説明

レニン−アンギオテンシンアルドステロン系関連疾病の治療用組成物及び治療方法。

【課題】 アンギオテンシン転換酵素の活性を低減するのに有用であり得る化合物であって、かくしてレニン−アンギオテンシン−アルドステロン系関連の疾病を治療又は予防するのに用い得る化合物が提供される。これらの化合物にはリポ酸誘導体例えばプロリルリポ酸、ピペコリニルリポ酸及び他の化合物があり、しかもこれらの化合物はヒト又は動物の患者における高血圧、発作又は他のレニン−アンギオテンシン−アルドステロン系関連の疾病を治療するのに有用である。これらの化合物を用いて製造した製薬組成物及びこれらの化合物を用いての治療方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2008年10月17日出願の米国仮出願第61/196,417号の利益をクレームし、その全開示をこゝに組入れる。
【0002】
本発明の要旨はレニン−アンギオテンシン アルドステロン系(RAAS)関連疾病を治療するための化合物及び方法に関する。詳しく言えば、本発明の要旨は、アンギオテンシン転換酵素活性を低減するのに用いることができかくしてRAAS関連疾病例えば高血圧症、発作、真性糖尿病、アテローム性動脈硬化症及び他の心臓血管疾病及び腎臓病の治療に有用である、ピロリルリポ酸及びピペコリニルリポ酸アミド及びその誘導体を含めての化合物及び別の化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
米国及び他の国々において、高血圧症、発作及びレニン−アンギオテンシン アルドステロン系(RAAS)に関連する別の疾病は、全世界に亘って数百万人の人々に対して多大の苦難と経済的損失を生起して、広まった罹病率及び致死率の主たる原因である。例えば、世界的に6億近くの人々が高血圧症に罹患しており、そのうち5千万近くの人々が米国に居住していると推定されている。更には高血圧症のみでは2007年に米国のみで664億ドルの年間経費を生じると推定されている。
【0004】
高血圧症及び他の関連疾病に伴なう広まった苦難及び経済的な重大さにも拘らず、高血圧症の十分で適当な治療は多数の人々にとって尚捕え所のないまゝである。高血圧症の如き疾病の病因は多重要因であることが多く、座業の生活様式、肥満、塩の敏感性、アルコールの摂取、ビタミンD不足、遺伝的突然変異及び家族歴の如き種々の原因を包含する。更に最近の証拠が強く示す処によれば高血圧症の発現及び病状と酸化性ストレス及び炎症との間で関連があることである。
【0005】
然しながら、今日まで、酸化性ストレス及び炎症が高血圧症の発現及び病状に重大な役割を演じるという増大しつゝある量の証拠にも拘らず、アンギオテンシン−転換酵素(ACE)阻害剤は高血圧症の治療に最も好ましい薬剤の1つとして考えられ続けている。ACEは10アミノ酸アンギオテンシンI(AgnI)からC−末端ヒスチジン−ロイシンジペプチドを開裂してアンギオテンシンII(AngII)を発生させ次いでこれは種々の生理的応答を仲介し得ることは長年の間知られている。例えば、増大した血圧及び高血圧症を生起し得るAngIIの共通の血管収縮作用に加えて、AngIIの生理作用にはまた:心室肥大及びうっ血性心不全を生起してしまう心臓の心室リモデリング;血管中でのフリーラジカル発生の増大;次後に血液量の増大及び血圧の増大を生起するアルドステロンを放出する副腎皮質の刺激;及び腎臓に作用して水の滞留を増大するバンプレシン(抗利尿ホルモン、ADHとしても公知)を放出する脳下垂体後葉の刺激がある。
【0006】
これらの広範囲の作用から見て、RAASはかくして、高血圧症、真性糖尿病、糖尿病に関連する標的器官の損傷、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、アンギナ、発作及びレイナウド病の病因に広く関係していた。従って且つRAASに中心的な役割を演じるAngII濃度はACEの活性により決定される故に、ACEの抑制はかくしてこれらの疾病の治療に多大の治療能力を有する。実際上、ACE阻害剤(インヒビター)は高血圧(高血圧症)の治療に現在承認されておりまた標的器官の損傷を伴なう糖尿病、収縮期の心不全、急性冠動脈症候群の治療に且つ心臓発作に続いての治療に広く処方されている。これらの臨床状態におけるACE阻害剤の使用は、それらの血圧降下作用とは別個に臨床結果を改善することが示されているので、介護の基準に適合することが必要と考えられる。然しながら、これらの種々の疾病の治療にACE阻害剤の処方は、これらの疾病の全てではないとしても多数に伴なう、横たわっている酸化性ストレス及び炎症を尚大きく無視している。それだけで、これらの疾病を伴なうと診断された人々は、下方にある炎症及び酸化性ストレスを治療するのに追加の投薬に頼らねばならない。
【0007】
現在、多数の抗炎症薬剤及び抗酸化剤が入手され又は天然に産生し、患者の酸化性ストレス又は炎症の量を低減し得るものである。植物及び動物において、1つのかゝる薬剤はアルファリポ酸(ALA又はリポ酸)である。チオクチン酸(thioctic acid)としても知られるALAはヒトを含めて動植物によって合成される天然産生の8−炭素脂肪酸であり、体内における若干の重要な機能に役立つ。ALAは、通常は酸化したジスルフィド形で見出されるが還元してチオールを形成し得る2個の硫黄原子を含有する。この特徴によって、幾つかの重要な酵素用の助因子として並びに強力な抗酸化剤として機能するALAのリポミド形の如き形式のALAを可能とする。強力な抗酸化剤として、ALAはヒドロキシル基、一重項の酸素、パーオキシニトライト及び次亜塩素酸を含めて種々のフリーラジカル及び酸化剤を掃気し得る。これらのフリーラジカルは多くの慢性疾病の病態生理学に関連している故に、ALAの薬物治療作用はその抗酸化特性に主として因ると考えられる。然しながら、その抗酸化特性に加えてALAはまた強力な抗炎症剤である。ALAは炎症応答に中心的な役割を演じるIKK/NF−kBシグナリングの活性化を阻害する。更には、最近の報告が証明する処によれば、ALAは少なくとも一部はその抗炎症性作用によりアテローム性動脈硬化症の病変発現を阻害する(例えばFrei B等のCirculation 2008;117:421〜428頁参照)。
【0008】
或る健康恩恵は外因性ALAの投与に基因しているけれども、ALAは未だ栄養(nutraceutical)補助剤のみとして大きく考察され続け、その下方にある(underlying)健康恩恵の残部は尚十分には実現されるものである。更には、ALAに伴なう最大の恩恵を得るのに且つアンギオテンシン−転換酵素活性を低減するのに有用であるのに分子を如何に構成し得るかについては未解明のまゝである。何故ならば、1つの機能を果たす種々の化学的部分が別の機能を果たす別の部分を妨害するかもしれないからである。実際に、今日まで、ALAはACE阻害剤と有効に組合せることができなかったし、こうしてALAの有利な特性とACE阻害剤の有利な特性とを組合せて1つの化合物にし、該化合物は多数の疾病及びそれらの関連ある経路を最低の毒性で標的とすることにより種々の多機能治療作用を示し得るものである。
【0009】
従って、リポ酸の特性とACE阻害剤の特性とを組合せた化合物が高度に望ましく且つRAASの作用に関連する種々の疾病、特に下方にある炎症及び酸化性ストレスが疾病に伴なう疾病を治療するのに潜在的にきわめて有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして本発明の目的はリポ酸の有益な特性を提供できるが尚アンギオテンシン−転換酵素(ACE)を阻害し、恩恵を誘導する化合物の機能を妨害しない、レニン−アンギオテンシン アルドステロン系(RAAS)関連疾病を治療する化合物及び方法を提供するものである。
【0011】
また本発明の目的は、ACEを本発明の化合物の有効量と接触させる、ACE活性の低減方法を提供する。
【0012】
尚本発明の別の目的はRAAS−関連疾病例えば高血圧症、発作、真性糖尿病、真性糖尿病に関連する標的器官の損傷、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、アンギナ、腎疾患又はレイナウド病を治療する方法を提供するものであり、治療を必要とする被験体に本発明化合物の有効量を投与してRAAS関連疾病を治療するものである。
【0013】
これらの目的及び他の目的は、ACE阻害剤の有益な特性とリポ酸の有益な特性とを包含する化合物よりなる本発明によって提供される。本発明の好ましい具体例においては、次の一般式(I)を有する化合物が提供される;

〔式中R1

であり;
2は5員又は6員の非芳香族複素環式環構造を表し;
3はCH3又はHである〕。
【0014】
本発明の別の好ましい具体例では、次の一般式(X)の化合物が提供される;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2はヒドロキシル置換基を場合によっては含有する5員又は6員の非芳香族複素環式環構造又は8員又は10員の二環式芳香族又は非芳香族複素環式環構造を表し;
3

よりなる群から選ばれる〕。
【0015】
本発明の尚別の好ましい具体例においては、次式(XI)を有する化合物が提供される;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3


よりなる群から選ばれる〕。
【0016】
本発明の尚別の好ましい具体例では次式(XII)の化合物が提供される;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕。
【0017】
本発明の別の好ましい具体例では、次の一般式(XIII)の化合物が提供される;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3はH、CH3又はCOCH3である〕。
【0018】
本発明の或る具体例では、次の一般式(XIV)の化合物が提供される;

(式中R1はOH,NO2,NH2及びOCH3よりなる群から選ばれる)。
【0019】
本発明の別の具体例では、次の一般式(XV)の化合物が提供される;

本発明の更なる具体例では、次の一般式(XVI)の化合物が提供される;

本発明の尚別の具体例では、次の一般式(XVII)の化合物が提供される;

(式中R1はOH,NO2,OCH3及びNH2よりなる群から選ばれる)。
【0020】
本発明の尚別の具体例では、次の一般式(XVIII)の化合物が提供される;

〔式中R1はシクロペンチル環、シクロヘキシル環、フェニル環、及び置換フェニル環(但しフェニル環上の置換基はOH,OCH3,NH2,NO2,COOHよりなる群から選ばれる)よりなる群から選ばれる任意の環を表し;
2は遊離カルボキシル基、メチル又はエチルエステル基、第1級アルコール基及び第1級アミン基よりなる群から選ばれ;
nは1〜3の整数であり、含窒環はピロリジン環、ピペリジン環及び飽和アゼピン環よりなる群から選んだ置換又は非置換の環であり;
3は1〜3個の炭素原子をアルキル基であって1つ又はそれ以上の共役又は非共役二重結合を含有できるアルキル基であり;
4

よりなる群から選ばれる置換又は非置換の5員又は6員ジスルフィド部分あるいは5員又は6員のジチオール部分である〕。
【0021】
更に本発明は以下に詳細に記載される様に、前記化合物から形成した製薬組成物及び該化合物の有効量を用いる、高血圧症、発作及び他の疾病の如き疾患を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】L−プロリンメチルエステルと(DL)−アルファリポ酸とからL−プロリルメチルエステルリポ酸(式(II))の例示的な合成の図解図。
【図2】L−プロリルメチルエステルリポ酸(式(II))の形成を確認するのに用いた薄層クロマトグラフィー実験からの結果の図解図。A地点はリポ酸を表し、B地点はL−プロリルメチルエステルリポ酸(式(II))を表す。
【図3】L−プロリルメチルエステルリポ酸(式(II))を特徴付けるのに用いたプロトン核磁気共鳴(NMR)分光分析法実験の結果。但しピークは観察された化学シフト値(δ)に基いて指定された以下を含む; δ4.448(1H,三重線),3.695(3H,一重線),3.624-3.464(2H,多重線),3.184-3.098(2H,多重線),2.531-2.284(2H,多重線),2.150-1.895(6H,多重線),1.693-1.621(5H,多重線),及び 1.480-1.444(4H,多重線).
【図4】L−プロリルメチルエステルリポ酸(式(II))からL−プロリルリポ酸(式(III))の例示的合成の図解図。
【図5】L−プロリルリポ酸(式(III))の形成を確認するのに用いた薄層クロマトグラフィー実験からの結果の図解図。A地点はL−プロリルリポ酸(式(III))を表し、B地点はL−プロリルメチルエステルリポ酸(式(II))を表す。
【図6】L−プロリルリポ酸(式(III))を特徴付けるのに用いたプロトン核磁気共鳴(NMR)分光分析法実験の結果。但しピークは以下を含めて観察された化学シフト値(δ)に基いて指定される; δ9.230(1H,ブロードな一重線),4.533(1H,三重線),3.584-3.453(2H,多重線),3.155-3.070(2H,多重線),2.458-2.410(2H,多重線),2.363-3.316(4H,多重線),2.265-2.243(2H,多重線),2.069-2.041(4H,多重線),及び 2.031-1981(4H,多重線).
【図7】その化学名及び代表的な特性と共にL−プロリルリポ酸(式(III))の化学構造を示す図解図。
【図8】L−プロリルリポ酸(式(III))からL−プロリルリポ酸のジチオール誘導体、1−(6,8−ジメチルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸(式(IV))の例示的な合成の図解図。
【図9】(DL)−ピペコリル酸メチルエステル及び(DL)−アルファリポ酸から(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸(式(V))の例示的な合成の図解図。
【図10】(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸(式(V))の形成を確認するのに用いた薄層クロマトグラフィー実験からの結果の図解図。A地点は(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸(式(V))を表し、B地点はリポ酸を表す。
【図11】(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸(式(V))から(DL)−ピペコリニルリポ酸(式(VI))の例示的な合成の図解図。
【図12】(DL)−ピペコリニルリポ酸(式(VI))から1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピペリジン−2−カルボン酸(式(VII))の例示的な合成の図解図。
【図13】1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸(1NB;式(IV))の種々の濃度に応答してアンギオテンシン−転換酵素の活性の低減を示す用量応答曲線の図表。
【図14】ピロリルリポ酸(式(III))の種々の濃度に応答してアンギオテンシン−転換酵素の活性の低減を示す用量応答曲線の図表。
【図15】予備収縮したラットの大動脈部分を弛緩させるプロリルリポ酸(式(III))及びリポ酸の能力を示す図表。
【図16】プロリルリポ酸(式(III))の50mg/kgの単一投与前及び投与後に自発高血圧性発作傾向の(stroke prone)ラットの動脈内血圧測定を示す図表。
【図17】プロリルリポ酸(式(III))の50mg/kgの単一投与前及び投与後に自発高血圧性発作傾向のラットの12時間の平均収縮期血圧を示す図表。
【図18】50mg/kgの濃度でプロリルリポ酸(式(III))の注射液の摂取前及び摂取後に自発高血圧性発作傾向のラットの血圧を示す図表。
【図19】50mg/kgの濃度でプロリルリポ酸(式(III))の注射液の摂取前及び摂取後に別の群の自発高血圧性発作傾向のラットの血圧を示す図表。
【図20】100mg/kgの濃度でカプトプリルの注射摂取前及び摂取後の自発高血圧性発作傾向のラットの血圧を示す図表。
【図21】50mg/kgの投薬量でプロリルリポ酸(式(III);PLA)で処理した自発高血圧性発作傾向のラットから又は5匹の未処理の自発高血圧性発作傾向のラット(プラセボ)から大動脈部分のフェニルエフリン−誘発した予備収縮の百分率(%)として弛緩の程度を示す図表。その際大動脈部分は0.3μMのフェニルエフリンで予備収縮され、種々の濃度のアセチルコリン(Ach)を用いて弛緩される。
【図22】50mg/kgの投薬量でプロリルリポ酸(式(III);PLA)で処理した自発高血圧性発作傾向のラットからあるいは5匹の未処理の自発高血圧性発作傾向のラット(プラセボ)から大動脈部分のフェニルエフリン誘発した予備収縮の百分率(%)として弛緩の程度を示す図表。その際大動脈部分は0.3μMのフェニルエフリンで予備収縮され、種々の濃度のニトロプルシドナトリウム(SNP)を用いて弛緩される。
【図23A−G】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットの大動脈における種々の炎症性遺伝子の発現を示す図表。そのうちICAM1(図23A)、IL−6(図23B)、IL−1β(図23C)、MCP1(図23D)、TGF−β1(図23E)、VCAM1(図23F)及びTNF−α(図23G)のmRNA発現を示す図表。
【図24A−G】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットの腎臓における種々の炎症性遺伝子の発現を示す図表。そのうちICAM1(図24A)、1L−1β(図24B)、1L−6(図24C)、MCP1(図24D)、TGF−β1(図24E)、TNF−α(図24F)及びVCAM1(図24G)のmRNA発現を示す図表。
【図25A−D】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットの心臓における種々の炎症性遺伝子の発現を示す図表。そのうちICAM1(図25A)、MCP1(図25B)、TGF−β1(図25C)、TNF−α(図25D)のmRNA発現を示す図表。
【図26A−G】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットの脳における種々の炎症性遺伝子の発現を示す図表。そのうちICAM1(図26A)、1L−1β(図26B)、1L−6(図26C)、MCP1(図26D)、TGF−β1(図26E)、VCAM1(図26F)及びTNF−α(図26G)のmRNA発現を示す図表。
【図27A】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量を又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットにおける大動脈内側の肥大に対するプロリルリポ酸の作用を示す画像(図27A)。
【図27B】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量を又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットにおける大動脈内側の肥大に対するプロリルリポ酸の作用を示す図表(図27B)。
【図28】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量を摂取するか又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットの心臓におけるCD68に対する免疫染色を示す画像。
【図29】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットから脳組織の組織的部分におけるCD68発現の程度を示す図表。
【図30】50mg/kgのプロリルリポ酸(式(III);PLA)の毎日の投薬量又は塩水プラセボを摂取する自発高血圧性発作傾向のラットから腎臓組織の組織的部分におけるCD68発現の程度を示す図表。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によると、レニン−アンギオテンシン アルドステロン系(RAAS)−関連疾病の治療用の化合物及び方法が提供される。特に、本発明はアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤の有益な特性とリポ酸の有益な特性とを包含する化合物を提供する。これらの化合物は生体外及び生体内の両方でACE活性を低減するのに並びに炎症及び酸化性ストレスを低減するのに有用である。更に、これらの化合物はRAAS−関連疾病を治療するのに有用である。若干の具体例では、該化合物は製薬組成物の一部として投与としてこれによって被験体のRAAS−関連疾病を治療できる。
【0024】
本発明の好ましい具体例の1つによると、本発明で有用な化合物は次の一般式(I)を有するものである;

〔式中R1

であり;
2は5員又は6員の非芳香族複素環式構造を表し;
3はCH3又はHである〕。
【0025】
これらの化合物はプロリルリポ酸、プロリルメチルエステルリポ酸、ピペコリニルリポ酸及びピペコリニルメチルエステルリポ酸を包含するものである。或る具体例においては式(I)の化合物はリポ酸部分のアルキル連鎖の長さを疎水性にインパクトがあるように仕立てるように改質でき、12個までの炭素原子のアルキル連鎖を含有できる。前記一般式(I)による特定の化合物には以下に記載した式(II)〜(IX)のものがある;


本発明の別の好ましい具体例では、本発明で有用な化合物は次の一般式(X)を有するものである;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2はヒドロキシル置換基を場合によっては含有する5員又は6員の非芳香族複素環式環構造あるいは8員又は10員の二環式芳香族又は非芳香族複素環式環構造を表し;
3

よりなる群から選ばれる〕。
【0026】
前記一般式(X)による特定の化合物は次式から選んだ化合物があるものである;


本発明の尚別の好ましい具体例では、本発明で有用な化合物は次の一般式(XI)を有するものである;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3


よりなる群から選ばれる〕。
【0027】
前記一般式(XI)による特定の化合物は以下に記載した次式から選ばれる化合物がある;


本発明の尚別の好ましい具体例では、本発明で有用な化合物は次の一般式(XII)を有するものである;

〔式中R1

及びベンゾキル基例えば

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕。
【0028】
一般式(XII)による特定の化合物には、以下に記載した次の式から選んだ化合物があるものである;


本発明の別の好ましい具体例では、本発明に有用な化合物は次の一般式(XIII)を有するものである;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3はH,CH3又はCOCH3である〕。
【0029】
一般式(XIII)による特定の化合物には、以下に記載した次の式から選んだ化合物があるものである;

本発明の或る具体例では、本発明に有用な化合物は次の式(XIV)を有するものである;

(式中R1はOH,NO2,NH2又はOCH3である)。
【0030】
本発明の別の具体例では、本発明に有用な化合物は次の式(XV)を有するものである;

本発明の別の具体例では、本発明に有用な化合物は次の式(XVI)を有するものである;

本発明の尚更なる具体例では、本発明に有用な化合物は一般式(XVII)を有するものである;

(式中R1はOH,NO2,OCH3又はNH2である)。
【0031】
本発明の尚別の具体例では、次の一般式(XVIII)を有する化合物が提供される;

前記した一般式(XVIII)の化合物の或る具体例において、R1は随意であり、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、フェニル環又は置換フェニル環〔但しフェニル環上の種々の置換基にはOH,OCH3,NH2,NO2,COOH又はCONHR(但しRはメチル又はエチル基である)があり得る〕から選択できる。
【0032】
若干の具体例では、環構造上の前記官能基の包含は更なる誘導化のために用い得る。若干の具体例では、R2は遊離カルボキシル基、メチル又はエチルエステル基、第1級アルコール基又は第1級アミン基から選択できる。
【0033】
一般式(XVIII)の化合物の若干の具体例において、nは1〜3の整数である。例えばnが1である時、式(XVIII)の化合物はピロリジン環を包含でき、該環は第4の炭素位置でOH、SH、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アミノ基又はメトキシ基で、追加的に置換でき、あるいはベンゼン環と追加的に融合してイソインドール部分を形成できる。別の例として、nが2である時、式(XVIII)の化合物はピペリジン環を包含でき、該環はベンゼン環と追加的に融合してテトラヒドロ−イソキノリン部分を形成できる。尚別の例として、nが3である時式(XVIII)の化合物は7員の飽和アゼピン環を包含でき、該環はベンゼン環と追加的に融合し得る。
【0034】
更に、一般式(XVIII)の化合物の若干の具体例においては、R3は、1〜3個の炭素原子を含有し且つ炭素原子間で1つ又はそれ以上の2重結合を包含し得るアルキル基を表すことができ、こうして式(XVIII)の化合物に共役及び非共役モノエン、ジエン及びトリエン部分を組入れ得る。
【0035】
更に、一般式(XVIII)の化合物の若干の具体例においては、R4は次の基

よりなる群から選んだ置換又は非置換5員又は6員ジスルフィド部分又は5員又は6員ジチオール部分である。例えば、Xが5員又は6員のジスルフィド部分を表す時、1,2−ジチオラン基の如きジスルフィド部分を式(XVIII)の化合物に組入れ得る。別法として、Xがジチオール部分を表す時は、ジチオール部分を式(XVIII)の化合物に包含できしかもアセチル基、ベンゾイル基及びベンジル基で更に置換できる。
【0036】
認められる通り、本発明の化合物はACE活性を低減するのに有用であり且つまたRAAS−関連疾病を治療するのに有用である。かゝる事情で、種々の官能基がACE活性の低減を提供するのみならずRAAS関連疾病の有効な治療をも提供するのに前記構造中に組入れられている。前記化合物の或る部分では、ジスルフィド基、ジチオール基、アセチル置換したジチオール基、メチル置換ジチオール基、ベンジル置換した5員及び6員のジスルフィド基及びジチオール基を本発明の化合物に組入れ得る。化合物の若干ではチオール基の包含はニトロソ官能基の導入に用いることができ、該官能基はNO供与分子として更に用い得る。前記化合物で示した通り、これらの種々の基の各々は、延長したアルキル連鎖によって該化合物に結合させることができ、該アルキル連鎖は或る化合物ではモノエン及びジエンの如き不飽和二重結合を包含する。更には、前記化合物の或る部分では、5員のピロリジン環及び6員のピペコリニル環を該化合物に配合でき、これらの環構造は更に例えばα−カルボン酸基、第1級アルコール基、及びカルボキシルメチルエステル置換したアミド基を包含し得る。或る化合物では、フッ素、チオール、置換チオール及びアミン官能基を5員のピロリジン環に包含する。別の化合物では、5員の環を、融合した環構造で置換でき又は7員環で置換できる。
【0037】
前記した本発明化合物の或る具体例では、該化合物は、本発明化合物の環構造に含有される窒素原子に近い立体異性体の炭素原子を包含し得る。かゝる事情で、本発明は化合物は更に前記化合物のL−,D−及びD,L−異性体を包含する。
【0038】
更に、こゝに挙げた化合物は式を参照して記載され、これらの具体例では、これらの式を参照すると該化合物の1つ又はそれ以上の部分の立体異性体を包含し得る。かゝる立体異性体は該化合物の若干の具体例を表しているが、こゝに挙げた式及び式の記載は明示した化合物の全ての活性な立体異性体を包含するのを意図するものである。更に、こゝに記載した要旨の化合物は1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を含有でき、しかもラセミ形及び光学活性形で存在できる。本発明の化合物は立体異性体形で存在できしかもかくして得られた生成物は異性体の混合物であり得る。
【0039】
本発明によると、こゝに開示した要旨の化合物及び薬剤(agents)の全ては、当業者に認められる通り、製薬上許容し得る塩又は溶媒和物の形で提供できる。塩は適当な酸及び/又は適当な塩基を用いて形成できる。こゝに開示した要旨の薬剤と塩を形成し得る適当な酸には、無機酸例えばトリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、ホスホリック酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、ケイ皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸等がある。こゝに開示した要旨の薬剤と塩を形成し得る適当な塩基には、無機塩基例えば水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等;及び有機塩基例えばモノ−、ジ−及びトリ−アルキル及びアリールアミン(例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン等)及び随意に置換したエタノールアミン(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン等)がある。
【0040】
本明細書で用いた通り、用語「溶媒和物」は溶質例えば本発明の化合物又はそれの製薬上許容し得る塩の1つ又はそれ以上の分子と、溶剤の1つ又はそれ以上の分子とによって形成された錯体又は集合体を記載する。かゝる溶媒和物は溶質と溶剤との実質的に固定したモル比を有する典型的には結質晶の固体である。代表的な溶剤には水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸等があるが、これに限定されない。溶剤が水である時、形成される溶媒和物は水和物である。かゝる事情で、用語「その製薬上許容し得る塩又は溶媒和物」は塩と溶媒和物との全ての交換例えば本発明化合物の製薬上許容し得る塩の溶媒和物を包含すると意図される。
【0041】
以下に更に記載される如く、本発明の尚更なる具体例においては、こゝに記載される如き化合物と製薬上許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤とを含有する製薬組成物を提供する。例えば経口投与用組成物の固体調剤は適当な担体又は賦形剤例えばコーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、アラビアゴム、サクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム又はアルギン酸を含有できる。用い得る崩壊剤には微結晶セルロース、コーンスターチ、ナトリウムスターチグリコレート、及びアルギン酸があるがこれに限定されない。用い得る錠剤型結合剤には、アラビアゴム、メチルセルロース、ナトリウム カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(POVIDONE登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、サクロース、スターチ及びエチルセルロースがある。用い得る潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリコーン油、タルク、ワックス、オイル及びコロイドシリカがある。更に、固体調剤は被覆をしなくても良くあるいは既知技術により被覆して胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせ、これによて長期間に亘って持続した/延長した作用を提供できる。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートを用いて持続した/延長した放出の調剤を提供できる。
【0042】
更には、経口投与用化合物の液体調剤は、水又は他の水性ビヒクル中で調製でき、しかも種々の懸濁剤例えばメチルセルロース、アルギネート、トラガカントゴム、ペクチン、ケルギン、カラギーナン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドンを含有でき、しかも組成物の活性成分と一緒に、潤滑剤、甘味剤及び着色剤及び香味剤を含有する溶液、エマルジョンシロップ及びエリキシルを包含する。種々の液体及び粉末調剤は治療すべき被験体の肺に吸入するための慣用の方法によって製造できる。
【0043】
組成物の注射可能な調剤は種々の担体例えば植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、液体のポリエチレングリコール)等を含有し得る。静脈内注射液用には、該化合物の水溶性の別形を滴注法によって投与でき、これによって本発明の化合物と生理上許容できる賦形剤とを含有する製薬調剤を注入する。生理上許容できる賦形剤には例えば5%デキストロース、0.9%塩水、リンゲル液又は別の適当な賦形剤があり得る。筋肉内製剤例えば該化合物の適当な可溶性塩形の無菌調剤は、製薬賦形剤例えば注射用水(Water-for-Injection)、0.9%塩水又は5%グルコース溶液中に溶解且つ投与できる。適当な不溶性形の化合物は、水性ベース又は製薬上許容し得るオイルベース例えば長鎖脂肪酸のエステル(例えばオレイン酸エチル)に入れた懸濁物として製造且つ投与できる。
【0044】
本発明によると、次式(I)及び(X)〜(XVIII)よりなる群から選んだ化合物又はそれの製薬上許容しうる塩又は溶媒和物の有効量に対してアンギオテンシン−転換酵素を接触させることにより該酵素の活性を低下させる方法が提供される。アンギオテンシン転換酵素は不活性なデカペプチドのアンギオテンシンI(AngI)のカルボキシ末端でのヒスチジン−ロイシンジペプチドの開裂を触媒してAngIIを形成するペプチジルカルボキシペプチダーゼであり、ブラディキナーゼの失活にも基因する。かゝる事情により「低減する」又は「の低減」はAngIのカルボキシ末端からジペプチドの開裂を低減し且つブラディキナーゼの失活を低減することを含むがこれに限定されない。更には、低減の程度は絶対(例えばジペプチドがAngIから開裂されないようなACE活性の完全な阻害)であることは必要でなく、低減の中間の程度はACE活性の量の約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%及び約99%の低減を含めて本発明によって想定されるがこれに限定されない。
【0045】
ACE活性の低減を測定する種々の方法が当業者に知られている。例えば生体外でACE活性を測定する1つの代表的な様式として、ヒッププリル−L−ヒスチジル−L−ロイシン基質を用いる螢光分析法を用い得る。この検定では、ACE活性の低減は、ACE酵素及び所望量の特定のACE阻害剤(例えば式(I)の化合物)と共に基質を同時インキュベートし、次いで酵素で触媒した生成物、L−ヒスチジル−L−ロイシンの螢光付加物の量を螢光分析的に測定することにより測定される。ACE活性の低減を測定する別の例として、生体内のACE活性は、放射線標識した基質を利用し続いて基質の加水分解を検出することにより評価し得る。例えばこゝに組入れたOrfanos等の生体内で肺性微小血管内皮のアンギオテンシン転換酵素の検定(Assays of Pulmonary Microvascular Endothelial Angiotensin-Converting Enzyme In vivo):Comparison of Three Probes, Tox. Appl. Pharm. 1994;124(1);99-111参照。ACE活性の低減を測定する尚別の例として、ACE活性は、当業者によって認められる通り、市販されて入手し得るキットを用いて被験体から得られた生物学的試料(例えば組織の試料、尿の試料、唾液試料、血液試料、血清試料、血漿試料又はこれのサブフラクション)で測定し得る。
【0046】
当業者によって認められる通り、ACE酵素を次の式(I)及び(X)〜(XVIII)よりなる群から選んだ化合物を接触させるとACE活性を低減させる具体例では、ACE活性を低減するのに用いた化合物の最適量は所望の低減度に応じて変化し得る。或る具体例では、ACE活性は、ACEを約1〜約200nMの範囲の濃度例えば100nMの濃度の化合物と接触させることにより低減される。別の具体例では、1日当り約2.5〜約400mgの投薬量の化合物を被験体に投与することによりACEを有効量の化合物と接触させることによってACE活性は低減される。勿論、特定の用途に用いるべき本発明の化合物の量の測定及び調節並びにかゝる調節をいつ、如何に行うかについては定常の実験のみを用いて確認し得る。
【0047】
本発明によると、前記化合物を用いてRAAS関連疾病を治療する方法が提供される。1つの好ましい具体例では、次の式(I)及び(X)〜(XVIII)よりなる群から選んだ化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物の有効量を被験体に投与してこれによって被験体の疾病を治療することからなる、RAAS−関連疾病の治療方法が提供される。
【0048】
本明細書で用いた通り、用語「治療」又は「治療する」は予防処置及び治療処置を含めてRAAS関連疾病の何れかの処置に関するがこれに限定されない。かゝる訳で、用語「治療」又は「治療する」は、RAAS関連疾病又はRAAS関連疾病の発現を予防し;RAAS関連疾病の進行を阻害し;RAAS関連疾病の更なる発現を抑制し又は予防し;RAAS関連疾病の重症度を低減し;RAAS関連疾病に伴なう症候を軽減又は救済し;及びRAAS関連疾病又はRAAS関連疾病に伴なう1つ又はそれ以上の症候の退行を生起することを包含するが、これに限定されない。
【0049】
用語「レニン−アンギオテンシンアルドステロン系−関連疾病」即ち「RAAS関連疾病」は、レニン−アンギオテンシンアルドステロン系の作用によって少くとも一部は生起されるか又は悪化させる疾病を記載するのに本明細書では用いられる。本明細書で述べた通り、AngIIはRAASの作用の中心的なメジエーターであり、血圧上昇及び高血圧を生起し得る血管収縮;心室肥大及びうっ血性心不全を生起し得る心臓の心室リモデリング;血管における増大したフリーラジカル発生;続いて増大した血液容量及び血圧の上昇を生起するアルドステロンを放出する副腎皮質の刺激;水の滞留を増大するのに腎臓に作用するバソプレシン(抗利尿ホルモンADHとしても知られる)を放出する脳下垂体後葉の刺激;罹患した被験体に炎症を生起し得る増大した炎症及び種々の炎症性遺伝子の発現;内皮の機能障害;及び血管プラークの発現を含めて、被験体に種々の作用を仲介する。AngIIの作用に加えて、RAASの賦活化は、例えば反応性酸素種の発現;血管壁への単球の賦活化及び付着;アテローム発生の「泡沫細胞」を生じる変性した低密度リポタンパク質の単球中への増大した摂取;及び酸化窒素の低減した内皮合成に関係している。RAAS及び特にAngIIのこれらの広範囲の作用が与えられるならば、RAASはかくして高血圧症、真性糖尿病、真性糖尿病に関連する標的器官の損傷、アテローム性動脈硬化症、アンギナ、発作及びレイナウド病を含めて但しこれに限定されずに種々の疾病に関係している。参考のためこゝに組入れた、Ferrario CMの心臓血管疾病のアンギオテンシンIIの役割(Role of Angiotensin II in Cardiovascular Disease):1世紀以上の研究の治療関連、J レニンアンギオテンシン アルドステロン系、2006;7;3〜14参照。かゝる事情で或る具体例では、RAAS関連疾患は高血圧症、真性糖尿病、真性糖尿病に関連する標的器官の傷害、アテローム性動脈硬化症、冠動脈の心臓疾病、アンギナ、発作、腎疾病及びレイナウド病から選ばれる。
【0050】
本明細書に記載した如き治療化合物を投与するためには、ネズミの動物モデルに投与した投薬量に基いてヒトの投薬量を補外する慣用の方法は、マウスの投薬量をヒトの投薬量に転換するための換算係数を用いて行い得る;1Kg当りヒトの投薬量=1Kg当りのマウスの投薬量×12(Freireich等(1966)のガン化学療法の報告(Cancer Chemother Rep.)50:219〜244)。薬剤の投薬量は体表面積の平方m当りのmg数で与え得る。何故ならばこの方法は体重よりもむしろ或る代謝及び排出機能に良好な相関関係を達成するからである。更に、体表面積はFreireich等(Freireichら(1966)のガン化学療法の報告、50:219〜244)によって記載される通り成人及び子供において並びに種々の動物種において共通の分母として用い得る。簡潔に言えば、所与の種において当量のmg/m2投薬量としてmg/kg投薬量を表すには、適当なkm因子だけ該投薬量を掛ける。成人のヒトにおいては、100mg/kgは100mg/kg×37kg/m2=3700mg/m2に当量である。
【0051】
本発明の方法により化合物を投与する方法には、全身系の投与、非経口投与(血管内、筋肉内、動脈内投与を含めて)、経口供給、口腔供給、皮下投与、腹腔内投与、吸入、気管内取付け、外科的インプラント、経皮供給、局所注射及び高速(hyper-velocity)注射衝撃があるがこれには限定されない。応用可能な場合には、連続注人は標的部位での薬剤集積を促進し得る(例えば米国特許第6,180,082号参照)。
【0052】
投与経路に拘らず、本発明の化合物は所望の応答を達成するのに有効な量で典型的には投与される。かゝる事情で、用語「有効量」は測定可能な生物学的応答(例えばACE活性の低減)を生じるのに十分な治療組成物(例えば式(I)の化合物と製薬上のビヒクル、担体又は賦形剤)の量を記載するのにこゝでは用いる。本発明の治療組成物中の活性成分の実際の投薬値は、特定の被験体(subject)及び/又は用途に所望の治療応答を達成するのに有効である量の活性化合物を投与するように変化し得る。勿論、何れか特定の場合の有効量は、治療組成物の活性、処方、投与方式、他の薬剤又は処置剤との組合せ、治療すべき病気の重篤度及び治療される被験体の以前の病歴を含めて種々の因子に応じて決まるものである。好ましくは最低の投薬量を投与し、最低投薬量に対して投薬量制限毒性の不在下に投薬量をエスカレートさせる。治療上有効な投薬量の決定及び調節並びにかゝる調節をいつしかも如何に行うかの評価は当業者に知られている。
【0053】
調剤及び投薬量に関する追加の手引書については以下を参照されたい、米国特許第5,326,902号及び第5,234,933号;PCT国際公開No.WO93/25521;Berkow等(1997)のThe Merck Manual of Medical Information, Home et, Merck Rsearch Laboratories,ホワイトハウスステーション、ニュージャージー州;Goodman等(2006)のGoodman & Gilmans の治療薬の薬理基準(the Pharmacological Basis of Therapeutics)11版 McGraw-Hill Health Professions Division, New York;Ebadi, (1998) CRC Desk Reference of Clinical Pharmacology, CRC Press, Boca Raton, Florida;Katzung, (2007) Basic & Clinical Pharmacology, 10th ed. Lange Medical Books/McGraw-Hill Medical Pub. Division, New York;Remington, et al.,(1990) Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed. Mack Pub. Co., Easton, Pennysylvania;Speight, et al.;(1997) Avery's Drug Treatment:A Guide to the Properties, Choice, Therapeutic Use and Economic Value of Drugs In Disease Management, 4th ed. Adis International, Auckland/Philadelphia;及びDuch, et al.,(1998) Toxicol. Lett. 100-101:255-263,これの各々は参考のためこゝに組入れてある。
【0054】
RAAS−関連の疾病を治療するこゝに記載した方法の或る具体例では、本発明の化合物を被験体に投与すると被験体のACE活性を低減させる。認められる如く、ACEはAngIをAngIIに転換するのに統合的な役割を演じ、かくして血圧の調節に役割を演じる。本発明の化合物を被験者に投与することにより、本発明の化合物はACE活性を低減させることができかくしてRAAS−関連疾病に罹患した被験者の血圧を低下させ得ることが見出された。かゝる事情で、治療方法の或る具体例では、本発明の化合物を投与すると被験者の血圧を低下させる。
【0055】
治療方法の別の具体例では、本発明の化合物を被験者に投与すると被験者における炎症性遺伝子の量及び発現を低減させる。本明細書で認められる通り、最近の証拠が示す処によれば、被験者の増大したAngII濃度によって一部は仲介される高血圧症は被験者における酸化性ストレス及び炎症の量に密接に関連している。だけれども、RAAS関連疾病に罹患した被験者に本発明の化合物を投与することにより、被験者における炎症性遺伝子発現の量は、特にRAAS−関連疾病により最も罹患した被験者の器官及び組織で有利な程に低減させ得ることが見出された。或る具体例では、式(I)の化合物を被験者に投与するとICAM1、IL−6、IL−1β、MCP1、TGF−β1、VCAM1、TNF−α又はこれらの組合せから選んだ炎症性遺伝子の量を低減させる。若干の具体例では、炎症性遺伝子の発現量は被験者の大動脈、心臓又は腎臓組織で低減される。別の具体例では、炎症性遺伝子1L−6及びICAM1の発現量は被験者の脳組織で低減される。
【0056】
当業者に公知の種々の方法を用いて被験者における炎症性遺伝子の発現量の低減を測定できる。例えば、或る具体例では、被験者における炎症性遺伝子の発現量は、当業者に知られる何れかのRNA同定検定を用いて、被験者から得られた生物学的試料(例えば組織試料、尿試料、唾液試料、血液試料、血清試料、血漿試料又はこれのサブフラクション)中の炎症性遺伝子(例えばICAM1、IL−6、IL−1β、MCP1、TGF−β1、VCAM1、TNF−α)のmRNAをプローブすることにより測定し得る。簡潔に言えば、RNAは試料から抽出でき、増殖でき、cDNAに転換でき、標識化できしかも既知配列のプローブ例えば基質例えばアレー(array)又はマイクロアレー上に固定した既知のRNAハイブリッド形成プローブとハイブリダイズさせることができあるいはリアル−タイム(real time)PCR(例えば定量的なリアルタイムPCR例えば米国のBio Rad Laboratories, Herculesから入手し得る)によって定量化し得る。該試料の核酸分子が結合しているプローブは既知である故に、試料中の分子を固定し得る。これに関して、炎症性遺伝子によってエンコードされたmRNAの1つ又はそれ以上に対するDNAプローブを基質上に固定できしかも本発明の方法を実施するのに用いるのに提供される。
【0057】
更に、試料中の炎症性遺伝子の発現量を測定するのに関して、質量分析法及び/又は免疫検定装置及び方法を用いて試料中の炎症性遺伝子のペプチド生成物を測定できるが、他の方法も同様に当業者に周知である。例えば以下の米国特許を参照;U.S. Pat. Nos. 6,143,576;6,113,855;6,019,944;5,985,579;5,947,124;5,939,272;5,922,615;5,885,527;5,851,776;5,824,799;5,679,526;5,525,524;及び5,480,792,これの各々はその全部が参照のためこゝに組入れてある。免疫検定装置及び方法は、種々のサンドイッチ競合的又は非競合的検定フォーマットで標識分子を利用して、有用な被験体の存在又は量に関する信号を発生させ得る。追加的に、或る方法及び装置、例えばバイオセンサー及び光学免疫検定を用いて標識分子の必要なしに被検体の存在又は量を測定できる。例えば米国特許Nos.5,631,171及び5,955,377,これの各々はその全体が参考のためこゝに組入れてある。
【0058】
何れか適当な免疫検定を利用でき例えば酵素結合免疫検定(ELISA)、放射線免疫検定(RIAs)、競合的結合検定等を利用できる。ペプチドへの抗体の特異的な免疫学的結合は直接又は間接に検出できる。直接標識には、抗体に結合した螢光性又は発光性のタグ、金属、染料、ラジオヌクレオチド等がある。間接標識には、技術的に周知の種々の酵素例えばアルカリ ホスファターゼ、ワサビのペルオキシダーゼ等がある。
【0059】
炎症性遺伝子のペプチド生成物に特異的な固定抗体又はそのフラグメントの使用も本発明で想定される。抗体は種々の固体担体上に固定でき、例えば磁気粒子又はクロマトグラフィーマトリックス粒子検定板(例えばマイクロ滴定ウェル)の表面、固体基質材料片(例えばプラスチック、ナイロン、紙)等に固定できる。検定ストリップは、アレー中の抗体又は複数の抗体を固体担体上で被覆することにより調製できる。このストリップは次いで生物学的な供試試料中に浸漬できしかも次いで洗浄及び例えば着色スポットの如き測定し得るシグナルを発生する検出工程によって迅速に加工し得る。
【0060】
質量分析法(MS)の分析を単独で又は他の方法(例えば免疫検定)と組合せて用いて、被験者における炎症性遺伝子の発現の存在及び/又は量を測定できる。本発明により用い得る代表的なMS分析には、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS);マトリックスで補助したレーザー脱着/イオン化飛行時間MS分析(MALDI−TOF−MS)例えば直接スポットのMALDI−TOF又は液体クロマトグラフィーMALDI−TOF質量分析法による分析;エレクトロスプレー イオン化MS(ESI−MS)例えば液体クロマトグラフィー(LC)ESI−MS;及び表面促進したレーザー脱着/イオン化飛行時間質量分析法による分析(SELDI−TOF−MS)があるが、これに限定されない。これらの型式のMS分析の各々は市販されて入手し得る分析計例えば3つの四重極質量分析計を用いて行い得る。生物学的試料中のペプチドの存在及び量を検出するのにMS分析を用いる方法は技術的に知られている。例えば更なる手引のため米国特許第6,925,389号、第6,989,100号及び6,890,763号を参照、これらの各々は参考のためこゝに組入れてある。
【0061】
本明細書に記載した方法の或る具体例は被験者における炎症性遺伝子の発現の存在又は不在の定性的な評価を要求するのみであるけれども、該方法の別の具体例は被験者における炎症性遺伝子の各々の発現の量の定量的な評価を要求する。かゝる定量的な評価は当業者に理解される通り、例えば前記方法の1つを用いて行い得る。
【0062】
被験者における炎症性遺伝子の発現量の低減を測定することは統計的な分析であると当業者は理解するであろう。例えば被験者における炎症性遺伝子の発現量の低減は発現の対照値と対比することができ、しかも対照値よりも低いか又はこれと同等の炎症性遺伝子の発現は、統計的意義のレベルによって証明される如く、発現量の低減を示し得る。統計的意義は2つ又はそれ以上の母集団(populations)を比較し、且つ信頼区間及び/又はp値を測定することにより決定されることが多い。例えば参考のためこゝにその全体を組入れたDowdy 及びWeerdenの研究用統計学(Statistics for Research), Joh Wiley & Sons(1983)参照。本要旨の好ましい信頼区間は90%,95%,97.5%,98%,99%,99.5%,99.9%及び99.99%であるが、好ましいp値は0.1,0.05,0.025,0.02,0.01,0.005,0.001及び0.0001である。
【0063】
本発明の特定の具体例では、アンギオテンシン−転換酵素を前記の如き式を有する化合物の有効量と接触させることにより高血圧を低減する方法が提供される。該方法を必要とされる被験者で実施する時には、被験者には高血圧を低減するのに有効な量でかゝる化合物の量が投与されるのが好ましい。前述した如く、何れか特定の被験者について有効量は被験者の環境に応じて変化し、当業者によって容易に決定されるものである。
【0064】
本発明の別の特定の具体例では、発作を治療する方法が提供されこれによって治療を必要とする被験者には発作を治療するのに有効である量の本発明の化合物が投与される。再び、何れか特定の被験者に対する有効量は被験者の環境に基いて変化し、当業者によって容易に決定されるものである。
【0065】
尚更に前述した如く、本発明の化合物はACE阻害剤の有益な特性とリポ酸の有益な特性とを包含するように意図される。かゝる事情で、こゝに記載した化合物は強力な抗酸化剤、抗炎症化合物として且つミトコンドリア保護剤として有用である。従って、こゝに記載した化合物はACE活性の低減又はリポ酸の有益な特性が示される、多数のRAAS関連疾病の治療に有用であり得ると更に想定される。
【0066】
例えば、本発明の化合物は糖尿病の治療に特に有用であると想定される。これに関して、本発明の化合物は酸化性ストレスを低減し、インスリン信号化を改良し、反応性酵素及び窒素種の過剰生産から生じる糖尿病併発症を治療し、高血糖、高インスリン血症、異脂質血症及び酸化性ストレスの血漿マーカーの年令依存性発現を防止するのに有用であると想定される。更には、本発明の化合物は、糖尿病で生起する代謝機能不全のかなりの部分を説明すると仮定されているミトコンドリアの減退を防止するのに有用であるとも想定される。
【0067】
別の例として、本発明の化合物は高血圧症、心筋梗塞、発作、アテローム性動脈硬化症及び糖尿病の如き種々のRAAS関連疾病を伴なう標的器官の損傷を治療するのに有用であると想定される。これに関して、本発明の化合物は例えばアセチルコリン−誘発の内皮依存性の血管緊張低下を改良し、付着分子及びケモカインを低減させ、血清のトリグリセリドを低下させ及び炎症性遺伝子発現を低下させることにより、内皮機能障害を改良し得るものであると想定される。
【0068】
本発明の尚別の応用ではこゝに記載の化合物はそれらがNO基を取入れる具体例を有すると想定されしかも本発明の化合物は血管拡張用に内皮に利用できるNO分子を形成することにより且つこれによって被験者に生起し得る冠動脈の血管けいれんを取消すか抑制することによりアンギナを治療するのに有用であると想定される。
【0069】
本明細書で用いた通り、用語「被験体(subject)」はヒトと動物との被験体両方を包含する。即ち、動物の治療用途は本発明に記載した要旨により提供される。かゝる事情でこゝに記載した要旨は、ヒトの如き哺乳動物の治療に並びにシベリア虎の如き絶滅危惧されることにより重要な哺乳動物;ヒトにより消費されるため農場で飼育される動物の如き経済的重要性の哺乳動物;及び/又はペットとして又は動物園で保持される動物の如きヒトに社会的重要性の動物の治療に提供する。かゝる動物の例には、肉食動物例えば、猫及び犬;ブタ(pigs) 、ブタ(hogs) 及びいのししを含めてのブタ(swine);反する動物及び/又は有蹄動物例えば畜牛、牛、羊、キリン、シカ、ヤギ、野牛及びラクダ;及び馬があるが、これには限定されない。また絶滅の恐れのある及び/又は動物園で保持される種類の鳥を含めて鳥類の治療並びに家きん(fowl)特に飼育家きん即ち家きん(poultry)例えば七面鳥、ひな、あひる、がちょう、ほろほろ鳥等の治療が提供される。何故ならこれらはヒトに経済的重要性を有するからである。即ち、飼育ブタ(swine)、反芻動物、有蹄動物、馬(競争馬も含む)、家きん等を含めてこれに限定されずに家畜の治療も提供される。
【0070】
こゝに記載の如き要旨の具体例は変更を受けるものであり、本発明の範囲内の別の変更した具体例は、本明細書に与えた情報の研究後には当業者には明白であろう。本明細書に与えた情報、特に記載した典型的具体例の詳細は理解を明瞭とするために主として与えられしかも不必要な限定はないことがそこから理解されるものである。
【0071】
本願で用いた用語は当業者によって十分理解されると思われるけれども、定義は本明細書記載の要旨の説明を促進するのに記載される。更に、但し書きがなければ、こゝで用いた全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術の当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。こゝに記載したのと同様な又は同等な何れかの方法、装置及び材料を、こゝに開示した要旨の実施又は試験に用い得るけれども、代表的な方法、装置及び材料が今回記載されている。
【0072】
長年の特許法条約に従って、クレームを含めて本願で用いた時用語「1つの」及び「該」(“a”, “an” and“the ”)は「1つ又はそれ以上」を記載する。即ち、例えば「1つのアンギオテンシン−転換酵素」なる記載は複数のかゝる酵素等を包含する。
【0073】
但し書きがなければ、明細書及びクレームで用いた、成分の量を表す全ての数字、反応条件の如き特性等は全ての場合に用語「約」によって改質されると理解されるものである。従って、反対に示してなければ、本明細書及びクレームに記載の数値パラメーターは、本発明によって得られる求めた所望の特性に応じて変化し得る近似数である。
【0074】
本明細書で用いた通り、用語「約」は値又は物質の量、重量、時間、容量、濃度又は%を記載する時には、明記した量から若干の具体例では±20%の変動、若干の具体例では±10%の変動、若干の具体例では±5%の変動、若干の具体例では±1%の変動、若干の具体例では± 0.5%の変動及び若干の具体例では± 0.1%の変動を包含すると意味する。何故ならかゝる変動は開示した方法を実施するのに適当であるからである。
【実施例】
【0075】
次の実施例は本発明の好ましい具体例の観点を提供する。次の実施例に開示される技術は発明の実施に十分機能すると本発明者によって見出された技術を表すと当業者によって認められるべきであり、かくして発明の実施に好ましい形態を構成すると考えられ得る。然しながら、本記載から見て当業者は、開示される特定の具体例で多くの変更を成し得ると認めるべきであり、しかもなお発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様な結果を得ると認めるべきである。
【実施例1】
【0076】
代表的化合物の合成

本発明の化合物を合成するのに、3つの基本的な工程を伴なう一般的な合成法を利用する。第1の工程においては、カップリング反応を行なってピロリジン含窒環をリポ酸のカルボン酸基と結合して不活性なアミド結合を形成する。本法のこの工程で用い得る適当なカップリング試薬にはEDCI(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩;DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);及びCDMT(2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン)がある。また、この第1工程では、用いられる塩基には、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン;及びピリジンがある。第1工程で用い得る適当な塩素化有機溶剤にはジクロロメタン(メチレンクロライド)、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン及びテトラクロロエタンがある。
【0077】
要するに、反応の第1工程は窒素雰囲気下に行なう。リポ酸様の分子(1mM)、α−カルボキシ−ピロリジン又はピペリジン型分子(1mM)及び1当量の塩基を先ず100ml
の丸底フラスコ中で組合せる。フラスコの内容物を塩素化有機溶剤(40ml)に溶解し、室温で10分間十分に攪拌する。カップリング試薬(1.5mM)を次いで3時間の期間に亘って少量ずつ添加し、その間フラスコの内容物も同時に攪拌する。反応の完了は薄層クロマトグラフィーを用いて監視する。一夜攪拌した後に、溶剤を次いで回転蒸発器を用いて減圧下に蒸発させる。得られた粗製物は、化合物の分離が許容しうる限度内にあるように、適当なクロマトグラフィー溶剤での螢光性分取薄層(FPTL)クロマトグラフィーを用いて次いで精製する。次いで所要の化合物のバンドを掻取り、該化合物を酢酸エチルでの連続溶離により該バンドから抽出する。続いて、溶剤を蒸発乾固させ、最後のコン跡量の溶剤は真空ポンプ下に除去する。次いで該化合物はプロトン核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて特徴付けられる。
【0078】
次いで所望ならば反応手法の第2工程はアルコール性水酸化カリウム(1mM)水溶液又はアルコール性水酸化ナトリウム(1mM)水溶液を用いて塩基で触媒される加水分解を包含できる。要するに、反応手法の第2工程では、還流条件下に1Mのクルコール性アルカリ試薬の水溶液の添加により、カップル化した化合物を脱エステル化する。カップル化した化合物(0.5mM)を還流コンデンサー付きの50mlの丸底フラスコに配置する。次いで25mlの1mMアルコール性アルカリ試薬を添加し、24時間還流設定する。反応の進行は薄層クロマトグラフィーにより監視する。一夜還流した後に、エタノールを次いで減圧下に反応混合物から除去し、エタノールの除去に続いて水を添加する。次いで水性相を塩素化有機溶剤(2回)で抽出し、三角フラスコに細心に移送し、破砕した氷上で十分に冷却し、該溶液のpHが酸性となるまで1N塩酸で酸性化する。次いで、水性相を塩素化溶剤で抽出し、塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過する。溶剤を減圧下に蒸発させ、得られる化合物はプロトンNMR分光法を用いて特徴付けられ、その際ピークは該化合物の化学シフト値に基いて指定される。
【0079】
所望ならば、反応手法の第3の工程はホウ水素化ナトリウム(例えば温和な条件用)の如き還元剤及びエタノール又はメタノールの如きアルコール媒質を用い得る。反応手法のこの第3工程では、分子のジスルフィド部分をジチオール部分に転化する。要するに、ジスルフィド化合物を25mlのエタノールに溶解し、5分間十分に攪拌する。次いでホウ水素化ナトリウム(2当量)を少量ずつ2時間の期間に亘って該溶液に添加する。次に粗製物を誘導するためにエタノールを減圧下に蒸発させ、続いて飽和塩化アンモニウムで処理する。水性相中の有機化合物を次いで塩素化有機溶剤で抽出し、減圧下に蒸発乾固する。得られるメルカプト誘導体は次いでカラムクロマトグラフィーで精製して精製した形の化合物を得る。
【実施例2】
【0080】
1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸の合成
1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸の合成は、光学的に活性なL−プロリンメチルエステル及びα−リポ酸から開始して3工程法により実施する。L−プロリルメチルエステルリポ酸は図1に示した通り、適当なカップリング試薬を用いてL−プロリンメチルエステルとリポ酸とをカップリングすることにより合成した。要するに、反応の第1工程は窒素雰囲気下で行なう。リポ酸 0.206g(1mM)、L−プロリンメチルエステル塩酸塩 0.166g(1mM)、1当量のジメチルアミノピリイン(DMAP) 0.122g(1mM)及びトリエチルアミン 0.101g(0.140ml)を100mlの丸底フラスコ中で組合せる。フラスコの内容物をメチレンクロライド(40ml)に溶解させ、室温で10分間十分に攪拌する。カップリング試薬、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI) 0.287g(1.5mM)を3時間の期間に亘って少量ずつ添加しその間フラスコの内容物も同時に攪拌する。反応の終了は、図2に示した通り、原料の消失と新規生成物の形成とを対比することにより、薄層クロマトグラフィーを用いて監視した。
【0081】
一夜攪拌した後に、メチレンクロライドは回転蒸発器を用いて減圧下に蒸発させる。得られる粗製物は90:5:10の酢酸エチル:ヘキサン:メタノールでの螢光性分取薄層(FPTL)クロマトグラフィーを用いて精製した。所要の化合物のバンドを掻取り、該化合物は酢酸エチル(350ml)で連続的に溶離することにより該バンドから抽出した。溶剤は蒸発乾固させ、最後のコン跡量の溶剤を真空ポンプ下に除去する。黄色半固体が62%の収率で得られた。該化合物はプロトン核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて特徴付けられ、ピークは図3に示した通り該化合物の化学シフト値に基いて指定された。該化合物の質量は318.1(M+1)であり、反応のこの時点で該化合物はL−プロリルメチルエステルリポ酸(式(III))であると決定された。
【0082】
反応手法の第2工程では、L−プロリルリポ酸は、図4に示した通り還流条件下に1Mのエタノール性水酸化カリウム中でL−プロリルメチルエステルリポ酸の脱エステル化により合成された。反応手法の第1の部分と同様に、この反応工程は窒素雰囲気下に行なう。要するに、L−プロリルメチルエステルリポ酸 0.158g(0.5mM)を還流コンデンサー付きの50mlの丸底フラスコに入れる。25mlの1mMエタノール性水酸化カリウムを添加し、24時間還流設定する。反応の進行は図5に示した如く原料の消失と新規生成物の形成とを比較することにより薄層クロマトグラフィーによって監視した。
【0083】
一夜還流した後に、エタノールを次いで減圧下に反応混合物から除去し、エタノールの除去に続いて30mlの水を添加する。次いで水性相をジクロロメタン(2×25ml)で抽出し、100mlの三角フラスコに細心に移送し、破砕した氷上で十分に冷却し、溶液のpHが酸性となるまで1N塩酸で酸性化した。水性相をジクロロメタン(2×50ml)で抽出し、塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過した。溶剤を減圧下に除去し、黄色半固体を75%の収率で得た。得られる化合物はプロトンNMR分光法を用いて特徴付けられ、ピークは図6に示した通り化合物の化学シフト値に基いて指定された。該化合物の質量は326.1(M+23)、607.3(二量体)であり、その際M+23はナトリウム付加物(Na MW=23)を表し、この反応の時点で該化合物はL−プロリルリポ酸(式(III);図7)であると測定された。
【0084】
反応手法の第3の工程では、図8に示した通りL−プロリルリポ酸のジスルフィド部分をジチオール部分に転化して1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸(式(IV))を製造する、L−プロリルリポ酸のジチオール誘導体へのこの転化を行うのに、L−プロリルリポ酸0.15gを25mlのエタノールに溶解させ、5分間十分に攪拌した。ホウ水素化ナトリウム(37mg)を少量ずつ2時間の期間に亘って該溶液に添加した。次に粗製物を誘導するために、エタノールを減圧下に蒸発させ続いて飽和塩化アンモニウム(15ml)で処理した。水性相中の有機化合物をジクロロメタン(2×50ml)で抽出し、減圧下に蒸発乾固した。得られるジメルカプト誘導体はカラムクロマトグラフィー上で精製して精製した形の化合物を得た。
【0085】
ジチオール化合物の存在を確認するのに、ジチオール化合物は酸化窒素ガスとそれを反応させることにより試験された。チオール化合物の特有な特徴は酸化窒素ガスとの反応によりニトロソ誘導体の形成を伴なうからである。この分析を行うのに、中間体をエタノール(25ml)に溶解し、ドライアイス及びアセトンを用いて−20℃に冷却した。同時に、亜硝酸ナトリウムを濃塩酸と反応させることにより酸化窒素ガスを生成する。次いで酸化窒素ガスをジチオール溶液に2時間通送した。該溶液は濃いピンク色となりこれはS−ニトロソ化合物の特徴である。この濃いピンク色の溶液をUV−可視スペクトル分析すると 330及び540nm で2つの特徴的な吸収ピークを更に示し、ジチオール化合物の存在を確認するものである。
【実施例3】
【0086】
1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピペリジン−2−カルボン酸の合成
1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピペリジン−2−カルボン酸の合成は、(DL)−ピペコリニルメチルエステルと(DL)−α−リポ酸とから(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸の合成を開始した3工程法によって行なう。要するに、(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸の合成は、図9に示した通り適当なカップリング試薬を用いて(DL)ピペコリン酸(pipecolinic acid)メチルエステルと(DL)−α−リポ酸とを組合せることにより完了した。反応の第1工程は窒素雰囲気下で行なう。(DL)−α−リポ酸 0.206g(1mM);(DL)−ピペコリン酸メチルエステル塩酸塩 0.166g(1mM);ジメチルアミノピリジン 0.122g(1mM);及びトリエチルアミン 0.101g(1mM,0.140ml)をメチレンクロライド(35ml)に溶解し、100mlの丸底フラスコ中で組合せた。フラスコの内容物を室温で5分間充分に攪拌した。カップリング試薬EDCI,0.287g(1.5mM)を1.5時間の期間に亘って少量ずつ添加し、その間フラスコの内容物も同時に攪拌する。反応の完了は、図10に示される通り原料の消失と新規生成物の形成とを対比することにより薄層クロマトグラフィーを用いて監視する。
【0087】
一夜攪拌した後に、メチレンクロライドは回転蒸発器を用いて減圧下に蒸発させた。得られた粗製物は90:5:10の酢酸エチル:ヘキサン:メタノールの比率で螢光分取薄層クロマトグラフィーを用いて精製した。所望の化合物のバンドを掻取り、該化合物を酢酸エチル(350ml)で連続的に溶離することによりバンドから抽出した。溶剤は真空下に蒸発乾固した。淡黄色の高粘性の液体が59%の収率で得られ、(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸(式(V))であると決定された。
【0088】
反応手法の第2工程では、(DL)−ピペコリニルリポ酸は、図11に示される通り還流条件下に1Mのエタノール性水酸化カリウム中で(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸の脱エステル化により合成した。要するに、反応は窒素雰囲気下で行われ、(DL)ピペコリニルメチルエステルリポ酸 0.158g(0.5mM)を還流コンデンサー付きの50mlの丸底フラスコに入れた。25mlの0.1mMエタノール性水酸化カリウムを添加し、該混合物を24時間還流させた。反応の進行は薄層クロマトグラフィーにより監視した。一夜還流した後に、エタノールを減圧下に除去し続いて30mlの水を添加し、水性相をジクロロメタン(2×25ml)で抽出した。水性相を100mlの三角フラスコに細心に移送し、破砕した氷で充分に冷却し、該溶液のpHが酸性となるまで1N塩酸で酸性化した。次いで水性相をジクロロメタン(2×50ml)で抽出し、塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過した。溶剤を減圧下に蒸発させて黄色の半固体(75%の収率)を得、これは(DL)−ピペコリニルリポ酸(式(VI))であると決定された。
【0089】
反応手法の第3の工程では、図12に示される通り1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピペリジン−2−カルボン酸(式(VII))をピペコリニルリポ酸から合成した。反応手法のこの工程を行うのに、L−ピペコリニルリポ酸 0.165gを先ず25mlのエタノールに溶解し、5分間充分に攪拌した。次いでホウ水素化ナトリウム(37mg)を2時間の期間に亘って該溶液に少量ずつ添加した。次に粗製物を誘導するために、エタノールを減圧下に蒸発させ、続いて飽和塩化アンモニウム(15ml)で処理した。水性相中の有機化合物をジクロロメタン(2×50ml)で抽出し、減圧下に蒸発乾固した。得られるジメルカプト誘導体をカラムクロマトグラフィーで精製して、精製した形の化合物を得た。
【0090】
再び、チオール化合物の特有な特徴は酸化窒素ガスとの反応によりニトロソ誘導体の形成を包含する故に、得られるジチオール化合物を試験して酸化窒素ガスと該化合物との反応によりその存在を確認する。再び、要するに、中間体をエタノール(25ml)に溶解し、ドライアイス及びアセトンを用いて−20℃に冷却した。同時に、酸化窒素ガスは亜硝酸ナトリウムと濃塩酸との反応により生成した。次いで酸化窒素ガスをジチオール溶液に2時間通送した。該溶液は濃いピンク色となり、これはS−ニトロソ化合物の特徴である。この濃いピンク色の溶液をUV−可視スペクトル分析によって330及び540nmで2つの特有な吸収ピークを示し、ジチオール化合物の存在を確認するものである。
【実施例4】
【0091】
アンギオテンシン転換酵素活性の生体内阻害
こゝに開示した要旨の化合物がアンギオテンシン転換酵素(ACE)の酵素活性を低減し得るかどうかを測定するのに、標準のプロトコルによりACE検定を行なう(例えばSchwager等のアンギオテンシン−転換酵素に対する高い産出の螢光定量検定(A high-throughput fluorimetric assay for angiotensin 1-converting enzyme)、ネーチュア プロトコル,2006;1(4);1961−1964.参照、これは参考のためこゝに組入れてある)。ACE検定は、基質のヒップリル−L−ヒスチジル−L−ロイシン(HHL)を用い、しかも酵素で触媒した生成物L−ヒスチジル−L−ロイシンの螢光性付加物を螢光定量的に定量する螢光定量法を包含する。更に、該検定は96−ウェルのプレートフォーマットに適合して時間と試薬との両方に関して匹敵し得るデータとより大きな効率を生じる。検定からの結果は、3重に測定した各々の濃度を有して96−ウェルプレートリーダーで分析した。
【0092】
要するに、全部で250μlの検定容量において、10μlのACE酵素(米国シグマケミカル社製)と10μlの何れかの1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸又はピロリルリポ酸(式(III))とを添加した。両方の化合物を37℃で30分間酵素と共にインキュベートした。次いで緩衝剤中のACE基質HHL6μlを各々のウェルに添加し、続いて45℃で30分間インキュベートした。170μlの0.3M水酸化ナトリウム溶液を前記溶液に添加し、続いてメタノール中のファルアルデヒド(phalaldehyde)溶液を添加した。該混合物を5分間振盪させた。この工程に続いて各々のウェルに32μlの2N塩酸を添加し360nmの励起波長及480nmの放射波長で螢光を次後に測定した。3つの対照を用いて読取値を比較し、その際該対照は酵素なしのウェルと、該化合物なしのウェルと、HHL酵素基質なしのウェルとを包含する。
【0093】
結果を分析すると、1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸とプロリルリポ酸(式(III))との両方共酵素で触媒される生成物、L−ヒスチジル−L−ロイシンの形成を有効に低減し、かくしてACE活性を有効に低減することが示されることが観察され、これは本発明の化合物がACE活性を低減する方法に有用であることを示している。更には、該化合物のIC50値は、図13(1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸)及び図14(プロリルリポ酸式(III))で示される通り、実験で用いた化合物の種々の濃度に対して螢光計数を図に記入することにより算出した。
【0094】
これらの図表に基いて、1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸のIC50値は最初は大体29μMであると見出された。然しながら、1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸化合物のチオール基の絶対量に関連してIC50値を更に検査するために、反応混合物中のチオール基の量をエルマン法(Ellman's method)により測定した(例えばSimpson R)のエルマン試薬を用いて遊離チオール及びジスルフィド結合の評価(Estimation of free thiols and disulfide bonds using Ellman's reagent)、CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY, 2003;及びEllman GLの組織のスルフヒドラール基(Tissue sulfhydral groups)、Arch, Biochem, Biophys,1959;82;70〜77参照、これの各々も参考のためこゝに組入れてある)。要するに、該方法はチオール基の量を測定する薬剤として5,5′−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)即ちDTNBを利用した。何故ならチオールは該化合物と反応して、ジスルフィド結合を開裂して2−ニトロ−5−チオベンゾエート(TNB)を与え、これは次いで中性及びアルカリ性pHで水中でTNB2-ジアニオンにイオン化する。得られるTNB2-イオンは黄色であり、該反応は、1モルのチオールを添加すると1モルのTNBを放出しながら迅速で化学量論的である。次いでTNB2-は、希釈緩衝剤溶液については14,150M-1cm-1の消失係数を用いて且つ高い塩濃度例えば6Mグアニジニウム塩酸塩又は8M尿素については13,700M-1cm-1の係数を用いて412nmでの可視光線の吸光度を測定することにより分光光度計で定量化し得る。これに関して、反応プロトコルはかくして緩衝剤中の多重濃度の1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸を含有する300μlの全検定容量を伴ない、続いて緩衝剤(リン酸ナトリウムpH8.0)中のDTNB試薬を添加する。反応は3回の測定を行なう。吸光度は412nmで測定した。エルマン法によりチオール定量化に基いて、1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2
−カルボン酸化合物は酸化された化合物(例えばジスルフィド、金属粒子及び不溶性塩等)を包含し、チオール定量化後には、1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸に対するIC50値は6.6μMであると再計算された。
【実施例5】
【0095】
血管拡張におけるリポ酸及びポロリルリポ酸の作用
血管拡張におけるリポ酸及びプロリルリポ酸の作用を測定するのに、雄のスプラーグ−ダウレイラット(n−2)からの大動脈を用いた。要するに各々のラットを先ず屠殺し、これの大動脈を取出す。次いで大動脈は44mMのグルコースを含有するリン酸塩−緩衝−塩水(PBS)中で4時間インキュベートした。次いで胸大動脈の8個の5mm環節片を次の組成:NaCl 118.3mM;KCl 4.67mM;CaCl2 1.87mM;MgSO4 1.20mM;K2HPO4 1.03mM;NaHCO3 25.0mM及びグルコース 11.1mMのクレブス(Krebs)緩衝液(pH7.40)を満たしたミオグラフ室中で懸濁した。次の1時間中に、休止張力(resting tension)を増大させてKClへの暴露による収縮を最適化する。付いて血管節片をフェニルエフリン(PE;0.1μM)で予備収縮し、プロリルリポ酸(式(III))又はリポ酸に施用した。L−プロリルリポ酸(1×10-4M)又はリポ酸(1×10-4M)(両方共水性媒質に溶解した)に応答してラットの大動脈環における血管拡張は、グルコース(44mM)との4時間のインキュベーション後に測定した。大動脈環における内皮細胞機能もまた、大動脈環をフェニルエクリンのEC50に対して予備収縮し且つ次いで環を最大のアセチルコリン投薬量(10-5M)にかけることにより測定した。
【0096】
結果を分析すると、リポ酸とプロリルリポ酸(式(III))の両方共用いた投薬量で、予備収縮したラットの大動脈節片を弛緩させることが見出され(図15)、その際プロリルリポ酸はリポ酸と比較して弛緩の増大を生起する。更には、プロピルリポ酸はアセチルコリンの投与に続いての増大した血管拡張によって明示される通り大動脈環における内皮機能を改良することが示された。
【実施例6】
【0097】
高血圧症におけるプロリルリポ酸の作用
高血圧症の動物モデルにおいてプロリルリポ酸(式(III))の作用を測定するのに、自発的に高血圧性の発作傾向のラット(SHRSP)を先ず6週の年令でチャールス リバーから調達した(Charles River Laboratories 米国)。4週間の馴化期間後に、ラットに収縮期の血圧を評価するラジオテレメトリー監視装置と共に腹部大動脈において動脈内カテーテルを移植した。要するに、ラジオテレメトリー装置を移植するのに、操作手法はラットに375mg/kgの2,2,2−トリブロモエタノール(Sigma Chemical Co.社)を麻酔させることを伴なう。次いで切開を腹部で行ない、大動脈を露出する。次いで全て移植可能なマイクロ−ミニチュア電子モニター(PA−C20,Data Sciences International社製)中に包封された組合せの圧力変換器、送信器及びバッテリーに取付けた0.4mmのカテーテルを挿入した。このカプセル形状の装置は1.9ccの容量を有し、マイス(25〜27g及びそれ以上)における慢性の血圧測定に有効であると前もって示された。
【0098】
ラジオテレメトリー装置の移植に続いて、ラットを回復させ各々のラットの大動脈圧を連続的に監視する。ラットが十分に回復したからには、ラットは、水性媒質に溶解した50mg/kgのプロピルリポ酸を1回の投薬で摂取した。次いで血圧を12時間の期間に亘って測定し、それ以前の12時間の期間と比較した。結果を分析するとプロリルリポ酸は高血圧の遺伝子モデルにおいて1回の投薬後に急性の要領で血圧を有意な程に低減したことが見出された(図16〜17)。
【0099】
高血圧症におけるプロリルリポ酸(式(III))の作用を更に検査するのに、プロリルリポ酸の作用をより長期間に亘って自発性高血圧ラットで試験した。要するに、自発高血圧性ラット(SHRSPラット、10週令、n=10/群)は6週間の期間プラセボ(擬薬)又はプロリルリポ酸(50mg/kg)群に無作為化された。ラットをケージに収容し、Harlen-Teklad Laboratory Rodent Diet adlibitun(Harlen Laboratories社)が与えられた。プロリルリポ酸及び塩水のプラセボを毎日腹腔内(IP)投与によりラットに投与した。
【0100】
6週間に実験期間中、血圧測定は、腎下大動脈における動脈内カテーテルの配置及び薬剤の投与前にプロリルリポ酸の急性投与により、プロリルリポ酸に無作為化された4匹のラットの亜群で行なう。さらには4匹のSHRSPラット(12週令)にラジオテレメトリー送信器(Data Science Inc.社)をラットの腹部大動脈中に移植し、DSIシステム(Data Science Inc.社)を用いて血圧を測定した。これらの後の実験では、血圧を24時間の期間に亘って連続的に記録し薬剤の投与に続いて12時間の期間で圧力の変化として報告した。
【0101】
6週間の期間の完了に続いて、ラットを致死性のペントバルビタール注射により17週で安楽死させ、組織をラットから取出した。組織の取出しにより、内皮機能を評価した。内皮機能はNOの無傷害生産又は利用可能性及び/又は内皮由来の弛緩及び収縮因子(例えばET−1、アンギオテンシン及び酸化剤)の相対的寄与のバランスを参照することは知られている。実際上、糖尿病における内皮機能障害はET−1の誇張した生産(高インスリン血症又は高血糖症により刺激される)と組合せたNOの減少した生体利用性(インスリン耐性に二次的)から得られる。内皮機能障害は全ての既知の心臓血管疾病の病因論及び臨床コースに関係しておりしかも不利な血臓血管の事件の将来の危険と関係している。かゝる事情で、組織がラットから取出されたからには、内皮の細胞機能は、0.3μMのフェニルエフリンでの予備収縮に続いてアセチルコリン又はナトリウムニトロプルシドに対する弛緩率(%)としてミオグラフィーにより実験群で評価される。
【0102】
更には、炎症性の遺伝子発現は、種々の炎症性遺伝子のmRNA転写物値をプローブすることにより大動脈、心臓、脳及び腎臓で評価される。大動脈の及び心臓のコラーゲン合成はまたピクロシラスレッド(Picrosirus Red)染色及びマッソム三色染色により評価し且つ自動化閾値プログラムにより定量化する。
【0103】
更に各々の器官の4〜8個の部分を10匹のラット(各々の群で5匹)につきCD68又はH&Eで染色し、画像を明色視野(bright-field)鏡検法により200×の倍率で得た。メタモルフ ソフトウェアを自動化閾値に用いる。画像の閾値領域の百分率を記録し報告する。追加的にラット当り約12個の器官部分をラットの10匹(各々の群で5匹)について調製する。これらの部分は大きさが5ミクロンであり、ヘマトキリン及びエオシン(H&E)で染色される。画像は40×の倍率(明色視野鏡検法を用いる)で得られしかもメタモルフ ソフトウェアを用いて解析した。各々の画像について、大動脈の外側弾性層(lamine)を筆記具を用いて図取りし、この領域を記入(log)した。ルミナル(luminal)領域も測定する。即ち、これらの測定には、外膜ではなくて内膜及び中膜が包含される。壁の厚さは壁領域からルミナル領域を差引くことにより算出した。
【0104】
前記実験からの結果を分析すると、プロリルリポ酸(式(III))は50mg/kgの投薬量で血圧を激しく低下したことが見出された。血圧におけるプロリルリポ酸のこれらの作用(図18〜19)はアンギオテンシン転換酵素阻害剤、カプトプリル(図20)に匹敵し得る。
【0105】
実験群からの組織試料を分析すると、50mg/kgの投薬量でのプロリルリポ酸(式(III))はSHLSPモデルでの6週の処置後に内皮機能を向上させたことが見出された(図21〜22)。プロリルリポ酸は大動脈(図23A−G)、腎臓(図24A−G)及び心臓(図25A−D)組織において炎症性遺伝子発現を顕著に低減した。前記の組織で見出される炎症性遺伝子発現の顕著な低減は脳組織試料(図26A−G)ではっきりした程ではなかった。然しながら、脳組織での発現の若干の低減はICAM1及びIL−6(それぞれ図26A及び26C)については観察された。
【0106】
プロリルリポ酸(式(III))はまた心臓及び腎臓に対する炎症性細胞の補充に有利な作用を有した。更には結果が証明する処によればプロリルリポ酸は心筋層、脳又は腎臓(図28〜30)におけるCD68発現に影響することなく大動脈内側の肥大(図27A−B)に作用を有し、これはこれらの組織及び器官にマクロファージの補充を示している。
【0107】
本発明の種々の詳細はこゝに開示した要旨の範囲から逸脱することなく変更させ得ることは理解されるであろう。更には、前記の記載は単に例示の目的のためであり、限定の目的のためでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):

〔式中R1

よりなる群から選ばれ、
2は5員又は6員の非芳香族複素環式環構造を表し;
3はCH3及びHよりなる群から選ばれる〕を有する化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項2】
該化合物は次式(II):

を有する請求項1記載の化合物。
【請求項3】
該化合物は次式(III):

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
該化合物は次式(IV):

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
該化合物は次式(V):

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
該化合物は次式(VI):

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
該化合物は次式(VII):

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
該化合物は次式(VIII):

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
該化合物は次式(IX):

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
請求項1記載の化合物と製薬上許容し得るビヒクル、担体又は賦形剤とを含有してなる製薬組成物。
【請求項11】
次式(X):

〔式中R1

よりなる群から選ばれ、
2は、ヒドロキシル置換基を場合によっては含有する5員又は6員の非芳香族複素環式環構造あるいは8員又は10員の二環式芳香族又は非芳香族複素環式環構造を表し;
3

よりなる群から選ばれる〕を有する化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項12】
該化合物は次式:

よりなる群から選ばれる、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
次式(XI):

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3


よりなる群から選ばれる〕を有する化合物又はそれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項14】
該化合物は次式:


よりなる群から選ばれる、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
次式(XII):

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕を有する化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項16】
該化合物は次式:


よりなる群から選ばれる、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
次式(XIII):

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3はH、CH3及びCOCH3よりなる群から選ばれる〕を有する化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項18】
該化合物は次式:

よりなる群から選ばれる、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
次式(XIV):

(式中R1はOH,NO2,NH2及びOCH3よりなる群から選ばれる)の化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項20】
次式(XV):

を有する化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項21】
次式(XVI):

を有する化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項22】
次式(XVII):

(式中R1はOH,NO2,OCH3及びNH2よりなる群から選ばれる)を有する化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項23】
次式(XVIII):

〔式中R1はシクロペンチル環、シクロヘキシル環、フェニル環及び置換したフェニル環(但しフェニル環上の置換基はOH,OCH3,NH2,NO2,COOHよりなる群から選ばれる)よりなる群から選択できる任意の環であり;
2は遊離カルボキシル基、メチル基又はエチルエステル基、第1級アルコール基及び第1級アミン基よりなる群から選ばれ;
nは1〜3の整数であり、含窒環はピロリジン環、ピペリジン環及び飽和アゼピン環よりなる群から選んだ置換又は非置換の環であり;
3は1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基でありしかも1つ又はそれ以上の共役又は非共役二重結合を包含し得るアルキル基であり;
4

よりなる群から選ばれる置換又は非置換の5員又は6員のジスルフィド部分又は5員又は6員のジチオール部分である〕を有する化合物。
【請求項24】
次式(I)及び(X)−(XVIII)

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2は5員又は6員の非芳香族複素環式環構造を表し;
3はCH3及びHよりなる群から選ばれる〕の化合物、
次式(X)

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2は場合によってはヒドロキシル置換基を含有する5員又は6員の非芳香族複素環式環構造あるいは8員又は10員の二環式芳香族又は非芳香族複素環式環構造を表し;
3

よりなる群から選ばれる〕の化合物、
次式(XI)

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ、;
3

よりなる群から選ばれる〕の化合物、
次式(XII)

〔式中R1

よりなる群から選ばれ、;
2

よりなる群から選ばれ、;
3

よりなる群から選ばれる〕の化合物、
次式(XIII):

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3はH,CH3及びCOCH3よりなる群から選ばれる〕の化合物、
次式(XIV):

(式中R1はOH,NO2,NH2及びOCH3よりなる群から選ばれる)の化合物、
次式(XV):

の化合物、
次式(XVI):

の化合物、
次式(XVII)

(式中R1はOH、NO2、OCH3及びNH2よりなる群から選ばれる)の化合物、及び
次式(XVIII):

〔式中R1はシクロペンチル環、シクロヘキシル環、フェニル環及び置換フェニル環(但しフェニル環上の置換基はOH,OCH3,NH2,NO2,COOHよりなる群から選ばれる)よりなる群から選ばれる任意の環を表し;
2は遊離カルボキシル基、メチル又はエチルエステル基、第1級アルコール基及び第1級アミン基よりなる群から選ばれ;
nは1〜3の整数であり、含窒環はピロリジン環、ピペリジン環及び飽和アゼピン環よりなる群から選んだ置換又は非置換の環であり;
3は1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基であり、しかも1つ又はそれ以上の共役又は非共役二重結合を含有し得るアルキル基であり;
4

よりなる群から選んだ置換又は非置換の5員又は6員のジスルフィド部分又は5員又は6員のジチオール部分である〕の化合物
よりなる群から選んだ化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物の有効量に対してアンギオテンシン転換酵素を接触させることからなる、アンギオテンシン転換酵素活性を低減する方法。
【請求項25】
アンギオテンシン転換酵素を約1〜約200nMの範囲の濃度の化合物と接触させる請求項24記載の方法。
【請求項26】
約2.5〜約400mg/日の投与量の化合物を被験者に投与することによりアンギオテンシン転換酵素を有効量の化合物と接触させる請求項24記載の方法。
【請求項27】
レニン−アンギオテンシン アルドステロン系関連の疾病を治療する方法において、次式(I)及び(X)〜(XVIII):

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2は5員又は6員の非芳香族複素環式環構造を表し;
3はCH3又はHを表す〕;

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2は、場合によってはヒドロキシル置換基を含有する5員又は6員の非芳香族複素環式環構造あるいは8員又は10員の二環式芳香族又は非芳香族複素環式環構造を表し;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3はH,CH3及びCOCH3よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1はOH,NO2,NH2及びOCH3よりなる群から選ばれる〕、


〔式中R1はOH,NO2,OCH3及びNH2よりなる群から選ばれる〕及び

〔式中R1はシクロペンチル環、シクロヘキシル環、フェニル環及び置換フェニル環(但しフェニル環上の置換基はOH,OCH3,NH2,NO2,COOHよりなる群から選ばれる)よりなる群から選び得る任意の環を表し;
2は遊離カルボキシル基、メチル又はエチルエステル基、第1級アルコール基及び第1級アミン基よりなる群から選ばれ;
nは1〜3の整数であり、含窒環はピロリジン環、ピペリジン環及び飽和アゼピン環よりなる群から選んだ置換又は非置換の環であり、
3は1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基であって、1つ又はそれ以上の共役又は非共役二重結合を含有し得るアルキル基であり;
4

よりなる群から選ばれる置換又は非置換の5員又は6員ジスルフィド部分又は5員又は6員のジチオール部分である〕よりなる群から選んだ化合物又はこれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物の有効量を、治療を必要としている被験者に投与することからなる、レニン−アンギオテンシン アルドステロン系関連疾病の治療方法。
【請求項28】
レニン−アンギオテンシン アルドステロン系関連疾病は高血圧症、真性糖尿病、真性糖尿病に関連する標的器官の損傷、アテローム性動脈硬化症、冠動脈性心疾患、アンギナ、発作、腎疾患及びレイナウド疾患(Reynaud's disease)よりなる群から選ばれる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該化合物を被験者に投与すると被験者の血圧を低下させる請求項27記載の方法。
【請求項30】
該化合物を被験者に投与すると被験者のアンギオテンシン転換酵素の活性を低減させる請求項27記載の方法。
【請求項31】
該化合物を被験者に投与すると被験者の炎症性遺伝子の発現量を低減させる請求項27記載の方法。
【請求項32】
炎症性遺伝子はICAM1、IL−6、IL−Iβ、MCP1、TGF−β1、VCAM1、TNF−α又はこれらの組合せよりなる群から選ばれる請求項31記載の方法。
【請求項33】
炎症性遺伝子の発現量は被験者の大動脈組織、心臓組織又は腎臓組織で低減する請求項31記載の方法。
【請求項34】
炎症性遺伝子の発現量は被験体の脳組織で低減され、炎症性遺伝子はIL−6及びICAM1よりなる群から選ばれる請求項31記載の方法。
【請求項35】
非経口投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与及び経口投与よりなる群から選んだ経路により該化合物を被験体に投与する請求項27記載の方法。
【請求項36】
被験体は哺乳動物である請求項27記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物はヒトである請求項36記載の方法。
【請求項38】
該化合物は1日当り約2.5〜約400mgの濃度で被験体に投与する請求項27記載の方法。
【請求項39】
高血圧症を低減する方法において、次式(I)及び(X)〜(XVIII):

〔式中R1

であり;
2は5員又は6員の非芳香族複素環式環構造を表し;
3はCH3又はHである〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2はヒドロキシル置換基を場合によっては含有する5員又は6員の非芳香族複素環式環構造あるいは8員又は10員の二環式芳香族又は非芳香族複素環式環構造を表し;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2


よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3はH,CH3及びCOCH3よりなる群から選ばれる〕、

(式中R1はOH,NO2,NH2及びOCH3よりなる群から選ばれる)、

(式中R1はOH,NO2,OCH3及びNH2よりなる群から選ばれる)、及び

〔式中R1はシクロペンチル環、シクロヘキシル環、フェニル環及び置換フェニル環(但しフェニル環上の置換基はOH,OCH3,NH2,NO2,COOHよりなる群から選ばれる)よりなる群から選び得る任意の環であり;
2は遊離カルボキシル基、メチル又はエチルエステル基、第1級アルコール基、及び第1級アミン基よりなる群から選ばれ;
nは1〜3の整数であり、含窒環はピロリジン環、ピペリジン環及び飽和アゼピン環よりなる群から選んだ置換又は非置換の環であり;
3は1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基であって、1つ又はそれ以上の共役又は非共役二重結合を含有し得るアルキル基であり;
4

よりなる群から選んだ置換又は非置換の5員又は6員ジスルフィド部分又は5員又は6員のジチオール部分である〕よりなる群から選んだ化合物又はそれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物の有効量に対してアンギオテンシン転換酵素を接触することからなる、高血圧症の低減方法。
【請求項40】
発作の治療方法において、次式(I)及び(X)〜(XVIII):

〔式中R1

であり;
2は5員又は6員の非芳香族複素環式環構造を表し;
3はCH3又はHである〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2はヒドロキシル置換基を場合によっては含有する5員又は6員の非芳香族複素環式環構造あるいは8員又は10員の二環式芳香族又は非芳香族複素環式環構造を表し;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3

よりなる群から選ばれる〕、

〔式中R1

よりなる群から選ばれ;
2

よりなる群から選ばれ;
3はH,CH3又はCOCH3である〕、

〔式中R1はOH,NO2,NH2又はOCH3である〕、



〔式中R1はOH,NO2,OCH3又はNH2である〕、及び

〔式中R1はシクロペンチル環、シクロヘキシル環、フェニル環及び置換フェニル環(但しフェニル環上の置換基はOH,OCH3,NH2,COOH及びCONHR(但しRはメチル又はエチル基である)よりなる群から選ばれる)よりなる群から選ばれ得る任意の環であり;
2は遊離カルボキシル基、メチル又はエチルエステル基、第1級アルコール基及び第1級アミン基よりなる群から選ばれ;
nは1〜3の整数であり、含窒環はピロリジン環、ピペリジン環及び飽和アゼピン環よりなる群から選ばれる置換又は非置換の環であり;
3は1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基であって、1つ又はそれ以上の共役又は非共役二重結合を含有し得るアルキル基であり;
4

よりなる群から選ばれた置換又は非置換の5員又は6員のジスルフィド部分又は5員又は6員のジチオール部分である〕よりなる群から選んだ化合物又はそれの製薬上許容し得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とされる患者に投与することからなる、発作の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A−G−1】
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【図23A−G−2】
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【図24A−G−1】
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【図24A−G−2】
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【図25A−D】
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【図26A−G−1】
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【図26A−G−2】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2012−505919(P2012−505919A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532292(P2011−532292)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/061037
【国際公開番号】WO2010/045575
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511097290)インヴアスク セラピューテイックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】