説明

ラクトン骨格を含む単量体、高分子化合物及びフォトレジスト組成物

【課題】レジスト用樹脂等に応用した場合に耐薬品性等の安定性を保持しつつ、有機溶剤に対する溶解性に優れ、加水分解性及び/又は加水分解後の水に対する溶解性を向上しうる、高機能性高分子等のモノマー成分等として有用な新規なラクトン骨格を含む単量体を提供する。
【解決手段】下記式(1)
【化1】


(式中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R1はラクトン骨格を有する基を示し、Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示す)
で表されるラクトン骨格を含む単量体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工などを行う際に用いるフォトレジスト用の単量体、高分子化合物、及びフォトレジスト組成物ならびにフォトレジスト組成物を使用する半導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造において、パターン形成のためのリソグラフ技術は飛躍的な革新により、近年その線幅が極微細化されている。リソグラフのための露光は当初、i線、g線が使用され、その線幅も広いものであった。従って、製造される半導体の容量も低かった。しかし、近年の技術開発により、KrFエキシマレーザの使用が可能となり、その線幅も飛躍的に微細なものとなった。その後も、更に短波長であるArFエキシマレーザの適用を目指して開発が進み、極近年においてその実用化がなされた。KrFエキシマレーザでの露光では、従来の樹脂であるノボラック系又はスチレン系樹脂が使用されていたが、ArFエキシマレーザの波長は193nmと更に短波長となり、ノボラック系やスチレン系樹脂のように芳香族を含むものは、その波長を吸収するために、樹脂の構造は芳香族を含まない、つまり脂環族のものに置き換えられた。使用される樹脂はアクリル系がメインであり、アクリル酸を保護基で保護して、露光により発生した酸により保護基が脱離してカルボン酸となり、アルカリ可溶性となる機構を応用している。現在使用されている保護基は脂環族で極性基を有していないものが多く、それだけでは基板への密着性の悪さや、アルカリ現像液などとの親和性に欠けており、極性基を有する脂環骨格をエステル基とするアクリル系の単量体が数多く提案されている。中でも、極性基としてラクトン環を有する脂環式骨格はその機能性は高く評価されて数多く使用されている。その一部として特許文献1〜6がある。ラクトン環の単環のエステル基の提案も特許文献7、8などにあるが、従来のものはレジストに要求される機能に欠けており、あまり使用されていないようである。現在は、基板と露光機の間を密度の高い液で満たす液浸露光と言う方法が検討され、更に、レジストパターンは微細化され、それに伴って膜厚も薄くなる傾向があり、耐エッチング性を有する単量体への要望が強い。また、液浸露光においては、水への追随性が求められるので、撥水性の高い樹脂が好ましい。さらに、ラクトン環を有する脂環族のアクリルエステルを多く有する樹脂は、レジスト溶媒など有機溶媒への溶解性に難があり、溶解度改善もレジストに使用される樹脂に要望は強いものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−026446号公報
【特許文献2】特開2001−109154号公報
【特許文献3】特開2001−188346号公報
【特許文献4】特開2008−170983号公報
【特許文献5】特開2005−352466号公報
【特許文献6】特開2008−170983号公報
【特許文献7】特開平10−239846号公報
【特許文献8】特開平10−274852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、レジスト用樹脂等に応用した場合に耐薬品性等の安定性を保持しつつ、有機溶剤に対する溶解性に優れ、加水分解性及び/又は加水分解後の水に対する溶解性を向上しうる、高機能性高分子等のモノマー成分等として有用な新規なラクトン骨格を含む単量体とその樹脂、及びフォトレジスト用組成物ならびに半導体の製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、さらに撥水性を付与できる新規なラクトン骨格を含む単量体とその樹脂、及びフォトレジスト用組成物並びに半導体の製造方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、フォトレジスト用樹脂として使用した場合に、高い耐エッチング性を示す樹脂を提供して、特に液浸露光で使用されるフォトレジスト樹脂及びその組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、フォトレジスト樹脂に使用されうるラクトン骨格を有する単量体を種々検討した結果、樹脂にした場合に溶剤溶解性が良好で、高いレジスト性能を有する単量体を見出すに至り、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

(式中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R1はラクトン骨格を有する基を示し、Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示し、環Zaは置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す)
で表されるラクトン骨格を含む単量体を提供する。
【0007】
本発明は、また、下記式(I)
【化2】

(式中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R1はラクトン骨格を有する基を示し、Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示し、環Zaは置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す)
で表されるモノマー単位を少なくとも有する高分子化合物を提供する。
【0008】
この高分子化合物は、式(I)で表されるモノマー単位に加えて、さらに、酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位を少なくとも有していてもよい。
【0009】
酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位には、下記式(IIa)〜(IId)
【化3】

(式中、環Z1は置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す。Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R2〜R4は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R5は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、p個のR5のうち少なくとも1つは、−COORc基を示す。前記Rcは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。pは1〜3の整数を示す。R6、R7は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R8は水素原子又は有機基を示す。R6、R7、R8のうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する原子とともに環を形成していてもよい)
から選ばれるモノマー単位が含まれる。
【0010】
前記高分子化合物は、式(I)で表されるモノマー単位に加えて、さらに、少なくとも1つの置換基を有する脂環式骨格を含有するモノマー単位を少なくとも有していてもよい。
【0011】
少なくとも1つの置換基を有する脂環式骨格を含有するモノマー単位には、下記式(III)
【化4】

(式中、環Z2は炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R9は環Z2に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、又は保護基で保護されていてもよいスルホン酸基を示す。qはR9の個数であって1〜5の整数を示す)
から選ばれるモノマー単位が含まれる。
【0012】
前記高分子化合物としては、式(I)で表されるモノマー単位と、酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位と、ヒドロキシル基及びヒドロキシメチル基から選択された置換基を少なくとも1つ有する脂環式骨格を含有するモノマー単位とを少なくとも有するのが好ましい。
【0013】
前記高分子化合物は、式(I)で表されるモノマー単位に加えて、さらに、式(I)で表されるモノマー単位以外のラクトン骨格を有するモノマー単位を少なくとも有していてもよい。
【0014】
本発明は、さらに、前記の高分子化合物と光酸発生剤とを少なくとも含むフォトレジスト組成物を提供する。
【0015】
本発明は、さらにまた、前記のフォトレジスト組成物を使用してパターンを形成することを特徴とする半導体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高分子化合物に誘導した場合に耐薬品性等の安定性を保持しつつ、有機溶剤に対する溶解性に優れ、環の加水分解性及び/又は加水分解後の水に対する溶解性を向上しうる、高機能性高分子化合物のモノマー成分として有用な新規なラクトン骨格を含むエステル基を有する単量体とその樹脂、及びフォトレジスト用組成物ならびに半導体の製造方法が提供される。また、さらに撥水性を付与できる新規なラクトン骨格を含む単量体とその樹脂、及びフォトレジスト用組成物並びに半導体の製造方法が提供される。本発明のフォトレジスト組成物によれば、アルカリ現像液への溶解性が改善され、半導体の製造においてより鮮明なパターンを画くことを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[ラクトン骨格を含む単量体]
本発明のラクトン骨格を含む単量体は前記式(1)で表される。式(1)中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R1はラクトン骨格を有する基を示し、Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示し、環Zaは置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す。
【0018】
式(1)に記載されたRaにおいて、ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが含まれる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、C1-4アルキル基、特にメチル基が好ましい。置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、クロロメチル基などのクロロアルキル基;トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基などのフルオロアルキル基(好ましくは、C1-3フルオロアルキル基)などのハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基などが挙げられる。
【0019】
aとしては、水素原子、メチル基等のC1-3アルキル基、トリフルオロメチル基等のC1-3ハロアルキル基が好ましく、特に、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0020】
1におけるラクトン骨格を有する基としては、例えば、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環、ε−カプロラクトン環などの単環のラクトン環から構成されるラクトン骨格を有する基;6−オキサビシクロ[3.2.11,5]オクタン−7−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環等の、ラクトン環を含む多環のラクトン骨格などが挙げられる。
【0021】
ラクトン骨格は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基等のC1-4アルキル基など)、ハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等のC1-4ハロアルキル基など)、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子等)、アシル基(例えば、アセチル基等のC1-10アシル基など)、シアノ基、アリール基(フェニル、ナフチル基等)、1−アルケニル基(ビニル、アリル基等のC1-4アルケニル基)、ニトロ基、スルフォン基、スルフォキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基(例えば、保護基で保護されていてもよいヒドロキシC1-4アルキル基など)、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基(カルボキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシ−カルボニル基;フェノキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基など)、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいスルホン酸基(スルホン酸基、スルフォン酸アルキルエステル基など)などが挙げられる。前記保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0022】
式(1)において、R1におけるラクトン骨格は式中に示されるエステル結合(−COO−)と直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン基等のアルキレン基(例えばC1-6アルキレン基等)などが挙げられる。
【0023】
1の代表的な例として、下記式(4)、式(5)、式(6)、式(7)で表される基が挙げられる。Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示すが、炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、アルキル基で置換されていても良いメチレン基、アルキル基で置換されていても良いエチレン基、アルキル基で置換されていても良いプロピレン基が挙げられる。中でも、Aとして、炭素数1〜6のアルキレン基又は非結合が好ましい。nは1〜3の整数を示す。式(4)〜(7)中の環は、例えば前記のような置換基を有していてもよい。
【化5】

【0024】
1の具体的な例として、例えば、2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、5−メチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−メチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、9−メチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、9−カルボキシ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04、8]ノナン−5−イル基、9−メトキシカルボニル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、9−エトキシカルボニル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04、8]ノナン−5−イル基、9−t−ブトキシカルボニル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04、8]ノナン−5−イル基、1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−シアノ−9−メチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−シアノ−7,7−ジメチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−シアノ−2−オキソ−3,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−フルオロ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−フルオロ−9−メチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−フルオロ−7,7−ジメチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−フルオロ−2−オキソ−3,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−トリフルオロメチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−トリフルオロメチル−9−メチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−トリフルオロメチル−7,7−ジメチル−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基、1−トリフルオロメチル−2−オキソ−3,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基等の置換基を有していてもよい2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基又は2−オキソ−3,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル基;γ−ブチロラクトン−2−イル基、3−メチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,3−ジメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、4−メチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、4,4−ジメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,4,4−トリメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,3,4−トリメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基、3,3,4,4−テトラメチル−γ−ブチロラクトン−2−イル基等のC1-4アルキル基等の置換基を有していてもよいγ−ブチロラクトン−2−イル基;δ−バレロラクトン−2−イル基、3−メチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、3,3−ジメチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、4−メチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、4,4−ジメチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、5−メチル−δ−バレロラクトン−2−イル基、5,5−ジメチル−δ−バレロラクトン−2−イル基等のC1-4アルキル基等の置換基を有していてもよいδ−バレロラクトン−2−イル基;ε−カプロラクトン−2−イル基、2−メチル−ε−カプロラクトン−2−イル基、2,2−ジメチル−ε−カプロラクトン−2−イル基等のC1-4アルキル基等の置換基を有していてもよいε−カプロラクトン−2−イル基などが挙げられる。
【0025】
Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示す。2価の有機基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基(特に、C1-6アルキレン基);ビニレンなどのアルケニレン基(特に、C2-6アルケニレン基);シクロペンチレン、シクロヘキシレン基等のシクロアルケニレン基;これらの2以上が、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−;−OCO−)などの連結基を介して結合した2価の有機基などが挙げられる。特に、メチレン、エチレン、プロピレンなどが好ましい。これらの例示された基にはハロゲン原子、特にフッ素原子で置換されたものも有用である。
【0026】
環Zaにおける炭素数5〜20の脂環式炭化水素環は単環であっても、縮合環や橋かけ環等の多環であってもよい。代表的な脂環式炭化水素環として、例えば、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、クロロシクロヘキサン環、メチルシクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[2.2.2]オクテン環、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などが挙げられる。脂環式炭化水素環には、メチル基等のアルキル基(例えば、C1-4アルキル基など)、塩素原子等のハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、オキソ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基などの置換基を有していてもよい。
【0027】
前記式(1)で示されるラクトン骨格を有する単量体の合成方法について、その反応経路を下記式により示す。
【0028】
【化6】

【0029】
式(8)で示される不飽和カルボン酸エステル基を有するアルコールと、式(9)で表される環Zaを有するカルボン酸無水物(脂環式ジカルボン酸無水物)との反応により、式(10)で表されるカルボン酸が得られる。この反応はアルコールと酸無水物とを反応させる場合の一般的な条件で行うことができる。次いで、得られた式(10)で表されるカルボン酸と式(11)で表されるアルコール(ラクトン骨格を有するアルコール)とを反応させることにより、式(1)で表されるラクトン骨格を有する単量体が得られる。この反応は有機溶媒(例えば、アセトニトリル等)を使用して行うことが好ましい。この反応は、脱水縮合剤[例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド又はその塩等のカルボジイミド化合物など]を用いて行うのが好ましい。反応は、ピリジンやジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの有機塩基の存在下で行ってもよい。反応温度は、例えば、−30℃〜100℃程度である。式(10)で表される化合物の使用量は、式(11)で表される化合物1モルに対して、例えば0.8〜10モル程度である。
【0030】
式(9)で表されるカルボン酸無水物の代表的な例として下記式で表される化合物が挙げられる。
【化7】

【0031】
また、式(10)で表されるカルボン酸の代表的な例として下記式で表される化合物が挙げられる。
【化8】

【0032】
反応で生成した式(10)で表されるカルボン酸や式(1)で表される化合物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段により、又はこれらを組み合わせることにより分離精製できる。
【0033】
[高分子化合物]
本発明の高分子化合物は上記式(1)で表されるラクトン骨格を含む単量体に対応するモノマー単位(繰り返し単位)、すなわち前記式(I)で表されるモノマー単位を含んでいる。該モノマー単位は1種又は2種以上含んでいてもよい。このような高分子化合物は、上記式(1)で表されるラクトン骨格を含む単量体を重合に付すことにより得ることができる。
【0034】
式(I)で表されるモノマー単位は、ポリマーの有機溶媒溶解性を高める機能、膜の撥水性を高める機能を有する。また、ラクトン環或いはエステル結合が加水分解されやすく、加水分解後のポリマーの水溶性を高めるという利点を有する。そのため、本発明の高分子化合物は、例えば所定の処理により水溶性に変化する機能が必要とされる分野で用いられる高機能性ポリマー、特にフォトレジスト用樹脂として有用である。
【0035】
本発明の高分子化合物は、用途や要求される機能に応じて、式(I)で表されるモノマー単位に加えて、他のモノマー単位を有していてもよい。このような他のモノマー単位は、該他のモノマー単位に対応する重合性不飽和単量体を前記式(1)で表されるラクトン骨格を含む単量体と共重合することにより形成できる。
【0036】
上記他のモノマー単位として、酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位、例えば、前記式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)で表されるモノマー単位が挙げられる。式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)で表されるモノマー単位に対応する重合性不飽和単量体は、それぞれ、下記式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)で表される。
【0037】
【化9】

【0038】
上記式中、環Z1は置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す。Raは前記に同じ。R2〜R4は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R5は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、p個のR5のうち少なくとも1つは、−COORc基を示す。前記Rcは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。pは1〜3の整数を示す。R6、R7は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R8は水素原子又は有機基を示す。R6、R7、R8のうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する原子とともに環を形成していてもよい。
【0039】
式(2a)〜(2c)中、環Z1における炭素数5〜20の脂環式炭化水素環は単環であっても、縮合環や橋かけ環等の多環であってもよい。代表的な脂環式炭化水素環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などが挙げられる。脂環式炭化水素環には、メチル基等のアルキル基(例えば、C1-4アルキル基など)、塩素原子等のハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、オキソ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基などの置換基を有していてもよい。環Z1は例えばアダマンタン環等の多環の脂環式炭化水素環(橋かけ環式炭化水素環)であるのが好ましい。
【0040】
式(2a)、(2b)、(2d)中のR2〜R4、R6、R7における置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素1〜6のアルキル基;トリフルオロメチル基等の炭素1〜6のハロアルキル基などが挙げられる。式(2c)中、R5におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素1〜20程度のアルキル基が挙げられる。R5における保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基としては、例えば、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基など)などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基としては、前記保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基が炭素数1〜6のアルキレン基を介して結合している基などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいカルボキシル基としては、−COORd基などが挙げられる。前記Rdは水素原子又はアルキル基を示し、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキル基などが挙げられる。R5において、−COORc基のRcにおける第3級炭化水素基としては、例えば、t−ブチル、t−アミル、2−メチル−2−アダマンチル、(1−メチル−1−アダマンチル)エチル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基には2−テトラヒドロフラニル基が、テトラヒドロピラニル基には2−テトラヒドロピラニル基が、オキセパニル基には2−オキセパニル基が含まれる。
【0041】
8における有機基としては、炭化水素基及び/又は複素環式基を含有する基が挙げられる。炭化水素基には脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらが2以上結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基(C1-8アルキル基等);アリル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基(C2-8アルケニル基等);プロピニル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキニル基(C2-8アルキニル基等)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(3〜8員シクロアルキル基等);シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基(3〜8員シクロアルケニル基等);アダマンチル、ノルボルニル基等の橋架け炭素環式基(C4-20橋架け炭素環式基等)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等のC6-14芳香族炭化水素基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、ベンジル、2−フェニルエチル基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、アルキル基(C1-4アルキル基等)、ハロアルキル基(C1-4ハロアルキル基等)、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、オキソ基などの置換基を有していてもよい。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0042】
前記複素環式基としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む複素環式基が挙げられる。
【0043】
好ましい有機基として、C1-8アルキル基、環式骨格を含む有機基等が挙げられる。前記環式骨格を構成する「環」には、単環又は多環の非芳香族性又は芳香族性の炭素環又は複素環が含まれる。なかでも、単環又は多環の非芳香族性炭素環、ラクトン環(非芳香族性炭素環が縮合していてもよい)が特に好ましい。単環の非芳香族性炭素環として、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの3〜15員程度のシクロアルカン環などが挙げられる。
【0044】
多環の非芳香族性炭素環(橋架け炭素環)として、例えば、アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環などの多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環などの2環系、3環系、4環系などの橋架け炭素環(例えば、炭素数6〜20程度の橋架け炭素環)などが挙げられる。前記ラクトン環として、例えば、γ−ブチロラクトン環、4−オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−5−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン環などが挙げられる。
【0045】
前記環式骨格を構成する環は、メチル基等のアルキル基(例えば、C1-4アルキル基など)、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基(例えば、C1-4ハロアルキル基など)、塩素原子やフッ素原子等のハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいスルホン酸基などの置換基を有していてもよい。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0046】
前記環式骨格を構成する環は、式(2d)中に示される酸素原子(R8の隣接位の酸素原子)と直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;カルボニル基;酸素原子(エーテル結合;−O−);オキシカルボニル基(エステル結合;−COO−);アミノカルボニル基(アミド結合;−CONH−);及びこれらが複数個結合した基などが挙げられる。
【0047】
6、R7、R8のうち少なくとも2つは、互いに結合して隣接する原子とともに環を形成していてもよい。該環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などのシクロアルカン環;テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、オキセパン環などの含酸素環;橋架け環などが挙げられる。
【0048】
式(2a)〜(2d)で表される化合物には、それぞれ立体異性体が存在しうるが、それらは単独で又は2種以上の混合物として使用できる。
【0049】
式(2a)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、1−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、5−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン。
【0050】
式(2b)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン、1−ヒドロキシ−3−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン、1−(1−エチル−1−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルプロピル)アダマンタン。
【0051】
式(2c)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−t−ブトキシカルボニル−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン。
【0052】
式(2d)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−アダマンチルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルメチルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、2−(1−アダマンチルエチル)オキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、1−ボルニルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロフラニル(メタ)アクリレート。
【0053】
上記式(2d)で表される化合物は、例えば、対応するビニルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸とを酸触媒を用いた慣用の方法で反応させることにより得ることができる。例えば、1−アダマンチルオキシ−1−エチル(メタ)アクリレートは、1−アダマンチル−ビニル−エーテルと(メタ)アクリル酸とを酸触媒の存在下で反応させることにより製造できる。
【0054】
前記他のモノマー単位として、上記のほか、親水性や水溶性、或いはその他の特性を付与又は向上しうるモノマー単位が挙げられる。このようなモノマー単位に対応する単量体としては、例えば、ヒドロキシル基含有単量体(ヒドロキシル基が保護されている化合物を含む)、メルカプト基含有単量体(メルカプト基が保護されている化合物を含む)、カルボキシル基含有単量体(カルボキシル基が保護されている化合物を含む)、アミノ基含有単量体(アミノ基が保護されている化合物を含む)、スルホン酸基含有単量体(スルホン酸基が保護されている化合物を含む)、ラクトン骨格含有単量体、環状ケトン骨格含有単量体、酸無水物基含有単量体、イミド基含有単量体などの単量体などの極性基含有単量体等が挙げられる。
【0055】
このような他のモノマー単位の例として、少なくとも1つの置換基を有する脂環式骨格を含有するモノマー単位、例えば、前記式(III)で表されるモノマー単位が挙げられる。式(III)で表されるモノマー単位に対応する重合性不飽和単量体は下記式(3)で表される。
【0056】
【化10】

【0057】
上記式中、環Z2は炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Raは前記に同じ。R9は環Z2に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、又は保護基で保護されていてもよいスルホン酸基を示す。qはR9の個数であって1〜5の整数を示す。
【0058】
式(3)で表される単量体のうち、q個のR9のうち少なくとも1つが、オキソ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、又は保護基で保護されていてもよいスルホン酸基である単量体は、ポリマーに親水性や水溶性を付与又は向上しうる極性基含有単量体に該当する。
【0059】
環Z2における炭素数6〜20の脂環式炭化水素環は単環であっても、橋かけ環等の多環であってもよい。代表的な脂環式炭化水素環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などが挙げられる。脂環式炭化水素環のなかでも、アダマンタン環等の有橋脂環式炭化水素環が特に好ましい。
【0060】
式(3)中、R9におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜20程度のアルキル基(特に、C1-4アルキル基)が挙げられる。ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜20程度のハロアルキル基(特に、C1-4ハロアルキル基)が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。保護基で保護されていてもよいアミノ基としては、アミノ基、置換アミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ基等のC1-4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。保護基で保護されていてもよいスルホン酸基としては、−SO3e基などが挙げられる。前記Reは水素原子又はアルキル基を示し、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキル基などが挙げられる。R9における保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基は前記と同様である。
【0061】
式(3)で表される化合物の代表的な例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1,3−ジヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−カルボキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1,3−ジカルボキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−カルボキシ−3−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−t−ブトキシカルボニル−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−t−ブトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1,3−ビス(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−ヒドロキシ−3−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキソアダマンタン。
【0062】
少なくとも1つの置換基を有する脂環式骨格を含有するモノマー単位に相当する単量体としては、ヒドロキシル基及びヒドロキシメチル基から選択された置換基を少なくとも1つ有する脂環式骨格(例えば、アダマンタン骨格等)を含有する単量体が好ましい。
【0063】
上記他のモノマー単位の別の例として、ラクトン骨格を有するモノマー単位[式(I)で表されるモノマー単位を除く]が挙げられる。ラクトン骨格を有するモノマー単位[式(I)で表されるモノマー単位を除く]に対応する重合性不飽和単量体[ラクトン環含有単量体(式(1)で表される化合物を除く)]の具体例として、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0064】
1−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−5−オン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−4,7−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−5,8−ジオン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−4,8−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−5,7−ジオン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−5,7−ジオキサトリシクロ[4.4.1.13,9]ドデカン−4,8−ジオン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−5−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−メチル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−カルボキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04、8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−メトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−エトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04、8]ノナン−2−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−9−t−ブトキシカルボニル−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04、8]ノナン−2−オン、8−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メチル−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−メチル−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−4,5−ジメチル−6−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−7−オン、6−(メタ)アクリロイルオキシ−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン、6−(メタ)アクリロイルオキシ−6−メチル−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチル−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,6−ジメチル−2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α−ジメチル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α,β−トリメチル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β,γ,γ−トリメチル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α,β,γ,γ−ペンタメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,β,β−トリメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,γ,γ−トリメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β,γ,γ−テトラメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,β,β,γ,γ−ペンタメチル−γ−ブチロラクトン、γ−(メタ)アクリロイルオキシ−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン。
【0065】
また、上記ラクトン骨格を有するモノマー単位[式(I)で表されるモノマー単位を除く]の他の例として、電子吸引性置換基及びラクトン骨格を含む多環式基が(メタ)アクリル酸に直接結合した単量体も挙げられる。そのモノマー単位を下記式(IV)に示す。
【0066】
【化11】

【0067】
上記式中、Raは前記に同じ。R10は環に結合している置換基であって、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基部分が保護基で保護されていてもよく且つハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、塩を形成していてもよいカルボキシル基、又は置換オキシカルボニル基を示す。Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示す。sはR10の個数であって0〜8の整数を示す。X1は電子吸引性置換基を示し、tは環に結合しているX1の個数であって1〜9の整数を示す。ポリマー鎖に結合している−COO−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい。
【0068】
10におけるハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが含まれる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、C1-4アルキル基、特にメチル基が好ましい。ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、クロロメチル基などのクロロアルキル基;トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基などのフルオロアルキル基(好ましくは、C1-3フルオロアルキル基)などが挙げられる。
【0069】
10における炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル基などが挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ジフルオロヒドロキシメチル、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル、2,2−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基の中でも、炭素数1又は2(特に炭素数1)のヒドロキシアルキル基若しくはヒドロキシハロアルキル基が好ましい。ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基のヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野でヒドロキシル基の保護基として通常用いられる保護基、例えば、メチル基、メトキシメチル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにエーテル又はアセタール結合を形成する基;アセチル基、ベンゾイル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにエステル結合を形成する基などが挙げられる。カルボキシル基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などが挙げられる。
【0070】
前記置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、プロポキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(C1-4アルコキシ−カルボニル基等);ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル基などのアルケニルオキシカルボニル基(C2-4アルコキシ−カルボニル基等);シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基;フェニルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0071】
Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示すが、炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、アルキル基で置換されていても良いメチレン基、アルキル基で置換されていても良いエチレン基、アルキル基で置換されていても良いプロピレン基が挙げられる。中でも、Aとして、炭素数1〜6のアルキレン基又は非結合が好ましい。
【0072】
1における電子吸引性置換基基としては、例えば、フッ素原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基などのハロゲン化炭化水素基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基、アセチル基などのアシル基、シアノ基、アリール基、1−アルケニル基、ニトロ基、スルフォン酸アルキルエステル基、スルフォン酸、スルフォン基、スルフォキシ基などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子やトリフルオロメチル基などのフッ素原子含有基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、アセチル基などのアシル基、シアノ基、ニトロ基が好ましい。
【0073】
式(IV)で示されるモノマー単位に対応する単量体の代表的な例としては、例えば、1−シアノ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−シアノ−9−メチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−シアノ−7,7−ジメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−シアノ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−フルオロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−フルオロ−9−メチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−フルオロ−7,7−ジメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−フルオロ−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−トリフルオロメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−トリフルオロメチル−9−メチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−トリフルオロメチル−7,7−ジメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン、1−トリフルオロメチル−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オンなどが挙げられる。
【0074】
本発明の高分子化合物において、式(I)で表されるモノマー単位の割合は特に限定されないが、ポリマーを構成する全モノマー単位に対して、一般には1〜90モル%、好ましくは5〜80モル%、さらに好ましくは10〜60モル%程度である。また、酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位の割合は、例えば10〜95モル%、好ましくは15〜90モル%、さらに好ましくは20〜60モル%程度である。ヒドロキシル基含有単量体、メルカプト基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体から選択された少なくとも1種の単量体に対応するモノマー単位[例えば、式(III)で表されるモノマー単位において、q個のR9のうち少なくとも1つが、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基であるモノマー単位]の割合は、例えば0〜60モル%、好ましくは5〜50モル%、さらに好ましくは10〜40モル%程度である。
【0075】
本発明の高分子化合物を得るに際し、モノマー混合物の重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合など、アクリル系ポリマー等を製造する際に用いる慣用の方法により行うことができるが、特に、溶液重合が好適である。さらに、溶液重合のなかでも滴下重合が好ましい。滴下重合は、具体的には、例えば、(i)予め有機溶媒に溶解した単量体溶液と、有機溶媒に溶解した重合開始剤溶液とをそれぞれ調製し、一定温度に保持した有機溶媒中に前記単量体溶液と重合開始剤溶液とを各々滴下する方法、(ii)単量体と重合開始剤とを有機溶媒に溶解した混合溶液を、一定温度に保持した有機溶媒中に滴下する方法、(iii)予め有機溶媒に溶解した単量体溶液と、有機溶媒に溶解した重合開始剤溶液とをそれぞれ調製し、一定温度に保持した前記単量体溶液中に重合開始剤溶液を滴下する方法などの方法により行われる。
【0076】
重合溶媒としては公知の溶媒を使用でき、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル類などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、これらの混合溶媒などが挙げられる。また、重合開始剤として公知の重合開始剤を使用できる。重合温度は、例えば30〜150℃程度の範囲で適宜選択できる。
【0077】
重合により得られたポリマーは、沈殿又は再沈殿により精製できる。沈殿又は再沈殿溶媒は有機溶媒及び水の何れであってもよく、また混合溶媒であってもよい。沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、これらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0078】
中でも、前記沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素)を含む溶媒、及びメタノールと水の混合溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、炭化水素(例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素)と他の溶媒との比率は、例えば前者/後者(体積比;25℃)=10/90〜99/1、好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=30/70〜98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=50/50〜97/3程度である。
高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、例えば1000〜500000程度、好ましくは3000〜50000程度であり、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば1.5〜2.5程度である。なお、前記Mnは数平均分子量を示し、Mn、Mwともにポリスチレン換算の値である。
【0079】
本発明の高分子化合物は、耐薬品性等の安定性が高く、有機溶剤に対する溶解性に優れ、しかも加水分解性及び加水分解後の水に対する溶解性に優れるため、種々の分野における高機能性ポリマーとして使用できる。
【0080】
本発明のフォトレジスト組成物は上記本発明の高分子化合物と光酸発生剤とを少なくとも含み、通常レジスト用溶剤を含む。フォトレジスト組成物は、例えば、上記本発明の高分子化合物の溶液(レジスト用溶剤の溶液)に光酸発生剤を添加することにより調製できる。
【0081】
光酸発生剤としては、露光により効率よく酸を生成する慣用乃至公知の化合物、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェートなど)、スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネートなど)、スルホン酸エステル[例えば、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、1,2,3−トリスルホニルオキシメチルベンゼン、1,3−ジニトロ−2−(4−フェニルスルホニルオキシメチル)ベンゼン、1−フェニル−1−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)−1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルメタンなど]、オキサチアゾール誘導体、s−トリアジン誘導体、ジスルホン誘導体(ジフェニルジスルホンなど)、イミド化合物、オキシムスルホネート、ジアゾナフトキノン、ベンゾイントシレートなどを使用できる。これらの光酸発生剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0082】
光酸発生剤の使用量は、光照射により生成する酸の強度やポリマー(フォトレジスト用樹脂)における各繰り返し単位の比率などに応じて適宜選択でき、例えば、ポリマー100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度の範囲から選択できる。
【0083】
レジスト用溶剤としては、前記重合溶媒として例示したグリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、これらの混合溶媒などが挙げられる。これらのなかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、これらの混合液が好ましく、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸エチルとの混合溶媒などの、少なくともプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む溶媒が好適に用いられる。
【0084】
フォトレジスト組成物中のポリマー濃度は、例えば、10〜40重量%程度である。フォトレジスト組成物は、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシル基含有樹脂など)などのアルカリ可溶成分、着色剤(例えば、染料など)などを含んでいてもよい。
【0085】
こうして得られるフォトレジスト組成物を基材又は基板上に塗布し、乾燥した後、所定のマスクを介して、塗膜(レジスト膜)に光線を露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いで現像することにより、微細なパターンを高い精度で形成できる。
【0086】
基材又は基板としては、シリコンウエハ、金属、プラスチック、ガラス、セラミックなどが挙げられる。フォトレジスト組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータなどの慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば0.1〜20μm、好ましくは0.3〜2μm程度である。
【0087】
露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、半導体レジスト用では、通常、g線、i線、エキシマレーザー(例えば、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArClなど)などが使用される。露光エネルギーは、例えば1〜1000mJ/cm2、好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。
【0088】
光照射により光酸発生剤から酸が生成し、この酸により、例えばフォトレジスト用高分子化合物の酸の作用によりアルカリ可溶となる繰り返し単位(酸脱離性基を有する繰り返し単位)のカルボキシル基等の保護基(脱離性基)が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシル基等が生成する。そのため、水又はアルカリ現像液による現像により、所定のパターンを精度よく形成できる。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、屈折率系(RI)を用い、テトラヒドロフラン溶媒を用いたGPC測定により求めた標準ポリスチレン換算値を示す。GPCは、昭和電工株式会社製カラム「KF−806L」を3本直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、RI温度40℃、テトラヒドロフラン流速0.8ml/分の条件で行った。
【0090】
製造例1
下記の反応工程式に従って、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イルを製造した。
【化12】

【0091】
窒素置換した撹拌機付き500ml三つ口フラスコに、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸56.8g(0.20モル)及びアセトニトリル180gを入れた。5℃まで冷却した後、4−ジメチルアミノピリジン2.44g(0.02モル)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩39.3g(0.205モル)、1−シアノ−5−ヒドロキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン17.9g(0.10モル)を添加し、さらに液温25℃で7時間反応した。反応混合物に酢酸エチル300ccを加えた後、10%炭酸ナトリウム水溶液300mlで4回、2N塩酸水溶液300mlで2回、10%食塩水300mlで2回洗浄してから減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル33.0g(0.074モル、収率74%)を得た。NMRデータは以下に示した。
【0092】
1H−NMR(CDCl3) δ:6.12(s,1H),5.61(s,1H),4.64−4.69(m,1H),4.58(m,1H),4.26−4.37(m,4H),3.58(m,1H),2.85−2.97(m,1H),2.69−2.78(m,2H),2.35−2.39(m,1H),2.20−2.24(m,1H),2.13−2.17(m,1H),2.02−2.11(m,1H),1.35−1.96(m,11H)
【0093】
製造例2
下記の反応工程式に従って、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イルを製造した。
【化13】

【0094】
製造例1において、1−シアノ−5−ヒドロキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オンの代わりに、5−ヒドロキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン15.4g(0.10モル)を使用した他は同様の操作を行い、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル32.8g(0.078モル、78%)を得た。NMRデータは以下に示した。
【0095】
1H−NMR(CDCl3) δ:6.12(s,1H),5.59−5.62(m,1H),4.56−4.59(m,1H),4.50−4.55(m,1H),4.27−4.39(m,4H),3.17−3.21(m,1H),2.74−2.96(m,2H),2.51−2.58(m,2H),1.91−2.08(m,7H),1.36−1.87(m,8H)
【0096】
製造例3
下記の反応工程式に従って、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニルを製造した。
【化14】

【0097】
製造例1において、1−シアノ−5−ヒドロキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オンの代わりに、DL−パントラクトン13.0 g(0.10モル)を使用した他は同様の操作を行い、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル27.8g(0.070モル、70%)を得た。NMRデータは以下に示した。
【0098】
1H−NMR(CDCl3) δ:6.12(s,1H),5.57−5.61(m,1H),5.38−5.41(m,1H),4.26−4.43(m,4H),3.99−4.06(m,2H),2.80−3.06(m,2H),1.71−2.14(m,7H),1.56−1.66(m,1H),1.36−1.54(m,3H),1.07−1.22(m,6H)
【0099】
実施例1
下記構造の高分子化合物の合成
【化15】

【0100】
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)35.7g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)23.8gを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、
ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル16.18g(36.3mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.29g(18.2mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン9.53g(36.3mmol)、ジメチル 2,2′−アゾビスイソブチレート[和光純薬工業(株)製、商品名「V−601」]1.80g、PGMEA66.3g及びPGME44.2gを混合したモノマー溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、さらに2時間撹拌を続けた。重合反応終了後、該反応溶液の7倍量のヘキサンと酢酸エチルの9:1(体積比;25℃)混合液中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより、所望の樹脂26.4gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、
Mw(重量平均分子量)が8800、分子量分布(Mw/Mn)が1.87であった。
【0101】
実施例2
下記構造の高分子化合物の合成
【化16】

【0102】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル16.75g(37.6mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.44g(18.8mmol)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン8.81g(37.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂25.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8500、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0103】
実施例3
下記構造の高分子化合物の合成
【化17】

【0104】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル17.27g(38.8mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.58g(19.4mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン8.15g(38.8mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂27.0gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8600、分子量分布(Mw/Mn)が1.90であった。
【0105】
実施例4
下記構造の高分子化合物の合成
【化18】

【0106】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル18.99g(42.6mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン4.30g(17.0mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン6.71g(25.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.9gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8300、分子量分布(Mw/Mn)が1.87であった。
【0107】
実施例5
下記構造の高分子化合物の合成
【化19】

【0108】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル19.45g(43.7mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン4.41g(17.5mmol)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン6.14g(26.2mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂25.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8200、分子量分布(Mw/Mn)が1.85であった。
【0109】
実施例6
下記構造の高分子化合物の合成
【化20】

【0110】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 1−シアノ−2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル19.87g(44.6mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン4.50g(17.8mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン5.63g(26.8mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8400、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0111】
実施例7
下記構造の高分子化合物の合成
【化21】

【0112】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル15.75g(37.5mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.43g(18.7mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン9.83g(37.5mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.4gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8700、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0113】
実施例8
下記構造の高分子化合物の合成
【化22】

【0114】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル16.32g(38.8mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.59g(19.4mmol)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン9.09g(38.8mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂25.0gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8200、分子量分布(Mw/Mn)が1.85であった。
【0115】
実施例9
下記構造の高分子化合物の合成
【化23】

【0116】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル16.84g(40.1mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.73g(20.0mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン8.42g(40.1mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9000、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0117】
実施例10
下記構造の高分子化合物の合成
【化24】

【0118】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル15.59g(37.1mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン4.68g(18.5mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン9.73g(37.1mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.7gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8600、分子量分布(Mw/Mn)が1.86であった。
【0119】
実施例11
下記構造の高分子化合物の合成
【化25】

【0120】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル16.15g(38.4mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン4.85g(19.2mmol)、2−メチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン9.00g(38.4mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂25.4gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8000、分子量分布(Mw/Mn)が1.84であった。
【0121】
実施例12
下記構造の高分子化合物の合成
【化26】

【0122】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル16.66g(39.6mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン5.00g(19.8mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン8.34g(39.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9000、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0123】
実施例13
下記構造の高分子化合物の合成
【化27】

【0124】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル15.31g(38.6mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.56g(19.3mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン10.13g(38.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.9gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9100、分子量分布(Mw/Mn)が1.91であった。
【0125】
実施例14
下記構造の高分子化合物の合成
【化28】

【0126】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル15.88g(40.1mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.73g(20.0mmol)、2−メチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン9.38g(40.1mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂25.2gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8700、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0127】
実施例15
下記構造の高分子化合物の合成
【化29】

【0128】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル16.41g(41.4mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.89g(20.7mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン8.70g(41.4mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26,2gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9300、分子量分布(Mw/Mn)が1.95であった。
【0129】
実施例16
下記構造の高分子化合物の合成
【化30】

【0130】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル15.15g(38.2mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン4.82g(19.1mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン10.3g(38.2mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.6gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9400、分子量分布(Mw/Mn)が1.97であった。
【0131】
実施例17
下記構造の高分子化合物の合成
【化31】

【0132】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル15.71g(39.6mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン5.00g(19.8mmol)、2−メチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン9.28g(39.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂24.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8700、分子量分布(Mw/Mn)が1.88であった。
【0133】
実施例18
下記構造の高分子化合物の合成
【化32】

【0134】
実施例1において、モノマー成分として、ヘキサヒドロフタル酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル16.23g(40.9mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン5.16g(20.5mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン8.61g(40.9mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9100、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0135】
比較例1
下記構造の高分子化合物の合成
【化33】

【0136】
実施例1において、モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン11.06g(49.8mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン5.88g(24.9mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン13.06g(49.8mmol)を使用した以外は実施例1と同様な操作を実施したところ、所望の樹脂26.6gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9100、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0137】
比較例2
下記構造の高分子化合物の合成
【化34】

【0138】
実施例1において、モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン11.60g(52.2mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン6.17g(26.1mmol)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン12.23g(52.2mmol)を使用した以外は実施例1と同様な操作を実施したところ、所望の樹脂26.3gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9700、分子量分布(Mw/Mn)が1.87であった。
【0139】
比較例3
下記構造の高分子化合物の合成
【化35】

【0140】
実施例1において、モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン12.11g(54.5mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン6.44g(27.3mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン11.46g(54.5mmol)を使用した以外は実施例1と同様な操作を実施したところ、所望の樹脂25.1gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9600、分子量分布(Mw/Mn)が1.90であった。
【0141】
比較例4
下記構造の高分子化合物の合成
【化36】

【0142】
実施例1において、モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン10.92g(49.1mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン6.20g(24.6mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン12.89g(49.1mmol)を使用した以外は実施例1と同様な操作を実施したところ、所望の樹脂27.0gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9000、分子量分布(Mw/Mn)が1.93であった。
【0143】
比較例5
下記構造の高分子化合物の合成
【化37】

【0144】
実施例1において、モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン11.44g(51.5mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン6.50g(25.8mmol)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン12.06g(51.5mmol)を使用した以外は実施例1と同様な操作を実施したところ、所望の樹脂27.1gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8700、分子量分布(Mw/Mn)が1.92であった。
【0145】
比較例6
下記構造の高分子化合物の合成
【化38】

【0146】
実施例1において、モノマー成分として、5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン11.44g(53.7mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン6.50g(26.9mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン11.46g(53.7mmol)を使用した以外は実施例1と同様な操作を実施したところ、所望の樹脂25.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9500、分子量分布(Mw/Mn)が1.88であった。
【0147】
参考例1
下記の反応工程式に従ってコハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニルを製造した。
【化39】

【0148】
窒素置換した撹拌機付き500ml三つ口フラスコに、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸46.0g(0.20モル)及びアセトニトリル180gを入れた。5℃まで冷却した後、4−ジメチルアミノピリジン2.44g(0.02モル)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩39.3g(0.205モル)、パントラクトン13.0g(0.10モル)を添加し、さらに液温25℃で7時間反応した。反応混合物に酢酸エチル300ccを加えた後、10%炭酸ナトリウム水溶液300mlで4回、2N塩酸水溶液300mlで2回、10%食塩水300mlで2回洗浄してから減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、コハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル26.3g(0.077モル、収率77%)を得た。NMRデータは以下に示した。
【0149】
1H−NMR(CDCl3) δ:6.13(m,1H),5.60(m,1H),5.38(s,1H),4.36(s,4H),4.02−4.07(m,2H),2.66−2.82(m,4H),1.95(s,3H,1.21(s,3H),1.12.(s,3H)
【0150】
比較例7
下記構造の高分子化合物の合成
【化40】

【0151】
実施例1において、モノマー成分として、コハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル14.21g(41.6mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.90g(20.8mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン10.89g(41.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂27.9gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9500、分子量分布(Mw/Mn)が1.91であった。
【0152】
比較例8
下記構造の高分子化合物の合成
【化41】

【0153】
実施例1において、モノマー成分として、コハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル14.78g(43.2mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン5.10g(21.6mmol)、2−メチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン10.11g(43.2mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂27.0gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9300、分子量分布(Mw/Mn)が1.93であった。
【0154】
比較例9
下記構造の高分子化合物の合成
【化42】

【0155】
実施例1において、モノマー成分として、コハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル15.31g(44.7mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン5.28g(22.4mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン9.41g(44.7mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂28.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9500、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0156】
比較例10
下記構造の高分子化合物の合成
【化43】

【0157】
実施例1において、モノマー成分として、コハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル17.10g(49.9mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン5.04g(20.0mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン7.86g(30.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂28.5gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9700、分子量分布(Mw/Mn)が1.91であった。
【0158】
比較例11
下記構造の高分子化合物の合成
【化44】

【0159】
実施例1において、モノマー成分として、コハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル17.59g(51.4mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン5.19g(20.6mmol)、2−メチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン7.22g(30.8mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂26.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8900、分子量分布(Mw/Mn)が1.88であった。
【0160】
比較例12
下記構造の高分子化合物の合成
【化45】

【0161】
実施例1において、モノマー成分として、コハク酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチル テトラヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキソ−3−フラニル18.04g(52.7mmol)、1,3−ジヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシアダマンタン5.32g(21.1mmol)、1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)シクロヘキサン6.65g(31.6mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂28.0gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が9000、分子量分布(Mw/Mn)が1.89であった。
【0162】
比較例13
下記構造の高分子化合物の合成
【化46】

【0163】
実施例1において、モノマー成分として、4−(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサンカルボン酸 2−オキソ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−5−イル14.1g(38.8mmol)、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン4.59g(19.4mmol)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン9.09g(38.8mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、所望の樹脂25.0gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8300、分子量分布(Mw/Mn)が1.82であった。
【0164】
評価試験
実施例及び比較例で得られた各フォトレジスト用ポリマー樹脂にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を添加して、ポリマー濃度20重量%のPGMEA/PGME(重量比6/4)溶液となるように、樹脂を溶解した。実施例1〜18及び比較例7〜13では速やかに溶解したが、比較例1〜6ではそれらに比較して2〜4倍の時間を要した。得られた各フォトレジスト用ポリマー溶液に、ポリマー100重量部に対して10重量部のトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを加え、さらにPGMEAを加えてポリマー濃度15重量%に調整し、孔径0.02μmのフィルターで濾過することによりフォトレジスト組成物を調製した。実施例1〜18、比較例7−13では孔径0.02μmのフィルターでの濾過性もよく速やかに濾過できたが、比較例1〜6ではそれらに比較して5倍程度の時間を要した。濾過後半は特に濾過速度が遅くなり濾材の交換も頻繁になることが予想された。
【0165】
このフォトレジスト組成物をシリコンウエハーにスピンコーティング法により塗布し、厚み0.7μmの感光層を形成した。ホットプレート上で温度100℃で150秒間プリベークした後、波長193nmのArFエキシマレーザーを用い、マスクを介して、照射量30mJ/cm2で露光した後、100℃の温度で60秒間ポストベークした。次いで、2.38Mのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により60秒間現像し、超純水でリンスした。実施例及び比較例の何れのフォトレジスト用ポリマー溶液を用いた場合にも、0.25μmのライン・アンド・スペースパターンは得られたが、実施例1〜18は比較例と比べ明らかに鮮明であった。また比較例13は他の比較例に比べると鮮明なパターンが得られたものの、実施例1−18と比較すると鮮明さに欠けた。また、前述のフォトレジスト組成物をスピンコーティング法により塗布し、厚み0.7μmの感光層を形成、さらにホットプレート上で温度100℃で150秒間プリベークした後、塗布膜に純水をかけて撥水性を観察したところ、実施例1−18は非常に良好な撥水性を示したが、比較例1−13では撥水性にやや劣り、純水を用いる液浸露光における水の追随性に劣ると予想された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R1はラクトン骨格を有する基を示し、Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示し、環Zaは置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す)
で表されるラクトン骨格を含む単量体。
【請求項2】
下記式(I)
【化2】

(式中、Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R1はラクトン骨格を有する基を示し、Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示し、環Zaは置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す)
で表されるモノマー単位を少なくとも有する高分子化合物。
【請求項3】
式(I)で表されるモノマー単位に加えて、さらに、酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位を少なくとも有する請求項2記載の高分子化合物。
【請求項4】
酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位が、下記式(IIa)〜(IId)
【化3】

(式中、環Z1は置換基を有していてもよい炭素数5〜20の脂環式炭化水素環を示す。Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R2〜R4は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R5は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。但し、p個のR5のうち少なくとも1つは、−COORc基を示す。前記Rcは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。pは1〜3の整数を示す。R6、R7は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R8は水素原子又は有機基を示す。R6、R7、R8のうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する原子とともに環を形成していてもよい)
から選ばれるモノマー単位である請求項3記載の高分子化合物。
【請求項5】
式(I)で表されるモノマー単位に加えて、さらに、少なくとも1つの置換基を有する脂環式骨格を含有するモノマー単位を少なくとも有する請求項2〜4の何れかの項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
少なくとも1つの置換基を有する脂環式骨格を含有するモノマー単位が、下記式(III)
【化4】

(式中、環Z2は炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。Raは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R9は環Z2に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、又は保護基で保護されていてもよいスルホン酸基を示す。qはR9の個数であって1〜5の整数を示す)
から選ばれるモノマー単位である請求項5記載の高分子化合物。
【請求項7】
式(I)で表されるモノマー単位と、酸の作用により脱離してアルカリ可溶となるモノマー単位と、ヒドロキシル基及びヒドロキシメチル基から選択された置換基を少なくとも1つ有する脂環式骨格を含有するモノマー単位とを少なくとも有する請求項3記載の高分子化合物。
【請求項8】
式(I)で表されるモノマー単位に加えて、さらに、式(I)で表されるモノマー単位以外のラクトン骨格を有するモノマー単位を少なくとも有する請求項2〜7の何れかの項に記載の高分子化合物。
【請求項9】
請求項2〜8の何れかの項に記載の高分子化合物と光酸発生剤とを少なくとも含むフォトレジスト組成物。
【請求項10】
請求項9記載のフォトレジスト組成物を使用してパターンを形成することを特徴とする半導体の製造方法。

【公開番号】特開2010−150447(P2010−150447A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331893(P2008−331893)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】