達トルクを制限するようになっている。ここで、モータから出力される最大駆動トルクに基づいて所定トルクの大きさを定めることにより、確実にモータで駆動輪を駆動できる。一方、タイヤ側からの衝撃的な入力やブレーキによる急制動などにより所定トルクを越える過大な外来トルクが伝達されても、トルク制限機構の作用により駆動装置内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。このため、駆動装置内部で過大な強度を確保する必要がなくなり、伝達軸などの諸部材を小形軽量化でき、この効果は駆動装置全体に波及する。したがって、強度安全率を低下させることなく、従来よりも小形軽量化したモータ式車両駆動装置を実現できる。また、駆動装置の小形化により、シャーシ上における配置の自由度を確保できる。
【0017】
請求項2に係る発明では、減速機構を備える構成において、トルク制限機構はモータの出力軸と減速機構との間、減速機構内、および減速機構と駆動輪のホイールに連結された連結軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれている。トルク制限機構の配置には自由度があり、小形軽量化に好適な配置を適宜設計することができる。したがって、伝達軸に加え減速ギヤなどの諸部材を小形軽量化でき、駆動装置全体を小形軽量化できる。
【0018】
請求項3に係る発明では、減速機構はプラネタリギヤ形減速機構であって、トルク制限機構は、モータの出力軸とサンギヤとの間、ならびにプラネタリキャリアとアウトプット軸との間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。したがって、トルク制限機構を好適な位置に配置することができ、モータ式車両駆動装置を小形軽量化する効果が環著になる。
【0019】
請求項4に係る発明では、減速機構は平行多軸形減速機構であって、トルク制限機構は、モータの出力軸と第1駆動ギヤとの間、カウンター軸と第1従動ギヤまたは第2駆動ギヤとの間、ならびにアウトプット軸と第2従動ギヤとの間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。したがって、トルク制限機構を好適な位置に配置することができ、モータ式車両駆動装置を小形軽量化する効果が環著になる。
【0020】
請求項5に係る発明では、左右一対の駆動輪を2台のモータで別々に駆動する構成で、2個のトルク制限機構を個別に備える。これにより、左右いずれの駆動輪に過大な外来トルクが侵入しても、トルク制限機構の作用により駆動装置内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。したがって、強度安全率を低下させることなく、従来よりも小形軽量化したモータ式車両駆動装置を実現できる。
【0021】
請求項6に係る発明では、左右一対の駆動輪を共用の1台のモータで駆動する構成で、トルク制限機構は、差動装置によって駆動トルクが分岐される前の位置に左右一対の駆動輪に対して共用に配置され、および/または駆動トルクが分岐された後の位置に左右一対の駆動輪に対して個別に配置されている。これにより、左右いずれの駆動輪に過大な外来トルクが侵入しても、トルク制限機構の作用により駆動装置内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。したがって、強度安全率を低下させることなく、従来よりも小形軽量化したモータ式車両駆動装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態のモータ式車両駆動装置の全体構成を後方から見た断面図である。
【図2】図1中のロータ軸およびトルク制限機構の詳細を示す断面図である。
【図3】(1)は図1および図2に示された第1実施形態のモータ式車両駆動装置を模式的に示し、(2)はトルク制限機構の配置を変更した第1実施形態の応用構成のモータ式車両駆動装置を模式的に示した図である。
【図4】(1)は共通のトルク制限機構を備える第2実施形態のモータ式車両駆動装置を模式的に示し、(2)は個別のトルク制限機構を備える第2実施形態の応用構成のモータ式車両駆動装置を模式的に示した図である。
【図5】本発明のトルク制限機構に用いることができるトルクリミッターの一部断面斜視図である。
【図6】本発明のトルク制限機構に用いることができる別のトルクリミッターの一部断面斜視図である。
【図7】別のトルクリミッターのトルク制限部の詳細構造およびその作用を説明する断面図であり、(1)は駆動トルクを伝達している状態、(2)は駆動トルクを伝達しない状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための第1実施形態を、図1および図2を参考にして説明する。図1は、第1実施形態のモータ式車両駆動装置の全体構成を後方から見た断面図である。図中で、中心線CLは車両の車幅方向の中心を示している。第1実施形態のモータ式車両駆動装置1は、電気自動車の左右の駆動輪ごとに設けられて、各駆動輪を個別に回転駆動する装置であり、図1には右側の装置が例示されている。モータ式車両駆動装置1は、モータ7、プラネタリギヤ形減速機構8、トルク制限機構5、連結軸3、駆動輪6などにより構成されている。
【0024】
図示されるように、モータ7は大きく分けて、ステータ75が配設されたステータ部76と、ロータ71が配設されたロータ部72とにより構成されている。ロータ部72は、モータ7の出力軸に相当する。ステータ部76は、シャーシ20上に固定支持されている。ステータ部76の車幅方向内側を向いた側面は円板状のステータ部基部761となっている。ステータ部基部761の径方向外側の周縁部には、車幅方向外向きに円筒状のステータ部周面部762が一体形成されている。ステータ部周面部762の径方向内側には、ロータ部72のロータ71がステータ部76に対して回転可能に配設されている。ロータ71は、円筒状となっており、ステータ部周面部762の内周側に離隔して収まっている。
【0025】
ロータ71の径方向内側の面に離隔して対向するように、円筒状のステータ75が配設されている。ステータ75は、ステータ部基部761の径方向外寄りから車幅方向外向きに延びるように一体形成された円筒状のステータ支持部763の外周面に支持されている。ステータ支持部763の径方向内側に離隔して、ロータ部72のロータ支持円筒部721が配設されている。ロータ支持円筒部721の車幅方向外側の部分は、径方向外向きに折り曲げられてロータ71を保持するロータ保持部722が一体形成されている。
【0026】
ロータ支持円筒部721の車幅方向内側の部分は、径方向内向きに折り曲げられて円環状のロータ支持部基部723が一体形成されている。ロータ支持部基部723の内周部724の内側に、ロータ軸79が貫設されている。ロータ支持部基部723の内周部724とロータ軸79との間に、トルク制限機構5が配設されている。ロータ軸79は、ベアリング791によりステータ部基部761に回転可能に支承され、ベアリング792により出力ハブ89と相対回転できるようになっている。ロータ軸79の車幅方向内側端部には、フットブレーキおよびパーキングブレーキを兼用するドラムブレーキのドラム793が配設されている。また、ロータ支持部基部733の車幅方向外側には、ロータ部72と出力ハブ89との間を所定の減速比で接続するプラネタリギヤ形減速機構8が配設されている。
【0027】
一方、ステータ部周面部762の車幅方向外側の部分は径方向内向きに折り曲げられて、ロータ部72のロータ保持部722と離隔して対面する円環状のステータ部外側面部764が一体形成されている。ステータ部外側面部764の径方向内側の端部には、ハブベアリング77を支持するステータ部側ハブベアリング支持部765が一体形成されている。ステータ部76は、ハブベアリング77の内側に、略軸形状の出力ハブ89を回転可能に支承している。
【0028】
プラネタリギヤ形減速機構8は、入力要素となるサンギヤ81、固定要素となるリングギヤ83、およびプラネタリギヤを82支承して出力要素となるプラネタリキャリア84を有する周知の減速機構である。サンギヤ81は、ロータ軸79のトルク制限機構5よりも車幅方向外側の外周面に刻設されている。複数のプラネタリギヤ82は、サンギヤ81の周りに配設され、サンギヤ81に噛合して公転するようになっている。リングギヤ83は、複数のプラネタリギヤ82に噛合するようにプラネタリギヤ82の外側に配設され、かつギヤケース85に保持(固定)されている。ギヤケース85は、ステータ部76側のハブベアリング支持部765に固定支持されている。プラネタリキャリア84は、複数のプラネタリギヤ82の軸を支承して配設されている。プラネタリキャリア84は、その車幅方向外側の出力ハブ89と一体形成されている。プラネタリギヤ形減速機構8の減速比は、各ギヤ81、82、83の歯数を設定することで適宜定められる。
【0029】
連結軸3は、プラネタリギヤ形減速機構8の出力ハブ89を兼ねるアウトプット軸に連結され、車幅方向に延在して配置されている。即ち、連結軸3の車幅方向内側の一端31は出力ハブ89に結合され、外側の他端34は駆動輪6のホイール64に結合されている。連結軸3は途中に2つの等速ジョイント32、33を有し、駆動輪6とシャーシ20とが相対変位しても、駆動トルクを等速で伝達できるようになっている。
【0030】
駆動輪6は、連結軸3の車幅方向外側に配設され、ホイール64およびタイヤ67を主にして構成されている。詳述すると、ホイール64を形成する円盤状のホイールディスク65が、連結軸3の他端33に固設されている。また、ホイールディスク65は、上側ブラケット21および下側ブラケット22により、図略のサスペンション装置を介してシャーシ20に相対変位可能に連結されている。ホイールディスク65の外周には筒状のリム部66が形成され、リム部66の外周にタイヤ67が配設されて駆動輪6が構成されている。
【0031】
図2は、図1中のロータ軸79およびトルク制限機構5の詳細を示す断面図である。トルク制限機構5は、軸線AYを中心として概ね軸対称であり、ロータ軸79側の支持フランジ51、2枚のライニング材52、53、圧接部材54、2枚一対の皿ばね55、56、回り止めリング57、押さえリング58などで構成されている。ロータ軸79の車幅方向中間よりもやや外側寄りに、径方向外向きに延在するように支持フランジ51が一体形成されている。ロータ軸79の支持フランジ51の車幅方向内側は、段差を有して縮径され、縮径された外周面の軸線AY方向の途中にスプライン溝795が形成されている。さらに、スプライン溝795の内側端部の外周面に雄ねじ796が螺設されている。
【0032】
ロータ軸79の支持フランジ51の車幅方向内側にはロータ支持部基部723の内周部724が配置され、内周部724を挟み込んで2枚の円環状のライニング材52、53が配置されている、内側(図中の左側)のライニング材53のさらに内側に、圧接部材54が配置されている。圧接部材54は、ライニング材53に摺接する環状板部541と、環状板部541の外周縁から軸線AX内側方向に延びる筒状部542とで形成されている。環状板部541の内側(図中の左側)で筒状部542とスプライン溝795との間に、2枚一対の円環状の皿ばね55、56が向かい合って配置されている。内側の皿ばね56のさらに内側に回り止めリング57が配置されている。回り止めリング57は、スプライン溝795に嵌合しており、軸線AX方向への移動はできるが、ロータ軸32に対して相対回転できないようになっている。回り止めリング57の内側に、雄ねじ796と螺合して押さえリング58が配置される。
【0033】
ここで、押さえリング58を雄ねじ796に対して締め込んでゆくと、押さえリング58は回り止めリング57を車幅方向外側に押し込む。この回り止めリング57の変位により、一対の皿ばね55、56が付勢される。これにより、2枚のライニング材52、53を介して、ロータ支持部基部723の内周部724が支持フランジ51に圧接される。ライニング材52、53は、摺動摩擦抵抗の大きさを安定化する機能を有している。したがって、押さえリング58の雄ねじ324への締め込み位置を調整することにより、皿ばね55、56の変形量すなわち付勢力を調整できる。これにより、ロータ部72とロータ軸79とがすべり始める(相対回転を始める)所定トルクを自在に設定できる。所定トルクの大きさは、モータ7から出力される最大駆動トルクに基づいて適宜定める。押さえリング58の締め込み位置の調整を行った後に、ねじ59を用いて押さえリング58を回り止めリング57に固定し、調整した所定トルクを安定化する。なお、トルク制限機構5にトルク伝達の方向依存性はなく、ロータ部72からロータ軸79へのトルク伝達および逆方向のトルク伝達で所定トルクは概ね同じ値になる。
【0034】
本第1実施形態では、トルク制限機構5は、ロータ部72とロータ軸79との間に組み込まれており、換言すればモータ7の出力軸とサンギヤ81との間に組み込まれている。
【0035】
第1実施形態のモータ式車両駆動装置1では、トルク制限機構5は、モータ7から出力される駆動トルクが所定トルクに達するまで、ロータ部72とロータ軸79との直結状態を維持し、連結軸3およびホイール64までを一体的に回転させる。そして、駆動トルクが所定トルクを超過すると、ロータ部72とロータ軸79との間ですべりが発生して互いに相対回転し、伝達トルクを制限するようになっている。したがって、タイヤ67側からの衝撃的な入力やドラムブレーキのドラム793による急制動などにより所定トルクを越える過大な外来トルクが連結軸3やロータ軸79に伝達されても、トルク制限機構5の作用により駆動装置1内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。
【0036】
このため、駆動装置1内部で過大な強度を確保する必要がなくなり、ロータ軸79や各ギヤ81〜83、さらには連結軸3などの諸部材を小形軽量化できる。この効果は、例えばステータ部76や出力ハブ89、ベアリング77、791、792の小形軽量化など、駆動装置1全体に波及する。したがって、強度安全率を低下させることなく、従来よりも小形軽量化したモータ式車両駆動装置1を実現できる。また、駆動装置1の小形化により、シャーシ20上における配置の自由度を確保できる。
【0037】
例えば、トルク制限機構5を備えない従来のモータ式車両駆動装置では、モータから出力される最大駆動トルクの10倍程度の外来トルクを考慮した強度を確保していた。これに対して、本第1実施形態で所定トルクを最大駆動トルクの1.2倍程度に設定すれば確実にモータ7で駆動輪6を駆動でき、一方、最大駆動トルクの2.5倍程度の外来トルクに対する強度を確保すれば強度安全率は十分である。したがって、考慮すべき外来トルクが従来の(1/4)程度になって、格段の小形軽量化を実現できる。
【0038】
なお、第1実施形態のプラネタリギヤ形減速機構8の用法は、上述に限定されない。例えば、リングギヤをモータの出力軸に連結して入力要素とし、サンギヤをギヤケースに連結して固定要素とし、プラネタリギヤを支承するプラネタリキャリアを連結軸に連結して出力要素としてもよい。また、本発明は減速機構の形式を限定しない。例えば、平行多軸形減速機構や、サイクロイド形減速機構、ハーモニック形減速機構を備えるモータ式車両駆動装置でも、本発明を実施できる。
【0039】
平行多軸形減速機構を用いる場合は、シャーシ20に固定されたハウジングにモータを固定し、ハウイングにカウンター軸および連結軸をモータの出力軸と平行に軸承し、モータの出力軸に第1駆動ギヤを設け、カウンター軸に第1駆動ギヤに噛合しかつ前記第1駆動ギヤよりも歯数が多い第1従動ギヤおよび第2駆動ギヤを設け、アウトプット軸に第2駆動ギヤに噛合しかつ第2駆動ギヤよりも歯数が多い第2従動ギヤ設け、アウトプット軸を駆動輪のホイールに連結された連結軸に連結する。そして、トルク制限機構は、モータの出力軸と第1駆動ギヤとの間、カウンター軸と第1従動ギヤまたは第2駆動ギヤとの間、ならびに連結軸と第2従動ギヤとの間の少なくとも一つの位置に配置するようにする。ここでアウトプット軸は平行多軸形減速機構の出力軸を兼ねる。
【0040】
また、トルク制限機構5の配置には自由度があるので、第1実施形態におけるトルク制限機構5の配置の応用例を図3に例示して説明する。図3の(1)は図1および図2に示された第1実施形態のモータ式車両駆動装置1を模式的に示し、(2)はトルク制限機構5の配置を変更した第1実施形態の応用構成のモータ式車両駆動装置1Aを模式的に示した図である。図3(1)に示されるように、第1実施形態では、左右一対の駆動輪6に対してそれぞれ、個別のモータ7、トルク制限機構5、プラネタリギヤ形減速機構8、およびプラネタリギヤ形減速機構8の出力軸を兼ねるアウトプット軸に連結された連結軸3を記載した順序で備えている。
【0041】
ここで、トルク制限機構5は、モータ7の出力軸であるロータ部72とプラネタリギヤ形減速機構8との間、プラネタリギヤ形減速機構8内、およびプラネタリギヤ形減速機構8と連結軸3との間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。例えば、図3(2)に示されるように、トルク制限機構5Aをプラネタリギヤ形減速機構8と連結軸3との間に組み込んだモータ式車両駆動装置1Aとすることができる。これは、第1実施形態の図1および図2において、ロータ部72とロータ軸79とを一体的に結合し、プラネタリキャリア84と出力ハブ89とを別部材としてその間にトルク制限機構5Aを組み込むことで実現できる。ただし、プラネタリギヤ形減速機構8の出力側にトルク制限機構5Aを配置する構成では、エンジン側から伝達される駆動トルクは、入力側配置のトルク制限機構5と比較して減速比の逆数倍の駆動トルクを考慮することになる。しかし、駆動輪6側から伝達されるトルクは増大されることがない。
【0042】
次に、左右一対の駆動輪を共用のモータで駆動する第2実施形態のモータ式車両駆動装置について、図4を参考にして説明する。図4の(1)は共用のトルク制限機構5Bを備える第2実施形態のモータ式車両駆動装置1Bを模式的に示し、(2)は個別のトルク制限機構5Cを備える第2実施形態の応用構成のモータ式車両駆動装置1Cを模式的に示した図である。
【0043】
図4(1)に示されるように、第2実施形態のモータ式車両駆動装置1Bでは、1台のモータ70および1個の減速機構80が左右一対の駆動輪6に対して共用されている。減速機構80の出力軸を兼ねる1個のアウトプット軸は、左右一対の駆動輪6のホイールにそれぞれ連結された連結軸3に差動装置4を介して連結されている。トルク制限機構5Bは、差動装置に4よって駆動トルクが分岐される前の位置に、モータ70と減速機構80との間に左右一対の駆動輪6に対して共用に配置されている。なお、差動装置4は、従来のエンジン車に搭載される装置と同様の構成で同様の作用を有するため、説明は省略する。
【0044】
また、図4(2)に示されるように、第2実施形態の応用構成のモータ式車両駆動装置1Cでは、トルク制限機構5Cは、差動装置4によって駆動トルクが分岐された後の位置に、左右一対の前記駆動輪6に対して個別に配置されている。図には、トルク制限機構5Cが差動装置4と連結軸30との間に配置された例が示されている。
【0045】
第2実施形態およびその応用構成では、左右いずれの駆動輪6に過大な外来トルクが侵入しても、共通または個別のトルク制限機構5B、5Cのすべりの作用により駆動装置1B、1C内部には所定トルクを大幅に超える過大な応力は発生しない。したがって、強度安全率を低下させることなく、従来よりも小形軽量化したモータ式車両駆動装置1B、1Cを実現できる。
【0046】
なお、トルク制限機構5B、5Cの配置は、図4の例に限定されず、モータ70の出力軸から連結軸30に動力伝達する動力伝達経路内であればよい。ただし、モータ70から出力される駆動トルクが分岐される前の位置であれば共通のトルク制限機構5Bを用い、駆動トルクが分岐された後の位置であれば個別のトルク制限機構5Cを用いる。また、減速機構80の出力側にトルク制限機構を配置する構成では、入力側配置のトルク制限機構と比較して減速比の逆数倍の駆動トルクを考慮することになる。しかし、駆動輪6側から伝達されるトルクは増大されることがない。
【0047】
次に、第1および第2実施形態のモータ式車両駆動装置1、1A、1B、1Cに共通に応用できるトルク制限機構を2種類説明する。図5は、本発明のトルク制限機構に用いることができるトルクリミッター9の一部断面斜視図である。トルクリミッター9は、駆動軸91と従動フランジ92との間の駆動トルクの伝達を制限する機構である。トルクリミッター9は、駆動軸91および従動フランジ92の他に、調整ナット931、板ばね932、スイッチリング933、および鋼球934などで構成されており、次に詳述する。
【0048】
駆動軸91は、図示されるように筒状の部材であり、軸方向の一端面(図中の左前側)に取り付けねじ孔(図には見えていない)を有し、さらに一端面から筒状の内周に向かって徐々に内径が減少するテーパブッシュ911を有している。取り付けねじ孔とテーパブッシュ911を用いて、駆動トルクを入力する任意の軸体919を駆動軸91に結合することができる。駆動軸91の一端面側の外周には雄ねじ912が刻設されて、調整ナット931が螺着されている。駆動軸91の軸方向の中間付近の外周には、径方向に突出する環状ハブ913が設けられている。環状ハブ913の外周面には、軸線方向から見て略V字状の凹部914が複数個形成されている。各凹部914には、鋼球934が嵌入配置されている。
【0049】
従動フランジ92は、駆動トルクを出力する略環状の部材であり、駆動軸91の外周に環状ハブ913と隣接して配設されている。従動フランジ92は、駆動軸91に対して軸線方向への移動はできず、相対回転は可能とされている。従動フランジ92の環状ハブ913に対向する面には、半径方向から見て略V字状で鋼球934が嵌入できる凹部921が複数個形成されている。
【0050】
調整ナット931は略環状で、内周面に雌ねじ93Aが刻設されている。調整ナット931の外周側は、一端面側(図中の左前側)で外径が大きく、テーパ部93Bを挟んで、他端面側(図中の右奥側)に小径部93Cが形成されている。調整ナット931の小径部93Bの外側に、略環状の板ばね932が配設されている。板ばね932の他端面側に、スイッチリング933が配設されている。スイッチリング933は略環状で、内周側は一端面側(図中の左前側)が小さな内径の小径部93D、他端面側(図中の右奥側)が大きな内径の大径部93Eとなっている。スイッチリング933の大径部93Eと、駆動軸91の環状ハブ913の凹部914との間で鋼球934を半径方向に保持できるようになっている。また、スイッチリング933の小径部93Dと、従動フランジ92の凹部921との間で鋼球934を軸線方向に保持できるようになっている。
【0051】
ここで、調整ナット931を駆動軸91の雄ねじ912に対して締め込んでゆくと、調整ナット931のテーパ部93Bは板ばね932を他端面方向(図中の右奥方向)に押し込む。これにより、板ばね932がスイッチリング933を軸線方向に付勢し、スイッチリング933は鋼球934を従動フランジ92の凹部921に嵌入圧接する。したがって、小さな駆動トルクは、駆動軸91の環状ハブ913から鋼球934を経由して従動フランジ92に伝達される。また、駆動トルクが所定トルクを超過すると、鋼球934が板ばね932の付勢力に抗して従動フランジ92の凹部921から逸脱し、駆動軸91と従動フランジ92とがすべって相対回転する。これにより、伝達される駆動トルクを制限できる。なお、トルクリミッター9にトルク伝達の方向依存性はなく、所定トルクの大きさは調整ナット931の締め込み量を調整することにより自在に調整可能である。
【0052】
図5のトルクリミッター9は、例えば次のようにして、第1実施形態に組み込むことができる。すなわち、図2でトルク制限機構5を無くして、トルクリミッター9の駆動軸91をロータ軸79に結合し、従動フランジ92をロータ支持部基部723の内周部724に結合する。トルクリミッター9を組み込んだ態様における作用および効果は、第1実施形態と概ね同様になる。
【0053】
図6は、本発明のトルク制限機構に用いることができる別のトルクリミッター90の一部断面斜視図である。また、図7は、別のトルクリミッター90のトルク制限部97の詳細構造およびその作用を説明する断面図である。別のトルクリミッター90は、2つのフランジ94、95の間で伝達される駆動トルクを制限する機構である。トルクリミッター90は、Aフランジ94およびBフランジ95の他に、外枠96、Aフランジ94側のトルク制限部97、およびBフランジ95側のスラストパッド98で構成されており、次に詳述する。
【0054】
Aフランジ94およびBフランジ95は、図6に示されるように略筒状の部材であり、同一外径寸法部分をもち、軸線を共有している。Aフランジ94およびBフランジ95の同一外径寸法部分には、筒状の外枠96が外嵌されている。外枠96に対して、Aフランジ94は固定され、Bフランジ95は軸線方向への移動はできず相対回転は可能とされている。
【0055】
トルク制限部97は、Aフランジ94の外周に等角度間隔で複数個設けられている。トルク制限部97は、図6および図7に示されるように、外筒部97A、キャリアロッド97B、鋼球97G、中間エレメント97H、スラストワッシャ97I、および複数の皿ばね97Jで構成されている。外筒部97Aは軸線方向に配置され、その中心にキャリアロッド97Bを軸線方向に移動可能に保持している。キャリアロッド97Bは、Bフランジ95に対向する一端側(図7の左側)が太い大径部97Cで、途中に段差部97Dを有し、他端側(図7の右側)が細い小径部97Eになっている。キャリアロッド97Bの大径部97Cの先端には、球状空間を有する鋼球保持部97Fが設けられ、鋼球保持部97F内に鋼球97Gが回転可能に収容されている。
【0056】
キャリアロッド97Bの段差部97Dと外筒部97Aとの間に、楔状の中間エレメント97Hが周方向に複数個配置されている。中間エレメント97Hは、中心側が肉厚で外側が肉薄の略台形断面形状になっている。さらに、キャリアロッド97Bの小径部97Eと外筒部97Aとの間に、略環状のスラストワッシャ97Iおよび略環状の複数の皿ばね97Jが配置されている。スラストワッシャ97Iは、中心側が肉薄で外側が肉厚の略台形断面形状になっており、中間エレメント97Hとテーパ面同士で摺接している。略環状の複数の皿ばね97Jは軸線方向に列設されており、他端側が外筒部97Aによって支持され、一端側がスラストワッシャ97Iを付勢している。この付勢力は、中間エレメント97Hからキャリアロッド97Bの段差部97Dに伝わり、キャリアロッド97BはBフランジ95に向けて付勢されている。
【0057】
一方、Bフランジ95のAフランジ94に対向する面には、スラストパッド98が等角度間隔で複数個設けられている。スラストパッド98は、トルク制限部97のキャリアロッド97Bの先端の鋼球97Gが圧接する凹部98Aを有している。
【0058】
図7で、(1)は駆動トルクを伝達している状態、(2)は駆動トルクを伝達しない状態をそれぞれ示している。図7(1)に示されるように、付勢されたキャリアロッド97Bの先端の鋼球97Gは、Aフランジ94から突出してBフランジ95のスラストパッド98の凹部98Aに圧接している。したがって、小さな駆動トルクは、鋼球97Gを介して、Aフランジ94とBフランジ95の間で伝達される。ここで、駆動トルクが増加すると、鋼球97Gがキャリアロッド97Bを他端側(図7の右向き矢印Z)に押圧する力が大きくなる。そして、伝達トルクが所定トルクを超過すると、キャリアロッド97Bが皿ばね97Jの付勢力に抗して矢印Z方向に微動しつつ、中間エレメント97Hを径方向外向きに変位させる。これにより、皿ばね97Jの付勢力がキャリアロッド97Bに作用しなくなって、駆動トルクを伝達しないフリー状態となる。なお、トルクリミッター90にトルク伝達の方向依存性はなく、所定トルクの大きさは皿ばね97Jの強度や列設個数、スラストパッド98の凹部98Aの形状などを変更することにより調整可能である。また、フリー状態は、Aフランジ94とBフランジ95の回転数差を検出し、図略の復帰機構を動作させることにより解消できる。
【0059】
図6および図7で説明したトルクリミッター90は、第1および第2実施形態で、駆動トルクを伝達する任意の軸部材の途中を分割して組み込むことができる。トルクリミッター90を組み込んだ態様における作用および効果は、第1および第2実施形態と概ね同様になる。
【0060】
第1および第2実施形態において、トルク制限機構5の配置には自由度があり、トルク制限機構5はモータ7、70の出力軸72に回転連結され駆動輪6のホイール64に連結されたアウトプット軸89に動力伝達する動力伝達経路の途中に配設すればよい。そして、モータ7、70の出力軸72とアウトプット軸89との間に減速機構8、80を備える場合は、トルク制限機構5はモータ7、70の出力軸72と減速機構8、80との間、減速機構8、80内、および減速機構8、80とアウトプット軸89との間の少なくとも一つの位置に組み込むことができる。
【0061】
なお、本発明は、2輪駆動または4輪駆動の電気自動車やハイブリッド車両で実施することができる。さらには、上述したトルク制限機構5、50やトルクリミッター9、90以外の方式のトルク制限機構を用いることもできる。本発明は、その他さまざまな応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1、1A、1B、1C:モータ式車両駆動装置
20:シャーシ 21:上側ブラケット 22:下側ブラケット
3、30:連結軸 31:一端 32、33:等速ジョイント 34:他端
4:差動装置
5、5A、5B、5C:トルク制限機構
51:支持フランジ 52、53:ライニング材 54:圧接部材
55、56皿ばね 57:回り止めリング 58:押さえリング
6:駆動輪 64:ホイール 67:タイヤ
7、70:モータ 71:ロータ 72:ロータ部(出力軸)
75:ステータ 76:ステータ部 79:ロータ軸
8:プラネタリギヤ形減速機構 81:サンギヤ 82:プラネタリギヤ
83:リングギヤ 84:プラネタリキャリア 85:ギヤケース
89:出力ハブ(アウトプット軸)
80:減速機構
9:トルクリミッター(トルク制限機構)
91:駆動軸 92:従動フランジ 931:調整ナット
932:板ばね 933:スイッチリング 934:鋼球
90:別のトルクリミッター(トルク制限機構)
94:Aフランジ 95:Bフランジ 96:外枠
97:トルク制限部 98:スラストパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤおよびホイールを有する駆動輪と、
シャーシに配設され、前記駆動輪の前記ホイールを回転駆動する駆動トルクを出力する出力軸を有するモータと、
前記モータの前記出力軸に回転連結され前記駆動輪の前記ホイールに連結軸を介して前記駆動トルクを伝達するアウトプット軸と、
前記モータの前記出力軸から前記連結軸に動力伝達する動力伝達経路に配設され、伝達トルクが所定トルクに達するまでは連結状態を維持し、前記所定トルクを超過するとすべりを発生して前記伝達トルクを制限するトルク制限機構と、
を備えることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記モータと前記アウトプット軸との間に減速機構を備え、前記トルク制限機構は前記モータの前記出力軸と前記減速機構との間、前記減速機構内、および前記減速機構と前記連結軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記減速機構はプラネタリギヤ形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に連結されたサンギヤと、前記ギヤケースに固定されたリングギヤと、前記サンギヤおよび前記リングギヤに噛合するプラネタリギヤを支承し前記アウトプット軸に連結されたプラネタリキャリアとを有し、
前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記サンギヤとの間、ならびに前記プラネタリキャリアと前記アウトプット軸との間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記減速機構は平行多軸形減速機構であって、前記モータの前記出力軸に平行配置されたカウンター軸と、前記モータの前記出力軸に設けられた第1駆動ギヤと、前記カウンター軸に設けられて前記第1駆動ギヤに噛合しかつ前記第1駆動ギヤよりも歯数が多い第1従動ギヤと、前記カウンター軸に設けられた第2駆動ギヤと、前記アウトプット軸に設けられて前記第2駆動ギヤに噛合しかつ前記第2駆動ギヤよりも歯数が多い第2従動ギヤとを有し、
前記トルク制限機構は、前記モータの前記出力軸と前記第1駆動ギヤとの間、前記カウンター軸と前記第1従動ギヤまたは前記第2駆動ギヤとの間、ならびに前記アウトプット軸と前記第2従動ギヤとの間の少なくとも一つの位置に組み込まれていることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項において、
左右一対の前記駆動輪に対してそれぞれ、個別の前記モータ、前記減速機構、前記アウトプット軸、および前記トルク制限機構を備えることを特徴とするモータ式車両駆動装置。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか一項において、
1台の前記モータおよび1個の前記減速機構、および1個のアウトプット軸が左右一対の前記駆動輪に対して共用され、
前記アウトプット軸は、左右一対の前記駆動輪の前記ホイールにそれぞれ連結された連結軸に差動装置を介して連結され、
前記トルク制限機構は、前記差動装置によって前記駆動トルクが分岐される前の位置に左右一対の前記駆動輪に対して共用に配置され、および/または前記駆動トルクが分岐された後の位置に左右一対の前記駆動輪に対して個別に配置されていることを特徴とするモータ式車両駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192765(P2012−192765A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56440(P2011−56440)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】