説明

レジスト除去方法及び半導体装置の製造方法

【課題】 低誘電率絶縁膜の比誘電率の増加を防止すると共にレジスト残渣を生じさせないレジスト除去を可能にする。
【解決手段】 ビアホール用開口3を有するレジストマスク4をエッチングマスクにして、第1キャップ層2c、第1低誘電率膜2bを順次に反応性イオンエッチング(RIE)でドライエッチングしビアホール5を形成する。そして、レジストマスク4の除去では、はじめに、上記RIEでレジストマスク4表面部に形成された変質層4aに対して、ホットプレートにより空気雰囲気、300℃温度、3分程度の熱処理を施すことで、変質層4aを少なくともその一部が酸素と反応した改質層4bに変換させる。その後に、この改質層4bおよびレジストマスク4に水素ラジカルを照射して残渣のないレジスト除去を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト除去方法及び半導体装置の製造方法に係り、詳しくは、被処理基板上の加工のために用いたレジスト膜マスクの除去において、低誘電率の絶縁膜材料で成る層間絶縁膜の誘電率が上昇するのを防止すると共にレジスト残渣を生じさせないレジスト除去方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を構成する素子の微細化は、半導体装置の高性能化にとって最も有効であり、現在、その寸法の設計基準は65nmから45nmに向けて技術開発が精力的に進められている。そして、上記微細な構造を有する半導体装置の高性能化において、素子間を接続する配線の低抵抗化および配線の寄生容量の低減化のために、微細加工で接続孔(ビアホール)あるいは配線用溝(トレンチ)が形成された低誘電率の層間絶縁膜上に銅(Cu)膜等の配線材料膜を堆積し、ビアホールあるいはトレンチ内に埋め込まれた部分以外にある上記配線材料膜を化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により除去する、いわゆるダマシン法で形成する溝配線すなわちダマシン配線が必須になっている。
【0003】
上記ダマシン配線の形成では、層間絶縁膜の材料としてシリコン酸化膜に換わり、それより比誘電率が低くなる、いわゆる低誘電率膜(Low−k膜)が使用される。ここで、Low−k膜は、二酸化シリコン膜の比誘電率3.9以下の低誘電率の絶縁膜であり、メチルシルセスキオキサン(MSQ:Methyl Silsesquioxane)膜をスピン塗布および焼成により成膜した絶縁膜、化学気相成長(CVD)法で堆積する炭素含有シリコン酸化膜(SiOC膜)、あるいはこれらの多孔質膜が好適である。
【0004】
しかし、公知のレジストマスクを用いたドライエッチングにより上記Low−k膜にビアホールあるいはトレンチを形成した後、従来の技術である原料ガスの酸素(O)ガスあるいはフッ素のハロゲン化合物ガスを添加した混合ガスをプラズマ励起し、上記レジストマスクをアッシング除去しようとすると、膜組成が例えば[CH3SiO3/2]nとなるMSQ膜のような有機成分を含有するLow−k膜に損傷が生じる。その第1の損傷は、上記アッシングによりLow−k膜の膜質が変化し比誘電率が増大することである。これについて図13を参照して説明する。図13は、酸素プラズマによるアッシングにおいてMSQ膜の変質を示す模式的な構造図である。上記プラズマアッシングにおいて、MSQ膜の表面に酸素イオンあるいは酸素ラジカルのような酸化力の強い活性種がプラズマ照射されると、図13(a)に示したSi−CH3 の結合が図13(b)に示すようにSi−Oの結合に変わる。このようにして、MSQ膜表面が組成的に変化して二酸化シリコン(SiO2)膜が部分的に形成され、膜の比誘電率が大幅に増加する。この酸素プラズマアッシングによる膜変質は、レジストマスクのオーバーエッチング時間において顕著になり、上述した有機成分含有の低誘電率絶縁膜において全般に生じてくる。
【0005】
そこで、Low−k膜のエッチング加工で用いたレジストマスクのアッシング方法が新しく提案されている(例えば、非特許文献1参照)。以下、Low−k膜を含む層間絶縁膜にビアホールを形成する場合の工程について概略説明する。ここで、図14は半導体装置の層間絶縁膜にビアホールを形成する工程順の素子断面図である。
【0006】
図14(a)に示すように、例えば銅あるいは銅合金から成る下層配線101を形成し、その上部に絶縁性バリア層であるエッチングストッパー層102a、Low−k膜102bおよびキャップ層102cの積層膜である層間絶縁膜102を堆積させる。そして、公知のリソグラフィ技術により開口103を有するレジストマスク104を形成する。ここで、エッチングストッパー層102aは膜厚が50nm程度の炭化シリコン(SiC)膜であり、Low−k膜102bは膜厚が1.5μm程度のMSQ膜であり、キャップ層102cは膜厚が100nm程度のSiOC膜である。
【0007】
次に、図14(b)に示すように、レジストマスク104をエッチングマスクとして層間絶縁膜102のうちのキャップ層102c、Low−k膜102bを順次に反応性イオンエッチング(RIE)でドライエッチングし、ビアホール105を形成する。ここで、エッチングガスとしては、C48のようなフルオロカーボンガスとN2ガスとArガスの混合ガスが用いられプラズマ励起される。このRIEのエッチング条件にも依存するが、上記ドライエッチングにおいてレジストマスク104表面部は、上記プラズマのイオン衝撃を受け、変質層104aが形成される。
【0008】
続いて、図14(c)に示すように、図8で後述するレジスト除去装置において水素(H)とヘリウム(He)の混合ガスをプラズマ励起し水素の活性種を生成し、水素の活性種のうち水素プラズマを成すプロトン及び水素分子イオンを除いたところの水素原子あるいは水素分子の水素ラジカル106を照射し、上記変質層104aを含めたレジストマスク104のエッチング除去を行う。この水素ラジカル106を用いたレジスト除去であると、上述したようなLow−k膜102bの組成的な変化は皆無でありその比誘電率の増加は完全に防止される。
【0009】
そして、図14(d)に示すように、キャップ層102cをハードマスクにしたドライエッチングでエッチングストッパー層102aの露出部をエッチング除去し、ビアホール105が下層配線101の表面に達するように貫通させる。このようにして、下層配線101上の層間絶縁膜102にビアホール105を形成することになる。
【非特許文献1】International Interconnect Technology Conference 2003,p.147-149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、水素ガスあるいは不活性ガスとの混合ガスを用いた上述したようなレジスト除去では、Low−k膜102bへの損傷は皆無になるが、図14(d)に示しているように、レジスト残渣107がキャップ層102c表面に形成され、レジストマスク104を除去しきれないという問題があった。このレジスト残渣107が形成されると、その後、このレジスト残渣107は化学薬液による洗浄等では取りきれなくなる。これは、非常に酸化されやすい銅あるいは銅合金から成る下層配線101の一部がビアホール105で露出するために、これ以降の工程において高い酸化力を有する化学薬液が使用できなくなるからである。
【0011】
このレジスト残渣107の発生は、図14(b)で説明したような被処理基板の加工時のRIE等のドライエッチング条件に依存している。本発明者等の詳細な検討では、レジスト残渣107が形成され易い第1のケースは、RIE等のドライエッチングにおいて層間絶縁膜が厚くエッチング処理の時間が長くなるために、レジストマスク104表面部の上記プラズマイオン衝撃を受ける時間が長くなり、レジストマスクの熱硬化が進行してしまう場合である。そして、その第2のケースは、RIEのプラズマ励起に用いる原料ガスであるハロゲン(弗素、塩素、臭素等)とレジストとの化学反応が進み、異物質がレジストマスク104の表面部に形成される場合である。このように変質層104aには、大きく分けて熱硬化層と異物質層の2つが存在する。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、レジストマスクのプラズマによるレジスト除去において原料ガスに水素を用いる場合に、Low−k膜の比誘電率の増加を防止すると共に、RIEの条件によらずレジスト残渣を生じさせないレジスト除去方法を提供することを主目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、レジスト除去方法にかかる発明は、被処理基板の加工でマスクとして用いたレジスト膜をエッチング除去するレジスト除去方法において、前記加工した後、前記レジスト膜に対して、酸素含有ガスの雰囲気中において所定温度の熱処理を施す工程と、前記熱処理の後、水素ガスを含む原料ガスのプラズマ励起により生成した水素活性種を用いて前記レジスト膜をエッチング除去する工程と、を有する構成になっている。
【0014】
上記発明において、前記熱処理の温度は200℃〜450℃の範囲であることが好適である。また、前記酸素含有ガスは、酸素(O)ガス、水蒸気(HO)、空気からなる群より選択された少なくとも一種のガス、あるいは前記ガスと不活性ガスの混合ガスであることが好ましい。更に、前記熱処理における前記酸素含有ガスの圧力は、50Pa〜3×10Paの範囲にすることが好ましい。
【0015】
上記発明において、前記被処理基板の加工は、CxHyFzの化学式(x=1〜5の整数、y=0〜3の整数、z=4〜8の整数)で表されるフルオロカーボンガス群より選択された少なくとも一種のガスをプラズマ励起し、前記プラズマ励起したエッチングガスを用いて、前記被処理基板表面に成膜したシロキサン骨格を有する炭素含有の低誘電率絶縁膜あるいは有機高分子を主骨格の低誘電率絶縁膜をドライエッチングすることである。
【0016】
上記発明において、前記水素活性種は水素ラジカルであり、前記原料ガスは水素ガスと不活性ガスの混合ガスである。
【0017】
また、前記水素活性種を用いるエッチング除去において、前記被処理基板の温度を200℃〜400℃の範囲に設定することが好ましい。更に、前記水素ガスを含む原料ガスのプラズマ励起により生成した水素活性種の圧力は、50Pa〜1×10Paであることが好ましい。
【0018】
そして、半導体装置の製造方法にかかる発明は、基板上に少なくとも一部に低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜表面に所望の開口パターンを有するレジストマスクを形成する工程と、前記レジストマスクを用いて前記低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜をエッチング加工して前記低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜に前記所望の開口を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法であって、前記エッチング加工の後に、前前レジストマスクに対して、酸素含有ガスの雰囲気中で所定温度の熱処理を施し、その後に水素ガスを含む原料ガスのプラズマ励起により生成した水素ラジカルを用いて前記レジストマスクをエッチング除去する、という構成になっている。
【0019】
上記発明において、前記低誘電率膜は、シロキサン骨格を有する炭素含有の低誘電率絶縁膜あるいは有機高分子を主骨格の低誘電率絶縁膜であって、比誘電率が3以下の低誘電率膜である。
【0020】
また、前記低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜のエッチング加工は、CxHyFzの化学式(x=1〜5の整数、y=0〜3の整数、z=4〜8の整数)で表されるフルオロカーボンガス群より選択された少なくとも一種のガスをプラズマ励起し、前記プラズマ励起したエッチングガスを用いて、前記低誘電率絶縁膜をドライエッチングすることである。
【0021】
また、前記酸素含有ガスは、酸素(O)ガス、水蒸気(HO)、空気からなる群より選択された少なくとも一種のガス、あるいは前記ガスと不活性ガスの混合ガスであり、酸素含有ガスの雰囲気中の熱処理の温度が200℃〜400℃であり、前記水素ラジカルを用いた前記レジストマスクのエッチング除去の基板温度が200℃〜400℃であることが好適である。
【0022】
また、上記発明において、前記基板が、銅配線層を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレジスト除去方法により、半導体装置の配線構造に使用する低誘電率の層間絶縁膜が高い再現性の下に簡便にしかも高精度に形成できる。そして、水素ガスを用いたレジスト除去においてレジスト残渣の発生が皆無になり、水素ガスを用いるレジスト除去の方法が、半導体装置の製造において充分に適用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態の幾つかを詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1乃至6は、本発明の第1の実施の形態にかかるレジスト除去方法による半導体装置の製造すなわち銅埋め込みのダマシン配線構造体の製造を示す工程別素子断面図である。そして、図7は、ドライエッチングにおいてレジストマスク表面に形成される変質層を改質するための熱処理装置の模式的な略断面図であり、図8は、水素ガスを用いたレジスト除去装置の模式的な略断面図である。
【0025】
シリコン基板上にCVD法でシリコン酸化膜を堆積させ、下地絶縁膜(不図示)を形成する。そして、周知のダマシン配線の形成方法により導電層であるCu膜で成る下層配線1を形成する。続いて、第1エッチングストッパー層2aとして膜厚が25nm程度であり、比誘電率が3.5程度のSiC膜を成膜する。次に、例えば、図9に示すようなメチル基を含有する膜組成のMSQ膜に空孔が形成され多孔質化したp−MSQ膜を、スピン塗布法等を用いて成膜することにより、比誘電率が2.5程度、膜厚が200nm〜300nm程度になる第1低誘電率膜2bを形成する。ここで、第1低誘電率膜2bの空孔の含有比率は30〜40%程度である。この空孔の含有比率とは、(多孔質でない緻密なMSQ膜バルクの密度)−(多孔質のMSQ膜の密度)の(多孔質でない緻密なMSQ膜バルクの密度)に対する比率である。
【0026】
次に、上記第1低誘電率膜2b表面に、CVD法で成膜した膜厚、比誘電率がそれぞれ100nm程度、2.5〜3程度のSiOC膜から成る第1キャップ層2cを形成する。このようにして、第1エッチングストッパー層2a、第1低誘電率膜2bおよび第1キャップ層2cからなる層間絶縁膜2が形成される。ここで、第1低誘電率膜2bと第1キャップ層2c間の密着性を高めるために、第1低誘電率膜2bの表面をプラズマに暴露することが好ましい。このようにしてから、被処理基板上に公知のリソグアフィ技術によりビアホール用開口3を有するレジストマスク4を形成する(図1(a))。
【0027】
次に、レジストマスク4をエッチングマスクにして、上記第1キャップ層2c、第1低誘電率膜2bを順次にRIEでドライエッチングし口径が80nm程度のビアホール4を形成する。ここで、第1エッチングストッパー層2aはエッチングしないままにする(図1(b))。
【0028】
この第1キャップ層2c、第1低誘電率膜2bのドライエッチングでは、エッチングガスとして例えばC/N/Arの混合ガス、C/N/Arの混合ガスが好適である。ここで、上記のような炭素原子の結合量が多いフルオロカーボンガスを含むエッチングガスでは、第1エッチングストッパー層2aのエッチングはほとんど進まない。そして、このドライエッチングでは、反応生成物として有機ポリマーが多く生成され、その反応生成物がビアホール5の側壁に保護膜として付着して側壁をフッ素のラジカルによるエッチングから保護する。このようなフルオロカーボンガスとしては、その他に一般式がCxHyFzの化学式(x、y、zは、x=1〜5の整数、y=0〜3の整数、z=4〜8の整数)で表されるフルオロカーボンガスからなる群より選択された少なくとも一種のエッチングガスを用いることが好ましい。例えば、Cガス、CFガスある。その他に、CHFガス、CHガス、CHFガスでもよい。
【0029】
上記のフルオロカーボンガスを含むエッチングガスでは、上記ドライエッチングにおいて従来の技術でも説明した変質層4aがレジストマスク4の表面に形成される。この変質層4aは炭素とフッ素の結合した異物質層で形成される
【0030】
次に、図7に示すような熱処理装置20を用い、上記変質層4aを改質層4bに変える(図1(c))。この熱処理装置20は、基本的にはホットプレート構造のものが好適である。図7に示すように、ヒータ21を内蔵したホットプレート22からなっており、ホットプレートの温度は100℃〜500℃の範囲で制御できるようになっている。そして、例えば300mmφの半導体ウエハ23上には、上記変質層4aの形成されたレジストマスク24が形成されており、空気中において例えば300℃温度で1分〜5分程度の熱処理が施される。ここで、処理温度は200〜400℃の範囲の所定の温度に設定すれば良い。この熱処理により、図1(b)で説明したC−F結合の異物質層を含む変質層4aは、少なくともその一部が酸素と反応した改質層4bに変換される。ここで、この改質層4bは、後述するレジスト除去装置を用いたレジスト除去において水素ラジカルにより水素化分解され易い物質である。一方、上記変質層4aを改質層4bに変換するために行う酸化性ガス雰囲気での熱処理は、Low−k膜に損傷を与えることは全くなくその比誘電率の増大することはない。
【0031】
上述した熱処理装置としては、その他にいわゆるトンネル炉や赤外線照射装置、あるいは石英炉芯管を具備した熱処理炉のような構造であっても良い。このような熱処理装置においても、処理温度は200〜400℃の範囲に設定することが好適である。ここで、雰囲気ガスは、上述したように空気であっても良いし、酸素ガスあるいはその不活性ガス(N、He、Ar等)で希釈した酸化性ガスであっても良いし、水蒸気(HO)であっても良い。
【0032】
ここで、処理温度が200℃以下であると、変質層4aは水素ラジカルにより水素化分解できない。また、処理温度が400℃を超えてくると、下層配線1にCuを使用する場合、Cuのバリア層が機能しなくなり、Cu原子が層間絶縁膜中に熱拡散し、半導体素子の活性領域に達して半導体装置の特性劣化を引き起こすようになる。
【0033】
また、上記雰囲気ガスの圧力は、50Pa〜3×10Paが好適である。ガス圧力が上記範囲を下回ると、処理時間が長くなり実用的な時間内に処理できなくなる。また、上記範囲を超えてくると、下層配線1は第1エッチングストッパー層2aで保護されているものの、その表面の酸化が部分的であれ起こるようになり実用的でなくなる。
【0034】
次に、従来の技術で説明したのと同様に、図8に示すレジスト除去装置を用いて水素ラジカル6を照射し改質層4bおよびレジストマスク4を除去する(図2(a))。
【0035】
このレジスト除去装置30は、その基本構造として、表面がアルマイト処理されたアルミニウムから成る円筒形状に成形されたレジスト除去を行う処理室のチャンバ31、チャンバ31内の底部に取り付けられた回転テーブル32、チャンバ31内の上部に取り付けられた活性種輸送管であるガス輸送管33、プラズマ発生部34、そしてHガスおよびHeガスのガス供給系39と反応後の処理ガスをチャンバ31外に排出する排気系40を備えている。
【0036】
そして、上記プラズマ発生部34は、例えば石英ガラスから成る放電管35の内壁に耐プラズマ部材36を設け、放電管35は、この放電管35の内部にμ波37(例えば周波数;2.45GHz)を供給するための導波管38が接続してある。また、ガス輸送管33の内壁にも耐プラズマ部材36を設けても良い。ここで、耐プラズマ部材36は水素あるいは不活性ガスのプラズマでスパッタリングされ難いサファイアで構成するのが好ましい。
【0037】
このレジスト除去装置30の回転テーブル32上にシリコン基板1である半導体ウエハ41を載置し一定速度で回転させ、ガス導入口42より原料ガスとして水素ガスをHeガスで希釈した水素混合ガスを放電管35に導入し、マグネトロンで発生させたμ波37を導波管38を通して放電管35内に供給し、上記混合ガスをプラズマ励起させ水素の活性種を生成する。ここで、水素の活性種には水素プラズマを成すプロトン及び水素分子イオン、そして水素原子あるいは水素分子の中性ラジカル(まとめて水素ラジカルという)がある。この活性種のうち水素ラジカルの寿命は長く、ガス輸送管33を通りチャンバ31内に導入され図2(a)の水素ラジカル6となり、回転テーブル32上に載置した半導体ウエハ41表面のレジストマスク4および改質層4bを除去する。なお、水素プラズマの一部はガス輸送管33を流れる間に水素ラジカルに変化している。そして、このレジスト除去後の処理ガスはガス排出口43から排気系40によりチャンバ31外に排出される。
【0038】
ここで、水素混合ガスのプラズマ励起はマイクロ波で行うためにプラズマ密度が高くそれに伴い水素ラジカルの密度も高くなり、レジスト除去速度が増大する。また、回転テーブル32を加熱し温度制御する基板加熱系44により半導体ウエハ41の温度を200℃〜400℃の範囲に設定すると好適である。このようなウエハ温度は、従来のプラズマによるレジスト除去におけるウエハ温度が通常で150℃程度あるいはそれ以下になるのと比べると高い温度範囲である。ここで、上記温度が200℃以下であると、レジスト除去速度が小さく実用的でない。一方、上記温度範囲を超えてくると、配線にCuを使用する場合、高温により層間絶縁膜中でのCuの熱拡散が生じ易くなり、Cuが半導体素子の活性領域に達して半導体装置の特性劣化を引き起こす。
【0039】
また、上記水素ラジカルのチャンバ31のガス圧力は、50Pa〜1×10Paが好適である。中性ラジカルのガス圧力が上記範囲を下回ると、ラジカル密度が希薄になり、レジスト除去速度が小さく実用的な時間内に処理できなくなる。一方、上記範囲を超えてくると、ラジカルの拡散不良のためにレジスト除去の半導体ウエハ41内での均一性不良が顕著になり実用的でない。
【0040】
ここで、H/Heガスのラジカル形成では、ヘリコン波プラズマ励起、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ励起、ICP(Inductively Coupled Plasma)プラズマ励起の方法を用いても良い。また、Heの替わりにAr等の不活性ガスを用いてもよい。
【0041】
上述したようなレジスト除去の方法により、第1キャップ層2c上のレジストマスクは残渣の生じることはなく完全に除去される(図2(b))。そして、上記ビアホール5の側壁に形成された側壁保護膜である有機ポリマーも同時に除去される。
【0042】
次に、上記第1キャップ層2cをいわゆるハードマスクにして上記エッチングしないで残っていた第1エッチングストッパー層2aをエッチング除去し、ビアホール5を下層配線1表面まで貫通させる。このドライエッチングでは、通常の平行平板電極に例えば2周波の高周波電力を印加し、エッチングガスとしてCF/Ar/N混合ガス、あるいはCHF/Ar/N混合ガスをプラズマ励起して、第1エッチングストッパー層2aを選択的にエッチングする(図2(c))。
【0043】
次に、導電性バリア膜として、膜厚が1nm〜5nmになるタンタル(Ta)膜、窒化タンタル(TaN)膜をスパッタ(PVD)法あるいは原子気相成長(ALD;Atomic Layer Deposition)法で成膜し、下層配線1に接続する第1バリアメタル膜7を第1キャップ層2c上を被覆しビアホール5に埋め込むように堆積させる。更に、配線材料として、スパッタによるCuシード層形成とCuメッキ法とを用いて膜厚が200nm〜500nmの第1Cu膜8をビアホール5に埋め込むように形成する(図3(a))。そして、窒素雰囲気において150〜350℃程度の熱処理を施す。このCuアニールにより、第1Cu膜8の結晶化を行うと共に、第1バリアメタル膜7と第1Cu膜8との接着性を高める。
【0044】
そして、CMP法を用いて、第1キャップ層2cを研磨ストッパーとしてその上の不要な部分のCu膜および第1バリアメタル膜7を順次に研磨除去し、ビアホール5内の第1バリア層9を介し、導電層であるビアプラグ10を充填して形成する(図3(b))。
【0045】
このようにした後、第1キャップ層2c、第1バリア層9の上部およびビアプラグ10を被覆するように、全面に膜厚が25nm程度のSiC膜から成る第2エッチングストッパー層11a、p−MSQ膜から成る比誘電率が2.0程度、膜厚が200nm〜300nm程度になる第2低誘電率膜11bを形成する。そして、上記第2低誘電率膜11b表面に、たとえば膜厚が100nmのSiOC膜から成る第2キャップ層11cを形成して、これらの積層した第2層間絶縁膜11を形成する(図3(c))。
【0046】
次に、公知のリソグラフィ技術を用いてトレンチ用開口12を有するレジストマスク13を第2層間絶縁膜11表面に形成する(図4(a))。そして、レジストマスク13をエッチングマスクにして、上記第2キャップ層11c、第2低誘電率膜11bを順次にRIEでドライエッチングし幅寸法が100nm程度のトレンチ14を形成する。ここで、第2エッチングストッパー層11aはエッチングしない(図4(b))。この第2キャップ層11c、第2低誘電率膜11bのドライエッチングでは、図1(b)で説明したのと同様にC/N/Ar/の混合ガス、C/N/Ar/等の混合ガスをエッチングガスに用いて行う。この場合でも、上記エッチングガスでは、第2エッチングストッパー層11aのエッチングはほとんど進まない。そして、反応生成物として有機ポリマーが多く生成され、その反応生成物がトレンチ14の側壁に保護膜として付着して側壁をフッ素のラジカルによるエッチングから保護する。
【0047】
次に、図1(c)で説明したのと同様にして、図7に示すような熱処理装置20を用い上記変質層13aを改質層13bに変換させる(図4(c))。この場合もホットプレート構造の熱処理装置20を用い、空気中において例えば300℃温度で3分程度の熱処理を施し、図4(b)で説明したドライエッチングで形成されたC−F結合の異物質層を含む変質層4aを、少なくともその一部が酸素と反応した改質層13bに変える。
【0048】
次に、図2(a)で説明したのと同様にして上記レジストマスク13および改質層13bを水素ラジカルにより除去する(図5(a))。上述したようなレジスト除去の方法により、第2キャップ層11c上のレジストマスクは残渣の生じることはなく完全に除去される(図5(b))。そして、上記トレンチ14の側壁に形成された側壁保護膜である有機ポリマーも同時に除去される。
【0049】
この場合でも、改質層13b形成のための熱処理および水素ラジカルによるレジスト除去において、Cuで成るビアプラグ10あるいは下層配線1中のCu原子がバリア層を透過し層間絶縁膜中に熱拡散することはない。また、Low−k膜である第2低誘電率膜11bが組成変化することもない。
【0050】
次に、第2キャップ層11cをハードマスクにして第2エッチングストッパー層11aをエッチング除去し、トレンチ14をビアプラグ10に達するように貫通させる(図5(c))。ここで、このドライエッチングに用いるエッチングガスは、CF/Ar/N混合ガス、あるいはCHF/Ar/N混合ガスである。
【0051】
次に、トレンチ14の側壁および底面、第2キャップ層11c表面を被覆するように、膜厚がそれぞれ5nm〜10nmになるTa膜/TaN膜をPVD法等でこの順に堆積させて第2バリアメタル膜15を全面に成膜する。そして、更に、Cuメッキ法等を用いて膜厚が500nm〜1μmのCu膜を成膜し、第2Cu膜16を第2バリアメタル膜15に積層しトレンチ14に埋め込むように堆積させる(図6(a))。ここで、第2バリアメタル膜15は第1バリア層9およびビアプラグ10に接続している。そして、CMP法を用いて、第2キャップ層11cを研磨ストッパーとしてその上の不要な部分の第2Cu膜16および第2バリアメタル膜15を研磨除去する。このようにして、実効的な比誘電率が2.0〜2.5程度になる第2層間絶縁膜11に設けられたトレンチ14内に第2バリア層17を介して銅配線から成る上層配線18が形成される。ここで、上層配線18は、実効的な比誘電率が2.5〜3.0程度になる第1層間絶縁膜2に形成されたビアプラグ10および第1バリア層9を通して下層配線1に電気接続され、ダマシン配線構造体の2層配線が完成する(図6(b))。
【0052】
上述したように、第1の実施の形態の特徴は、ダマシン法で銅配線を形成するためにLow−k膜を層間絶縁膜に用いる場合に、層間絶縁膜の加工に用いたレジストマスクの除去において、予めレジストマスク表面部の変質層を水素化分解できる改質層に変換し、その後に水素ラジカル照射を行いレジストマスクと共に除去するところにある。
【0053】
この実施の形態において、有機成分を含有するMSQ膜のようなLow−k膜の比誘電率は変化しない。図9に示すように、上記改質層4bおよびレジストマスク4を除去した後において、その膜組成は全く変わらない。上述したように変質層を改質層に変換するために行う酸化性ガス雰囲気での熱処理において、Low−k膜は全くの損傷を受けずその比誘電率が増大することはない。またLow−k膜は、上記改質層およびレジストマスクの水素ラジカル照射において、MSQ膜のメチル基(−CH)がそのまま残存しMSQ膜の膜質変化は全く生じない。ここで、図9は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)の測定結果を参考にしたMSQ膜の模式的な構造図である。
【0054】
第1の実施の形態では、従来の技術で説明したようなレジスト残渣は、高い再現性の下に安定的に発生しないようにすることができる。そして、この実施の形態では、低誘電率の絶縁膜の比誘電率が2程度と小さくなった場合でも、レジストマスク除去後の層間絶縁膜の比誘電率は低いままに保持できる。例えば、比誘電率が2.0の多孔質のMSQ膜を用いた場合、レジストマスク除去後のその比誘電率は2.0のままであり、従来の技術で触れた第1の損傷は皆無になる。
【0055】
また、上記実施の形態では、有機成分を含有するLow−k膜、特に上記多孔質の低誘電率膜に生じ易い以下に述べる第2の損傷も抑制される。すなわち、レジスト除去の工程において、上記ビアホールあるいはトレンチの側壁に多数の空孔(ポア)が露出しても、その側壁において有機成分が解離したり変質したりして、ポア径が大きくなりその含有比率が増大するという損傷は全く生じない。このために、増大したポアを通ってLow−k膜内に水分、配線材料膜のCuあるいはそのバリアメタルのTa、TaN等が侵入し、層間絶縁膜の信頼性の低下および比誘電率の上昇、配線間のリーク電流の増加等が引き起こされることは皆無になる。
【0056】
このようにして、第1の実施の形態のレジスト除去の方法は半導体装置の製造において充分に適用できるようになる。そして、半導体装置において実効的な比誘電率が3以下の積層構造の層間絶縁膜を用い、寄生容量が小さなダマシン配線構造が容易に形成できるようになり、高速動作し高性能な半導体装置の実用化が促進される。
【0057】
(実施の形態2)
図10乃至12は、本発明の第2の実施の形態にかかるレジスト除去方法を適用した半導体装置の製造を示す工程別素子断面図である。この実施の形態は、銅と異なる導電体膜を配線材料に用いたダマシン配線を形成する例である。
【0058】
例えばp導電型のシリコン基板51の表面部にn導電型の拡散層52を形成し、シリコン基板51表面の熱酸化により例えば50nm厚のシリコン酸化膜で下地絶縁膜53を形成する。そして、下地絶縁膜53上にPECVD法を用いて堆積する膜厚が1μm程度のSiOC膜により低誘電率膜54を形成し、低誘電率膜54上にCVDにより膜厚50nmのシリコン酸化膜で形成した保護絶縁膜55を積層させる。そして、公知のリソグラフィ技術によりコンタクト用開口56を有するレジストマスク57を形成する(図10(a))。
【0059】
次に、レジストマスク57をエッチングマスクとして、層間絶縁膜を構成する保護絶縁膜55/低誘電率膜54/下地絶縁膜53を順次にRIEでドライエッチングする。ここで、エッチングガスは、例えばCHガスのようなフルオロカーボンガスとNガスとArガスの混合ガスが好適である。そして、拡散層52に達するビアホール58を形成する。ここで、上記ドライエッチングによりレジストマスク57の表面部に変質層57aが形成される(図10(b))。この変質層57aは、上述した熱硬化層と異物質層が混在したものである。
【0060】
次に、図1(c)で説明したのと同様にして、図7に示すような熱処理装置20を用い上記変質層57aを改質層57bに変換させる(図10(c))。この場合もホットプレート構造の熱処理装置20を用い、酸素雰囲気中において例えば250℃温度で2分程度の熱処理を施し、図10(b)で説明したドライエッチングで形成されたC−F結合の異物質層を含む変質層57aを、少なくともその一部が酸素と反応した改質層57bに変える。ここで、熱処理温度は200℃〜450℃範囲が好適である。この場合のように銅配線が形成されていないと、第1の実施の形態で説明したCuバリア層およびCu拡散の問題は無くなるので、400℃よりも処理温度を高くすることができる。但し、この場合、露出した拡散層52表面に酸素が化学吸着し極薄い酸化層が形成され易くなるために、上記範囲内にするのがよい。
【0061】
次に、図2(a)で説明したのと同様にして上記レジストマスク57および改質層57bを水素ラジカル59により除去する(図10(d))。上述したようなレジスト除去の方法により、保護絶縁膜55上のレジストマスクは残渣の生じることはなく完全に除去される。そして、上記ビアホール58の側壁に形成された側壁保護膜である有機ポリマーも同時に除去される。また、拡散層52表面の極薄い酸化層も還元され消滅する。
【0062】
次に、上記積層構造の層間絶縁膜に形成したビアホール58を充填するようにCVD法で導電体膜60を堆積させる(図11(a))。ここで、導電体膜60は周知のチタン系のバリアメタルとタングステン等の高融点金属あるいはそのシリサイドとの積層構造となっている。
【0063】
そして、周知のCMP法を用いて、保護絶縁膜5上の不要な導電体膜60を研磨除去する。このCMPの工程で保護絶縁膜55がCMP用ストッパ膜として機能し、低誘電率膜54をCMPから保護する。以上のようにして、拡散層52に接続するビアプラグ61を形成する(図11(b))
【0064】
次に、ビアプラグ61に接続する膜厚が1μm程度のアルミ・銅のアルミ合金膜62をスパッタ法で保護絶縁膜55上に成膜し、配線パターンを有するレジストマスク63をアルミ合金膜62表面にリソグラフィ技術で形成する(図11(c))。
【0065】
次に、レジストマスク63をエッチングマスクとしてアルミ合金膜62をRIEでドライエッチングし配線64を形成する。ここで、アルミ合金膜62のドライエッチングは、原料ガスがClガス、BClガス等の塩素を含む混合ガスをプラズマ励起して行う。このドライエッチングでは、レジストマスク63表面部に熱硬化した塩素を含有する有機ポリマーが変質層63aとして形成される(図12(a))。ここで、変質層63aは、上述した異物質層が主体のものである。
【0066】
そして、この変質層63aは、図1(c)で説明したのと同様にして、図7に示すような熱処理装置20を用い、改質層63bに変換させる(図12(b))。この場合もホットプレート構造の熱処理装置20を用い、水蒸気雰囲気中において例えば300℃温度で5分程度の熱処理を施し、図12(a)で説明したドライエッチングで形成されたC−Cl結合の異物質層を含む変質層63aを、少なくともその一部が酸素と反応した改質層63bに変える。
【0067】
次に、図10(d)で説明したのと同様に、図8に示すレジスト除去装置を用いて水素ラジカル65を照射しレジストマスク63および改質層63bを除去する。このようにして、シリコン基板51表面に形成した拡散層52と、上記積層構造の層間絶縁膜に設けたビアプラグ61を通して接続する配線64を形成する(図12(c))。
【0068】
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態の場合と同様の効果が生じ、レジスト残渣の発生は、高い再現性の下に安定的に無くすることができる。そして、レジスト除去後の低誘電率絶縁膜の誘電率が増加をすることもなくなる。例えば、図10で説明した層間絶縁膜の形成において、比誘電率が2.5の多孔質のSiOC膜で成る低誘電率膜54を用いた場合、図12(c)の工程後の低誘電率膜54の比誘電率は若干の増加傾向にあるが、測定誤差を考慮しても比誘電率の増加率は1%以下である。この実施の形態では、層間絶縁膜は、保護絶縁膜55/低誘電率膜54/下地絶縁膜53の積層膜である。下地絶縁膜53および保護絶縁膜55を構成するシリコン酸化膜の比誘電率を4とすると層間絶縁膜はSiOC膜の換算膜厚で1.06μm強になり、半導体装置の製造において、配線間の寄生容量を充分に低減した配線構造が形成できることになる。
【0069】
このようにして、半導体装置の配線構造において、低誘電率を有する層間絶縁膜が高い再現性の下に簡便にしかも高精度に形成できるようになる。そして、半導体装置において比誘電率が3以下の層間絶縁膜で寄生容量が小さな配線構造が容易に形成できるようになり、高速動作する高性能な半導体装置の実用化が促進される。
【0070】
以上、この発明の実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。上述した実施の形態では、低誘電率絶縁膜である有機成分を含有するシロキサン骨格の絶縁膜の代表例とし、MSQ膜をドライエッチングし配線構造に用いる層間絶縁膜を形成する場合について説明しているが、それ以外のシルセスキオキサン類の絶縁膜であるSi−CH3 結合、Si−H結合、Si−F結合のうち少なくとも1つの結合を含むシリカ膜あるいはその多孔質膜でも本発明は全く同様にして適用できるものである。ここで、シルセスキオキサン類の絶縁膜としてよく知られた絶縁材料には、上記MSQの他、ハイドロゲンシルセスキオキサン(HSQ:Hydrogen Silsesquioxane)、メチレーテッドハイドロゲンシルセスキオキサン(MHSQ:Methylated Hydrogen Silsesquioxane)等がある。さらに、低誘電率絶縁膜としては、CVD法により成膜するSiOCH膜あるいはその多孔質膜、SiOC膜あるいはその多孔質膜でも同様に適用できる。すなわち、Si、C、O、及びHを含む低誘電率絶縁膜である。そして、本発明は、有機高分子を主骨格とした低誘電率の絶縁膜、例えば有機炭化水素重合体系の低誘電率絶縁膜を用い層間絶縁膜を形成する場合には更に効果的に適用できる。その有機高分子を主骨格とした絶縁膜としては、有機ポリマーで成るSiLK(登録商標)がある。
【0071】
また、上記実施の形態では、絶縁性バリア層であるエッチングストッパー層として、SiC膜に替えてSiCN膜、SiN膜を用いても良い。あるいはキャップ層として、SiOC膜の他にSiC膜、SiCN膜、SiN膜を用いても良い。
【0072】
更に、本発明は、低誘電率の絶縁膜を用いた層間絶縁膜を通してシリコン基板内に不純物イオン注入をする場合に用いたレジストマスクを除去する場合にも、全く同様に適用できる。このイオン注入においても、そのドーズ量が増大するとレジストマスクの表面部に変質層が生じるからである。このような不純物イオン注入に用いるレジストマスクは、例えば一個のMOSFETで構成するROM(含む多値機能)を搭載した半導体装置の製造に頻繁に使用される。
【0073】
また、上記ドライエッチングにおける被加工材料は層間絶縁膜に限定されず、他の絶縁体材料あるいは半導体材料、導電体材料の場合でも本発明は同様に適用できる。
【0074】
更に、本発明は、被処理基板として、シリコン基板上に半導体装置を形成する場合の他に、GaAs基板、GaN基板のような化合物半導体基板上に半導体装置を形成する場合にも同様に適用できる。また、半導体基板に限らず液晶表示基板、プラズマディスプレイ基板上の被加工材料のエッチングでも同様に適用できる。そして、半導体装置の実装に使用する多層配線基板のプリプレグのような絶縁素材を形成する場合にも適用できる。このように、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、実施の形態は適宜に変更されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態の半導体装置製造におけるレジスト除去方法を示す工程別素子断面図である。
【図2】図1に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図3】図2に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図4】図3に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図5】図4に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図6】図5に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図7】レジストマスク表面部の変質層を改質する熱処理装置の模式的な略断面図である。
【図8】レジストマスクを除去するためにのレジスト除去装置の模式的な略断面図である。
【図9】本発明の効果を説明するための低誘電率絶縁膜の構造図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の半導体装置製造におけるレジスト除去方法を示す工程別素子断面図である。
【図11】図10に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図12】図11に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図13】従来のレジスト除去における問題点を説明するための低誘電率絶縁膜の構造図である。
【図14】従来の技術を説明するための半導体装置製造におけるレジスト除去方法を示す工程別素子断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 下層配線
2 第1層間絶縁膜
2a 第1エッチングストッパー層
2b 第1低誘電率膜
2c 第1キャップ層
3 ビアホール用開口
4,13,57,63 レジストマスク
4a,13a,57a,63a 変質層
4b,13b,57b,63b 改質層
5 ビアホール
6,59,65 水素ラジカル
7 第1バリアメタル膜
8 第1Cu膜
9 第1バリア層
10 ビアプラグ
11 第2層間絶縁膜
11a 第2エッチングストッパー層
11b 第2低誘電率膜
11c 第2キャップ層
12 トレンチ用開口
14 トレンチ
15 第2バリアメタル膜
16 第2Cu膜
17 第2バリア層
18 上層配線
20 熱処理装置
21 ヒータ
22 ホットプレート
23,41 半導体ウエハ
30 レジスト除去装置
31 チャンバ
32 回転テーブル
33 ガス輸送管
34 プラズマ発生部
35 放電管
36 耐プラズマ部材
37 μ波
38 導波管
39 ガス供給系
40 排気系
42 ガス導入口
43 ガス排出口
44 基板加熱系
51 シリコン基板
52 拡散層
53 下地絶縁膜
54 低誘電率膜
55 保護絶縁膜
56 コンタクト用開口
58 コンタクト孔
60 導電体膜
61 ビアプラグ
62 アルミ合金膜
64 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の加工でマスクとして用いたレジスト膜をエッチング除去するレジスト除去方法において、
前記加工した後、前記レジスト膜に対して、酸素含有ガスの雰囲気中において所定温度の熱処理を施す工程と、
前記熱処理の後、水素ガスを含む原料ガスのプラズマ励起により生成した水素活性種を用いて前記レジスト膜をエッチング除去する工程と、
を有するレジスト除去方法。
【請求項2】
前記熱処理の温度が200℃〜450℃であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト除去方法。
【請求項3】
前記酸素含有ガスが、酸素(O)ガス、水蒸気(HO)、空気からなる群より選択された少なくとも一種のガス、あるいは前記ガスと不活性ガスの混合ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレジスト除去方法。
【請求項4】
前記熱処理における前記酸素含有ガスの圧力が、50Pa〜3×10Paであることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3のいずれかに記載のレジスト除去方法。
【請求項5】
前記被処理基板の加工は、CxHyFzの化学式(x=1〜5の整数、y=0〜3の整数、z=4〜8の整数)で表されるフルオロカーボンガス群より選択された少なくとも一種のガスをプラズマ励起し、前記プラズマ励起したエッチングガスを用いて、前記被処理基板表面に成膜したシロキサン骨格を有する炭素含有の低誘電率絶縁膜あるいは有機高分子を主骨格の低誘電率絶縁膜をドライエッチングすることであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のレジスト除去方法。
【請求項6】
前記原料ガスは水素ガスと不活性ガスの混合ガスであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のレジスト除去方法。
【請求項7】
前記水素活性種を用いるエッチング除去において、前記被処理基板の温度を200℃〜400℃の範囲に設定することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のレジスト除去方法。
【請求項8】
基板上に少なくとも一部に低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜表面に所望の開口パターンを有するレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクを用いて前記低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜をエッチング加工して前記低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜に前記所望の開口を形成する工程を備えた半導体装置の製造方法であって、
前記エッチング加工の後に、前前レジストマスクに対して、酸素含有ガスの雰囲気中で所定温度の熱処理を施し、その後に水素ガスを含む原料ガスのプラズマ励起により生成した水素ラジカルを用いて前記レジストマスクをエッチング除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記低誘電率膜が、シロキサン骨格を有する炭素含有の低誘電率絶縁膜あるいは有機高分子を主骨格の低誘電率絶縁膜であって、比誘電率が3以下の低誘電率膜であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記低誘電率絶縁膜を含む層間絶縁膜のエッチング加工は、CxHyFzの化学式(x=1〜5の整数、y=0〜3の整数、z=4〜8の整数)で表されるフルオロカーボンガス群より選択された少なくとも一種のガスをプラズマ励起し、前記プラズマ励起したエッチングガスを用いて、前記低誘電率絶縁膜をドライエッチングすることであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−59848(P2006−59848A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237117(P2004−237117)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】